説明

硬質材切削装置のための洗浄媒体浄化装置

【課題】硬質材切削装置の洗浄媒体浄化装置における、高度な研磨性を有する洗浄媒体のための、丈夫な電子的流量センサを得る。
【解決手段】硬質材切削装置2のための洗浄媒体浄化装置に、硬質材を装備した洗浄すべき工具4に、少なくとも部分的に閉じたループの洗浄媒体回路を設け、洗浄媒体回路の流れの方向にみて工具4の後段に、沈殿槽8および洗浄媒体ポンプ9を順次に設ける。模擬(シミュレーション)アルゴリズムを有する計算手段14,14′によって電子的に分析評価可能な、センサ15,15′を備え、このセンサ15,15′によって流れの方向にみて洗浄媒体ポンプ9の後段における洗浄媒体圧力pを感知する。好適には、洗浄媒体回路内に、流れの方向にみて、電子的に分析評価可能なセンサ15,15′の後段に、濾過ユニット10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄媒体から固体物質を濾過除去するための洗浄媒体浄化装置に関する。このような洗浄媒体は、ダイヤモンドコア(くり抜きドリル装置)、ダイヤモンド丸鋸(ダイヤモンド刃丸鋸)装置、またはダイヤモンドワイヤ鋸装置などの硬質材切削装置によって、岩石、コンクリート、組積構造、等の材料から削り出される切削屑を排除するのに不可欠な補助材料として利用する。
【背景技術】
【0002】
洗浄媒体は、岩石、コンクリート、組積構造、またはそのような岩状材を切削する作業において、硬質材を装備した工具から削り出される固形物質を、加工部位から排除するのに用いる。加工部位から導出させる洗浄媒体、好適には水によって、粒子として発生する固形物質を洗い流す。閉ループの洗浄媒体回路において洗浄媒体を再利用するために、または洗浄媒体を無駄なく下水道に誘導するためには、洗浄媒体に含まれる固形物質を除去しなければならない。このような洗浄媒体には、岩石粉末、並びに粉塵粒子として解離した硬質材切削装置の硬質物質粒(ダイヤモンド破片、多結晶立方晶窒化ホウ素[PKB]、コランダム)が高濃度に含まれ、したがって、洗浄媒体自身も高度な研磨作用を有する。さらに、洗浄媒体は、塩基性の岩石粉末によってpH価が高くなり、そのために洗浄媒体回路を急激に石灰化する。
【0003】
特許文献1には、コアドリル装置のために構成した、この種の個別の洗浄媒体浄化装置が記載されている。この洗浄媒体浄化装置は、調整できない洗浄媒体回路であって、洗浄すべき硬質材装備工具に接続可能な洗浄媒体回路を有し、この洗浄媒体回路には、流れの方向にみて工具の後段に、沈殿槽、洗浄媒体ポンプ、および濾過ユニットを順次に設ける。
【特許文献1】独国特許第19810921号明細書
【0004】
特許文献2には、洗浄媒体回路に機械的流量計を内蔵した、可搬式岩盤用丸鋸が記載されている。機械的流量計は視覚的に読み取り可能であるため、使用者が洗浄媒体回路をモニタおよび調整する際に役に立つ。しかし、機械的流量計は、このように高度な研磨性を有し、石灰化を促進する洗浄媒体に用いると、突然故障する恐れがある。
【特許文献2】国際公開第0513175号明細書
【0005】
しかし、最近の高い出力の硬質材切削装置においては、狭い公差範囲で、常に最適な状態を維持して洗浄媒体を工具に供給することの保証は、プロセスパラメータとしての高い重要性を有するもので、このプロセスパラメータは、硬質材切削装置の計算手段において、制御および調整パラメータとして機能する。この場合、実質な物理量は、洗浄媒体回路におけるその時点での流量である。
【0006】
特許文献3には、ダイヤモンドワイヤダ鋸装置における、計算手段によって制御する洗浄媒体浄化装置が記載されている。この計算手段によって、電子的に制御可能な弁を介して、熱交換器において冷却用に使用する副次的回路の流量を制御し、これによって温度調節を行う。しかし、この場合、洗浄媒体回路において流量を測定または調整することはできない。
【特許文献3】特開平10‐180750号公報
【0007】
さらに、流量の測定に関する理論上の原則としては、ハーゲン−ポアズイユの法則に従い、配管内における流通抵抗による圧力減衰に基づいて求める方法が知られている。特許文献4には、一般的な事例として、配管内に備えた制御可能な絞りスライドの両側における圧力を、圧力測定器によって測定し、事前に較正して記憶した圧力抵抗値を用いて、純粋に計算的に、流量を算出する方法が記載されている。この一般的な従来技術は、経済的に比較的コストが高い。
【特許文献4】欧州登録特許第0565485号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、硬質材切削装置の洗浄媒体浄化装置における、高い研磨性を有する洗浄媒体のための、丈夫な電子的流量センサを得ることにより、計算手段支援の制御回路および/または調整回路を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明特許請求の範囲における請求項1に記載の特徴により本質的に解決する。その他の好適な実施例は従属項に記載する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬質材切削装置のための洗浄媒体浄化装置に、硬質材を装備した洗浄すべき工具に接続する少なくとも部分的に閉じたループの洗浄媒体回路を設け、この洗浄媒体回路の流れの方向にみて、順次に工具の後段に、沈殿槽および洗浄媒体ポンプを配置する。洗浄媒体浄化装置に、模擬(シミュレーション)アルゴリズムを有する計算手段によって電子的に分析評価ができるセンサを設け、このセンサによって流れの方向にみて洗浄媒体ポンプ後段における洗浄媒体圧力を感知するものとする。
【0011】
流れの方向にみて洗浄媒体ポンプの後段における洗浄媒体の圧力を感知する、電子的に解析可能なセンサを設けることにより、洗浄媒体ポンプの後段、すなわち洗浄媒体ポンプの吐出側から工具までの回路部分における流量の特徴を表す模擬(シミュレーション)アルゴリズム(例えば、テーブルによってまたは機能的に記憶した、流れの抵抗値に相関する測定値を有する)を格納した計算手段によって、流量を間接的に算出することを前提とする。この場合、硬質材切削装置において、工具に、既知の周辺圧力(通常は大気圧)が、放出された洗浄媒体に必然的に作用し、したがって、このような特別な場合、算出に理論上必要な圧力差を、1回の圧力測定によって一義的に決定できるということを、特に利用できる。機械的に移動する部材を省くことにより、電子的な流量センサは、建設業界での使用にとって、十分頑丈である。そのため、流れの抵抗を生じる流路部分の反対側の端部に、洗浄媒体圧力を測定するための2個目のセンサを設ける必要がなく、構成が簡単になる。これにより、通常の制御アルゴリズム、すなわち、所定の限界流量値を下回った場合に異常処理ルーチン(例えば、警告シグナルやスイッチを切る)を実行し、また、通常の調整アルゴリズム、すなわち、所定目標流量に対してPID調整、を実行する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
好適には、洗浄媒体回路内に、流れの方向にみて、センサの後段に濾過ユニットを備える。これにより、例えばこのような装置において起こりうる詰まりなどによる濾過特性の変化を、測定した流路部分における流れの抵抗値の変化としてフィードバックし、計算手段によって間接的に制御できる。
【0013】
好適には、センサを、圧力に応答して直接切り替わる閾値スイッチ(例えば、流体密の感圧フィーラ)として構成し、洗浄媒体ポンプの吐出側において、洗浄媒体に圧力伝達するよう接続する。センサは個々の流量閾値に基づく、簡単な制御および調整装置で十分であるため、頑丈及び経済的に有利に実現できる。
【0014】
その他に、センサを電子的な圧力センサとして構成することも有利であり、さらに好適にはセンサの前に空気パッドを備え、また、連続的な測定領域を有するものとする。これにより、計算手段によって連続的に模擬(シミュレーション)演算を行うことによって、連続的な流量値範囲を把握できる。計算手段による、記憶(格納)した複数個の離散的シミュレーションポイント間における通常の補間ルーチンにより、連続的な模擬(シミュレーション)演算を実行できる。
【0015】
さらに好適には、センサまたは、付加的に設けた電子的に解析可能なセンサを、洗浄媒体ポンプの連続的に単調推移する電流‐圧力特性曲線を利用し、洗浄媒体ポンプと、給電回路に備えた電子的に解析可能な電流センサとの組み合わせによって、間接的に圧力測定するよう構成する。さらに好適には、電流センサを低抵抗性の抵抗によって構成し、この抵抗を計算手段によって分析評価することにより、直接的に圧力測定をするセンサを高い研磨性を有する洗浄媒体中に備える必要がなくなる。さらに好適には、センサを、例えばパワー‐MOS‐FETなどの制御可能な抵抗として給電回路内に構成することにより、洗浄媒体浄化装置内において洗浄媒体ポンプの、スイッチを切るなどの直接的な制御を計算手段によって行える。このような計算手段を、洗浄媒体浄化装置の計算手段によっても、硬質材切削装置の計算手段によっても構成可能であり、また、例えば通常のマスタ−スレーブ操作などにおいては、洗浄媒体浄化装置と硬質材切削装置の両方の計算装置を、同時制御的に機能させることができる。
【0016】
固有の計算手段を有するように構成した独立した洗浄媒体浄化装置では、好適には、電流センサ自身を洗浄媒体浄化装置内に備え、計算手段に接続する。これにより、独立的に、また制御および調整可能に洗浄媒体の浄化を行える。
【0017】
硬質材切削装置に内蔵した計算手段を有する洗浄媒体浄化装置/硬質材切削装置の組み合わせシステムにおいては、洗浄媒体浄化装置の洗浄媒体ポンプを、給電回路を介して電流センサによって給電する構成にする。好適には、電流センサ自身または付加的に設けた電流センサ自身を硬質材切削装置に備えることができる。これにより、独立的に、また制御および調整可能に洗浄媒体の浄化を行える。この場合、電子的に分析評価可能なセンサを、洗浄媒体浄化装置/硬質材切削装置の組み合わせシステムにおける洗浄媒体浄化装置に組み込む。
【0018】
以下、洗浄媒体浄化装置/硬質材切削装置システムを示した図面につき、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図には、独立した洗浄媒体浄化装置1と、独立した硬質材切削装置2とによって構成した洗浄媒体浄化/硬質材切削装置の組み合わせシステムを示す。この硬質材切削装置2は、岩状物3のためのコア(くり抜き)ドリル装置として構成し、回転式のダイヤモンドドリルクラウンとして構成した、硬質材を装備流体洗浄すべき工具4を有する。洗浄媒体浄化装置1と硬質材切削装置2を、接続断面箇所5において配線または配管接続部6(電流もしくは流体のための)によって互いに適切に接続する。このように硬質材切削装置2に接続し、通過流量がdV/dtの閉じた洗浄媒体回路には、流れの方向に見て、工具4の後段で大気圧P0に開口する吸い込みリング7、沈殿槽8、洗浄媒体ポンプ9、および濾過ユニット10を順次に設け、水とした洗浄媒体11を、吸い込みリング7と工具4との間に存在する固形物質12とともに、密封した耐圧性の導管13によって案内する。
【0020】
洗浄媒体浄化装置1のみならず硬質材切削装置2にも、それぞれ、マイクロコントローラμCとして構成した計算手段14,14′を接続し、この計算手段14,14′には、洗浄媒体浄化に関する模擬(シミュレーション)記述命令(測定値−>流量dV/dt等)、および模擬(シミュレーション)アルゴリズムを格納しておき、電子的分析評価を行うセンサ15,15′に接続し、流れの方向にみて洗浄媒体ポンプ9の後段の吐出側におけるセンサ15は、洗浄媒体圧力pを感知する。計算手段14,14′は、限界流量値に関する異常処理ルーチンを備えた通常の制御アルゴリズムと、所定目標流量に関するPID−調整の調整アルゴリズムとを有する。
【0021】
洗浄媒体浄化装置1内に備えた計算手段14によって電子的に分析評価ことが可能なセンサ15は、流体密な感圧触子(フィーラ)の形式である圧力に応じて直接切り替わる閾値スイッチ、または電子的な圧力センサとして構成し、対面配置した空気パッド16を介して、洗浄媒体ポンプ9の吐出側において洗浄媒体11に、圧力伝達するよう接続する。洗浄媒体浄化装置1の計算手段14に、洗浄媒体浄化に関する模擬(シミュレーション)記述命令(圧力p−>流量dV/dt)を格納しておく。
【0022】
連続する単調な電流‐圧力特性曲線17を有効に利用することに基づいて、洗浄媒体ポンプ9には、さらに、洗浄媒体ポンプ9の給電回路18に配置し、可変抵抗の形式として洗浄媒体浄化装置1の計算手段14によって分析評価可能な電流センサ20によって流量を間接的に測定できる、電子的に解析可能なセンサ15′を設ける。電流‐圧力特性曲線17を、計算手段14の洗浄媒体浄化に関する模擬(シミュレーション)記述命令(電流I−>流量dV/dt)として組み込む。
【0023】
洗浄媒体浄化装置/硬質材切削装置システムにおいて、洗浄媒体浄化装置1を、硬質材切削装置2を介して給電網19に接続する。可変抵抗器の形式として構成した電流センサ20′を、硬質材切削手段2の計算手段14′によって電子的に分析評価する。この電流センサ20′は、やはり、洗浄媒体ポンプ9の連続的な単調に推移する電流‐圧力特性曲線17によって間接的に圧力を測定する、計算手段14′によって電子的に分析評価するセンサ15′を構成する。この場合、このセンサ15′に割り当てられる洗浄媒体浄化に関連する模擬(シミュレーション)記述命令(電流I−>流量dV/dt)を硬質材切削装置2の計算手段14′に格納する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による洗浄媒体浄化装置‐硬質材切削装置システムの説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 洗浄媒体浄化装置
2 硬質材切削装置
3 岩石状物
4 工具
5 接続断面箇所
6 配線または配管接続部
7 吸い込みリング
8 沈殿槽
9 洗浄媒体ポンプ
10 濾過ユニット
11 洗浄媒体
12 固形物質
13 導管
14 計算手段
14′ 計算手段
15 センサ
15′センサ
16 空気パッド
17 電流‐圧力特性曲線
18 給電回路
19 給電網
20 電流センサ
20′ 電流センサ
dV/dt 流量
I 電流
p 洗浄媒体圧力
p0 大気圧
μC マイクロコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材切削装置(2)のための洗浄媒体浄化装置であって、硬質材を装備した洗浄すべき工具(4)に接続する少なくとも部分的に閉じたループの洗浄媒体回路を有し、洗浄媒体の流れの方向に見て、順次に、前記工具(4)の後段に、沈殿槽(8)および洗浄媒体ポンプ(9)を配置した閉ループの洗浄媒体回路に接続した該洗浄媒体浄化装置において、模擬アルゴリズムを有する計算手段(14,14′)によって電子的に分析評価ができるセンサ(15,15′)を備え、このセンサ(15,15′)によって、流れの方向に見て洗浄媒体ポンプ(9)の後段における洗浄媒体圧力(p)を感知する構成としたことを特徴とした洗浄媒体浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、洗浄媒体回路内に、流れの方向にみて、前記電子的に分析評価可能なセンサ(15,15′)の後段に、濾過ユニット(10)を設けた洗浄媒体浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、前記電子的に分析評価可能なセンサ(15)を、圧力に応答して直接切り替わる閾値スイッチとして構成し、このセンサ(15)を、洗浄媒体ポンプ(9)の吐出側において、圧力伝達するよう洗浄媒体(11)に接続した洗浄媒体浄化装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の装置において、前記電子的に分析評価可能なセンサ(15)を、連続的な測定域を有する電子的な圧力センサとして構成し、洗浄媒体ポンプ(9)の吐出側において、このセンサ(15)を圧力伝達するよう洗浄媒体(11)に接続した洗浄媒体浄化装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の装置において、電子的に分析評価可能なセンサ(15′)を、連続的に単調推移する電流‐圧力特性曲線(17)を有する洗浄媒体ポンプ(9)と、洗浄媒体ポンプ(9)の給電回路(18)に備えた電子的に分析評価可能な電流センサ(20,20′)との組合せによって構成した洗浄媒体浄化装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、前記電子的に分析評価可能な電流センサ(20)を、センサに内蔵した計算手段(14)に接続した洗浄媒体浄化装置。
【請求項7】
請求項5記載の装置において、硬質材切削装置(2)に内蔵した計算手段(14′)を有する洗浄媒体浄化装置/硬質材切削装置の組み合わせシステムの場合、電子的に解析可能な電流センサ(20′)を硬質材切削装置(2)に備え、また、洗浄媒体ポンプ(9)に対して、前記電子的に分析評価可能な電流センサ(20′)を有する給電回路(18)を介して給電する洗浄媒体浄化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−289952(P2007−289952A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114566(P2007−114566)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】