説明

磁場検出装置

【課題】様々な目的、環境磁場の測定が容易に可能となる磁場検出装置を実現する。
【解決手段】検出側から順次配置された第1、第2、第3、第4の検出コイルと、前記第1の検出コイルの巻き始めに一端が接続された第1の検出リードと、前記第4の検出コイルの巻き終わりに一端が接続された第2の検出リードとを有する2次微分型グラジオメータを具備する磁場検出装置において、前記第1の検出コイルの巻き終わり箇所に一端が接続された第3の検出リードと、前記第2の検出コイルの巻き終わり箇所に一端が接続された第4の検出リードとを具備したことを特徴とする磁場検出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場検出装置に関するもので、特に、空間領域に存在する磁場、及び特定の磁場発生源からの磁場をそれぞれ検出できるように動作することができる磁場検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁場検出装置に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【非特許文献1】川西健次等編、「電気工学ハンドブック」、初版、株式会社朝倉書店、1998年11月10日、P94−P95、図2.1.17。
【0004】
図3は従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
図3において、巻数N1の検出コイル11、その信号出力1、信号出力2からなるマグネトメータが示されている。
この検出コイル11は、検出コイル11を鎖交する磁場を全て検出する。
【0005】
図4は従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
図4において、巻数N2の検出コイル12と、このコイルから距離d1離れた位置に平行に設置され、検出コイル12と逆方向巻で巻数N2の検出コイル13と、その信号出力3、信号出力4とからなる構成の1次微分型グラジオメータが示されている。
この1次微分型グラジオメータは、検出コイル12の近くに測定対象の磁場源があるものとすると、磁場源にて磁場が発生したとき、検出コイル12には磁場源からの磁場と周囲環境磁場の双方が加わる。
【0006】
コイル13には周囲環境磁場が加わる。
コイル13は、コイル12と逆方向に巻かれているため、コイル12に加わった周囲環境磁場とコイル13に加わった周囲環境磁場は打ち消しあい、信号出力3、信号出力4からは磁場源からの磁場が出力される。
【0007】
図5は従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
図5において、巻数N3の検出コイル14と、検出コイル14から距離d2離れた位置に平行に検出コイル14と逆方向巻で巻数N3の検出コイル15、検出コイル16が設置され、さらに検出コイル16から距離d2離れた位置に平行に、検出コイル14と同方向巻に巻数N3の検出コイル17が設置され、そして信号出力5、信号出力6からなる2次微分型グラジオメータが示されている。
【0008】
この2次微分型グラジオメータは、図4の1次微分型グラジオメータを2段にした構成になっており、1次微分型グラジオメータよりも、より周囲環境磁場を打ち消す構成になっている。
【0009】
現在、磁気シールドルーム内の環境磁場を測定する方法として、図3のマグネトメータと同じ構成のコイルを用いて磁気シールドルーム21内の環境磁場を測定している。
その測定方法を図6に示す。
【0010】
図6の磁気シールドルーム21内にコイル11を設置し、磁気シールドルーム21内の環境磁場を測定する。
コイル11で検出された磁場信号は、磁気シールドルーム21外に置かれた信号増幅装置22で信号を増幅し、後段の解析装置23で磁場信号を解析している。
【0011】
また、コイル11以外を用いて磁気シールドルーム21内の環境磁場を測定する方法としては、図7に示すフラックスゲート磁束計を用いる方法がある。
図に示す如く、磁気シールドルーム内21にフラックスゲート磁束計のセンサ部25を設置し、磁気シールドルーム21内の環境磁場測定を行う。
フラックスゲート磁束計センサ部25により検出された環境磁場は、磁気シールドルーム21外に置かれたフラックスゲート磁束計電子回路部26にて信号処理を行い、その後段の解析装置27にて磁気シールドルーム内の環境磁場を解析する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような装置においては、以下の間題点がある。
従来、例えば微弱な脳磁場を計測する脳磁計測システムなどの生体磁場計測システムなどに使用する磁気シールドルームに関して、システム設置前の環境磁場測定、及びシステム設置後の磁気シールドルーム内環境磁場測定(シールド率特性測定)において、図3に示す如きコイル11、あるいはフラックスゲート磁束計25などを用いて環境磁場を測定していた。
【0013】
しかし、磁気シールドルーム設置後の磁気シールドルーム内環境磁場測定及びシールド率測定は、磁気シールドルーム内の磁場強度が小さいため、フラックスゲート磁束計などでは感度的に測定に限界がある。
【0014】
また、微弱な脳磁場を計測する脳磁計測システムなどの生体磁場計測システムなどで用いられている磁気センサのSQUIDでは、ピックアップコイルに図4及び図5に示すグラジオメータを用いて磁場勾配を検出している。
従って、本来、磁気シールドルームに関する環境磁場測定においても、磁場勾配の検出可能なグラジオメータを用いて測定するべきである。
【0015】
また、磁気シールドルーム設置前の環境磁場測定にはSQUIDは使用できないし、磁気シールドルーム設置後の遮蔽率特性測定において、磁気シールドルーム内の環境磁場を測定する場合、脳磁計などの生体磁場計測装置を磁気シールドルーム内の一角に設置・固定してしまうため、SQUIDでは磁気シールドルーム内の特定の場所の遮蔽率特性測定(環境磁場測定)しかできない。
【0016】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、様々な目的、環境磁場の測定が容易に可能となる磁場検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1の磁場検出装置においては、
検出側から順次配置された第1、第2、第3、第4の検出コイルと、前記第1の検出コイルの巻き始めに一端が接続された第1の検出リードと、前記第4の検出コイルの巻き終わりに一端が接続された第2の検出リードとを有する2次微分型グラジオメータを具備する磁場検出装置において、前記第1の検出コイルの巻き終わり箇所に一端が接続された第3の検出リードと、前記第2の検出コイルの巻き終わり箇所に一端が接続された第4の検出リードと
を具備したことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項2の磁場検出装置においては、請求項1記載の磁場検出装置において、
前記第1の検出コイルに対向して配置された第1の校正コイルと、前記第2の検出コイルに対向して配置され前記第1の校正コイルと逆方向巻き同数巻きで前記第1の校正コイルと並列接続された第2の校正コイルとを具備し、校正時に前記第1,第2の校正コイルに校正入力信号が入力されることを特徴とする
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
通常、使用目的や測定環境にあわせて様々な磁場検出装置を選択しながら使用しているが、本装置を用いることにより本装置のみで様々な目的、環境磁場の測定が可能となる磁場検出装置が得られる。
【0020】
脳磁計などの生体磁場計測に使用する磁気シールドルーム設置に関して、設置前の環境磁場測定、及び設置後の磁気シールドルーム内の環境磁場測定(シールド率特性測定)において、本来行うべき磁場勾配測定が可能となる磁場検出装置が得られる。
【0021】
磁気シールドルームに関する磁場測定だけではなく、磁気シールドルーム内の特定の磁場発生源(機器など)からの磁場測定にも適応できる磁場検出装置が得られる。
主としてコイルが用いられているので、既存のフラックスゲート磁束計よりも安価に提供できる磁場検出装置が得られる。
【0022】
磁気シールドルーム内では磁場強度が小さいため、フラックスゲート磁束計では感度的に測定に限界があり、また周波数帯域についても限界があるが、本発明の磁場検出装置では、設計段階で磁場検出感度及び周波数帯域を自由に設定できるため、高感度で、低周波数から高周波数までの広範囲の周波数の磁場が検出できる磁場検出装置が得られる。
【0023】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
第1の検出コイルに対向して配置された第1の校正コイルと、第2の検出コイルに対向して配置され、第1の校正コイルと逆方向巻き同数巻きで、第1の校正コイルと並列接続された第2の校正コイルとを具備し、校正時に前記第1,第2の校正コイルに校正入力信号が入力されるので、装置自身で校正が可能となる磁場検出装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2は図1の動作説明図である。
【0025】
図1において、本発明による磁場検出装置の検出コイル30は、複数の第1,第2,第3,第4の検出コイル31、32、33、34及び第1,第2の校正用コイル35、36からなる。
第1の検出コイル31から距離d3離れた位置に平行に第2の検出コイル32が設置され、第3の検出コイル33から距離d3離れた位置に平行に第4の検出コイル34が設置されている。
【0026】
第1の検出リード41は、第1の検出コイル31の巻き始めに一端が接続されている。
第2の検出リード42は、第4の検出コイルの巻き終わりに一端が接続されている。
第3の検出リード43は、第1の検出コイル31の巻き終わり箇所に一端が接続されている。
第4の検出リード44は、第2の検出コイル32の巻き終わり箇所に一端が接続されている。
【0027】
第1の校正コイル35は、第1の検出コイル31に対向して配置されている。
第2の校正コイル36は、第2の検出コイル32に対向して配置され、第1の校正コイル35と逆方向巻き同数巻きで、第1の校正コイル35と並列接続されている。
45は第1,第2の校正コイル35,36への校正信号入力リードである。
【0028】
検出コイル31はマグネトメータを構成し、コイル31に鎖交する磁場を全て検出する。その出力は検出リード41,43から取り出される。
コイル31の巻き数M1は、まず検出したい磁場強度を設定し、その磁場強度の磁場が検出可能な巻き数に設定する。
【0029】
検出コイル31、32、及び検出コイル33、34はそれぞれ1次微分型グラジオメータを構成しており、検出コイル31、32の差分、及び検出コイル33、34の差分を出力するように結線されている。その出力がそれぞれ、検出リード41,44、と検出リード42,44から取り出される。
検出コイル32,33,34の巻き数は、検出コイル31と同数M1回巻く。また、巻き方は、検出コイル32、33が検出コイル31と逆方向巻き、検出コイル34を検出コイル31と同方向巻きとする。
【0030】
検出コイル31,32,33,34は2次微分型グラジオメータを構成しており、検出コイル31,32,33,34の差分を出力するように結線されている。その出力は検出リード41,42から取り出される。
コイル35,36は校正用コイルであり、検出コイル31〜34の校正用コイルで、ある大きさの校正用磁場を発生させる。
【0031】
校正用コイル35は、検出コイル31(マグネトメータ)用の校正用コイルで、ある大きさの磁場を発生させるように設計した巻き数M2を巻く。
校正用コイル36は、検出コイル32の校正用コイルである。また、検出コイル33、34(グラジオメータ)の校正用コイルも兼ねており、巻き数は校正用コイル35と同数(M2)巻き、巻く方向は逆方向とする。
【0032】
以上の構成において、検出コイル31(マグネトメータ)、検出コイル31,32(1次微分型グラジオメータ)、検出コイル31,32,33,34(2次微分型グラジオメータ)により、環境磁場などの全ての磁場信号、及び特定の磁場発生源からの磁場信号を検出し、検出リード41,42,43,44よりその信号を出力する。
校正は、リード45に外部より校正用信号を入力することにより、校正用コイル35,36では校正用磁場を発生させる。この校正用磁場を検出コイル31〜34が検出することにより校正を行う。
【0033】
この結果、
通常、使用目的や測定環境にあわせて様々な磁場検出装置を選択しながら使用しているが、本装置を用いることにより本装置のみで様々な目的、環境磁場の測定が可能となる磁場検出装置が得られる。
【0034】
脳磁計などの生体磁場計測に使用する磁気シールドルーム設置に関して、設置前の環境磁場測定、及び設置後の磁気シールドルーム内の環境磁場測定(シールド率特性測定)において、本来行うべき磁場勾配測定が可能となる磁場検出装置が得られる。
【0035】
磁気シールドルームに関する磁場測定だけではなく、磁気シールドルーム内の特定の磁場発生源(機器など)からの磁場測定にも適応できる磁場検出装置が得られる。
主としてコイルが用いられているので、既存のフラックスゲート磁束計よりも安価に提供できる磁場検出装置が得られる。
【0036】
磁気シールドルーム内では磁場強度が小さいため、フラックスゲート磁束計では感度的に測定に限界があり、また周波数帯域についても限界があるが、本発明の磁場検出装置では、設計段階で磁場検出感度及び周波数帯域を自由に設定できるため、高感度で、低周波数から高周波数までの広範囲の周波数の磁場が検出できる磁場検出装置が得られる。
【0037】
第1の検出コイル31に対向して配置された第1の校正コイル35と、第2の検出コイル32に対向して配置され、第1の校正コイル35と逆方向巻き同数巻きで、第1の校正コイル35と並列接続された第2の校正コイル36を具備し、校正時に第1,第2の校正コイル35,36に校正入力信号が入力されるので、装置自身で校正が可能となる磁場検出装置が得られる。
【0038】
図2は、本発明装置を、磁気シールドルーム内の環境磁場測定(磁気シールド率測定)で使用した使用例である。
磁気シールドルーム21内に本発明の磁場検出装置30が図2のように設置されている。
磁場検出装置30で得られた出力信号を、磁気シールドルーム21外に置かれた信号増幅装置51を用いて増幅する。
【0039】
信号増幅装置51で増幅された磁場信号を解析装置52で解析を行い、磁気シールドルーム21内における環境磁場測定及び磁気シールド率特性を測定する。
また、同様の方法により、磁気シールドルーム21内の特定の磁場発生源(機器など)からの磁場測定も可能である。
【0040】
なお、磁気シールドルーム21内の磁場強度は小さいため、フラックスゲート磁束計25では感度的にも周波数帯域的にも限界があるが、本発明の磁場検出装置では設計段階で磁場検出感度及び周波数帯域を自由に設定できるため、広帯域でより微弱な磁場まで検出可能となる。
なお、本装置には、校正用コイル35,36が取付けられていることにより、装置自身で校正が可能となるため、別途校正装置を用いる必要がない利点を有する。
【0041】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の使用例の説明図である。
【図3】従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
【図4】従来より一般に使用されている他の従来例の構成説明図である。
【図5】従来より一般に使用されている他の従来例の構成説明図である。
【図6】図3の使用例の説明図である。
【図7】従来より一般に使用されている他の従来例の構成説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 信号出力
2 信号出力
3 信号出力
4 信号出力
5 信号出力
6 信号出力
11 検出コイル
12 検出コイル
13 検出コイル
14 検出コイル
15 検出コイル
16 検出コイル
17 検出コイル
21 磁気シールドルーム
22 信号増幅装置
23 解析装置
25 フラックスゲート磁束計のセンサ部
26 フラックスゲート磁束計電子回路部
27 解析装置
30 検出コイル
31 第1の検出コイル
32 第2の検出コイル
33 第3の検出コイル
34 第4の検出コイル
35 第1の校正用コイル
36 第2の校正用コイル
41 第1の検出リード
42 第2の検出リード
43 第3の検出リード
44 第4の検出リード
45 校正信号入力リード
51 信号増幅装置
52 解析装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出側から順次配置された第1、第2、第3、第4の検出コイルと、前記第1の検出コイルの巻き始めに一端が接続された第1の検出リードと、前記第4の検出コイルの巻き終わりに一端が接続された第2の検出リードとを有する2次微分型グラジオメータを具備する磁場検出装置において、
前記第1の検出コイルの巻き終わり箇所に一端が接続された第3の検出リードと、
前記第2の検出コイルの巻き終わり箇所に一端が接続された第4の検出リードと
を具備したことを特徴とする磁場検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出コイルに対向して配置された第1の校正コイルと、
前記第2の検出コイルに対向して配置され前記第1の校正コイルと逆方向巻き同数巻きで前記第1の校正コイルと並列接続された第2の校正コイルと
を具備し、校正時に前記第1,第2の校正コイルに校正入力信号が入力されること
を特徴とする請求項1記載の磁場検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−170880(P2007−170880A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365647(P2005−365647)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】