説明

磁場検出素子の評価装置

【課題】磁場検出素子に対して所定の強度で均一に磁場を印加し、磁場検出素子を正確に評価することが可能な磁場検出素子の評価装置を提供する。
【解決手段】シールド部材13は、磁場をシールドする材料から形成され、磁場検出素子22,22‥のうちの少なくとも1つを露呈する開口部15が形成されている。磁場印加手段14は、例えばシールド部材13の開口部15の近傍に配され、所定の強度の磁場を発生させる。磁場印加手段14で発生した磁場の漏れ磁界Mは、開口部15の成す開口面に対して略水平に磁界Mが誘導され、開口部15から露呈された磁場検出素子22,22‥のうちの少なくとも1つに対して磁場を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場検出素子の磁気的特性を評価する磁場検出素子の評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間に存在する微弱な外部磁場、例えば地磁気などを検出する磁場検出素子としては、例えば磁気インピーダンス素子、磁気抵抗効果素子、フラックスゲート等が挙げられる。例えば、磁気インピーダンス素子は、外部磁界の正、負双方の出力特性がほぼ対称形をなし、かつ磁場0付近でそのインピーダンスが極小となる。このような出力特性を利用して、磁場の検出感度を上げたり、磁場の方向を検知するために、磁気インピーダンス素子にバイアス磁界を印加する方法が知られている。
【0003】
こうした磁気インピーダンス素子の磁場に対する応答特性を測定する装置として、例えば、磁気インピーダンス素子を備えた被測定物に対して、磁場を印加し、磁気インピーダンス素子の出力を測定する磁場検出素子の評価装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3054458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁場検出素子の出力特性を正確に測定する際には、磁場検出素子の検出面に対して水平な磁場を、全域に渡って均一な強度で印加することが必要となる。しかしながら、こうした磁場の印加は磁場発生装置による漏れ磁界を利用するため、磁場検出素子の検出面全域に渡って均一な強度の磁場を印加しようとすると、磁場検出素子の外側まで広く漏れ磁界を発生させる必要が生じる。
【0005】
こうして、磁場検出素子の外側まで漏れ磁界を発生させると、磁場検出素子の外側に磁性体が存在する場合、この磁性体が磁束を集めてしまい、測定対象の磁場検出素子に印加される磁場の強度が設定値と異なってしまうという不都合が生じる。特に、ウェハ上に複数の磁場検出素子が互いに高密度に隣接して形成されている場合、測定対象の磁場検出素子に隣接する磁場検出素子の影響によって磁束が集められ、測定対象の磁場検出素子に印加される磁場の強度が設定値よりも強められて正確な測定ができないといった課題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、磁場検出素子に対して所定の強度で均一に磁場を印加し、磁場検出素子を正確に評価することが可能な磁場検出素子の評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る磁場検出素子の評価装置は、1つ以上の磁場検出素子が面状に配された被測定物を載置するステージと、前記被測定物の近傍に配され、前記磁場検出素子のうちの少なくとも1つを露呈する開口部を有するシールド部材と、前記開口部の成す開口面に対して略水平に磁界を誘導する磁場印加手段とを少なくとも備えたことを特徴とする。
本発明の請求項2に係る磁場検出素子の評価装置は、請求項1において、前記開口部は、前記磁場印加手段から前記被測定物に向かって、その側壁が内側に傾斜したテーパー形状であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る磁場検出素子の評価装置は、請求項1において、前記ステージは、移動可能であることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る磁場検出素子の評価装置は、請求項1において、前記開口部は、前記磁場検出素子と略同じ面積か、または、前記磁場検出素子より大きい面積を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁場検出素子の評価装置によれば、開口部から露呈された磁場検出素子の検出面全体に均一な強度の磁場を印加するために、1つの磁場検出素子よりも広い範囲に磁場を与えても、開口部から露呈された磁場検出素子の周辺はシールド部材によって覆われ、印加された磁場の影響を受けない。
【0009】
よって、開口部から露呈された評価対象の磁場検出素子に対しては、均一な強度の磁場を印加できるとともに、開口部から露呈された磁場検出素子の周辺に配された磁性体による磁場の影響をシールド部材によって防止できるので、開口部から露呈された磁場検出素子の正確な磁気特性を測定、評価することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る磁場検出素子の評価装置の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、磁場検出素子の評価装置の一例を示す斜視図であり、図2はその側断面図である。磁場検出素子の評価装置10は、一面に被測定物11を載置するステージ12と、被測定物11の近傍に配されるシールド部材13と、被測定物11に磁場を印加する磁場印加手段14とを有している。
【0012】
評価装置10によって磁気的特性を評価する被測定物11は、例えばウェハ21に複数の磁場検出素子22,22‥が面状に配されたものである。シールド部材13は、磁場をシールドする材料から形成され、磁場検出素子22,22‥のうちの少なくとも1つを露呈する開口部15が形成されている。
【0013】
磁場印加手段14は、例えばシールド部材13の開口部15の近傍に配され、所定の強度の磁場を発生させる。磁場印加手段14で発生した磁場の漏れ磁界Mは、開口部15の成す開口面Fに対して略水平に磁界Mが誘導され、開口部15から露呈された磁場検出素子22,22‥のうちの少なくとも1つに対して磁場を印加する。
【0014】
このような構成の磁場検出素子の評価装置10によれば、開口部15から露呈された磁場検出素子22の検出面全体に均一な強度の磁場を印加するために、1つの磁場検出素子22よりも広い範囲に磁場を与えても、開口部15から露呈された磁場検出素子22の周辺はシールド部材13によって覆われ、印加された磁場の影響を受けない。
【0015】
従って、開口部15から露呈された磁場検出素子22の周辺にも磁性体、例えば複数の磁場検出素子22,22‥が配されていたとしても、これらはシールド部材13によって覆われるので、広い範囲に印加された磁場を集めて開口部15から露呈された磁場検出素子22の磁場を強めてしまうといったことを防止する。
【0016】
よって、開口部15から露呈された評価対象の磁場検出素子22に対しては、均一な強度の磁場を印加できるとともに、開口部15から露呈された磁場検出素子22の周辺に配された他の磁場検出素子22などの磁性体による磁場の影響をシールド部材13によって防止できるので、開口部15から露呈された磁場検出素子22の正確な磁気特性を測定、評価することが可能になる。
【0017】
ステージ12は、移動機構(図示せず)によって水平方向に移動可能にしてもよい。ステージ12を移動可能にすることで、ウェハ21に複数の磁場検出素子22,22‥が面状に配された被測定物11などに、ステージ12を移動させつつ磁場を印加して、開口部15に露呈される磁場検出素子22をスクロールさせ、連続して多数の磁場検出素子22,22‥を短時間に測定、評価することが可能になる。
【0018】
磁場検出素子22は、例えば、磁性体がメアンダ状に配されたものであればよい。シールド部材13は、磁性材料、例えば、パーマロイ等を板状に形成したものを用いればよい。こうしたシールド部材13と磁場検出素子22との隙間tは、例えば100μm〜1mm 程度に設定すればよい。
【0019】
シールド部材13に形成される開口部15は、磁場検出素子22を1つないし複数露呈させる大きさに形成されていれば良い。そして、開口部15の形状は、例えば、被測定物11に向かって側壁Rが内側に傾斜したテーパー形状に形成されていればよい。こうしたテーパー形状に形成された側壁Rの傾斜角度θは、例えば、10〜70°に設定されていれば良い。開口部15の側壁Rを内側に傾斜したテーパー形状に形成することによって、磁場印加手段14で形成された磁界Mを開口部15の成す開口面Fに対して略水平に誘導することが容易になる。
【0020】
磁場印加手段14としては、例えば、ソレノイドコイルなどの電磁石や永久磁石などを用いればよく、磁界を発生できるものであれば、どのような形態のものであってもよい。こうした、磁場印加手段14の磁場発生面はシールド部材13の開口部15に対して任意の角度に設定されれば良い(図2中の符号14点線部参照)。また、磁場印加手段14で形成された磁界Mを開口部15の成す開口面Fに対して略水平に誘導しやすくするために、開口部15の縁部に磁性体などを形成しても良い。
【0021】
被測定物11は、磁場検出素子22が1つだけ形成されていても良く、また、複数の磁場検出素子22が不規則に配列されていても良い。磁場検出素子22としては、例示した磁性材をメアンダ形状に形成したもの以外にも、例えば、導電材をコイル状に形成したものや、スパイラル状に形成したものなど、磁場の強度や方向を検知できる形態のものであれば、どのようなものであってもよく、限定されるものではない。
【0022】
開口部は、磁場検出素子が複数同時に露呈される形状であっても良い。図3に示す磁場検出素子の評価装置30によれば、シールド部材33の開口部35は、被測定物11を成す磁場検出素子22,22‥を複数同時に露呈する略長方形の形状に形成されている。また、磁場印加手段34は、こうした開口部35の形状に合わせて、開口部35から露呈された複数の磁場検出素子22,22‥に対して、均一な強度で磁場を印加できる構成となっている。
【0023】
このような磁場検出素子の評価装置30によれば、複数の磁場検出素子22,22‥を同時に測定、評価が可能になり、より一層短時間で複数の磁場検出素子22,22‥が形成された被測定物11の評価を行うことができる。
【0024】
なお、こうしたシールド部材に形成される開口部は、複数形成されていてもよい。例えば、複数の磁場検出素子が形成された被測定物11に対して、千鳥状に互い違いに開口を形成することで、磁場印加手段のレイアウトがしやすくすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の磁場検出素子の評価装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の磁場検出素子の評価装置の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の磁場検出素子の評価装置の別な実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
10…磁場検出素子の評価装置、11…被測定物、12…ステージ、13…シールド部材、14…磁場印加手段、15…開口部、22…磁場検出素子。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の磁場検出素子が面状に配された被測定物を載置するステージと、前記被測定物の近傍に配され、前記磁場検出素子のうちの少なくとも1つを露呈する開口部を有するシールド部材と、前記開口部の成す開口面に対して略水平に磁界を誘導する磁場印加手段とを少なくとも備えたことを特徴とする磁場検出素子の評価装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記磁場印加手段から前記被測定物に向かって、その側壁が内側に傾斜したテーパー形状であることを特徴とする請求項1に記載の磁場検出素子の評価装置。
【請求項3】
前記ステージは、移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の磁場検出素子の評価装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記磁場検出素子と略同じ面積か、または、前記磁場検出素子より大きい面積を有することを特徴とする請求項1に記載の磁場検出素子の評価装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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