説明

磁性物体検出装置

【課題】 検出範囲を狭くすることなく小形化が可能な磁性物体検出装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、近傍空間に交番磁界を放射させる磁界発生手段と、近傍空間の磁界を電気信号に変換する1又は複数のループアンテナと、各ループアンテナの電気信号に基づいて、磁性物体が近傍空間に存在することにより生じる磁気歪みの有無を分析して磁性物体の有無を判別する判別手段とを有する磁性物体検出装置に関する。そして、磁界発生手段が、棒状であってその側面が着磁されている1又は複数の永久磁石と、各永久磁石を回動させる回動駆動部とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性物体検出装置に関し、例えば、万引き防止用の検知タグ検出用ゲート装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、万引き防止用の装置においては、検知タグが貼付された商品の購買者が、通常2枚の検知タグ検出用ゲート装置の間を通過する際に、検知タグ検出用ゲート側が検知タグから得たデータに基づいて、支払いが済んでいるか否かなどを判別するものである。例えば、支払いが済むと検知タグを通信できない状態に変化させることにより、支払いが済んでいるか否かを判別可能とする。
【0003】
ここで、検知タグと検知タグ検出用ゲート装置との通信に磁界を利用しているものがある(特許文献1参照)。このような磁界を利用した通信方式(一般にEM方式と呼ばれている)に従う検知タグを検出するために、従来では、例えば、幅が70cmで高さが150cm程度の平板状の2枚の検知タグ検出用ゲート装置を1m程度離して平行に設置していた。ここで、幅が70cmで高さが150cm程度の平板状にするのは、検知のために交番磁界を発生する磁界発生コイルが面状コイルであり、その形状が大きく影響しているためである。
【特許文献1】特開平6−342065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁界発生コイルが面状コイルであると、その発生磁界の指向方向がある程度限定されてしまい、検知タグの検出可能範囲が狭くなる。これを避けようとすると、上述したように、磁界発生コイルを大きくしなければならず、その結果、検知タグ検出用ゲート装置が大型化してしまう。
【0005】
通常、検知タグ検出用ゲート装置は、店舗や建物の出入口に設けられるが、上述のような大きさを有する検知タグ検出用ゲート装置が2枚設置されていると、入場時には店舗や建物内部の見通しが悪く購買意欲に影響を与える可能性があり、また、正規の購買者に対して退場時に不快感を抱くようにさせる可能性がある。また、上述のような2枚の検知タグ検出用ゲート装置の設置では大型化のくせに間隔が狭いため、車椅子を利用しているハンディキャップ者などが通過し難いという課題も有する。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、検出範囲を狭くすることなく小形化が可能な磁性物体検出装置を提供しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1の本発明は、近傍空間に交番磁界を放射させる磁界発生手段と、近傍空間の磁界を電気信号に変換する1又は複数のループアンテナと、上記各ループアンテナの電気信号に基づいて、磁性物体が近傍空間に存在することにより生じる磁気歪みの有無を分析して磁性物体の有無を判別する判別手段とを有する磁性物体検出装置であって、上記磁界発生手段が、棒状であってその側面が着磁されている1又は複数の永久磁石と、上記各永久磁石を回動させる回動駆動部とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2の本発明は、請求項1の磁性物体検出装置において、略同一形状の上記ループアンテナが上下方向に配設され、これらループアンテナの中心線を結ぶ方向に沿って、唯一の上記永久磁石が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の本発明は、請求項1の磁性物体検出装置において、略同一形状の上記ループアンテナが上下方向に配設され、これらループアンテナを挟んで反対方向に位置すると共に、長手方向が上記上下方向に略平行になるように上記永久磁石が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の本発明は、請求項1の磁性物体検出装置において、複数の上記ループアンテナを有し、上記判別手段は、複数の上記ループアンテナの電気信号の差信号を得、この差信号に基づいて、磁性物体の有無を判別することを特徴とする。
【0011】
請求項5の本発明は、請求項1の磁性物体検出装置において、上記判別手段による判別対象の磁性物体が、磁性タグであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁界発生手段として永久磁石を利用するので、検出範囲を狭くすることなく小形化が可能な磁性物体検出装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(A)第1の実施形態
以下、本発明に係る磁性物体検出装置を検知タグ検出用ゲート装置に適用した第1の実施形態を図面を参照しながら詳述する。
【0014】
図1は、第1の実施形態の検知タグ検出用ゲート装置の外観を示す概略構成図である。図2は、その筒状体の内部に配置されている構成要素を示す概略構成図である。
【0015】
図1において、第1の実施形態の検知タグ検出用ゲート装置1は、ポール型形状を実現する、円筒又は角筒でなる筒状体2を有しており、この筒状体2の下側に電気処理部5が設けられている。この筒状体2の内部には、図2に示すように、永久磁石10と、2個のループアンテナ4A及び4Bと、モータ11とが設けられている。これら要素の筒状体2内部への固定方法は、任意の方法で良く、限定されないものである。
【0016】
永久磁石10は、側面が周方向に2分されてN極及びS極が着磁されている棒状(例えば円筒状又は平板状であっても良い)のものであり、例えば、1m程度の長さを有する。なお、永久磁石10は、周方向が4分や6分などされ、N極及びS極が交互に着磁されているものであっても良い。
【0017】
モータ11は、電気処理部5の制御下で、例えば、永久磁石10を一方向に定速回転させるものである。なお、回転方向が選択できるものであっても良く、回転ではなく、所定角度の範囲で揺動(往復動)するものであっても良い。
【0018】
永久磁石10は、2個のループアンテナ4A及び4Bの中心を結ぶ線に沿ってしかも近接されて配置されており、この永久磁石10をモータ11によって回転させることにより、交番磁界が発生される。
【0019】
2個のループアンテナ4A及び4Bは、上下に設けられたものである。各ループアンテナ4A、4Bはそれぞれが、例えば、上下方向が440mm、幅方向(左右方向)が90mmの長円(上下端のそれぞれが半径45mmの円弧)状に同数ずつ巻回されている同一のものである。
【0020】
各ループアンテナ4A、4Bは、個別に電気処理部5に接続されていても良く、図3に示すように、ループアンテナ4A及び4Bが縦続接続された状態で電気処理部5に接続されていても良い。
【0021】
図3は、上下に分かれて配置された2個のループアンテナ4A及び4Bの巻回方向が同一の場合の縦続接続例であり、両ループアンテナ4A及び4Bの第1出力端子(正負を取り得るが図面では「+」で表している)同士を接続すると共に、ループアンテナ4Aの第2出力端子(「−」で表している)を接地し、ループアンテナ4Bの第2出力端子を電気処理部5に接続する。
【0022】
ここで、近傍に検知タグが存在しない場合のループアンテナ4A及び4Bの両出力端子間の誘起電圧をそれぞれV1、V2とすると、これら誘起電圧V1、V2には同様なノイズ成分が混入し、図3に示すような縦続接続により電気処理部5に入力された差電圧V1−V2は、ノイズ成分も相殺されてほぼ0となる。近傍に検知タグが存在する場合、ループアンテナ4Aの誘起電圧はV1からV1+ΔV1に変化し、ループアンテナ4Bの誘起電圧はV2からV2+ΔV2に変化し、電気処理部5には入力された差電圧はほぼΔV1−ΔV2となり、この差電圧ΔV1−ΔV2の時間的な変化などから、磁界分布に影響を与える検知タグ(例えば、ワイヤ状タグ)の存在時に生じる磁気歪みを監視し、検知タグの存在を弁別することができる。
【0023】
各ループアンテナ4A、4Bを個別に電気処理部5に接続する装置であれば、電気処理部5が、ループアンテナ4A及び4Bの両出力端子間の誘起電圧の差電圧を例えば内蔵する差動増幅器などを用いて求める。
【0024】
なお、2個のループアンテナ4A及び4Bの誘起電圧の差電圧に基づいて、検知タグが近傍に存在することを検知する考え方については、特願2003−199323号明細書及び図面に記載されている。
【0025】
電気処理部5は、モータ11を介して永久磁石10を回転駆動して交番磁界を発生させたり、上述した差電圧を取り込んだりするものである。電気処理部5自体が、差電圧に基づいて、磁界分布に影響を与える検知タグ(例えば、ワイヤ状タグ)が近傍に存在するか否かを判別するものであっても良い。また、電気処理部5は、例えば、差電圧をデジタル信号に変換して上位装置に送信するようなものであっても良い。
【0026】
この第1の実施形態においては、磁界発生手段として、永久磁石10を用いているが、ループアンテナ4A及び4Bの差動構成による検知精度の向上と相俟って、所望する検出距離を得ることができる。
【0027】
例えば、この実施形態とは異なって、磁界発生コイル(電磁石)を適用しながら細いポール形状を実現しようとすると、磁界発生コイルの幅方向(左右方向)の長さが短くなり、そのような状態で十分大きな交番磁界を十分な範囲に発生させるためには、磁界発生コイルへの供給電力が大きくなる。同じ程度の細さのポール形状を、第1の実施形態のように永久磁石10を利用して実現させる場合、モータ11への電力供給は必要であるが、磁界発生コイルへの供給電力量より少なく、省エネルギータイプの検知タグ検出用ゲート装置を実現できる。
【0028】
以上のように、第1の実施形態によれば、検知タグ検出用ゲート装置をポール型で実現することができ、その結果、検知タグ検出用ゲート装置を小型、軽量、安価なものとすることができ、また、検知タグ検出用ゲート装置の設置自由度を大きくすることができる。さらに、ポール型であるので、大面積の平板状のものより、見栄えが良く、また、複数本が設けられたとしてもその脇を通過し易いものである。
【0029】
因みに、RF方式やAM方式などの他の方式による検知タグ検出用ゲート装置では既にポール型のものがあったが、この実施形態と同様なEM方式の場合には、磁気歪みを利用した検知であるため、検知のために大きな磁界を広い範囲に発生しなければならず、広範囲を確保できる磁界発生コイルを使用していたため、従来は、ポール型のものは存在していなかった。
【0030】
(B)第2の実施形態
次に、本発明に係る磁性物体検出装置を検知タグ検出用ゲート装置に適用した第2の実施形態を図面を参照しながら詳述する。図4は、第2の実施形態の検知タグ検出用ゲート装置の要部構成を示す概略構成図である。
【0031】
第2の実施形態は、2個(3個以上でも良い)の永久磁石10A及び10Bのそれぞれを、2個のループアンテナ4A及び4Bを挟むように、しかも、ループアンテナ4A及び4Bに近接させて配置し、各永久磁石10A、10Bのそれぞれを、対応するモータ11A、11Bによって回転させるものである。2個の永久磁石10A及び10Bの回転は、例えば、電気処理部5(図1参照)の制御下で同期して実行される。
【0032】
2個の永久磁石10A及び10Bを用いることにより、交番磁界として大きいものを発生可能とし、検出可能範囲を広めることができる。
【0033】
この第2の実施形態においても、ポール型構成で検知タグ検出用ゲート装置を形成したことによる効果は、上述した第1の実施形態の場合と同様である。
【0034】
図4では、各永久磁石10A、10Bのそれぞれに対応させてモータ11A、11Bを設けるものを示したが、共通の1個のモータを設け、このモータの回転力を歯車機構などによって2個の永久磁石10A及び10Bに伝達させるようにしても良い。
【0035】
(C)他の実施形態
上記各実施形態の説明でも種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0036】
上記各実施形態では、磁界発生コイル(電磁石)に代えて、永久磁石を適用したものを示したが、磁界発生コイルと永久磁石とを併用するようにしても良い。
【0037】
本発明は、検知タグ検出用ゲート装置をポール型にすることを意図してなされたものであるが、磁界発生に永久磁石を利用するという技術思想を、ポール型でない検知タグ検出用ゲート装置に対しても適用することができる。例えば、多数の永久磁石を直線上又は曲線上に等間隔に配置し、交番磁界が発生される範囲を広範囲にするようにしても良い。
【0038】
上記各実施形態では、ループアンテナが2個有するものを示したが、ループアンテナは1個でも3個以上でも良い。複数のループアンテナを備え、ノイズを相殺できるような差動処理がなされていることが好ましい。
【0039】
検知タグを検出するための、検知タグ検出用ゲート装置の設置数は任意で良い。複数を設置する場合において、各装置が同一のものである必要はない。例えば、異なる実施形態のものが混在して設けられていても良い。また、検知タグ検出用ゲート装置の設置は床置き設置に限定されず、天井などからの垂下状態の設置であっても良い。
【0040】
上記各実施形態は、本発明を、検知タグ検出用ゲート装置に適用したものであったが、本発明は、近傍に磁性物体が存在するか否かを検出する磁性物体検出装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態の検知タグ検出用ゲート装置の外観を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施形態の検知タグ検出用ゲート装置の要部構成を示す概略構成図である。
【図3】第1の実施形態の2個のループアンテナの接続例を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態の検知タグ検出用ゲート装置の要部構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1…検知タグ検出用ゲート装置、2…筒状体、4A、4B…ループアンテナ、5…電気処理部、10、10A、10B…永久磁石、11、11A、11B…モータ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
近傍空間に交番磁界を放射させる磁界発生手段と、近傍空間の磁界を電気信号に変換する1又は複数のループアンテナと、上記各ループアンテナの電気信号に基づいて、磁性物体が近傍空間に存在することにより生じる磁気歪みの有無を分析して磁性物体の有無を判別する判別手段とを有する磁性物体検出装置であって、
上記磁界発生手段が、
棒状であってその側面が着磁されている1又は複数の永久磁石と、
上記各永久磁石を回動させる回動駆動部とを有する
ことを特徴とする磁性物体検出装置。
【請求項2】
略同一形状の上記ループアンテナが上下方向に配設され、これらループアンテナの中心線を結ぶ方向に沿って、唯一の上記永久磁石が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の磁性物体検出装置。
【請求項3】
略同一形状の上記ループアンテナが上下方向に配設され、
これらループアンテナを挟んで反対方向に位置すると共に、長手方向が上記上下方向に略平行になるように上記永久磁石が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁性物体検出装置。
【請求項4】
複数の上記ループアンテナを有し、上記判別手段は、複数の上記ループアンテナの電気信号の差信号を得、この差信号に基づいて、磁性物体の有無を判別することを特徴とする請求項1に記載の磁性物体検出装置。
【請求項5】
上記判別手段による判別対象の磁性物体が、磁性タグであることを特徴とする請求項1に記載の磁性物体検出装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−71610(P2006−71610A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258860(P2004−258860)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(597019609)株式会社 シーディエヌ (22)
【Fターム(参考)】