磁性体検出センサ及び磁性体検出ラインセンサ
【課題】 動作範囲の狭い高感度磁気検出素子の特性を低下させることなく、保磁力の大小に依らずに磁性検体の磁気量を検出可能な磁性体検出センサ及び磁性体検出ラインセンサを提供する。
【解決手段】 磁石50と少なくとも1つの磁界検出素子2とを備え、磁界検出素子2は、磁石50のNS方向を法線とし、且つ、磁石50のN極とS極を結ぶ線分と交わる平面上に配置する。そして、この平面に平行な方向を磁界感受方向とし、磁石50のN極またはS極に磁性体3が近接または接触した際の磁界変化を検出する。
【解決手段】 磁石50と少なくとも1つの磁界検出素子2とを備え、磁界検出素子2は、磁石50のNS方向を法線とし、且つ、磁石50のN極とS極を結ぶ線分と交わる平面上に配置する。そして、この平面に平行な方向を磁界感受方向とし、磁石50のN極またはS極に磁性体3が近接または接触した際の磁界変化を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体を含有する磁性検体の磁気量を検出する磁性体検出センサ及びそれを用いた磁性体検出ラインセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁性検体の検出に使用される磁性体検出センサとしては、磁気ヘッドや磁界検出素子である磁気抵抗素子を用いたものが知られている。磁気抵抗素子を用いたものは、磁気ヘッドに比べて感度が高く、センサ構成に関しても数多くの提案がなされている。
【0003】
磁気抵抗素子を動作させるには数十エルステッドのバイアス磁界が必要であり、磁気抵抗素子を用いた磁性体検出センサでは、通常、磁石の磁極面上に素子を配置し、素子に接近した検体による磁界分布の変化を検出する構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、ミリエルステッド以下の微小磁界を検出でき、磁気抵抗素子に比べて非常に高感度な磁界検出素子として、フラックスゲートセンサや磁気インピーダンス素子等が知られている。これらの素子を用いた磁性体検出センサとしては、例えば、特許文献2や特許文献3等がある。これらの高感度磁界検出素子を用いた磁性体検出センサでは、予め着磁された検体を非接触で非常にS/N比の良い検出が可能であり、従来の磁気ヘッドや磁気抵抗素子を用いたものに比べて大きな優位性を有している。
【特許文献1】特開平08−105950号公報
【特許文献2】特開平11−007565号公報
【特許文献3】特開2000−105847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら高感度磁界検出素子では、磁性体の急峻なB−H(磁束密度−磁界)特性を利用しているため、B−H特性の飽和に関係した検出感度の飽和点が存在し、動作範囲はゼロ磁界を中心に高々数エルステッド程度の範囲である。このため、保磁力の小さい軟磁性検体の検出を行う場合、検体が飽和する程度の磁界を印加した状態で検出を行う必要があるが、従来の磁気抵抗素子と同様の構成では、動作範囲の狭い高感度磁界検出素子は用いることができない。また、磁界検出素子にコイルを配置し、磁界検出素子の出力に応じてコイルの電流を制御して動作範囲を広げる方法もあるが、検体を磁化するための磁界を相殺するだけの電流を流すには発熱や消費電力が大きくなる等の問題があり好ましくない。
【0006】
このような状況に鑑み、本発明の目的は、動作範囲の狭い高感度磁気検出素子の特性を低下させることなく、保磁力の大小に依らずに磁性検体の磁気量を検出可能な磁性体検出センサ及び磁性体検出ラインセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による磁性体検出センサは、磁石と少なくとも1つの磁界検出素子とを備える磁性体検出センサであって、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS方向を法線とし、且つ、前記磁石のN極とS極を結ぶ線分と交わる平面上に配置され、該平面に平行な方向を磁界感受方向とし、前記磁石のN極またはS極に磁性体が近接または接触した際の磁界変化を検出するものである。
【0008】
この構成では、磁石のN極またはS極に磁性体からなる検体を近接させることが可能なため、検体を確実に磁化することができ、磁石周辺の磁界は検体に含まれる磁気量に応じた変化をする。また、この構成では、磁界検出素子の磁界感受方向に加わる磁界は、磁石の磁極面に配置されたときと比べて非常に小さく、動作範囲の狭い高感度磁界検出素子であっても配置することができ、高感度な磁気量検知が可能である。
【0009】
ここで、本発明の配置では、磁界検出素子が磁極面に配置されたときと比べて検体からの距離が大きく、検体の磁気量を検出するという観点からは一見不利に見えるが、高感度磁界検出素子の特性を低下させないことが重要であって、検出する磁界の減少は感度の高さで充分補うことができる。また、本発明の配置では、検体の磁気パターンに対する分解能は、磁石の磁極面積に依存する検体上の磁化領域の大きさで決まり、検体との距離に依存しないため、磁気パターン分解能も低下させることなく高感度磁界検出素子を用いることができる。
【0010】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS方向を法線とし、且つ、前記磁石のN極とS極の概ね中点を通る平面上に配置されているのが好ましい。
【0011】
この構成では、外部ノイズ磁界の無い状態で、磁界検出素子の磁界感受方向の磁界はほぼゼロであり、素子特性曲線上の動作点はゼロ点付近に保たれるため、ゼロ磁界付近の狭い動作範囲をもつ高感度磁界検出素子を最適な状態で使用することができる。
【0012】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、磁性薄膜を有し、且つ、前記磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁性薄膜の膜面に平行であることが好ましい。
【0013】
これにより、磁石のNS軸に平行な方向の磁界は磁性薄膜の膜厚方向に加わることになるが、薄膜では膜厚方向の反磁界が非常に大きく、素子特性に関わる膜面に平行な磁界感受方向の磁気特性に及ぼす悪影響を抑えることができる。
【0014】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS軸に対して対称な位置に複数個配置され、前記複数個配置された磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁石のNS軸に対して対称な方向を向いているのが好ましい。
【0015】
磁石の一方の磁極に磁性検体が接近したときの磁界変化は、磁石のNS軸を中心に動径方向の磁界変化である。このため、磁石のNS軸に対して対称な位置にある磁界検出素子では、外部ノイズ磁界を相殺し、且つ、磁性検体による磁界変化を最も効率よく検出できる。
【0016】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置に複数個配置され、前記複数個配置された磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な方向を向いていても良い。
【0017】
この構成でも、磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置にある磁界検出素子により外部ノイズ磁界を相殺し、高S/N比での磁気量検出が可能となる。
【0018】
また、本発明の磁界検出素子を複数個配置した磁性体検出センサにおいて、バイアス磁石を有し、該バイアス磁石のNS方向は、前記磁石のNS軸を含む平面の法線方向であり、且つ、前記バイアス磁石のNS磁極間の中点は、前記磁石のNS軸を含む平面上にある構成としても良い。
【0019】
本発明の構成では、上述したように磁界検出素子の磁界感受方向に加わる磁界をほぼゼロにすることができるため、例えば、磁気インピーダンス素子のように、バイアス磁界の設定が必要な磁界検出素子においても、個々に異なるバイアス磁界を印加する必要はなく、1つのバイアス磁石によって同時にバイアス磁界を設定することができる。これにより、構成を簡単にでき、バイアス調整の工程を簡略化できる。
【0020】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、非磁性基板上に形成され、該非磁性基板の厚みは、前記磁石のNS磁極間距離の半分であり、前記非磁性基板の磁性薄膜形成面と対向する面と、前記磁石の一方の磁極面は、同一平面上にある構成としても良い。
【0021】
この構成では、磁石と非磁性基板を突き当て等で位置出しすることにより容易に実現することができる。これにより、磁界検出素子を、磁石のNS方向を法線とし、且つ、NS磁極間の中点を通る平面上に、非常に精度良く配置することができ、信頼性の高い磁性体検出センサを作製することが可能となる。
【0022】
また、本発明による磁界検出素子を複数個配置した磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、同一基板上に形成されているのが好ましい。
【0023】
これにより、複数の磁界検出素子を、磁石のNS方向を法線とし、且つ、NS磁極間の中点を通る平面上に容易に配置することができ、また、夫々の磁界検出素子の磁界感受方向を完全に平面に平行にすることができるため、外部ノイズ磁界を非常に精度良く相殺してS/N比を更に向上させることができる。
【0024】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁石とNS磁極間距離を等しくする複数の補助磁石を有し、前記補助磁石は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置に配置され、且つ、該補助磁石の磁極面は、前記磁石の磁極面と同一平面上にあり、且つ、前記補助磁石の磁化方向は、前記磁石の磁化方向と反平行である構成としても良い。
【0025】
磁性検体の磁化方向は、補助磁石が無い場合には磁石のNS軸の動径方向に発散する分布であるが、この構成では磁石から補助磁石に向かう方向に集中する。これにより、磁界検出素子の磁界感受方向を磁石のNS軸の動径方向に向けられない場合でも、補助磁石を適当に配置することにより検体の磁化方向と磁界検出素子の磁界感受方向を一致させることができ、より効率よく磁界変化を検出することが可能となる。
【0026】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁石の磁性体が近接または接触する磁極とは逆の磁極側に調整用磁石を配置し、該調整用磁石のNS軸は、前記磁石のNS軸の延長線上にある構成としても良い。
【0027】
これにより、磁界検出素子の磁界感受方向に加わる磁界を微調整することができる。この構成では、複数の磁界検出素子が配置されている場合であっても、同時に微調整が可能である。
【0028】
本発明では、磁石のNS方向を法線として磁石のN極とS極の中点を通る平面上に誤差無く配置すれば磁界検出素子の磁界感受方向に磁界が加わることはないが、通常部品寸法の公差や作製時の配置誤差があり、また、スペースの制限等でそのような配置が不可能な場合がある。磁気量に対して厳しい直線性が求められる用途等、素子特性曲線上の動作点を精密に設定する必要がある場合、この調整用磁石による磁界の微調整が非常に有効である。
【0029】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁石の磁性体が近接または接触する磁極とは逆の磁極側に参照磁性体を配置した構成としても良い。
【0030】
検出検体を接近させる磁極とは逆側の磁極近傍に参照磁性体を配置することにより、この参照磁性体を基準として、検出検体の磁気量をレベル判定することができる。これにより、微小な磁気量差を判別することが可能となる。特に、検出検体の磁気量が大きい場合、検体による磁界変化が動作範囲の狭い高感度磁界検出素子の動作範囲を越える恐れがあり、参照磁性体を設置することで、大きい磁気量のうちの微小変化を検出することが可能となる。
【0031】
また、本発明の磁性体検出センサを複数個並列配置し、隣接する夫々の磁石の中間に、該磁石と反平行の磁化を有する補助磁石を有し、該補助磁石の磁極面は、前記磁石の磁極面と同一平面上にあるラインセンサとしても良い。
【0032】
この構成では、夫々の磁性体検出センサの磁界検出素子から見た補助磁石の配置は、前述の補助磁石を配置した1個の磁性体検出センサと同様になる。このため、配列させたことによる磁界の干渉等の素子特性低下はなく、また、前述の補助磁石を配置した1個の磁性体検出センサの単純配列に比べて補助磁石の数を減らすことができる。これにより、コストを下げながら高性能な磁気識別ラインセンサを提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、検体の磁化に必要な磁石の近傍でも、動作範囲の狭い高感度磁界検出素子の特性を低下させることなく、磁界変化の検出が可能になる。これにより、検体の保磁力の大きさによらず、非接触で高S/N比の磁気量検出が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図1(a)は本発明による磁性体検出センサの第1の実施形態の構成を示す斜視図である。図1(a)では、磁界検出素子2を、磁石50のN極とS極を結ぶ線分と交わりNS方向を法線とする平面内に配置した構成である。磁性検体3を、磁石50のどちらか一方の磁極面に接触させるか、または、非接触で磁極面に対向させ、その時の磁界変化を磁界検出素子2で測定して磁性検体3の磁気量を検出する。ここで、磁性検体3は磁極面近傍に固定配置して磁気量を検出しても良いし、磁極面近傍を通過させて検体の磁気量分布を連続的に検出しても良い。また、磁性検体3を固定し、磁性体検出センサ1を相対的に移動して連続的に検出しても良い。
【0036】
図1(b)は本発明による磁性体検出センサ1の動作を説明する図である。図1(b)の上図は、縦軸を磁界検出素子2の位置として、横軸に磁界検出素子2に加わる磁界の一例を表したものである。縦軸の磁界検出素子2の位置は、磁石のNS軸と平行な方向の移動であり、磁石のNS軸を法線としてNS磁極の中点を通る平面上にあるときをゼロとして表示してある。
【0037】
横軸の磁界検出素子2に加わる磁界は、磁石の形成する磁界のNS軸に垂直な方向の成分であり、磁極面に磁性検体3を近接させた時は破線で示すグラフのように磁界分布が変化する。図1(b)の下図は、高感度磁界検出素子の特性の一例である。ゼロ磁界を中心として±Hsの動作範囲を持つ特性を示してある。磁界検出素子2の位置が図中のΔzの範囲にあれば、磁界検出素子2に加わる磁界は±Hsの範囲内にあり、磁極面に磁性検体3が接近した時の磁界変化を高感度に検出することが可能である。ここで、高感度磁界検出素子の特性はこれに限るものではなく、ゼロ磁界付近に動作範囲をもつ磁界検出素子であれば、同様の動作で磁界変化を検出することができる。
【0038】
図1(a)の構成で、磁石50は、検体上で磁化される領域を狭くして空間分解能を上げるために磁極面積の小さいもの、且つ、検出検体を充分に磁化できるものが望ましい。そのため、希土類磁石等の高飽和磁束密度を有するものが好適であるが、特にそれらに限定されるものではない。
【0039】
磁石50の飽和磁束密度としては0.1T以上のものを用いることができるが、検体を非接触で検出する場合は1T以上のものを用いるのが好ましい。磁石50の磁極面積の大きさは、検体の磁気パターン分解能の観点からできるだけ小さいのが好ましいが、取り扱いの容易さや検出検体を充分に磁化する必要から0.2〜1mm2程度が好適である。磁石50のNS磁極間距離は、特に限定されるものではないが、磁性体検出センサの外形の大きさや磁石自体の強度を考慮すると5mm以下が適当である。
【0040】
磁石50と磁界検出素子2の間隔は、大きくなると検出感度は低下し、磁性体検出センサの外形も大きくなる。これらを考慮すると、磁石50と磁界検出素子2の間隔は3mm以下が好適である。
【0041】
磁界検出素子2は、加わる磁界に応じた電気信号が得られる素子であれば特に限定されるものではないが、本発明の効果を充分に得るには、動作範囲の狭い高感度磁界検出素子も用いるのが良い。
【0042】
このような高感度磁界検出素子としては、磁性体に直接高周波電流を通電し、外部磁界によるインピーダンス変化を検出する磁気インピーダンス素子や、励磁コイルに交流電流を通電して磁性体を飽和励磁し、外部磁界による飽和のタイミングの変化を検出するフラックスゲート素子、またそれらに類似した素子等を用いることができる。類似した素子としては、磁性体に直接高周波電流を通電して高周波励磁し、外部磁界に応じた磁束密度変化をコイルで検出する素子等が挙げられる。
【0043】
(第2の実施形態)
図2は本発明による磁性体検出センサの第2の実施形態を示す斜視図である。磁界検出素子2を、磁石50のNS磁極間のほぼ中点を通りNS方向を法線とする平面内に配置した以外は、第1の実施形態と同様である。ここで、磁性検体は省略してある。
【0044】
この構成では、磁石のNS磁極間の中点を通りNS方向を法線とする平面に誤差無く配置するのが最適であり、この時、外部ノイズ磁界が無ければ磁界検出素子2に加わる磁界は完全にゼロで、動作範囲の狭い磁界検出素子2を安定して動作させることができる。しかし、磁石50のNS磁極間距離が小さくなると、磁界検出素子2の位置による磁界分布の変化が大きくなり、磁界検出素子2を配置する位置精度は厳しくなる。構成部品の公差や製造の容易さを考慮すると、磁石のNS磁極間距離は1mm以上あるのが好ましい。同様に、磁石50と磁界検出素子2の間隔も、小さくなれば位置精度は厳しくなるため、磁石50と磁界検出素子2の間隔は0.5mm以上あるのが好適である。
【0045】
(第3の実施形態)
図3は本発明による磁性体検出センサの第3の実施形態を示す斜視図である。磁石50に関しては上述の実施形態と同様であり、また、磁石50と磁界検出素子2の配置に関しても同様である。図3では、磁石50のNS磁極間の中点を通る平面上に磁界検出素子2を配置しているが、これに限らず、磁石50のN極とS極を結ぶ線分と交わる平面上であれば良い。
【0046】
図3(a)は基板30上に磁界検出素子である磁性薄膜20を形成した構成である。基板30は非磁性基板であれば特に限定されないが、例えば、ガラスやセラミック、シリコンウェハ等を用いることができる。磁性薄膜20の形状としては短冊状やストライプ状、つづら折れ形状等が挙げられるが、特に限定はない。
【0047】
磁性薄膜20からなる磁界検出素子としては、磁気インピーダンス素子等が好適に用いられる。図3(b)は磁性薄膜20の周囲にコイル40を配置して磁界検出素子2とした構成である。これに用いる磁界検出素子としては、磁気インピーダンス素子やフラックスゲート素子、及びそれらに類似した素子等が挙げられる。コイルを配置する場合、図3(c)のように平面コイル41を磁性薄膜20とともに積層配置した構成であっても良い。また、基板上で磁性薄膜を周回する構造物を形成してコイルとしても良い。
【0048】
(第4の実施形態)
図4は本発明による磁性体検出センサの第4の実施形態を示す斜視図である。磁石50及び磁界検出素子21〜24に関しては上述の実施形態と同様である。図4の構成図では、好適な構成として磁性薄膜と平面コイルからなる磁界検出素子を配置しているが、磁界検出素子21〜24は薄膜形状でなくても良く、また、コイルを配置していないものであっても同様に好適である。
【0049】
磁界検出素子21〜24は磁石50のNS軸について対称に配置され、夫々の磁界感受方向は磁石50のNS軸を中心として動径方向を向いている。この構成では、磁界検出素子21と22、及び、23と24で差動検出することにより、外部ノイズ磁界を相殺することができる。また、検体が磁石50の磁極面に平行でない場合でも、複数の磁界検出素子の出力を平均処理等することで安定した検出が可能である。図4では磁界検出素子を4個配置しているが、素子数に特に限定はない。
【0050】
(第5の実施形態)
図5は本発明による磁性体検出センサの第5の実施形態を示す斜視図である。磁石50及び磁界検出素子21、22に関しては上述の実施形態と同様である。また、ここでも代表的に磁性薄膜と平面コイルからなる磁界検出素子を配置している。磁界検出素子21、22は、磁石50のNS方向を含む平面に対して対称に配置されている。この構成でも、磁界検出素子21と22で差動検出することにより外部ノイズ磁界を相殺することができる。磁界検出素子21と22の間隔は、精度良く外部ノイズ磁界を相殺するために、できるだけ小さくすることが好ましい。
【0051】
(第6の実施形態)
図6は本発明による磁性体検出センサの第6の実施形態を示す斜視図である。バイアス磁石51を配置した以外は第5の実施形態と同様である。但し、磁界検出素子としては、バイアス磁界を必要とする磁気インピーダンス素子等が好適に用いられる。この場合には、平面コイル41は無くて良い。バイアス磁石51は、磁界検出素子21及び22に同方向で同じ大きさの磁界を印加し、2個の磁界検出素子の動作点を同時に設定する。
【0052】
バイアス磁石51の配置は、検出検体への影響を避けるため、磁石50の検体が近接する磁極面から見て、磁界検出素子21,22よりも遠い位置に配置するのが良い。バイアス磁石51に用いる磁石としては特に限定はないが、例えば、金属磁石やフェライト磁石、希土類磁石、それらを樹脂に含有したボンド磁石等を用いることができる。動作範囲の狭い磁界検出素子では、必要なバイアス磁界は数エルステッドであり、磁石の飽和磁束密度は0.01T以上あれば充分である。
【0053】
バイアス磁石51のNS磁極間距離は、磁界分布の均一性から、バイアス磁界が印加される磁界検出素子の寸法に対して同程度かそれ以上であるのが好ましい。磁界検出素子の配置にも依存するが、図5のように並べて配置した場合、バイアス磁石のNS磁極間距離は2〜7mm程度が好ましい。磁極面積は取り扱いの容易さを考慮して0.5mm2以上あるのが好ましい。
【0054】
(第7の実施形態)
図7は本発明による磁性体検出センサの第7の実施形態を示す斜視図である。基板31以外は上述の実施形態と同様であるが、磁界検出素子は磁性薄膜を有するものに限られる。図7では1個の磁界検出素子を配置しているが、複数個配置しても良く、また、バイアス磁石51を配置しても良い。
【0055】
基板31は磁石50のNS磁極間距離の半分の厚みを持ち、磁界検出素子形成面と対向する面が磁石50の磁極面と同一平面上にある。図7において磁界検出素子21はコイルを配置した構成であるが、コイルを配置していないものであっても同様に好適である。コイルを配置する場合には、配置するコイルは基板を周回しないコイルに限られ、例えば、図7のような平面コイルや、磁性薄膜を周回するように基板上に形成されたコイル等が挙げられる。
【0056】
(第8の実施形態)
図8は本発明による磁性体検出センサの第8の実施形態を示す斜視図である。基板32の形状以外は上述の実施形態と同様であるが、磁界検出素子は磁性薄膜を有するものに限られる。ここで、磁界検出素子の配置はこれに限らず、例えば、第4の実施形態と同様であっても良い。磁界検出素子21、22は同一の基板32上に形成され、複数の磁界検出素子の配置や磁界感受方向が高精度に設定できる。基板32の厚みは特に限定されるものではないが、第6の実施形態と同様に磁石50のNS磁極間距離の半分の厚みにすればより好ましい。
【0057】
(第9の実施形態)
図9は本発明による磁性体検出センサの第9の実施形態を示す斜視図である。図9では、同一基板上に磁性薄膜とコイルからなる磁界検出素子を2個配置しているが、これに限るものではなく、補助磁石52,53以外は上述した実施形態と同様の構成が可能である。補助磁石52、53の磁化方向は磁石50のそれと逆方向であり、3個の磁石の磁極面は同一平面上にある。補助磁石のNS磁極間距離は磁石50と同じである。補助磁石のNS磁極間距離以外の形状及び材質は特に限定されるものではないが、例えば、磁石50と同じものを用いることができる。
【0058】
(第10の実施形態)
図10は本発明による磁性体検出センサの第10の実施形態を示す斜視図である。磁石50の一方の磁極面近傍に調整用磁石55を配置した構成である。図10では、代表的に磁性薄膜とコイルからなる磁界検出素子を1個配置しているが、素子形態や個数、配置はこれに限るものではなく、調整用磁石55以外は上述した実施形態と同様の構成が可能である。また、上述のバイアス磁石や補助磁石を配置しても良い。調整用磁石55の形状及び材質は特に限定されるものではないが、例えば、磁石50と同じものを用いることができる。
【0059】
(第11の実施形態)
図11は本発明による磁性体検出センサの第11の実施形態を示す斜視図である。磁石50の一方の磁極面近傍に参照磁性体60を配置した構成である。ここでも代表的に磁性薄膜とコイルからなる磁界検出素子を1個配置しているが、これに限るものではなく、上述した実施形態と同様の構成が可能である。参照磁性体60と磁石50の磁極面の距離は、検出検体を磁石50のもう一方の磁極面に近接させるときの距離と同程度にするのが好ましい。
【0060】
(磁気識別ラインセンサの実施形態)
図12は本発明による磁気識別ラインセンサの一実施形態を示す斜視図である。磁性体検出センサ1を並列した構成であり、夫々の磁性体検出センサ1の磁石50の中間に、磁石50と逆の磁化方向を持つ補助磁石54が配置されている。図12では、磁界検出センサ1として、代表的に同一基板上に磁性薄膜とコイルからなる磁界検出素子を2個配置しているが、これに限るものではなく、補助磁石を配置したものを除いて、上述の全ての実施形態の磁性体検出センサを用いることができる。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0062】
実施例で用いた部材は次の通りである。磁石として、飽和磁束密度1.3TのNd−Fe−B系磁石を用いた。磁石の形状はNS磁極間距離が2mm、磁極面積は1×1mm2である。また、磁界検出素子を構成する磁性薄膜を形成する基板にはガラス基板を用いた。ガラス基板の厚みは0.5mmとした。磁性薄膜としては、スパッタで形成したFe−Co−Ni系の薄膜を用いた。薄膜は、膜厚3μm、幅25μm、長さ1mmのパターンをつづら折れ上に3回繰り返した形状であり、成膜後に磁場中アニールにより幅方向に磁化容易軸が形成されている。この磁性薄膜上に絶縁膜を挟んでCuで平面コイルパターンを形成し、磁界検出素子とした。
【0063】
磁界検出素子の駆動は、磁界検出素子を形成する磁性薄膜に設けられた電極に高周波電流を印加し、この時、外部磁界の大きさに応じて生じる高周波磁束変化をコイルで検出する方法を用いた。駆動電流は10mA、駆動周波数は10MHzとした。この駆動方法で、誘導起電力によりコイルに発生する信号を検波、増幅した外部磁界−出力特性は、図1(b)の下図のように磁界にほぼ比例した出力となり、約10Oeの動作範囲を越えるとB−H特性が飽和し、検出感度も飽和した後減少する。
【0064】
(実施例1)
上記の部材を用いて図3(c)の磁性体検出センサを作製した。磁石のNS軸と磁界検出素子の中央の距離は3mmとした。
【0065】
(実施例2)
上記の部材を用いて図4の磁性体検出センサを作製した。磁石のNS軸と磁界検出素子の中央の距離は3mmとした。
【0066】
(実施例3)
上記の部材を用いて図5の磁性体検出センサを作製した。2個の磁界検出素子の中央の距離は2mm、磁石のNS軸と2個の磁界検出素子の中心の距離は2mmとした。
【0067】
(実施例4)
実施例3の構成に加えて、上記の磁石と同じ材質で磁極間距離が5mm、磁極面積が0.5×1mm2のバイアス磁石を用い、図6の磁性体検出センサを作製した。バイアス磁石の位置は、バイアス磁界が4Oeに設定されるように調整した。ここでは、上記の駆動方法と異なり、磁界検出素子を磁気インピーダンス素子として駆動した。分圧抵抗を付加した磁性薄膜に20MHzの高周波電流を通電し、磁性薄膜の電圧変化を検出した。
【0068】
(実施例5)
上記の部材を用いて図7の磁性体検出センサを作製した。ここでは、ガラス基板の厚みを1mmとした。磁石のNS軸と磁界検出素子の中央の距離は3mmとした。
【0069】
(実施例6)
上記の部材を用いて図8の磁性体検出センサを作製した。2個の磁界検出素子は同一のガラス基板上に形成され、磁石のNS軸と2個の磁界検出素子の中心の距離は2mmとした。
【0070】
(実施例7)
上記の部材を用いて図9の磁性体検出センサを作製した。補助磁石には上記の磁石と同じものを用いた。2個の磁界検出素子の中央の距離は2mm、磁石のNS軸と2個の磁界検出素子の中心の距離は2mmとした。
【0071】
(実施例8)
上記の部材を用いて図10の磁性体検出センサを作製した。調整用磁石には上記の磁石と同じものを用いた。
【0072】
(実施例9)
上記の部材を用いて図11の磁性体検出センサを作製した。軟磁性材料からなる参照磁性体は、0.2mm厚のスペーサー部材を挟んで磁石50の磁極面に配置した。
【0073】
(実施例10)
上記の部材を用いて図12の磁気識別ラインセンサを作製した。補助磁石には上記の磁石と同じものを用いた。夫々の磁性体検出センサ1において、2個の磁界検出素子の中央の距離は2mm、磁石のNS軸と2個の磁界検出素子の中心の距離は2mmとした。
【0074】
(測定例)
上述した全ての実施例において、磁界検出素子の特性曲線上の動作点は動作範囲にあり、軟磁性及び硬磁性検体の検出が可能であった。図13にその一例を示す。図13(a)は測定に用いた磁性検体であり、図13(b)は上述の実施例6の磁性体検出センサでの測定結果である。
【0075】
磁性検体は、紙上に軟磁性紛を付着させフィルムを貼付して保護したもので、ライン/スペースは1mm/1mmとし、図中のAのパターンを基準にBは+15%、Cは+30%の濃度にしたものを用いた。測定は非接触で、磁性検体を磁極面にほぼ平行に対向するように移動して行った。磁性検体と磁極面の距離は0.6mmとした。
【0076】
測定結果である図13(b)において、磁性体が近接する磁石の磁極面の大きさが1mm×1mmであり、パターン間のスペースと同程度であるため、パターンを完全には分離できていないが、3つのパターンに対応するピーク値はほぼ濃度に比例したものであり、高感度な磁気量検知が実現できている。硬磁性材を用いた同じパターンの磁性検体においても同様の測定結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示す斜視図及び本発明の動作を説明するためのグラフである。
【図2】本発明の第2の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第5の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第6の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の第7の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第8の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第9の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第10の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第11の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明のラインセンサの一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施例において測定に用いた磁性検体を示す平面図及び本発明の実施例における測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 磁性体検出センサ
2 磁界検出素子
3 磁性検体
20、21、22 磁界検出素子を構成する磁性薄膜
30、31、32 基板
40、41 磁界検出素子を構成するコイル
50 磁石
51 バイアス磁石
52、53、54 補助磁石
55 調整用磁石
60 参照磁性体
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体を含有する磁性検体の磁気量を検出する磁性体検出センサ及びそれを用いた磁性体検出ラインセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁性検体の検出に使用される磁性体検出センサとしては、磁気ヘッドや磁界検出素子である磁気抵抗素子を用いたものが知られている。磁気抵抗素子を用いたものは、磁気ヘッドに比べて感度が高く、センサ構成に関しても数多くの提案がなされている。
【0003】
磁気抵抗素子を動作させるには数十エルステッドのバイアス磁界が必要であり、磁気抵抗素子を用いた磁性体検出センサでは、通常、磁石の磁極面上に素子を配置し、素子に接近した検体による磁界分布の変化を検出する構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、ミリエルステッド以下の微小磁界を検出でき、磁気抵抗素子に比べて非常に高感度な磁界検出素子として、フラックスゲートセンサや磁気インピーダンス素子等が知られている。これらの素子を用いた磁性体検出センサとしては、例えば、特許文献2や特許文献3等がある。これらの高感度磁界検出素子を用いた磁性体検出センサでは、予め着磁された検体を非接触で非常にS/N比の良い検出が可能であり、従来の磁気ヘッドや磁気抵抗素子を用いたものに比べて大きな優位性を有している。
【特許文献1】特開平08−105950号公報
【特許文献2】特開平11−007565号公報
【特許文献3】特開2000−105847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら高感度磁界検出素子では、磁性体の急峻なB−H(磁束密度−磁界)特性を利用しているため、B−H特性の飽和に関係した検出感度の飽和点が存在し、動作範囲はゼロ磁界を中心に高々数エルステッド程度の範囲である。このため、保磁力の小さい軟磁性検体の検出を行う場合、検体が飽和する程度の磁界を印加した状態で検出を行う必要があるが、従来の磁気抵抗素子と同様の構成では、動作範囲の狭い高感度磁界検出素子は用いることができない。また、磁界検出素子にコイルを配置し、磁界検出素子の出力に応じてコイルの電流を制御して動作範囲を広げる方法もあるが、検体を磁化するための磁界を相殺するだけの電流を流すには発熱や消費電力が大きくなる等の問題があり好ましくない。
【0006】
このような状況に鑑み、本発明の目的は、動作範囲の狭い高感度磁気検出素子の特性を低下させることなく、保磁力の大小に依らずに磁性検体の磁気量を検出可能な磁性体検出センサ及び磁性体検出ラインセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による磁性体検出センサは、磁石と少なくとも1つの磁界検出素子とを備える磁性体検出センサであって、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS方向を法線とし、且つ、前記磁石のN極とS極を結ぶ線分と交わる平面上に配置され、該平面に平行な方向を磁界感受方向とし、前記磁石のN極またはS極に磁性体が近接または接触した際の磁界変化を検出するものである。
【0008】
この構成では、磁石のN極またはS極に磁性体からなる検体を近接させることが可能なため、検体を確実に磁化することができ、磁石周辺の磁界は検体に含まれる磁気量に応じた変化をする。また、この構成では、磁界検出素子の磁界感受方向に加わる磁界は、磁石の磁極面に配置されたときと比べて非常に小さく、動作範囲の狭い高感度磁界検出素子であっても配置することができ、高感度な磁気量検知が可能である。
【0009】
ここで、本発明の配置では、磁界検出素子が磁極面に配置されたときと比べて検体からの距離が大きく、検体の磁気量を検出するという観点からは一見不利に見えるが、高感度磁界検出素子の特性を低下させないことが重要であって、検出する磁界の減少は感度の高さで充分補うことができる。また、本発明の配置では、検体の磁気パターンに対する分解能は、磁石の磁極面積に依存する検体上の磁化領域の大きさで決まり、検体との距離に依存しないため、磁気パターン分解能も低下させることなく高感度磁界検出素子を用いることができる。
【0010】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS方向を法線とし、且つ、前記磁石のN極とS極の概ね中点を通る平面上に配置されているのが好ましい。
【0011】
この構成では、外部ノイズ磁界の無い状態で、磁界検出素子の磁界感受方向の磁界はほぼゼロであり、素子特性曲線上の動作点はゼロ点付近に保たれるため、ゼロ磁界付近の狭い動作範囲をもつ高感度磁界検出素子を最適な状態で使用することができる。
【0012】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、磁性薄膜を有し、且つ、前記磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁性薄膜の膜面に平行であることが好ましい。
【0013】
これにより、磁石のNS軸に平行な方向の磁界は磁性薄膜の膜厚方向に加わることになるが、薄膜では膜厚方向の反磁界が非常に大きく、素子特性に関わる膜面に平行な磁界感受方向の磁気特性に及ぼす悪影響を抑えることができる。
【0014】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS軸に対して対称な位置に複数個配置され、前記複数個配置された磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁石のNS軸に対して対称な方向を向いているのが好ましい。
【0015】
磁石の一方の磁極に磁性検体が接近したときの磁界変化は、磁石のNS軸を中心に動径方向の磁界変化である。このため、磁石のNS軸に対して対称な位置にある磁界検出素子では、外部ノイズ磁界を相殺し、且つ、磁性検体による磁界変化を最も効率よく検出できる。
【0016】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置に複数個配置され、前記複数個配置された磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な方向を向いていても良い。
【0017】
この構成でも、磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置にある磁界検出素子により外部ノイズ磁界を相殺し、高S/N比での磁気量検出が可能となる。
【0018】
また、本発明の磁界検出素子を複数個配置した磁性体検出センサにおいて、バイアス磁石を有し、該バイアス磁石のNS方向は、前記磁石のNS軸を含む平面の法線方向であり、且つ、前記バイアス磁石のNS磁極間の中点は、前記磁石のNS軸を含む平面上にある構成としても良い。
【0019】
本発明の構成では、上述したように磁界検出素子の磁界感受方向に加わる磁界をほぼゼロにすることができるため、例えば、磁気インピーダンス素子のように、バイアス磁界の設定が必要な磁界検出素子においても、個々に異なるバイアス磁界を印加する必要はなく、1つのバイアス磁石によって同時にバイアス磁界を設定することができる。これにより、構成を簡単にでき、バイアス調整の工程を簡略化できる。
【0020】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、非磁性基板上に形成され、該非磁性基板の厚みは、前記磁石のNS磁極間距離の半分であり、前記非磁性基板の磁性薄膜形成面と対向する面と、前記磁石の一方の磁極面は、同一平面上にある構成としても良い。
【0021】
この構成では、磁石と非磁性基板を突き当て等で位置出しすることにより容易に実現することができる。これにより、磁界検出素子を、磁石のNS方向を法線とし、且つ、NS磁極間の中点を通る平面上に、非常に精度良く配置することができ、信頼性の高い磁性体検出センサを作製することが可能となる。
【0022】
また、本発明による磁界検出素子を複数個配置した磁性体検出センサにおいて、前記磁界検出素子は、同一基板上に形成されているのが好ましい。
【0023】
これにより、複数の磁界検出素子を、磁石のNS方向を法線とし、且つ、NS磁極間の中点を通る平面上に容易に配置することができ、また、夫々の磁界検出素子の磁界感受方向を完全に平面に平行にすることができるため、外部ノイズ磁界を非常に精度良く相殺してS/N比を更に向上させることができる。
【0024】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁石とNS磁極間距離を等しくする複数の補助磁石を有し、前記補助磁石は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置に配置され、且つ、該補助磁石の磁極面は、前記磁石の磁極面と同一平面上にあり、且つ、前記補助磁石の磁化方向は、前記磁石の磁化方向と反平行である構成としても良い。
【0025】
磁性検体の磁化方向は、補助磁石が無い場合には磁石のNS軸の動径方向に発散する分布であるが、この構成では磁石から補助磁石に向かう方向に集中する。これにより、磁界検出素子の磁界感受方向を磁石のNS軸の動径方向に向けられない場合でも、補助磁石を適当に配置することにより検体の磁化方向と磁界検出素子の磁界感受方向を一致させることができ、より効率よく磁界変化を検出することが可能となる。
【0026】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁石の磁性体が近接または接触する磁極とは逆の磁極側に調整用磁石を配置し、該調整用磁石のNS軸は、前記磁石のNS軸の延長線上にある構成としても良い。
【0027】
これにより、磁界検出素子の磁界感受方向に加わる磁界を微調整することができる。この構成では、複数の磁界検出素子が配置されている場合であっても、同時に微調整が可能である。
【0028】
本発明では、磁石のNS方向を法線として磁石のN極とS極の中点を通る平面上に誤差無く配置すれば磁界検出素子の磁界感受方向に磁界が加わることはないが、通常部品寸法の公差や作製時の配置誤差があり、また、スペースの制限等でそのような配置が不可能な場合がある。磁気量に対して厳しい直線性が求められる用途等、素子特性曲線上の動作点を精密に設定する必要がある場合、この調整用磁石による磁界の微調整が非常に有効である。
【0029】
また、本発明による磁性体検出センサにおいて、前記磁石の磁性体が近接または接触する磁極とは逆の磁極側に参照磁性体を配置した構成としても良い。
【0030】
検出検体を接近させる磁極とは逆側の磁極近傍に参照磁性体を配置することにより、この参照磁性体を基準として、検出検体の磁気量をレベル判定することができる。これにより、微小な磁気量差を判別することが可能となる。特に、検出検体の磁気量が大きい場合、検体による磁界変化が動作範囲の狭い高感度磁界検出素子の動作範囲を越える恐れがあり、参照磁性体を設置することで、大きい磁気量のうちの微小変化を検出することが可能となる。
【0031】
また、本発明の磁性体検出センサを複数個並列配置し、隣接する夫々の磁石の中間に、該磁石と反平行の磁化を有する補助磁石を有し、該補助磁石の磁極面は、前記磁石の磁極面と同一平面上にあるラインセンサとしても良い。
【0032】
この構成では、夫々の磁性体検出センサの磁界検出素子から見た補助磁石の配置は、前述の補助磁石を配置した1個の磁性体検出センサと同様になる。このため、配列させたことによる磁界の干渉等の素子特性低下はなく、また、前述の補助磁石を配置した1個の磁性体検出センサの単純配列に比べて補助磁石の数を減らすことができる。これにより、コストを下げながら高性能な磁気識別ラインセンサを提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、検体の磁化に必要な磁石の近傍でも、動作範囲の狭い高感度磁界検出素子の特性を低下させることなく、磁界変化の検出が可能になる。これにより、検体の保磁力の大きさによらず、非接触で高S/N比の磁気量検出が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図1(a)は本発明による磁性体検出センサの第1の実施形態の構成を示す斜視図である。図1(a)では、磁界検出素子2を、磁石50のN極とS極を結ぶ線分と交わりNS方向を法線とする平面内に配置した構成である。磁性検体3を、磁石50のどちらか一方の磁極面に接触させるか、または、非接触で磁極面に対向させ、その時の磁界変化を磁界検出素子2で測定して磁性検体3の磁気量を検出する。ここで、磁性検体3は磁極面近傍に固定配置して磁気量を検出しても良いし、磁極面近傍を通過させて検体の磁気量分布を連続的に検出しても良い。また、磁性検体3を固定し、磁性体検出センサ1を相対的に移動して連続的に検出しても良い。
【0036】
図1(b)は本発明による磁性体検出センサ1の動作を説明する図である。図1(b)の上図は、縦軸を磁界検出素子2の位置として、横軸に磁界検出素子2に加わる磁界の一例を表したものである。縦軸の磁界検出素子2の位置は、磁石のNS軸と平行な方向の移動であり、磁石のNS軸を法線としてNS磁極の中点を通る平面上にあるときをゼロとして表示してある。
【0037】
横軸の磁界検出素子2に加わる磁界は、磁石の形成する磁界のNS軸に垂直な方向の成分であり、磁極面に磁性検体3を近接させた時は破線で示すグラフのように磁界分布が変化する。図1(b)の下図は、高感度磁界検出素子の特性の一例である。ゼロ磁界を中心として±Hsの動作範囲を持つ特性を示してある。磁界検出素子2の位置が図中のΔzの範囲にあれば、磁界検出素子2に加わる磁界は±Hsの範囲内にあり、磁極面に磁性検体3が接近した時の磁界変化を高感度に検出することが可能である。ここで、高感度磁界検出素子の特性はこれに限るものではなく、ゼロ磁界付近に動作範囲をもつ磁界検出素子であれば、同様の動作で磁界変化を検出することができる。
【0038】
図1(a)の構成で、磁石50は、検体上で磁化される領域を狭くして空間分解能を上げるために磁極面積の小さいもの、且つ、検出検体を充分に磁化できるものが望ましい。そのため、希土類磁石等の高飽和磁束密度を有するものが好適であるが、特にそれらに限定されるものではない。
【0039】
磁石50の飽和磁束密度としては0.1T以上のものを用いることができるが、検体を非接触で検出する場合は1T以上のものを用いるのが好ましい。磁石50の磁極面積の大きさは、検体の磁気パターン分解能の観点からできるだけ小さいのが好ましいが、取り扱いの容易さや検出検体を充分に磁化する必要から0.2〜1mm2程度が好適である。磁石50のNS磁極間距離は、特に限定されるものではないが、磁性体検出センサの外形の大きさや磁石自体の強度を考慮すると5mm以下が適当である。
【0040】
磁石50と磁界検出素子2の間隔は、大きくなると検出感度は低下し、磁性体検出センサの外形も大きくなる。これらを考慮すると、磁石50と磁界検出素子2の間隔は3mm以下が好適である。
【0041】
磁界検出素子2は、加わる磁界に応じた電気信号が得られる素子であれば特に限定されるものではないが、本発明の効果を充分に得るには、動作範囲の狭い高感度磁界検出素子も用いるのが良い。
【0042】
このような高感度磁界検出素子としては、磁性体に直接高周波電流を通電し、外部磁界によるインピーダンス変化を検出する磁気インピーダンス素子や、励磁コイルに交流電流を通電して磁性体を飽和励磁し、外部磁界による飽和のタイミングの変化を検出するフラックスゲート素子、またそれらに類似した素子等を用いることができる。類似した素子としては、磁性体に直接高周波電流を通電して高周波励磁し、外部磁界に応じた磁束密度変化をコイルで検出する素子等が挙げられる。
【0043】
(第2の実施形態)
図2は本発明による磁性体検出センサの第2の実施形態を示す斜視図である。磁界検出素子2を、磁石50のNS磁極間のほぼ中点を通りNS方向を法線とする平面内に配置した以外は、第1の実施形態と同様である。ここで、磁性検体は省略してある。
【0044】
この構成では、磁石のNS磁極間の中点を通りNS方向を法線とする平面に誤差無く配置するのが最適であり、この時、外部ノイズ磁界が無ければ磁界検出素子2に加わる磁界は完全にゼロで、動作範囲の狭い磁界検出素子2を安定して動作させることができる。しかし、磁石50のNS磁極間距離が小さくなると、磁界検出素子2の位置による磁界分布の変化が大きくなり、磁界検出素子2を配置する位置精度は厳しくなる。構成部品の公差や製造の容易さを考慮すると、磁石のNS磁極間距離は1mm以上あるのが好ましい。同様に、磁石50と磁界検出素子2の間隔も、小さくなれば位置精度は厳しくなるため、磁石50と磁界検出素子2の間隔は0.5mm以上あるのが好適である。
【0045】
(第3の実施形態)
図3は本発明による磁性体検出センサの第3の実施形態を示す斜視図である。磁石50に関しては上述の実施形態と同様であり、また、磁石50と磁界検出素子2の配置に関しても同様である。図3では、磁石50のNS磁極間の中点を通る平面上に磁界検出素子2を配置しているが、これに限らず、磁石50のN極とS極を結ぶ線分と交わる平面上であれば良い。
【0046】
図3(a)は基板30上に磁界検出素子である磁性薄膜20を形成した構成である。基板30は非磁性基板であれば特に限定されないが、例えば、ガラスやセラミック、シリコンウェハ等を用いることができる。磁性薄膜20の形状としては短冊状やストライプ状、つづら折れ形状等が挙げられるが、特に限定はない。
【0047】
磁性薄膜20からなる磁界検出素子としては、磁気インピーダンス素子等が好適に用いられる。図3(b)は磁性薄膜20の周囲にコイル40を配置して磁界検出素子2とした構成である。これに用いる磁界検出素子としては、磁気インピーダンス素子やフラックスゲート素子、及びそれらに類似した素子等が挙げられる。コイルを配置する場合、図3(c)のように平面コイル41を磁性薄膜20とともに積層配置した構成であっても良い。また、基板上で磁性薄膜を周回する構造物を形成してコイルとしても良い。
【0048】
(第4の実施形態)
図4は本発明による磁性体検出センサの第4の実施形態を示す斜視図である。磁石50及び磁界検出素子21〜24に関しては上述の実施形態と同様である。図4の構成図では、好適な構成として磁性薄膜と平面コイルからなる磁界検出素子を配置しているが、磁界検出素子21〜24は薄膜形状でなくても良く、また、コイルを配置していないものであっても同様に好適である。
【0049】
磁界検出素子21〜24は磁石50のNS軸について対称に配置され、夫々の磁界感受方向は磁石50のNS軸を中心として動径方向を向いている。この構成では、磁界検出素子21と22、及び、23と24で差動検出することにより、外部ノイズ磁界を相殺することができる。また、検体が磁石50の磁極面に平行でない場合でも、複数の磁界検出素子の出力を平均処理等することで安定した検出が可能である。図4では磁界検出素子を4個配置しているが、素子数に特に限定はない。
【0050】
(第5の実施形態)
図5は本発明による磁性体検出センサの第5の実施形態を示す斜視図である。磁石50及び磁界検出素子21、22に関しては上述の実施形態と同様である。また、ここでも代表的に磁性薄膜と平面コイルからなる磁界検出素子を配置している。磁界検出素子21、22は、磁石50のNS方向を含む平面に対して対称に配置されている。この構成でも、磁界検出素子21と22で差動検出することにより外部ノイズ磁界を相殺することができる。磁界検出素子21と22の間隔は、精度良く外部ノイズ磁界を相殺するために、できるだけ小さくすることが好ましい。
【0051】
(第6の実施形態)
図6は本発明による磁性体検出センサの第6の実施形態を示す斜視図である。バイアス磁石51を配置した以外は第5の実施形態と同様である。但し、磁界検出素子としては、バイアス磁界を必要とする磁気インピーダンス素子等が好適に用いられる。この場合には、平面コイル41は無くて良い。バイアス磁石51は、磁界検出素子21及び22に同方向で同じ大きさの磁界を印加し、2個の磁界検出素子の動作点を同時に設定する。
【0052】
バイアス磁石51の配置は、検出検体への影響を避けるため、磁石50の検体が近接する磁極面から見て、磁界検出素子21,22よりも遠い位置に配置するのが良い。バイアス磁石51に用いる磁石としては特に限定はないが、例えば、金属磁石やフェライト磁石、希土類磁石、それらを樹脂に含有したボンド磁石等を用いることができる。動作範囲の狭い磁界検出素子では、必要なバイアス磁界は数エルステッドであり、磁石の飽和磁束密度は0.01T以上あれば充分である。
【0053】
バイアス磁石51のNS磁極間距離は、磁界分布の均一性から、バイアス磁界が印加される磁界検出素子の寸法に対して同程度かそれ以上であるのが好ましい。磁界検出素子の配置にも依存するが、図5のように並べて配置した場合、バイアス磁石のNS磁極間距離は2〜7mm程度が好ましい。磁極面積は取り扱いの容易さを考慮して0.5mm2以上あるのが好ましい。
【0054】
(第7の実施形態)
図7は本発明による磁性体検出センサの第7の実施形態を示す斜視図である。基板31以外は上述の実施形態と同様であるが、磁界検出素子は磁性薄膜を有するものに限られる。図7では1個の磁界検出素子を配置しているが、複数個配置しても良く、また、バイアス磁石51を配置しても良い。
【0055】
基板31は磁石50のNS磁極間距離の半分の厚みを持ち、磁界検出素子形成面と対向する面が磁石50の磁極面と同一平面上にある。図7において磁界検出素子21はコイルを配置した構成であるが、コイルを配置していないものであっても同様に好適である。コイルを配置する場合には、配置するコイルは基板を周回しないコイルに限られ、例えば、図7のような平面コイルや、磁性薄膜を周回するように基板上に形成されたコイル等が挙げられる。
【0056】
(第8の実施形態)
図8は本発明による磁性体検出センサの第8の実施形態を示す斜視図である。基板32の形状以外は上述の実施形態と同様であるが、磁界検出素子は磁性薄膜を有するものに限られる。ここで、磁界検出素子の配置はこれに限らず、例えば、第4の実施形態と同様であっても良い。磁界検出素子21、22は同一の基板32上に形成され、複数の磁界検出素子の配置や磁界感受方向が高精度に設定できる。基板32の厚みは特に限定されるものではないが、第6の実施形態と同様に磁石50のNS磁極間距離の半分の厚みにすればより好ましい。
【0057】
(第9の実施形態)
図9は本発明による磁性体検出センサの第9の実施形態を示す斜視図である。図9では、同一基板上に磁性薄膜とコイルからなる磁界検出素子を2個配置しているが、これに限るものではなく、補助磁石52,53以外は上述した実施形態と同様の構成が可能である。補助磁石52、53の磁化方向は磁石50のそれと逆方向であり、3個の磁石の磁極面は同一平面上にある。補助磁石のNS磁極間距離は磁石50と同じである。補助磁石のNS磁極間距離以外の形状及び材質は特に限定されるものではないが、例えば、磁石50と同じものを用いることができる。
【0058】
(第10の実施形態)
図10は本発明による磁性体検出センサの第10の実施形態を示す斜視図である。磁石50の一方の磁極面近傍に調整用磁石55を配置した構成である。図10では、代表的に磁性薄膜とコイルからなる磁界検出素子を1個配置しているが、素子形態や個数、配置はこれに限るものではなく、調整用磁石55以外は上述した実施形態と同様の構成が可能である。また、上述のバイアス磁石や補助磁石を配置しても良い。調整用磁石55の形状及び材質は特に限定されるものではないが、例えば、磁石50と同じものを用いることができる。
【0059】
(第11の実施形態)
図11は本発明による磁性体検出センサの第11の実施形態を示す斜視図である。磁石50の一方の磁極面近傍に参照磁性体60を配置した構成である。ここでも代表的に磁性薄膜とコイルからなる磁界検出素子を1個配置しているが、これに限るものではなく、上述した実施形態と同様の構成が可能である。参照磁性体60と磁石50の磁極面の距離は、検出検体を磁石50のもう一方の磁極面に近接させるときの距離と同程度にするのが好ましい。
【0060】
(磁気識別ラインセンサの実施形態)
図12は本発明による磁気識別ラインセンサの一実施形態を示す斜視図である。磁性体検出センサ1を並列した構成であり、夫々の磁性体検出センサ1の磁石50の中間に、磁石50と逆の磁化方向を持つ補助磁石54が配置されている。図12では、磁界検出センサ1として、代表的に同一基板上に磁性薄膜とコイルからなる磁界検出素子を2個配置しているが、これに限るものではなく、補助磁石を配置したものを除いて、上述の全ての実施形態の磁性体検出センサを用いることができる。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0062】
実施例で用いた部材は次の通りである。磁石として、飽和磁束密度1.3TのNd−Fe−B系磁石を用いた。磁石の形状はNS磁極間距離が2mm、磁極面積は1×1mm2である。また、磁界検出素子を構成する磁性薄膜を形成する基板にはガラス基板を用いた。ガラス基板の厚みは0.5mmとした。磁性薄膜としては、スパッタで形成したFe−Co−Ni系の薄膜を用いた。薄膜は、膜厚3μm、幅25μm、長さ1mmのパターンをつづら折れ上に3回繰り返した形状であり、成膜後に磁場中アニールにより幅方向に磁化容易軸が形成されている。この磁性薄膜上に絶縁膜を挟んでCuで平面コイルパターンを形成し、磁界検出素子とした。
【0063】
磁界検出素子の駆動は、磁界検出素子を形成する磁性薄膜に設けられた電極に高周波電流を印加し、この時、外部磁界の大きさに応じて生じる高周波磁束変化をコイルで検出する方法を用いた。駆動電流は10mA、駆動周波数は10MHzとした。この駆動方法で、誘導起電力によりコイルに発生する信号を検波、増幅した外部磁界−出力特性は、図1(b)の下図のように磁界にほぼ比例した出力となり、約10Oeの動作範囲を越えるとB−H特性が飽和し、検出感度も飽和した後減少する。
【0064】
(実施例1)
上記の部材を用いて図3(c)の磁性体検出センサを作製した。磁石のNS軸と磁界検出素子の中央の距離は3mmとした。
【0065】
(実施例2)
上記の部材を用いて図4の磁性体検出センサを作製した。磁石のNS軸と磁界検出素子の中央の距離は3mmとした。
【0066】
(実施例3)
上記の部材を用いて図5の磁性体検出センサを作製した。2個の磁界検出素子の中央の距離は2mm、磁石のNS軸と2個の磁界検出素子の中心の距離は2mmとした。
【0067】
(実施例4)
実施例3の構成に加えて、上記の磁石と同じ材質で磁極間距離が5mm、磁極面積が0.5×1mm2のバイアス磁石を用い、図6の磁性体検出センサを作製した。バイアス磁石の位置は、バイアス磁界が4Oeに設定されるように調整した。ここでは、上記の駆動方法と異なり、磁界検出素子を磁気インピーダンス素子として駆動した。分圧抵抗を付加した磁性薄膜に20MHzの高周波電流を通電し、磁性薄膜の電圧変化を検出した。
【0068】
(実施例5)
上記の部材を用いて図7の磁性体検出センサを作製した。ここでは、ガラス基板の厚みを1mmとした。磁石のNS軸と磁界検出素子の中央の距離は3mmとした。
【0069】
(実施例6)
上記の部材を用いて図8の磁性体検出センサを作製した。2個の磁界検出素子は同一のガラス基板上に形成され、磁石のNS軸と2個の磁界検出素子の中心の距離は2mmとした。
【0070】
(実施例7)
上記の部材を用いて図9の磁性体検出センサを作製した。補助磁石には上記の磁石と同じものを用いた。2個の磁界検出素子の中央の距離は2mm、磁石のNS軸と2個の磁界検出素子の中心の距離は2mmとした。
【0071】
(実施例8)
上記の部材を用いて図10の磁性体検出センサを作製した。調整用磁石には上記の磁石と同じものを用いた。
【0072】
(実施例9)
上記の部材を用いて図11の磁性体検出センサを作製した。軟磁性材料からなる参照磁性体は、0.2mm厚のスペーサー部材を挟んで磁石50の磁極面に配置した。
【0073】
(実施例10)
上記の部材を用いて図12の磁気識別ラインセンサを作製した。補助磁石には上記の磁石と同じものを用いた。夫々の磁性体検出センサ1において、2個の磁界検出素子の中央の距離は2mm、磁石のNS軸と2個の磁界検出素子の中心の距離は2mmとした。
【0074】
(測定例)
上述した全ての実施例において、磁界検出素子の特性曲線上の動作点は動作範囲にあり、軟磁性及び硬磁性検体の検出が可能であった。図13にその一例を示す。図13(a)は測定に用いた磁性検体であり、図13(b)は上述の実施例6の磁性体検出センサでの測定結果である。
【0075】
磁性検体は、紙上に軟磁性紛を付着させフィルムを貼付して保護したもので、ライン/スペースは1mm/1mmとし、図中のAのパターンを基準にBは+15%、Cは+30%の濃度にしたものを用いた。測定は非接触で、磁性検体を磁極面にほぼ平行に対向するように移動して行った。磁性検体と磁極面の距離は0.6mmとした。
【0076】
測定結果である図13(b)において、磁性体が近接する磁石の磁極面の大きさが1mm×1mmであり、パターン間のスペースと同程度であるため、パターンを完全には分離できていないが、3つのパターンに対応するピーク値はほぼ濃度に比例したものであり、高感度な磁気量検知が実現できている。硬磁性材を用いた同じパターンの磁性検体においても同様の測定結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示す斜視図及び本発明の動作を説明するためのグラフである。
【図2】本発明の第2の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第5の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第6の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の第7の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第8の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第9の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第10の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第11の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明のラインセンサの一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施例において測定に用いた磁性検体を示す平面図及び本発明の実施例における測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 磁性体検出センサ
2 磁界検出素子
3 磁性検体
20、21、22 磁界検出素子を構成する磁性薄膜
30、31、32 基板
40、41 磁界検出素子を構成するコイル
50 磁石
51 バイアス磁石
52、53、54 補助磁石
55 調整用磁石
60 参照磁性体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石と少なくとも1つの磁界検出素子とを備える磁性体検出センサであって、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS方向を法線とし、且つ、前記磁石のN極とS極を結ぶ線分と交わる平面上に配置され、該平面に平行な方向を磁界感受方向とし、前記磁石のN極またはS極に磁性体が近接または接触した際の磁界変化を検出することを特徴とする磁性体検出センサ。
【請求項2】
前記磁界検出素子は、前記磁石のNS方向を法線とし、且つ、前記磁石のN極とS極の概ね中点を通る平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性体検出センサ。
【請求項3】
前記磁界検出素子は、磁性薄膜を有し、且つ、前記磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁性薄膜の膜面に平行であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性体検出センサ。
【請求項4】
前記磁界検出素子は、前記磁石のNS軸に対して対称な位置に複数個配置され、前記複数個配置された磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁石のNS軸に対して対称な方向を向いていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項5】
前記磁界検出素子は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置に複数個配置され、前記複数個配置された磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な方向を向いていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項6】
バイアス磁石を有し、該バイアス磁石のNS方向は、前記磁石のNS軸を含む平面の法線方向であり、且つ、前記バイアス磁石のNS磁極間の中点は、前記磁石のNS軸を含む平面上にあることを特徴とする請求項4または5に記載の磁性体検出センサ。
【請求項7】
前記磁界検出素子は、同一基板上に形成されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項8】
前記磁界検出素子は、非磁性基板上に形成され、該非磁性基板の厚みは、前記磁石のNS磁極間距離の半分であり、前記非磁性基板の磁性薄膜形成面と対向する面と、前記磁石の一方の磁極面は、同一平面上にあることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項9】
前記磁石とNS磁極間距離を等しくする複数の補助磁石を有し、前記補助磁石は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置に配置され、且つ、該補助磁石の磁極面は、前記磁石の磁極面と同一平面上にあり、且つ、前記補助磁石の磁化方向は、前記磁石の磁化方向と反平行であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項10】
前記磁石の磁性体が近接または接触する磁極とは逆の磁極側に調整用磁石を配置し、該調整用磁石のNS軸は、前記磁石のNS軸の延長線上にあることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項11】
前記磁石の磁性体が近接または接触する磁極とは逆の磁極側に参照磁性体を配置したことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の磁性体検出センサを複数個並列配置したラインセンサであって、隣接する夫々の磁石の中間に、該磁石と反平行の磁化を有する補助磁石を有し、該補助磁石の磁極面は、前記磁石の磁極面と同一平面上にあることを特徴とする磁性体検出ラインセンサ。
【請求項1】
磁石と少なくとも1つの磁界検出素子とを備える磁性体検出センサであって、前記磁界検出素子は、前記磁石のNS方向を法線とし、且つ、前記磁石のN極とS極を結ぶ線分と交わる平面上に配置され、該平面に平行な方向を磁界感受方向とし、前記磁石のN極またはS極に磁性体が近接または接触した際の磁界変化を検出することを特徴とする磁性体検出センサ。
【請求項2】
前記磁界検出素子は、前記磁石のNS方向を法線とし、且つ、前記磁石のN極とS極の概ね中点を通る平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性体検出センサ。
【請求項3】
前記磁界検出素子は、磁性薄膜を有し、且つ、前記磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁性薄膜の膜面に平行であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性体検出センサ。
【請求項4】
前記磁界検出素子は、前記磁石のNS軸に対して対称な位置に複数個配置され、前記複数個配置された磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁石のNS軸に対して対称な方向を向いていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項5】
前記磁界検出素子は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置に複数個配置され、前記複数個配置された磁界検出素子の磁界感受方向は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な方向を向いていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項6】
バイアス磁石を有し、該バイアス磁石のNS方向は、前記磁石のNS軸を含む平面の法線方向であり、且つ、前記バイアス磁石のNS磁極間の中点は、前記磁石のNS軸を含む平面上にあることを特徴とする請求項4または5に記載の磁性体検出センサ。
【請求項7】
前記磁界検出素子は、同一基板上に形成されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項8】
前記磁界検出素子は、非磁性基板上に形成され、該非磁性基板の厚みは、前記磁石のNS磁極間距離の半分であり、前記非磁性基板の磁性薄膜形成面と対向する面と、前記磁石の一方の磁極面は、同一平面上にあることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項9】
前記磁石とNS磁極間距離を等しくする複数の補助磁石を有し、前記補助磁石は、前記磁石のNS軸を含む平面に対して対称な位置に配置され、且つ、該補助磁石の磁極面は、前記磁石の磁極面と同一平面上にあり、且つ、前記補助磁石の磁化方向は、前記磁石の磁化方向と反平行であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項10】
前記磁石の磁性体が近接または接触する磁極とは逆の磁極側に調整用磁石を配置し、該調整用磁石のNS軸は、前記磁石のNS軸の延長線上にあることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項11】
前記磁石の磁性体が近接または接触する磁極とは逆の磁極側に参照磁性体を配置したことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の磁性体検出センサ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の磁性体検出センサを複数個並列配置したラインセンサであって、隣接する夫々の磁石の中間に、該磁石と反平行の磁化を有する補助磁石を有し、該補助磁石の磁極面は、前記磁石の磁極面と同一平面上にあることを特徴とする磁性体検出ラインセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−184201(P2006−184201A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380177(P2004−380177)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
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