説明

硬化性組成物の製造方法、硬化性組成物およびその硬化物

【課題】一般的に良好な機械特性、耐油性、耐熱性等を示す硬化物を与えるビニル系重合体を含有し、ヒドロシリル化反応により硬化し得る硬化性組成物であり、圧縮永久歪の小さな硬化物を得られる硬化性組成物の製造方法及びその硬化物を提供する。
【解決手段】
(A)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有する、ポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体、(B)ヒドロシリル基含有化合物(II)、(C)ヒドロシリル化触媒、および、(D)充填剤を含有する硬化性組成物を製造する方法であって、(A)成分および(D)成分を、減圧条件下、90℃以上に加熱しながら混合する工程を含む、硬化性組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状硬化性組成物の製造方法、その製法で得られる硬化性組成物及びその硬化物に関する。さらに詳しくは、アルケニル基含有ポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体、ヒドロシリル基含有化合物、ヒドロシリル化触媒、および充填剤を含有してなる、圧縮永久歪の小さな硬化物を得られる硬化性組成物の製造方法、その製法で得られる硬化性組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレン系重合体やビニル系重合体を主成分とする成形体は、高分子量の重合体を各種添加剤とともにロールやミル等を用いて加熱状態で混練し、成形することにより得られる。例えば、(メタ)アクリル系重合体を主成分とするアクリルゴムの成形体は、未加硫ゴム(アクリルゴム)に充填剤、加硫剤等の配合剤を混練した後に加熱加硫成形することにより得られる。しかし、混練り時にロールに付着したり、シーティング時に平滑になりにくい等、作業性に劣る上に、成形時に非流動性である等の加工性の悪さと加硫速度が遅い上にスコーチしやすい等の硬化性の悪さといった問題がある(非特許文献1)。
【0003】
そこで、これらの問題点を解決する方法として、本発明者らは、末端にアルケニル基を有する分子量分布が狭い(メタ)アクリル系重合体(特許文献1)を開発し、末端にアルケニル基を含有するビニル系重合体とヒドロシリル基含有化合物とを含む硬化性組成物を硬化させてなる成形体(特許文献2)や現場成形ガスケット(特許文献3、特許文献4)を提案している。分子末端に反応性の官能基を有する(メタ)アクリル系重合体を使用すると、架橋点間分子量を有効に得ることができて主鎖自身の分子量を低減することが可能であるため流動性に優れ、その結果、加工性が良くなることが期待される。また、末端にアルケニル基を含有するビニル系重合体とヒドロシリル基含有化合物とを含む硬化性組成物の硬化に利用されるヒドロシリル化反応は、低温では反応速度が非常に遅いか実質的には進行せず、加熱することによって速やかに反応が完結するという熱潜在性に優れた特徴を有する。そのため、この硬化性組成物は、成形時にスコーチすることなく速やかに硬化物を得られるという利点を有する。したがって、末端にアルケニル基を含有するビニル系重合体とヒドロシリル基含有化合物とを含む硬化性組成物は成形性に優れ、成形後は耐油性、耐熱性に優れた特性を有する成形品を与えうる。ただし、これら成形品は強度や硬度が不十分な場合があり、この欠点を補うために充填剤を添加することが一般的に行われる。しかしながら、充填剤を添加したこの種の成形ゴムは、そのままでは加熱下での圧縮に対する抵抗が弱く、圧縮に対する抵抗を示す一つの指標である圧縮永久歪が不十分である。そのため、長時間圧縮変形を受ける成形品、例えばシール剤として使用するには圧縮永久歪を改善させることが必要となる。実用に充分な圧縮永久歪を得るために、射出成形、トランスファー成形やプレス成形等により得た成形品をさらに150〜200℃といった高温下で長時間の加熱処理(二次加硫)が通常行われる。しかしながら、この方法では一旦成形した成形ゴムを高温度のオーブンに入れ、長時間加熱するという工程が必要であり、作業効率が低く生産性に劣るという課題がある。
【0004】
従来、耐熱性、圧縮永久歪、耐油性が要求されるOリング、オイルシール、パッキン、ガスケットなどの各種シール材に、これらの物性に優れた、ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基などの架橋点を有するアクリルゴムが使用されているが、近年更なる耐熱性向上、低圧縮永久歪の実現が要求されている。以前から、エポキシ基を架橋点としたアクリルゴムに比べて、ハロゲン基、あるいは活性ハロゲン基を架橋点としたアクリルゴムは圧縮永久歪が小さい加硫物が得られることが知られている(特許文献5)が、ハロゲン基を架橋点とするこの加硫物は耐金属腐食性が必ずしも十分ではなく、また加硫前の貯蔵安定性に欠けるという欠点を有している。一方でカルボキシル基を架橋点とするアクリルゴムは、エポキシ基、ハロゲン基などを用いた従来のアクリルゴムより耐熱性、圧縮永久歪に優れることから、近年盛んに研究されている。フマル酸モノ低級アルキルエステルを共重合したアクリルゴムを芳香族ジアミン加硫剤とグアニジン加硫助剤を用いて加硫することが提案されている(特許文献6)が、この方法では加硫時にスコーチを起こす場合がある。さらに、架橋剤として強塩基加硫剤を用いる方法が提案されている(特許文献7)が、強塩基化合物は毒性が高く、混練作業および混練後のゴム組成物の取り扱いが困難であるという問題があり、また、これらの強塩基加硫剤を用いた場合は、加硫時にスコーチが起こる場合がある。カルボキシル基含有アクリルゴムと湿式法シリカを焼成してなるシリカを含有が提案されている(特許文献8)が、スコーチが早く貯蔵安定性に劣るという課題を有するとともに、焼成シリカが高価であり、また使用可能な充填剤が焼成シリカに限定されるという難点がある。また、カルボキシル基含有アクリルゴムに、塩素基含有シランカップリング剤とシリカを含有することにより耐熱性、圧縮永久歪を改善する方法が提案されている(特許文献9)が、この方法ではシランカップリング剤に含有されている塩素基のために金属腐蝕性に劣るという欠点を有する。このように、従来知られている、ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基などの架橋点を有するアクリルゴムの圧縮永久歪を改善する方法としては、充填剤や架橋剤、架橋助剤といった配合剤の工夫という観点からのものが主である。しかし、ひとたび架橋形式が異なれば、配合剤の種類や量、組合せによって、硬化性組成物の性状、貯蔵安定性、加硫速度、得られた硬化物の機械的特性、耐熱性、圧縮永久歪、耐油性等の諸特性が大きく変化することは明らかであり、従来のアクリルゴムの技術を、架橋形式の異なるヒドロシリル化硬化型の硬化性組成物に適用することは困難であり、また実際に適用可能な技術も見出されていない。
【0005】
一方、主鎖はまったく異なるが、本発明と同じ硬化形式を利用するシリコーンゴムの領域においても同様の課題があり、従来の課題を解決するための種々の検討がなされている。例えば、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、補強性シリカ、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを100℃以上に加熱混合する方法が開示されている(特許文献10)が、ビニル系重合体と相溶性を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いた場合には、100℃以上で加熱混合すると硬化性組成物を製造している間にゲル化してしまうという課題を有する。また、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金系触媒、湿式シリカを混合する際、湿式シリカを80℃以下の温度で加熱混合する方法が開示されている(特許文献11)が、この方法では、湿式シリカ中に含有されている水分が除去されず、硬化物を作製する際に残存する水分の影響で硬化物中に泡が発生し、外観上に課題がある。また、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと補強性シリカを混合後、熱処理した後、アミノシランを添加しさらにアミノシランを除去するという方法が提案されている(特許文献12)が、この方法では、アミノシランの添加および除去という工程が必要であり、操作が煩雑であるという課題がある。
【0006】
また、本発明と同じ硬化形式を利用する、アルケニル基を有するポリフルオロ化合物、疎水性シリカ粉末を含有する組成物を、プラネタリーミキサーで加熱・減圧条件下に混練りすることが開示されている(特許文献13)。しかし、その目的は、自己接着性を付与するためのイソシアヌレートやオルガノシロキサンなどがシリカ表面に吸着されるのを阻止するためにポリフルオロ化合物をシリカ粉末表面に濡れやすくすることであり、その結果接着剤成分の粘度を低減し、接着特性を向上させる効果が発揮されることが開示されているものの、圧縮永久歪などの機械特性の改善を目的とした検討は行われていない。
【特許文献1】特開平9−272714号公報
【特許文献2】特開2000−154255号公報
【特許文献3】特開2000−154370号公報
【特許文献4】特開2003−113288号公報
【特許文献5】特開2004−59821号公報
【特許文献6】特開平11−92614号公報
【特許文献7】特開平11−80488号公報
【特許文献8】特開2004−168885号公報
【特許文献9】特開2006−249237号公報
【特許文献10】特開平10−120905号公報
【特許文献11】特開平10−130507号公報
【特許文献12】特開平7−278437号公報
【特許文献13】特開2005−2142号公報
【非特許文献1】日本ゴム協会誌、第73巻第10号555頁(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ヒドロシリル化反応により硬化し得る硬化性組成物において、圧縮永久歪の小さな硬化物を得られる硬化性組成物の製造方法及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ビニル系重合体と充填剤とを混合する際に、加熱することに加えて減圧状態にすることで上記課題を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、(A)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有する、ポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体(以下、「ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有する、ポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体」を単に「有機重合体(I)」と称することがある。)、(B)ヒドロシリル基含有化合物(II)、(C)ヒドロシリル化触媒、および、(D)充填剤を含有する硬化性組成物を製造する方法であって、(A)成分および(D)成分を、減圧条件下、90℃以上に加熱しながら混合する工程を含む、硬化性組成物の製造方法に関する。
【0010】
上記硬化性組成物の製造方法においては、上記加熱が180℃以上であることが好ましい。
【0011】
上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体としては、炭化水素系重合体および/または(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
【0012】
上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体は、分子量分布が1.8未満であることが好ましい。
【0013】
上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体は、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を主として重合して製造されるものが好ましく、(メタ)アクリル系重合体がより好ましく、アクリル系重合体がさらに好ましく、アクリル酸エステル系重合体が特に好ましい。
【0014】
また、上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体は、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−メトキシブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルからなる群から選ばれる少なくとも1種を主として重合して製造されるものであってもよい。
【0015】
上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体の主鎖は、リビングラジカル重合法により製造されるものであるであってもよく、上記リビングラジカル重合としては、原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0016】
上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体としては、以下の工程:
(1a)ビニル系モノマーを原子移動ラジカル重合法により重合することにより、一般式(1)
−C(R)(R)(X) (1)
(式中、R及びRはビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基を示す。Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す。)
で示す末端構造を有するビニル系重合体を製造し、
(2a)前記重合体の末端ハロゲンを、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する置換基に変換する;
により得られるもの、または、以下の工程:
(1b)ビニル系モノマーをリビングラジカル重合法により重合することにより、ビニル系重合体を製造し、
(2b)前記重合体を、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物と反応させる;
により得られるものであってもよい。
【0017】
上記有機重合体(I)は、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子鎖の末端に有することが好ましい。
【0018】
上記硬化性組成物の製造方法においては、上記(B)ヒドロシリル基含有化合物(II)は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0019】
上記硬化性組成物の製造方法においては、上記(D)充填剤はシリカが好ましく、表面無処理シリカがより好ましい。
【0020】
本発明は、上記硬化性組成物の製造方法によって得られる硬化性組成物、また、当該硬化性組成物を硬化してなる硬化物に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ヒドロシリル化反応により硬化し得る硬化性組成物において、圧縮永久歪の小さな硬化物を得られる硬化性組成物が製造可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の硬化性組成物の製造方法およびその硬化物について詳述する。
【0023】
まずは、本発明の硬化性組成物に含有される成分(A)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有する、ポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体、(B)ヒドロシリル基含有化合物(II)、(C)ヒドロシリル化触媒および(D)充填剤について説明する。
【0024】
<<(A)有機重合体(I)>>
本発明の(A)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有する有機重合体の主鎖は、ポリオキシアルキレン系重合体またはビニル系重合体であり、ビニル系重合体としては、炭化水素系重合体および(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
具体的には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル及びスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル系重合体、(メタ)アクリル酸系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体、前記ポリオキシアルキレン系重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体などのビニル系重合体が例示される。上記主鎖骨格をもつ有機重合体のうち、得られる硬化物の耐熱性、耐油性、耐寒性等が優れるという観点からは、(メタ)アクリル系重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系重合体がより好ましく、アクリル酸エステル系重合体がもっとも好ましい。
比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れる観点からすれば、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体や、ポリオキシアルキレン系重合体や、(メタ)アクリル系重合体が好ましい。これら有機重合体(I)は、単一種の有機重合体を使用しても良いし、複数種の有機重合体を混合して使用しても良い。複数種を混合して使用する際には、それら有機重合体が相溶していることが好ましい。
【0025】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の主鎖骨格を有する、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有する有機重合体を併用することができる。主鎖骨格としては、特に限定するわけではないが、例えば、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、または、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等などが挙げられる。これらを混合して使用する際には、有機重合体(I)とこれらの有機重合体とが相溶していることが好ましい。
【0026】
<主鎖>
本発明におけるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するポリオキシアルキレン系重合体(以下、単に「ポリオキシアルキレン系重合体」と称することがある。)としては、具体的には、重合体の主鎖が、一般式(3)で示される繰り返し単位を有するものがあげられる。一般式(3):
−R−O− (3)
(式中、Rは2価のアルキレン基)
一般式(3)におけるRは、炭素数1から14の、さらには2から4の、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましい。一般式(3)で示される繰り返し単位の具体例としては、−CHO−、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH (C)O−、−CHC(CHO−、−CHCHCHCHO−等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、入手性、作業性の点から、−CHCH(CH)O−を主な繰り返し単位とする重合体が好ましい。また、重合体の主鎖にはオキシアルキレン基以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中のオキシアルキレン単位の総和は、80重量%以上、特には90重量%以上が好ましい。
【0027】
本発明におけるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体(以下、単に「ビニル系重合体」と称することがある。)は、その主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。具体的には特開2005−232419号公報 段落[0018]記載の各種モノマーのような、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー、ケイ素含有ビニル系モノマー、マレイミド系モノマー、ニトリル基含有ビニル系モノマー、アミド基含有ビニル系モノマー、ビニルエステル類、アルケン類、共役ジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0028】
中でも、(メタ)アクリル酸系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。
【0029】
とりわけ、生成物の物性等から、芳香族ビニル系モノマー及び/または(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーがより好ましく、アクリル酸エステルモノマーがさらに好ましい。特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシブチルである。
【0030】
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0031】
本発明におけるビニル系重合体としては、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素原子数2から6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させる、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させ、あるいは、上記オレフィン系化合物とを共重合させた後水素添加する、などの方法により得ることができる炭化水素系重合体も使用できる。イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体は、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましく、イソブチレン系重合体が好ましい。
【0032】
イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、他単量体との共重合体でもよいが、ゴム特性の面からイソブチレンに由来する繰り返し単位を50重量%以上含有するものが好ましく、80重量%以上含有するものがより好ましく、90〜99重量%含有するものが特に好ましい。
【0033】
上記の炭化水素系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0034】
本発明における有機重合体(I)の分子量分布、即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、ビニル系重合体の場合は、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布が大きすぎると同一架橋点間分子量における粘度が増大し、取り扱いが困難になる傾向にある。本発明でのGPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0035】
本発明における有機重合体(I)の数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、500〜1,000,000の範囲が好ましく、1,000〜100,000がより好ましく、5,000〜80,000がさらに好ましく、8,000〜50,000がなおさら好ましい。分子量が低くなりすぎると、有機重合体(I)の本来の特性が発現されにくい傾向があり、一方、高くなりすぎると、取り扱いが困難になる傾向がある。
【0036】
本発明の有機重合体(I)の構造は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、また、その混合物でもよい。
【0037】
<合成法>
本発明のポリオキシアルキレン系重合体の重合方法は、特開昭50−13496号等に開示されるオキシアルキレンの通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)、特開昭50−149797号等に開示されるこの重合体を原料とした鎖延長反応方法による重合法、特開平7−179597号等に開示されるセシウム金属触媒を用いる重合法、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号に開示されるポルフィリン/アルミ錯体触媒を用いる重合法、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等に開示される複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合法、特開平10−273512号等に開示されるポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法等により得ることができる。
【0038】
実用上、触媒の入手性、重合の安定性の点から、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる方法が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒の製法は、公知の方法が利用可能である。例えば、米国特許第3,278,457号、同3,278,459号、同5,891,818号、同5,767,323号、同5,767,323号、同5,536,883号、同5,482,908号、同5,158,922号、同4,472,560号、同6,063,897号、同5,891,818号、同5,627,122号、同5,482,908号、同5,470,813号、同5,158,922号等に記載の方法が好ましい。
【0039】
また、本発明のビニル系重合体の好ましい態様の一つである、炭化水素系重合体、特にイソブチレン系重合体の場合は、Kennedyらによって見出されたイニファー重合(J.P.Kennedyら、J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed. 1997年、15巻、2843頁)を用いることにより容易に製造することが可能である。この重合方法によれば、分子量500〜100,000程度を、分子量分布1.5以下で重合でき、分子末端に各種官能基を導入できることが知られている。
【0040】
上記炭化水素系重合体の重合法の他、本発明のビニル系重合体は、種々の重合法により得ることができ、特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性等の点からラジカル重合法が好ましく、ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合がより好ましい。この制御ラジカル重合法は「連鎖移動剤法」と「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。得られるビニル系重合体の分子量、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましく、原料の入手性、重合体末端への官能基導入の容易さから原子移動ラジカル重合が特に好ましい。上記ラジカル重合、制御ラジカル重合、連鎖移動剤法、リビングラジカル重合法、原子移動ラジカル重合は公知の重合法ではあるが、これら各重合法については、たとえば、特開2005−232419号公報や、特開2006−291073号公報などの記載を参照できる。
【0041】
本発明におけるビニル系重合体の好ましい合成法の一つである、原子移動ラジカル重合について以下に簡単に説明する。
【0042】
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられることが好ましい。具体的には特開2005−232419公報 段落[0040]〜[0064]記載の化合物が挙げられる。
【0043】
ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を1分子内に2つ以上有するビニル系重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0044】
【化1】

【0045】
【化2】

等が挙げられる。
【0046】
原子移動ラジカル重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、上述した例示したビニル系モノマーをすべて好適に用いることができる。
【0047】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体でありより好ましく0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体、特に好ましくは銅の錯体が挙げられる。銅の錯体を形成するために使用される1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。
【0048】
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、特開2005−232419公報 段落[0067]]記載の溶剤が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体COを媒体とする系においても重合を行うことができる。
【0049】
重合温度は、限定はされないが、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
【0050】
<ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基>
本発明で使用される有機重合体(I)が含有するヒドロシリル化反応可能なアルケニル基としては、限定はされないが、一般式(2)で表されるものであることが好ましい。
C=C(R)− (2)
(式中、Rは水素又は炭素数1〜20の有機基を示す。)
上記Rの炭素数1〜20の有機基としては、特に限定されないが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく挙げられ、具体的には以下のような基が例示される。
−(CH−CH、−CH(CH)−(CH−CH、−CH(CHCH)−(CH−CH、−CH(CHCH、−C(CH−(CH−CH、−C(CH)(CHCH)−(CH−CH、−C、−C(CH)、−C(CH、−(CH−C、−(CH−C(CH)、−(CH−C(CH
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)
ヒドロシリル化反応の活性の点から、Rとしては水素又はメチル基がより好ましい。
【0051】
有機重合体(I)のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基は、特に限定はされないが、その炭素−炭素二重結合と共役するカルボニル基、アルケニル基、芳香族環により活性化されていないことが好ましい。
【0052】
ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基と有機重合体(I)の主鎖との結合形式は、特に限定されないが、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合等を介して結合されていることが好ましい。
【0053】
有機重合体(I)は、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するものであり、硬化物の機械物性の点から、有機重合体1分子当たり平均して1.2個〜3.0個有するものが好ましい。特に限定するわけではないが、具体的には、有機重合体1分子当たりに導入されたヒドロシリル化反応可能なアルケニル基の数をH−NMR分析により求めた平均値が1.2個〜3.0個であることが好ましく、1.5個〜2.5個であることがより好ましい。
【0054】
本発明の硬化性組成物から得られる硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基の少なくとも1個は分子鎖(主鎖)の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全てのヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子鎖末端に有するものである。
【0055】
ポリオキシアルキレン系重合体にアルケニル基を導入する方法については、種々の方法を用いることができる。たとえば、アリルグリシジルエーテルのようなアルケニル基を有するモノマーとオキシアルキレンモノマーとの共重合によって導入することができる。また、主鎖あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基等の官能基を有するオキシアルキレン重合体に、これらの官能基に対して反応性を有する官能基及びアルケニル基を有する有機化合物を反応させることによって、アルケニル基を主鎖あるいは側鎖に導入することができる。特にアルケニル基が重合体の主鎖末端に存在する場合には、硬化物における有効網目鎖長が大きくなり、機械的特性に優れた硬化物を得ることができる点から好ましい。
【0056】
上記の官能基に対して反応性を有する官能基及びアルケニル基を有する有機化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、アクリル酸クロライド若しくはアクリル酸ブロマイド等の炭素数3〜20の不飽和脂肪酸の酸ハライド、酸無水物、アリルクロロホルメート、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1 −ブテニル(クロロメチル)エーテル,1 −ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0057】
本発明のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体、中でも、主鎖骨格が炭化水素系重合体の製法としては、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開平1−197509号、特許公報第2539445号、特許公報第2873395号、特開平7−53882号の各明細書などに記載されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0058】
本発明のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子末端に少なくとも1個有するビニル系重合体、中でも主鎖骨格が(メタ)アクリル系重合体は、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に開示されている方法により製造できる。しかしながら、これらの方法は上記「連鎖移動剤法」を用いたフリーラジカル重合法であるので、得られる重合体は、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を比較的高い割合で分子鎖末端に有する一方で、分子量分布(Mw/Mn)の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低いビニル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端にヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有するビニル系重合体を得るためには、上記「リビングラジカル重合法」を用いることが好ましい。
【0059】
得られたビニル系重合体へのヒドロシリル化反応可能なアルケニル基の導入方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2005−232419公報 段落[0074]〜[0099]記載の方法が挙げられる。これらの方法の中でも制御がより容易である点から、ジエン化合物添加法が好ましい。水酸基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体から得る場合は、制御がより容易である点から重合の終期にアルケニルアルコールを反応させる方法、重合体の反応末端に安定化カルバニオンを反応させる方法により得られる、水酸基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体を用いることが好ましい。
【0060】
ここでは、好ましい導入方法の一つである、ジエン化合物添加法について以下に簡単に説明する。ジエン化合物添加法は、ビニル系モノマーのリビングラジカル重合により得られるビニル系重合体に、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物(以下、「ジエン化合物」という。)を反応させる。
【0061】
ジエン化合物が有するアルケニル基としては、末端アルケニル基[CH=C(R)−R’;Rは水素又は炭素数1〜20の有機基、R’は炭素数1〜20の一価または二価の有機基であり、RとR’は互いに結合して環状構造を有していてもよい。]又は内部アルケニル基[R’−C(R)=C(R)−R’;Rは水素又は炭素数1〜20の有機基、R’は炭素数1〜20の一価または二価の有機基であり、二つのR若しくは二つのR’は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。二つのRと二つのR’のうちいずれか二つが互いに結合して環状構造を有していてもよい。]のいずれでもよいが、末端アルケニル基がより好ましい。Rは水素又は炭素数1〜20の有機基であるが、炭素数1〜20の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。これらの中でもRとしては水素又はメチル基が特に好ましい。R’の炭素数1〜20の一価または二価の有機基としては、炭素数1〜20の一価または二価のアルキル基、炭素数6〜20の一価または二価のアリール基、炭素数7〜20の一価または二価のアラルキル基が好ましい。これらの中でもR’としてはメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基が特に好ましい。ジエン化合物の少なくとも2つのアルケニル基は互いに同一又は異なっていてもよく、ジエン化合物のアルケニル基のうち、少なくとも2つのアルケニル基は共役していてもよい。
【0062】
ジエン化合物の具体例としては例えば、イソプレン、ピペリレン、ブタジエン、ミルセン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン等が挙げられるが、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンが好ましい。
【0063】
ビニル系モノマーのリビングラジカル重合を行い、得られた重合体を重合系より単離した後、単離した重合体とジエン化合物をラジカル反応させることにより、目的とする末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を得ることも可能であるが、重合反応の終期あるいは所定のビニル系モノマーの反応終了後にジエン化合物を重合反応系中に添加する方法が簡便であるのでより好ましい。
【0064】
ジエン化合物の添加量は、2つのアルケニル基の反応性に大きな差があるジエン化合物を使用する場合、重合体成長末端に対して当量又は小過剰量程度であればよく、2つのアルケニル基の反応性が等しい又はあまり差がないジエン化合物を使用する場合、重合体生長末端に対して過剰量であることが好ましく、具体的には1.5倍以上が好ましく、さらに好ましくは3倍以上、特に好ましくは5倍以上である。
【0065】
本発明の硬化性組成物に使用される、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体としては、上述した製法の中でも、下記方法により得られるものが特に好適である。
【0066】
第1の方法としては、
(1a)ビニル系モノマーを原子移動ラジカル重合法により重合することにより、下記一般式(1)
−C(R)(R)(X) (1)
(式中、R及びRはビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基を示す。Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す。)
で示す末端構造を有するビニル系重合体を製造し、
(2a)前記重合体の末端ハロゲンを、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する置換基に変換する、
方法が挙げられる。
【0067】
第2の方法としては、
(1b)ビニル系モノマーをリビングラジカル重合法により重合することにより、ビニル系重合体を製造し、
(2b)前記重合体を、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物と反応させる、
方法が挙げられる。
【0068】
<<(B)ヒドロシリル基含有化合物(II)>>
(B)成分のヒドロシリル基含有化合物(II)としては、(A)成分のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有する、ポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体と架橋により硬化できるヒドロシリル基含有化合物であれば、特に制限はなく、各種のものを用いることができるが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
【0069】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、公知の鎖状または環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができ、(A)成分として(メタ)アクリル系重合体を使用する場合、(メタ)アクリル系重合体との相溶性の観点からは、芳香族環含有鎖状または環状オルガノハイドロジェンシロキサンが好適である。具体的には、特開2006−291073号公報 段落[0088]〜[0093]記載のヒドロシリル基含有化合物が挙げられる。
【0070】
また、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物でヒドロシリル基の一部が置換された鎖状または環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することもできる。具体的には、過剰量の上記ヒドロシリル基含有化合物に対し、後述するヒドロシリル化触媒の存在下、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物をゆっくり滴下することにより得られる変性ヒドロシリル基含有化合物をヒドロシリル基含有化合物(II)として使用できる。分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物としては、脂肪族炭化水素系化合物、エーテル系化合物、エステル系化合物、カーボネート系化合物、イソシアヌレート系化合物や芳香族炭化水素系化合物等が挙げられ、具体的には特開2006−291073号公報 段落[0094]記載の化合物を使用できる。このような変性ヒドロシリル基含有化合物のうち、原料の入手容易性、過剰に用いたヒドロシリル基含有化合物の除去のしやすさ、さらには(A)成分として(メタ)アクリル系重合体を使用する場合、(メタ)アクリル系重合体への相溶性を考慮して、下記のものが好ましく挙げられる。
【0071】
【化3】

本発明の硬化性組成物における(B)成分の配合量としては特に限定されないが、硬化性の面から、(A)成分中のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基と(B)成分中のSiH(ヒドロシリル)基のモル比((B)/(A))が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、2.5〜0.4であることが特に好ましい。モル比が5より大きいと、硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が多く残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られにくくなる傾向があり、0.2より小さいと、硬化が不十分で強度の小さい硬化物が得られ易くなる傾向がある。
【0072】
本発明の硬化性組成物においては、上記ヒドロシリル基含有化合物(II)を1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0073】
<<(C)ヒドロシリル化触媒>>
本発明における(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、特に制限はなく、通常ヒドロシリル化反応に使用される公知のヒドロシリル化触媒を任意に使用できる。具体的には、白金触媒、特開2005−232419公報 段落[0137]記載のヒドロシリル化触媒が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。
【0074】
本発明の硬化性組成物における(C)ヒドロシリル化触媒の使用量としては特に制限はないが、(A)成分中のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基1molに対して10−1〜10−8molの範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは10−2〜10−6molの範囲である。また、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で腐食性であり、また、水素ガスを大量に発生して硬化物を発泡させてしまう場合があるので、10−1molより多く用いない方がよい。
【0075】
<<(D)充填剤>>
本発明における(D)成分である充填剤については、特に制限はなく、任意のものが使用できる。具体的には、特開2006−291073号公報 段落[0134]記載の各種充填剤が挙げられる。
【0076】
補強性を特に目的として添加する場合には、ヒュームドシリカ、湿式法シリカ等の微粉シリカが好ましい。これらの中でも粒子径が50μm以下であり、比表面積(BET法(不活性気体の低温低湿物理吸着)による)が80m/g以上のものが補強性の効果から好ましい。補強性シリカのより具体的な例としては、特に限定されないが、ヒュームドシリカである日本アエロジル社およびデグッサ社のアエロジル(Aerosil)、トクヤマ社のレオロシール、エクセリカ、キャボット社のCab−O−Sil、フランソル社のFransil、PPG社のArc Silica、湿式法シリカである東ソー・シリカ社のニップシール(Nipsil)Nipgel、トクヤマ社のトクシール、ファインシール、デグッサ社のカープレックス、Ultrasil、Sipernat、富士シリシア社のサイリシア、サイロホービック、水澤化学社のミズカシル、WRグレイス社のSyloid、SCM社のSilcron、クロスフィールド社のGasil等が挙げられる。
【0077】
補強性シリカの表面は、オルガノシラン、オルガノシラザン、ジオルガノシクロポリシロキサン等で表面処理されたものを用いることもできるが、表面処理シリカを用いた場合には得られる硬化性組成物の流動性が低いために成形時にはバリが発生しにくいといった好適な結果が得られるが、硬化性組成物を製造する場合には、泡を巻き込みやすく、また一旦巻き込まれた泡の除去が困難であるという問題がある。また、表面処理シリカは処理されていないシリカ(表面無処理シリカ)より一般的に高価であることから、用いるシリカの表面処理率は低いことが好ましく、好ましくは70%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは表面処理を施していないシリカ(表面無処理シリカ)である。表面無処理シリカを使用すると、得られる硬化性組成物の流動性が良好で製造時における泡の巻き込みが少なく、巻き込まれた泡の除去も容易となる利点を奏する。
【0078】
この補強性シリカの添加量としては特に制限はないが、(A)成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは0.5〜80重量部、さらに好ましくは1〜50重量部である。配合量が0.1重量部未満の場合には、補強性の改善効果が充分でないことがあり、100重量部を越えると該硬化性組成物の作業性が低下したりすることがある。また、当該補強性シリカは単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。また、表面処理シリカと表面無処理シリカを任意の割合で混合して用いてもよい。
【0079】
補強性がさほど重要でない場合には、特に限定されないが特開2006−291073公報 段落[0136]記載の充填剤が挙げられる。これら充填剤のうちでは、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等が、入手が容易である点から好ましい。
【0080】
特に、これら充填剤で硬度の高い硬化物を得たい場合には、主に結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、膠質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー及び活性亜鉛華等から選ばれる充填剤を添加できる。
【0081】
更に、炭酸カルシウムは、表面処理剤を用いて表面処理を施してあるものを用いることができる。表面処理炭酸カルシウムを用いた場合、表面処理していない炭酸カルシウムを用いた場合に比較して、本発明の組成物の成形時における流動性を改善する。
【0082】
前記の表面処理剤としては、特開2005−232419公報 段落[0161]記載の表面処理剤が挙げられる。
【0083】
この表面処理剤の処理量は、炭酸カルシウムに対して、0.1〜20重量%の範囲で処理するのが好ましく、1〜5重量%の範囲で処理するのがより好ましい。処理量が0.1重量%未満の場合には、作業性の改善効果が充分でないことがあり、20重量%を越えると、該硬化性組成物の貯蔵安定性が低下することがある。
【0084】
一方、重質炭酸カルシウムを配合物の低粘度化や増量、コストダウン等を目的として添加することがあるが、この重質炭酸カルシウムを用いる場合は特開2005−232419公報段落[0163]記載のものを使用することができる。
【0085】
上記、補強性シリカ以外の充填剤は、目的や必要に応じて単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、補強性シリカと併用してもよい。補強性シリカ以外の充填剤を用いる場合の添加量は、(A)成分100重量部に対して、充填剤を5〜1000重量部の範囲で使用するのが好ましく、20〜500重量部の範囲で使用するのがより好ましく、40〜300重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。配合量が5重量部未満の場合には、硬化物の破断強度、破断伸び、硬度の改善効果が充分でないことがあり、1000重量部を越えると該硬化性組成物の流動性や製造時の作業性が低下することがある。
【0086】
<<その他添加剤>>
本発明の硬化性組成物は、上記(A)、(B)、(C)、(D)成分を含有してなるものであるが、物性を調整するために、さらに各種の添加剤、例えば、硬化調整剤、金属石鹸、微小中空粒子、可塑剤、接着性付与剤、溶剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、光硬化性樹脂等を、必要に応じて適宜配合してもよい。これらの各種添加剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
<硬化調整剤>
本発明の硬化性組成物には、貯蔵安定性と硬化性のバランスを両立させるために、必要に応じて硬化調整剤をさらに含有させることができる。
硬化調整剤としては、特に制限はなく、任意のものが使用できるが、脂肪族不飽和結合を含む化合物であることが好ましい。
【0088】
脂肪族不飽和結合を含む化合物としては、例えば、
【0089】
【化4】

(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数6〜10のアリール基を表し、両者は相互に連結していてもよい。)で示されるアセチレンアルコール類が例示される。特に、これらアセチレンアルコール類においては、RあるいはRのかさ高さが貯蔵安定性に大きく関与しており、RあるいはRがかさ高いものが高温での貯蔵安定性に優れることから好ましい。しかし、かさ高いものになりすぎると、貯蔵安定性には優れるものの、硬化性が悪くなるという欠点があり、貯蔵安定性と硬化性のバランスのとれたアセチレンアルコールを選ぶことが重要である。
【0090】
貯蔵安定性と硬化性のバランスのとれたアセチレンアルコール類の例としては、特開2005−232419公報 段落[0143]記載のアセチレンアルコール類が挙げられる。これらの中でも、入手性の点から、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールがより好ましい。
【0091】
アセチレンアルコール類以外の高温での貯蔵安定性を改良する脂肪族不飽和結合を含む化合物としては、特開2005−232419公報 段落[0144]〜段落[0152]に記載の化合物等が挙げられる。
【0092】
硬化調整剤の使用量としては、(A)成分及び(B)成分に均一に分散する限りにおいては、ほぼ任意に選ぶことができるが、(C)ヒドロシリル化触媒に対して、2〜10000モル当量の範囲で用いることが好ましい。より好ましくは5〜1000モル当量の範囲である。2モル当量より少ない場合には、貯蔵安定性が不十分となる場合があり、10000モル当量を超える場合は、硬化が遅くなる傾向がある。
また、硬化調整剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
<金属石鹸>
本発明の硬化性組成物には、金型離型性を高めるために必要に応じて金属石鹸をさらに含有させることができる。
【0094】
金属石鹸については、特に制限はなく、任意のものが使用できる。金属石鹸とは、一般に長鎖脂肪酸と金属イオンが結合したものであり、脂肪酸に基づく無極性あるいは低極性の部分と、金属との結合部分に基づく極性の部分を一分子中に合わせて持っていれば使用できる。
【0095】
長鎖脂肪酸としては、例えば炭素数1〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、入手性の点から炭素数1〜18の飽和脂肪酸が好ましく、離型性の効果の点から炭素数6〜18の飽和脂肪酸が特に好ましい。
【0096】
金属イオンとしては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム)、亜鉛、鉛、コバルト、アルミニウム、マンガン、ストロンチウム等が挙げられる。
【0097】
金属石鹸をより具体的に例示すれば、特開2005−232419公報 段落[0155]記載の金属石鹸が挙げられる。
【0098】
これらの金属石鹸の中では、入手性、安全性の点からステアリン酸金属塩類が好ましく、特に経済性の点から、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛からなる群から選択される1つ以上のものが最も好ましい。
【0099】
この金属石鹸の添加量としては特に制限はないが、通常(A)成分100重量部に対して0.025〜5重量部の範囲で使用することが好ましく、0.05〜4重量部使用するのがより好ましい。配合量が5重量部より多いと硬化物の物性が低下する傾向があり、0.025重量部より少ないと金型離型性が得られにくい傾向がある。
【0100】
<微小中空粒子>
物性の大きな低下を起こすことなく軽量化、低コスト化を図ることを目的として、微小中空粒子を上述の補強性充填剤に併用して添加することができる。
【0101】
このような微小中空粒子(以下において、「バルーン」と称することがある。)には、特に限定はされないが、「機能性フィラーの最新技術」(CMC)に記載されているように、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下の無機質あるいは有機質の材料で構成された中空体(無機系バルーンや有機系バルーン)が挙げられる。特に、真比重が1.0g/cm以下である微小中空体を用いることが好ましく、更には0.5g/cm以下である微小中空体を用いることが好ましい。
【0102】
前記無機系バルーン及び有機系バルーンとしては、特開2005−232419公報段落[0168]〜段落[0170]に記載されているバルーンを使用することができる。
【0103】
上記バルーンは単独で使用しても良く、2種類以上混合して用いても良い。さらに、これらバルーンの表面を脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン、ロジン酸リグニン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤、ポリプロピレングリコール等で、分散性及び配合物の作業性を改良するために処理したものも使用することができる。これらのバルーンは、配合物を硬化させた場合の物性のうち、柔軟性及び伸び・強度を損なうことなく、軽量化させコストダウンするために使用される。
【0104】
バルーンの添加量は、特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、更に好ましくは0.1〜30重量部の範囲で使用できる。この量が0.1重量部未満では軽量化の効果が小さく、50重量部より多いとこの配合物を硬化させた場合の機械特性のうち、引張強度の低下が認められることがある。また、バルーンの比重が0.1以上の場合は、その添加量は好ましくは3〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部である。
【0105】
<可塑剤>
本発明で用いられる硬化性組成物には、必要に応じて可塑剤を配合することができる。
【0106】
可塑剤としては特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の目的により、例えば、特開2005−232419公報 段落[0173]記載の可塑剤が挙げられる。
【0107】
これらの中では、粘度の低減効果が顕著であり、耐熱性試験時における揮散率が低いという点から、ポリエステル系可塑剤、ビニル系重合体が好ましい。なかでも数平均分子量500〜15000の重合体である高分子可塑剤が、添加することにより、該硬化性組成物の粘度及び該組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸び等の機械特性が調整できるとともに、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持できるため好適である。なお、限定はされないがこの高分子可塑剤は、官能基を有しても有しなくても構わない。
【0108】
上記高分子可塑剤の数平均分子量は、500〜15000と記載したが、より好ましくは800〜10000であり、さらに好ましくは1000〜8000である。分子量が低すぎると熱にさらされたり液体に接した場合に可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できないことがある。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が低下する傾向がある。
【0109】
これらの高分子可塑剤のうちで、(A)成分と相溶するものが好ましい。(A)成分としてビニル系重合体を使用する場合には、中でも相溶性及び耐候性、耐熱老化性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でも(メタ)アクリル系重合体がより好ましく、アクリル系重合体がさらに好ましい。このアクリル系重合体の合成法は、従来からの溶液重合で得られるものや、無溶剤型アクリルポリマー等を挙げることができる。後者のアクリル系可塑剤は溶剤や連鎖移動剤を使用せず高温連続重合法(USP4414370、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、USP5010166)にて作製されるため、本発明の目的にはより好ましい。その例としては特に限定されないが、東亞合成品UPシリーズ等が挙げられる(工業材料1999年10月号参照)。勿論、他の合成法としてリビングラジカル重合法をも挙げることができる。この方法によれば、その重合体の分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことから好ましく、更には原子移動ラジカル重合法がより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0110】
高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.8未満が好ましい。1.7以下がより好ましく、1.6以下がなお好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
【0111】
上記高分子可塑剤を含む可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、必ずしも必要とするものではない。また必要によっては高分子可塑剤を用い、物性に悪影響を与えない範囲で低分子可塑剤を更に併用しても良い。
【0112】
なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
【0113】
可塑剤を用いる場合の使用量は、限定されないが、(A)成分100重量部に対して、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは5〜100重量部である。1重量部未満では可塑剤としての効果が発現しにくい傾向があり、200重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する傾向がある。
【0114】
上記可塑剤以外に、本発明においては、次に述べる反応性希釈剤を用いても構わない。
【0115】
反応性希釈剤としては、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基又はアルキニル基を有する有機化合物が挙げられる。この有機化合物は、硬化前の組成物の粘度を低下させるとともに、硬化反応時にはヒドロシリル基含有化合物(II)のSiH基とヒドロシリル化反応により結合し、結局網目構造に取り込まれるものである。
【0116】
このため本発明においては、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基又はアルキニル基を有する有機化合物であれば特に制限はないが、本発明の(A)成分としてビニル系重合体を使用する場合は、ビニル系重合体との相溶性が良好であるという観点から、エステル基等の極性基をもった化合物が好ましい。また分子量は低いほど相溶し易くなるため好ましいが、充分相溶するものであれば、ある程度分子量が高くても構わない。また、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の特徴である耐熱老化性、耐候性等の観点からは、この反応性希釈剤中にはヒドロシリル化に対する活性の低い炭素−炭素不飽和結合を有さないことが更に好ましい。
【0117】
また、反応性希釈剤として、硬化養生中に揮発し得るような低沸点の化合物を用いた場合は、硬化前後で形状変化を起こしたり、揮発物により環境にも悪影響を及ぼしたりすることから、常温での沸点が100℃以上である有機化合物が特に好ましい。
反応性希釈剤の具体例としては、1−オクテン、4−ビニルシクロヘキセン、酢酸アリル、1,1−ジアセトキシ−2−プロペン、1−ウンデセン酸メチル、8−アセトキシ−1,6−オクタジエン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
反応性希釈剤の添加量は、有機重合体(I)とヒドロシリル基含有化合物(II)とのヒドロシリル化反応による3次元的架橋構造の形成を妨げない範囲内であれば、特に制限はない。反応性希釈剤の添加量が過剰になった場合、ヒドロシリル基含有化合物(II)のSiH基は反応性希釈剤の不飽和基とのヒドロシリル化反応により消費されてしまい、有機重合体(I)による3次元架橋構造の形成が不充分になることがある。特に限定されるわけではないが、具体的には、反応性希釈剤の添加量は、(A)成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは0.5〜70重量部、さらに好ましくは1〜50重量部である。
【0119】
<溶剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて溶剤を配合することができる。
配合できる溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
【0120】
<接着性付与剤>
本発明の硬化性組成物を成形ゴムとして単独で使用する場合には、特に接着付与剤を添加する必要はないが、異種基材との二色成形等に使用する場合には、有機重合体(I)とヒドロシリル基含有化合物(II)との架橋反応を著しく阻害せず、また得られる硬化物物性に著しい影響を及ぼさない程度に接着性付与剤を添加することが可能である。
【0121】
配合できる接着性付与剤としては、硬化性組成物に接着性を付与するものであれば特に限定されないが、架橋性シリル基含有化合物が好ましく、更にはシランカップリング剤が好ましい。これらを具体的に例示すると、特開2005−232419公報 段落[0184]記載の接着性付与剤が挙げられる。
【0122】
また、ヒドロシリル化反応を阻害しない範囲において、分子中にエポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、カルバメート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、ハロゲン基、(メタ)アクリル基等の、炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤を用いることができる。これらを具体的に例示すると、特開2005−232419公報 段落[0185]記載の炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基あるいは(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン類がより好ましい。
【0123】
これらは、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0124】
シランカップリング剤以外の接着性付与剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0125】
また、接着性を更に向上させるために、架橋性シリル基縮合触媒を上記接着性付与剤とともに併用することができる。架橋性シリル基縮合触媒としては、例えば、特開2005−232419公報 段落[0187]記載されているものが挙げられる。
【0126】
上記接着性付与剤は、(A)成分100重量部に対して、0.01〜20重量部配合するのが好ましい。0.01重量部未満では接着性の改善効果が小さく、20重量部を越えると硬化物物性が低下し易い傾向がある。より好ましくは0.1〜10重量部であり、更に好ましくは0.5〜5重量部である。
上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0127】
<酸化防止剤>
本発明の硬化性組成物には、得られる硬化物の耐熱性を高めるために、各種酸化防止剤を必要に応じて用いてもよい。これらの酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤、二次酸化防止剤としてリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0128】
フェノール系酸化防止剤は、特に制限はなく、任意のものが使用できるが、耐熱老化性の点から分子内にヒンダードフェノール構造あるいは片ヒンダードフェノール構造を有するフェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの化合物を具体的に例示すれば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(又はジ又はトリ)(αメチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、トリス−[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ブチリデン−1,1−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−4ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)−エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、等が挙げられる。
【0129】
これらのフェノール系酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。耐熱老化性がより向上する点から、フェノール系酸化防止剤の分子量が600以上であるテトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス−[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、がより好ましい。
【0130】
フェノール系酸化防止剤の使用量としては特に制限はないが、(A)成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。配合量が0.1重量部未満の場合には、耐熱老化性の改善効果が充分でないことがあり、10重量部を越えると経済的に不利であるばかりでなく、逆に耐熱性が劣化してしまう場合がある。
【0131】
アミン系酸化防止剤については、特に制限はなく、任意のものが使用できる。アミン系酸化防止剤としては、アミン−ケトン系化合物、芳香族系アミン化合物、およびフェニレンジアミン系化合物が例示される。アミン−ケトン系化合物としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物等が挙げられる。芳香族系アミン化合物としては、ナフチルアミン系酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤、およびp−フェニレンジアミン系酸化防止剤が挙げられ、これらの化合物を具体的に例示すれば、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’−ジスチリルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、ジフェニルアミンとジイソブチレンの反応物、アルキル化ジフェニルアミン、p−イソプロポキシ−ジフェニルアミン、ビス(フェニル−イソプロピリデン)−4,4−ジフェニルアミン、4−(α−フェニルエチル)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α−フェニルエチル)ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミン、ジ−tert−ブチルジフェニルアミン、ジフェニルアミン誘導体等のジフェニルアミン系酸化防止剤;N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニルジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、4−(アニリノフェニル)メタクリルアミド、4−(メルカプトアセトアミド)ジフェニルアミン、2−〔(メルカプトアセチル)オキシ〕エチル−3−[〔4−(フェニルアミノ)フェニル〕アミノ]ブタネート、N,N’−ビス(1−メチルへプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N‘−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロへキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,4,6−トリス(N−1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミノ)1,3,5−トリアジン、ジアリル−p−フェニレンジアミン混合物、フェニル−オクチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性に優れる点から、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等が好ましく、入手性、硬化物表面へのブリードが少ない点から、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミンがより好ましい。
【0132】
アミン系酸化防止剤の使用量としては特に制限はないが、(A)成分100重量部に対し、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部用いることがより好ましい。配合量が0.1重量部未満の場合には、耐熱性の改善効果が充分でないことがあり、10重量部を越えると経済的に不利であるばかりでなく、硬化性に劣ったり、逆に耐熱性が劣化してしまう場合がある。上記アミン系酸化防止剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い
二次酸化防止剤として用いられる、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤は、特に制限はなく、任意のものが使用できるが、リン系酸化防止剤やチオール含有化合物が硬化性に影響を与えることからチオエーテル構造を分子内に有するイオウ系酸化防止剤が好ましい。これらの化合物を具体的に例示すれば、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジラウリル−チオジプロピオネート、ビス{2−メチル−4−[3−n−アルキル(C12またはC14)チオプロピオニルオキシ]−5−tert−ブチルフェニル}スルフィド、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−チオジプロピオネート、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジブチルメチレン−ビス−チオグルコレート等が挙げられる。
【0133】
これらのイオウ系酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。耐熱老化性がより向上する点から、イオウ系酸化防止剤の分子量が1000以上であるペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)がより好ましい。
【0134】
イオウ系酸化防止剤の使用量としては特に制限はないが、(A)成分100重量部に対し、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部用いることがより好ましい。配合量が0.1重量部未満の場合には、耐熱老化性の改善効果が充分でないことがあり、10重量部を越えると硬化性に影響を与える場合がある。
【0135】
一次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤と二次酸化防止剤であるイオウ系酸化防止剤の使用比は特に制限はないが、より効果的に耐熱老化性を向上させるという点から、フェノール系酸化防止剤またはアミン系酸化防止剤/イオウ系酸化防止剤の比が0.1〜10の範囲にあることが好ましく、0.3〜3であることが特に好ましい。
【0136】
<<硬化性組成物の製造方法>>
本発明の製造方法は、上述の(A)〜(D)成分を含有する硬化性組成物を製造する方法において、(A)成分および(D)成分を、減圧条件下、90℃以上に加熱しながら混合する工程(以下、単に「加熱減圧混合」と称することがある。)を含むことを特徴とする。この加熱減圧混合を行うことによって、圧縮永久ひずみが小さい硬化物を与えうる硬化性組成物を製造できる。
【0137】
本発明の製造方法の加熱減圧混合においては、減圧かつ加熱条件下で混合すること、具体的には、混練機内を減圧にしながら加熱・混合することが必要である。
【0138】
本発明の製造方法の加熱減圧混合における加熱((A)成分および(D)成分を投入した後の加熱減圧混合時における加熱)は、混練機内の温度を90℃以上にすればよく、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。130℃以上に加熱すると、得られる硬化性組成物の硬化物が二次加流を実施しない場合においても圧縮永久歪み特性が改善され、さらに180℃以上に加熱すると、二次加流を実施しない場合における圧縮永久歪み特性がさらに改善されるという効果を奏する。90℃より低い温度に加熱した場合は、(A)成分および(D)成分の混合物の粘度が高いため、混合翼がより丈夫なものが必要となり、混練時の攪拌所用動力が大きくなったり、また混合に必要な時間が長くなったりなど生産性に劣るものとなる。(A)成分は温度が高くなるほど低粘度となるため、加熱減圧混合を高温で実施すればするほど、混練に必要なエネルギーは小さくなり、処理時間も短くすることが可能であるが、あまりに高温にすると(A)成分自身が熱により分解し始める恐れがあることや、加熱減圧混合操作の後に他の配合剤を混練するための準備工程に必要な冷却工程が長くなることから250℃以下で実施することが好ましい。
【0139】
本発明の製造方法の加熱減圧混合工程は、減圧条件下で行われればよいが((A)成分および(D)成分を投入した後の加熱減圧混合時における減圧)、特に限定するわけではなく、具体的な減圧条件を言えば、好ましく常圧に対する減圧度で−0.090MPa以下が、より好ましくは−0.100MPa以下であり、さらに好ましくは−0.1005MPa以下である。減圧度が−0.090MPaより高い場合は、得られる硬化物の圧縮永久歪改善の硬化が不十分である傾向がある。
【0140】
本発明の製造方法の加熱減圧混合における「混合」とは、異なる成分を混ぜ合わさる操作であればよく、例えば、容器を回転することによる混合、攪拌による混合、機械的剪断力を加えて均一に混合する混練操作も含まれる。(A)および(D)を混合するには、硬化性組成物を調製する際に通常使用される、公知の混練機を使用することができる。特に限定されるわけではないが、例えばバンバリーミキサー、ドゥミキサー(ニーダーミキサー)、プラネタリーミキサー、品川式攪拌機等の回分式混練機、あるいは一軸あるいは二軸の連続混合機などの密閉可能な混練機を使用することができる。
【0141】
本発明の製造方法の加熱減圧混合工程における、混合時間など操作時のその他条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、装置の容量や加熱能力、混合能力などに応じて、適宜設定できる。
【0142】
本発明の製造方法の加熱減圧混合工程では、(A)成分と(D)成分とを混合(混練)するものであるが、さらに(B)成分、(C)成分、上述した添加剤を投入して混合してもよい。ただし、加熱減圧混合工程において、さらに(B)成分や(C)成分を添加して混合する場合、ヒドロシリル化反応が進行しないように混練機内の温度を調整することが好ましい。
【0143】
本発明の製造方法においては、上記加熱減圧混合後、混合物を冷却することが好ましい。具体的には、加熱減圧混合後の混練機内の温度を冷却することが好ましい。加熱減圧混合後においては混練機内の温度が上昇しているために、混合物も温度が上昇しており、当該混合物に(C)成分や(B)成分を配合させると、(C)成分のヒドロシリル化触媒が失活したり、(B)成分および(C)成分の添加により混練機内で、(A)成分と(B)成分との反応により増粘またはゲル化を引き起こしてしまったりする場合があるためである。本発明の製造方法における加熱減圧混合後の冷却温度は、上記不具合が発生しない温度であればよく、特に限定するわけではないが、具体的な温度条件を言えば、好ましく130℃以下が、より好ましくは120℃以下が、さらに好ましくは100℃以下である。
【0144】
本発明の製造方法では、上記加熱減圧工程を硬化性組成物の調製時の工程に含めればよく、(B)成分、(C)成分、他の成分の混合・混練操作や、混合物の脱泡操作など通常の硬化性組成物の調製時に行う工程・操作を適宜必要に応じて行えばよい。
【0145】
本発明の製造方法の好ましい一実施態様として、混練機内に(A)成分および(D)成分を投入し、90℃以上の加熱、および常圧に対する減圧度で−0.09MPa以下の減圧下で混合を行った後に、130℃以下まで冷却し、(B)成分あるいは(C)成分を投入・混合する方法が挙げられる。
【0146】
本発明の製造方法の好ましい一実施態様として、加熱減圧混合を130℃以上で実施する場合、(A)成分および(D)成分に加えて(B)成分、あるいは(C)成分が存在すると、(B)成分と(A)成分の反応による混練機内での増粘あるいはゲル化を引き起こしたり、(C)成分が失活したりするといった問題が発生する場合がある。従って、加熱減圧混合を130℃以上で実施する場合、(B)成分、あるいは(C)成分を加える前に130℃以下に冷却することが必要である。一方、加熱減圧混合を130℃以下で実施する場合には、(A)成分、(D)成分に加えて、(B)成分あるいは(C)成分を投入してから、加熱減圧混合を行ってもよく、(A)成分と(D)成分を加熱減圧混合後に(B)成分あるいは(C)成分を投入してもよい。しかし、(A)成分、(B)成分、(C)成分が混合された状態で加熱されると硬化反応が進行することから、この三成分を混合した状態では90℃以上に加温することは避けたほうがよい。
【0147】
<<硬化物の作製方法>>
本発明の製法で得られる上記硬化性組成物より得られる硬化物について、以下に説明する。
【0148】
本発明においては、ヒドロシリル化触媒を用いたアルケニル基に対するSiH基の付加反応によって硬化性組成物が硬化するので、硬化速度が非常に速く、ライン生産を行う上で好都合である。特に、熱硬化させる温度は、100℃〜180℃の範囲内が好ましい。本発明の硬化性組成物は、貯蔵安定性に優れているため、100℃より低い温度では硬化反応はほとんど進行しないが、100℃程度以上になると、急激にヒドロシリル化反応が進行し、短い時間で硬化物を得ることができる。
【0149】
本発明の硬化性組成物は、比較的高温でも貯蔵安定性に優れることから、組成物をより低い粘度で扱うことが可能となり、高温での液状射出成形等に好適である。
【0150】
本発明の硬化性組成物を流動させる際には、20℃以上100℃未満の温度で行うのが好ましいが、40℃以上80℃未満の温度で流動させることがより好ましい。
【0151】
また、本発明の硬化性組成物は20℃以上100℃未満の温度で流動させるとともに、さらに20℃以上で流動させながら硬化反応を行うことができる。即ち本発明の硬化性組成物を、液状射出成形(LIM等)用樹脂として用いることも可能である。
【0152】
本発明で用いられる硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合保存し、硬化時に加熱することで硬化する1成分型として調製しても良く、長期に渡る貯蔵安定性を確保する場合には、二液、あるいは三液以上の形態として調製し、硬化前に混合して使用してもよい。
【0153】
二液の形態として調製する場合、配合成分をどのように分割するかは特に制限はないが、より長期の貯蔵安定性を求める場合には、(B)ヒドロシリル基含有化合物と(C)ヒドロシリル化触媒を分割し、一方の配合液(a液と称する)には、(A)成分のポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体と(D)成分の充填剤との混合物に(C)成分のヒドロシリル化触媒を配合し、他方の配合液(b液と称する)には(A)成分のポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体と(D)成分の充填剤との混合物に、(B)成分のヒドロシリル基含有化合物を配合することが望ましい。硬化調整剤、金属石鹸、可塑剤、老化防止剤等は、a液、b液いずれに配合してもよい。各成分の安定性を考慮し、硬化調整剤、金属石鹸をb液に配合した方がよい場合がある。混合時の作業性がよくなることから、a液、b液は当量混合すればよいように各液の配合材料を調整することが好ましく、また両液の粘度は同程度になるように調整することがより好ましい。
【0154】
<<成形方法>>
本発明の硬化性組成物を成形体として用いる場合の成形方法としては、特に限定されず、一般に使用されている各種の成形方法を用いることができる。例えば、注型成形、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、押し出し成形、回転成形、中空成形、熱成形等が挙げられる。特に自動化、連続化が可能で、生産性に優れるという観点から射出成形によるものが好ましい。
【0155】
<<用途>>
本発明の硬化性組成物は、特に限定はされないが、自動車用材料、電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材等の電気絶縁材料、コーティング材、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、ガスケット、オイルシール、Oリング、パッキン、ホース・チューブ類、ロール、ダイヤフラム、注型材料、各種成形材料等の様々な用途に利用可能である。
【0156】
更に、本発明の硬化性組成物から得られたゴム弾性を示す成形体は、ガスケット、パッキン類を中心にシール材用途にも適用できる。
【0157】
例えば自動車分野では、ボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジン及びサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、トランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、エアダクトホース、ターボインタークーラーホース、ホットエアーホース、ラジエターホース、パワーステアリングホース、燃料ホース、ドレインホース等の冷却用、燃料供給用、吸気及び排気用等のホース類、エンジンカムカバーやオイルパンのガスケット、オイルポンプ用ガスケット、パワーステアリングベーンポンプ用ガスケット、インテークマニホールド用ガスケット、スロットルボディ用ガスケット、コンプレッサー用ガスケット、タイミングベルトカバー用ガスケット、クランクシャフトシールガスケット、カムシャフトシールガスケット、トランスミッションシールガスケット、等のガスケット類、各種Oリング、オイルシール、パワーステアリングシールベルトカバーシール、シールワッシャ−、オイルレシーバ、プラグチューブシール、スクイーズパッキン、リップシールパッキン、ボアプラグ、インジェクションパイプシール、ブレーキドラムシール、ワイヤーハーネス等のコネクタシール、オイルレベルゲージ、ブリーザ、バルブ、ダイアフラム等各種ゴム部品、燃料噴射装置、燃料加熱装置、エアダンパ、圧力検出装置、熱交換器用樹脂タンクのオイルクーラー、可変圧縮比エンジン、シリンダ装置、圧縮天然ガス用レギュレータ、圧力容器、筒内直噴式内燃機関の燃料供給システムもしくは高圧ポンプ用のOリング、イグナイタHICもしくは自動車用ハイブリッドIC用のボッティング材、等速ジョイントブーツ材及びラック&ピニオンブーツ材、エンジンコントロール基板用のコーティング材、モール、ヘッドランプレンズ、サンルーフシールもしくはミラー用の接着剤に使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。
【0158】
電気分野では、コーティング、ポッティング、パッキン、Oリング、ベルト等に使用できる。具体的には、高電圧用厚膜抵抗器、ハイブリッドICの回路素子、HIC、電気絶縁部品、半導電部品、導電部品、モジュール、印刷回路、セラミック基板、ダイオード、トランジスタもしくはボンディングワイヤーのバッファー材、半導電体素子、または光通信用オプティカルファイバー等のコーティング材、トランス高圧回路、プリント基板、可変抵抗部付き高電圧用トランス、電気絶縁部品、半導電部品、導電部品、太陽電池またはテレビ用フライバックトランス等のポッティング材、重電部品、弱電部品、太陽電池の裏面封止、電気・電子機器の回路や基板等のシーリング材、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シール等、燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管等、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリー等のゴム部品が挙げられる。また、ブラウン管ウェッジ、ネック、電気絶縁部品、半導電部品または導電部品等の接着剤、電線被覆の補修材、電線ジョイント部品の絶縁シール材、OA機器用ロール、インク用ワイパ、振動吸収剤、ゲル等にも使用できる。
【0159】
建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材等に使用できる。
【0160】
スポーツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等、スポーツシューズとして靴底材、中底材等、球技用ボールとしてゴルフボール等に使用できる。
【0161】
防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。
【実施例】
【0162】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0163】
なお、下記実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
(製造例1)
各原料の使用量を表1に示す。
【0164】
(1)重合工程
アクリル酸エステル(共重合する場合には予め所定量混合されたアクリル酸エステル)を脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅、全アクリル酸エステルの一部(表1では初期仕込みモノマーとして記載)を仕込み、加熱攪拌した。アセトニトリル(表1では重合用アセトニトリルと記載)、開始剤としてジエチル2,5−ジブロモアジペートを添加、混合し、混合液の温度を約80℃に調節した段階でペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸エステル(表1では追加用モノマーとして記載)を逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合時に使用したトリアミンの総量を重合用トリアミンとして表1に示す。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で揮発分を減圧脱揮して除去し、重合体濃縮物を得た。
【0165】
(2)ジエン反応工程
上記濃縮物に1,7−オクタジエン(以下ジエン若しくはオクタジエンと略す)、アセトニトリル(表1ではジエン反応用アセトニトリルと記載)を添加し、トリアミン(表1ではジエン反応用トリアミンと記載)を追加した。内温を約80℃〜約90℃に調節しながら数時間加熱攪拌させて、重合体末端にオクタジエンを反応させた。アセトニトリル及び未反応のオクタジエンを減圧脱揮して除去し、末端にアルケニル基を有する重合体を含有する濃縮物を得た。
【0166】
(3)粗精製工程
上記濃縮物をトルエンで希釈し、ろ過助剤、吸着剤(キョーワード700SEN:協和化学製)、ハイドロタルサイト(キョーワード500SH:協和化学製))を添加し、80〜100℃程度に加熱攪拌した後、固形成分をろ別した。ろ液を濃縮し、重合体粗精製物を得た。
【0167】
(4)高温加熱処理・吸着精製工程
重合体粗精製物、熱安定剤(スミライザーGS:住友化学(株)製)、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加し、減圧脱揮、加熱攪拌しながら昇温し、約170℃〜約200℃の高温状態で数時間程度加熱攪拌、減圧脱揮を行なった。吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)、を追加し、重合体に対して約10重量部のトルエンを添加し、約170℃〜約200℃の高温状態で更に数時間程度加熱攪拌した。
【0168】
処理液を更にトルエンで希釈し、吸着剤をろ別した。ろ液を濃縮し、両末端にアルケニル基を有する重合体[P1]を得た。得られた重合体の1分子あたりに導入されたアルケニル基数、数平均分子量、分子量分布を表1に示す。
【0169】
【表1】

(製造例2)
5Lの二口フラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で窒素下、加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)144μlの混合液を、50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。1−エチニル−1−シクロヘキサノール2.95mgを加えた後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、ヒドロシリル基含有化合物[B1]を得た。
【0170】
H−NMR分析(バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHzNMR装置)の測定により、ヒドロシリル基含有化合物[B1]は、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった(ヒドロシリル基含有化合物[B1]は混合物であるが、主成分として1分子中に9個のSiH基を有する下記化合物を含有する)。
【0171】
【化5】

(実施例1)
製造例1で得られたアルケニル末端共重合体[P1]100部と、充填剤としてシリカ(商品名:ニップシールLP、東ソー・シリカ製)を20部、アミン系酸化防止剤として、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:ノクラックCD、大内新興化学工業製)を2部配合し、井上製作所製2L2軸プラネタリーミキサーを用いてジャケット温度約90℃、減圧度−0.095MPa以下の加熱減圧下1時間混合した(以下、「ジャケット温度約90℃、減圧度−0.095MPa以下の加熱減圧下1時間混合」を単に「加熱減圧下1時間混合」と称することがある。)。その後、ジャケット温度60℃、常圧下の条件で、硬化調整剤として3,5−ジメチル−1−へキシン−3−オール(商品名:サーフィノール61、日信化学工業製)を、アルケニル末端共重合体[P1]のアルケニル基の7.5×10−2モル当量添加添加し15分攪拌した。続いて、0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体のイソプロパノール溶液(白金として3wt%含有)を白金換算でアルケニル末端共重合体[P1]のアルケニル基の5×10−4モル当量添加し15分攪拌した。さらに、ヒドロシリル基含有化合物[B1]を、[B1]のSiH基がアルケニル末端共重合体[P1]のアルケニル基の2.2モル当量分となる量を添加し15分攪拌した。最後にジャケット温度60℃、減圧度−0.095MPa以下の条件で減圧攪拌脱泡を5分間実施し、系中の気泡を除去した後、窒素で常圧に戻し硬化性組成物を得た。
【0172】
(実施例2)
プラネタリーミキサーにて、ジャケット温度約90℃に加温するかわりに、ジャケット温度約130℃に加温した以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0173】
(実施例3)
プラネタリーミキサーにて加熱減圧下1時間混合した後に、混合物を取り出し、エバポレーターを用いて180℃、減圧度−0.095MPa以下、1時間の加熱減圧混合操作を行い、混合物を再びプラネタリーミキサーに戻して、以後の操作を行った以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0174】
(実施例4)
プラネタリーミキサーにて加熱減圧下1時間混合した後に、混合物をセパラブルフラスコに移し、オイルバス中で180℃、減圧度−0.095MPa以下、4時間の加熱減圧混合操作を行い、混合物を再びプラネタリーミキサーに戻して、以後の操作を行った以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0175】
(実施例5)
プラネタリーミキサーにて、加熱減圧下1時間混合した後に、混合物を取り出し、180℃オーブン中にて22時間静置した後、混合物を再びプラネタリーミキサーに戻して、以後の操作を行った以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0176】
(比較例1)
プラネタリーミキサーにて、ジャケット温度約90℃、減圧度−0.095MPa以下の加熱減圧下1時間混合するかわりに、ジャケット温度約60℃にて減圧操作を実施することなく1時間混合した以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0177】
(比較例2)
実施例1において、プラネタリーミキサーにて、ジャケット温度約90℃、減圧度−0.095MPa以下の加熱減圧下1時間混合するかわりに、ジャケット温度130℃にて減圧操作を実施することなく1時間混合しようとしたが、ミキサー内の内圧が高まり、危険な状態となったため、以後の操作を中止した。結果として、硬化性組成物は得られなかった。
【0178】
上記実施例1〜5および比較例1〜2において得られた硬化性組成物について、各硬化性組成物の水分量および粘度、また、これら硬化性組成物から作製される硬化物の圧縮永久ひずみ及び硬度の測定を、次に記載する方法により実施した。各硬化性組成物の測定結果を表2に示す。
【0179】
(水分量)
得られた硬化性組成物中の水分を、京都電子工業製カールフィッシャー水分計MKA−610−STを用いて、カールフィッシャー容量滴定法により測定した。
【0180】
(粘度)
得られた硬化性組成物の粘度を、コーンプレート型粘度計(東京計器製E形粘度計EHD、3°×28φコーン)を用い、回転数0.5rpm、測定温度50℃の条件で測定開始10分後の読み取り値から測定した。
【0181】
(圧縮永久ひずみ)
得られた硬化性組成物を180℃で10分間プレス成形し、JIS K 6262に準じて圧縮永久ひずみ試験測定用大型試験片を作製した。得られた試験片群を二つに分け、一方には180℃22時間の二次加硫を行い、他方は二次加硫を行わずに二種類の試験片を調製した。得られた二種類の試験片を、JIS K 6262に準じて150℃で70時間の圧縮永久ひずみ試験を行った。
【0182】
(硬度)
上記圧縮永久ひずみの測定において得られた二種類の試験片(二次加流した試験片、二次加入しなかった試験片)を用いて、JIS K 6253に従い島津製作所製タイプAデュロメーターで硬度を測定した。
【0183】
【表2】

実施例と比較例の比較から以下のことが明らかである。(A)成分であるアルケニル基を両末端に有するビニル系重合体と(D)成分であるシリカ(ニップシールLP)を混合するにあたり、90℃で混合した場合(比較例1)では、得られる硬化物は発泡が著しく成形物としての用を成さない。さらに、130℃で混合した場合(比較例2)には、シリカ中の水分の揮発に起因すると思われる内圧の高まりが生じその後の操作が不可能であり、硬化性組成物を得ることすらできない。一方、加温と同時に減圧操作を実施した場合(実施例1、5)には、低水分量の硬化性組成物を得ることが可能で、得られる硬化物も硬度・圧縮永久歪特性に優れる。また、130℃以上で加熱減圧混合操作を実施すること(実施例2)により、二次加硫を実施しない場合の圧縮永久歪特性が改善される。さらに、180℃の高温下で、加熱減圧混合操作を実施すること(実施例3、4)により、二次加硫を実施しない場合の圧縮永久歪特性がさらに改善される。
【0184】
この二次加硫を実施しない場合の圧縮永久歪特性については、180℃に加熱し、減圧混合を実施した場合(実施例3,4)が、180℃の加熱のみで、減圧混合操作を実施しなかった場合(実施例5)に比較して、当該圧縮永久歪が大きく改善されたことから、単に高温で熱処理するだけはなく、高温に加熱することに加えて減圧混合操作を行なうことが、二次加硫後の圧縮永久歪特性のみならず、二次加硫を実施しない場合の圧縮永久歪特性においても優れた特性を発揮させることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の硬化性組成物の製造方法によれば、ヒドロシリル化反応により硬化し得る硬化性組成物おいて、圧縮永久歪の小さな硬化物を与えうる硬化性組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有する、ポリオキシアルキレン系重合体および/またはビニル系重合体、
(B)ヒドロシリル基含有化合物(II)、
(C)ヒドロシリル化触媒、および、
(D)充填剤
を含有する硬化性組成物を製造する方法であって、
(A)成分および(D)成分を、減圧条件下、90℃以上に加熱しながら混合する工程を含む、
硬化性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記加熱が180℃以上である、請求項1記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体が、炭化水素系重合体および/または(メタ)アクリル系重合体である、請求項1または2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体の分子量分布が1.8未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体の主鎖が(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を主として重合して製造される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体がアクリル系重合体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項8】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体がアクリル酸エステル系重合体である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項9】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体がアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−メトキシブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルからなる群から選ばれる少なくとも1種を主として重合して製造されるものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体の主鎖がリビングラジカル重合法により製造されるものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項11】
前記リビングラジカル重合が原子移動ラジカル重合である、請求項10に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項12】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体が、以下の工程:
(1a)ビニル系モノマーを原子移動ラジカル重合法により重合することにより、一般式(1)
−C(R)(R)(X) (1)
(式中、R及びRはビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基を示す。Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す。)
で示す末端構造を有するビニル系重合体を製造し、
(2a)前記重合体の末端ハロゲンを、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する置換基に変換する;
により得られるものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項13】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体が、以下の工程:
(1b)ビニル系モノマーをリビングラジカル重合法により重合することにより、ビニル系重合体を製造し、
(2b)前記重合体を、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物と反応させる;
により得られるものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項14】
前記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基が分子鎖の末端にある、請求項1〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項15】
前記(B)ヒドロシリル基含有化合物(II)がオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項16】
前記(D)充填剤がシリカである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項17】
前記(D)充填剤が表面無処理シリカである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の製造方法で得られる硬化性組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。

【公開番号】特開2009−84353(P2009−84353A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253915(P2007−253915)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】