説明

磁性色素

【課題】生体物質の固定化に適した材料、および日常の診断方法における使用にも適した、生体物質とくに核酸を単離するための簡便な方法を提供すること。
【解決手段】核酸における酵素反応を行う方法であって、ここで液体中に核酸を含む試料由来の核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により単離され、その後酵素反応における基質として使用され、該核酸がカオトロピック塩の存在下で単離される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ガラス表面を有する磁性粒子、およびカオトロピック(Chaotoropen)塩の存在下でガラス粒子を用いて、生体物質、とくに核酸を精製する方法である。本発明のもう1つの主題は、これらの生体物質を単離する方法、および生体物質を濃縮し、高い塩濃度を有する溶液から低い塩濃度を有する溶液に移動させる方法である。
【背景技術】
【0002】
多くの生体物質、とくに核酸は、自然環境から単離することに関して特有の難題がある。一方は、多くの生体物質が、非常に低い濃度でしばしば存在するか、もう1つは、多くの生体物質の単離もしくは測定を困難にする多くの固体状物質および溶解物質の存在下にしばしば見られる。
【0003】
このため、近年、核酸を自然環境から単離する多くの方法および材料が提案されている。例えば、非特許文献1には、粉砕フリントガラス中、ヨウ化ナトリウムの存在下でアガロースゲル中で核酸を結合させる方法が提案されている。
【0004】
過塩素酸ナトリウムの存在下でガラス粉末上の細菌由来のプラスミドDNAの精製が、非特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献1には、酢酸を用いてファージ粒子を沈殿させ、該ファージ粒子を過塩素酸塩で溶菌させることによるガラス繊維フィルター上での1本鎖M13ファージDNAの単離が記載されている。ガラス繊維フィルターに結合した核酸を洗浄し、ついでメントール含有トリス/EDTA緩衝液中で溶出させる。
【0006】
ラムダファージからDNAを精製する同様の方法が、非特許文献3に記載されている。
【0007】
従来技術から公知である方法は、カオトロピック塩溶液中でガラス表面に核酸を選択的に結合させ、該核酸をアガロース、タンパク質または細胞残渣などの混入物質から分離することを特徴とするものである。従来技術により混入物質からガラス粒子を分離するためには、該粒子を遠心分離するか、液体をガラス繊維フィルターに通す。しかしながら、この工程は、大量の試料を処理することに使用することを妨げる限定する工程である。
【0008】
塩とエタノールの添加によって沈殿させた後で、磁性粒子を用いて核酸を固定することが非特許文献4および特許文献2に記載されている。この方法においては、核酸を磁性粒子とともに凝集させる。磁場をかけ、洗浄工程を実施することによって、凝集体を元の溶媒から分離する。1回の洗浄工程終了後、核酸をトリス緩衝液に溶解させる。しかしながら、この方法は、沈殿が核酸に対して選択的でないという欠点がある。それどころか、様々な固体状物質や溶解物質も凝集してしまう。その結果、この方法は、存在する可能性のある特異的酵素反応に対する有意量の阻害剤を除去する目的に使用することができない。
【0009】
磁性粒子を埋め込んだ多孔性ガラスが特許文献3に記載されている。
【0010】
多孔性粒子状ガラスマトリックス中に磁性粒子を含んでいる磁性多孔性ガラスであって、ストレプトアビジン含有層で被覆されたガラスも市販されている。この製品は、例えば、タンパク質または核酸などの生体物質が、ビオチンに共有結合的に結合するように複合体調製工程において修飾されたものである場合には、生体物質を単離する目的に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第3734422号明細書
【特許文献2】国際公開第91/00212号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願第4,233,169号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Proc. Natl. Acad. USA 76, 615-691 (1979)
【非特許文献2】Anal. Biochem. 121, 382-387 (1982)
【非特許文献3】Anal. Biochem. 175, 196-201 (1988)
【非特許文献4】Anal. Biochem. 201, 166-169 (1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、生体物質の固定化に適した材料、および日常の診断方法における使用にも適した、生体物質とくに核酸を単離するための簡便な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明は、
〔1〕核酸における酵素反応を行う方法であって、ここで液体中に核酸を含む試料由来の核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により単離され、その後酵素反応における基質として使用され、該核酸がカオトロピック塩の存在下で単離される、方法、
〔2〕(a)液体中に核酸を含む試料中の核酸を、ガラス表面を有する磁性粒子に、該核酸が天然型で直接表面に結合できる条件下で吸着させる工程、
(b)結合した核酸を該液体から分離し、その後洗浄溶液を用いて精製する工程、
(c)任意に、乾燥する工程、
(d)溶出バッファーを用いて溶出する工程、および
(e)溶出された核酸を酵素反応における基質として使用する工程
を含む、〔1〕記載の方法、
〔3〕前記核酸がDNAまたはRNAであることを特徴とする、〔1〕または〔2〕記載の方法、
〔4〕酵素反応のインヒビターが単離の間に取り除かれることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕いずれか記載の方法、
〔5〕前記磁性粒子が100μm未満の平均粒子径を有することを特徴とする、〔1〕〜〔4〕いずれか記載の方法、
〔6〕前記磁性粒子が、複合材料の内部核または鉄の核を含み、その上に外部ガラス表面が適用されていることを特徴とする、〔1〕〜〔5〕いずれか記載の方法、
〔7〕前記核が、酸化鉄が組み込まれた、結晶性の構造またはセラミックのもしくはガラス様の構造から構成されることを特徴とする、〔6〕記載の方法、
〔8〕前記核がマグネタイト(Fe)またはFeからなることを特徴とする、〔6〕または〔7〕記載の方法、
〔9〕前記磁性粒子が強磁性であることを特徴とする、〔1〕〜〔8〕いずれか記載の方法、
〔10〕カオトロピック塩の濃度が、2〜8mol/l、好ましくは4〜6mol/lであることを特徴とする、〔1〕〜〔9〕いずれか記載の方法、
〔11〕前記カオトロピック塩が、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジウム、イソチオシアン酸グアニジウムおよび塩酸グアニジウムから選択されることを特徴とする、〔1〕〜〔10〕いずれか記載の方法、
〔12〕前記試料が前記磁性粒子と混合され、結合のために十分な時間、好ましくは10秒〜30分間インキュベートされることを特徴とする、〔1〕〜〔11〕いずれか記載の方法、
〔13〕前記核酸がインキュベーション後、磁界の助けを借りて液体から分離されることを特徴とする、〔12〕記載の方法、
〔14〕前記磁性粒子が1回または数回、洗浄溶液を用いて洗浄されることを特徴とする、〔1〕〜〔13〕いずれか記載の方法、
〔15〕乾燥工程が最後の洗浄工程の後に行われ、任意にアセトンを用いて前処理されることを特徴とする、〔14〕記載の方法、
〔16〕精製された核酸が、好ましくは低い塩含有量、特に好ましくは0.2mol/l未満の塩含有量の溶出バッファーを使用して、磁性粒子から溶出されることを特徴とする、〔14〕または〔15〕記載の方法、
〔17〕前記溶出バッファーがTrisを含むか、または脱イオン水であることを特徴とする、〔16〕記載の方法、
〔18〕配列決定、放射性もしくは非放射性標識、1以上の配列の増幅、転写、標識されたプローブ核酸とのハイブリダイゼーション、翻訳、またはライゲーションが酵素反応として行われることを特徴とする、〔1〕〜〔17〕いずれか記載の方法、
〔19〕単一試験管法として行われることを特徴とする、〔1〕〜〔18〕いずれか記載の方法、
〔20〕自動化されていることを特徴とする、〔1〕〜〔19〕いずれか記載の方法、
〔21〕酵素反応における基質としての核酸の使用であって、前記核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により、天然型で試料から単離されていることを特徴とし、前記核酸がカオトロピック塩の存在下で単離される、使用、
〔22〕前記核酸が、高い塩濃度を有する溶液から低い塩濃度を有する溶液に移されていることを特徴とする、〔21〕記載の使用、
〔23〕前記核酸が濃縮されていることを特徴とする、〔21〕または〔22〕記載の使用、
〔24〕(a)ガラス表面を有する磁性粒子、
(b)試料を溶解させるためのカオトロピック塩溶液、
(c)任意に、洗浄溶液、および
(d)任意に、溶出バッファー
を含む、試料から核酸を単離するための試薬組成物、
〔25〕前記磁性粒子が100μm未満の平均粒子径を有することを特徴とする、〔24〕記載の組成物、
〔26〕前記磁性粒子が、複合材料の内部核または鉄の核を含み、その上に外部ガラス表面が適用されていることを特徴とする、〔24〕または〔25〕記載の組成物、
〔27〕前記核が、酸化鉄が組み込まれた、結晶性の構造またはセラミックのもしくはガラス様の構造で構成されることを特徴とする、〔26〕記載の組成物、
〔28〕前記核がマグネタイト(Fe)またはFeからなることを特徴とする、〔26〕または〔27〕記載の組成物、
〔29〕前記磁性粒子が強磁性であることを特徴とする、〔24〕〜〔28〕いずれか記載の組成物、
〔30〕前記カオトロピック塩溶液中のカオトロピック塩の濃度が、2〜8mol/l、好ましくは4〜6mol/lであることを特徴とする、〔24〕〜〔29〕いずれか記載の組成物、
〔31〕前記カオトロピック塩が、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジウム、イソチオシアン酸グアニジウムおよび塩酸グアニジウムから選択されることを特徴とする、〔24〕〜〔30〕いずれか記載の組成物、
〔32〕前記溶出バッファーが低い塩含有量、好ましくは0.2mol/l未満の塩含有量を有することを特徴とする、〔24〕〜〔31〕いずれか記載の組成物、
〔33〕前記溶出バッファーがTrisを含むかまたは脱イオン水であることを特徴とする、〔24〕〜〔32〕いずれか記載の組成物、
〔34〕試料から核酸を天然型で単離するための、〔24〕〜〔33〕いずれか記載の試薬組成物の使用、
〔35〕前記試料が臨床試料であることを特徴とする、〔34〕記載の使用、
〔36〕前記試料が血液、血清、口腔洗液、尿、脳漿、痰、糞便、生検標本および骨髄試料から選択されることを特徴とする、〔34〕または〔35〕記載の使用、
〔37〕前記試料が環境分析、食品分析また分子生物学的研究の分野からの試料であり、好ましくは微生物培養物、ファージ溶解物または増幅方法(例えばPCR)の産物由来の試料であることを特徴とする、〔34〕記載の使用、
〔38〕前記核酸が酵素反応のための基質として使用されることを特徴とする、〔24〕〜〔37〕いずれか記載の使用、
〔39〕前記核酸が、配列決定、放射性もしくは非放射性標識、1以上の配列の増幅、転写、標識プローブ核酸とのハイブリダイゼーション、翻訳またはライゲーションのための基質として使用されることを特徴とする、〔34〕〜〔38〕いずれか記載の使用、
〔40〕液体中に核酸を含む試料由来の核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により天然型で単離され、その後酵素反応における基質として使用される、〔1〕記載の方法
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生体物質の固定化に適した材料、および日常の診断方法における使用にも適した、生体物質とくに核酸を単離するための簡便な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、細胞を含む試料からの核酸の単離を示したものである。
【図2】図2は、アガロースゲルでの本発明の単離核酸の分離を示したものである。
【図3】図3は、本発明による単離およびPCR法による増幅後の反応生成物の分離を示したものである。
【図4】図4は、実施例4の結果を生じたゲルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の主題は、実質的に無孔であるか、直径10nm未満の孔を有する外側ガラス表面を有する磁性粒子である。本発明のさらに別の主題は、ガラス表面を有する強磁性粒子、生体物質、とくに核酸を単離する方法、および磁性ガラス粒子の製造方法である。
【0018】
専門家によると粒子とは、小さな直径を有する固体状物質をいう。このような粒子は、しばしば色素と呼ばれることもある。本発明によれば、これらの粒子は、100μm未満の平均粒径を有するものがとくに適している。より好ましくは、粒子は、10〜60μmの平均粒径を有する。粒径の分布は、好ましくは、比較的均一である。特に、<10μmまたは>60μmのサイズの粒子が、ほとんどないものがよい。
【0019】
磁石、すなわち、例えば、強磁性材料または超常磁性材料などに引きよせられるこれらの物質を磁性物質という。さらに、例えば、フェライトなど、弱い磁性を有するといわれる材料も磁性物質であるものとする。本発明においては、特に強磁性体が予備磁化されていないならば、強磁性材料がとくに好ましい。ここでいう予備磁化とは、磁石と接触させて残留磁気を増大させることをいうものとする。マグネタイト(Fe34 )またはFe23 などの強磁性物質がとくに好ましい。
【0020】
粒子の外表面とは、粒子自体を横切らない垂線を外側の粒子環境方向に引くことができる連続面であるものとする。
【0021】
孔とは、粒子の外表面に存在するくぼみであるものとする。該表面は、表面上のくぼみ内に引かれた垂線が、少なくとも1回以上、粒子に隣接する環境に向かう方向に粒子を横切るように、粒子内に到達する。さらに、孔は、該孔の半径より大きい深さまで粒子内に到達する。
【0022】
本発明のガラスは、ケイ素を含むアモルファス物質であるものとする。ガラスは、
23 (0〜30%)
Al23 (0〜20%)
CaO (0〜20%)
BaO (0〜10%)
2O (0〜20%)
2O (0〜20%)
MgO (0〜18%)
Pb23 (0〜15%)
などの他の物質を含んでもよい。
【0023】
ガラスは、Mn23 、TiO2 、As23 、Fe23 、CuO、CoOなど多数の他の酸化物を、より小さいパーセンテージ(0〜5%)で含有することもできる。ホウケイ酸ガラス、フリントガラスまたはシリカの組成物からできている表面がとくに有効であることが明らかにされている。核酸収量の点でとくに好ましいものであるホウケイ酸ガラスは、25%を超えるホウ酸化物含有率を有する。70/30のSiO2 /B23 組成を有するガラスがとくに好ましい。ゲルゾルプロセスを用いて形成し、ついで乾燥させ圧縮したガラスが本発明においてとくに好ましい。このプロセスの基本原理は公知であり、例えば、ブリンカーとシェレル[(C.J. Brinker, G.W. Scherer)、"Sol Gel Science" - The Physics and Chemistry of Sol Gel Processing", Academic Press Inc. 1990]、Sol-Gel Optics, Processing and Applications, リサ クライン(Lisa C. Klein)編、Kluwer Academic Publishers 1994 p. 450 ff 、独国特許出願公開第1941191号明細書、独国特許出願公開第3719339号明細書、独国特許出願公開第4117041号明細書および独国特許出願公開第4217432号明細書に記載されている。しかしながら、磁性粒子については今日まで原理が記載されていない。このプロセスを用いて、生体物質、とくに核酸を単離する目的に使用した場合に非常に驚くべき特性を示す磁性粒子を製造することができるという事実は、予想外であった。ゲルゾル工程では、例えば、SiO2 、B23 、Al23 、TiO2 、ZrO2 、GeO2 などのネットワーク形成成分のアルコキシドを、例えば、アルコール溶液中でその他の成分の酸化物および塩と混合し、ついで加水分解させる。下記式は、ホウケイ酸アルミニウムナトリウムガラスの製造方法を説明したものである:
【0024】
【化1】

【0025】
水を加えて、原料成分の加水分解工程を開始させる。アルカリイオンがケイ酸エステルの加水分解速度に対して触媒作用を示すため、反応は比較的迅速に進行する。ゲルが生成したら、熱工程によって乾燥、高密度化させて、ガラスを形成させることができる。
【0026】
ゾル:色素比は、本発明によって提供される磁性色素の収量に大きな影響を及ぼす。この比は、生成物が圧送または噴霧可能な程度に小さいものでなければならないという事実によって制限される。色素の比率が小さすぎると、例えば、本来小さいはずの非磁性物質の比率が大きくなりすぎて、干渉を引き起こす。色素10〜25g:ゾル100mlの比率が色素収量の点で有用であることが判明した。
【0027】
粉末を製造するためには、好ましくはスラリーをノズルを通して噴霧し、降下中のエアゾルを乾燥させる。ノズルは、好ましくは、スラリーの乾燥速度を速めるために加熱する。ノズル形状に応じて、ノズル温度は、好ましくは120〜200℃である。十分な蒸発速度でしかも過熱が避けられる速度を用いるという妥協が見いだされている。
【0028】
収量を最適化するためには、高密度化温度をできるだけ高くすべきである。しかしながら、この温度が高すぎると、粒子どうしがくっつき凝集体ができてしまい、この凝集体を篩い分けによって除去しなければならない。高すぎる温度で粒子をさらに処理すると、磁性の性質のロスが生じる。したがって、高すぎる温度は避けるべきである。
【0029】
実質的に無孔の表面とは、孔(前記記載)がある表面が、その面積の5%未満である孔(前記記載)がある表面が、好ましくは2%未満であり、0.1%未満であることがとくに好ましい。孔が存在する場合、好ましくは10nm未満の直径を有するものであり、1nm未満が特に好ましい。
【0030】
TiO2で被覆された雲母核上およびTiO2で被覆された雲母核にマグネタイト粒子が固定化されたものを含む粒子が、本発明において特に好ましい。この設計においては、生成した複合材料はガラス層で取り囲まれている。該核とマグネタイト粒子はどちらも結晶性かつ非孔性である。マグネタイト粒子によって占有されていない雲母表面上の空間は、マグネタイト粒子の先端部より厚いガラス層で被覆されることで、基本的に非孔性のガラス表面ができる。
【0031】
この磁性粒子の非孔性は外表面だけによるものであって、粒子の内部に基づかない。したがって、該粒子は、その表面を実質的に無孔のガラスまたは直径が10nm未満の孔を有するガラス表面によって囲まれている場合に限り、内部が多孔性でありえる。
【0032】
驚くべきことに、本発明によって提供される該磁性粒子は、試料から生体物質を単離するために特に適している。とくに長鎖核酸をそれらの上に固定化したときに、破壊されない−または極小だけしか破壊されない。また、核物質は天然物の供給源であるため、生態系への影響の懸念もほとんど引き起こさない。さらに、本発明の粒子を安価で容易に製造する。
【0033】
本発明のさらに他の目的は、ガラス表面を有する強磁性粒子を提供することである。超常磁性粒子が従来技術に記載されている。ガラス表面で被覆された強磁性粒子は、生体物質を単離するための顕著な利点を提供することが明らかにされている。強磁性粒子があらかじめ磁場に接触されていない場合、重力だけがそれらを沈澱させうる力となる。これらの粒子は、溶液を振とうすることによって容易かつ迅速に再懸濁させることができる。磁場を利用しない沈澱方法は、粒子の表面上の生体物質の固定化よりも遅い速度で進行することが好ましい。これは核酸の場合にとくにあてはまる。強磁性粒子は、磁石を用いて試料液中の特定の位置で容易に採取することができる。次いで、液体を粒子、すなわち固定化生体物質から分離する。
【0034】
本発明によって提供される強磁性粒子のガラス表面は、無孔であってもよいし、孔を有していてもよい。本発明によって提供される磁性粒子については、前記の理由により、強磁性粒子の外表面も実質的に無孔であるか、直径10nm未満の孔を有するものであることが好ましい。本発明によって提供される強磁性粒子はまた、好ましくは10〜60μmの粒径を有しており、20〜50μmが特に好ましい。10μm未満、特に好ましくは1nm未満の直径である表面孔(存在する場合)を持つ粒子が特に好ましい。本発明の強磁性粒子の具体例として、雲母とガラス層で囲まれたマグネタイト粒子からできている前記複合材料が挙げられる。
【0035】
本発明のさらに他の目的は、液体中に生体物質を含む試料を、その生体物質が粒子表面に結合する条件下で、本発明の磁性粒子または本発明の強磁性粒子と接触させる工程、および生体物質を液体から分離する工程による生体物質を単離する方法である。
【0036】
生体物質とは、粒子状または分子状の物質をいうものとする。これらのものとしては、とくにウイルスまたは細菌などの細胞、ならびに単離されたヒトおよび動物の白血球などの細胞、およびハプテン、抗原、抗体、および核酸などの免疫学的に活性な低分子量および高分子量化合物などが挙げられる。DNAやRNAなどの核酸がとくに好ましい。
【0037】
本発明の試料としては、血液、血清、口腔洗液、尿、脳漿、痰、糞便、生検標本、および骨髄試料などの臨床試料などが挙げられる。試料は、例えば、細菌培養物、ファージ溶菌物およびPCRなどの増幅方法の産物に由来する環境分析、食品分析、および分子生物学研究の用途に使用されるタイプのものであってもよい。
【0038】
本発明記載の粒子は、外側のガラス表面を付された内部の核を有する。該核は、複合物質であるかまたは単純な鉄の核であってもよい。該核は、酸化鉄を固定した結晶性、セラミック性またはガラス様の構造からなることもできる。
【0039】
天然または修飾状態の生体物質を単離するために、前記方法を用いることができる。天然の生体物質とは、天然由来の生体物質と比較して構造が不可逆的に変化していない物質であるものとする。しかしながら、このことは、試料の他の成分を修飾することができないことを意味するものではない。細胞を単離する場合、例えば、細胞を取り囲む培地は修飾することができるが、細胞そのものは修飾することができない。核酸を単離する場合は、天然型、すなわち未変性で、反応性の基と結合させることによって切断や修飾されていないものを、切断、修飾するべきである。したがって、天然の生体物質の概念には、とくにビオチニル化核酸は含まれない。天然の生体物質の具体例としては、ファージDNAまたは血液由来の細胞の核酸などが挙げられる。
【0040】
修飾された生体物質としては、例えば、反応性基、検出可能基または固定化可能基をつけることによって修飾された核酸など、天然には存在しない物質が挙げられる。この例としてはビオチン化核酸である。
【0041】
試料を本発明の単離方法において前処理しないで使用することができる。しかしながら、多くの場合、適当な方法を用いて試料を溶菌させることで、試料に含まれている生体物質を遊離させるべきである。試料を溶菌させる方法は専門家にとって公知であり、化学的、酵素的、または物理的な手段であってよい。これらの方法を組み合わせたものも同様に適用可能である。例えば、溶菌は、超音波、高圧、剪断力、アルカリ、デターゼント(detergenzien)およびカオトロピック塩溶液を用いたり、プロテイナーゼまたはリパーゼにより実施することができる。
【0042】
核酸を得るための溶菌方法に関して、サムブルーク(Sambrook)ら:Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring HarbourLaboratory Press, Cold Spring Harbour, NY、およびアウスベル(Ausubel)ら:Current Protocols in Molecular Biology 1987, J. Viley and Sons, NYを特に参考にした。
【0043】
単離される生体物質に付け加えて、細胞残渣、タンパク質、塩および単離されないその他の物質などの成分も試料の液体中に含まれていてよい。この試料は、生体物質を天然型で含んでいることが好ましく、標的の生体物質が、粒子表面に結合するような条件下で粒子と接触させる。このための条件は、関与する生体物質のタイプに依存するが、基本的には公知である。条件は、生体物質を表面に結合させる方法にも依存する。例えば、免疫相互作用を結合に利用する場合、免疫複合体の形成に適する条件を選ばねばならない。修飾核酸を使用する場合、結合は、ストレプトアビジン被覆表面との結合によって、例えば、ビオチンなど修飾に関与する核酸の基を介して起こりうる。しかしながら、とくに核酸を用いた場合は、核酸は修飾する必要がなく、天然の核酸ですら結合することができるという他の理由により、核酸をガラスに直接結合させることが好ましい。ガラス粒子への天然核酸の結合方法は、従来技術において記載されている方法と同様のものであってよい。該方法は、2〜8mol/l、好ましくは4〜6mol/lの濃度を有するカオトロピック塩の存在下で実施することが好ましい。カオトロピック塩は、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジウム、イソチオシアン酸グアニジウムまたは塩酸グアニジウムであってよい。他の化合物も可能である。
【0044】
試料を粒子と接触させるためには、該試料を粒子と混合し、結合が起きるのに十分な時間にわたりインキュベートする。専門家は、非磁性粒子での処理を行う方法のインキュベーション工程の継続時間を常に熟知している。この工程は、表面上に固定化された生体物質の量を経時的に測定することによって最適化することができる。10秒〜30分の保温時間が、核酸に適している。
【0045】
磁性粒子のサイズおよびタイプに依存して、該粒子がインキュベーションの間に液体からそれ自身を分離するか、懸濁液が長時間インタクトのまま残る。粒子が非常に小さく、超常磁性を有するものである場合、懸濁液はさらに長時間インタクトのまま残る。粒子が大きいサイズのものである場合、粒子は、インキュベーション中、液体からゆっくりと分離する。とくに強磁性粒子が関与する場合は、この天然型の凝集体(sich solche Aggregate)ができる。好ましい態様のように強磁性粒子があらかじめ磁化されていない場合は、非常に緩やかな分離が保証される。
【0046】
固定化は、固定化対象の物質の溶解度を低下させることによる沈殿によって実施されないことが好ましい。むしろ、固定化は、生物特異的相互作用(捕捉分子)または吸着に基づくものがよい。これにより、混入物質の非特異的含まれることを大幅に防止する。
【0047】
インキュベーション後、生体物質を液体から分離する。これは、一般に、磁場を用いて磁性粒子に結合した物質を分離することによって達成される。例えば、磁性粒子は、インキュベーションを実施した容器の壁に引っぱることができる。次いで、磁性粒子に結合していない試料成分を含む液体を除去することができる。使用する除去方法は、インキュベーションを実施した容器のタイプによって決まる。適当な工程としては、ピペット分取や吸引を介した液体の除去などが挙げられる。
【0048】
次いで、所望により、洗浄液を用いて1回以上、磁性粒子を精製することができる。生体物質を粒子表面から遊離させないが、不要な混入物質をできるだけ洗い落とす洗浄液を使用する。この洗浄工程は、粒子とともに洗浄液を保温することによって行なう。例えば、振とうや、最初の磁場と同一でない磁場をかけることなどによってこの工程の途中で粒子を再懸濁させることが好ましい。混入した洗浄液は、前記生体物質結合工程における試料の場合と全く同様にして分離することが好ましい。
【0049】
最後の洗浄工程終了後、磁性粒子を真空中で短時間乾燥させるか、または液体を蒸発させることができる。アセトンを用いた前処理工程も実施することができる。
【0050】
このようにして精製した生体物質は、所望により、磁性粒子から分離することができる。この工程も、生体物質を磁性粒子に結合させた方法に依存する。生体物質が天然の核酸であって、磁性粒子がガラス被覆粒子である場合、塩含有量の低い溶出緩衝液を用いて、本発明に従い、粒子から核酸を除去することができる。この性質を有する緩衝液は、独国特許出願公開第3724 442号明細書およびAnalytical Biochemistry 175, 196-201 (1988)から公知である。塩含有量の低い溶出緩衝液はとりわけ、0.2mol/lの含有量を有する緩衝液である。とくに好ましい態様においては、溶出緩衝液はトリスを含むものである。別の特別な態様においては、溶出緩衝液は脱ミネラル化水である。
【0051】
さらに別の態様においては、細胞(例えば、ウイルス粒子や原核細胞または真核細胞)を体液または組織から免疫磁性的に分離した後で、前記精製および単離方法を実施する。本工程では、例えば、振とうしながら、細胞上の抗原に対する抗体が固定化されている磁性粒子とともに試料を保温する。これらの粒子は本発明の粒子であってもよいし、入手できる市販の粒子(例えば、Miltenyi Biotec GmBH社(Bergish Gladbach, Germany)のMACSマイクロビーズなど)であってもよい。磁場をかけた後、塩類液を用いて1つ以上の洗浄工程を実施する。目的の細胞が結合した粒子が得られる。ついで、結合した細胞を塩類液緩衝液に再懸濁させる。好ましい態様においては、この塩類液緩衝液は、細胞に含まれる核酸が細胞から放出されるようなカオトロピック塩の塩類液である。
【0052】
前記細胞の単離と、好ましくは天然型の前記核酸の単離を、本発明の磁性粒子上で組み合わせることによって、細胞含有試料から核酸を単離するためのとくに有利な方法が実現される。この態様の利点は、簡便化が可能であること(単一試験管法)、高感度(医微生物学および腫瘍学においてとくに重要)および自動化の容易性であることである。
【0053】
本発明の方法を用いて単離された生体物質は、必要に応じてさらに利用することができる。例えば、これらのものは、様々な酵素反応の基質として使用することができる。核酸が関与する場合、それらを配列決定、放射性標識または非放射性標識、それらが含んでいる配列の1つ以上のものの増幅、転写、標識プローブ核酸とのハイブリダイゼーション、翻訳、またはライゲーションの目的に使用することができる。本発明の方法の1つの利点は、液体から生体物質を分離することが極めて容易であるということである。従来技術においては、遠心分離工程を用いて混入物質からガラス粒子を分離していた。あるいは、生体物質がガラス繊維フィルターに結合している場合は、液体をフィルターに通す。これが制限工程となって、大量の試料の処理が困難になっていた。
【0054】
本発明の粒子を使用すれば、生体物質をより効果的に混入物質から分離することができる。とくに、本発明によれば、特定の酵素反応の阻害物質を高度に除去することができる。生体物質の収量は比較的高い。長鎖核酸の分画は見られていない。本発明の粒子はより迅速に磁化させうることが好ましい。
【0055】
図1は、細胞を含む試料からの核酸の単離を示したものである。
図2は、アガロースゲルでの本発明の単離核酸の分離を示したものである。
図3は、本発明による単離およびPCR法による増幅後の反応生成物の分離を示したものである。
図4は、実施例4の結果を生じたゲルを示したものである。
【0056】
図1は、細胞を含む試料から核酸を単離する手順を示したものである。細胞を含む試料(検体)を、核酸検出対象の細胞が適切な形で存在するように、試料特異的方法によって前処理する。例えば、体液を除去した試料を使用する場合、例えば、唾液などの粘性試料を液化するための試薬を添加する。細胞を検出し結合する好ましくはビーズである固相に結合させた抗体を、前記のごとく処理した試料を入れた容器に加える。例えば、細胞表面の抗原は、この抗体の相手として適していることが明らかにされている。抗体の特異性は、実施する分析の特異性に応じて決めることができる。固相が容器壁である場合、細胞を直接その壁に結合させる。固相がビーズから成るものである場合は、適当な分離方法を用いてそれらを液体から分離する。これは、例えば、濾過によって実施することができる。磁性ビーズを使用する場合は、容器の外壁に磁場をかけることによってそれらを分離することができる。分離した細胞を液体で洗浄し、細胞を取り囲む培地とともに混入物質(検出を阻害する)を除去する。条件は、細胞が固相から分離されたり破壊されたりしないものが好ましい。次いで、細胞を破壊すなわち溶菌させる。これは、例えば、細胞をカオトロピック塩で処理することによって実施することができる。前記以外の可能性としては、プロテイナーゼおよびデターゼントの使用などが挙げられる。
【0057】
好ましい態様においては、本発明の粒子を溶菌物に加える。溶菌が起きるのに適した時間−核酸を有する表面に供することによって最適化することができる−が経過した後、検出対象でない余分な細胞成分を含んでいる周囲の液体から粒子を分離する。これは、磁石を容器壁に対向させて磁場をかけることによって実施することが好ましい。
【0058】
その後も残存する可能性がある混入物質を除去するためには、検出対象の核酸をガラス表面から分離させることのない液体による洗浄工程を実施することが好ましい。核酸がガラス表面から分離する試薬条件を有する溶出緩衝液を添加して、ガラス表面から核酸を除去する。とりわけ、これらの条件は低塩濃度条件である。核酸の目的用途に応じて、液体を粒子から分離し、さらに処理することができる。この分離工程は、粒子を互いに分離させるような磁場をかけることによって実施することが好ましい。
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0060】
実施例1
本発明に記載の磁性粒子の製造
6つの異なるゾルを用いた。下記の如く該ゾルを製造した:
【0061】
ゾル1(SiO2 :B23 =7:3):
250mlの丸底フラスコ中で、常に攪拌しながら、合成を行った。
86.6ml オルトケイ酸テトラエチル
+7ml 無水、非変性エタノール
+14.1ml 0.15M HCl
二層混合物を製造する。一層になるまで、二層混合物を室温で攪拌する。
+37.8ml トリメチルホウ酸
を滴下にて添加する。ついで、このゾルを50℃で、2時間保持する。
+14.1ml 0.15M HCl
を添加する。
【0062】
ゾル2(SiO2 :B23 =4:1):
250mlの丸底フラスコ中で、常に攪拌しながら、合成を行った。
100.5ml オルトケイ酸テトラエチル
+7ml 無水、非変性エタノール
+16.3ml 0.15M HCl
二層混合物を製造した。一層になるまで、二層混合物を室温で攪拌する。
+25.6ml トリメチルホウ酸
を滴下にて添加する。ついで、このゾルを50℃で、2時間保持する。
+16.3ml 0.15M HCl
を添加する。
【0063】
ゾル3(SiO2 :B23 =85:15):
250mlの丸底フラスコ中で、常に攪拌しながら、合成を行った。
107.8ml オルトケイ酸テトラエチル
+7ml 無水、非変性エタノール
+17.5ml 0.15M HCl
二層混合物を製造した。一層になるまで、二層混合物を室温で攪拌する。
+19.4ml トリメチルホウ酸
を滴下にて添加する。ついで、このゾルを50℃で、2時間保持する。
+17.5ml 0.15M HCl
を添加する。
【0064】
ゾル4(SiO2 :B23 =4:1;2モル% P25 ):
250mlの丸底フラスコ中で、常に攪拌しながら、合成を行った。
100.5ml オルトケイ酸テトラエチル
+7ml 無水、非変性エタノール
+16.3ml 0.15M HCl
二層混合物を製造した。一層になるまで、二層混合物を室温で攪拌する。
+25.6ml トリメチルホウ酸
滴下にて添加する。ついで、このゾルを50℃で、2時間保持する。
+16.3ml 0.15M HCl
+1.63g P25
を添加する。
【0065】
ゾル5(SiO2 :B23 =4:1;モル% Al23 ):
250mlの丸底フラスコ中で、常に攪拌しながら、合成を行った。
100.5ml オルトケイ酸テトラエチル
+7ml 無水、非変性エタノール
+16.3ml 0.15M HCl
二層混合物を製造した。一層になるまで、二層混合物を室温で攪拌する。
+25.6ml トリメチルホウ酸
を滴下にて添加する。ついで、このゾルを50℃で、2時間保持する。
+16.3ml 0.15M HCl
+3.06g Al2 Cl3
を添加する。
【0066】
ゾル6(SiO2 :B23 =4:1;モル% ZrO2 ):
250mlの丸底フラスコ中で、常に攪拌しながら、合成を行った。
100.5ml オルトケイ酸テトラエチル
+7ml 無水、非変性エタノール
+16.3ml 0.15M HCl
二層混合物を製造した。一層になるまで、二層混合物を室温で攪拌する。
+25.6ml トリメチルホウ酸
+5.15ml ジルコン(IV)−プロイレート(zircon(IV)−
proylate)、1−プロパノール中70重量%溶液
を滴下にて添加する。ついで、このゾルを50℃で、2時間保持する。
+16.3ml 0.15M HCl
を添加する。
【0067】
さらに、50℃で2時間、22.5gのイリオジン600(黒雲母)を各々150mlのゾルに添加し、攪拌した。ついで、スプレー乾燥機(ブェッヒ(Buechi)190、ミニスプレー乾燥機(Mini Spray Dryer)でそれを被覆した。スプレー乾燥機のノズルの温度は、134℃であった。
【0068】
ついで窒素雰囲気(90 l/h)でスプレー乾燥工程において得られた粉末を温度処理工程に供した。温度を1k/分の速度で増加させ、該粉末を高密度化(densification)温度で2時間保持した。ゾル1でコーティングするために、この温度は、750℃であり、ゾル2でコーティングするために860℃であった。他の全てのコーティング工程のため、この温度は、800℃であった。焼結工程後、オーブンを切り、該粉末を室温まで導いた。50μmのふるいを用いて凝集体をふるい落とした。
【0069】
実施例2
GMP1、GMP2、GMP3およびGMP4の製造
GMP1、GMP2、GMP3およびGMP4は、下記の条件下で、実施例1に記載の工程で、ゾル1(実施例1)から得た異なる製造ロット由来の色素である:
【0070】
【数1】

【0071】
実施例3
磁性ガラス粒子を用いたヒト全血由来のPCR試料の前処理
核酸単離
ガラス磁性粒子(GMP2〜4)の3つのロットを各々10mgをエッペンドルフ試験管に移した。厳密な試料の重量を表1に示した。3重の測定を行った。
【0072】
40μlのプロテイナーゼK(20mg/ml、凍結乾燥物から作られた)をペペッティングにより各々200μlの融解させた全血に添加し、直ちに混合した。次工程において、200μl結合緩衝液(6Mグアニジン−HCl、10mM Tris−HCl、10mM尿素、30%トライトンX−100、pH4.4)を添加し、混合し、次いで70℃で10分間インキュベートした。200μlのi−プロパノールを添加し、ついでこの調製物をボルテックスミキサーで10秒間混合した。この試料を20分間室温で放置し、ついでもう一度10秒間混合した。磁性分離工程を少なくとも30秒間ベーリンガーマンハイム社の磁性粒子分離器(ID#1 641 794)中で行った。上清を取り除き、下記記載の如く解析した。
【0073】
該磁性粒子を500μlの洗浄緩衝液(20mM NaCl、10mM Tris−HCl、pH7.5(25℃)、80%エタノール)で10秒間混合し、これらを室温で1分間放置し、ついで10秒間混合することによって洗浄した。これらをついで磁性粒子分離器を用いて容器壁に押し付けた。上清を取り除き、捨てた。洗浄液が色を無くすまでこの洗浄工程を繰り返した(全てにおいて4回)。ついで核酸を、各回200μlの70℃にあらかじめ温めておいた溶出緩衝液(10mM Tris−HCl、pH8.5)で3回溶出し、ついで10秒間混合し、室温に10分間放置し、10分間混合した。
【0074】
上清の調製
磁性ガラス粒子への最初の結合後に得られた上清を、その核酸組成について下記のように調べた:該上清を、フィルター試験管(例えば、ハイピュアPCR産物精製キットで供給されるような、ベーリンガーマンハイム社 ID#1744003)に移し、エッペンドルフタブレトップ遠心分離中8000rpmで1分間遠心分離した。フロー−スルー(flow−through)物質を捨て、該フィルター試験管を500μlの洗浄緩衝液で2回洗浄した(前記のように遠心分離)。該フィルター試験管を短時間遠心分離して乾燥し、ついで200μlのあらかじめ70℃に温めておいた1×溶出緩衝液でもう一度遠心分離することによって2回溶出した。
【0075】
溶出物および試料の上清の解析
50μlの溶出物およびフィルター試験管を用いて調製した上清に、10μlの試料緩衝液をそれぞれ添加した。45μlのこの調製物を120Vで90分間の電気泳動を用いて0.8%アガロースゲルで分離した。
【0076】
該溶出物および調製した上清の多様な希釈物をユビコン(Uvikon)710(コントロン社(Kontron))中、260および280nmの分光学を用いて測定した。
【0077】
2つの5μl等分の溶出物をヒトtPA遺伝子(産物の予想される長さ:15kb)の特異的なプライマーと共にエクスパンドTMロングテンプレートPCR(ベーリンガーマンハイム社ID#1681834)を用いて2連の測定で調べた。
【0078】
【数2】

【0079】
混合物Iを5μlの溶出物を有する薄壁PCR試験管へ移し、ついで混合物IIを添加する。この調製物を短時間混合し、ついで30μlのミネラルオイルの層で覆う。該調製物をパーキンエルマーサーマルサイクラー9600中で下記のセッティングで増幅する:
【0080】
2分 92℃

10秒 92℃
30秒 65℃ 10サイクル
12分 68℃

10秒 92℃
30秒 65℃ 20サイクル
12分プラス 68℃
サイクル当たり20秒

7分 68℃
ついで 7℃

【0081】
10μlの試料緩衝液を50μlのPCR調製物に添加した。45μlのこの混合物を、ついで120Vで90分間の電気泳動を用いて0.8%アガロースゲルで分離した。

【0082】
結果
【表1】

【0083】
最初の溶出物はまだわずかに黄色であり、わずかに微細な磁性粒子が混入していた。
【0084】
アガロースゲルにおける溶出物の解析(図2)は、収量のよい再現性を表わす。磁性粒子GMP2〜4は、ほとんど差を示さない。溶出物1(上)および2(下)は、だいた同じ濃度の核酸を含む(ゲルによって推定した)。溶出物3は低濃度の核酸しか含まない。上清にも低濃度の核酸しか含まない。
【0085】
エクスパンドTMPCRは、ほんのわずかな分離物で、全ての試料に対して大変よく、特異的な増幅産物を生じる(表2)。磁性ガラスビーズを使用した場合、ヒト血液試料から核酸を単離し、その核酸は、ついで続くPCR工程において特異的な増幅物を生じた。
【0086】
【表2】

【0087】
図3は、PCR増幅後の反応生成物のゲルを示す。MWMIIIは、分子量マーカーである(溶出物1、上;溶出物2、下)。
【0088】
実施例4
磁性ガラス粒子へのDNA長さ標品の結合
【0089】
1.磁性ガラス粒子の調製
GMP4由来の12mgの磁性ガラス粒子を、エッペンドルフ試験管に移す。
【0090】
2.溶解および結合
900μlの溶解緩衝液(4.6M GuSCN、45mM Tris、20mM EDTA、pH7.3)およびベーリンガーマンハイム社(Cat.No.528552)のDNA長さ標品IIIがモデルとして添加しされている100μlのDNA試料を、1.5mlエッペンドルフ容器で12mg磁性ガラス粒子と共に2〜10秒間均一な懸濁物が得られるまで混合する。この溶液を室温で20分間インキュベートし、5分ごとに混合する。
【0091】
磁性分離を磁性粒子分離器中で少なくとも15秒間行った。その上清をピペッティングで取り除いた。
【0092】
3.洗浄および乾燥
磁性フィールド(field)を取り除き、ピペッティングによって800μlの溶液を添加し、2秒間混合し、RTで1分間放置し、該磁性フィールドをアプライし、ついでピペッティングによって上清を取り除くことによって、該磁性ガラス粒子を洗浄緩衝液(5.2M GuSCN、50mM Tris、pH6.5)で2回、70%予冷エタノールで2回、アセトンで1回洗浄する。
【0093】
アセトンを取り除いて、カバーを開けたヒーティングブロック中、56℃で10分間その粒子を乾燥させる。
【0094】
4.DNAの溶出
繰り返し振盪しながら56℃で10分間インキュベートすることによって、50μlの溶出緩衝液(10mM Tris−HCl、1mM EDTA、pH8.0)で4回DNAを溶出した。ついで、該DNAを含む上清をピペットで新しいエッペンドルフ容器に移す。
【0095】
5.溶出物の解析
試料緩衝液を溶出物量の1/5まで添加し、DNAを90Vの1%アガロースゲル上で分離した。回収を決定するために、試料中に予測されるDNAの量をふくむ同じゲルにDNA長さ標品IIIの希釈シリーズをアプライした。
【0096】
アガロースゲルのポラロイド写真をスキャンすることによって、定量評価を行った。該標品の希釈シリーズをキャリブレーターとして用いた。
【0097】
磁性ガラス粒子を用いたDNAの収量を表1に示した。
【0098】
【表3】

【0099】
定量的評価の基準として用いたアガロースゲルを図4に示す。それは、1%臭化エチジウム染色したアガロースゲルである。レーン1〜10は、DNA長さ標品IIIの希釈シリーズと一致する。1:1μgのDNA、2:200ngのDNA、3:175ngのDNA、4:150ngのDNA、5:125ngのDNA、6:100ngのDNA、7:75ngのDNA、8:50ngのDNA、9:25ngのDNA、10:10 DNA。
【0100】
レーン11および12は、添加した200ngのDNA長さ標品で磁性ガラス粒子から溶出したDNAに一致する。
【0101】
配列表

(1) 一般情報:
(i)出願人:
(A) 名称: ベーリンガー マンハイム ゲーエムベーハー
(B) ストリート: サンドホファー シュトラーセ 116
(C) 市:マンハイム
(E) 国:ドイツ連邦共和国
(F) 郵便番号: 68298
(G) 電話番号: 0621 759 4348
(H) ファクシミリ番号: 0621 759 4457
(ii)発明の名称:磁性色素
(iii)配列の数:2
(iv)コンピュータ可読フォーム:
(A) 媒体タイプ:フレキシブルディスク
(B) コンピュータ:IBM PC 互換機
(C) オペレーティング システム:PC-DOS/MS-DOS
(D) ソフトウェア:パテントイン リリース #1.0,バージョン #1.30 (EPA)

(2) 配列番号:1の情報:
(i)配列の特徴:
(A) 配列の長さ:34塩基対
(B) 配列の型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(A) 種類: /desc = 「オリゴデオキシリボヌクレオチド」
(iii)ハイポセティカル:NO
(xi)配列:配列番号:1:

ACTGTGCTTC TTGACCCATG GCAGAAGCGC CTTC 34

(2) 配列番号:2の情報:
(i)配列の特徴:
(A) 配列の長さ:34塩基対
(B) 配列の型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(A) 種類: /desc = 「オリゴデオキシリボヌクレオチド」
(iii)ハイポセティカル:NO
(xi)配列:配列番号:2:

CCTTCACTGT CTGCCTAACT CCTTCGTGTG TTCC 34
【0102】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1] 核酸における酵素反応を行う方法であって、ここで液体中に核酸を含む試料由来の核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により天然型で単離され、その後酵素反応における基質として使用される、方法。
[2] (a)液体中に核酸を含む試料中の核酸を、ガラス表面を有する磁性粒子に、該核酸が天然型で直接表面に結合できる条件下で吸着させる工程、
(b)結合した核酸を該液体から分離し、その後洗浄溶液を用いて精製する工程、
(c)任意に、乾燥する工程、
(d)溶出バッファーを用いて溶出する工程、および
(e)溶出された核酸を酵素反応における基質として使用する工程
を含む、[1]記載の方法。
[3] 前記核酸がDNAまたはRNAであることを特徴とする、[1]または[2]記載の方法。
[4] 酵素反応のインヒビターが単離の間に取り除かれることを特徴とする、[1]〜[3]いずれか記載の方法。
[5] 長い核酸が単離において分画されないことを特徴とする、[1]〜[4]いずれか記載の方法。
[6] 前記磁性粒子が100μm未満の平均粒子径を有することを特徴とする、[1]〜[5]いずれか記載の方法。
[7] 前記磁性粒子が、その上に外部ガラス表面が適用される、例えば複合材料の内部核または鉄の核を含むことを特徴とする、[1]〜[6]いずれか記載の方法。
[8] 前記核が、酸化鉄が組み込まれる、結晶性のまたはセラミックのまたはガラス様の構造から構成されることを特徴とする、[7]記載の方法。
[9] 前記核がマグネタイト(Fe)またはFeからなることを特徴とする、[7]または[8]記載の方法。
[10] 前記磁性粒子が強磁性であることを特徴とする、[1]〜[9]いずれか記載の方法。
[11] 前記核酸がカオトロピック塩の存在下で単離されることを特徴とする、[1]〜[10]いずれか記載の方法。
[12] カオトロピック塩の濃度が、2〜8mol/l、好ましくは4〜6mol/lであることを特徴とする、[11]記載の方法。
[13] 前記カオトロピック塩が、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジウム、イソチオシアン酸グアニジウムおよび塩酸グアニジウムから選択されることを特徴とする、[11]または[12]記載の方法。
[14] 前記試料が前記磁性粒子と混合され、結合のために十分な時間、好ましくは10秒〜30分間インキュベートされることを特徴とする、[1]〜[13]いずれか記載の方法。
[15] 前記核酸がインキュベーション後、磁界の助けを借りて液体から分離されることを特徴とする、[14]記載の方法。
[16] 前記磁性粒子が1回または数回、洗浄溶液を用いて洗浄されることを特徴とする、[1]〜[15]いずれか記載の方法。
[17] 乾燥工程が最後の洗浄工程の後に行われ、任意にアセトンを用いて前処理されることを特徴とする、[16]記載の方法。
[18] 精製された核酸が、好ましくは低い塩容量、特に好ましくは0.2mol/l未満の塩容量の溶出バッファーを使用して、磁性粒子から溶出されることを特徴とする、[16]または[17]記載の方法。
[19] 前記溶出バッファーがTrisを含むか、または脱イオン水であることを特徴とする、[18]記載の方法。
[20] 配列決定、放射性もしくは非放射性標識、1以上の配列の増幅、転写、標識されたプローブ核酸とのハイブリダイゼーション、翻訳、またはライゲーションが酵素反応として行われることを特徴とする、[1]〜[19]いずれか記載の方法。
[21] 単一試験管法として行われることを特徴とする、[1]〜[20]いずれか記載の方法。
[22] 自動化されていることを特徴とする、[1]〜[21]いずれか記載の方法。
[23] 酵素反応における基質としての核酸の使用であって、前記核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により、天然型で試料から単離されていることを特徴とする、使用。
[24] 前記核酸が、高い塩濃度を有する溶液から低い塩濃度を有する溶液に移されていることを特徴とする、[23]記載の使用。
[25] 前記核酸が濃縮されていることを特徴とする、[23]または[24]記載の使用。
[26] (a)ガラス表面を有する磁性粒子、
(b)試料を溶解させるためのカオトロピック塩溶液、
(c)任意に、洗浄溶液、および
(d)任意に、溶出バッファー
を含む試料から核酸を単離するための試薬組成物。
[27] 前記磁性粒子が100μm未満の平均粒子径を有することを特徴とする、[26]記載の組成物。
[28] 前記磁性粒子が、その上に外部ガラス表面が適用される、例えば複合材料の内部核または鉄の核を含むことを特徴とする、[26]または[27]記載の組成物。
[29] 前記核が、酸化鉄が組み込まれる、結晶性のまたはセラミックのまたはガラス様の構造で構成されることを特徴とする、[28]記載の組成物。
[30] 前記核がマグネタイト(Fe)またはFeからなることを特徴とする、[28]または[29]記載の組成物。
[31] 前記磁性粒子が強磁性であることを特徴とする、[26]〜[30]いずれか記載の組成物。
[32] 前記カオトロピック塩溶液中のカオトロピック塩の濃度が、2〜8mol/l、好ましくは4〜6mol/lであることを特徴とする、[26]〜[31]いずれか記載の組成物。
[33] 前記カオトロピック塩が、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジウム、イソチオシアン酸グアニジウムおよび塩酸グアニジウムから選択されることを特徴とする、[26]〜[32]いずれか記載の組成物。
[34] 前記溶出バッファーが低い塩容量、好ましくは0.2mol/l未満の塩容量を有することを特徴とする、[26]〜[33]いずれか記載の組成物。
[35] 前記溶出バッファーがTrisを含むかまたは脱イオン水であることを特徴とする、[26]〜[34]いずれか記載の組成物。
[36] 試料から核酸を天然型で単離するための、[26]〜[35]いずれか記載の試薬組成物の使用。
[37] 前記試料が臨床試料であることを特徴とする、[36]記載の使用。
[38] 前記試料が血液、血清、口腔洗液、尿、脳漿、痰、糞便、生検標本および骨髄試料から選択されることを特徴とする、[36]または[37]記載の使用。
[39] 前記試料が環境分析、食品分析また分子生物学的研究の分野からの試料であり、好ましくは微生物培養物、ファージ溶解物または増幅方法(例えばPCR)の産物由来の試料であることを特徴とする、[36]記載の使用。
[40] 前記核酸が酵素反応のための基質として使用されることを特徴とする、[26]〜[39]いずれか記載の使用。
[41] 前記核酸が、配列決定、放射性もしくは非放射性標識、1以上の配列の増幅、転写、標識プローブ核酸とのハイブリダイゼーション、翻訳またはライゲーションのための基質として使用されることを特徴とする、[36]〜[40]いずれか記載の使用。
[42] 前記核酸が配列決定、放射性もしくは非放射性標識、1以上の配列の増幅、転写、標識プローブ核酸とのハイブリダイゼーション、翻訳またはライゲーションのための基質として使用される、[41]記載の使用。
[43] 実質的に無孔または10nm未満の直径の孔を有するガラスの外表面を有してなり、ここで該ガラスは酸化ホウ素を含有する、磁性粒子。
[44] 粒子が、100μm未満の平均粒径を有することを特徴とする、[43]記載の磁性粒子。
[45] 粒子が、10〜60μmの粒径を有することを特徴とする、[43]または[44]記載の粒子。
[46] 表面に存在し得る孔が、1nm未満の直径を有することを特徴とする、[43]または[44]記載の粒子。
[47] 粒子が、強磁性の核を有することを特徴とする、[43]〜[46]いずれか記載の粒子。
[48] 核が、FeまたはFeを含有することを特徴とする、[47]記載の粒子。
[49] 粒子が、雲母の核および該雲母に固定された磁性粒子を含有する複合物質を含み、該複合物質はガラス層に埋め込まれていることを特徴とする、[43]または[44]記載の粒子。
[50] a) 磁性核を調製する工程、ならびに、
b) (i) ネットワーク形成成分のアルコキシドを含むアルコール溶液から形成されるゾルを表面上に沈積させる工程、
(ii) 噴霧乾燥過程によりゾル層をゲル層に変換させる工程、および
(iii) 続いてゲルを高密度化させる工程
を含む実質的に無孔のガラス表面で磁性核を包み込む工程
により製造され得る、[43]〜[49]いずれか記載の粒子。
[51] TiOで被覆された雲母の核および該雲母に固定された磁性粒子からなる複合物質を含み、該複合物質はガラス層に埋め込まれている、[43]記載の粒子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸における酵素反応を行う方法であって、ここで液体中に核酸を含む試料由来の核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により単離され、その後酵素反応における基質として使用され、該核酸がカオトロピック塩の存在下で単離される、方法。
【請求項2】
(a)液体中に核酸を含む試料中の核酸を、ガラス表面を有する磁性粒子に、該核酸が天然型で直接表面に結合できる条件下で吸着させる工程、
(b)結合した核酸を該液体から分離し、その後洗浄溶液を用いて精製する工程、
(c)任意に、乾燥する工程、
(d)溶出バッファーを用いて溶出する工程、および
(e)溶出された核酸を酵素反応における基質として使用する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記核酸がDNAまたはRNAであることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
酵素反応のインヒビターが単離の間に取り除かれることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
前記磁性粒子が100μm未満の平均粒子径を有することを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項6】
前記磁性粒子が、複合材料の内部核または鉄の核を含み、その上に外部ガラス表面が適用されていることを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
前記核が、酸化鉄が組み込まれた、結晶性の構造またはセラミックのもしくはガラス様の構造から構成されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記核がマグネタイト(Fe)またはFeからなることを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記磁性粒子が強磁性であることを特徴とする、請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項10】
カオトロピック塩の濃度が、2〜8mol/l、好ましくは4〜6mol/lであることを特徴とする、請求項1〜9いずれか記載の方法。
【請求項11】
前記カオトロピック塩が、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジウム、イソチオシアン酸グアニジウムおよび塩酸グアニジウムから選択されることを特徴とする、請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
前記試料が前記磁性粒子と混合され、結合のために十分な時間、好ましくは10秒〜30分間インキュベートされることを特徴とする、請求項1〜11いずれか記載の方法。
【請求項13】
前記核酸がインキュベーション後、磁界の助けを借りて液体から分離されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記磁性粒子が1回または数回、洗浄溶液を用いて洗浄されることを特徴とする、請求項1〜13いずれか記載の方法。
【請求項15】
乾燥工程が最後の洗浄工程の後に行われ、任意にアセトンを用いて前処理されることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
精製された核酸が、好ましくは低い塩含有量、特に好ましくは0.2mol/l未満の塩含有量の溶出バッファーを使用して、磁性粒子から溶出されることを特徴とする、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記溶出バッファーがTrisを含むか、または脱イオン水であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
配列決定、放射性もしくは非放射性標識、1以上の配列の増幅、転写、標識されたプローブ核酸とのハイブリダイゼーション、翻訳、またはライゲーションが酵素反応として行われることを特徴とする、請求項1〜17いずれか記載の方法。
【請求項19】
単一試験管法として行われることを特徴とする、請求項1〜18いずれか記載の方法。
【請求項20】
自動化されていることを特徴とする、請求項1〜19いずれか記載の方法。
【請求項21】
酵素反応における基質としての核酸の使用であって、前記核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により、天然型で試料から単離されていることを特徴とし、前記核酸がカオトロピック塩の存在下で単離される、使用。
【請求項22】
前記核酸が、高い塩濃度を有する溶液から低い塩濃度を有する溶液に移されていることを特徴とする、請求項21記載の使用。
【請求項23】
前記核酸が濃縮されていることを特徴とする、請求項21または22記載の使用。
【請求項24】
(a)ガラス表面を有する磁性粒子、
(b)試料を溶解させるためのカオトロピック塩溶液、
(c)任意に、洗浄溶液、および
(d)任意に、溶出バッファー
を含む、試料から核酸を単離するための試薬組成物。
【請求項25】
前記磁性粒子が100μm未満の平均粒子径を有することを特徴とする、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
前記磁性粒子が、複合材料の内部核または鉄の核を含み、その上に外部ガラス表面が適用されていることを特徴とする、請求項24または25記載の組成物。
【請求項27】
前記核が、酸化鉄が組み込まれた、結晶性の構造またはセラミックのもしくはガラス様の構造で構成されることを特徴とする、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
前記核がマグネタイト(Fe)またはFeからなることを特徴とする、請求項26または27記載の組成物。
【請求項29】
前記磁性粒子が強磁性であることを特徴とする、請求項24〜28いずれか記載の組成物。
【請求項30】
前記カオトロピック塩溶液中のカオトロピック塩の濃度が、2〜8mol/l、好ましくは4〜6mol/lであることを特徴とする、請求項24〜29いずれか記載の組成物。
【請求項31】
前記カオトロピック塩が、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジウム、イソチオシアン酸グアニジウムおよび塩酸グアニジウムから選択されることを特徴とする、請求項24〜30いずれか記載の組成物。
【請求項32】
前記溶出バッファーが低い塩含有量、好ましくは0.2mol/l未満の塩含有量を有することを特徴とする、請求項24〜31いずれか記載の組成物。
【請求項33】
前記溶出バッファーがTrisを含むかまたは脱イオン水であることを特徴とする、請求項24〜32いずれか記載の組成物。
【請求項34】
試料から核酸を天然型で単離するための、請求項24〜33いずれか記載の試薬組成物の使用。
【請求項35】
前記試料が臨床試料であることを特徴とする、請求項34記載の使用。
【請求項36】
前記試料が血液、血清、口腔洗液、尿、脳漿、痰、糞便、生検標本および骨髄試料から選択されることを特徴とする、請求項34または35記載の使用。
【請求項37】
前記試料が環境分析、食品分析また分子生物学的研究の分野からの試料であり、好ましくは微生物培養物、ファージ溶解物または増幅方法(例えばPCR)の産物由来の試料であることを特徴とする、請求項34記載の使用。
【請求項38】
前記核酸が酵素反応のための基質として使用されることを特徴とする、請求項24〜37いずれか記載の使用。
【請求項39】
前記核酸が、配列決定、放射性もしくは非放射性標識、1以上の配列の増幅、転写、標識プローブ核酸とのハイブリダイゼーション、翻訳またはライゲーションのための基質として使用されることを特徴とする、請求項34〜38いずれか記載の使用。
【請求項40】
液体中に核酸を含む試料由来の核酸が、ガラス表面を有する磁性粒子への吸着により天然型で単離され、その後酵素反応における基質として使用される、請求項1記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−42022(P2010−42022A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238436(P2009−238436)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【分割の表示】特願2005−248331(P2005−248331)の分割
【原出願日】平成8年6月6日(1996.6.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(500204038)ロシュ ダイアグノスティックス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】