説明

磁性粒子による高品位鉱の選鉱

本発明は少なくとも1つの第一の材料を、その少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物から分離する方法において、以下の工程:
(A) 少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物を少なくとも1つの界面活性物質と随意に少なくとも1つの分散媒の存在下で接触させて、前記の界面活性物質を少なくとも1つの第一の材料上に結合させる工程、
(B) 随意に、工程(A)で得られた混合物に少なくとも1つの分散媒を添加して、分散液を得る工程、
(C) 工程(A)または(B)による分散液を少なくとも1つの疎水性の磁性粒子で処理して、少なくとも1つの界面活性物質が上に結合している少なくとも1つの第一の材料と、少なくとも1つの磁性粒子とを付着させる工程、
(D) 磁場を印加することによって、工程(C)による付着物を前記の混合物から分離する工程、
(E) 工程(D)によって分離された付着物を分割し、少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの磁性粒子とを別々に得る工程
を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの第一の材料を、その少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物から分離する方法において、前記の第一の材料をまず界面活性物質と接触させて疎水化し、その混合物をさらに、少なくとも1つの磁性粒子と接触させて前記の磁性粒子と疎水化された第一の材料とを付着させ、そしてそれらの凝集物を少なくとも1つの第二の材料から磁場を使用して分離し、その後、少なくとも1つの第一の材料を好ましくは定量的に磁性粒子から離し、その際、好ましくは前記の磁性粒子を再び前記工程に戻すことができる方法に関する。
【0002】
特に、本発明は脈石中に存在する高品位鉱(Werterz)を選鉱する方法に関する。
【0003】
高品位鉱を、それらが含有される混合物から分離する方法は、技術水準から公知である。
【0004】
WO02/0066168号A1は、高品位鉱を、それらが含有される混合物から分離する方法において、それらの混合物の懸濁液またはスラリーを磁性粒子および/または水溶液中で泳動可能な粒子で処理する方法に関する。磁性粒子および/または泳動可能な粒子の添加後、磁場を印加して、凝集物を混合物から分離する。しかしながら、高品位鉱への磁性粒子の結合の程度および結合力は、充分に高い収率と効率を実現する方法としては充分ではない。
【0005】
US4657666号は、高品位鉱の選鉱方法において、それにより脈石中に存在する高品位鉱を磁性粒子と反応させ、疎水性の相互作用に基づいて凝集物を形成させる方法を開示している。前記の磁性粒子は疎水性化合物での処理によって表面が疎水化され、そのため高品位鉱上での結合力が生じる。その後、前記の凝集物は磁場によって混合物から分離される。上記の文献はまた、高品位鉱を1%のエチルキサントゲン酸ナトリウムの界面活性溶液で処理し、その後、磁性微粒子を添加することも開示している。高品位鉱と磁性粒子との分離は、界面活性溶液の形態で高品位鉱上に適用された界面活性物質を破壊することによって行われる。さらには、この方法では、鉱石にC4−疎水化剤を使用するだけである。
【0006】
US4834898号は、非磁性の材料を分離させる方法において、それらと、2層の界面活性物質で取り囲まれた磁性試薬とを接触させることによる方法を開示している。US4834898号はさらに、分離される非磁性粒子の表面電荷が、電解質試薬の種々の性質および濃度によって影響されることを開示している。例えば、前記の表面電荷は多価のアニオン、例えばトリポリリン酸イオンの添加によって変化させられる。
【0007】
S.R.Gray, D.Landberg, N.B.Gray, Extractive Metallurgy Conference パース、1991年10月2〜4日、223−226ページは、小さな金粒子の回収方法において、該粒子をマグネタイトと接触させることによる方法を開示している。前記の接触前に、金粒子をアミルキサントゲン酸カリウムで処理する。少なくとも1つの親水性物質からの金微粒子の分離方法は、この文献内には開示されていない。
【0008】
WO2007/008322号A1は、磁性を用いた分離法によって鉱物から不純物を分離するための、表面が疎水性である磁性粒子について開示している。WO2007/008322号A1によれば、溶液または分散液に、ナトリウムシリケート、ナトリウムポリアクリレート、またはナトリウムヘキサメタホスフェートから選択される分散媒が添加される。
【0009】
本発明の課題は、少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物から、少なくとも1つの第一の材料を効率的に分離できる方法を提供することである。本発明のさらなる課題は、分離される第一の粒子を磁性粒子と第一の材料との間の付着物が充分に安定になるように処理し、分離の際に第一の材料の高い収率を確実にすることである。
【0010】
前記の課題は、少なくとも1つの第一の材料を、その少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物から分離する方法において、以下の工程:
(A) 少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物を少なくとも1つの界面活性物質と随意に少なくとも1つの分散媒の存在下で接触させて、前記の界面活性物質を少なくとも1つの第一の材料上に結合させる工程、
(B) 随意に、工程(A)で得られた混合物に少なくとも1つの分散媒を添加して、適した濃度を有する分散液を得る工程、
(C) 工程(A)または(B)による分散液を少なくとも1つの疎水性の磁性粒子で処理して、少なくとも1つの界面活性物質が上に結合している少なくとも1つの第一の材料と、少なくとも1つの磁性粒子とを付着させる工程、
(D) 磁場を印加することによって、工程(C)による付着物を前記の混合物から分離する工程、
(E) 工程(D)によって分離された付着物を分割し、少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの磁性粒子とを別々に得る工程
を含む方法によって解決される。
【0011】
好ましくは本発明による方法は、少なくとも1つの第一の疎水性材料を、その少なくとも1つの第一の疎水性材料と少なくとも1つの第二の親水性材料とを含む混合物から分離するために用いられる。
【0012】
本発明の範囲内で、"疎水性"とは、相応する微粒子が少なくとも1つの界面活性物質での処理によって後から疎水化されてよいことを意味する。それ自身が疎水性の微粒子を少なくとも1つの界面活性物質での処理によってさらに疎水化することもまた可能である。
【0013】
本発明の範囲内で"疎水性"とは、相応する"疎水性物質"あるいは"疎水化物質"の表面が水と空気との接触角>90゜を示すことを意味する。本発明の範囲内で"親水性"とは、相応する"親水性物質"の表面が水と空気との接触角<90゜を示すことを意味する。
【0014】
本発明による方法の選択的な実施態様において、少なくとも1つの第一の材料は少なくとも1つの疎水性の金属化合物または石炭であり、且つ、少なくとも1つの第二の材料は好ましくは少なくとも1つの親水性の金属化合物である。
【0015】
従って、分離される少なくとも1つの第一の材料は、好ましくは、硫化鉱石、酸化および/または炭素含有鉱石、例えばラン銅鉱[Cu3(CO32(OH)2]、またはマラカイト[Cu2[(OH)2|CO3]]、または貴金属およびそれらの化合物の群から選択される金属化合物であり、それらの上に選択的に界面活性化合物が付着して疎水性の表面特性が得られる。
【0016】
少なくとも1つの親水性の金属化合物は、好ましくは、酸化物型および水酸化物型金属化合物、例えば二酸化ケイ素 SiO2、シリケート、アルミノシリケート、例えば長石、例えばソーダ長石 Na(Si3Al)O8、雲母、例えば白雲母 KAl2[(OH,F)2AlSi310]、石榴石 (Mg,Ca,FeII3(Al,FeIII2(SiO43、Al23、FeO(OH)、FeCO3、Fe23、Fe34、およびさらには類似した鉱物およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
本発明で使用される硫化物型鉱石の例は、例えば、銅藍 CuS、硫化モリブデン(IV)、カルコパイライト(黄銅鉱) CuFeS2、ハン銅鉱 Cu5FeS4、カルコサイト(Chalkozyt)(輝銅鉱) Cu2Sおよびそれらの混合物からなる銅鉱の群から選択される。
【0018】
本発明で使用するのに適した酸化物型金属化合物は、好ましくは二酸化ケイ素 SiO2、シリケート、アルミノシリケート、例えば長石、例えばソーダ長石 Na(Si3Al)O8、雲母、例えば白雲母 KAl2[(OH,F)2AlSi310]、石榴石 (Mg,Ca,FeII3(Al,FeIII2(SiO43、およびさらに類似の鉱物およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
従って、本発明による方法において、好ましくは鉱脈から採掘された未処理の鉱石混合物を使用する。
【0020】
本発明による方法の好ましい実施態様において、少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物は、工程(A)において100nm〜100μmの大きさを有する粒子の形態である(例えばUS5051199号を参照)。好ましい実施態様においては、粉砕によってそれらの粒径を得る。適した方法および装置は当業者には公知であり、例えばボールミル内での湿式粉砕である。従って、本発明による方法の好ましい実施態様は、少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物を工程(A)の前または間に、100nm〜100μmの大きさを有する粒子へと粉砕することを特徴とする。好ましく使用できる鉱石混合物は、少なくとも0.4質量%、特に好ましくは少なくとも10質量%の硫化物型鉱物含有率を有する。
【0021】
本発明で使用される混合物中に存在する硫化物型鉱物の例は、上記のものである。さらには、前記の混合物中に、銅以外の金属の硫化物、例えば鉄、鉛、亜鉛またはモリブデンの硫化物、即ち、FeS/FeS2、PbS、ZnSまたはMoS2が存在してもよい。さらに、本発明によって処理される鉱物混合物中に、金属および半金属の酸化物型化合物、例えばシリケートまたはボレート、あるいは金属および半金属のその他の塩、例えばリン酸塩、硫酸塩、または酸化物/水酸化物/炭酸塩、およびさらなる塩が存在してよく、例えばラン銅鉱[Cu3(CO32(OH)2]、マラカイト[Cu2[(OH)2CO3]]、バライト(BaSO4)、モナザイト(Monacit)((La−Lu)PO4)である。本発明による方法によって分離される少なくとも1つの第一の材料のさらなる例は、貴金属、例えば、好ましくは天然の状態のAu、Pt、Pd、Rh等である。
【0022】
本発明による方法で分離できる、典型的に使用される鉱石混合物は、以下の組成を有する:
約30質量%のSiO2、約10質量%のNa(Si3Al)O8、約3質量%のCu2S、約1質量%のMoS2、残りがクロム酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、およびマグネシウム酸化物。
【0023】
本発明による方法のそれぞれの工程を以下に詳細に記載する:
工程(A):
本発明による方法の工程(A)は、少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物を少なくとも1つの界面活性物質と、随意に少なくとも1つの分散媒の存在下で接触させて、前記の界面活性物質を少なくとも1つの第一の材料上に選択的に結合させることを含む。適しており、且つ好ましい第一および第二の材料は上記のものである。
【0024】
本発明の範囲内で、"界面活性物質"は、分離されない他の微粒子の存在中で、分離される微粒子の表面の状態を疎水性の相互作用によって疎水性の微粒子が付着するように変えることができる物質を意味する。本発明によって使用可能な界面活性物質は、少なくとも1つの第一の材料上に付着することで、第一の材料に適した疎水性をもたらす。
【0025】
好ましくは、本発明による方法においては、一般式(I)
A−Z (I)
[式中、
Aは直鎖または分岐鎖のC3〜C30−アルキル、C3〜C30−ヘテロアルキル、随意に置換されたC6〜C30−アリール、随意に置換されたC6〜C30−ヘテロアルキル、C6〜C30−アラルキルから選択され、且つ、
Zは一般式(I)の化合物を少なくとも1つの疎水性材料上に結合させる基である]
の界面活性物質が使用され、それが少なくとも1つの第一の材料に結合する。
【0026】
特に好ましい実施態様において、Aは直鎖または分岐鎖のC4〜C12−アルキルであり、より特に好ましくは直鎖のC4−またはC8−アルキルである。本発明によれば、随意に存在するヘテロ原子は、N、O、P、S、およびハロゲン、例えばF、Cl、BrおよびIから選択される。
【0027】
さらに好ましい実施態様において、Aは好ましくは直鎖または分岐鎖の、好ましくは直鎖のC6〜C20−アルキルである。さらに好ましくは、Aは好ましくは1〜6個の炭素原子を有する少なくとも1つの置換基が好ましくは2位に存在する分岐鎖のC6〜C14−アルキルであり、例えば2−エチルヘキシルおよび/または2−プロピルヘプチルである。
【0028】
さらに特に好ましい実施態様において、Zはアニオン基 −(X)n−PO32-、−(X)n−PO22-、−(X)n−POS22-、−(X)n−PS32-、−(X)n−PS2-、−(X)n−POS-、−(X)n−PO2-、−(X)n−PO32-、−(X)n−CO2-、−(X)n−CS2-、−(X)n−COS-、−(X)n−C(S)NHOH、−(X)n−S- からなる群から選択され、ここで前記XはO、S、NH、CH2からなる群から選択され、且つn=0、1または2であり、随意に水素、NR4+(前記Rは互いに独立して水素および/またはC1〜C8−アルキルである)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる群から選択されるカチオンを有する。上記のアニオンと相応するカチオンとで、本発明による一般式(I)の電荷中性の化合物が形成される。
【0029】
上記の式においてn=2を意味する場合、2つの同一または異なる、好ましくは同一の基Aが1つの基Zに結合している。
【0030】
特に好ましい実施態様において、キサンテート A−O−CS2-、ジアルキルジチオホスフェート (A−O)2−PS2-、ジアルキルジチオホスフィネート(Dialkyldithioposphinaten) (A)2−PS2-、およびそれらの混合物(前記Aは互いに独立して直鎖または分岐鎖の、好ましくは直鎖のC6〜C20−アルキル、例えばn−オクチル、または分岐鎖のC6〜C14−アルキルであり、ここで前記の分岐鎖は好ましくは2位に存在し、例えば2−エチルヘキシルおよび/または2−プロピルヘプチルである)からなる群から選択される化合物を使用する。それらの化合物中の対イオンとしては、好ましくは水素、NR4+(前記のRは互いに独立して水素および/またはC1〜C8−アルキルである)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、特にナトリウムまたはカリウムからなる群から選択されるカチオンが存在する。
【0031】
さらに特に好ましい一般式(I)の化合物は、ナトリウム−またはカリウム−n−オクチルザンテート、ナトリウム−またはカリウム−ブチルザンテート、ナトリウム−またはカリウム−ジ−n−オクチルジチオホスフィネート、ナトリウム−またはカリウム−ジ−n−オクチルジチオホスフェート、およびそれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0032】
貴金属、例えばAu、Pd、Rh等に対して特に好ましい界面活性物質は、モノチオール、ジチオール、およびトリチオールまたは8−ヒドロキシキノリンであり、それらは例えばEP1200408号B1に記載されている。
【0033】
金属酸化物、例えばFeO(OH)、Fe34、ZnO等、カーボネート、例えばラン銅鉱[Cu(CO32(OH)2]、マラカイト[Cu2[(OH)2CO3]]に対して特に好ましい界面活性物質は、オクチルホスホン酸(OPS)、(EtO)3Si−A、(MeO)3Si−A(前記Aについては上記の意味を有する)である。好ましい実施態様において、本発明による方法は界面活性物質としてヒドロキサメートを金属酸化物の変性のために使用しない。
【0034】
金属硫化物、例えばCu2S、MoS2等に対して特に好ましい界面活性物質はモノチオール、ジチオール、およびトリチオール、またはキサントゲン酸塩である。
【0035】
本発明による方法のさらに好ましい実施態様において、Zは−(X)n−CS2-、−(X)n−PO2-、または−(X)n−S-を意味し、ここで前記XはOであり、且つnは0または1であり、且つカチオンは水素、ナトリウムまたはカリウムから選択される。さらに特に好ましい界面活性物質は、1−オクタンチオール、カリウム−n−オクチルザンテート、カリウム−ブチルザンテート、オクチルホスホン酸、または以下の式(IV)
【化1】

の化合物である。
【0036】
本発明による方法の工程(A)での接触を、当業者に公知の全ての方法によって実施できる。工程(A)を物質そのもので、または分散液で、好ましくは分散液で、特に好ましくは水性懸濁液で実施できる。
【0037】
本発明による方法の1つの実施態様においては、工程(A)を物質そのもので、即ち分散媒の不在下で実施する。
【0038】
例えば、処理される混合物と少なくとも1つの界面活性物質とを共に、さらなる分散媒を用いないで適正な量で添加し、そして混合する。適した混合装置は当業者に公知であり、例えばボールミルなどのミルである。
【0039】
さらに好ましい実施態様においては、工程(A)を分散液で、好ましくは懸濁液で実施する。分散媒としては、その中で工程(A)による混合物が完全に可溶性ではない全ての分散媒が適している。本発明による方法の工程(B)によるスラリーまたは分散液の製造に適した分散媒は、水、水溶性有機化合物、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
特に好ましい実施態様において、工程(A)における分散媒は水である。
【0041】
本発明による方法の工程(A)を、一般に1〜80℃、好ましくは20〜40℃の温度、特に好ましくは室温で実施する。
【0042】
少なくとも1つの界面活性物質を、一般に、望ましい効果を得るために充分である量で使用する。好ましい実施態様においては、少なくとも1つの界面活性物質を、処理される混合物全体に対して好ましくはその都度、0.01〜5質量%の量で添加する。
【0043】
工程(B):
本発明による方法の選択的な工程(B)は、少なくとも1つの分散媒を工程(A)で得られた混合物に添加し、分散液を得ることを含む。
【0044】
1つの実施態様において、工程(A)で得られた混合物は、工程(A)を物質そのもので実施する場合には少なくとも1つの第一の材料と、少なくとも1つの界面活性物質で改質された表面を有する少なくとも1つの第二の材料とを含有する。工程(A)を物質そのもので実施する場合、本発明による方法の工程(B)を実施する、即ち、少なくとも1つの適した分散媒を工程(A)で得られた混合物に添加して分散液を得る。
【0045】
本発明による方法の工程(A)を分散液中で実施する実施態様においては、工程(B)を実施しない。しかしながら、この実施態様において、工程(B)を実施してもよい。即ち、さらなる分散媒を添加して、より低い濃度の分散液を得ることもまた可能である。
【0046】
適した分散媒は、既に工程(A)について挙げた全ての分散媒である。特に好ましい実施態様において、工程(A)における分散媒は水である。
【0047】
従って、工程(B)において、物質そのもので存在する工程(A)による混合物を分散液に変換するか、あるいは既に分散液で存在する工程(A)による混合物を、分散媒の添加によってより低い濃度の分散液に変換するかのいずれかである。
【0048】
一般に、本発明による工程(A)および/または工程(B)において添加される分散媒の量を、攪拌性および/または搬送性の良好な分散液が得られるように選択する。1つの好ましい実施態様において、処理される混合物の量は、スラリーまたは分散液全体に対して100質量%まで、特に好ましくは0.5〜10質量%である。
【0049】
本発明による方法の好ましい実施態様においては、工程(B)を実施するのではなく、工程(A)を水性分散液中で実施し、工程(A)において水性分散液中で、本発明による方法の工程(C)において使用するために適当な濃度を示す混合物を直接的に得る。
【0050】
本発明による方法の工程(B)における分散媒の添加は、本発明によれば、当業者に公知の全ての方法によって実施できる。
【0051】
工程(C):
本発明による方法の工程(C)は、工程(A)または(B)による分散液を少なくとも1つの疎水性の磁性粒子で処理して、少なくとも1つの界面活性物質が上に結合した少なくとも1つの工程(A)における疎水性の第一の材料と、少なくとも1つの磁性粒子とを付着させることを含む。
【0052】
本発明による方法の工程(C)において、当業者に公知の全ての磁性物質および材料を使用できる。好ましい実施態様において、少なくとも1つの磁性粒子は磁性金属、例えば鉄、コバルト、ニッケルおよびそれらの混合物、磁性金属の強磁性合金、例えばNdFeB、SmCo、およびそれらの混合物、磁性酸化鉄、例えばマグネタイト、マグヘマイト、一般式(II)
2+xFe2+1-xFe3+24 (II)
[式中、
MはCo、Ni、Mn、Znおよびそれらの混合物から選択され、且つ
x≦1である]
の立方晶フェライト、六方晶フェライト、例えばバリウムフェライトまたはストロンチウムフェライト MFe619 (前記M=Ca、Sr、Ba)およびそれらの混合物からなる群から選択される。磁性粒子は追加的な外層、例えばSiO2層を有することができる。
【0053】
本願の特に好ましい実施態様において、少なくとも1つの磁性粒子はマグネタイトまたはコバルトフェライト Co2+xFe2+1-xFe3+24 (前記x≦1)である。
【0054】
1つの好ましい実施態様において、本発明による方法の工程(C)において使用される磁性粒子は100nm〜100μm、特に好ましくは1〜50μmの大きさで存在する。前記の磁性粒子を工程(C)において使用する前に、当業者によって公知の方法、例えば粉砕によって相応する大きさに変えることができる。さらに、粒子を沈殿反応によって製造し、反応パラメータ(例えばpH、反応時間、温度)を調節することによって前記の粒径にしてもよい。
【0055】
さらに好ましい実施態様において、少なくとも1つの磁性粒子は少なくとも1つの疎水性化合物によって表面が疎水化されている。好ましくは前記の疎水性の化合物は、一般式(III)
B−Y (III)
[式中、
Bは直鎖または分岐鎖のC3〜C30−アルキル、C3〜C30−ヘテロアルキル、随意に置換されたC6〜C30−アリール、随意に置換されたC6〜C30−ヘテロアルキル、C6〜C30−アラルキルから選択され、且つ
Yは一般式(III)の化合物を少なくとも1つの磁性粒子上に結合させる基である]
の化合物から選択される。
【0056】
特に好ましい実施態様において、Bは直鎖または分岐鎖のC6〜C18−アルキル、好ましくはC8〜C12−アルキル、さらに特に好ましくは直鎖のC12−アルキルである。本発明によれば、随意に存在するヘテロ原子はN、O、P、Sおよびハロゲン、例えばF、Cl、BrおよびIから選択される。
【0057】
さらに特に好ましい実施態様において、Yは−(X)n−SiHal3、−(X)n−SiHHal2、−(X)n−SiH2Hal (前記HalはF、Cl、Br、I)、およびアニオン基、例えば−(X)n−SiO33-、−(X)n−CO2-、−(X)n−PO32-、−(X)n−PO22-、−(X)n−POS22-、−(X)n−PS32-、−(X)n−PS2-、−(X)n−POS-、−(X)n−PO2-、−(X)n−CO2-、−(X)n−CS2-、−(X)n−COS-、−(X)n−C(S)NHOH、−(X)n−S- (前記X=O、S、NH、CH2、且つn=0、1または2)、および随意に水素、NR4+ (前記Rは互いに独立して水素および/またはC1〜C8−アルキル)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または亜鉛からなる群から選択されるカチオン、さらに−(X)n−Si(OZ)3 (前記n=0、1または2、且つZ=電荷、水素または短鎖のアルキル基)からなる群から選択される。
【0058】
上記の式においてn=2を意味する場合、2つの同一または異なる、好ましくは同一の基Bが1つの基Yに結合されて存在する。
【0059】
一般式(III)のさらに特に好ましい疎水性物質は、アルキルトリクロロシラン(6〜12個の炭素原子を有するアルキル基)、アルキルトリメトキシシラン(6〜12個の炭素原子を有するアルキル基)、オクチルホスホン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、またはそれらの混合物である。
【0060】
本発明による方法の工程(C)において、少なくとも1つの疎水性の磁性粒子での溶液または分散液の処理を、当業者に公知の全ての方法によって実施できる。
【0061】
好ましい実施態様において、少なくとも1つの磁性粒子を適した分散媒中で分散させる。
【0062】
適した分散媒としては、その中で少なくとも1つの磁性粒子が完全に可溶性ではない全ての分散媒が適している。本発明による方法の工程(C)によって分散するための適した分散媒は、水、水溶性有機化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは水である。工程(B)において使用されたものと同一の分散媒が、工程(C)において特に好ましい。
【0063】
一般に、本発明によれば、磁性粒子を分散させるための分散媒の量を、攪拌性および/または搬送性が良好なスラリーまたは分散液が得られるように選択できる。好ましい実施態様において、処理される混合物の量はスラリーまたは分散液全体に対して60質量%以下である。
【0064】
本発明によれば、磁性粒子の分散液を当業者に公知の全ての方法によって製造できる。好ましい実施態様においては、分散される磁性粒子、および相応する量の分散媒または分散媒混合物を適した反応器、例えばガラス製の反応器内で一緒にして、そして当業者に公知の装置を用いて、例えば機械駆動の羽根型攪拌機を備えたガラス製の槽内で、例えば1〜80℃の温度、好ましくは室温で攪拌する。
【0065】
工程(B)による分散液の、少なくとも1つの疎水性の磁性粒子での処理を、一般に、当業者に公知の方法で両者の成分を一緒にすることによって実施する。1つの好ましい実施態様において、少なくとも1つの磁性粒子の分散液を、事前に少なくとも1つの界面活性物質で処理した混合物に添加する。さらなる実施態様において、固体の形態の磁性粒子を、処理される混合物の分散液に添加できる。さらに好ましい実施態様において、両方の成分が分散された形態で存在する。
【0066】
工程(C)を一般に、1〜80℃、好ましくは10〜30℃の温度で実施する。
【0067】
工程(C)において、少なくとも1つの磁性粒子は、処理される混合物の疎水性材料上に付着する。両方の成分間の結合は疎水性の相互作用に基づく。少なくとも1つの磁性粒子と混合物の親水性部分との間には、一般に結合性の相互作用は生じないので、それらの成分の間は付着しない。従って、工程(C)の後、前記の混合物中には少なくとも1つの疎水性材料と少なくとも1つの磁性粒子との付着物のほか、少なくとも1つの親水性材料が存在する。
【0068】
工程(D):
本発明による方法の工程(D)は、工程(C)による付着物を混合物から、磁場を印加することによって分離することを含む。
【0069】
好ましい実施態様において、工程(C)による混合物がある反応器内に永久磁石を導入して工程(D)を実施できる。好ましい実施態様において、永久磁石と処理される混合物との間に、非磁性材料の隔壁、例えば反応器のガラス壁がある。本発明による方法のさらに好ましい実施態様においては、電流が流れたときのみ磁性を生じる、電気的にスイッチング可能な磁石を工程(D)で使用する。適した装置は当業者には公知である。
【0070】
本発明による方法の工程(D)を、任意の適した温度、例えば10〜60℃で実施できる。
【0071】
工程(D)の間、好ましくは継続的に、適した攪拌機、例えばテフロン製攪拌棒または羽根型攪拌機を用いて前記の混合物を攪拌する。
【0072】
工程(D)において、随意に、当業者に公知の全ての方法によって工程(C)による付着物を分離でき、例えば懸濁液の親水部を有する溶液を工程(D)で使用された反応器のボトムバルブから抜き取るか、あるいは少なくとも1つの磁石によって固定されていない懸濁液の部分を、チューブを用いて排出する。
【0073】
工程(E):
本発明による方法の工程(E)は、工程(D)で分離された付着物を分割し、少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの磁性粒子とを別々に得ることを含む。本発明による方法の好ましい実施態様において、工程(E)における分割を非破壊で実施する、即ち、分散液中に存在する個々の成分の化学的性質は変化しない。例えば、本発明による分割は疎水化剤の酸化によって、例えば疎水化剤の酸化物または分解物を得つつ引き起こされるのではない。
【0074】
少なくとも1つの磁性粒子が再利用できる形態で得られるように前記の付着物を分割するために適した、当業者に公知の全ての方法によって分割を実施できる。好ましい実施態様において、分割された磁性粒子を工程(C)において再利用する。
【0075】
好ましい実施態様において、本発明による方法の工程(E)における分割を、前記の付着物を有機溶剤、アルカリ化合物、酸化合物、酸化剤、還元剤、界面活性化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される物質で処理することによって実施する。
【0076】
適した有機溶剤の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、例えばn−プロパノールまたはイソプロパノール、芳香族溶剤、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、例えばジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ケトン、例えばアセトン、芳香族または脂肪族炭化水素、例えば飽和炭化水素であって例えば8〜16個の炭素原子を有するもの、例えばドデカンおよび/またはShellsol(登録商標)、ディーゼル燃料、およびそれらの混合物である。ディーゼル燃料材料の主成分は、主にアルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素であって1分子あたり9〜22個の炭素原子を有し、且つ沸点範囲170〜390℃を有するものである。
【0077】
本発明によって使用可能な塩基性化合物の例は、塩基性化合物の水溶液、例えばアルカリおよび/またはアルカリ土類水酸化物、例えばKOH、NaOH、石灰乳の水溶液、アンモニア水溶液、一般式R23N (前記R2は互いに独立して、随意にさらなる官能基によって置換されたC1〜C8−アルキルからなる群から選択される)の有機アミンの水溶液である。好ましい実施態様において、例えばOPSで変性されたCu2Sを分離するために、pH値が13になるまでNaOH水溶液を添加することによって工程(D)を実施する。酸性化合物は鉱酸、例えばHCl、H2SO4、NHO3、またはそれらの混合物、有機酸、例えばカルボン酸であってよい。酸化剤として例えばH22を例えば30質量%の水溶液(電解過酸化水素)として使用できる。チオール変性Cu2Sの分離のためには、好ましくはH22またはNa224を使用できる。
【0078】
本発明によって使用できる界面活性化合物の例は、非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または両性イオン性の界面活性剤である。
【0079】
好ましい実施態様において、疎水性材料と磁性粒子との付着物を、有機溶剤を用いて、特に好ましくはアセトンおよび/またはディーゼルを用いて分割する。この工程を機械的に補助してもよい。好ましい実施態様においては、分割工程を補助するために超音波を使用する。
【0080】
一般に、全ての付着物を分割するために充分な量で有機溶剤を使用する。好ましい実施態様において、1グラムあたり20〜100mlの有機溶剤を使用して疎水材料と磁性粒子との付着物を分割する。
【0081】
本発明によれば、分割後、少なくとも1つの第一の材料および少なくとも1つの磁性粒子は分散液として上記の分割試薬、好ましくは有機溶剤中に存在する。
【0082】
少なくとも1つの磁性粒子を、その少なくとも1つの磁性粒子と少なくとも1つの第一の材料とを含有する分散液から、永久磁石またはスイッチング可能な磁石によって溶液から分離する。この分離の詳細は、本発明による方法の工程(D)と同様である。
【0083】
好ましくは、有機溶剤から分離される第一の材料、好ましくは分離される金属化合物を、前記有機溶剤の留去によって分離する。前記の通りに得られた第一の材料をさらに、当業者に公知の方法によって精製できる。前記の溶剤を精製後、随意に本発明による方法に再度戻すことができる。
【0084】
実施例
実施例1:
10.0gの海砂(Bernd Kraft GmbH;塩酸を用いて精製;チャージ1046306)と、2.02gのCu2S(粉末、325メッシュ;Aldrich ロット01516LD−416)と、1.7質量%の1−オクタンチオール(98%濃度、合成用、Merck製、チャージS20709716)との混合物を、遊星型ボールミル(50個のめのう球(Φ=10mm)を有する500mLのめのう容器)内で30分間、200回転/分で共に粉砕する。その後、前記の混合物を真空乾燥キャビネット(圧力<100mbar)内で16時間、50℃で乾燥させる。
【0085】
この混合物を、ドデシルトリクロロシランで変性されたマグネタイト1.506g(一次粒径:約10nm)と共に1Lの攪拌装置内に添加し、580mLの水および0.1gのドデシルアミン(Alfa Aeser社 ロット:10108955)を混ぜ、そして45分間、150回転/分でテフロン製攪拌棒を用いて混合する。その後、Co−Sm磁石(高さ5cm、長さ2cm、幅2cm)を攪拌装置の外壁上に固定し、そしてさらに30分間、150回転/分で攪拌する。その後、チューブを介して水を除去し、そして前記の装置をさらに10分間、熱風を吹き付けることによって乾燥させる。底にある砂を再計量し、それは9.77gである。磁石上の残留物は1.76gである(使用されたCu2Sの87%)。
【0086】
その後、容器に400mlのアセトンを注ぎ、そして30分間、200回転/分で攪拌する。その後、微細な粒子としてのCu2Sを中に有するアセトンを、チューブを介して排出し、そして乾燥させる。1.59g(Cu2Sの79%)が得られる。
【0087】
実施例2:
実施例1と同様の砂−Cu2S−混合物を製造する。しかしながら、1−オクタンチオールの代わりにカリウムブチルザンテートを使用する。さらなる実験手順を実施例1と同様に実施する。底にある砂の量は9.64gであり、磁石上の残留物の量は1.61g(Cu2Sの80.0%)である。アセトン中で攪拌することによる、磁性粒子と高品位鉱との分離工程の後、1.44gのCu2S(71%)が得られる。
【0088】
実施例3:
1.00gのCu2S(Fluka、99%)と28.00gの石英(Euroquarz、Microsil S8型)との混合物を、30mlの水中の0.03gのオクチルホスホン酸(Rhodia;80%)と共に1時間、粉砕する。同時に、3.00gのマグネタイト(Magnetpigment S0045、BASF、d50=2μm)を1時間、0.015gのオクチルホスホン酸と15mLの水との懸濁液と共に攪拌する。両方の懸濁液を、500mLの水中で共に混合し、1時間攪拌して、そして磁性分離する。磁石上の石英含有量は≦0.5質量%である。引き続き、前記の装置を0.1MのNaOH溶液で満たし、穏やかに振盪し、その後、液体を排出する。乾燥後、Cu2Sの60%が再度得られる。
【0089】
実施例4:
0.5gのPd被覆ZnOを10mLの脱イオン水中に分散させ、その際、溶液は灰色に着色する。その後、0.5gのチオール変性されたFe34を添加し、そして強く攪拌する。1時間後、Co−Sm磁石を容器の外壁に固定し、その際、前記の溶液を最大限に清浄化する。その上澄み液を傾瀉して磁性成分から除き、そして揮発成分を真空中で除去する。0.1gのPd被覆ZnOが回収される、即ち、ZnOの残りは混合物から磁性分離される。
【0090】
実施例5:
1.00gのパラジウム粉末を1.7質量%のオクタンチオールとボールミル内で混合し、そして50mLの脱イオン水中に添加する。その後、4.00gの疎水化されたFe34を添加し、そしてその系を3回、15分間振盪する。その後、Co/Sm磁石を反応容器の側面上に固定する。水を傾瀉して除き、その際、磁石は固体成分をガラス壁上に保持している。その上澄み溶液から、0.11gのパラジウムを単離する。その残り(0.89g、89%に相応)を、相応して溶液から磁性分離し、磁石上に集める。
【0091】
実施例6:
1gのCu2S(−325メッシュ、Aldrich社)を0.065gのカリウムオクチルザンテートと共に、50mLの水中で30分間攪拌する。その後、オクチルホスホン酸で変性されたマグネタイト3g(Magnetic Black345)と、さらに100mLの水とを添加する。1時間後、水を排出し、そして1分間、圧縮空気を残留物上に導く。その後、500mLのディーゼル("スーパーディーゼル燃料")を添加し、そして反応混合物を20分間、強く混合し、その後、さらに10分間、超音波槽内で処理する。その後、ディーゼル相を磁石上に傾瀉して、磁性成分を捕らえる。非磁性成分を有するディーゼル相を濾過に供し、その後、固体の残留物を乾燥させる。固形物0.98gを回収し、それは98%までがCu2Sからなる。Fe34の部分は0.01g未満である。
【0092】
この実験を3回繰り返し、その際、初めの分離サイクルからのマグネタイトのみを使用する。計量されたCu2Sは、0.87g(88%のCu2S含有率)、0.99g(87%のCu2S含有率)、0.93g(95%のCu2S含有率)に相応する。0.01gを上回るFe34含有率の低下は検出されていない。
【0093】
実施例7: ペランブレ(チリ)の天然銅鉱からの再処理
分離される鉱石の初期の含有率:Cu 0.54質量%、Mo 0.029質量%。
【0094】
鉱石の前処理
分離実験の前に、鉱岩石をハンマーミル内で、鉱石の90質量%が125μm未満の大きさの塊になるまで乾式粉砕する。
【0095】
疎水化されたマグネタイト:
Magnetpigment 345(BASF SE)を水溶液中0.5質量%のオクチルホスホン酸で、30分間、室温(RT)にて処理する。固形物を濾別して、導電率が約50μSになるまで温水(50℃)で洗浄し、そして真空中、80℃で乾燥させる。
【0096】
分離手順:
固定された永久磁石の列の上に1Lの被分離物を送りこむ。その流出物をフラクションA1として集める。磁石上に保持される部分を、磁石を動かして1Lの水を用いて洗浄し、そこで排出される固形物をフラクションA2として集める。磁石上で引き続き保持されているフラクションR、並びにフラクションA1およびフラクションA2を、Cu、Fe、およびMoの含有率について分析する。
【0097】
実施例7.1:
100gの鉱石を、スイングミル(160mL ZrO2球、Φ1.7〜2.7mm)内で、60mLの水、0.065gのカリウム−n−オクチルザンテート、および0.04gのShellsol D40を用いて5分間、調製する。その後、イソプロパノール3g中の疎水化マグネタイト3gの懸濁液を粉砕容器に添加し、そしてさらに5分間調製する。粉砕懸濁液を粉砕媒体から分離し、1Lに希釈し、そして前記の分離手順(上記参照)に供する。フラクションR(6.4g)は使用されたマグネタイトの全て、並びに92.4%の銅、および86.1%のモリブデンを含有する。
【0098】
実施例7.2:
プロペラ攪拌機を装備した攪拌容器内で100gの鉱石を900mLの水で懸濁させる。0.065gのカリウム−ジ−n−オクチルジチオホスフィネートを100mLの水、並びに0.04mLのShellsol中に溶かした溶液を攪拌しながら添加し、そして前記の鉱石を1時間、攪拌することによって調製する。その後、イソプロパノール3g中の疎水化マグネタイト3gの懸濁液を添加し、そしてさらに30分間攪拌する。その後、それを上記の分離工程に供する。フラクションR(8.97g)は使用されたマグネタイトの全て、並びに85.8%の銅、および82.3%のモリブデンを含有する。
【0099】
実施例7.3:
スイングミル(160mL ZrO2球、Φ1.7〜2.7mm)内で100gの鉱石を60mLの水、0.065gのカリウム−ジ−n−オクチルジチオホスフィネート、および0.04gのShellsol D40を用いて5分間、調製する。その後、イソプロパノール3g中の疎水化マグネタイト3gの懸濁液を粉砕容器内に添加し、そしてもう一度、5分間、調製する。粉砕懸濁液を粉砕媒体から分離し、1Lに希釈し、そして前記の分離手順(上記参照)に供する。フラクションR(6.9g)は使用されたマグネタイトの全て、並びに94.7%の銅、および83.2%のモリブデンを含有する。前記のフラクションは35%までが黄鉱銅からなる(XRDデータより)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第一の材料を、その少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物から分離する方法において、以下の工程
(A) 少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物を少なくとも1つの界面活性物質と随意に少なくとも1つの分散媒の存在下で接触させて、前記の界面活性物質を少なくとも1つの第一の材料上に結合させる工程、
(B) 随意に、工程(A)で得られた混合物に少なくとも1つの分散媒を添加して、分散液を得る工程、
(C) 工程(A)または(B)による分散液を少なくとも1つの疎水性の磁性粒子で処理して、少なくとも1つの界面活性物質が上に結合している少なくとも1つの第一の材料と、少なくとも1つの磁性粒子とを付着させる工程、
(D) 磁場を印加することによって、工程(C)による付着物を前記の混合物から分離する工程、
(E) 工程(D)によって分離された付着物を分割し、少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの磁性粒子とを別々に得る工程
を含む方法。
【請求項2】
第一の材料が疎水性の金属化合物または石炭であり、且つ、第二の材料が親水性の金属化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
界面活性物質が一般式(I)
A−Z (I)
[式中、
Aは直鎖または分岐鎖のC3〜C30−アルキル、C3〜C30−ヘテロアルキル、随意に置換されたC6〜C30−アリール、随意に置換されたC6〜C30−ヘテロアルキル、C6〜C30−アラルキルから選択され、且つ、
Zは一般式(I)の化合物を少なくとも1つの疎水性材料上に結合させる基である]
の物質であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Zはアニオン基 −(X)n−PO32-、−(X)n−PO22-、−(X)n−POS22-、−(X)n−PS32-、−(X)n−PS2-、−(X)n−POS-、−(X)n−PO2-、−(X)n−PO32-、−(X)n−CO2-、−(X)n−CS2-、−(X)n−COS-、−(X)n−C(S)NHOH、−(X)n−S- からなる群から選択され、前記XはO、S、NH、CH2からなる群から選択され、且つn=0、1または2であり、随意に水素、NR4+(前記Rは互いに独立して水素および/またはC1〜C8−アルキルである)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる群から選択されるカチオンを有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの疎水性の金属化合物が、硫化物型鉱石、酸化物型および/または炭素含有鉱石の群から選択されることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの親水性の金属化合物が、酸化物型または水酸化物型金属化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの磁性粒子が、磁性金属、およびそれらの混合物、磁性金属による強磁性合金、およびそれらの混合物、磁性酸化鉄、一般式(II)
2+xFe2+1-xFe3+24 (II)
[式中、
MはCo、Ni、Mn、Znおよびそれらの混合物から選択され、且つ
x≦1である]
の立方晶フェライト、六方晶フェライト、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
分散媒が水であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの第一の材料と少なくとも1つの第二の材料とを含有する混合物を、工程(A)の前または間に、100nm〜100μmの大きさを有する粒子へと粉砕することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−537818(P2010−537818A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523489(P2010−523489)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061503
【国際公開番号】WO2009/030669
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】