説明

硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートおよび硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】得られるフォームの接着性と寸法安定性のバランスに優れる硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートおよび硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートは、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート85〜99.7質量部と脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方0.3〜15質量部とからなる。好ましくは、発泡剤が水であり、脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方が、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその変性体のうちのいずれか一方または双方であり、ポリイソシアネートの25℃における粘度が200mPa・s以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートおよび硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、住宅の内壁材、外壁材、ドア、パネル等の建材分野および保冷材が取り付けられる冷蔵庫等の断熱機器に代表される断熱性が求められる分野を中心として広く利用されている。
【0003】
硬質ポリウレタンフォームは、触媒および発泡剤の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを撹拌混合し、反応させるとともに発泡させることで製造される。このとき、整泡剤、難燃剤、助剤等の副資材が適宜加えられる。
従来、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いる発泡剤はフロン類が広く用いられていたが、環境問題のために、塩素を含まないハイドロフルオロカーボンや水等で代替することが進められている。
【0004】
しかしながら、ハイドロフルオロカーボンや水等を発泡剤として使用する場合、ウレタンフォームの表面の脆性が増し、ポリウレタンフォームの機械物性や成形性、建材等の被着物との接着性が低下する等の種々の問題がある。
【0005】
これらの問題点を改善するために、例えば、特定のイミダール触媒を用いることで、脱型時の樹脂強度を損なうことなしに成形性に優れ、耐黄変性を有するポリウレタンフォームを得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むポリオールと特定の助剤を用いることで、発泡反応時の原液の混合性および流れ性を向上させ、フォーム発泡時の初期および恒久的な接着強さを有する寸法安定性、難燃性の良好なポリイソシアヌレートフォームを得る方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、特定の改質剤を用いることで、脆性が改良され、面材との優れた接着性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る方法が提案されている(特許文献3参照)。
また、ポリイソシアネート成分として2核体ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアジフェニルメタンジイソシアネート。以下、これをピュアMDIと表記することがある。)と3核体以上のジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート。以下、これをポリメリックMDIと表記することがある。)の混合物を用いることで、脆性が小さく、特に低温域における引張り特性に優れたポリウレタンフォームを得る方法が提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平9−87351号公報
【特許文献2】特開2002−363241号公報
【特許文献3】特開2004−107613号公報
【特許文献4】特開2007−2118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術は、いずれも、必ずしも良好な接着性を与えるものではなく、冬場、特に寒冷地で施工するときの接着性は必ずしも十分ではないものと思われる。
また、上記した従来技術のうちで、例えば助剤を加えることで接着性が改善されるものについては、フォームの寸法安定性が悪く、言い換えれば接着性と寸法安定性のバランスが悪いように思われる。この場合、寸法安定性が低いことは、それによって例えば壁にフォームを接着した状態で長期間使用する過程で、フォームが収縮して壁から剥離する等のいわば恒久的な接着性が低下するという意味においても好ましくない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、得られるフォームの接着性と寸法安定性のバランスに優れる硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートおよび硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートは、触媒および発泡剤の存在下、ポリオールと反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するために用いる硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートにおいて、
ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート85〜99.7質量部と脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方0.3〜15質量部とからなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートは、好ましくは、前記発泡剤が水であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートは、好ましくは、前記脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方が、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその変性体のうちのいずれか一方または双方であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートは、好ましくは、前記ポリイソシアネートの25℃における粘度が200mPa・s以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、触媒および発泡剤の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、上記の硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートは、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート85〜99.7質量部と脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方0.3〜15質量部とからなるため、得られるフォームの接着性と寸法安定性のバランスに優れ、建材、断熱機器その他の基材にフォームを接着して使用するうえで好適である。
また、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、上記の硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートを用いるため、上記発明の効果を好適に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0015】
本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートは、触媒および発泡剤の存在下、ポリオールと反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するために用いるものである。
本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネート(以下、これを単に本実施の形態に係るポリイソシアネートということがある。)は、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート85〜99.7質量部と脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方0.3〜15質量部とからなる。
【0016】
本実施の形態に係るポリイソシアネートは、フォーム製造に先立ち、予め混合物(配合物)として調製したものであってもよく、また、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートと、脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方とを、この比率の量でそれぞれ別に貯蔵しておいて、フォーム製造の際に他の原料とともに配合するものであってもよい。
【0017】
ここで、ポリイソシアネートの組成を上記の構成とすることによるフォーム特性への影響を考察する。
良好な断熱性を得るために通常用いられるポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(以下、これをポリメリックMDIということがある。)は、高い反応性を有するため、例えば現場施工でフォームを短時間で形成する場合等において好ましいが、他の原料と混合、撹拌して基材に塗布する過程でポリイソシアネートが基材表面全体に均一に拡散する前にフォームの硬化、発泡が完了してしまい、いわゆる濡れ性が損なわれるおそれがある。
これに対して、主成分としてのポリメリックMDIに適量の脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートを配合すると、脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートの反応性がポリメリックMDIの反応性よりも低いために、他の原料と混合、撹拌して基材に塗布する過程でポリイソシアネートが基材表面全体に均一に拡散した状態でフォームの硬化が行われ、いわゆる濡れ性の良好なフォームが得られるのではないかと考えられる。
【0018】
使用するポリメリックMDIは、実用的に入手可能な、ベンゼン2核体とベンゼン多核体との混合物(クルードMDI)である。この場合、混合物(クルードMDI)は、実用的に入手可能なポリメリックMDI単独品であってもよく、また、実用的に入手可能なポリメリックMDIと、ベンゼン2核体のみを含むピュアMDIの混合品であってもよい。ポリメリックMDI(クルードMDI)中のベンゼン2核体の含有量は、特に限定するものではなく、例えば、10〜80質量%、好ましくは20〜60質量%の範囲で含んでいてもよい。
また、本実施の形態において、ベンゼン多核体のみからなるMDIの使用を排除するものではない。また、ポリメリックMDIを一部ポリオール等で変性したものを用いてもよい。
【0019】
ポリメリックMDIとともに使用する脂肪族イソシアネートもしくは脂環族イソシアネートは、上記のように脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方(混合物)である。脂肪族ポリイソシアネートは、その種類を特に限定するものではないが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびその変性体のうちから選ばれるいずれか一方または双方を好適に用いることができる。また、脂環族ポリイソシアネートも、その種類を特に限定するものではないが、イソホロンジイソシアネート(IPDI)およびその変性体のうちから選ばれるいずれか一方または双方を好適に用いることができる。入手の容易性の観点からは脂肪族イソシアネートを用いることが好ましい。
【0020】
上記本実施の形態に係る組成のポリイソシアネートを用いることにより、接着性と寸法安定性の双方が良好で、かつ両者のバランスが優れる硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。すなわち、発泡剤として水を用いる場合、接着試験における接着温度0℃での剥離強さが4(単位:N/7cm)以上でかつ寸法安定性評価試験における体積収縮率が5%以下の硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。なお、ポリメリックMDIの比率が極端に大きいと接着性が低下するおそれがあり、一方、脂肪族イソシアネートもしくは脂環族イソシアネートの比率が極端に大きいと寸法安定性が低下するおそれがある。
【0021】
また、本実施の形態に係るポリイソシアネートは、25℃における粘度が200mPa・s以下であると好適である。ここで、粘度はB型回転粘度計により測定して得られる値である。
【0022】
硬質ポリウレタンフォームには、スラブ発泡(切り出しボード)、注入発泡、ラミネート、サンドイッチパネルおよびスプレー発泡(現場発泡)等がある。
これまで説明してきた本実施の形態に係るポリイソシアネートは、上記のいずれにも適用できるものであるが、そのなかでも、前述したように短時間での施工が求められるスプレー発泡により好適に適用できる。
そして、スプレー発泡で、25℃における粘度が200mPa・s以下のポリイソシアネートを用いることにより、原料の撹拌、混合操作における取り扱い性に優れ、またスプレー性(均一な混合)にも優れる。
このような低粘度のポリイソシアネート配合物は、ポリイソシアネート成分として粘度の低いピュアMDIやHDIを含むことにより実現される。ポリイソシアネート配合物の粘度の下限値は限定するものではなく、フォームの物性を損なう等の不具合のない限り低ければ低いほど好ましい。
【0023】
つぎに、本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法について説明する。本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、上記本実施の形態に係るポリイソシアネートを用いることによりその効果を好適に発揮することができるものである。
【0024】
すなわち、本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、触媒および発泡剤の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、ポリイソシアネートが、ポリメリックMDIを85〜99.7質量部と脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方を0.3〜15質量部の割合で配合されるものである。
また、本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、好ましくは、発泡剤として水を用いるものである。
また、本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、好ましくは、使用する脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方が、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその変性体のうちのいずれか一方または双方である。
また、本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、好ましくは、使用するポリイソシアネートの25℃における粘度が200mPa・s以下である。
【0025】
本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、好ましいイソシアネートインデックス〔(ポリイソシアネート組成物中の全イソシアネート基のモル数/ポリオール中の全活性水素基のモル数)×100〕は、50〜500の範囲内であり、さらに好ましくは80〜300の範囲内である。
【0026】
本実施の形態に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、使用する触媒は、その種類を特に限定するものではないが、ポリオール中の活性水素含有基と有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基の反応を促進させる有機スズ化合物などの金属化合物系触媒やトリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ビスジメチルアミノエチルエーテル(BDMAEA)などの3級アミン触媒が使用される。また、イソシアネート基同士を反応させる三量化触媒も必要に応じて使用される。
【0027】
発泡剤は、その種類を特に限定するものではないが、水やハイドロフルオロカーボンのいずれか一方または双方を併用したもの、そのうちでも特に水を単独で用いると、本発明の効果をより好適に得ることができる。
水発泡する場合、水を例えばポリオール成分100質量部に対して3〜10質量部程度配合する。
【0028】
本実施の形態において、良好な気泡を形成する目的から、整泡剤が使用される。整泡剤としては、ポリウレタン工業分野において整泡剤として公知のものであれば、いずれも使用することができ、例えば、シリコーン系整泡剤や含フッ素化合物系整泡剤などがある。また、本実施の形態においては必要に応じてさらに助剤として、例えば充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤などを用いることができる。難燃剤の代表的なものとしてはトリス(クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)を挙げることができ、また、例えば、助剤としてトリエチレングリコールジメチルエーテルやジオクチルマレエート等を使用することも好ましい。
【0029】
本実施の形態において、イソシアネート基と反応しうるポリオール、即ち、活性水素含有官能基を2以上有する活性水素化合物としては、水酸基やアミノ基などの活性水素含有官能基を2以上有する化合物、あるいはその化合物の2種以上の混合物であれば、公知のものをいずれも使用することができる。
前記の2以上の水酸基を有する化合物としては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、多価アルコール、水酸基含有ジエチレン系ポリマーなどがある。特にポリエーテル系ポリオールの1種以上のみからなるか、それを主成分としてポリエステル系ポリオール、多価アルコール、ポリアミン、アルカノールアミン、その他の活性水素化合物との併用が好ましい。ポリエーテル系ポリオールとしては、多価アルコール、糖類、アルキルアミン、アルカノールアミン、その他のイニシエーターに環状エーテル、特にプロピレンオキシドやエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加して得られるポリエーテル系ポリオールが好ましい。また、ポリオールとしてポリマーポリオールあるいはグラフトポリオールと呼ばれる主にポリエーテル系ポリオール中にビニルポリマーの微粒子が分散したポリオール組成物を使用することもできる。ポリエステル系ポリオールとしては、多価アルコール、多価カルボン酸縮合系のポリオールや環状エステル開環重合体系のポリオールがあり、多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがある。多価カルボン酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、ヘット酸などがある。この中でもポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、及びその混合物がより好ましい。
本実施の形態において用いられるポリオールは、水酸基価が20〜700KOHmg/g、好ましくは100〜400KOHmg/gのものから、得られる硬質ポリウレタンフォームの用途、即ち要求される諸物性に応じて選択される。
【実施例】
【0030】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
以下の説明のなかで各原料を記号あるいは商品名で表記したが、その具体的な化合物名称や製造元等は、製造方法の説明の後にまとめて示した。
【0031】
(HDI変性体「HDI−2」の合成例)
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI−1)を950g、イソプロパノールを50g仕込み、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、90℃にて3時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は42.1%であった。この反応生成物を130℃・0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、イソシアネート含量が19.4%、25℃の粘度が101mPa・s、遊離のヘキサメチレンジイソシアネート含有量が0.2%、色数が10APHA、2官能成分が73%のポリイソシアネート「HDI−2」を得た。「HDI−2」をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。
【0032】
(HDI変性体「HDI−3」の合成例)
撹拌機、温度計及び還流冷却器を取り付けた四ッ口フラスコに、HDI−1を988gとDMHを8g、TOPINを1.5gを仕込んだ。これを撹拌しながら50〜60℃に加熱し、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を進めた。そしてその後、この反ウレトジオン化及びイソシアヌレート化反応を進め、所定のNCO含量(反応停止時のNCO含量)に到達した時点で停止剤であるパーメンタHを加えて反応を停止させ、淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、イソシアネート含量が22.3%、25℃の粘度が90mPa・s、遊離のヘキサメチレンジイソシアネート含有量が0.2%、色数が50APHA、ウレトジオン二量体含有率が56%、イソシアヌレート環状三量体含有率が36%のポリイソシアネート「HDI−3」を得た。なお、ウレトジオン二量体含有率、イソシアヌレート環状三量体含有率は、示差屈折率計検出によるゲルパーミェーションクロマトグラフィーによって得られる各ピークの面積百分率をもとに検量線から求めた。
【0033】
(ポリオールプレミックスの調製(1))
SV−165を70部(質量部である。以下、同様。)、DK3776を30部、TCPPを50部、SH193を1.5部、水を5部、DTを0.2部、DM70を0.5部、PC−41を0.5部、それぞれ配合して混合撹拌することにより、ポリオールプレミックスを得た。得られたポリオールプレミックスの25℃における粘度は320mPa・sであった。
得られたポリオールプレミックスは、実施例1〜8および比較例1〜8で使用した。
【0034】
(ポリオールプレミックスの調製(2))
SV−165を70部、DK3776を30部、TCPPを50部、SH193を1.5部、水を5部、DTを2部、DM70を5部、PC−41を5部、それぞれ配合して混合撹拌することにより、ポリオールプレミックスを得た。得られたポリオールプレミックスの25℃における粘度は300mPa・sであった。
得られたポリオールプレミックスは、実施例9で使用した。
【0035】
(硬質ポリウレタンフォームの製造:実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例8)
それぞれ表1に示す条件で配合したポリイソシアネートと上記ポリオールプレミックスを20℃に温度調整し、撹拌装置で両者を体積比で等分に混合し、3000rpmで4秒間撹拌、混合した。その後、得られた混合液を0℃また20℃のいずれかの温度に調整された0.35mm厚みのカラー鋼板上にセットされたクラフト紙の上に注いで発泡させて、硬質ポリウレタンフォームを得た。
得られた硬質ポリウレタンフォームについて、後述する測定・評価方法により、接着性(接着強度、剥離強さ)および寸法安定性(体積収縮率)を求めた。なお、表中、接着強度の項の温度は、カラー鋼板の温度である0℃また20℃に対応する。
各実施例および比較例での配合したポリイソシアネートの粘度および接着性ならびに寸法安定性の結果をまとめて表1に示す。以下の実施例9についても同様である。
【0036】
(硬質ポリウレタンフォームの製造:実施例9)
表1に示す条件で配合したポリイソシアネートと上記ポリオールプレミックスを20℃に温度調整し、スプレー発泡機で両者を体積比で等分に混合し、被着体としてのベニヤ板上に下記スプレー施工条件でエアレススプレー発泡を行って、硬質ポリウレタンフォームを得た。
<スプレー施工条件>
○スプレー発泡機:GUSMER社製 FF−1600
○ミキシングヘッド:Dガン
○被着体の温度:0℃
○プライマリーヒーター設定温度:30〜45℃
○ホースヒーター設定温度:30〜45℃
【0037】
(原料成分リスト)
<芳香族イソシアネート>
○MDI―1:日本ポリウレタン工業社製 MR−200(ピュアMDI含有量40PA(ピークエリア)%、NCO含有量30.8質量% 25℃での粘度190mPa・s)
○MDI―2:日本ポリウレタン工業社製 ミリオネートMT(NCO含有量33.6質量% 43℃での粘度5mPa・s)
○TDI―1:日本ポリウレタン工業社製 ミリオネートT−80(NCO含有量48.3質量% 23℃での粘度3mPa・s)
<脂肪族イソシアネート>
○HDI―1:日本ポリウレタン工業社製 HDI(NCO含有量49.9質量% 23℃での粘度2mPa・s)
○HDI―4:日本ポリウレタン工業社製 コロネートHX(NCO含有量21.1質量% HDIの三量体含有率99.0質量% HDI単量体含有率1%以下 25℃での粘度2600mPa・s)
<脂環族イソシアネート>
○IPDI―1:三井化学ポリウレタン工業社製 (NCO含有量37.7質量% 20℃での粘度15mPa・s)
<ポリオール>
○SV−165:フタル酸系ポリエステルポリオール、日立化成ポリマー社製 (水酸基価200KOHmg/g)
○DK3776:マンニッヒ系ポリエーテルポリオール、第一工業製薬社製 (水酸基価350KOHmg/g)
○TCPP:トリス(クロロプロピル)ホスフェート、アクゾノーベル社製
<整泡剤>
○SH193:東レ・ダウコーニングシリコン社製 (シリコーン系整泡剤)
<触媒>
○DT:東ソー社製 Toyocat DT
○DM70:東ソー社製 Toyocat DM70
○PC−41:サンアプロ社製 ポリキャット 41
<助剤>
○DMTG:トリエチレングリコールジメチルエーテル
○DOM:ジオクチルマレエート
【0038】
(フォーム特性の評価方法)
(1)接着試験における剥離強さ(接着強度)の測定方法
被着基材であるクラフト紙(タイコークラフト 75g/m2 大興製紙株式会社製)を0.35mmの厚みのカラー鋼板上にセットし、所定の温度に設定された乾燥器内に配置する。基材温度が設定温度になった時点で、所定の条件で、ポリオール、ポリイソシアネート等の硬質ポリウレタンフォームの原料を混合、撹拌して調製した調製液を、クラフト紙の上に注ぎ、直径200mmで中心部の高さが50mmのほぼ円錐台形状になるように発泡フォームを形成する。硬質ポリウレタンフォームの原料の混合、撹拌開始から1時間後に発泡フォームが接着したクラフト紙を取り出し、上下反転して、発泡フォームの中央部分に位置するクラフト紙の部分に、7cm四方に切り込みを入れる。周囲のクラフト紙から切り離され、発泡フォームにのみ接着するクラフト紙の四角の切り込み部分の一端をクリップで挟んでばね秤で吊り上げて、四角のクラフト紙が発泡フォームから完全に剥離するまでの間の最大の力(単位:N)を測定し、上記所定の温度における剥離強さ(単位:N/7cm)を得る。
上記接着試験における剥離強さの測定方法における所定の温度、言い換えれば接着温度あるいは環境温度は、寒冷地でフォームの使用を考慮して0℃とする。ただし、これに限らず、任意の温度、例えば20℃であってもよいことはもちろんである。
【0039】
(2)寸法安定性評価試験
上記接着試験における剥離強さの測定方法と同様の方法で、クラフト紙の上に発泡フォームを形成し、撹拌開始から24時間後に、クラフト紙の周端から少なくとも1cm離れたコア部分から発泡フォームを100mm×100mm角(厚み20mm)の寸法に切り出し、板状試験片とする。試験片を設定温度80℃の恒温槽に配置し、恒温となった48時間後に試験片を恒温槽から取り出し、寸法を測定する。この寸法と恒温槽に配置する前の試験片の寸法とから体積収縮率(体積基準寸法変化率)を求める。
【0040】
なお、実施例1〜8および比較例1〜8で得られた硬質ポリウレタンフォームについては、上記の各方法で接着性および寸法安定性を測定、評価したが、実施例9で得られた硬質ポリウレタンフォームについては、以下の方法で行った。
すなわち、被着体は厚み12mmのベニヤ板を用い、接着試験ではその上に接着基材としてリンクル板目表紙を貼付し、硬質ポリウレタンフォームが30mmの厚みになるように硬質ポリウレタンフォーム原料を吹き付けた。吹き付け後、0℃で1.5時間養生した後に、硬質ポリウレタンフォームを接着基材ごとベニヤ板から剥がし、基材に5cm四方の切り込みを入れた後、前記した測定方法により接着性を求めた。
また、寸法安定性試験では、ベニヤ板上に硬質ポリウレタンフォーム原料を直接吹き付け、常温で1日以上養生した後に、硬質ポリウレタンフォームをベニヤ板から剥がし、ベニヤ板接着面から少なくとも5mm離れたコア部分から発泡フォームを70mm×70mm角(厚み15mm)の寸法に切り出し、板状試験片とし,前記した測定方法により寸法安定性を求めた。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒および発泡剤の存在下、ポリオールと反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するために用いる硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートにおいて、
ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート85〜99.7質量部と脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方0.3〜15質量部とからなることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネート。
【請求項2】
前記発泡剤が水であることを特徴とする請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネート。
【請求項3】
前記脂肪族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのうちから選ばれるいずれか一方または双方が、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその変性体のうちのいずれか一方または双方であることを特徴とする請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネート。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートの25℃における粘度が200mPa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネート。
【請求項5】
触媒および発泡剤の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネートを用いることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2009−40905(P2009−40905A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207918(P2007−207918)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】