磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法
【課題】任意のサイズ、形状の磁性体の透磁率を計測でき、生産プロセスライン上のウエハ等において、切断や加工を施すことなく、透磁率を直接評価可能であり、生産ラインや材料開発の現場において、大きく生産性を向上させうる磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法を提供する。
【解決手段】誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体によって挟んだ構造を有し、その導体と地導体あるいは導体に磁性体を電気的に接触させる。磁界印加部により導体から磁性体に磁界を印加し、磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を信号計測器により測定する。信号計測器で測定された信号の差分から、磁性体の透磁率を最適化処理により求める。
【解決手段】誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体によって挟んだ構造を有し、その導体と地導体あるいは導体に磁性体を電気的に接触させる。磁界印加部により導体から磁性体に磁界を印加し、磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を信号計測器により測定する。信号計測器で測定された信号の差分から、磁性体の透磁率を最適化処理により求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体の高周波透磁率(通常数100kHz〜数GHz)を計測する方法は1950年代ころから多数提案されているが、その全てがコイル(あるいはアンテナ)を用いる方法(例えば、非特許文献1乃至3参照)か伝送線路、導波管等(例えば、非特許文献4参照)を用いる方法に帰着される。一方、材料に短針を接触して抵抗率を測る手法(例えば、非特許文献5参照)は、普及している方法であるが、これは材料の抵抗率を測るもので、透磁率を計測するものではない。
【0003】
なお本発明者は、幅100μm程度の微細短冊薄膜のインピーダンスからその透磁率を求める論文をすでに発表している(例えば、非特許文献6参照)。この論文と本発明との相違点は、非特許文献6が細い短冊に限定して透磁率を求めるのに対し、本発明は短冊に限らず、任意のサイズの磁性薄膜に適用可能なことである。上記のすべての従来技術は、磁性体の透磁率評価のために、決まった形状やサイズに加工する必要があるため、材料開発の観点から非効率であった。本発明は、試料の形状やサイズに依存せず、インラインでの透磁率の評価手段に関するものである。
【0004】
【非特許文献1】P.A.Calcagno, D.A.Thompson, “Semiautomaticpermeance tester for thick magnetic films”, Rev. Sci. Instrum, 1975, 46, p.904
【非特許文献2】B.C.Webb,M.E.Re, C.V.Jahnes and M.A.Russak, “High-frequency permeability of laminatedand unlaminated, narrow thin-film magnetic stripes”, J. Appl. Phys., 1991, vol 69, p.5611-5615
【非特許文献3】M.Yamaguchi,S.Yabukami and K.I.Arai, “A New1MHz-2GHz Permeance Meter For Metallic Thin Films”, IEEE Trans. Magn. , 1997, 33, p.3619
【非特許文献4】H.B.Weir,“Automatic Measurement of Complex Dielectric Constant and Permeability atMicrowave Frequencies”, Proc IEEE, 1975, 62, p.33
【非特許文献5】L.B.Valdes,“Resistivity measurements on germanium for transistors”, Proc. IRE, 1954, p.420-427
【非特許文献6】S.Yabukami,T.Uo, M.Yamaguchi, K.I.Arai, and M.Takezawa, “High sensitivity permeability measurements of striped films obtained by input impedance”, IEEETransactions, Magn., 2001, vol.37, p.2774-2778
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の磁性体の透磁率の計測方法は、ウエハから数mm角程度の試料を透磁率測定用に切り出したり、透磁率測定用のパターンを作成して評価する必要があった。これは大規模な生産ラインにおける磁性体の磁気特性の管理や評価、あるいは系統的な材料開発には非効率であった。
【0006】
本発明は、任意のサイズ、形状の磁性体の透磁率を計測でき、生産プロセスライン上のウエハ等において、切断や加工を施すことなく、透磁率を直接評価可能であり、生産ラインや材料開発の現場において、大きく生産性を向上させうる磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁性体の透磁率計測装置は、誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体とによって挟んだ構造と、前記導体と前記地導体あるいは前記導体に電気的に接触させた磁性体と、前記導体から前記磁性体に磁界を印加するための磁界印加部と、前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を測定する信号計測器と、前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求める処理手段とを、有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記磁性体は磁性薄膜であることが好ましい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置は、前記導体の先端を前記地導体の先端よりも伸ばした構造により、前記導体を前記磁性体に電気的に接触可能に構成されていることが好ましい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は、1個、2個、または、前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成っていてもよい。
【0009】
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は1個から成り、前記導体および前記地導体の一部あるいは全部を伸ばして前記磁性体へ電気的に接触可能に構成されていてもよい。また、前記導体は2個から成り、それぞれセミリジッドケーブルの心線により構成され、前記心線を前記磁性体へ電気的に接触可能であり、前記地導体は前記セミリジッドケーブルの地導体から成り、前記磁性体との漂遊容量を低減させるよう、前記磁性体に近接する共通の地導体を構成していてもよい。さらに、前記導体は前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成り、それぞれセミリジッドケーブルの心線により構成され、各心線を前記磁性体へ電気的に接触可能であり、前記地導体は前記セミリジッドケーブルの地導体から成り、前記磁性体との漂遊容量を低減させるよう、前記磁性体に近接する共通の地導体を構成していてもよい。
【0010】
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記磁界印加部は永久磁石あるいはコイルにより直流磁界を印加し、前記磁性体を励磁させるよう構成されていてもよい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は1個から成り、前記信号計測器は前記磁性体からの反射信号の差分を測定してもよい。また、前記導体は2個から成り、前記信号計測器は、一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定してもよい。さらに、前記導体は前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成り、前記信号計測器は、互いに向かい合う2対の導体において、それぞれ一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定してもよい。この場合、前記磁性体は磁性薄膜から成り、前記処理手段は、2方向の直交方向の透磁率から電流の広がりを考慮して、前記磁性薄膜の容易軸方向および困難軸方向の透磁率を求めてもよい。
【0011】
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は、前記磁性体となるべく大面積で接触するよう、ストリップ導体から成ってもよい。この場合、前記導体は2個から成り、それぞれ前記磁性体の対辺に接触させてもよい。
【0012】
本発明に係る磁性体の透磁率計測方法は、誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体によって挟んだ構造を有し、前記導体と前記地導体あるいは前記導体に磁性体を電気的に接触させ、磁界印加部により前記導体から前記磁性体に磁界を印加し、前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を信号計測器により測定し、前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求めることを、特徴とする。
【0013】
本発明に係る磁性体の透磁率計測方法は、1個の前記導体を前記磁性体に電気的に接触させ、前記磁性体からの反射信号の差分を前記信号計測器により測定してもよい。また、2個の前記導体を前記磁性体に電気的に接触させ、前記磁界印加部により一方の導体から信号を前記磁性体へ印加し、他方の導体への透過信号の差分を前記信号計測器により測定してもよい。さらに、4個の前記導体を前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触させ、互いに向かい合う2対の導体において、前記磁界印加部によりそれぞれ一方の導体から信号を前記磁性体へ印加し、他方の導体への透過信号の差分を前記信号計測器により測定してもよい。この場合、前記磁性体は磁性薄膜から成り、前記信号計測器で測定された信号の差分から、2方向の直交方向の透磁率から電流の広がりを考慮して、前記磁性薄膜の容易軸方向および困難軸方向の透磁率を求めてもよい。
【0014】
本発明に係る磁性体の透磁率計測方法で、前記導体は前記磁性体となるべく大面積で接触するよう2個のストリップ導体から成り、各導体をそれぞれ前記磁性体の対辺に電気的に接触させてもよい。
【0015】
このように、本発明は、磁性体表面に探針プローブを接触させて、磁性体へ直流磁界を印加し、磁界印加の有無におけるインピーダンスの変化から、磁性体の透磁率を最適化処理により求める方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、任意のサイズの磁性体で透磁率の評価が可能になる。また、製造ラインのウエハそのもので透磁率が評価可能になり、材料開発の観点および生産ラインの管理において、大きなメリットを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態として一実施例を、図1〜図12に基づいて説明する。
図1は計測器全体の構成を、図2は測定の流れ図を示したものである。磁性薄膜1の寄与分による透過係数から、図2の流れ図に基づき、周波数毎の複素透磁率を最適化法により求める。本発明の実施の形態の磁性体の透磁率計測装置は、試料の磁性体である磁性薄膜1(アモルファスCoNbZr薄膜)、プローブ2、同軸ケーブル3、ネットワークアナライザ4(信号計測器、処理手段)および制御用パソコン5から構成される。試料の磁性薄膜1とネットワークアナライザ4とを50Ωの同軸ケーブル3で接続し、磁性薄膜1を飽和させるためにヘルムホルツコイルから成る永久磁石(磁界印加部)を用いた。
【0018】
磁性薄膜1を飽和させるための永久磁石(NdFeB磁石;磁界印加部)の有無による透過係数を、ネットワークアナライザ4で測定する。プローブ2を磁性薄膜1へ導通し、NdFeB磁石(磁界印加部)を近接配置して磁性薄膜1を飽和させたときをバックグランドとし、このときの複素透過係数を基準信号とする。次に、永久磁石を除いた時の複素透過係数を測定する。このときの透過係数は、永久磁石の有無にともなう透過係数の差分であり、磁性薄膜1の磁気特性が反映されたものである。この透過係数の差分は、磁性薄膜1の寄与によるインピーダンス成分であり、実数部が磁性薄膜1の損失分(抵抗分)、虚数部が磁性薄膜1のインダクタンス成分となる(図2中の(1)式)。インダクタンス成分は磁性薄膜透磁率の実数部(μr’)に対応し、抵抗分は磁性薄膜透磁率の虚数部(μr”)に対応する。さらに、磁性薄膜1中に流れる電流が表皮効果により膜厚表面に偏って流れることを仮定し(図2中の(2)式)最適化処理をする。図2中の(2)式は、磁性薄膜1の複素透磁率と磁性薄膜のインピーダンスとの関係を示したものであり、この関係式が成立するように複素透磁率を最適化する。
【0019】
図3は、複素透磁率の最適化処理の手順を示したものである。ここでは、最適化法として一般的なGauss-Newton法を用いた。まず、複素透磁率の初期値を与えて、(2)式がインピーダンスの実測測Zに一致するかどうかを評価関数(図3中のF(μr’,μr”),G(μr’,μr”))を計算する。Gauss-Newton法により、μr’およびμr”を繰り返し計算により随時もとめ、評価関数値が最小になるように最適化する。
【0020】
図4は、プローブ2の構成を示したものである。プローブ2の磁性体近傍に地導体7を構成し、プローブ2の地導体7と共通グランドとする。これにより、磁性薄膜1を流れる電流とほぼ逆相の電流が地導体7に流れ、漂遊容量が低減でき、漂遊容量に起因する共振を抑制可能である。試料は、アモルファスCoNbZr薄膜(厚さ1μm、一辺25mmの正方形試料)に対して、熱処理により一軸異方性を一方向へ付与したものである。試料の強磁性共鳴周波数は700MHz程度である。
【0021】
この試料へ、2本の同軸ケーブル3の中心導体(心線6)を、探針(心線6)間の線分が試料の磁化容易軸と平行方向になるように配置した。図5は、測定された透過係数の差分を表したものであり、図6は、これを複素透磁率に変換したものである。図5によれば、抵抗分(図5中のRの曲線)は共鳴周波数付近で急激に増加し、リアクタンス分(図5中のXの曲線)はほぼ周波数に比例して増加している。図6によれば、複素透磁率の実数部(図6中のμr’の曲線)は減少し、約700MHzで正から負になった。虚数部(図6中のμr”の曲線)は700MHzの共鳴周波数前後で極大となった。概ね強磁性共鳴減少を反映した正確な透磁率が計測できた。
【0022】
実数部が減少している理由は次のように考えられる。同軸中心導体(心線6)が2点で磁性薄膜1に接触しており、この間には図7に示すように、電流11が広がりを持って流れている。このため、磁性薄膜1内部では主たる励磁方向は磁化困難軸となるものの、ある程度の部分で磁化容易軸への励磁もある。このため、透磁率が減少しているのは磁化容易軸への励磁が反映しているためと考えられる。
【0023】
上記の磁化困難軸と磁化容易軸との透磁率が混在されて測定される問題は、以下のような手順で分離可能である。図7に示すように、2個で一対のプローブ2を互いに直角な方向に配置して、磁性薄膜1上に接触させる。それぞれのプローブ2で透磁率を求め、その後、磁性薄膜1内を流れる電流11の広がりを考慮して、得られた透磁率を補正する。この場合には、端子間距離を考慮し、磁化容易軸方向および磁化困難軸方向への励磁の割合をそれぞれα:1−αとすれば(1>α>0とする)、得られた透磁率をμeasy,μhardとし、求めたい容易軸方向および困難軸方向の透磁率をμeasy(intrinsic),μhard(intrinsic)とすると、これらの関係式は各周波数毎に次式で与えられる。
【0024】
【数1】
【0025】
上式でαおよび1−αは、プローブ2間の距離と磁性薄膜1のサイズとに依存して測定前に既知であるため、上式から、複素数である材料の持っている容易軸透磁率μeasy(intrinsic)および困難軸透磁率μhard(intrinsic)は、(4)式で一義的に求めることができる。
【0026】
【数2】
【0027】
図8は上記の補正を行わずに求めたアモルファスCoNbZr薄膜(25mm×25mm×1μm厚)の透磁率(μeasy,μhard)であり、図9は(4)式を用いて補正した容易軸透磁率μeasy(intrinsic)および困難軸透磁率μhard(intrinsic)である。別途行った電磁界解析結果から、α≒0.7を得た。図9によれば、困難軸透磁率μhard(intrinsic)は、ほぼ一軸異方性膜の強磁性共鳴を反映しており、約800MHzで実数部は正から負となり、虚数部は極大値を持った。一方、容易軸透磁率μeasy(intrinsic)は、実数部および虚数部ともに小さな値となった。これらの透磁率は、厳密にはLLG方程式を解く必要があるが、ほぼ合理的な結果となり、大まかには補正可能である。
【0028】
なお、磁化困難軸方向の実数部は、強磁性共鳴周波数以下の周波数において、やや減少する傾向が見られた。これは高周波ほど表皮効果が顕在化し、電流11が磁性薄膜1の幅方向へ偏って流れることを反映していると考えられる。これは、周波数毎に幅方向の電流11の広がりを考慮して上記のαを求めることで補正可能である。
【0029】
図10は、ストリップ線路の信号線を磁性薄膜1に接触させる構造を示したものである。コネクタの同軸構造をテーパ状に開いてストリップ線路の構造にし、インピーダンス整合が極力乱れないようにする。ストリップ導体14の幅は磁性薄膜1の幅と同程度とし、磁性体内部の電流11がほぼ一方向成分になるようにする。磁性薄膜1をストリップ線路の導体14に押しつけることで、磁性薄膜1内部に電流11を流して磁性薄膜1を磁化する。これにより、磁性体内部の磁界10は一方向成分のみとなり、上記の補正を行わずに、正確な容易軸透磁率および困難軸透磁率が測定可能となる。
【0030】
図11は、ネットワークアナライザ4で測定された透過係数(S21)から、図2の(1)式を用いて求めた抵抗(図11中のRの曲線)およびリアクタンス(図11中のXの曲線)の磁性薄膜寄与分である。図12は、図2の(2)式を用いて求めたCoNbZr薄膜(25mm×25mm×1μm厚)の磁化困難軸方向の透磁率である。透磁率は、正確に求められていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の磁性体の透磁率計測装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の磁性体の透磁率計測方法を示す流れ図である。
【図3】図2に示す磁性体の透磁率計測方法の複素透磁率の最適化処理の流れ図である。
【図4】図1に示す磁性体の透磁率計測装置のプローブを示す断面図および斜視図である。
【図5】図1に示す磁性体の透磁率計測装置により測定された磁性薄膜に起因する透過係数の差分を示すグラフである。
【図6】図5に示す透過係数の差分を、最適化処理により複素透磁率に変換したときの透磁率を示すグラフである。
【図7】図1に示す磁性体の透磁率計測装置の、2組のプローブを用いたときの透磁率の測定状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示す方法により測定された透磁率を示すグラフである。
【図9】図8に示す透磁率を、幅方向への電流の広がりを考慮して補正したときの透磁率を示すグラフである。
【図10】図1に示す磁性体の透磁率計測装置のストリップ線路の信号線を磁性薄膜に接触させる構造を示す斜視図である。
【図11】図1に示す磁性体の透磁率計測装置により測定された透過係数から求めた抵抗(Rの曲線)およびリアクタンス(Xの曲線)の磁性薄膜寄与分を示すグラフである。
【図12】図11に示すグラフから求めた磁化困難軸方向の透磁率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 磁性薄膜
2 プローブ
3 同軸ケーブル
4 ネットワークアナライザ
5 制御用パソコン
6 心線
7 地導体(地導体面)
8 セミリジットケーブル
9 テフロン(登録商標)基板
10 磁界
11 電流
12 基板
13 コネクタ
14 導体
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体の高周波透磁率(通常数100kHz〜数GHz)を計測する方法は1950年代ころから多数提案されているが、その全てがコイル(あるいはアンテナ)を用いる方法(例えば、非特許文献1乃至3参照)か伝送線路、導波管等(例えば、非特許文献4参照)を用いる方法に帰着される。一方、材料に短針を接触して抵抗率を測る手法(例えば、非特許文献5参照)は、普及している方法であるが、これは材料の抵抗率を測るもので、透磁率を計測するものではない。
【0003】
なお本発明者は、幅100μm程度の微細短冊薄膜のインピーダンスからその透磁率を求める論文をすでに発表している(例えば、非特許文献6参照)。この論文と本発明との相違点は、非特許文献6が細い短冊に限定して透磁率を求めるのに対し、本発明は短冊に限らず、任意のサイズの磁性薄膜に適用可能なことである。上記のすべての従来技術は、磁性体の透磁率評価のために、決まった形状やサイズに加工する必要があるため、材料開発の観点から非効率であった。本発明は、試料の形状やサイズに依存せず、インラインでの透磁率の評価手段に関するものである。
【0004】
【非特許文献1】P.A.Calcagno, D.A.Thompson, “Semiautomaticpermeance tester for thick magnetic films”, Rev. Sci. Instrum, 1975, 46, p.904
【非特許文献2】B.C.Webb,M.E.Re, C.V.Jahnes and M.A.Russak, “High-frequency permeability of laminatedand unlaminated, narrow thin-film magnetic stripes”, J. Appl. Phys., 1991, vol 69, p.5611-5615
【非特許文献3】M.Yamaguchi,S.Yabukami and K.I.Arai, “A New1MHz-2GHz Permeance Meter For Metallic Thin Films”, IEEE Trans. Magn. , 1997, 33, p.3619
【非特許文献4】H.B.Weir,“Automatic Measurement of Complex Dielectric Constant and Permeability atMicrowave Frequencies”, Proc IEEE, 1975, 62, p.33
【非特許文献5】L.B.Valdes,“Resistivity measurements on germanium for transistors”, Proc. IRE, 1954, p.420-427
【非特許文献6】S.Yabukami,T.Uo, M.Yamaguchi, K.I.Arai, and M.Takezawa, “High sensitivity permeability measurements of striped films obtained by input impedance”, IEEETransactions, Magn., 2001, vol.37, p.2774-2778
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の磁性体の透磁率の計測方法は、ウエハから数mm角程度の試料を透磁率測定用に切り出したり、透磁率測定用のパターンを作成して評価する必要があった。これは大規模な生産ラインにおける磁性体の磁気特性の管理や評価、あるいは系統的な材料開発には非効率であった。
【0006】
本発明は、任意のサイズ、形状の磁性体の透磁率を計測でき、生産プロセスライン上のウエハ等において、切断や加工を施すことなく、透磁率を直接評価可能であり、生産ラインや材料開発の現場において、大きく生産性を向上させうる磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁性体の透磁率計測装置は、誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体とによって挟んだ構造と、前記導体と前記地導体あるいは前記導体に電気的に接触させた磁性体と、前記導体から前記磁性体に磁界を印加するための磁界印加部と、前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を測定する信号計測器と、前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求める処理手段とを、有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記磁性体は磁性薄膜であることが好ましい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置は、前記導体の先端を前記地導体の先端よりも伸ばした構造により、前記導体を前記磁性体に電気的に接触可能に構成されていることが好ましい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は、1個、2個、または、前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成っていてもよい。
【0009】
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は1個から成り、前記導体および前記地導体の一部あるいは全部を伸ばして前記磁性体へ電気的に接触可能に構成されていてもよい。また、前記導体は2個から成り、それぞれセミリジッドケーブルの心線により構成され、前記心線を前記磁性体へ電気的に接触可能であり、前記地導体は前記セミリジッドケーブルの地導体から成り、前記磁性体との漂遊容量を低減させるよう、前記磁性体に近接する共通の地導体を構成していてもよい。さらに、前記導体は前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成り、それぞれセミリジッドケーブルの心線により構成され、各心線を前記磁性体へ電気的に接触可能であり、前記地導体は前記セミリジッドケーブルの地導体から成り、前記磁性体との漂遊容量を低減させるよう、前記磁性体に近接する共通の地導体を構成していてもよい。
【0010】
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記磁界印加部は永久磁石あるいはコイルにより直流磁界を印加し、前記磁性体を励磁させるよう構成されていてもよい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は1個から成り、前記信号計測器は前記磁性体からの反射信号の差分を測定してもよい。また、前記導体は2個から成り、前記信号計測器は、一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定してもよい。さらに、前記導体は前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成り、前記信号計測器は、互いに向かい合う2対の導体において、それぞれ一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定してもよい。この場合、前記磁性体は磁性薄膜から成り、前記処理手段は、2方向の直交方向の透磁率から電流の広がりを考慮して、前記磁性薄膜の容易軸方向および困難軸方向の透磁率を求めてもよい。
【0011】
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は、前記磁性体となるべく大面積で接触するよう、ストリップ導体から成ってもよい。この場合、前記導体は2個から成り、それぞれ前記磁性体の対辺に接触させてもよい。
【0012】
本発明に係る磁性体の透磁率計測方法は、誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体によって挟んだ構造を有し、前記導体と前記地導体あるいは前記導体に磁性体を電気的に接触させ、磁界印加部により前記導体から前記磁性体に磁界を印加し、前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を信号計測器により測定し、前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求めることを、特徴とする。
【0013】
本発明に係る磁性体の透磁率計測方法は、1個の前記導体を前記磁性体に電気的に接触させ、前記磁性体からの反射信号の差分を前記信号計測器により測定してもよい。また、2個の前記導体を前記磁性体に電気的に接触させ、前記磁界印加部により一方の導体から信号を前記磁性体へ印加し、他方の導体への透過信号の差分を前記信号計測器により測定してもよい。さらに、4個の前記導体を前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触させ、互いに向かい合う2対の導体において、前記磁界印加部によりそれぞれ一方の導体から信号を前記磁性体へ印加し、他方の導体への透過信号の差分を前記信号計測器により測定してもよい。この場合、前記磁性体は磁性薄膜から成り、前記信号計測器で測定された信号の差分から、2方向の直交方向の透磁率から電流の広がりを考慮して、前記磁性薄膜の容易軸方向および困難軸方向の透磁率を求めてもよい。
【0014】
本発明に係る磁性体の透磁率計測方法で、前記導体は前記磁性体となるべく大面積で接触するよう2個のストリップ導体から成り、各導体をそれぞれ前記磁性体の対辺に電気的に接触させてもよい。
【0015】
このように、本発明は、磁性体表面に探針プローブを接触させて、磁性体へ直流磁界を印加し、磁界印加の有無におけるインピーダンスの変化から、磁性体の透磁率を最適化処理により求める方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、任意のサイズの磁性体で透磁率の評価が可能になる。また、製造ラインのウエハそのもので透磁率が評価可能になり、材料開発の観点および生産ラインの管理において、大きなメリットを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態として一実施例を、図1〜図12に基づいて説明する。
図1は計測器全体の構成を、図2は測定の流れ図を示したものである。磁性薄膜1の寄与分による透過係数から、図2の流れ図に基づき、周波数毎の複素透磁率を最適化法により求める。本発明の実施の形態の磁性体の透磁率計測装置は、試料の磁性体である磁性薄膜1(アモルファスCoNbZr薄膜)、プローブ2、同軸ケーブル3、ネットワークアナライザ4(信号計測器、処理手段)および制御用パソコン5から構成される。試料の磁性薄膜1とネットワークアナライザ4とを50Ωの同軸ケーブル3で接続し、磁性薄膜1を飽和させるためにヘルムホルツコイルから成る永久磁石(磁界印加部)を用いた。
【0018】
磁性薄膜1を飽和させるための永久磁石(NdFeB磁石;磁界印加部)の有無による透過係数を、ネットワークアナライザ4で測定する。プローブ2を磁性薄膜1へ導通し、NdFeB磁石(磁界印加部)を近接配置して磁性薄膜1を飽和させたときをバックグランドとし、このときの複素透過係数を基準信号とする。次に、永久磁石を除いた時の複素透過係数を測定する。このときの透過係数は、永久磁石の有無にともなう透過係数の差分であり、磁性薄膜1の磁気特性が反映されたものである。この透過係数の差分は、磁性薄膜1の寄与によるインピーダンス成分であり、実数部が磁性薄膜1の損失分(抵抗分)、虚数部が磁性薄膜1のインダクタンス成分となる(図2中の(1)式)。インダクタンス成分は磁性薄膜透磁率の実数部(μr’)に対応し、抵抗分は磁性薄膜透磁率の虚数部(μr”)に対応する。さらに、磁性薄膜1中に流れる電流が表皮効果により膜厚表面に偏って流れることを仮定し(図2中の(2)式)最適化処理をする。図2中の(2)式は、磁性薄膜1の複素透磁率と磁性薄膜のインピーダンスとの関係を示したものであり、この関係式が成立するように複素透磁率を最適化する。
【0019】
図3は、複素透磁率の最適化処理の手順を示したものである。ここでは、最適化法として一般的なGauss-Newton法を用いた。まず、複素透磁率の初期値を与えて、(2)式がインピーダンスの実測測Zに一致するかどうかを評価関数(図3中のF(μr’,μr”),G(μr’,μr”))を計算する。Gauss-Newton法により、μr’およびμr”を繰り返し計算により随時もとめ、評価関数値が最小になるように最適化する。
【0020】
図4は、プローブ2の構成を示したものである。プローブ2の磁性体近傍に地導体7を構成し、プローブ2の地導体7と共通グランドとする。これにより、磁性薄膜1を流れる電流とほぼ逆相の電流が地導体7に流れ、漂遊容量が低減でき、漂遊容量に起因する共振を抑制可能である。試料は、アモルファスCoNbZr薄膜(厚さ1μm、一辺25mmの正方形試料)に対して、熱処理により一軸異方性を一方向へ付与したものである。試料の強磁性共鳴周波数は700MHz程度である。
【0021】
この試料へ、2本の同軸ケーブル3の中心導体(心線6)を、探針(心線6)間の線分が試料の磁化容易軸と平行方向になるように配置した。図5は、測定された透過係数の差分を表したものであり、図6は、これを複素透磁率に変換したものである。図5によれば、抵抗分(図5中のRの曲線)は共鳴周波数付近で急激に増加し、リアクタンス分(図5中のXの曲線)はほぼ周波数に比例して増加している。図6によれば、複素透磁率の実数部(図6中のμr’の曲線)は減少し、約700MHzで正から負になった。虚数部(図6中のμr”の曲線)は700MHzの共鳴周波数前後で極大となった。概ね強磁性共鳴減少を反映した正確な透磁率が計測できた。
【0022】
実数部が減少している理由は次のように考えられる。同軸中心導体(心線6)が2点で磁性薄膜1に接触しており、この間には図7に示すように、電流11が広がりを持って流れている。このため、磁性薄膜1内部では主たる励磁方向は磁化困難軸となるものの、ある程度の部分で磁化容易軸への励磁もある。このため、透磁率が減少しているのは磁化容易軸への励磁が反映しているためと考えられる。
【0023】
上記の磁化困難軸と磁化容易軸との透磁率が混在されて測定される問題は、以下のような手順で分離可能である。図7に示すように、2個で一対のプローブ2を互いに直角な方向に配置して、磁性薄膜1上に接触させる。それぞれのプローブ2で透磁率を求め、その後、磁性薄膜1内を流れる電流11の広がりを考慮して、得られた透磁率を補正する。この場合には、端子間距離を考慮し、磁化容易軸方向および磁化困難軸方向への励磁の割合をそれぞれα:1−αとすれば(1>α>0とする)、得られた透磁率をμeasy,μhardとし、求めたい容易軸方向および困難軸方向の透磁率をμeasy(intrinsic),μhard(intrinsic)とすると、これらの関係式は各周波数毎に次式で与えられる。
【0024】
【数1】
【0025】
上式でαおよび1−αは、プローブ2間の距離と磁性薄膜1のサイズとに依存して測定前に既知であるため、上式から、複素数である材料の持っている容易軸透磁率μeasy(intrinsic)および困難軸透磁率μhard(intrinsic)は、(4)式で一義的に求めることができる。
【0026】
【数2】
【0027】
図8は上記の補正を行わずに求めたアモルファスCoNbZr薄膜(25mm×25mm×1μm厚)の透磁率(μeasy,μhard)であり、図9は(4)式を用いて補正した容易軸透磁率μeasy(intrinsic)および困難軸透磁率μhard(intrinsic)である。別途行った電磁界解析結果から、α≒0.7を得た。図9によれば、困難軸透磁率μhard(intrinsic)は、ほぼ一軸異方性膜の強磁性共鳴を反映しており、約800MHzで実数部は正から負となり、虚数部は極大値を持った。一方、容易軸透磁率μeasy(intrinsic)は、実数部および虚数部ともに小さな値となった。これらの透磁率は、厳密にはLLG方程式を解く必要があるが、ほぼ合理的な結果となり、大まかには補正可能である。
【0028】
なお、磁化困難軸方向の実数部は、強磁性共鳴周波数以下の周波数において、やや減少する傾向が見られた。これは高周波ほど表皮効果が顕在化し、電流11が磁性薄膜1の幅方向へ偏って流れることを反映していると考えられる。これは、周波数毎に幅方向の電流11の広がりを考慮して上記のαを求めることで補正可能である。
【0029】
図10は、ストリップ線路の信号線を磁性薄膜1に接触させる構造を示したものである。コネクタの同軸構造をテーパ状に開いてストリップ線路の構造にし、インピーダンス整合が極力乱れないようにする。ストリップ導体14の幅は磁性薄膜1の幅と同程度とし、磁性体内部の電流11がほぼ一方向成分になるようにする。磁性薄膜1をストリップ線路の導体14に押しつけることで、磁性薄膜1内部に電流11を流して磁性薄膜1を磁化する。これにより、磁性体内部の磁界10は一方向成分のみとなり、上記の補正を行わずに、正確な容易軸透磁率および困難軸透磁率が測定可能となる。
【0030】
図11は、ネットワークアナライザ4で測定された透過係数(S21)から、図2の(1)式を用いて求めた抵抗(図11中のRの曲線)およびリアクタンス(図11中のXの曲線)の磁性薄膜寄与分である。図12は、図2の(2)式を用いて求めたCoNbZr薄膜(25mm×25mm×1μm厚)の磁化困難軸方向の透磁率である。透磁率は、正確に求められていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の磁性体の透磁率計測装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の磁性体の透磁率計測方法を示す流れ図である。
【図3】図2に示す磁性体の透磁率計測方法の複素透磁率の最適化処理の流れ図である。
【図4】図1に示す磁性体の透磁率計測装置のプローブを示す断面図および斜視図である。
【図5】図1に示す磁性体の透磁率計測装置により測定された磁性薄膜に起因する透過係数の差分を示すグラフである。
【図6】図5に示す透過係数の差分を、最適化処理により複素透磁率に変換したときの透磁率を示すグラフである。
【図7】図1に示す磁性体の透磁率計測装置の、2組のプローブを用いたときの透磁率の測定状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示す方法により測定された透磁率を示すグラフである。
【図9】図8に示す透磁率を、幅方向への電流の広がりを考慮して補正したときの透磁率を示すグラフである。
【図10】図1に示す磁性体の透磁率計測装置のストリップ線路の信号線を磁性薄膜に接触させる構造を示す斜視図である。
【図11】図1に示す磁性体の透磁率計測装置により測定された透過係数から求めた抵抗(Rの曲線)およびリアクタンス(Xの曲線)の磁性薄膜寄与分を示すグラフである。
【図12】図11に示すグラフから求めた磁化困難軸方向の透磁率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 磁性薄膜
2 プローブ
3 同軸ケーブル
4 ネットワークアナライザ
5 制御用パソコン
6 心線
7 地導体(地導体面)
8 セミリジットケーブル
9 テフロン(登録商標)基板
10 磁界
11 電流
12 基板
13 コネクタ
14 導体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体とによって挟んだ構造と、
前記導体と前記地導体あるいは前記導体に電気的に接触させた磁性体と、
前記導体から前記磁性体に磁界を印加するための磁界印加部と、
前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を測定する信号計測器と、
前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求める処理手段とを、
有することを特徴とする磁性体の透磁率計測装置。
【請求項2】
前記磁性体は磁性薄膜であることを特徴とする請求項1記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項3】
前記導体の先端を前記地導体の先端よりも伸ばした構造により、前記導体を前記磁性体に電気的に接触可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項4】
前記導体は、1個、2個、または、前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成ることを特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項5】
前記導体は1個から成り、前記導体および前記地導体の一部あるいは全部を伸ばして前記磁性体へ電気的に接触可能に構成されていることを特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項6】
前記導体は2個から成り、それぞれセミリジッドケーブルの心線により構成され、前記心線を前記磁性体へ電気的に接触可能であり、
前記地導体は前記セミリジッドケーブルの地導体から成り、前記磁性体との漂遊容量を低減させるよう、前記磁性体に近接する共通の地導体を構成していることを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項7】
前記導体は前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成り、それぞれセミリジッドケーブルの心線により構成され、各心線を前記磁性体へ電気的に接触可能であり、
前記地導体は前記セミリジッドケーブルの地導体から成り、前記磁性体との漂遊容量を低減させるよう、前記磁性体に近接する共通の地導体を構成していることを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項8】
前記磁界印加部は永久磁石あるいはコイルにより直流磁界を印加し、前記磁性体を励磁させるよう構成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項9】
前記導体は1個から成り、
前記信号計測器は前記磁性体からの反射信号の差分を測定することを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項10】
前記導体は2個から成り、
前記信号計測器は、一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定することを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項11】
前記導体は前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成り、
前記信号計測器は、互いに向かい合う2対の導体において、それぞれ一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定することを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項12】
前記磁性体は磁性薄膜から成り、
前記処理手段は、2方向の直交方向の透磁率から電流の広がりを考慮して、前記磁性薄膜の容易軸方向および困難軸方向の透磁率を求めることを、
特徴とする請求項11記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項13】
前記導体は、前記磁性体となるべく大面積で接触するよう、ストリップ導体から成ることを特徴とする請求項1記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項14】
前記導体は2個から成り、それぞれ前記磁性体の対辺に接触させることを特徴とする請求項13記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項15】
誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体によって挟んだ構造を有し、前記導体と前記地導体あるいは前記導体に磁性体を電気的に接触させ、磁界印加部により前記導体から前記磁性体に磁界を印加し、前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を信号計測器により測定し、前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求めることを、特徴とする磁性体の透磁率計測方法。
【請求項16】
1個の前記導体を前記磁性体に電気的に接触させ、前記磁性体からの反射信号の差分を前記信号計測器により測定することを特徴とする請求項15記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項17】
2個の前記導体を前記磁性体に電気的に接触させ、前記磁界印加部により一方の導体から信号を前記磁性体へ印加し、他方の導体への透過信号の差分を前記信号計測器により測定することを、特徴とする請求項15記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項18】
4個の前記導体を前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触させ、互いに向かい合う2対の導体において、前記磁界印加部によりそれぞれ一方の導体から信号を前記磁性体へ印加し、他方の導体への透過信号の差分を前記信号計測器により測定することを、特徴とする請求項15記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項19】
前記磁性体は磁性薄膜から成り、前記信号計測器で測定された信号の差分から、2方向の直交方向の透磁率から電流の広がりを考慮して、前記磁性薄膜の容易軸方向および困難軸方向の透磁率を求めることを、特徴とする請求項18記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項20】
前記導体は前記磁性体となるべく大面積で接触するよう2個のストリップ導体から成り、各導体をそれぞれ前記磁性体の対辺に電気的に接触させることを特徴とする請求項15記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項1】
誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体とによって挟んだ構造と、
前記導体と前記地導体あるいは前記導体に電気的に接触させた磁性体と、
前記導体から前記磁性体に磁界を印加するための磁界印加部と、
前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を測定する信号計測器と、
前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求める処理手段とを、
有することを特徴とする磁性体の透磁率計測装置。
【請求項2】
前記磁性体は磁性薄膜であることを特徴とする請求項1記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項3】
前記導体の先端を前記地導体の先端よりも伸ばした構造により、前記導体を前記磁性体に電気的に接触可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項4】
前記導体は、1個、2個、または、前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成ることを特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項5】
前記導体は1個から成り、前記導体および前記地導体の一部あるいは全部を伸ばして前記磁性体へ電気的に接触可能に構成されていることを特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項6】
前記導体は2個から成り、それぞれセミリジッドケーブルの心線により構成され、前記心線を前記磁性体へ電気的に接触可能であり、
前記地導体は前記セミリジッドケーブルの地導体から成り、前記磁性体との漂遊容量を低減させるよう、前記磁性体に近接する共通の地導体を構成していることを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項7】
前記導体は前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成り、それぞれセミリジッドケーブルの心線により構成され、各心線を前記磁性体へ電気的に接触可能であり、
前記地導体は前記セミリジッドケーブルの地導体から成り、前記磁性体との漂遊容量を低減させるよう、前記磁性体に近接する共通の地導体を構成していることを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項8】
前記磁界印加部は永久磁石あるいはコイルにより直流磁界を印加し、前記磁性体を励磁させるよう構成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項9】
前記導体は1個から成り、
前記信号計測器は前記磁性体からの反射信号の差分を測定することを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項10】
前記導体は2個から成り、
前記信号計測器は、一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定することを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項11】
前記導体は前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触可能に設けられた4個から成り、
前記信号計測器は、互いに向かい合う2対の導体において、それぞれ一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定することを、
特徴とする請求項3記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項12】
前記磁性体は磁性薄膜から成り、
前記処理手段は、2方向の直交方向の透磁率から電流の広がりを考慮して、前記磁性薄膜の容易軸方向および困難軸方向の透磁率を求めることを、
特徴とする請求項11記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項13】
前記導体は、前記磁性体となるべく大面積で接触するよう、ストリップ導体から成ることを特徴とする請求項1記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項14】
前記導体は2個から成り、それぞれ前記磁性体の対辺に接触させることを特徴とする請求項13記載の磁性体の透磁率計測装置。
【請求項15】
誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体によって挟んだ構造を有し、前記導体と前記地導体あるいは前記導体に磁性体を電気的に接触させ、磁界印加部により前記導体から前記磁性体に磁界を印加し、前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を信号計測器により測定し、前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求めることを、特徴とする磁性体の透磁率計測方法。
【請求項16】
1個の前記導体を前記磁性体に電気的に接触させ、前記磁性体からの反射信号の差分を前記信号計測器により測定することを特徴とする請求項15記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項17】
2個の前記導体を前記磁性体に電気的に接触させ、前記磁界印加部により一方の導体から信号を前記磁性体へ印加し、他方の導体への透過信号の差分を前記信号計測器により測定することを、特徴とする請求項15記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項18】
4個の前記導体を前記磁性体において同一表面の四角形の頂点に対応する位置に電気的に接触させ、互いに向かい合う2対の導体において、前記磁界印加部によりそれぞれ一方の導体から信号を前記磁性体へ印加し、他方の導体への透過信号の差分を前記信号計測器により測定することを、特徴とする請求項15記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項19】
前記磁性体は磁性薄膜から成り、前記信号計測器で測定された信号の差分から、2方向の直交方向の透磁率から電流の広がりを考慮して、前記磁性薄膜の容易軸方向および困難軸方向の透磁率を求めることを、特徴とする請求項18記載の磁性体の透磁率計測方法。
【請求項20】
前記導体は前記磁性体となるべく大面積で接触するよう2個のストリップ導体から成り、各導体をそれぞれ前記磁性体の対辺に電気的に接触させることを特徴とする請求項15記載の磁性体の透磁率計測方法。
【図3】
【図7】
【図10】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図7】
【図10】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−60367(P2010−60367A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224695(P2008−224695)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(899000035)株式会社 東北テクノアーチ (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(899000035)株式会社 東北テクノアーチ (68)
【Fターム(参考)】
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