説明

硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法

【課題】除菌性能を損なうことなく、除菌安定性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物を製造できる方法を提供する。
【解決手段】(a)研磨剤〔以下、(a)成分という〕、(b)ポリアクリル酸系増粘剤〔以下、(b)成分という〕、(c)4級アンモニウム塩型抗菌剤〔以下、(c)成分という〕、(d)分子中にカルボキシル基を3〜6個有する多価カルボン酸〔以下、(d)成分という〕及び水を含有する硬質表面用洗浄剤組成物の製造するにあたり、(c)成分、(d)成分及び水を含有する混合物と、(b)成分とを混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質表面用洗浄剤組成物として、研磨剤を含む処方の場合には、しばしば研磨剤の沈降を抑制し、均一に分散させる目的で増粘剤を配合することが知られている。こうした目的で用いられる増粘剤としてカルボン酸系高分子化合物が知られており、特許文献1には、アルキルグリコシド、特定の部分架橋ポリアクリル酸又はその塩、水不溶性研磨剤及び水を含有するpHが6〜8のトイレ用液体クレンザー組成物が開示されている。また、特許文献2には、特定のアルキルベンゼンスルホン酸塩、特定のポリオキシエチレンラウリルエーテル、水不溶性研磨粒子及び水を含有する液体クレンザー組成物に、ポリアクリル酸等の重合体及びクエン酸を配合できることが開示されている。
【特許文献1】特開平4−96999号公報
【特許文献2】特開2006−104264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年の衛生意識の高まりから、洗浄剤の除菌性能は非常に重要な機能となっている。研磨剤を配合したクレンザー等の洗浄剤においても同様であるが、カルボン酸系の増粘剤を配合した系に4級アンモニウム塩型の抗菌剤を配合すると、増粘剤と相互作用をすることによって、抗菌性能が損なわれるだけでなく、不溶物の生成を起こすなど、除菌性能が安定な組成物が得られないという課題があった。
【0004】
本発明の課題は、除菌性能を損なうことなく、除菌安定性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物を製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)研磨剤〔以下、(a)成分という〕、(b)ポリアクリル酸系増粘剤〔以下、(b)成分という〕、(c)4級アンモニウム塩型抗菌剤〔以下、(c)成分という〕、(d)分子中にカルボキシル基を3〜6個有する多価カルボン酸〔以下、(d)成分という〕及び水を含有する硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法であって、(c)成分、(d)成分及び水を含有する混合物と、(b)成分とを混合する工程を有する、硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、除菌性能を損なうことなく、不溶物の生成を起こさない等、除菌安定性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の製造方法に用いられる各成分について説明する。
<(a)成分>
(a)成分の研磨剤は水不溶性粒子からなるものが好ましい。ここで、「水不溶性」とはpH7、20℃の水100gに対する溶解度が0.005g以下であることをいう。
【0008】
(a)成分として水不溶性粒子を用いる場合、その平均粒子径は、十分な洗浄効果が得られ、被洗浄面の傷付きや保存時の研磨剤の沈降が抑制されることから、1〜50μm、更に1〜40μmが好ましい。
【0009】
本発明では、モース硬度3〜9の粒子を用いることが研磨性の点より好ましい。また、この範囲の硬度の粒子を用いることにより、被洗浄面の傷付きがなく、十分な洗浄効果を得ることができる。
【0010】
(a)成分は、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ(ケイ石粉)、アルミナ(焼成アルミナ等)の粒子が好ましく、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0011】
<(b)成分>
本発明に係る硬質表面用洗浄剤組成物は、増粘剤としてポリアクリル酸系増粘剤を含有する。ポリアクリル酸系増粘剤は、(メタ)アクリル酸[メタクリル酸又はアクリル酸の意味である。]由来のモノマー構成単位を主とする高分子重合体であり、水酸化ナトリウムでpH7.0に調整した0.2質量%水溶液が、20℃にてブルックフィールド型粘度計(粘度が4000mPa・s以下の場合はローターNo.3、回転数30r/m、粘度が4000mPa・sを超え、20,000mPa・s以下の場合はローターNo.4、回転数30r/m、粘度が20,000mPa・sを超える場合はローターNo.4、回転数12r/m)で測定した粘度が500mPa・s以上、好ましくは1000〜30,000mPa・s、より好ましくは1500〜15,000mPa・sの増粘性の高分子化合物である。
【0012】
ポリアクリル酸系増粘剤としては、架橋(メタ)アクリル酸系重合体[以下(i)とする]、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体[以下(ii)とする)]、から選ばれる1種以上を用いることができる。これらの増粘剤は、後述するアルカリ剤との塩として本発明の洗浄剤組成物に存在することが好ましい。
【0013】
(i)の架橋(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸の単独重合体、或いは(メタ)アクリル酸及び他のビニル系カルボン酸化合物との共重合体を、ポリオール化合物により2置換以上でカルボキシ基をエステル化することで架橋したものである。架橋の程度は、好ましくはモル比でアクリル酸構成単位100に対して、架橋剤により0.1未満の割合でエステル化されている(メタ)アクリル酸が存在することが好ましい。特に(i)においてアクリル酸単独重合体の架橋体が最も好ましい。
【0014】
このような架橋(メタ)アクリル酸系重合体は、通常、化粧料や医薬外用剤で使用されるものを限定なく使用することができ、例えば、ノベオン社(Noveon Inc.)製のカーボポール980、カーボポール981、住友精化株式会社製のアクペックHV-501、HV-501E、HV-505E等の市販品を用いることができる。これらは、2種以上を併用することもできる。
【0015】
次に(ii)の(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体について説明する。該共重合体は、構成単位である(メタ)アクリル酸エステル〔アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの意味である〕のエステルを構成する炭化水素基はアルキル基が好ましく、その炭素数は8〜30、更に10〜30、特に10〜22が好ましい。
【0016】
また、(ii)の共重合体は、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(以下、AOという)に由来する構成単位を含んでいてもよく、AOとしてはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、好ましくはエチレンオキサイドを挙げることができる。AOの平均付加モル数は5〜20が好ましい。
【0017】
また、(ii)の共重合体中の(メタ)アクリル酸エステルからのモノマー構成単位の比率は、モル比で(メタ)アクリル酸100に対して(メタ)アクリル酸エステルを0.2〜10が好ましく、特に0.5〜5が好ましく、AO由来の構成単位を導入する場合は、(メタ)アクリル酸エステルのAO付加物及び/又は(メタ)アクリル酸AO付加物を、モル比で(メタ)アクリル酸100に対して0〜10用いることが好ましい。
【0018】
具体的な単量体のモル比は、アクリル酸100モルに対して、メタクリル酸エステル0.2〜10モル、好ましくは0.5〜5モル、(メタ)アクリル酸エステルのAO付加物及び/又は(メタ)アクリル酸AO付加物0〜10モル、好ましくは0.5〜5モルである。
【0019】
なお、(ii)の(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体は、(メタ)アクリル酸重合体を後からエステル化ないしAO付加したものであってもよい。
【0020】
(ii)の(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体としては、例えば、ノベオン社(Noveon Inc.)製のカーボポールETD2020、住友精化株式会社製アクペックHV501ER等の市販品を用いることができる。これらは、2種以上を併用することもできる。
【0021】
<(c)成分>
(c)成分の4級アンモニウム塩型抗菌剤としては、下記一般式(c1)で表される化合物及び一般式(c2)で表される化合物から選ばれるカチオン性界面活性剤、並びに、アルキルピリジニウム塩などが挙げられ、下記一般式(c1)で表される化合物及び一般式(c2)で表される化合物から選ばれるカチオン性界面活性剤が好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、R1c及びR2cは同一又は異なって、各炭素数8〜16で合計炭素数16〜26の長鎖アルキル基、長鎖アルケニル基又は長鎖ヒドロキシアルキル基を示し、R3c及びR4cは同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は平均付加モル数10以下のポリオキシエチレン基を示し、Z-はハロゲン原子、又は炭素数1〜5のスルホン酸エステルもしくは硫酸エステルのアニオン残基を示す。)
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、R5cは炭素数8〜16の炭化水素基又は
【0026】
【化3】

【0027】
で表わされる基を示し、Z-は前記と同じ意味を示す。)
【0028】
<(d)成分>
(d)成分の分子中にカルボキシル基を3〜6個有する多価カルボン酸としては、トリカルバリル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、分子中に水酸基を1個以上有するリンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の多価ヒドロキシカルボン酸が好適に使用され、なかでもクエン酸が好ましい。
【0029】
<硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法>
本発明の製造方法は、(c)成分、(d)成分及び水を含有する混合物〔以下、混合物(I)という〕と、(b)成分とを混合する工程を有する。(c)成分と(d)成分とを予め混合して混合物(I)を調製する際、(c)成分と(d)成分のモル比は、除菌性能を損なうことなく、不溶物の生成を起こさない等、除菌安定性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物を得る観点から、(c)/(d)=0.001〜4、更に0.01〜4、より更に0.1〜4が好ましい。混合物(I)と(b)成分の混合は、液状混合物(I)に(b)成分を混合し、攪拌して行うことができる。(b)成分は、(b)成分を含有する混合物として用いることもでき、該混合物は水を含有することが好ましい。(a)成分は、任意の時期に混合してもよい。よって、本発明の製造方法では、(a)成分を製造工程の何れか任意の段階で原料に添加することができる。
【0030】
また、(a)成分がアルミナを含む場合は、予め非イオン界面活性剤及び水と混合したもの(以下、混合物(II)ともいう)と、(b)成分とを混合することが、配合安定性の観点から、好ましい。また、混合物(II)を(b)成分と混合せずに用いる場合、混合物(II)を混合するタイミングは、混合物(I)と(b)成分とを混合する前でも後でもよい。
【0031】
(c)成分と(d)成分は、それぞれ、最終的に組成物中に配合される全量を予め水と混合したものと、(b)成分とを混合することが好ましい。尚、(b)成分が粉末や顆粒状の場合は、予め水に予備溶解したものと、(c)成分、(d)成分及び水を混合したものとを混合させることが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法は、後述するような(a)〜(d)成分及び水以外の成分〔便宜的に任意成分という〕を含有する硬質表面用洗浄剤組成物として実施できるが、その場合、任意成分は、任意の時期に混合してよい。
【0033】
<硬質表面用洗浄剤組成物>
本発明の製造方法で得られる硬質表面用洗浄剤組成物は、(a)成分を1〜20質量%、更に1〜15質量%含有することが好ましい。また、増粘性及び使い勝手の観点から、(b)成分を0.01〜5質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.05〜3質量%であり、さらに好ましくは0.05〜1質量%である。また、除菌性能発現と除菌安定性の両立の観点から、(c)成分を0.0001〜0.1質量%、更に0.001〜0.05質量%含有することが好ましい。また、除菌性能発現と除菌安定性の両立の観点から、(d)成分を0.0001〜0.1質量%、更に0.001〜0.05質量%含有することが好ましい。また、(c)成分と(d)成分のモル比は、(c)成分の安定配合の観点から、(c)/(d)=0.001〜4、更に0.01〜4、より更に0.1〜4が好ましい。これらの含有量やモル比を満たすように製造方法の工程で配合成分を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法で得られる硬質表面用洗浄剤組成物の粘度は、500〜10,000mPa・sであることが好ましく、特に1000〜5,000mPa・sであることが除菌安定性と洗浄時の使い易さの観点から好ましい。粘度は、20℃にてブルックフィールド型粘度計(粘度が4000mPa・s以下の場合はローターNo.3、回転数30r/m、粘度が4000mPa・sを超え、20,000mPa・s以下の場合はローターNo.4、回転数30r/m)で測定することができる。
【0035】
本発明の製造方法で得られる硬質表面用洗浄剤組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤は(c)成分以外のものであり、例えばアルキル(ポリ)グリコシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル〔具体的にはポリオキシエチレン(及び/又はプロピレン)アルキルエーテル〕、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤を挙げることができる。アルキル(ポリ)グリコシドは洗浄時の泡立ちの観点から好ましい。界面活性剤、なかでも非イオン界面活性剤の含有量は、組成物中、0.01〜20質量%、更に1〜10質量%含有することが好ましい。
【0036】
その他、本発明の製造方法で得られる硬質表面用洗浄剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、溶剤、ハイドロトロープ剤、香料、顔料、染料等を添加することができる。
【0037】
本発明の製造方法で得られる硬質表面用洗浄剤組成物のpH(20℃)は、作業時の安全性、及び対象物に対する損傷性の点から、3〜11、より3〜9、更に4〜8、更により6〜8が好ましい。pHの調整は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)等のアルカリ剤や、塩酸や硫酸などの無機酸や、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸等の有機酸等の(d)成分以外の酸剤により行うことができる。また、通常は、配合成分の全部を混合した最終段階でpHの確認作業を行い、必要に応じて上記範囲のpHに調整される。
【0038】
本発明の製造方法で得られる硬質表面用洗浄剤組成物は、硬質表面を含む製品、施設等の各種洗浄用途に適用することができる。ここで「硬質表面」とは、平面的であるか又は立体的であるかを問わず、一定の形状を保持しているものを意味するものであり、洗浄処理ができるものであれば、硬さの程度は限定されるものではない。この硬質表面としては、金属、タイル、レンガ、コンクリート、セメント、ガラス、木等からなる床、階段、壁等の固定物のほか、それらからなる各種器械、器具、道具、家具、食器等の人が接触するもの全般を挙げることができる。本発明の製造方法で得られる硬質表面用洗浄剤組成物は、トイレ用洗浄剤、台所まわり用洗浄剤、浴室用洗浄剤、床用洗浄剤、食器用洗浄剤、台所や洗面所の小物の洗浄剤等として適用することができるが、好ましくはトイレ用洗浄剤として適用できる。本発明の製造方法で得られる硬質表面用洗浄剤組成物は、いわゆるクレンザー組成物として使用できる。
【実施例】
【0039】
(1)硬質表面用洗浄剤組成物の製造
(1−1)実施例1〜4について
イオン交換水に、(a)成分、アルキルグリコシドを添加し、室温にて1分間攪拌、混合した。次いでこれに(b)成分を添加し、トリエタノールアミンでpHが所定値となるように調整した。これに、別途調製した(c)成分と(d)成分とイオン交換水を混合した水溶液を添加、攪拌し、表1の硬質表面用洗浄剤組成物を調製した。各成分は最終組成が表1の通りとなるように用いた。
【0040】
(1−2)比較例1、2について
イオン交換水に、(a)成分、アルキルグリコシドを添加し、室温にて1分間攪拌、混合した。次いでこれに(b)成分を添加し、トリエタノールアミンでpHを所定値となるように調整した。これに、(c)成分とイオン交換水を混合した水溶液を添加、攪拌し、表1の硬質表面用洗浄剤組成物を調製した。各成分は最終組成が表1の通りとなるように用いた。
【0041】
(1−2)比較例3について
イオン交換水に、(a)成分、(d)成分、アルキルグリコシドを添加し、室温にて1分間攪拌、混合した。次いでこれに(b)成分を添加し、トリエタノールアミンでpHを所定値となるように調整した。これに(c)成分を添加、攪拌し、表1の硬質表面用洗浄剤組成物を調製した。各成分は最終組成が表1の通りとなるように用いた。
【0042】
(2)評価
(2−1)粘度測定
表1記載の各洗浄剤組成物の配合直後の粘度を、ブルックフィールド型粘度計にてローターNo.3、回転数30r/m、20℃にて測定した。
【0043】
(2−2)除菌性能評価
表1記載の各洗浄剤組成物を用いて、日本石鹸洗剤工業会が管轄する洗剤・石けん公正取引協議会の定める「住宅用洗剤の除菌活性試験方法」に従って試験を行い、下記の基準で除菌性能を評価した(生菌数を1/100以下に減少させる能力があるものは、除菌活性値が2である)。除菌性能の保存による安定性を評価するため、配合直後のものと、50℃で20日間保存したものを用いて除菌性能を評価した。
4:除菌活性値が3.0以上
3:除菌活性値が2.0以上3.0未満
2:除菌活性値が1.0以上2.0未満
1:除菌活性値が1.0未満
【0044】
なお、上記評価は、“洗剤の「除菌」表示と消費者意識(2)-台所用・住居用洗剤の除菌標記について-”[onlne]、日本石鹸洗剤工業会、〔平成20年12月16日検索〕、インターネット<URL:http://jsda.org/w/01_katud/a_seminar061121_2.html>〕における、「3)除菌試験方法」の「3−2.住宅用洗剤の除菌活性試験方法」及び「3−3.住宅用洗剤の除菌活性」を参照して行ったものであり、除菌活性値も該文献に定義されている。
【0045】
具体的な試験方法としては、以下の通りに行った。
〔除菌活性試験方法〕
1)ニュートリエント寒天培地による前培養(37℃で24時間)を2回繰り返した菌(黄色ぶどう球菌もしくは大腸菌)を、ニュートリエント培地の2倍希釈液に分散し、菌濃度を2.5×108〜1.3×109cfu/mlに調整したものを菌液とする。この菌液とモデル汚れ物質(ウシ血清アルブミン3.0wt%水溶液)とを体積比1:1で混合したものを試験菌液とする。
2)1)の試験菌液を試験片(直径20mmのステンレス製円盤)に10μl接種して、全面に塗り広げて乾燥させた後、試験試料(硬質表面用洗浄剤組成物)を100μl接種し、全面に塗り広げて25±1℃にて5分間静置する。
3)硬質表面用洗浄剤組成物の効果を停止させるため、2)の試験片と試験試料を不活性化剤(LP希釈液)10mlに投入する(これにより5分間での除菌効果を評価することができる)。
4)混釈平板培養法により、上記3)で得た液の106倍希釈液中の細菌数を計測する(対数値として算出する)。
5)試験試料の代わりに、0.05wt%Tween80水溶液を用いたものを対照とする。各試料の3回繰り返しの平均値を求め、試験試料と対照試料との菌数の対数差を除菌活性値とする。
【0046】
(2−3)不溶物生成の有無
(b)成分と(c)成分が相互作用をすることによる、不溶物の生成がないか、評価を行った。表1の洗浄剤組成物から、上記の製造方法により(a)成分(研磨剤)を除いた評価用サンプルを調製し、1時間後の状態を肉眼で観察し、不溶物の生成有無を判定した。
無:不溶物が生成していない。
有:不溶物が生成している。
【0047】
【表1】

【0048】
(注)表中の成分は以下のものである。なお、調整量とは表中のpHに調整するための量である。また、(c)成分と(d)成分の予備混合とは、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分のうち、(c)成分と(d)成分と水の混合物を(b)成分〔(b)成分を含む混合物〕と混合することである。
・シリカ:TMC−150(山森土本鉱業所株式会社製)
・ゼオライト:HSZ−720KOA(東ソー株式会社)
・焼成アルミナ:微粒アルミナAM−28(平均粒径12μm、住友化学株式会社製)
・架橋型ポリアクリル酸:アクペックHV−501(住友精化株式会社製)、0.2%水溶液(水酸化ナトリウムでpH7.0に調整したもの)の粘度は5200mPa・s(ブルックフィールド型粘度計にてローターNo.4、回転数30r/m、20℃にて測定した)
・アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド:サニゾールC(花王株式会社製)
・アルキルグリコシド:マイドール 10(花王株式会社製)
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸Na:ネオペレックスG−25(花王株式会社製)
・トリエタノールアミン:BASFジャパン株式会社製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)研磨剤〔以下、(a)成分という〕、(b)ポリアクリル酸系増粘剤〔以下、(b)成分という〕、(c)4級アンモニウム塩型抗菌剤〔以下、(c)成分という〕、(d)分子中にカルボキシル基を3〜6個有する多価カルボン酸〔以下、(d)成分という〕及び水を含有する硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法であって、(c)成分、(d)成分及び水を含有する混合物と、(b)成分とを混合する工程を有する、硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項2】
(c)成分と(d)成分とを、(c)/(d)=0.001〜4のモル比で混合する、請求項1記載の硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項3】
硬質表面用洗浄剤組成物がトイレ用である請求項1又は2記載の硬質表面用洗浄剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−150402(P2010−150402A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330464(P2008−330464)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】