説明

磁力回転装置

【課題】銅損を軽減させることにより、効率の良い磁力回転装置を提供する。
【解決手段】 表面及び裏面に磁極が形成された平板状の永久磁石2が周方向に沿って等間隔でn個(nは1以上の整数)配置された回転子3と、前記永久磁石2の磁極と同極性の磁極が対向するように固定子4に固定され、前記永久磁石2に磁力を生じさせて前記回転子3を回転させる複数の電磁石5とを具備し、前記それぞれの永久磁石2は、前記回転子3を周方向にn分割したそれぞれの分割角度αに対して40〜70%の割合を占めるように配置され、前記永久磁石2が前記電磁石5に対向する間、該電磁石5に通電を行い、前記永久磁石2が前記電磁石5を通過した後、前記電磁石5への電流を遮断することにより、前記回転子3に磁力による回転力を付与することを特徴とする磁力回転装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力により回転体を回転させる磁力回転装置に関し、特に、永久磁石と電磁石との反発力及び吸引力を利用した磁力回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転可能な回転軸の円周領域に永久磁石を配置した回転体と、該回転体の永久磁石により生成される磁界に対して反発する磁界を発生する電磁石とを備えた磁力回転装置が発明されている(例えば、特許文献1参照)。この磁力回転装置によれば、永久磁石と電磁石との反発力によって回転体を回転させるトルクを発生して回転体を回転させる。
【0003】
また、本発明者は、これまでに高速回転に適し、より高い電磁トルクを得るために、磁力により生ずる回転トルクと回転子の回転角度との関係において、電磁石に直流一定電流を連続通電した場合に回転子を負の方向に回転させる大値狭角度トルクを発生させる回転角度領域で前記電磁石への電流を遮断し、回転子を正の方向に回転させる小値広角度トルクを発生させる回転角度領域で電磁石へ通電することにより、回転子に磁力による回転力を付与する磁力回転装置を発明した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2968918号公報
【特許文献2】特許第3897043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の磁力回転装置では、回転子に設けられた棒状の永久磁石と固定子に設けられた電磁石との反発力だけを利用している。この磁力回転装置では、永久磁石と電磁石の磁極が接近したときに電磁石にパルス状の電圧を短期間だけ加え、台形波状の電流を流している。永久磁石の磁極表面の磁束密度は大きいので、単位電流当りのトルクは大きい。つまり、トルク定数は大きい。従って、所望のトルクを得るために必要な電流は小さくなる。そのため、銅損は小さくなるように思われるが、この磁力回転装置では、所望の平均トルクを得るために短期間に比較的大きな電流を流さなければならないため、電流の実効値は大きくなる。銅損は、電流実効値の二乗×巻線(コイル)抵抗になるので、単位入力電力当たりの銅損は大きくなる。つまり、特許文献1の磁力回転装置では、銅損が大きくなるため、必ずしも高効率であるとはいえない。
【0006】
また、特許文献2の磁力回転装置では、特許文献1の磁力回転装置が磁極面積の小さい永久磁石を用いているのに対して、平板状の永久磁石を用いている。また、この磁力回転装置では、上述したように特許文献1の磁力回転装置とは異なるタイミングで電磁石に対して通電を行っており、永久磁石と電磁石による吸引力と反発力を利用している。
【0007】
図5の表には、特許文献1及び特許文献2の双方の磁力回転装置の比較を示している。その際、両装置の回転速度の一致、両装置の平均トルクの一致及び両装置の入力電力の一致を仮定している。また、電流波形も矩形波と仮定している。この図5に示す表によれば、単位入力電力当りの銅損は、それぞれ最下欄に示すように表される。但し、図5の表に示すように、kは特許文献2の通電期間Tonに対する特許文献1のコイルへの通電期間の割合を示す定数、mは両者のトルク定数の割合を示す定数、rは巻線(コイル)の抵抗、aは特許文献2のコイルの並列回路数、Uは特許文献2の電磁石の通電期間における逆起電力を表している。尚、損失としては、他に鉄損も考えられるが、ここでは永久磁石の回りに鉄芯がないので、簡単のために鉄損は考えないものとしている。
【0008】
図5の表の最下欄に表す関係式から、k/mの値が小さくなるように構成できれば、単位入力電力当たりの銅損を小さくすることができることが示されている。つまり、mの値を大きくして、kの値を小さくするように構成できれば、銅損を小さくすることができる。しかしながら、特許文献1の磁力回転装置では通電期間が短い、言い換えれば、kの値が大きくなる。また、特許文献2の磁力回転装置では、永久磁石が電磁石から離れている時に電流を流しているため、トルク定数が小さくなる。そのため、mの値が小さくなり、単位入力電力当たりの銅損が大きくなるので、特許文献2の磁力回転装置も、必ずしも高効率であるとはいえないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、単位入力電力当たりの銅損を軽減させることにより、効率の良い磁力回転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者は、図5の表における単位入力電力当りの銅損を示す関係式から、k/mの値が小さくなるように構成することにより、単位入力電力当たりの銅損を小さくし、より効率の良い磁力回転装置を得ることができることを導いた。そこで、通電期間が長く、トルク定数が大きくなるようにするために、請求項1記載の磁力回転装置は、表面及び裏面に磁極が形成された平板状の永久磁石が周方向に沿って等間隔でn個(nは1以上の整数)同じ向きに配置された回転子と、前記永久磁石の磁極と同極性の磁極が対向するように固定子に固定され、前記永久磁石に磁力を生じさせて前記回転子を回転させる複数の電磁石とを具備し、前記それぞれの永久磁石は、前記回転子を周方向にn分割したそれぞれの分割角度に対して40〜70%の割合を占めるように配置され、前記永久磁石が前記電磁石に対向する間、該電磁石に通電を行い、前記永久磁石が前記電磁石の磁極付近を通過した後、前記電磁石への電流を遮断することにより、前記回転子に磁力による回転力を付与することを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の磁力回転装置における前記永久磁石は、回転子の中心から永久磁石の重心を結ぶ直線と、永久磁石の磁極方向の直線とが交わる角度が、回転子の中心方向からみた場合に30°以上60°以下となるように配置されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の磁力回転装置は、前記電磁石のコイルに電流を供給するための直流電源と、前記コイルに直列に接続され、当該コイルへの電流の供給のオン・オフを行うスイッチ部と、前記コイルに一方向のみの直流電流が流れるように前記スイッチ部にそれぞれ並列に接続される第1のダイオード及び第2のダイオードと、静電容量が10μF以上200μF以下であり、前記スイッチ部に並列に接続されるコンデンサと、該コンデンサに回生電流が流れるように前記直流電源のプラス端子側に接続される逆流阻止用ダイオードとを有するモータドライブ回路を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の磁力回転装置によれば、回転子に配置される永久磁石が回転子を周方向にn分割したそれぞれの分割角度に対して40〜70%の割合を占めるように配置され、且つ、この永久磁石が電磁石と対向する間、通電を行うように構成されている。これにより、通電期間を長くすることができるとともに、トルク定数を大きくすることができるので、単位入力電力当たりの銅損を小さくし、より効率を良くすることができる。また、平板状の永久磁石を用いているので、棒磁石を用いる場合よりもギャップ長は必然的に長くなるため、永久磁石は減磁し難くなる。また、各永久磁石による磁束が両隣の永久磁石の磁束を強め合う構成になるということからも減磁し難くなる。
【0014】
請求項2記載の磁力回転装置によれば、永久磁石は、回転子の中心から永久磁石の重心を結ぶ直線と、永久磁石の磁極方向の直線とが交わる角度が、回転子の中心方向からみた場合に30°以上60°以下となるように配置されているので、隣同士の永久磁石が減磁し合うのを抑制することができる。また、このような構成によれば、磁力回転装置の起動時には永久磁石の裏面側の磁極間力(電磁力)がトルクの発生に寄与し、起動してから少し経つと、永久磁石の表面側の磁極間力がトルクの発生に寄与する。従って、永久磁石の表面側の磁極及び裏面側の磁極によるトルクの合成トルクは、通電電流が一定であるならば、通電時間の全域において略一定の大きさのトルクを発生させることができる。また、磁極間距離も短いので、発生トルクを大きくできる。
【0015】
請求項3記載の磁力回転装置によれば、電磁石のコイルに通電を行うためのモータドライブ回路に静電容量が10μF以上200μF以下という小さな静電容量のコンデンサを利用している。これにより、通電期間において永久磁石がコイルに接近する際に発生する逆起電力が電源電圧よりも大きくなることにより逆向きに流れる誘導電流(誘導ブレーキ電流)がコンデンサへと流れる。そのため、コンデンサ電圧が上昇して、誘導電流は減少して零となり、更に正になる。従って、コンデンサ電圧が上昇して、銅損を増加させる誘導ブレーキ電流を抑制するので、より効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る磁力回転装置の構成の一例を示す概略平面図である。
【図2】本発明に係る磁力回転装置の図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る磁力回転装置のモータドライブ回路の一例を示す回路図である。
【図4】本発明に係る磁力回転装置の磁極間力の作用の仕方を説明するための概略説明図であって、(a)は起動時の磁極間力、(b)は起動から少し経過した際の磁極間力を示すものである。
【図5】特許文献1と特許文献2の磁力回転装置の比較表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る磁力回転装置1について、図面を参照しながら説明する。この磁力回転装置1は、図1及び図2に示すように、平板状の永久磁石2がn個配置された回転体(回転子)3と、該回転子3を軸支するフレーム(固定子)4と、該フレーム4に固定される複数の電磁石5とを備えている。
【0018】
回転子3は、回転軸となるシャフト6に2枚の円盤7と1枚の円盤71がスペーサ60を介して所定間隔で固定されており、各円盤7の下面に周方向に等間隔で8個の平板状の永久磁石2が配設されている。また、フレーム4には永久磁石2に対応して8箇所に電磁石5が固定されている。
【0019】
永久磁石2は、表面及び裏面に磁極が形成された平板状のものであり、具体的にはネオジウム系の希土類磁石からなる。このように、表面と裏面にN極及びS極が形成された平板状の永久磁石2を用いることにより、各磁極面積を広くすることができるので、回転トルクの増加を図ることができる。
【0020】
図1に示すように、永久磁石2は、円盤7に数mm程度埋め込まれることにより固定されており、図2に示すように、1枚の円盤7に対して周方向に等間隔となるように8個固定されている。つまり、各永久磁石2は、円盤7の周縁部分に周方向に45°の角度間隔をあけて配設されている。この永久磁石2の固定方法は特に限定されるものではなく、適宜金具等を用いて円盤7へ固定すれば良い。また、各永久磁石2は、円盤5を周方向に8分割した角度間隔α=45°に対して40〜70%の割合の角度βを占めるように配置されている。つまり、分割角度間隔αが45°の場合には、βが約18〜31.5°になるように永久磁石6が配置される。尚、隣接する永久磁石2同士による減磁を考慮すると、分割角度間隔αに対して永久磁石2の占める割合を70%以下にするのが得策である。
【0021】
また、各永久磁石2は、図2に示すように、円盤7(回転子3)の中心Oから永久磁石2の重心を結ぶ直線L1と、永久磁石2の磁極方向、即ち表面及び裏面上の法線方向の直線L2とが交わる角度γが、円盤7の中心O方向からみた場合に約30°以上60°以下となるように配置されている。永久磁石2のN極又はS極のうちいずれかの面が円盤7の外方へ向けられており、永久磁石2に対して所定の磁気ギャップを隔てて設けられる電磁石5の極性は対向する永久磁石2の外方の磁極と同極になっている。尚、本実施形態では円盤7に固定される永久磁石の数が8個の場合を用いて説明しているが、この数は特に限定されるものではない。
【0022】
同様にして、別の円盤7にも先と逆の極を外方に向けられた8個の永久磁石2が固定され、各8個の永久磁石2が固定され2枚の円盤7を互いの永久磁石2が周方向に同位置となるようにスペーサ60を介して重ね合わされている。すなわち、永久磁石2は、磁力回転装置1に合計16個8対設けられている。また、2枚の円盤7と1枚の円盤71の計3枚の円盤もスペーサ60を介して重ね合わされている。
【0023】
また、円盤71には、センサ検出盤8が同軸となるように固定されている。センサ検出盤8は、円盤71よりも若干大径の透明なプラスチック板であり、円盤71の周縁から突出した部分の所定部位にテープ等を貼り付けることにより、該部位を位置検出センサ9が検出するように構成されている。
【0024】
各円盤7、71の中心にはシャフト6が貫通されており、これらシャフト6、円盤7、71、永久磁石2、及びセンサ検出盤8が固定されて、回転子3として一体に回転するようになっている。また、図1に示すように、回転子3の周縁部分には、各円盤7、71の周縁部間に渡るようにフィルム10が貼り付けられている。このように回転子3の周縁をフィルム10で封止することにより、回転子3が回転した場合にフィルム10で封止された回転子3の内部の空気が回転子3とともに回転するため、永久磁石2等が空気抵抗を受けることが少なくなる。これにより、回転子3の空気抵抗を減少させて磁力回転装置1の回転効率を向上させることができる。尚、フィルム10は、永久磁石2と電磁石5との磁力の作用に影響しない素材であって、薄手のものが好ましく、例えばプラスチックフィルム等を用いることができる。
【0025】
電磁石5は、図1に示すように、U字の鉄芯50にコイル51が巻かれたものであり、コイル51に電流が流れることにより鉄芯50の両端部に夫々磁極が形成される。これにより、永久磁石2に磁力を発生させて回転子3を回転させる。図1に示すように、電磁石5は、その各磁極が各円盤7間に二段に構成された永久磁石2に対応するようにして、所定の磁気ギャップ長で配置されている。また、対応する二段の永久磁石2は、電磁石5の磁極と同極で対面するように、すなわち、電磁石5のN極に対応する永久磁石2はN極を外方へ向けて円盤7に固定されており、電磁石5のS極に対応する永久磁石2はS極を外方へ向けて円盤7に固定されている。このような電磁石5が、図2に示すように、回転子3の永久磁石2の配置に対応して、フレーム4に周方向に45°異なる位置に8個固定されている。このように、回転子3に固定する一組の永久磁石2を二段の構成とし、電磁石5をU字状として該二段の永久磁石2に対応させて、電磁石5の両極から発生する磁束をともに回転子3を回転させるための磁力発生に用いることにより、磁力回転装置1の電力から動力へのエネルギーの変換効率が向上する。
【0026】
また、電磁石5は、円盤8(回転子3)の中心Oから電磁石5の重心を結ぶ直線(不図示)と、電磁石5の磁束中心軸(不図示)とが交わる角度が円盤7の中心O方向からみた場合に0°以上20°以下となるようにフレーム4に固定されている。これにより、前記角度を0°とする場合と比較して、平均電磁トルクが増大するという利点がある。図2では、前記角度が0°の状態を示しているが、前述のように電磁石5は、0°以上20°以下となるように固定されていれば良い。尚、永久磁石2の固定角度の変更は、磁力回転装置1を分解する必要があるため困難であるが、電磁石5の固定角度の変更は、容易に行うことができる。
【0027】
フレーム4は、回転子3を軸支するとともに、電磁石5及び位置検出センサ9を固定するものであり、図1に示すように、2枚のフレーム板40が所定間隔で互いに対向するように連結されている。回転子3は、対向するフレーム板40間において、シャフト6が軸支されていることにより、フレーム4に回転自在に設けられている。従って、2枚のフレーム板40は、回転子3の外径より十分に大きなものである。また、図には示していないが、シャフト6を軸支する各フレーム板40にはベアリングが適宜設けられている。
【0028】
また、フレーム4には、センサ検出盤8に対応して位置検出センサ9が設けられている。この位置検出センサ9としては、回転子3とともに回転するセンサ検出盤8の所定部位を検出できれば周知且つ任意のものを使用できる。また、位置検出センサ9は、電磁石5に電圧を供給するために各電磁石5に接続される回路(モータドライブ回路)11と接続されており、電磁石5に電圧を供給するタイミングを回路11に与えている。
【0029】
この回路11としては、例えば、図3に示すように、電磁石5の各コイル51に電流を供給するための直流電源12と、コイル51に直列に接続され、コイル51への電流の供給のオン・オフを行うスイッチ部SW1、SW2と、コイル51の有する電磁エネルギーがコンデンサ13に回生されるようにスイッチ部SW2に並列に接続される第1のダイオードD1及びスイッチ部SW1に並列に接続される第2のダイオードD2と、スイッチ部SW1、SW2に並列に接続されるコンデンサ13と、該コンデンサ13に回生電流が流れるように直流電源12のプラス端子に接続される逆流阻止用ダイオードD3とを備えるものを用いる。
【0030】
この回路11のコンデンサ13には、通常は静電容量が大きいものを用いるが、ここでは、静電容量が10μF以上200μF以下であるコンデンサ13を用いている。これにより、コイル51への通電期間の始めにおいて永久磁石2がコイル51に接近する際に発生する逆起電力が電源電圧よりも大きくなることにより逆向きの誘導電流(誘導ブレーキ電流)がコンデンサ13へと流れる。この電流は負のトルクを発生する。この電流により、コンデンサ電圧Vcが上昇していき、誘導電流は減少して零となり、更に正になる。この誘導ブレーキ電流は銅損や鉄損を増加させる。回路11は、銅損,鉄損を増加させる誘導ブレーキ電流を抑制するので、磁力回転装置1の効率を向上させることができる。尚、回路11を、例えば、一方向通電形モータであるSRM(スイッチトリラクタンスモータ)に適用することもできる。
【0031】
次に、この磁力回転装置1において、磁力による付勢力を与えて回転子3を回転させる動作について説明する。この磁力回転装置1では、図2に示すように、永久磁石2は、円盤5を周方向に8分割した角度間隔α=45°に対して40〜70%の割合の角度βを占めるように配置されている。このような永久磁石2が電磁石5に対向する間、該電磁石5に回路11による通電を行い、永久磁石2が電磁石5の磁極付近を通過した後、電磁石5への電流を遮断することにより、回転子3に磁力による回転力を付与する。つまり、永久磁石2の回転方向先端が電磁石5と対向する際に、回路11により電磁石5に通電を行い、その後、回転子3が角度β回転して永久磁石2の回転方向後端が電磁石5を通過するまでの間、通電を続ける。そして、永久磁石2の回転方向後端が電磁石5を通過すると、回路11による電流の供給を遮断する。磁力回転装置1が動作する場合には、このような一連の動作を繰り返し行われる。このように、磁極面積の大きな平板状の強力な永久磁石2を用いることにより磁力回転装置1は、通電期間を長くすることができるとともに、トルク定数を大きくすることができるので、単位入力電力当たりの銅損を小さくし、より効率を良くすることができる。
【0032】
また、図4の(a)に示すように、磁力回転装置1の通電初期には、永久磁石2の内側(裏面側)の磁極Sに磁極間力F1が生じ、これは矢印で示す正方向のトルクの発生に寄与する。その際、永久磁石2の外側(表面側)の磁極Nには反発力F2が生じるが、これはトルクにはほとんど寄与しない。また、図4の(b)に示すように、通電してから少し経過した際には、外側の磁極Nの磁極間力F4が矢印で示す正方向のトルクの発生に寄与する。その際、内側の磁極Sには磁極間力F3が生じるが、これはトルクにはほとんど寄与しない。従って、永久磁石3の表面側の磁極N及び裏面側の磁極Sによるトルクの合成トルクは、通電電流が一定であるならば、通電時間の全域において略一定の大きさのトルクを発生させることができる。また、磁極間力は磁荷間の距離の二乗に反比例するものであるが、本発明では磁極間距離が短くなるので、発生トルクを大きくすることができる。
【0033】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 磁力回転装置
2 永久磁石
3 回転体(回転子)
4 フレーム(固定子)
5 電磁石
51 コイル
11 回路(モータドライブ回路)
12 直流電源
13 コンデンサ
SW1、SW2 スイッチ部
D1 第1のダイオード
D2 第2のダイオード
D3 逆流阻止用ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面に磁極が形成された平板状の永久磁石が周方向に沿って等間隔でn個(nは1以上の整数)配置された回転子と、前記永久磁石の磁極と同極性の磁極が対向するように固定子に固定され、前記永久磁石に磁力を生じさせて前記回転子を回転させる複数の電磁石とを具備し、
前記それぞれの永久磁石は、前記回転子を周方向にn分割したそれぞれの分割角度に対して40〜70%の割合を占めるように配置され、
前記永久磁石が前記電磁石に対向する間、該電磁石に通電を行い、前記永久磁石が前記電磁石を通過した後、前記電磁石への電流を遮断することにより、前記回転子に磁力による回転力を付与することを特徴とする磁力回転装置。
【請求項2】
前記永久磁石は、回転子の中心から永久磁石の重心を結ぶ直線と、永久磁石の磁極方向の直線とが交わる角度が、回転子の中心方向からみた場合に30°以上60°以下となるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の磁力回転装置。
【請求項3】
前記電磁石のコイルに電流を供給するための直流電源と、前記コイルに直列に接続され、当該コイルへの電流の供給のオン・オフを行うスイッチ部と、前記コイルに一方向のみの直流電流が流れるように前記スイッチ部にそれぞれ並列に接続される第1のダイオード及び第2のダイオードと、静電容量が10μF以上200μF以下であり、前記スイッチ部に並列に接続されるコンデンサと、該コンデンサに回生電流が流れるように前記直流電源のプラス端子側に接続される逆流阻止用ダイオードとを有するモータドライブ回路を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の磁力回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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