説明

硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られるとともに、収縮変形を抑えつつ、より軽量の硬質フォームを製造できる硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物(Y)とを発泡剤、難燃剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する。ポリオール組成物(P)が、官能基数2〜8の開始剤(S1)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が10〜100mgKOH/gのポリエーテルポリオールであって、前記アルキレンオキシドのうち20〜95質量%がエチレンオキシドであり、末端部分がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのランダム鎖でキャップされ、該末端部分に存在するランダム鎖の割合がオキシアルキレン鎖のうちの10〜100質量%である、ポリエーテルポリオール(A)を10〜60質量%含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールとポリイソシアネート化合物とを発泡剤等の存在下で反応させて、硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリイソシアヌレートフォーム等の硬質発泡合成樹脂(以下、硬質フォームということもある。)を製造することは広く行われている。
例えば建築、建材用途では断熱性能、難燃性能等に加えて、軽量化を図ることが望まれる。発泡剤を多く使用して発泡すれば軽量化は可能であるが、セルの強度不足によるフォームの収縮が生じ易くなる。
【0003】
また、従来発泡剤として主に用いられていた低沸点の含フッ素化合物は、大気中に存在すると地球温暖化を促進するという問題があるため、発泡剤として水を使用して含フッ素化合物の使用量を削減する技術が提案されている。
しかし、発泡剤として水を多く使用すると、原料のうち親水性が低い成分が溶解し難くなる。このため、ポリオール、発泡剤、触媒等を混合した配合液(以下、ポリオールシステム液ともいう。)において、貯蔵安定性の悪化の問題や、ポリオールシステム液とポリイソシアネート液との混合不良の問題が生じやすい。発泡したときにフォームの気泡の大きさおよび分布が不均一になりやすく、セルが粗くなったり、独立気泡が多く形成されて、フォームの収縮や潰れが発生しやすい。
したがって、特に、発泡剤として水を使用する方法においては、発泡剤の使用量を多くして硬質フォームの軽量化を図ることがより難しい。
【0004】
建築現場等において、硬質発泡合成樹脂を製造する際にはスプレー法が多く採用される。スプレー法とは、例えばポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物をそれぞれポンプで送液し、スプレーガンから施工対象となる壁面等に吹きつけながら反応させ、その壁面等上で発泡させて断熱材等とする方法である。該スプレー法は屋外で行う場合が多いため、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が要求される。
下記特許文献1では、発泡剤として水を主に使用するか、または水のみを使用するスプレー法において、以下のポリエーテルポリオール(I)、(II)、(III)を含むポリオール組成物を用いる方法が提案されている。この方法によれば、軽量化のために発泡剤を多く使用しても、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が良好で、発泡させたときに得られた硬質フォームが良好な寸法安定性を有している。
ポリオール(I):窒素原子を含まない官能基数2〜8の開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が100〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオール(II):窒素原子を含まない官能基数2〜8の開始剤にエチレンオキシド以外のアルキレンオキシドを開環付加重合させた後にエチレンオキシドを反応させて得られる、水酸基価が20〜56mgKOH/g、末端オキシエチレンブロック鎖含有量が5〜15質量%であるポリエーテルポリオール。
ポリオール(III):窒素原子を含む官能基数3〜5の開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が200〜850mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−168575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の実施例には、カップ発泡法で密度12.1kg/mまで軽量化された硬質フォームを良好に製造でき、スプレー発泡では密度13.1kg/mまで軽量化された硬質フォームを良好に製造できたことが示されている。
本発明は、これらの実施例よりさらに軽量の硬質フォームを実現することを目的とする。すなわち本発明は、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られるとともに、収縮変形を抑えつつ、より軽量の硬質フォームを製造できる硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]〜[9]の発明である。
[1]ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物(Y)とを発泡剤、難燃剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、該ポリオール組成物(P)が、平均水酸基数が2〜8、平均水酸基価が100〜700mgKOH/gのポリオール組成物であって、下記ポリオール(A)を10〜60質量%含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(A):官能基数2〜8の開始剤(S1)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が10〜100mgKOH/gのポリエーテルポリオールであって、前記アルキレンオキシドのうち20〜95質量%がエチレンオキシドであり、末端部分がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのランダム鎖でキャップされ、該末端部分に存在するランダム鎖の割合がオキシアルキレン鎖のうちの10〜100質量%である、ポリエーテルポリオール。
【0008】
[2]前記ポリオール組成物(P)が下記ポリオール(B)を40〜90質量%含む、[1]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(B):官能基数2〜8の開始剤(S2)にプロピレンオキシドのみを開環付加重合させて得られる、水酸基価が200〜1,000mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[3]前記ポリオール組成物(P)が下記ポリオール(C)を3〜40質量%含む、[1]または[2]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(C):官能基数2〜8の開始剤(S3)にプロピレンオキシドを開環付加重合させた後に、エチレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が80〜200mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0009】
[4]前記発泡剤が水を含み、該水の使用量が、前記ポリオール組成物(P)100質量部に対して15〜60質量部である、[1]〜[3]のいずれかの硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[5]前記発泡剤として水のみを用いる、[1]〜[4]のいずれかの硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[6]前記難燃剤の使用量が、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して、10〜100質量部である、[1]〜[5]のいずれかの硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[7]前記ポリイソシアネート化合物(Y)の使用量が、イソシアネート指数で10〜100である、[1]〜[6]のいずれかの硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[8]得られる硬質発泡合成樹脂のコア密度が5〜12kg/mである、[1]〜[7]のいずれかの硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[9]スプレー法により硬質発泡合成樹脂を製造する、[1]〜[8]のいずれかの硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬質発泡合成樹脂の製造方法によれば、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られるとともに、収縮変形を抑えつつ、より軽量の硬質発泡合成樹脂を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硬質フォームの製造方法は、ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物(Y)とを発泡剤、難燃剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させる方法である。
【0012】
[ポリオール組成物(P)]
本発明のポリオール組成物(P)は平均水酸基数が2〜8、平均水酸基価が100〜700mgKOH/gのポリオール組成物である。平均水酸基数とは含有する全てのポリオールの水酸基数の平均値であり、平均水酸基価とは含有する全てのポリオールの水酸基価の平均値である。平均水酸基数は2〜6が好ましく、2〜4が特に好ましい。平均水酸基価は150〜700mgKOH/gがより好ましく、200〜650mgKOH/gが特に好ましい。
また、ポリオール組成物(P)はポリオール(A)を10〜60質量%含む。ポリオール(A)を含むポリオール組成物(P)、ポリオール(A)とポリオール(B)とを含むポリオール組成物(P)、またはポリオール(A)とポリオール(B)とポリオール(C)とを含むポリオール組成物(P)が好ましい。物性を損なわない範囲であれば、その他の活性水素化合物(D)を含んでいてもよい。
【0013】
[ポリオール(A)]
ポリオール(A)は、官能基数2〜8の開始剤(S1)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が10〜100mgKOH/gのポリエーテルポリオールである。
【0014】
開始剤(S1)の官能基数は2〜8である。該官能基数は2〜6が好ましく、2〜4が特に好ましい。本発明における開始剤の官能基数とは、開始剤の活性水素原子の数を意味する。開始剤(S1)の官能基数が上記範囲の下限値以上であると、得られる硬質フォームの強度が良好になりやすく、上記範囲の上限値以下であると、ポリオール(A)の粘度が高くなりすぎず、ポリオール組成物(P)やポリオールシステム液の混合性を確保しやすい。
【0015】
開始剤(S1)としては、水、多価アルコール類、またはアミン系化合物が用いられる。
多価アルコール類の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等が挙げられる。
アミン系化合物としては、脂肪族系アミン類、脂環族系アミン類、芳香族系アミン類が挙げられる。脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。脂環族系アミン類としては、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。芳香族アミン類としては、ジアミノトルエン、マンニッヒ反応生成物が挙げられる。マンニッヒ反応生成物とは、フェノール類、アルカノールアミン類およびアルデヒド類の反応生成物であり、例えば、ノニルフェノール、モノエタノールアミンおよびホルムアルデヒドの反応生成物が挙げられる。
開始剤(S1)は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
貯蔵安定性に優れる点で水または多価アルコール類が好ましく、特に、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびショ糖からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0016】
ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、少なくともプロピレンオキシド(以下、POともいう。)とエチレンオキシド(以下、EOともいう。)が用いられる。その他のアルキレンオキシドとしては、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、スチレンオキシド等が挙げられる。ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドが、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのみからなることが好ましい。
開始剤(S1)に付加されるアルキレンオキシドのうち、20〜95質量%がエチレンオキシドである。25〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、30〜85質量%が特に好ましい。該エチレンオキシドの割合が上記範囲の下限値以上であると、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られやすく、上記範囲の上限値以下であると、ポリオール(A)の活性が高くなりすぎない。ポリオールの活性が高すぎると独立気泡が多く形成されやすく、これに起因してフォームの収縮が生じやすい。
【0017】
開始剤(S1)に付加されたアルキレンオキシドに由来するオキシアルキレン鎖のうち、末端部分はオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのランダム鎖でキャップされている。該末端部分に存在するランダム鎖の割合は、オキシアルキレン鎖のうちの10〜100質量%である。該ランダム鎖の割合は30〜100質量%が好ましく、50〜100質量%が特に好ましい。該ランダム鎖の割合が上記範囲であると硬質フォームの収縮が防止されやすい。該ランダム鎖の割合が100質量%の場合は、開始剤(S1)に付加されたオキシアルキレン鎖がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのランダム鎖のみからなっている。
開始剤(S1)に付加されたオキシアルキレン鎖のうち、末端部分の前記ランダム鎖以外の部分を有する場合は、オキシエチレン基であることが好ましい。すなわち開始剤(S1)にオキシエチレン基のブロック鎖を付加した後、末端部分にオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのランダム鎖を付加させることが好ましい。
【0018】
ポリオール(A)の水酸基価は10〜100mgKOH/gである。20〜80mgKOH/gが好ましく、20〜70mgKOH/gがより好ましく、30〜70mgKOH/gが特に好ましい。該水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、ポリオール(A)の粘度が高くなりすぎないため好ましく、上記範囲の上限値以下であると、硬質フォームが軽量化されやすい。
【0019】
[ポリオール(B)]
ポリオール(B)は、官能基数2〜8の開始剤(S2)にプロピレンオキシドのみを開環付加重合させて得られる、水酸基価が200〜1,000mgKOH/gのポリエーテルポリオールである。
開始剤(S2)は、ポリオール(A)における開始剤(S1)と、好ましい態様も含めて同様である。
【0020】
ポリオール(B)の製造に用いるアルキレンオキシドの全部がプロピレンオキシドであると、硬質フォームが連続気泡となりやすいため、フォームの収縮が防止されやすい。
ポリオール(B)の水酸基価は200〜1,000mgKOH/gである。300〜900mgKOH/gが好ましく、300〜800mgKOH/gが特に好ましい。該水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、得られる硬質フォームが連続気泡となりやすいため、フォームの収縮が防止されやすく、上記範囲の上限値以下であると、ポリオール(B)の粘度が高くなりすぎないため好ましい。
【0021】
[ポリオール(C)]
ポリオール(C)は、官能基数2〜8の開始剤(S3)にプロピレンオキシドを開環付加重合させた後に、エチレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が80〜200mgKOH/gのポリエーテルポリオールである。すなわち、ポリオール(C)は、開始剤(S3)に付加されたオキシアルキレン鎖のうち、末端部分がオキシエチレンブロック鎖であり、残りがオキシプロピレンブロック鎖である。
開始剤(S3)は、ポリオール(A)における開始剤(S1)と、好ましい態様も含めて同様である。
【0022】
分子の末端部分にオキシエチレンブロック鎖を有するポリオール(C)を用いることにより、セルが粗くなるのが抑制される。
開始剤(S3)に付加されるアルキレンオキシドのうちエチレンオキシドの割合は10〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましく、25〜40質量%が特に好ましい。該エチレンオキシドの割合が上記範囲の下限値以上であると、ポリオール(C)を用いることによる、セルが粗くなるのを抑制する効果が充分に得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、ポリオール(C)の活性が高くなりすぎず、フォームの収縮が生じ難い。
【0023】
ポリオール(C)の水酸基価は80〜200mgKOH/gである。85〜180mgKOH/gが好ましく、90〜160mgKOH/gがより好ましく、100〜140mgKOH/gが特に好ましい。該水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、ポリオール(C)の粘度が高くなりすぎないため好ましく、上記範囲の上限値以下であると、得られる硬質フォームが連続気泡となりやすいため、フォームの収縮が防止されやすい。
【0024】
[ポリオールの製造方法]
開始剤(S1)、(S2)、または(S3)にアルキレンオキシドを開環付加重合させる反応は、触媒の存在下で行うことが好ましい。
該触媒としては、複合金属シアン化物錯体触媒、ルイス酸触媒、アルカリ金属触媒からなる群からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、1種のみが特に好ましい。上記触媒を用いると、アルキレンオキシドを開始剤に均一に付加させやすい。
複合金属シアン化物錯体触媒としては、亜鉛ヘキサシアノコバルテートに有機配位子が配位した複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。有機配位子としては、tert−ブタノール、tert−ペンチルアルコール、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、tert−ブタノールとエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルとの組み合わせ等が挙げられる。
ルイス酸触媒としては、BF錯体、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム等が挙げられる。
アルカリ金属触媒としては、水酸化セシウム、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物が挙げられる。特に水酸化カリウムが好ましい。
本発明におけるポリオール(A)、(B)、または(C)の製造に用いる触媒としては、水酸化カリウムを用いるのが最も好ましい。
【0025】
[ポリオール(A)、(B)、および(C)の好ましい様態]
本発明におけるポリオール(A)としては、官能基数2〜8の開始剤(S1)に、水酸化カリウム触媒存在下で、EOとPOとの混合物(EOの含有量が20〜80質量%)を開環付加重合させて得られる、水酸基価が10〜100mgKOH/gのポリエーテルポリオール(A1)が好ましい。また、官能基数2〜8の開始剤(S1)に、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させた後、EOとPOとの混合物を開環付加重合させて得られる、アルキレンオキシドのうち20〜95質量%がEOであり、末端部分に存在するランダム鎖の割合がオキシアルキレン鎖のうちの10質量%以上100質量%未満である、水酸基価が10〜100mgKOH/gのポリエーテルポリオール(A2)が好ましい。
本発明におけるポリオール(B)としては、官能基数2〜8の開始剤(S2)に、水酸化カリウム触媒存在下で、POのみを開環付加重合させて得られる、水酸基価が200〜1,000mgKOH/gのポリエーテルポリオール(B1)が好ましい。
本発明におけるポリオール(C)としては、官能基数2〜8の開始剤(S3)に、水酸化カリウム触媒存在下で、POを開環付加重合させた後に、EO(アルキレンオキシドのうちEOの割合が10〜60質量%)を開環付加重合させて得られる、水酸基価が80〜200mgKOH/gのポリエーテルポリオール(C1)が好ましい。
【0026】
[ポリオール組成物(P)におけるポリオールの含有割合]
ポリオール組成物(P)におけるポリオール(A)の含有量は、10〜60質量%であり、20〜60質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、40〜55質量%が特に好ましい。ポリオール(A)の割合が上記範囲の下限値以上であると、ポリオールシステム液が水を多く含む場合であってもポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られるとともに、収縮変形を抑えつつ軽量の硬質フォームを製造できるという効果が充分に得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、セルの強度不足による収縮または潰れが生じにくい。
ポリオール組成物(P)がポリオール(B)を含む場合、その含有量は、40〜90質量%であり、45〜90質量%がより好ましく、55〜70質量%が特に好ましい。ポリオール(B)の割合が上記範囲の下限値以上であると、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られやすく、またフォームの収縮変形が抑えられやすい。上記範囲の上限値以下であると、セルが粗くなりにくい。
ポリオール組成物(P)がポリオール(C)を含む場合、その含有量は、3〜40質量%であり、3〜15質量%が好ましく、5〜10質量%が特に好ましい。ポリオール(C)の割合が上記範囲の下限値以上であると、セルが粗くなるのを抑える効果が充分に得られやすい。また、該ポリオール(C)の割合が上記範囲の上限値以下であると、セルの強度不足による収縮または潰れが生じにくい。
【0027】
特にポリオール組成物(P)がポリオール(A)、ポリオール(B)、およびポリオール(C)を含む場合、ポリオール組成物(P)の100質量%のうち、ポリオール(A)の割合は10〜60質量%が好ましく、20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。ポリオール(B)の割合は37〜87質量%が好ましく、37〜77質量%がより好ましく、47〜67質量%が特に好ましい。ポリオール(C)の割合は3〜15質量%が好ましく、5〜10質量%が特に好ましい。各上限値および下限値の理由はそれぞれ上記と同じである。
【0028】
[その他の活性水素化合物(D)]
ポリオール組成物(P)はポリオール(A)、ポリオール(B)およびポリオール(C)の他に、その他の活性水素原子を有する化合物(活性水素化合物という)(D)を含んでいてもよい。該その他の活性水素化合物(D)としては、ポリオール(A)、ポリオール(B)およびポリオール(C)のいずれにも含まれない他のポリオール類、多価フェノール類、アミノ化ポリオール類が挙げられる。
他のポリオール類としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0029】
多価フェノール類としては、ビスフェノールA、レゾルシノール等の非縮合化合物、フェノール類をアルカリ触媒の存在下で過剰のホルムアルデヒド類と縮合結合させたレゾール型初期縮合物、このレゾール型初期縮合物を合成する際に非水系で反応させたベンジリック型初期縮合物、過剰のフェノール類を酸触媒の存在下でホルムアルデヒド類と反応させたノボラック型初期縮合物等が挙げられる。これらの初期縮合物の数平均分子量は、200〜10,000程度が好ましい。上記において、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール等が挙げられる。また、ホルムアルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
アミノ化ポリオール類としては、グリセリンにPOを開環付加重合した後、アミノ化して得た数平均分子量5,000、アミノ化率95%のポリエーテルトリアミン(ハンツマンコーポレーション社製、商品名:ジェファーミンT−5000)等が挙げられる。
ポリオール組成物(P)の100質量%うちの活性水素化合物(D)の割合は、0〜10質量%が好ましい。
【0030】
[ポリイソシアネート化合物(Y)]
本発明におけるポリイソシアネート化合物(Y)は、特に制限はないが、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が好ましい。
具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のポリイソシアネートまたはこれらのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。このうち、TDI、MDI、クルードMDIまたはこれらの変性体が好ましい。クルードMDIが入手のしやすさ、取り扱いの容易性の点で特に好ましい。ポリイソシアネート化合物(B)は1種でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
ポリイソシアネート化合物(Y)の使用量は、ポリオール組成物(P)に含まれる活性水素原子の合計数に対するイソシアネート基の数の100倍で表し(通常この100倍で表した数値をイソシアネート指数という。)、10〜100が好ましい。20〜80がより好ましく、30〜70が特に好ましい。イソシアネート指数が上記範囲の下限値以上であると連続気泡になりやすく、収縮が抑えられやすい。上記範囲の上限値以下であると軽量化しやすい。
スプレー法で硬質フォームを製造する場合は、ポリイソシアネート化合物(Y)とポリオール化合物(P)の使用量は、容積比で約1:1であることが好ましい。
【0032】
[発泡剤]
発泡剤としては、水、炭化水素化合物、ハイドロフルオロカーボン(HFC化合物ともいう。)、塩化メチレン、その他のハロゲン化炭化水素が好ましい。発泡剤は2種以上併用してもよい。発泡剤が少なくとも水を含むことが好ましい。
炭化水素化合物の例としては、ブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。中でもノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタンが好ましい。
HFC化合物の例としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)等が挙げられる。
これらのうち、水を単独で用いるか、または水とそれ以外の発泡剤の1種以上とを併用することが好ましい。水と併用する発泡剤としては、炭化水素化合物、HFC化合物が好ましい。水と併用する炭化水素化合物としては、特に、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタンまたはこれらの混合物が好ましく、水と併用するHFC化合物としては、特にHFC−134a、HFC−245fa、HFC−365mfcまたはこれらの混合物が好ましい。環境への配慮からは、発泡剤として水のみを用いることがより好ましい。
【0033】
本発明は、特に、軽量化のために発泡剤を多く使用する系に好適であり、発泡剤として水を多く使用する系にも好適である。
具体的に、発泡剤として水を単独で用いる場合、または水とそれ以外の発泡剤の1種以上とを併用する場合のいずれにおいても、水の使用量が、ポリオール組成物(P)の100質量部(水はポリオールとしては計算しない。以下同様。)に対して、15〜60質量部が好ましい。25〜60質量部がより好ましく、30〜50質量部が特に好ましい。該水の使用量が上記範囲の下限値以上であると、得られた硬質フォームを軽量にしやすく、上記範囲の上限値以下であると、水とポリオール組成物(P)との良好な混合性が得られやすい。
【0034】
[難燃剤]
本発明においては難燃剤を用いる。難燃剤としてはリン系難燃剤が好ましく、化合物としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)などが好ましい。
難燃剤の使用量は、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、30〜80質量部がより好ましく、40〜70質量部が特に好ましい。難燃剤の使用量が上記範囲の下限値以上であると、フォームの難燃性が良好に向上する。上記範囲の上限値以下であると、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られやすい。
難燃剤は1種でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
[触媒]
本発明において用いられる触媒は、ウレタン化反応を促進するウレタン化触媒であれば特に制限はない。例えば、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどのアミン系触媒;N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン等の反応型アミン系触媒; ジブチルスズジラウレート等の有機金属系触媒が挙げられる。またイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を併用してもよく、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩等が挙げられる。ウレタン化触媒の使用量は、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。また、三量化反応を促進させる触媒の使用量は、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
触媒としては、環境汚染の問題から金属触媒を使わず、アミン系触媒または反応型アミン系触媒のみを使用することが好ましい。
【0036】
[整泡剤]
本発明においては良好な気泡を形成するため整泡剤を用いる。整泡剤としては例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。一般的に、硬質ウレタンフォームの製造に用いられるシリコーン系整泡剤のほか、高通気性の軟質ウレタンフォームの製造に用いられるシリコーン系整泡剤を用いてもよい。整泡剤の使用量は適宜選定すればよいが、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
【0037】
[その他の配合剤]
本発明では、上述したポリオール組成物(P)、ポリイソシアネート化合物(Y)、発泡剤、難燃剤、整泡剤、および触媒の他に、任意の配合剤が使用できる。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤; 酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0038】
[硬質フォームの製造方法]
硬質フォームの製造方法は特に限定されないが、本発明は、特にスプレー法により硬質フォームを製造する方法に好適である。
スプレー法は、ポリオール組成物(P)、発泡剤、難燃剤、整泡剤、触媒および必要に応じた配合剤を含む溶液(ポリオールシステム液)を調製し、該ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(Y)とを含むポリイソシアネート液とを施工面に吹き付けながら反応させる発泡方法である。
スプレー法は、工事現場にて直接硬質フォームを製造する方法であり、工事コストを抑制できる、凹凸のある施工面にも隙間なく施工できる等の長所を有している。そのためスプレー法は、建築現場において壁、天井等に硬質フォームからなる断熱材を施工する際に採用されることが多い。具体的な施工例としては、マンション、オフィスビル、プレハブ冷凍倉庫等の断熱材が挙げられる。
スプレー法としては種々の方法が知られているが、特にポリオール成分とポリイソシアネート成分とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡が好ましい。
【0039】
本発明は軽量の硬質フォームを製造する方法に好適である。具体的には、本発明の製造方法で得られる硬質フォームのコア密度が5〜12kg/mであることが好ましい。7〜12kg/mがより好ましく、8〜12kg/mが特に好ましい。
本発明における、硬質フォームのコア密度はJIS K7222に準拠した測定方法で得られる値である。
本発明の製造方法で得られる硬質フォームは軽量化しやすく、難燃剤が配合されているため、特に建築、建材用途に好ましい。
【0040】
本発明によれば、発泡剤を多く使用して収縮変形がない超軽量の硬質フォームを製造することができる。好ましくは、収縮変形がなく、セルが粗くなっている部分もない超軽量の硬質フォームを製造することができる。
また、発泡剤として水を使用する方法においても、水を多く使用してもポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られるとともに、ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物(Y)との良好な混合性も得られ、収縮変形が無い超軽量の硬質フォームを製造することができる。好ましくは、水を多く使用しながら、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られるとともに、収縮変形がなく、セルが粗くなっている部分もない超軽量の硬質フォームを製造することができる。
例えば、後述の実施例に示されるように、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して水を40質量部用いながら、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られ、コア密度が約10kg/m程度まで超軽量化された硬質フォームを良好に製造することができる。
【0041】
また、本発明の方法は、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が良好であり、難燃剤を多く配合しても、超軽量の硬質フォームを良好に製造することができるため、スプレー発泡法に好適である。
すなわち、スラブ発泡法や注入法などで硬質フォームを製造する場合は、ポリオールシステム液とポリイソシアネート液の混合比率を自由に決めることができるが、スプレー発泡法においては、通常、その混合比率が容積比率で約1:1という制約がある。
一方、スプレー発泡法は主に建築用途で使用されるため、難燃性が要求される。ポリオールシステム液とポリイソシアネート液とが容積比1:1で混合されるスプレー発泡法にあっては、ヌレート処方(三量体が生成される処方)とすることで難燃性を向上させることが難しいため、難燃剤を多く添加することが必要になる。また、ポリオール(A)として芳香環またはN原子を含まないポリオールを使用する場合には、得られた硬質フォームの充分な難燃性を確保しにくいため、難燃剤を多く添加することが必要になる。特に水を多く使用する系において、難燃剤を多く配合すると相溶性の低下が懸念される。相溶性の低下はフォームの収縮や潰れ、またはセルが粗くなる原因となる。
これに対して本発明の硬質フォームの製造方法は、水を多く配合し、かつ難燃剤を多く配合しても、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られ、収縮変形がない超軽量の硬質フォームを製造することができる。好ましくは、難燃性が良好で、収縮変形がなく、セルが粗くなっている部分もない超軽量の硬質フォームを製造することができる。
例えば、後述の実施例に示されるように、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して水を40質量部用い、難燃剤を50質量部用いながら、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られ、コア密度が約10kg/m程度まで超軽量化された硬質フォームを、スプレー法によって良好に製造することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
水酸基価は、JIS K1557(1970年版)に準拠して測定した。
【0043】
実施例および比較例で用いた原料は、以下のとおりである。
[ポリオール(A)]
ポリオール(A−1):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でEOを開環付加重合した後、続けてPOとEOとの混合物をランダムに開環付加重合して得られる、水酸基価が48.5mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計量のうち、EOの割合は67質量%であり、開始剤に付加されたオキシアルキレン鎖のうち末端部分のオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのランダム鎖(以下PO・EOランダム鎖という。)の占める割合は71質量%である。
ポリオール(A−2):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でPOとEOとの混合物をランダムに開環付加重合して得られる、水酸基価が48.1mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計量のうち、EOの割合は80質量%であり、開始剤に付加されたオキシアルキレン鎖のうち100質量%がPO・EOランダム鎖である。
【0044】
[ポリオール(B)]
ポリオール(B−1):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でPOを開環付加重合して得られる、水酸基価が400mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオール(B−2):エチレンジアミンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でPOのみを開環付加重合して得られる、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[ポリオール(C)]
ポリオール(C−1):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でPOを開環付加重合した後、続けてEOを開環付加重合して得られる、水酸基価が112mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計量のうち、EOの割合は33質量%である。
【0045】
[比較のポリオール(D)]
ポリオール(D−1):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でPOを開環付加重合して得られる、水酸基価が56mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオール(D−2):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でPOとEOとの混合物をランダムに開環付加重合して得られる、水酸基価が56mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計量のうち、EOの割合は7質量%である。
ポリオール(D−3):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でPOを開環付加重合した後、続けてEOを開環付加重合して得られる、水酸基価が56mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計量のうち、EOの割合は13質量%である。
ポリオール(D−4):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下でPOを開環付加重合した後、続けてEOを開環付加重合して得られる、水酸基価が56mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計量のうち、EOの割合は20質量%である。
【0046】
難燃剤A:トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(商品名:FYLOL PCF
ICL−IP JAPAN社製)。
発泡剤A:水。
整泡剤A:シリコーン系整泡剤(商品名:SF2938F、東レ・ダウコーニング社製)。
整泡剤B:シリコーン系整泡剤(商品名:SRX−298、東レ・ダウコーニング社製)。
触媒A:アミノアルコール系触媒(商品名:POLYCAT 52、エアープロダクツジャパン社製)。
ポリイソシアネート化合物(Y−1):クルードMDI、商品名:コロネート 1130、粘度(25℃):120mPa・s、NCO含有率:31.2%(日本ポリウレタン工業社製)。
【0047】
表に示す評価は以下の方法で行った。
[ボックスフリー発泡]
表1〜4に示す配合で、ポリオール、発泡剤、整泡剤、触媒および難燃剤を混合してポリオールシステム液を調製した。
得られたポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(Y−1)の液温をそれぞれ15℃に保温し、これらを日立製作所製のボール盤に円盤型撹拌翼を装着した撹拌装置を用い、毎分3,000回転で4秒間撹拌し、混合液とした。その後、該混合液を、ポリエチレン製の離型袋を装着した縦150mm×横150mm×高さ150mmの木製型に充填し、発泡させ、ボックスコア密度が約10kg/mの超軽量硬質フォームを製造した。
なお、表中において配合量を表す数値の単位は質量部である。ただし、ポリイソシアネート化合物の使用量はイソシアネート指数(INDEX)で表す。
ボックスフリー発泡における反応性、得られた硬質フォームの密度、収縮、セル外観、およびポリオールシステム液の貯蔵安定性を以下の方法で評価した。評価結果を表1〜4に示す。
【0048】
(反応性)
ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合開始時刻を0秒とし、混合液が泡立ちを始めるまでの時間をクリームタイム(秒)、混合液が発泡し始め、フォームの上昇が停止する時間をライズタイム(秒)とした。(ボックスコア密度)
得られた硬質ポリウレタンフォームのコア部から、一辺が100mmの立方体の立方体に切断し、JIS K7222に準拠して密度を測定した。収縮変形の大きいものは密度の測定行わなかった。
(収縮)
上記ボックスフリー発泡において、発泡によるフォームの上昇が停止してから、20℃で30分間放置し、外観状態を観察した。下記の基準で評価した。
○(良):変形がない。良好。
△(可):収縮により部分的に変形が生じた。
×(不可):収縮により全体が潰れた。不良。
(セル外観)
ボックスフリー発泡で得られた硬質フォームの表面のうち、発泡方向(ボックスの高さ方向)に対して下側(木箱型の底面側)の表面をスキン部の表面とした。また該硬質フォームのコア部から切り出した一辺が100mmの立方体の表面をコア部の表面とした。
スキン部およびコア部のそれぞれの表面について、セルが不均一な部分(セルが粗くなっている部分)の有無を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎(優良):セルが粗くなっている部分がない。セルが微細でかつ均一。
○(良):セルが粗くなっている部分がない。セルが均一。
△(可):部分的にセルが粗くなっている。
×(不可):全体的にセルが粗くなっている。不良。
【0049】
(ポリオールシステム液の貯蔵安定性)
ボックスフリー発泡において調製したポリオールシステム液を20℃で1ヶ月間保存した後、目視で観察し、下記の基準で評価した。
○(良)::濁り、分離、沈殿、固化のいずれも発生せず、透明である。良好。
×(不可):濁り、分離、沈殿、固化のうちの1つ以上が発生した。不良。
【0050】
[スプレー施工試験]
例5、例23、例24についてスプレー施工試験を行った。
すなわち、表1および3に示す配合で、ポリオール、発泡剤、整泡剤、触媒および難燃剤を混合してポリオールシステム液を調製した。
得られたポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(Y−1)とを、液温40℃、室温20℃、体積比率1:1の条件で、スプレー発泡機を用いて壁面を想定して垂直に設置した600mm×600mm×5mmのフレキシブルボード(基材)に吹きつけ施工する方法で硬質フォームを製造した。スプレー発泡機は、ガスマー社製Dガンを接続した日本ウレタンエンジニアリング社製MODEL N−1600UE−HYD発泡機を用いた。吹き付けは、厚さ1mmの下吹き層を施工した後に、一層の厚さが25〜30mmとなるように2層吹き付け施工し、合計で3層積層した。
スプレー施工におけるコア密度、収縮、接着性、難燃性、および熱伝導率を以下の方法で評価した。評価結果を表1および3に示す。
【0051】
(コア密度)
JIS K7220に準拠し、スプレー施工した翌日にコア部を200mm×200mm×25mmの直方体に切り出し、密度を測定した。(収縮)
上記スプレー施工において、発泡によるフォームの上昇が停止してから、20℃で30分間放置し、外観状態を観察した。変形のないものは○(良)、収縮変形したものは×(不良)とした。(接着性)
施工したフォームの端部をカットし、基材からフォームを引き剥がしたときの感触を確認し、以下の基準で評価した。
○(良):基材にフォームが残り、強固に接着してフォームの剥離が困難。良好。
×(不可):基材にフォームが残らず、簡単にフォームが剥離する。不良。
(燃焼試験(難燃性))
得られた硬質フォームについて、JIS−A−9511の試験方法Bに準じて自己消火性試験を行い、燃焼時間(単位:秒)および燃焼長(単位:mm)を測定した。燃焼長が小さく、燃焼時間が短いほど難燃性に優れる。(熱伝導率)
熱伝導率(単位:mW/m・K)は、JIS A1412に準拠し、熱伝導率測定装置(製品名:オートラムダHC−074型、英弘精機社製)を用いて測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1においては、例2〜5が実施例、例1と6が比較例である。
表1の結果に示されるように、ポリオール組成物(P)に、ポリオール(A)を10〜60質量%の範囲内で含有する例2〜5は、ポリオール(B)のみ含有する例1に比べて収縮性およびセル外観が向上した。例2〜5のポリオールシステム液の貯蔵安定性は良好であった。
ポリオール組成物(P)が、ポリオール(B)のみからなる例1では、貯蔵安定性は良好であったものの、フォームは部分的に収縮変形が生じた。またコア部、スキン部ともに全体的にセルが粗くなっており、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合不良によってフォームの収縮変形が生じたと考えられる。
一方、ポリオール(A)の含有量を70質量%とした例6ではフォームの潰れが生じた。スキン部にセルが粗くなっている部分がないことから、セルの強度不足によってフォームが潰れたと考えられる。
またスプレー施工試験では、例5においては、フォームの収縮は見られず、低密度でも接着性および難燃性に優れた硬質フォームを得ることができた。
【0054】
【表2】

【0055】
表2においては、例11〜12が実施例、例13が比較例である。
表1の例では、ポリオール(B)として、グリセリン(開始剤)にPOを開環付加重合したポリオール(B−1)を用いたが、表2の例ではエチレンジアミン(開始剤)にPOを開環付加重合したポリオール(B−2)を用いた。
表2の結果に示されるように、ポリオール組成物(P)に、ポリオール(B)のほかに、ポリオール(A)を20質量%または40質量%含有させた例11、12は、ポリオールシステム液の貯蔵安定性は良好であり、部分的にセルが粗くなっているものの、収縮性がない硬質フォームが得られた。表1の例と比べると反応性が高い。反応性が高い理由は、開始剤にアミン系化合物を用いたことと考えられる。
一方、ポリオール(A)の含有量を80質量%とした例13では、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が悪くなり、フォームの潰れが生じた。
【0056】
【表3】

【0057】
表3においては、例21〜25が実施例である。
表3は、ポリオール(A)、(B)のほかに、ポリオール(C)を用いた例である。
いずれの例も収縮、セル外観、およびポリオールシステム液の貯蔵安定性が良好であった。
また表1の例4、5と表3の例21〜24とを比べると、ポリオール(A)、(B)の含有量はほぼ同程度であり、ポリオール(C)を加えることによりセル外観が向上したことがわかる。
またスプレー施工試験では、例23、24においては、フォームの収縮は見られず、低密度でも接着性および難燃性に優れた硬質フォームを得ることができた。
【0058】
【表4】

【0059】
表4において、例31〜34は比較例である。
表4は、ポリオール(A)を使用せず、その代わりに比較のポリオール(D−1)〜(D−4)を用いた例である。いずれの例においてもフォームの潰れが生じた。また、例31〜33はポリオールシステム液の貯蔵安定性も悪かった。
すなわち、例31は、ポリオール(A−1)に代えて、開始剤に付加するアルキレンオキシドとしてPOのみを用いたポリオール(D−1)を用いた例である。ポリオールシステム液の貯蔵安定性が悪く、フォームの収縮が生じた。
例32は、オキシアルキレン鎖の100質量%がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのランダム鎖であるが、開始剤に付加するアルキレンオキシドのうちEOの含有割合が7質量%と少ないポリオール(D−2)を用いた例である。ポリオールシステム液の貯蔵安定性が悪く、フォームの収縮が生じた。
例33は、開始剤にオキシプロピレン基のブロック鎖と、オキシエチレン基のブロック鎖がこの順付加されており、開始剤に付加するアルキレンオキシドのうちEOの含有割合が13質量%と少ないポリオール(D−3)を用いた例である。ポリオールシステム液の貯蔵安定性が悪く、フォームの収縮が生じた。
例34は、開始剤に付加するアルキレンオキシドのうちEOの含有割合は20質量%であるが、開始剤にオキシプロピレン基のブロック鎖と、オキシエチレン基のブロック鎖がこの順付加されているポリオール(D−4)を用いた例である。ポリオールシステム液の貯蔵安定性は良好であったが、フォームの収縮が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物(Y)とを発泡剤、難燃剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、
該ポリオール組成物(P)が、平均水酸基数が2〜8、平均水酸基価が100〜700mgKOH/gのポリオール組成物であって、下記ポリオール(A)を10〜60質量%含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(A):官能基数2〜8の開始剤(S1)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が10〜100mgKOH/gのポリエーテルポリオールであって、前記アルキレンオキシドのうち20〜95質量%がエチレンオキシドであり、末端部分がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのランダム鎖でキャップされ、該末端部分に存在するランダム鎖の割合がオキシアルキレン鎖のうちの10〜100質量%である、ポリエーテルポリオール。
【請求項2】
前記ポリオール組成物(P)が下記ポリオール(B)を40〜90質量%含む、請求項1に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(B):官能基数2〜8の開始剤(S2)にプロピレンオキシドのみを開環付加重合させて得られる、水酸基価が200〜1,000mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【請求項3】
前記ポリオール組成物(P)が下記ポリオール(C)を3〜40質量%含む、請求項1または2に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(C):官能基数2〜8の開始剤(S3)にプロピレンオキシドを開環付加重合させた後に、エチレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が80〜200mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【請求項4】
前記発泡剤が水を含み、該水の使用量が、前記ポリオール組成物(P)の100質量部に対して15〜60質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記発泡剤として水のみを用いる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記難燃剤の使用量が、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して、10〜100質量部である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート化合物(Y)の使用量が、イソシアネート指数で10〜100である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項8】
得られる硬質発泡合成樹脂のコア密度が5〜12kg/mである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項9】
スプレー法により硬質発泡合成樹脂を製造する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2012−107214(P2012−107214A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227929(P2011−227929)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】