説明

硬化性組成物

【課題】硬化性水性組成物を提供する。
【解決手段】ポリカルボキシポリマーまたはコポリマーおよび多官能価ポリオールを有し、熱硬化性結合剤として有用な硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドを含有しない硬化性水性組成物、および耐熱性不織物のための結合剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、純粋に機械的手段(例えば、ニードルパンチングにより生じるからみ合い、エアレイドプロセス、およびウェットレイドプロセスなど);化学的手段(例えば、ポリマー結合剤を用いる処理など);または不織布形成前、形成中または形成後での、機械的手段および化学的手段の組み合わせにより統合することができる繊維から構成される。不織布材料のための結合剤は、大部分、ホルムアルデヒド縮合樹脂などの樹脂(尿素−ホルムアルデヒド(UF)樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド(PF)樹脂、およびメラミン−ホルムアルデヒド(MF)樹脂を含む)を含有している。しかしながら、ホルムアルデヒドは既知の発癌物質であり、ホルムアルデヒド含有樹脂の使用者はより害が少ない代替物を探している。さらにまた、このような樹脂は、高温にさらされると黄変する傾向がある。
【0003】
一部の不織布(例えば、屋根板またはロール状屋根材の製造のために加熱アスファルト組成物を含浸させたガラス繊維含有不織布など)は、周囲温度よりも実質的に高い温度で使用される。不織布を、加熱アスファルト組成物と150〜250℃の温度で接触させる場合、不織布は、たるんだり、縮んだり、またはその他変形したりする場合がある。従って、硬化性水性組成物を組み込んだ不織布は、硬化した水性組成物が与える特性(例えば、寸法安定性など)を実質的に保持すべきである。さらに、例えば、硬化した組成物が堅すぎたり、もろすぎたり、または加工条件下で粘着性になる場合のように、硬化した組成物は本質的な不織布特性を実質的に損なうべきではない。
ホルムアルデヒドが関係する健康および環境問題のために、ホルムアルデヒドをほとんど含有しないか全く含有しない硬化性組成物は、種々の製品において極めて望ましい。現存する、ホルムアルデヒドを含有しない市販の結合剤は、例えば、米国特許第5,661,213号に記載されているように、熱硬化時に、エステル化し熱硬化樹脂を形成するカルボン酸ポリマーおよびポリオールを含有している。
【特許文献1】米国特許第5,661,213号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アミン含有ポリオールベースの系は、高い湿潤強度特性を生じるが、望ましくない高温変色を受けやすい。一方で、グリセロールなどの既知のアミンを含有しないポリオールベースの系は、高温での優れた色安定特性を示すが湿潤強度特性は劣る。このように、改良された湿潤強度および低減された変色傾向を有する耐熱性不織布を製造するための、ホルムアルデヒドを含有しない新規な結合剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)溶液重合または乳化重合により製造される、少なくとも2つのカルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩を含む少なくとも1種のポリカルボキシ(コ)ポリマー;
(b)式Iの少なくとも1種のポリオール
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、XはOまたはCから選択され;および
XがOである場合:
oおよびpはそれぞれ0であり、かつRおよびRは存在せず;
およびRは、独立して、それぞれの場合において、アルキル、アルキレン、オキシアルキレン、アルコキシおよびヒドロキシアルキルから選択され;
およびRは、独立して、それぞれの場合において、H、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシおよびヒドロキシアルキルから選択され;
並びに、m、n、およびqは、独立して1〜5から選択される整数であり;
それによりヒドロキシル基の総数は4〜8であり;
XがCである場合:
m、n、o、およびpは、独立して2〜16から選択される整数であり;
、R、RおよびRは独立して、それぞれの場合において、アルキレン、オキシアルキレンおよびアルコキシから選択され;
、R、RおよびRは独立して、それぞれの場合において、H、アルキル、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシから選択され;
および、q=1であり;
それによりヒドロキシル基の総数は4〜8であり;並びに
ここで、XがOまたはCである、それぞれの場合において、前記カルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩の当量の数の、前記ヒドロキシル基の当量の数に対する比は1/0.01〜1/3である)
を含む硬化性水性組成物である。
【0008】
好ましくは、ポリカルボキシポリマーまたはコポリマー中のカルボキシ基の、ポリオール中のヒドロキシ基に対する当量の比は1/0.02〜1/2であり、より好ましくは1/0.1〜1/1.5であり、よりさらに好ましくは1/0.1〜1/0.8である。
【0009】
「独立して、それぞれの場合において、〜から選択される」は、例えばmが1より大きい場合、含まれるいくつかのR基は同一であっても異なっていてもよく、かつそれぞれの場合において前述の置換基から選択されうるという事実を含むことを意味する。従って、R、R(など)のそれぞれが複数個存在する可能性がある、それぞれの場合において、複数の各1つの各選択物において、その選択物は異なっていても同一であってもよい。
本組成物は、アミン含有ポリオールを用いる組成物と比較するとき、改善された湿潤強度によって示されるような、低減された感水性、および低減された変色傾向を有する耐熱不織物を製造するために有用な、ホルムアルデヒドを含有しない結合剤を提供する。
本発明はまた、このような組成物を用いて基体を処理する方法であって、前記方法は、本発明の成分と水または1以上の水性溶媒とを混合して硬化性水性組成物を形成し;硬化性水性組成物と前記基体を接触させるか、またはその代わりに、前記基体に硬化性水性組成物を適用し;そして100℃〜400℃の温度で硬化性水性組成物を加熱することを含む。本発明はまた、前述のとおり、前記組成物を用いて基体を処理する方法により製造される、繊維物品、不織物品または複合材料を提供する。
【0010】
好ましくは、硬化性水性組成物のポリカルボキシ(コ)ポリマー(a)は、少なくとも1種の共重合されたエチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーを含む付加ポリマーまたはコポリマーである。
【0011】
好ましくは、硬化性水性組成物のポリオール(b)は、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、1〜15−プロポキシル化ペンタエリスリトール、1〜15−エトキシル化ペンタエリスリトール、1〜15−プロポキシル化ジトリメチロールプロパン、1〜15−エトキシル化ジトリメチロールプロパン、1〜15−エトキシル化ジペンタエリスリトール、1〜15−プロポキシル化ジペンタエリスリトール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0012】
一実施形態において、硬化性水性組成物は、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、およびグルコースからなる群から選択される1以上のポリオールをさらに含む。
【0013】
他の実施形態において、硬化性水性組成物は、米国特許第5,661,213号に開示のリン含有促進剤をさらに含む。
【0014】
さらに他の実施形態において、硬化性水性組成物のポリカルボキシ(コ)ポリマー(a)はエマルジョンコポリマーを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
「(コ)ポリマー」と呼ぶ場合、ホモポリマーもしくはコポリマーのいずれか、またはそれら両方の組み合わせを指す。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかを指し、用語「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルのいずれかを指す。
本明細書において、用語「ポリカルボキシ(コ)ポリマー」は、少なくとも2つのカルボン酸官能基、酸無水物基、またはそれらの塩を有する、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマーまたはコポリマーである。
本明細書において、用語「ヒドロキシアルキル」は、分枝であってもなくてもよいアルキル基に結合した1または2以上のヒドロキシル基を指すことができる。
【0016】
本明細書において、用語「オキシアルキレン」は、構造:−(O−A)−を有する単位を指し、ここでO−Aは、1−炭素ホモログオキシメチレン(−(OCH)−)ばかりでなく、アルキレンオキシド類の重合反応生成物のモノマー残基も表す。オキシアルキレンの例は、限定するものではないが、構造−(OCHCH)−を有するオキシエチレン;および構造−(OC)−を有するオキシプロピレンを含む。
【0017】
図Iについて言えば、R(ならびにR、RおよびR)は分枝した単位であることができ、他のR(ならびにR、RおよびR、それぞれ)単位に結合することができ、1以上のR(ならびにR、RおよびR、それぞれ)単位を末端基にすることができる。
【0018】
「ガラス転移温度」または「Tg」は、以下:
【0019】
【数1】

【0020】
のフォックス式を用いて計算した、コポリマーのガラス転移温度である[Bulletin of the American Physical Society1,3 Page 123(1956)]。コポリマーに関しては、wおよびwは、反応容器に添加したモノマーの重量を基準にした2つのコモノマーの重量分率を指し、Tg(1)およびTg(2)はケルビン温度(K)での2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度を指す。3以上のモノマーを含有するポリマーに関しては、追加の項を加える(w/Tg(n))。本発明の目的のためのホモポリマーのガラス転移温度は、 Polymer Handbook ,edited by J.Brandrup and E.H.Immergut,Interscience Publishers,1966 に報告されたものであり、この本に特定のホモポリマーのTgの記載がない場合、ホモポリマーのTgは、示差走査熱量計(DSC)で測定する。DSCによりホモポリマーのガラス転移温度を測定するために、ホモポリマー試料はアンモニアまたは第一級アミンの非存在下で調製および維持される。ホモポリマー試料を乾燥し、120℃に予熱し、−100℃に急速に冷却し、ついでデータを収集しながら、20℃/分の速度で150℃に加熱する。ホモポリマーのガラス転移温度は、半高さ法(half−height method)を用い、変曲の中点で測定される。
【0021】
重合単位として架橋性モノマーを含有するコポリマーのTgのフォックス計算は、ホモポリマーがアンモニアまたは第一級アミンの非存在下にある、各架橋性モノマーから形成されるホモポリマーのガラス転移温度に基づく。アニオン性モノマーから形成されるホモポリマーのガラス転移温度値は、酸型のアニオン性ホモポリマーに関するものである。
【0022】
好ましいポリオール(b)は−OH官能基4〜8を有するポリグリセロールである。特に、これらは、ジグリセロール(官能価4)、トリグリセロール(官能価5)、テトラグリセロール(官能価6)、ペンタグリセロール(官能価7)、ヘキサグリセロール(官能価8)、およびそれらの混合物である。トリグリセロールが特に好ましい。しかしながら、アミンを含有しない他のポリオール(b)も使用できる。アミン含有ポリオール(トリエタノールアミン(TEOA)など)は、高温にさらされるとき変色するため、この用途には望ましさはより少ない。ポリオールは、好ましくは、加熱および硬化操作中の組成物中でポリカルボキシ(コ)ポリマーと反応させることに実質的に利用可能なままであろうように、十分に不揮発性であるべきである。他のポリオール(b)は、少なくとも4つのヒドロキシル基を有し、約10,000未満の分子量を有する化合物(例えば、ジトリメチロールプロパン、エトキシル化(またはプロポキシル化)ペンタエリスリトール、およびエトキシル化(またはプロポキシル化)ジペンタエリスリトールなど)を含む。エトキシル化(EO)またはプロポキシル化(PO)ペンタエリスリトール(下記に示す)は、R基(w、x、y、およびzは整数(例えば1〜15)であることができ;並びにw、x、y、およびzは必ずしも同じである必要はない)として複数のオキシアルキレン基(それぞれ、オキシエチレンまたはオキシプロピレン単位)を有することができる。
【0023】
【化2】

【0024】
同様に、当業者は、このような混合オキシアルキレン基を有するポリオールを構想することも可能である。従って、あるR単位はオキシエチレン単位であることができ、同時に他のものはオキシプロピレン単位であることができ、それぞれが別々のR鎖に存在することができ、または同一のR鎖内に存在することもできる。同様に、w、x、yおよびzの1以上が15より大きい場合も考えられる。上記の他のエトキシル化またはプロポキシル化ポリオールに同様な考察が適用できる。
好ましさはより少ないが、他のオリゴグリセロールおよびポリグリセロールは十分に機能しうる。好ましくは、ポリオール(b)は150g/molを超える分子量を有すべきである。
【0025】
ホルムアルデヒドを含有しない硬化性水性組成物は、ポリカルボキシ(コ)ポリマーを含有する。ポリカルボキシ(コ)ポリマーは、加熱および硬化操作中の組成物中でポリオールと反応させることに実質的に利用できるままであるように、十分に不揮発性でなければならない。ポリカルボキシ(コ)ポリマーは、例えば、少なくとも2つのカルボン酸基を含有するポリエステルであることができ、あるいはまた、少なくとも2つの共重合されたカルボン酸官能性モノマーを含有する付加ポリマーまたはオリゴマーであることもできる。ポリカルボキシ(コ)ポリマーは、好ましくは少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから形成される付加ポリマーである。本発明の一実施形態において、硬化性コポリマー組成物は、例えば、粉末またはフィルムなどの固体組成物である。固体組成物は、種々の乾燥方法(例えば噴霧乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥など)により得ることができる。
【0026】
好ましい実施形態において、硬化性コポリマー組成物は硬化性水性組成物である。本明細書において使用される、「水性」は水、および水と水混和性溶媒との混合物を含む。本実施形態において、ポリカルボキシ(コ)ポリマーは、付加ポリマーの水性媒体中の溶液の形態、例えば、塩基性媒体に可溶化されたポリアクリル酸ホモポリマーまたはアルカリ可溶性樹脂など;水性分散物の形態、例えば乳化重合分散物;または水性懸濁物の形態であることができる。
【0027】
乳化重合の実施については、D.C. Blackley, Emulsion Polymerization (Wiley, 1975) およびH. Warson, The Applications of Synthetic Resin Emulsions, Chapter 2 (Ernest Benn Ltd., London 1972) に詳細に説明されている。
【0028】
ポリカルボキシ(コ)ポリマーは、少なくとも2つのカルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩を含有しなければならない。エチレン性不飽和カルボン酸(例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸、モノアルキルマレアート、およびモノアルキルフマラートなど);エチレン性不飽和酸無水物(例えば、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、アクリル酸無水物、およびメタクリル酸無水物など);ならびにそれらの塩を、付加ポリマーの重量基準で、約1重量%〜100重量%の量で使用することができる。追加のエチレン性不飽和モノマーは、エチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマー、例えば(メタ)アクリル酸エステルモノマー(メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートを含む);ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシブチルアクリレートなど);ホスホアルキル(メタ)アクリレート類(ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、およびホスホブチル(メタ)アクリレートなど)、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート類);ホスホアルキルクロトナート、ホスホアルキルマレアート、ホスホアルキルフマラート、ホスホジアルキルクロトナート、およびアリルホスフェートを含むことができる。
【0029】
ポリカルボキシ(コ)ポリマーに組み込むことができる他のエチレン性不飽和非イオン性モノマーは、ビニル芳香族化合物(スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルキシレン類、ビニルトルエン類など);ビニルアセテート、ビニルブチレートおよび他のビニルエステル類;ビニルモノマー類(ビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルトルエン、ビニルベンゾフェノン、および塩化ビニリデンなど)を含む。
【0030】
さらに、エチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマーは、アクリルアミド類およびアルキル置換アクリルアミド類(アクリルアミド、メタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミドおよびN−メチル(メタ)アクリルアミドなど);ヒドロキシル置換アクリルアミド類(メチロールアクリルアミド、およびβ−ヒドロキシアルキルアミド類など);アクリロニトリルまたはメタアクリロニトリル;などを含む。
【0031】
ポリカルボキシ(コ)ポリマーが、付加ポリマーの水性媒体中の溶液の形態(例えば、塩基性媒体に可溶化されたポリアクリル酸ホモポリマーまたはアルカリ可溶性樹脂など)である場合、重量平均分子量は、約300〜約10,000,000であることができる。分子量約1000〜約250,000が好ましい。
【0032】
本発明の一実施形態において、ポリカルボキシ付加(コ)ポリマーは、数平均分子量300〜1000を有する、フリーラジカル付加重合により調製されるエチレン性不飽和カルボン酸のオリゴマーまたはコオリゴマーであることができる。
【0033】
好ましい一実施形態において、ポリカルボキシポリマーまたはコポリマーは、重量平均分子量が10,000以下であるポリアクリル酸ホモポリマー(pAA)が適切であり、重量平均分子量は、より好ましくは5,000以下であり、よりさらに好ましくは3,000以下であり、2,000〜3,000が好都合である。
【0034】
付加ポリマーが、付加ポリマーの全重量基準で、約5重量%〜約30重量%の含量の、カルボン酸、酸無水物、またはそれらの塩を含有するアルカリ可溶性樹脂である場合、分子量約1,000〜約100,000が好ましい(1,000〜約20,000がより好ましい)。なぜなら、より高い分子量のアルカリ可溶性樹脂は、過度の粘度を示す硬化性組成物をもたらすからである。
【0035】
最終製品がより優れた柔軟性を必要とする場合の用途により適した他の好ましい実施形態において、1以上の酸含有エマルジョンポリマーがポリカルボキシ(コ)ポリマーとして用いられ、それについては、分子量1,000〜10,000,000のものを使用することができ、好ましくは10,000〜5,000,000、より好ましくは250,000〜1,000,000のものを使用することができる。本明細書に記載のポリカルボキシ(コ)ポリマー分子量は、特記しない限り、当該技術分野で公知のポリスチレン標準品を用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した、重量平均分子量(Mw)である。しかしながら、Mwが約1,000以下の低分子量においては、数平均分子量(Mn)がより有意味であると考えられる場合がある。このような場合において、ポリアクリル酸標準品がキャリブレーション目的により適している可能性があるが、やはりGPC測定が使用できる。上記のホモポリマーのポリアクリル酸(pAA)などの水性溶液については、GPC標準品は、当該技術分野で一般に使用されているポリアクリル酸標準品である。
【0036】
本発明のホルムアルデヒドを含有しない硬化性水性組成物は、場合により、分子量約1000未満の化合物であることができるリン含有硬化促進剤(例えば、次亜リン酸アルカリ金属塩、次亜リン酸、亜リン酸アルカリ金属、ポリリン酸アルカリ金属、リン酸二水素アルカリ金属、ポリリン酸、およびアルキルホスフィン酸など)を含有することができ、あるいは、リン含有基を含有するオリゴマーまたはポリマー[例えば、次亜リン酸ナトリウム(SHP)の存在下で形成されるアクリル酸および/またはマレイン酸の付加ポリマー、リン系塩(phosphorous salt)連鎖移動剤または停止剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーから調製される本発明のコポリマーなどの付加ポリマー、および酸官能性モノマー残基(例えば、共重合されたホスホエチルメタクリレート、および類似のホスホン酸エステル類)を含有する付加ポリマー]であることができる。共重合されたビニルスルホン酸モノマーおよびそれらの塩もまた同様に機能することができる。リン含有種は、ポリカルボキシ(コ)ポリマーおよびポリオールの合計重量を基準にして、0重量%〜40重量%、好ましくは0重量%〜20重量%、さらに好ましくは0重量%〜15重量%、より好ましくは0重量%〜10重量%の量で使用することができる。ポリカルボキシ(コ)ポリマーおよびポリオールの合計重量を基準にして約2.5重量%〜約10重量%のリン含有促進剤量が好ましい。
【0037】
従って、特に好都合な実施形態は、重量平均分子量2,500のポリアクリル酸ホモポリマーをトリグリセロールおよび場合により1以上の他のポリオールと組み合わせて用いる(カルボキシ基の−OH基に対する比は1.0/0.5であり、5%SHPをリン含有触媒として用いる)硬化性熱硬化性組成物を提供する。
【0038】
さらに、本発明の硬化性組成物中に使用されるポリカルボキシ(コ)ポリマーを重合させるためにリン含有連鎖移動剤が使用される場合、リンを末端基とする(コ)ポリマーは、本明細書で定義するリン含有硬化促進剤としての役割を果たすことができる。特に、米国特許第5,077,361号および第5,294,686号(参照により本明細書に包含される)に記載されているように、同一分子中にリン含有促進剤およびポリカルボキシ成分を組み込むために、リン含有連鎖移動剤(例えば、次亜リン酸およびその塩など)の存在下で付加ポリマーを形成できる。このようなリン含有(コ)ポリマーを製造するための重合反応は、下記に記載のように、他のポリカルボキシ(コ)ポリマーを製造するために使用する反応と他の点で類似している。
【0039】
ホルムアルデヒドを含有しない硬化性水性組成物は、通常の混合技術を用い、ポリカルボキシ(コ)ポリマー、ポリオール、および、場合により、リン含有促進剤を混合することにより調製できる。他の実施形態において、カルボキシル−または酸無水物−含有付加(コ)ポリマーおよびヒドロキシ官能性モノマーは同一の付加(コ)ポリマー中に存在でき、その付加(コ)ポリマーは、カルボキシル、酸無水物、またはそれらの塩官能基およびヒドロキシル官能基の両方を含有することになる。他の実施形態において、リン含有促進剤はポリカルボキシ付加(コ)ポリマー中に存在でき、該付加(コ)ポリマーはポリオール(b)と混合されうる。さらに他の実施形態において、カルボキシル−または酸無水物−含有付加(コ)ポリマー、ヒドロキシ官能性モノマー、およびリン含有促進剤を同一の付加(コ)ポリマー中に存在させることができる。他の実施形態は、当業者に明らかであろう。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、硬化性結合剤組成物は強酸を含有する。「強酸」は少なくとも1つのpKaが3以下の非カルボン酸を意味する。本実施形態において、硬化性結合剤組成物は、好ましくは、全カルボン酸の当量に対して強酸0.01〜0.2当量を含有し、より好ましくは0.01〜0.18当量を含有する。「全カルボン酸」は、(コ)ポリマー組成物中に存在するカルボン酸の全量を意味する。強酸は鉱酸(例えば硫酸など)または有機酸(例えばスルホン酸など)であることができる。鉱酸が好ましい。
【0041】
好ましくは、硬化性水性組成物のpHは3.5未満であり、同様に好ましくは2.5未満であり、該pHは、とりわけ、使用されるポリオールまたはアジュバントの選択、および添加できる任意の強酸または塩基の強度および量に左右される。
【0042】
本発明の一実施形態において、硬化性組成物はさらに、1000以下、好ましくは500以下、および最も好ましくは200以下の分子量を有する、少なくとも1種の低分子量多塩基性カルボン酸、酸無水物またはそれらの塩を含有する。「多塩基性」は少なくとも2つの反応性の酸または酸無水物官能基を有することを意味する(例えば、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary, 14th Ed., 2002,John Wiley and Sons,Inc.を参照のこと)。適切な低分子量多塩基性カルボン酸および酸無水物の例は、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、コハク酸無水物、セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、クエン酸、グルタル酸、酒石酸、イタコン酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、トリカルバリル酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、カルボン酸のオリゴマーなどを含む。場合により、低分子量多塩基性カルボン酸、酸無水物またはそれらの塩は、ポリカルボキシ(コ)ポリマーと混合する前に、反応性条件で、ヒドロキシル含有化合物と混合することができる。上記のように、特定の実施形態において、(コ)ポリマー組成物は促進剤を含むことができる。本反応中に促進剤を存在させることができ、これは現場(in−situ)反応であることができ、あるいはまた、この現場反応の終了後、およびポリカルボキシ(コ)ポリマーと混合する前に促進剤を組成物に添加することができる。
【0043】
ポリカルボキシ(コ)ポリマーはフリーラジカル付加重合により製造できる。組成物が固体の形態である本発明の実施形態において(コ)ポリマーを製造でき、例えば、溶媒の非存在下で、または粘度を抑えるために少量の溶媒を用いて、ホットチューブ中で(コ)ポリマーを製造できる。本発明の他の実施形態において、エチレン性不飽和モノマーを重合させるための溶液重合、乳化重合、または懸濁重合技術により(コ)ポリマーを製造でき、これらは当業界に公知である。乳化重合の使用が望ましい場合、アニオン性もしくは非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物を使用することができる。一部の用途、例えば感水性に対する耐性を必要とする用途には、重合性界面活性剤(反応性界面活性剤としても知られる)の使用が好都合でありうる;これらの界面活性剤は当該技術分野で公知であり、例えば、米国特許出願公開第2003/0149119号または米国特許出願公開第2001/0031826号に記載されている。重合は、種々の手段、例えば、重合反応の開始前に反応ケトルにモノマーの全部を添加すること、重合反応の開始時に反応ケトル中に乳化された形態でエチレン性不飽和モノマーの一部を存在させること、または重合反応の開始時に反応ケトル中に小粒子サイズのエマルジョンポリマーシードを存在させることなどにより実施できる。
【0044】
ポリカルボキシ(コ)ポリマー組成物を製造するための重合反応は、当該技術分野で公知の種々の方法により、例えば、開始剤の熱分解を用いることにより、フリーラジカルを生成させて重合をもたらす酸化還元反応(「レドックス反応」)を用いることにより開始することができる。ポリカルボキシ(コ)ポリマー組成物は、水中で、または溶媒/水混合物(例えば、i−プロパノール/水、テトラヒドロフラン/水、およびジオキサン/水など)中で製造できる。
【0045】
連鎖移動剤、例えばメルカプタン、ポリメルカプタン、およびハロゲン化合物を、ポリカルボキシ(コ)ポリマー組成物の分子量を調節するために重合混合物中で用いることができる。一般に、ポリマー結合剤の重量を基準にして0重量%〜10重量%のC−C20アルキルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、またはメルカプトプロピオン酸エステルを使用することができる。同様に、上記のように、他の実施形態において、ポリマー主鎖にリン含有種を組み込むために、リン含有連鎖移動剤(例えば、次亜リン酸およびその塩)の存在下でポリカルボキシ(コ)ポリマー組成物を形成できる。
【0046】
(コ)ポリマー組成物のカルボキシル基を塩基で中和することができる。ポリカルボキシ(コ)ポリマー組成物を形成するために、モノマーの重合前、重合中または重合後に塩基を加えることができる。基体の処理前または処理中に、少なくとも部分的に中和がおこることができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、(コ)ポリマー組成物のカルボキシル基は、固定塩基、つまり処理の条件下で実質的に非揮発性である塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、または水酸化t−ブチルアンモニウムなどで中和することができる。固定塩基は、加熱および硬化操作中に組成物中に実質的にとどまるように、十分非揮発性でなければならない。
【0048】
本発明の他の実施形態において、カルボキシ基は揮発性塩基(コポリマー組成物で基体を処理する条件下で実質的に揮発性である塩基を意味する)で中和することができる。中和に適した揮発性塩基は、例えば、アンモニアまたは揮発性低級アルキルアミンを含む。固定塩基に加えて揮発性塩基を使用することができる。固定多価塩基、例えば、炭酸カルシウムは、ポリカルボキシ(コ)ポリマー組成物が水性分散物の形態で使用される場合、水性分散物を不安定化する傾向がありうるが、少量であれば使用できる。
【0049】
本発明のホルムアルデヒドを含有しない硬化性水性組成物は、基体に適用されるとき、低レベルの故意または偶然の架橋が存在しうるが、実質的に熱可塑性、または実質的に非架橋の組成物である。しかしながら、ポリカルボキシ(コ)ポリマーが水性分散物または水性懸濁物の形態であり、および低レベルの予備架橋またはゲル含有量が望ましい場合、低レベルの多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタラート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ブタジエン、およびジビニルベンゼンなどを、ポリカルボキシ(コ)ポリマーの重量を基準にして0.01重量%〜5重量%の量で使用することができる。
【0050】
ポリカルボキシ(コ)ポリマー組成物が水性分散物の形態である場合、コポリマー粒子の重量平均粒子直径は、光散乱技術を用いるBrookhaven BI−90 Particle Sizer(Brookhaven Instruments Corporation,Holtsville,N.Y.,USA)を用いて測定するとき、80ナノメートル〜1000ナノメートルであることができる。しかしながら、多モード粒子サイズ分布、例えば、米国特許第4,384,056号および第4,539,361号開示のもの(参照により、本明細書に包含される)もまた使用できる。
【0051】
ポリカルボキシ(コ)ポリマー組成物が水性分散物の形態である場合、コポリマー粒子は、2以上の相互に不相溶性の(コ)ポリマーから構成されていることができる。これらの相互に不相溶性の(コ)ポリマーは、種々の形状、例えば、コア/シェル粒子、コアを不完全にカプセル化したシェル相を有するコア/シェル粒子、複数のコアを有するコア/シェル粒子、相互侵入網目構造粒子などで存在できる。
【0052】
本発明の一実施形態において、ポリカルボキシコポリマー組成物を形成するために使用される重合媒体中に、疎水性空洞を有する有機高分子化合物が存在する。疎水性空洞を有する有機高分子化合物を用いる適切な技術は、例えば、米国特許第5,521,266号に開示されている。本発明に有用な、疎水性空洞を有する有機高分子化合物は、例えば、シクロデキストリンもしくはシクロデキストリン誘導体;疎水性空洞を有する環状オリゴ糖(シクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトースもしくはシクロイヌロオクトースなど);カリキサレン類;キャビタンド類;またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、有機高分子化合物はβ−シクロデキストリンであり、より好ましくはメチル−β−シクロデキストリンである。
【0053】
本発明の一実施形態において、硬化性結合剤組成物は、重合単位として少なくとも1種の共重合されたエチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマーを含むエマルジョンポリマーとブレンドされる。「エマルジョンポリマー」または「エマルジョン(コ)ポリマー」は、D.C. Blackley,Emulsion Polymerization (Wiley,1975)およびH.Warson,The Applications of Synthetic Resin Emulsions,Chapter 2(Ernest Benn Ltd.,London 1972)に詳細に説明されているように、当該技術分野で公知の乳化重合技術により調製された水性媒体中に分散された(コ)ポリマーを意味する。本明細書において、「非イオン性モノマー」は、共重合されたモノマー残基が、pH=1〜14で、任意の実質的なイオン性電荷を有さないことを意味する。ブレンドに用いるエマルジョンポリマーは、ポリカルボキシ(コ)ポリマーがエマルジョンの場合であっても、本発明の結合剤のポリカルボキシ(コ)ポリマーとは別々かつ異なるものであり、本発明の硬化性結合剤組成物とのブレンドに用いることができる。ブレンドに用いるエマルジョンポリマーは、固形分基準で、硬化性結合剤組成物の重量基準で、1重量%〜40重量%、好ましくは1重量%〜30重量%、より好ましくは1.5重量%〜20重量%、よりさらに好ましくは5重量%〜15重量%の量で存在させることができる。
【0054】
ブレンドに用いるエマルジョンポリマーのエチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートを含む);ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシブチルアクリレートなど)を含むことができる。該ポリマーに組み込むすることができる他のエチレン性不飽和非イオン性モノマーは、ビニル芳香族化合物(スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルキシレン類、ビニルトルエン類など);ビニルアセテート、ビニルブチレートおよび他のビニルエステル類;ビニルモノマー類(ビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルトルエン、ビニルベンゾフェノン、および塩化ビニリデンなど)を含む。
【0055】
さらなるエチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマーは、アクリルアミド類およびアルキル置換アクリルアミド類(アクリルアミド、メタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミドおよびN−メチル(メタ)アクリルアミドなど);ヒドロキシル置換アクリルアミド類(メチロールアクリルアミド、およびβ−ヒドロキシアルキルアミド類など);ならびにアクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルを含む。
【0056】
本発明の硬化性結合剤組成物とのブレンドに用いるエマルジョンポリマーは、1以上のモノエチレン性不飽和酸モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコナート、モノメチルフマラート、モノブチルフマラート、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキルアリルスルホコハク酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、ホスホアルキル(メタ)アクリレート類(ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、およびホスホブチル(メタ)アクリレートなど)、ホスホアルキルクロトナート類、ホスホアルキルマレアート類、ホスホアルキルフマラート類、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート類、ホスホジアルキルクロトナート類、およびアリルホスフェートを含むことができる。
【0057】
本発明の硬化性結合剤組成物とのブレンドに用いるエマルジョンポリマーは、共重合された多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタラート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ブタジエン、およびジビニルベンゼンを含有することができる。
【0058】
本発明のさらなる実施形態において、そして同様に硬化性組成物の強化された防水特性が望まれる場合の用途のために、本発明の硬化性結合剤組成物とのブレンドに用いるエマルジョンポリマー(単一種または複数種)は、重合単位として、5以上のC原子を有する脂肪族アルキル基(該アルキル基はn−アルキル、s−アルキル、i−アルキル、およびt−アルキル基を含む)を含むエチレン性不飽和アクリルモノマーを、エマルジョンポリマー固形分の重量を基準にして、30%超、好ましくは40%超、より好ましくは50%超、よりさらに好ましくは60重量%より多く含む、主に疎水性のエマルジョンポリマーである。防水へのこのアプローチは、米国特許出願公開第20050048212A1号に開示されている。適切なエチレン性不飽和は、(メタ)アクリル酸の(C−C30)アルキルエステル、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸の不飽和ビニルエステル類、例えば脂肪酸および脂肪アルコールから誘導されるもの;長鎖アルコキシ−またはアルキルフェノキシ(ポリアルキレンオキシド)(メタ)アクリレートを含む界面活性剤モノマー、例えばC1837−(エチレンオキシド)20メタクリレートおよびC1225−(エチレンオキシド)23メタクリレートなど;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、例えばオクチルアクリルアミドなど;等を含む。該モノマーはまた、官能基(アミド、アルデヒド、ウレイド、ポリエーテルなど)を含有することができるが、好ましくは酸またはヒドロキシ基を含有しない。このようなモノマーを含有するエマルジョンポリマーは、乳化重合、好ましくは米国特許第5,521,266号記載のポリマーの製造方法により製造できる。
【0059】
主に疎水性のエマルジョンポリマーは、また、共重合単位として、カルボン酸基、酸無水物基、もしくはそれらの塩またはヒドロキシル基を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)を、エマルジョンポリマー固形分の重量を基準にして、0重量%〜10重量%、好ましくは0重量%〜5重量%含むことができる。該エマルジョンポリマーは、固形分基準で硬化性結合剤組成物の重量を基準にして、1重量%〜40重量%、好ましくは1重量%〜30重量%、より好ましくは1.5重量%〜20重量%、よりさらに好ましくは5重量%〜15重量%の量で存在することができる。
【0060】
本発明の組成物は、さらに、通常の処理成分、例えば、乳化剤;顔料;充填剤もしくは増量剤;移動防止助剤;硬化剤;造膜助剤;界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤;展着剤;鉱油ダスト抑制剤;殺生物剤;可塑剤;有機シラン;消泡剤、例えばジメチコン、シリコーンオイルおよびエトキシル化非イオン界面活性剤;腐食防止剤、特にpH<4で有効な腐食防止剤、例えばチオ尿素類、オキサレート類、およびクロメート類;着色剤;帯電防止剤;潤滑剤;ワックス;抗酸化剤;カップリング剤、例えばシラン類、特にSilquest(商標)A−187(米国コネチカット州ウィルトンにあるGE Silicones−OSi Specialtiesにより製造);GE製Wetlink Silanes(例えばWetlink 78)、およびDegussa製Dynasylan(商標)シラン類、特に、エポキシシラン類、例えば限定するものではないが、Dynasylan(商標)GLYMOおよびGLYEO;ならびにオリゴマー型シラン類、例えばHYDROSIL(商標)を含有することができる。本発明はまた、本発明のものではないポリマー;ならびに防水剤、例えばシリコーンおよびエマルジョンポリマー、特に、共重合単位として、エマルジョンポリマー固形分の重量を基準にして30重量%を超える、C以上のアルキル基を含有するエチレン性不飽和アクリルモノマーを含有する疎水性エマルジョンポリマーを含有することができる。
【0061】
本発明の組成物は、好ましくはホルムアルデヒドを含有しない。「ホルムアルデヒドを含有しない」は、組成物が実質的にホルムアルデヒドを含まず、また乾燥および/または硬化の結果として実質的なホルムアルデヒドを放出しないことを意味する。(コ)ポリマー組成物のホルムアルデヒド含量を最小限にするために、本発明のポリマーを製造する場合、それ自体ホルムアルデヒドを含有せず、重合プロセスの間にホルムアルデヒドを生成せず、および基体の処理の間にホルムアルデヒドを生成または放出しない重合補助剤、例えば、開始剤、還元剤、連鎖移動剤、殺生物剤、界面活性剤などを使用することが好ましい。同様に、任意の配合添加剤もまた同様にホルムアルデヒドを含有しないことが好ましい。「実質的にホルムアルデヒドを含有しない」は、水性組成物中に低レベルのホルムアルデヒドが許容される場合、またはホルムアルデヒドを生成もしくは放出する補助剤を使用するやむを得ない事情が存在する場合、実質的にホルムアルデヒドを含有しない水性組成物を使用できることを意味する。
【0062】
本発明の組成物を種々の基体の処理に使用できる。このような処理は、通常、例えば、コーティング、サイジング、含浸、接着、それらの組み合わせなどとして記述することができる。典型的な基体は、木材、例えば、無垢材、木材粒子、繊維、チップ、木粉、パルプ、およびフレークを包含する;金属;プラスチック;繊維、例えばポリエステル、ガラス繊維;織布および不織布;などならびにそれらの複合材料繊維を含む。(コ)ポリマー組成物は、通常の技術、例えば、エアもしくはエアレススプレー、パディング、飽和、ロールコーティング、発泡コーティング、カーテンコーティング、ビーター沈着、凝固などにより基体に適用することができる。
【0063】
本発明の一実施形態において、組成物は、耐熱性不織布、例えば、耐熱性繊維、例えば、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、特定のポリエステル繊維、レイヨン繊維、ロックウール、およびガラス繊維を含有する不織布の結合剤として使用できる。「耐熱性繊維」は、125℃を超える温度に暴露されても実質的に影響を受けない繊維を意味する。耐熱性不織布は、基体の性能に物質的に悪影響を及ぼさない限り、それ自体が耐熱性でない繊維、例えば特定のポリエステル繊維、レイヨン繊維、ナイロン繊維、および超吸収性繊維もまた含有することができる。
【0064】
上記のように、(コ)ポリマー組成物を組み込んだ不織布は、硬化した水性組成物により寄与される特性、例えば、引張強度を実質的に保持し、本質的な不織布特性を実質的に損なわないようにすべきである。硬化した組成物は、過度に硬質または脆性であるべきではなく、または加工条件下で粘着性になるべきではない。
【0065】
硬化性水性(コ)ポリマー組成物は、基体に適用された後、加熱されて乾燥および硬化する。加熱期間および温度は、乾燥速度、加工性、取り扱い適性;および処理される基体の特性発現に影響を及ぼすであろう。120℃〜400℃で3秒〜15分の間の期間の熱処理を行うことができ、175℃〜225℃での処理が好ましい。「硬化」は、例えば、共有化学反応、イオン性相互作用もしくはクラスター形成、基体への改善された接着性、相変態もしくは転相、水素結合などにより、(コ)ポリマーの特性を変化させるのに十分な化学的または形態学的変化を意味する。乾燥および硬化作用は、必要に応じて、2以上の異なる工程で実施することができる。例えば、組成物は、最初に実質的に乾燥するのに十分であるが実質的に組成物を硬化させない温度および時間で加熱され、ついで硬化を起こすためにより高い温度でおよび/またはより長い時間で第2の加熱を行うことができる。このような手順は、「B−ステージング」と呼ばれ、例えば、硬化プロセスと同時に特定の形状に形成または成型するかどうかにかかわらない、後の段階で硬化され得るロール形態の結合剤処理不織物を提供するために使用できる。
【0066】
耐熱性不織物は、例えば、断熱バットもしくはロール、屋根材もしくはフローリング用途の補強マットとして、ロービングとして、プリント回路基板のためのミクロガラスベース基体または電池セパレーターとして、フィルター素材(例えば、エアダクトのフィルター)として、テープ素材として、ならびに補強スクリムとして、組積造用セメント質および非セメント質コーティングにおいて、天井タイル、セルロース屋根タイル、窓処理材、壁装材、成型品において、カーリーパルプ改変のために、粉末コーティングのために、などの用途に使用できる。
【0067】
本発明の、非黄変柔軟結合剤は、木材チップ結合、研磨マット、装飾用ラミネート紙、積層用接着剤、濾過紙または自動車遮音用コットンラグ結合にもまた有用である。
【実施例】
【0068】
実施例1
ポリカルボキシ溶液ポリマーの合成
本手順で製造されたポリマーを、以下の表1の実施例において用いた。機械撹拌機、凝縮器、窒素スウィープ、温度計ならびに、モノマー、開始剤および次亜リン酸ナトリウム溶液を徐々に加えるための送入管を備えた3リットル4つ首フラスコに、脱イオン水710グラムを加えた。次亜リン酸ナトリウム一水和物1250グラムを脱イオン水1528グラムに溶解して、連鎖調節剤原液を調製した。原液から全部で243.2グラムをとり、この溶液の半分(121.6)を水チャージに加え、93℃に加熱した。連鎖調節剤溶液の残りの半分を共フィード溶液として用いた。精製(glacial)アクリル酸1216グラムのモノマーチャージを調製した。過硫酸ナトリウム12.16グラムをDI水30.7グラムに溶解することにより開始剤溶液を調製した。
【0069】
アクリル酸、過硫酸ナトリウムおよび次亜リン酸ナトリウム(SHP)のチャージを、撹拌している水チャージに2時間かけて線形的に別々に加えた。温度を93℃±1℃に維持した。
【0070】
得られたポリマー溶液を室温に冷却し、脱イオン水274グラムで希釈した。この溶液は、固形分が52.71%、pHが3.2、粘度が210センチポアズ(Brookfield LVF粘度計を用い、#4スピンドル、100rpmで測定した)であり、残留モノマー含量が0.01%未満であった。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、キャリブレーションにポリアクリル酸標準品を使用)による重量平均(Mw)分子量は2456、すなわちおおよそ2500と決定された。
【0071】
実施例2
水性硬化性の熱硬化性組成物
ポリカルボキシ溶液ポリマー+多官能価ポリオール
以下の多官能性ポリオールのそれぞれと共に実施例1のポリアクリル酸ポリマー(pAA)を用いて一連の水性硬化性の熱硬化性組成物を製造した:
アミン含有ポリオール
ジエタノールアミン(官能価2)(比較例1Aに使用)
ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジポアミド(HEA)(比較例2Aに使用)
アミンを含有しないポリオール
グリセロール(官能価3)(比較例3Aに使用)
ソルビトール(官能価6)(比較例4Aに使用)
ペンタエリスリトール(官能価4)(比較例5Aに使用)
ジグリセロール(官能価4)(本発明の実施例1Aに使用)
トリグリセロール(官能価5)(本発明の実施例2Aに使用)
エトキシル化(5EO)ペンタエリスリトール(官能価4)(本発明の実施例3Aに使用)
エトキシル化(4EO)ジペンタエリスリトール(官能価6)(本発明の実施例4Aに使用)
ジトリメチロールプロパン(官能価4)(本発明の実施例5Aに使用)。
【0072】
これらの硬化性の熱硬化性樹脂のCOOH/OH比は1.0/0.5であったが、ただし系において溶解可能であった最高濃度でペンタエリスリトールを用いるサンプルが使用されたこと(1.0/0.25)を除く。次亜リン酸ナトリウム(SHP)を触媒として用いた。
【0073】
水性硬化性の熱硬化性組成物を以下のように調製した。実施例1のポリアクリル酸(固形分50%に希釈;Mw=2500)145.0グラムに、グリセロール(固形分97%)22.7グラム、次亜リン酸ナトリウム溶液(固形分50%)8.1グラムおよび水24.2グラムを加えた。混合物のpHは2.6であり、粘度は96.5センチポアズ(Brookfield LVF粘度計を用い、4スピンドル、100rpmで測定した)であった。活性成分(水以外の成分)は50.4%であった。
同様に調製した水性硬化性熱硬化性樹脂の組成物を、下記の表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例3
硬化した熱硬化性組成物の色測定
30分間、250℃で加熱することにより生じる着色の程度を評価するために、測色を行った。熱硬化性組成物を固形分20%まで希釈し、希釈組成物をGFAガラスペーパー上に適用し、GFAペーパーに結合剤添加重量(濾紙重量の百分率としての結合剤の乾燥重量)40重量%±2重量%の乾燥重量を与えるようにして、試料を調製した。GFAペーパーは、Whatman(Whatman International Ltd.,Maidstone,England)から入手できる。測定は、コーティング産業に公知の手順に従って、D65発光体(昼光)を備えたポータブル分光光度計(spectro−guide(BYK−Gardner,Columbia,Md,USA製))および10°での観測者を用いて行った。例えばASTM E1164を参照のこと。構造Iのポリオールを用いて調製した本発明の熱硬化性樹脂を、アミン含有ポリオールを含む熱硬化性組成物と比較し、後者の熱硬化性樹脂は、トリエタノールアミン(TEOA)を架橋剤として用いる市販の熱硬化性組成物(下記参照)を含んでいた(表2)。b値は黄変色を表す。デルタb値(ペーパー上の試料についてのb−ペーパーについてのb)は、組成物の黄変を表す。
【0076】
【表2】

【0077】
TEOAはトリエタノールアミンであり;HEAはビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジポアミドである。
Acrodur(商標)950Lは、BASF AG(Ludwigshafen、Germany)によって供給される市販の熱硬化性樹脂製品である。
Ethoxylated PERは、エトキシル化ペンタエリスリトールである。
記録されるパラメータはL(明度)、a(+赤/−緑)およびb(+黄/−青)であるから、色測定は「L、a、b測定」と呼ばれる場合がある。
デルタb値は組成物の黄変を表すため、アミン架橋剤を用いる組成物は、望ましくない黄変をより強く示すことがわかる。
【0078】
実施例4
硬化した熱硬化性組成物の引張強度の評価
本実施例において、成分である多官能価ポリオールの機能として、得られた硬化した熱硬化性ポリマーの強度を調べた。有効な架橋の程度は、湿潤引張強度と乾燥引張強度を比較することにより確かめることができる。
【0079】
表1の水性硬化性組成物が湿潤および乾燥引張強度について以下のように評価された。ガラスミクロ繊維濾紙シート(20.3×25.4cm,カタログ番号1820866,Whatman International Ltd.,Maidstone,England)を各試料結合剤組成物に浸し、ロール圧力45psiでロールパダー通した。ついでMathisオーブン中で、90℃で5分間加熱することによりコーティングを施したシートを乾燥させた。乾燥後重量を測定して、結合剤添加量を算出した(結合剤添加量40重量%±2重量%、上記参照)。ついで乾燥したシートが、Mathisオーブン中、200℃の温度で3分間硬化された
【0080】
硬化したシートを1インチ(幅方向)×4インチ(縦方向)片に切り出し、Zwick 1120引張試験機(Zwick Roell AG,Ulm,Germany)で縦方向における引張強度について試験した。取り付け(fixture)間隙は1インチであり、引張速度は1インチ/分であった。試験片を「そのまま」(乾燥引張)または112℃、1.5バールのオートクレーブ中で15分間の直後(湿潤引張)のいずれかで試験した。引き離している間に測定されるピーク力として引張強度を記録した(表3)。記載したデータは、試験した各結合剤組成物に関する7試験片による平均である。
【0081】
【表3】

【0082】
硬化性組成物で処理したガラスミクロ繊維濾紙の湿潤引張強度(これは、同様に処理したガラスミクロ繊維濾紙の乾燥引張強度の実質的な部分である)は、組成物が硬化し、硬化した水性組成物処理されたガラスミクロ繊維濾紙の有用な高温性能が生じていることを示している。ポリオール(b)(本明細書において構造Iで示されている)を含有する熱硬化性樹脂の湿潤引張強度は、比較ポリオール(グリセロール,ソルビトールまたはペンタエリスリトール)を含有する熱硬化性樹脂の湿潤引張強度よりもかなり優れている(乾燥引張強度に対して、より高い百分率を維持している)。
【0083】
実施例5
試料MFM−4662のエマルジョンポリマー合成
以下の手順を用いてエマルジョンポリマー試料MFM−4662を調製した。パドル撹拌機、熱電対、窒素送入口、および還流凝縮器を備えた3リットル丸底フラスコに、熱脱イオン水793グラム、過硫酸アンモニウム1.95グラム、および100nmラテックスシード91.7グラム(固形分45%)の混合物を添加した。以下の配合に従ってモノマーエマルジョンを調製した:脱イオン水245.7グラム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム界面活性剤(30%)6.5グラム、ブチルアクリレート407.9グラム、スチレン255.1グラム、アクリル酸117.0グラム、およびn−ドデシルメルカプタン7.8グラム。反応温度を88℃に維持しながら、モノマーエマルジョンおよび、過硫酸アンモニウム(1.95グラム)の脱イオン水(102グラム)中の別の溶液を3時間かけて徐々に加えた。この添加を終えた後、反応混合物を88℃で20分間維持し、ついで70℃に冷却した。硫酸第一鉄七水和物(7.8ミリグラム)の脱イオン水(5.2グラム)中の溶液を反応混合物に加えた。脱イオン水19.5グラムで希釈した、tert−ブチルヒドロペルオキシド水溶液(70%)(2.55グラム)およびイソアスコルビン酸(1.82グラム)の脱イオン水(19.5グラム)中の溶液を、15分かけて反応混合物に徐々に加えた。反応混合物をさらに15分間70℃に維持し、ついで冷却した。得られたラテックスは、固形分およそ39.5%、pH2.43、重量平均粒子サイズ(BI−90Particle Sizerによる粒子直径)306nm、および重量平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)405,000を示した。
【0084】
実施例6
水性硬化性の熱硬化性組成物
カルボン酸含有エマルジョンポリマー+多官能価ポリオール
カルボキシポリマー種がカルボン酸官能価を有するエマルジョンポリマーであったことを除いて、実施例2と同様な方法で、水性硬化性熱硬化性組成物を調製した。以下のエマルジョンポリマーを用いた:
【0085】
Primal(商標)I−1955SF; 80EA/20MAA
Acrysol(商標)ASE−60ER; 60.3EA/39.6MAA
MFM−4662; 52.3BA/32.7Sty/15AA
(EAはエチルアクリレートであり;BAはブチルアクリレートであり;Styはスチレンであり;MAAはメタクリル酸であり;AAはアクリル酸である)。
【0086】
MFM−4662エマルジョンは、上記の実施例5に記載されているようにして調製した。Primal(商標)I−1955 SFおよびAcrysol(商標)ASE−60 ERは共に市販されている(Rohm and Haas Company,Philadelphia,USA)。水性硬化性の熱硬化性組成物を以下の表4に示すように配合した。COOH/OH比は1.0/0.5であった。
【0087】
【表4】

【0088】
実施例7
架橋の効果
酸含有エマルジョンポリマーを高い官能価のポリオールで架橋させた:
上記の表4からの各試料を固形分20%に希釈し、GF−Aガラスペーパー上に適用し、オーブン(90℃で10分間)中で乾燥させた。ついで架橋の程度をDynamic Mechanical Analysis(DMA)(100℃〜250℃、3℃/分で増加)で評価し、図1〜3に示すようにプロットした。架橋反応(およびそれにより硬化)は、温度の上昇中に生じ、それは動的引張貯蔵弾性率(E’)(例えば、L.E.Nielsen and R.F.Landel,Mechanical Properties of Polymers and Composites,2nd edn.,Marcel Dekker,1994を参照のこと)の顕著な上昇により明らかにされる。従って、本発明試料1B、2B、3Bおよび4Bについての弾性率(E’(GPa))対温度(℃)のDMAプロットは、〜200℃から出発して〜240〜250℃の新しい最大値に向けて顕著な上り坂を示した(それぞれ曲線B、D、F、およびG、;図1〜3および表5における図の説明参照)。比較組成物(比較例1B,比較例2B、および比較例3B)(それぞれ、曲線A,CおよびE;図1〜3および表5)は、弾性率の有意な変化を示さず、従って意味のある架橋がないことを示した。
【0089】
加熱による弾性率の変化は、最大モジュラス(温度〜230〜250℃)の、最小モジュラス(温度〜170〜180℃)に対する比(E’max/E’min)(表5)によりまとめることができる。
【0090】
【表5】

【0091】
比較グリセロール組成物よりも本発明によるポリオール架橋組成物(実施例1B、2B、3Bおよび4B)のほうが弾性率の増加が有意に大きいことが認められ得る。
【0092】
実施例8
重量による全固形分の測定
重量により全固形分を測定した場合、以下の通り、ASTM D−2369の方法を使用した。
手順:
1.アルミ製ディッシュの重さを小数第4位まで計る。この重量を記録する。
2.およそ0.5グラムの試料を検量し、ディッシュおよび試料の重量を小数第4位まで記録する。試料がディッシュ表面にわたって分散されているべきであることに留意する。試料を分散させるのを助けるために数滴の水を使用することができる。測定は二重測定で行うべきである。試料を150℃のオーブン中に30分間置く。
3.皮手袋をつけるか、トングを用いてオーブンから試料を出し、恒温・恒湿の部屋(25±3℃;相対湿度50±5%)でおおよそ2分おいて室温に冷却する。
4.アルミ製ディッシュおよびポリマーの重さを計り、小数第4位まで記録する。
5.下記の式を用いて、固形分パーセント(%固形分)を決定する:
乾燥前:
(ディッシュおよび湿潤試料の重量)−(ディッシュの重量)=(湿潤試料の重量)
乾燥後:
(ディッシュおよびポリマーの重量)−(ディッシュの重量)=(ポリマーの重量)
次に:
%固形分=100×(ポリマーの重量)/(湿潤試料の重量)
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の組成物B(本発明試料1B)、比較組成物A(比較例1B)の動的引張貯蔵弾性率(E’(GPa))対温度(℃)のDMAプロットを示す。
【図2】図2は、本発明の組成物D(本発明試料2B)、比較組成物C(比較例2B)の動的引張貯蔵弾性率(E’(GPa))対温度(℃)のDMAプロットを示す。
【図3】図3は、本発明の組成物FおよびG(それぞれ本発明試料3Bおよび4B)、比較組成物E(比較例3B)の動的引張貯蔵弾性率(E’(GPa))対温度(℃)のDMAプロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)溶液重合または乳化重合により製造される、少なくとも2つのカルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩を含む少なくとも1種のポリカルボキシ(コ)ポリマー;
(b)式Iの少なくとも1種のポリオール
【化1】

(式中、XはOまたはCから選択され;および
XがOである場合:
oおよびpはそれぞれ0であり、かつRおよびRは存在せず;
およびRは、独立して、それぞれの場合において、アルキル、アルキレン、オキシアルキレン、アルコキシおよびヒドロキシアルキルから選択され;
およびRは、独立して、それぞれの場合において、H、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシおよびヒドロキシアルキルから選択され;
並びに、m、n、およびqは、独立して1〜5から選択される整数であり;
それによりヒドロキシル基の総数は4〜8であり;
XがCである場合:
m、n、o、およびpは、独立して2〜16から選択される整数であり;
、R、RおよびRは独立して、それぞれの場合において、アルキレン、オキシアルキレンおよびアルコキシから選択され;
、R、RおよびRは独立して、それぞれの場合において、H、アルキル、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシから選択され;
および、q=1であり;
それによりヒドロキシル基の総数は4〜8であり;並びに
ここで、XがOまたはCである、それぞれの場合において、前記カルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩の当量の数の、前記ヒドロキシル基の当量の数に対する比は1/0.01〜1/3である):
を含む硬化性水性組成物。
【請求項2】
ポリカルボキシ(コ)ポリマー(a)が、少なくとも1種の共重合されたエチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーを含む付加ポリマーまたはコポリマーである、請求項1記載の硬化性水性組成物。
【請求項3】
ポリオール(b)が、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、1〜15−プロポキシル化ペンタエリスリトール、1〜15−エトキシル化ペンタエリスリトール、1〜15−プロポキシル化ジトリメチロールプロパン、1〜15−エトキシル化ジトリメチロールプロパン、1〜15−エトキシル化ジペンタエリスリトール、1〜15−プロポキシル化ジペンタエリスリトール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の硬化性水性組成物。
【請求項4】
グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、およびグルコースからなる群から選択される1以上のポリオールをさらに含む、請求項1記載の硬化性水性組成物。
【請求項5】
リン含有硬化促進剤をさらに含む、請求項1記載の硬化性水性組成物。
【請求項6】
ポリカルボキシ(コ)ポリマー(a)がエマルジョンコポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
基体を処理する方法であって、
(a)溶液重合または乳化重合により製造される、少なくとも2つのカルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩を含む少なくとも1種のポリカルボキシ(コ)ポリマー;
(b)式Iの少なくとも1種のポリオール
【化2】

(式中、XはOまたはCから選択され;および
XがOである場合:
oおよびpはそれぞれ0であり、かつRおよびRは存在せず;
およびRは、独立して、それぞれの場合において、アルキル、アルキレン、オキシアルキレン、アルコキシおよびヒドロキシアルキルから選択され;
およびRは、独立して、それぞれの場合において、H、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシおよびヒドロキシアルキルから選択され;
並びに、m、n、およびqは、独立して1〜5から選択される整数であり;
それによりヒドロキシル基の総数は4〜8であり;
XがCである場合:
m、n、o、およびpは、独立して2〜16から選択される整数であり;
、R、RおよびRは独立して、それぞれの場合において、アルキレン、オキシアルキレンおよびアルコキシから選択され;
、R、RおよびRは独立して、それぞれの場合において、H、アルキル、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシから選択され;
および、q=1であり;
それによりヒドロキシル基の総数は4〜8であり;並びに
ここで、XがOまたはCである、それぞれの場合において、前記カルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩の当量の数の、前記ヒドロキシル基の当量の数に対する比は1/0.01〜1/3である);
と水または1以上の水性溶媒とを混合することを含み、硬化性水性組成物を形成すること;
前記硬化性水性組成物と前記基体を接触させるか、またはその代わりに、前記硬化性水性組成物を前記基体に適用すること;並びに
100℃〜400℃の温度で前記硬化性水性組成物を加熱すること:
を含む、基体を処理する方法。
【請求項8】
請求項6記載の方法により製造される、繊維物品、不織物品または複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−266566(P2008−266566A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−320570(P2007−320570)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】