説明

硬化性組成物

【課題】高い接着強度を有し、耐湿性が良好で、低臭気性を有し、生産性向上が図れる、携帯電話用のキートップとキーシートの接着に好適な硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)分子の末端、又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル化されたオリゴマー、及びモノマーで希釈した前記オリゴマーからなる群から選ばれる1種以上で、分子量が500から50000である多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー、(C)酸化防止剤、(D)光開始剤とを含有し、しかも(D)を5〜15質量%含有することを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、生産性向上を図るため低照度硬化性を有し、樹脂成形品とゴム材料の接着に対して接着性と耐湿性が良好、且つ低臭気性を与えることができる硬化性組成物とそれを用いた接着剤、硬化体、接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話分野では、樹脂製キートップ(以下、単に「キートップ」という。)とゴム製キーシート(以下、単に「キーシート」という)の接着において、従来からシリコーン系接着剤が使用されていたが、硬化時間が遅いこと、また、その問題を解決するために提案されている光硬化性接着剤も、高い積算照射量を要し接着に時間を要するため、生産性が低いだけでなく、接着性、耐湿性も十分ではない。また、キートップとキーシートの接着に使用される接着剤では、接着剤の臭気が使用者に不快感を与えることがあり問題となっていた。
【0003】
特許文献1および特許文献2では、ポリカーボネートウレタンアクリレートを含む接着剤組成物が提案されているが、硬化速度と硬化物の可とう性を両立させるために提案されたものであって、接着力、接着耐久性、臭気の問題を解決するものではなかった。特許文献3では、接着力、接着耐久性、低臭気性に優れた樹脂組成物が提案されているが、生産性は十分ではなかった。
【特許文献1】特公平7−047726号公報
【特許文献2】特開平6−145276号公報
【特許文献3】特開2006−104340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この様な公知技術の事情に鑑みてなされたもので、キートップとキーシートの接着に対し、高い接着強度を有し、耐湿性が良好な硬化性組成物、特に、低臭気性を有すると共に、生産性向上が図れる硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーと、酸化防止剤と、光開始剤とを含有する硬化性組成物が、前記の目的を達成し得ることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は、(A)〜(D)成分を含有することを特徴とする硬化性組成物であり、更に(E)成分を含有することを特徴とする前記の硬化性組成物であり、更に(F)成分を含有することを特徴とする前記の硬化性組成物であり、更に(G)成分を含有することを特徴とする前記の硬化性組成物であり、更に(H)成分を含有することを特徴とする前記の硬化性組成物である。
【0007】
尚、ここで、(A)成分は、分子の末端、又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル化されたオリゴマー、及びモノマーで希釈した前記オリゴマーからなる群から選ばれる1種以上で、分子量が500から50000である多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)成分は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー、(C)成分は、酸化防止剤、(D)成分は、光開始剤、(E)成分は、リン酸基またはリン酸基アミンハーフ塩を有する(メタ)アクリレート、(F)成分は、エポキシ系シランカップリング剤、(G)成分として1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを、(H)成分として分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレートである。
【0008】
本発明は、その好ましい実施態様に於いて、(A)成分を5〜80質量%、(B)成分を10〜70質量%、(C)成分を0.01〜5質量%、(D)成分を5〜15質量%、(E)成分を0.01〜10質量%、(F)成分を0.5〜20質量%、(G)成分を1〜10質量%、(H)成分を5〜40質量%含有することを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記の硬化性組成物からなることを特徴とする接着剤であり、硬化体であり、前記の接着剤を用いてなることを特徴とする接合体であり、接合体を構成する一部がゴム材料からなることを特徴とする接合体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性組成物は、分子の末端、又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル化されたオリゴマー、及びモノマーで希釈した前記オリゴマーからなる群から選ばれる1種以上で、分子量が500〜50000である多官能(メタ)アクリレートオリゴマーと、ヒドロキシアルキルアクリルアミドモノマーと、酸化防止剤と、および光開始剤とを含有しているので、光を照射されて硬化することが可能であり、しかも当該硬化時の積算照射量が低く、また低臭気性であるという特徴を有している。
【0011】
また、本発明の硬化性組成物は、前記特定な組成を有するので、例えばキートップとキーシートを初めとする被着体に対して、特に被着体が樹脂とゴムの場合に、高い接着強さを有し、耐湿性にも優れる特性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で使用する(A)成分は、分子の末端、又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル化されたオリゴマー、及びモノマーで希釈した前記オリゴマーからなる群から選ばれる1種以上で、分子量が500から50000である多官能(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0013】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子量が500〜50000であり、好ましくは3000〜45000である。分子量が500以上であれば、本発明の硬化性樹脂組成物にエネルギー線を照射して得られる硬化体の硬度が低すぎて接着剤層が形成し難くなることが防止される。一方、分子量が50000以下であれば、得られる樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、製造過程での混合等における作業性、或いは実用用途において当該樹脂組成物を用いる際の作業性に問題が生じることが防止される。なお、ここで言う分子量とは、数平均分子量であり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される。
【0014】
前記多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、前記水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート(例えば、日本合成社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」、ダイセル・サイテック社製「KRM7735」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−3310B」)、ビスA型エポキシ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0015】
(A)成分は、本硬化性組成物中5〜80重量%が好ましい。5重量%以上であれば十分な接着性が得られるし、80重量%以下であれば耐湿性も十分である。
【0016】
(B)成分はヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーである。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーは、分子内に少なくとも1個以上の(メタ)アクリルアミド構造及び少なくとも1個以上のヒドロキシル基を有する化合物である。
【0017】
ヒドロキシル基が存在しないアルキル(メタ)アクリルアミドの場合、例えば、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミドの場合、ヒドロキシル基が存在しないため、接着耐湿性が得られず、接合体であるゴム材料が、硬化した接着剤層から剥がれてしまう。
【0018】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー化合物としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチルアクリルアミド、ヒドロキシピバリル(メタ)アクリルアミド、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、等が挙げられ、特に好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0019】
(B)成分は、本硬化性組成物中10〜70重量%が好ましい。10重量%以上で耐湿性が十分に得られるし、70重量%以下で低照度硬化性が得られる。
【0020】
(C)成分は酸化防止剤である。酸化防止剤としてはフェノール系、ハイドロキノン系を使用でき、好ましくはフェノール系が用いられる。酸化防止剤としては、β―ナフトキノン、2−メトキシー1,4−ノフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が例示できる。
【0021】
(C)成分は、本硬化性組成物中0.01〜5重量%が好ましい。0.01重量%以上で保存安定性が十分であるし、5重量%以下で低照度硬化性が得られる。
【0022】
(D)成分は光開始剤である。光開始剤には紫外線重合開始剤や可視光重合開始剤等があるが、本発明に於いては、どちらも制限無く用いられる。紫外線重合開始剤にはベンゾイル系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系等があり、可視光重合開始剤にはアシルホスフィンオキサイド系、チオキサントン系、メタロセン系、キノン系等がある。ただし、揮発性が少ないものが好ましい。
【0023】
光開始剤としては、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル,ベンゾイン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1―プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル―2-ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられ、好ましくは(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1―プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。光開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
光開始剤の添加量は、5〜15質量%である。5質量%以上で接着耐湿性が十分であるし、15質量%以下で臭気が強くなることもない。
【0025】
本発明の硬化性組成物は、前記(A)〜(D)成分を必須成分として含有する。前記(A)〜(D)成分を含有する硬化性組成物は、これに光を照射されることにより硬化し、硬化時の積算照射量が低く、且つ低臭気性が良好で、例えばキートップとキーシートのような樹脂とゴムとからなる被着体に対して高い接着強さを有し、耐湿性にも優れる特性を示す。
【0026】
更に、本発明の硬化性組成物は、樹脂成形品とゴム材料への密着性を一層向上させることを目的に、(E)成分として、リン酸基またはリン酸基に存在するヒドロキシル基のうち1つがアミン類と酸塩基反応したアミンハーフ塩を有する(メタ)アクリレートを含有することができる。
【0027】
リン酸基またはリン酸基アミンハーフ塩を有する(メタ)アクリレートとしては、アシッドホスホキシ・エチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシ・ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクロイル・オキシエチル・アシッドホスフェート・モノエタノールアミン・ハーフ塩、アシッドホスホキシ・ポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくはアクロイル・オキシエチル・アシッドホスフェート・モノエタノールアミン・ハーフ塩、メタクロイル・オキシエチル・アシッドホスフェート・モノエタノールアミン・ハーフ塩等が、特に好ましくはメタクロイル・オキシエチル・アシッドホスフェート・モノエタノールアミン・ハーフ塩等が挙げられる。
【0028】
(E)成分は、本硬化性組成物中0.01〜10重量%が好ましい。0.01重量%以上で耐湿性が十分に得られ、10重量%以下で保存安定性が達成される。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、樹脂成形品とゴム材料への接着耐湿性を一層向上させることを目的に、(F)成分として、エポキシ系シランカップリング剤をさらに含有することができる。
【0030】
エポキシ系シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
(F)成分は、本硬化性組成物中0.5〜20重量%が好ましい。0.5重量%以上で耐湿性が十分に得られ、20重量%以下で保存安定性が良好である。
【0032】
本発明の硬化性組成物は、(G)成分として、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有することができる。1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する多官能性(メタ)アクリレートやエチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等の芳香族環構造を有する多官能性(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族分岐構造を有する多官能性(メタ)アクリレート、また、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10デカンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族構造を有する多官能性(メタ)アクリレート等がある。このうち1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10デカンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族構造を有する多官能性(メタ)アクリレートを用いることが好ましい
【0033】
(G)成分は、本硬化性組成物中1〜10重量%が好ましい。1重量%以上で耐湿性が十分に得られるし、10重量%以下で低照度硬化性が得られる。
【0034】
本発明の硬化性組成物は、樹脂成形品とゴム材料への密着性を一層向上させることを目的に、(H)成分として、分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレートをさらに含有することができる。
【0035】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が、特に好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
(H)成分は、本硬化性組成物中5〜40重量%が好ましい。5重量%以上で耐湿性が十分に得られるし、40重量%以下で低照度硬化性が十分に達成できる。
【0037】
本発明の硬化性組成物に於いて、好ましくは、(A)成分〜(H)成分について、(A)成分を5〜80質量%、(B)成分を10〜70質量%、(C)成分を0.01〜5質量%、(D)成分を5〜15質量%、(E)成分を0.01〜10質量%、(F)成分を0.5〜20質量%、(G)成分を1〜10質量%、(H)成分を5〜40質量%含有するとき、光の積算照射量が少なくても硬化し、低臭が低く、しかもキートップやキーシート等を初めとする樹脂とゴムからなる被着体に対して高い接着強さを有し、更に得られる硬化体、接合体は耐湿性にも優れているので、特に好ましい。
【0038】
なお、本発明の硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの各種エラストマー、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体などのグラフト共重合体、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤及び界面活性剤等の添加剤を使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例、比較例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の配合組成物中の各成分には以下の化合物を選択した。
【0040】
(A)成分の、分子の末端、又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル化されたオリゴマー、及びモノマーで希釈した前記オリゴマーからなる群から選ばれる1種以上で、分子量が500〜50000である多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとして、
(A−1)ポリエステルウレタンアクリレートをアクリロイルモルフォリンで希釈したオリゴマー(ポリエステルウレタンアクリレート:アクリロイルモルフォリン=7:3)(ダイセル・サイテック社製「KRM7735」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量3000)、
(B)成分の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとして、
(B−1)2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製「HEAA」)、
(B)成分の範囲外成分として、
(B’−1)N、N−ジエチルアクリルアミド(興人社製「DEAA」)、
(C)成分の酸化防止剤として、
(C−1)2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」)、
(D)成分の、光開始剤として、
(D−1)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「DAROCUR1173」)、
(D−2)オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン(Lamberi社製「ESACURE KIP150F」)、
(E)成分のリン酸基またはリン酸基アミンハーフ塩として、
(E−1)メタクロイル・オキシエチル・アシッドホスフェート・モノエタノールアミン・ハーフ塩(ユニケミカル社製「Phosmer MH」)、
(F)成分のエポキシ系シランカップリング剤として、
(F−1)2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−303」)、
(G)成分の1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有している(メタ)アクリレートとして、
(G−1)1,9ノナンジオールジメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステル1,9ND」)、
(H)成分の分子中に水酸基を有している(メタ)アクリレートとして、
(H−1)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルHO」)、
(H−2)2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルHOP」)、
(H−3)2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルHOB」)、
を用いた。
【0041】
各種物性は、次のように測定した。
【0042】
〔光硬化性〕
光硬化性に関しては、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量500mJ/cmの条件にて硬化させた。
【0043】
〔180℃剥離接着強さ〕
コロナ放電(カスガ電機社製 速度約2.6m/min 電流3.0A 処理回数8回)によって表面改質したシリコーンゴムシート(入間川ゴム社製「IS−825」100×25×0.5mm)とポリカーボネート片(帝人化成社製「パンライトL1225Y」100×25×2.0mm)を、ポリカーボネート側で100μmバーコーターを用いて膜厚調整した接着剤で接着させた(接着面積10cm2)。上記条件にて接着剤を硬化させた後、接着剤で接合した該試験片を用いて180℃剥離接着強さを測定した。180℃剥離接着強さ(単位:kgf)は、温度23℃、湿度50%の環境下で剥離速度50mm/分で測定した。
【0044】
〔耐湿性評価〕
上記引張剪断接着強さ評価と同様なシリコーンゴムシートとポリカーボネートの試験片を作製後、温度65℃、湿度95%の雰囲気中にて240時間放置し、取り出し後、23℃×50%RH雰囲気の室内にて、接着剤で接合した該試験片を用いて180℃剥離接着強さを測定した。
【0045】
〔臭気評価〕
樹脂組成物を使用して10mm径1mm厚の硬化物を作製し、ガラス瓶に硬化物を入れて密栓し、1時間放置後、臭いセンサー(カルモア社製)を使用して臭気を測定した。尚、試験をした室内の測定値は360であった。数値が大きいほど、臭気が強いことを表している。
【0046】
(実施例1〜10および比較例1〜5)
表1、表2に示す種類の原材料を表1、表2に示す組成で混合して樹脂組成物を調製した。得られた組成物について、180℃剥離接着強さの測定及び耐湿性評価試験を行った。また臭気の測定を実施した。それらの結果を表1、表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の硬化性組成物は、生産性向上を図るため低照度硬化性を有し、ポリカーボネート等の樹脂成形品とゴム材料の接着に対して接着性と耐湿性が良好、さらに臭気が少ないため、電気・電子機器などで臭気が問題とされるものに有用である。特に、携帯電話の入力キーのキートップとキーシートの接着に使用できるので、産業上非常に有効である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〜(D)成分を含有し、しかも(D)成分が5〜15質量%であることを特徴とする硬化性組成物。
ここで、(A)成分は、分子の末端、又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル化されたオリゴマー、及びモノマーで希釈した前記オリゴマーからなる群から選ばれる1種以上で、分子量が500から50000である多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)成分は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー、
(C)成分は、酸化防止剤、
(D)成分は、光開始剤、
である。
【請求項2】
さらに、(E)成分としてリン酸基またはリン酸基アミンハーフ塩を有する(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、(F)成分としてエポキシシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、(G)成分として1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
さらに、(H)成分として分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(A)成分を5〜80質量%、(B)成分を10〜70質量%、(C)成分を0.01〜5質量%、(D)成分を5〜15質量%、(E)成分を0.01〜10質量%、(F)成分を0.5〜20質量%、(G)成分を1〜10質量%、(H)成分を5〜40質量%含有することを特徴とする請求項5記載の硬化性組成物
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなることを特徴とする接着剤。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなることを特徴とする硬化体。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いてなることを特徴とする接合体。
【請求項10】
接合体を構成する一部がゴム材料からなることを特徴とする請求項9に記載の接合体。

【公開番号】特開2008−115341(P2008−115341A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302307(P2006−302307)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】