説明

磁性部品の傷検査方法および傷検査装置

【課題】磁性部品の傷の有無を短時間に確実に全数検査することができ、かつインライン化が可能な磁性部品の傷検査方法および傷検査装置を提供する。
【解決手段】傷検査装置1は、磁性ホルダー10と、誘導コイル20と、磁化特性測定手段30と、判別手段40と、を備える。磁性ホルダー10は、磁性部品100が取り付けられ、磁性部品100と組み合わされることで閉磁路を形成する。誘導コイル20は、閉磁路に磁界を印加する。磁化特性測定手段30は、閉磁路に磁界を印加したときの閉磁路の磁化特性を測定する。判別手段40は、測定した閉磁路の磁化特性を磁化特性測定手段30から取得し、測定した磁化特性に基づいて、磁性部品100の傷の有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性部品の傷検査方法および傷検査装置に関する。特に、磁性部品の検査工程において、磁性部品の製造工程で生じた傷(亀裂)の有無を短時間に確実に全数検査することができ、かつインライン化が可能な磁性部品の傷検査方法および傷検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チョークコイルや電磁弁などを構成する部品として磁性材料からなる磁性部品(「鉄心」、「磁心」、「コア」と呼ばれることもある)が使用されている。磁性部品には、フェライト材を用いたものや、金属磁性粉末の表面を絶縁し、加圧成形した圧粉磁心を用いたものが知られている。
【0003】
上記した磁性部品は、金型での大量生産が可能であり、通常、金型で目的形状に成形することで製造されている。最近では、小型で、かつ複雑形状に一体成形したものもある。なお、ここでいう「複雑形状」とは、板状や柱状(棒状)、筒状といった単純形状ではなく、例えば、屈曲部を有する形状、凸部や凹部を有する形状、開口部を有し、側壁部と底壁部とを有する容器形状などの所謂3次元形状をいう。
【0004】
製造された磁性部品は、最終検査工程において傷(亀裂)の有無を検査する探傷検査が行われる。探傷検査は、品質保証の観点からすれば、非破壊での全数検査が望ましい。磁性部品に対する探傷検査の代表的な手法としては、「渦流探傷法」(例えば、特許文献1参照)、「超音波探傷法」(例えば、特許文献2参照)、「磁粉探傷法」(例えば、特許文献3参照)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002‐350406号公報
【特許文献2】特開2004‐138392号公報
【特許文献3】特開平11‐223610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の磁性部品の傷検査方法では、以下のような問題がある。
【0007】
渦流探傷法は、検査対象となる磁性部品の表面に渦電流を発生させ、その渦電流の変化を検出して、傷の有無を検査する。この方法は、取り扱いが容易で、短時間に検査することが可能であり、インライン化も実現し易い。しかし、渦電流は検査対象となる磁性部品の表面にしか流れないため、検査範囲が表面近傍に限定され、内部の傷を検出するのに不適である。つまり、この方法では、磁性部品の内部に存在する傷の有無を確実に検出できない問題がある。
【0008】
超音波探傷法は、超音波の反射を利用して、内部に存在する傷を検出する。具体的には、検査対象となる磁性部品の表面に超音波を入射する送信用プローブと超音波を受信する受信用プローブとを配置し、送信用プローブから入射した超音波が表面と内部の欠陥で反射して受信用プローブに到達する時間差を測定して、傷の有無を検査する。この方法は、磁性部品の内部まで検査することが可能である。しかし、精度の高い検査には、探傷する際に、磁性部品を溶媒液中に浸漬することが不可欠であるため、構成が煩雑になる上、インライン化には不向きである。また、上記フェライト材や圧粉磁心を用いた磁性部品では、粉末粒子界面が存在し、この粒子界面での超音波の反射がノイズとして作用するため、検出感度が著しく低下する懸念がある。
【0009】
磁粉探傷法は、検査対象となる磁性部品を磁化し、磁粉を付着させ、付着した磁粉模様の変化を観察して、傷の有無を検査する。この方法は、構成が煩雑であり、手間、時間、コストがかかることから全数検査が困難である。また、複雑形状に一体成形した磁性部品の場合、製造上、特に継ぎ目に相当する箇所に傷が生じ易い傾向があるが、磁粉模様を観察する際、この箇所が陰になり易く見逃し易い。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、磁性部品の傷の有無を短時間に確実に全数検査することができ、かつインライン化が可能な磁性部品の傷検査方法および傷検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の磁性部品の傷検査方法は、磁性材料からなる磁性部品の傷の有無を検査する方法であり、次の工程を備えることを特徴とする。
検査対象となる磁性部品を磁性材料からなる磁性ホルダーに取り付け、磁性部品と磁性ホルダーとで閉磁路を形成する工程。
閉磁路に磁界を印加して、磁化特性を測定する工程。
測定した磁化特性に基づいて、磁性部品の傷の有無を判別する工程。
【0012】
本発明の磁性部品の傷検査装置は、磁性材料からなる磁性部品の傷の有無を検査する装置であり、磁性ホルダーと、誘導コイルと、磁化特性測定手段と、判別手段と、を備えることを特徴とする。磁性ホルダーは、検査対象となる磁性部品が取り付けられ、磁性部品と組み合わされることで閉磁路を形成する。誘導コイルは、閉磁路に磁界を印加する。磁化特性測定手段は、閉磁路の磁化特性を測定する。判別手段は、測定した磁化特性に基づいて、磁性部品の傷の有無を判別する。
【0013】
本発明の磁性部品の傷検査方法および傷検査装置によれば、磁性部品を磁性ホルダーに取り付け、閉磁路を形成し、閉磁路の磁化特性を測定して、測定した磁化特性に基づいて磁性部品の傷の有無を判別することができる。磁化特性を測定する簡易な構成によって傷の有無を検査することができ、短時間での検査が可能であり、全数検査に好適である。また、低コストで実現でき、検査工程の自動化、インライン化も可能である。さらに、磁性部品の表面、内部に存在する傷の有無を確実に検出することができ、単純形状から複雑形状の磁性部品まで対応可能である。
【0014】
本発明では、磁性部品の傷の有無によって、磁性部品(閉磁路)の磁化特性が変化することを利用している。磁性部品の傷の有無の判別は、基準となる磁化特性(基準値)と測定した磁化特性(測定値)とを比較することで、検査対象の磁性部品が傷の有る不良品であるか、傷の無い良品であるかを判別することができる。基準となる磁化特性は、例えば、傷の無い良品を用いたときの磁化特性に基づいて決定したり、磁性部品の設計データから算出した理論上の磁化特性に基づいて決定することが挙げられる。なお、ここでいう「磁化特性」とは、例えば、磁界(H)と磁束密度(B)との関係を示した磁化曲線(B‐H曲線)、透磁率(μ)(具体例、最大透磁率(μm)、初透磁率(μi)など)、ある磁界を印加したときの磁束密度(具体例、50エルステッド(Oe)の磁界を印加したときの磁束密度B50、100エルステッド(Oe)の磁界を印加したときの磁束密度B100)が挙げられる。透磁率(μ)は、磁化曲線の傾きを求めることで得られる。磁化特性は、傷の有無の判別の指標となるので、傷の有無によって変化が大きい(即ち、基準値と測定値との間に差が生じ易い)ものが望ましく、例えば最大透磁率(μm)を選択することが好適である。
【0015】
磁性ホルダーは、磁性部品と同様に磁性材料からなり、磁性部品と組み合わされることで閉磁路を形成するものであれば、特に限定されるものではない。この磁性ホルダーは、磁性部品と同等以上の磁気特性(例えば、透磁率や飽和磁束密度など)を有する材料で形成することが好ましく、例えば磁性部品と同じ材料で形成することが挙げられる。
【0016】
本発明の傷検査方法の一形態としては、磁性部品が取り付けられる磁性ホルダーの取り付け面に、非磁性材料からなるギャップ部材を配置することが挙げられる。
【0017】
本発明の傷検査装置の一形態としては、磁性部品が取り付けられる磁性ホルダーの取り付け面に配置される非磁性材料からなるギャップ部材を備えることが挙げられる。
【0018】
閉磁路の磁化特性は、閉磁路に存在するギャップの大きさによっても変化する。磁性部品を磁性ホルダーに直接取り付けた場合、磁性部品の製造上のバラツキなどが原因で、磁性部品と磁性ホルダーとの取り付け状態(接触状態)が変化し、両者の間に不可避的な意図しない隙間が形成されることがあり、閉磁路にこの隙間によるギャップが存在すると測定される磁化特性に影響を与える。上記構成によれば、磁性部品を磁性ホルダーに取り付け、両者を組み合わせた際に、閉磁路にギャップ部材によるギャップが形成されることから、閉磁路全体のギャップが大きくなり、閉磁路に存在するギャップにおける隙間によるギャップが相対的に小さくなる。つまり、測定毎に磁性部品と磁性ホルダーとの接触状態が変化する、即ち隙間の大きさが変化するようなことがあっても、接触状態によって変化し易い隙間によるギャップの影響を小さくすることができるので、測定毎の測定精度を安定させることができる。
【0019】
ギャップ部材は、非磁性材料からなるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ギャップ部材に樹脂製の粘着テープ(具体例、セロハンテープやポリイミドテープ)を用い、磁性ホルダーの取り付け面に貼り付けることで配置してもよい。その他、ギャップ部材は、アルミナなどのセラミックやポリイミド、ガラスエポキシなどの樹脂を用いて形成してもよい。ここで、ギャップ部材の厚さは、漏れ磁束が大きくなり過ぎないように適宜設定すればよく、例えば1μm〜1000μmとすることが挙げられる。
【0020】
本発明の傷検査方法の一形態としては、磁性ホルダーに対して磁性部品を押し付けることが挙げられる。
【0021】
本発明の傷検査装置の一形態としては、磁性ホルダーに対して磁性部品を押し付ける押し付け手段を備えることが挙げられる。
【0022】
上述したように、測定毎に磁性部品と磁性ホルダーとの接触状態が変化するようなことがあると、測定毎の測定精度が安定しない。上記構成によれば、磁性部品と磁性ホルダーとの接触状態を安定して維持することができるので、測定毎の測定精度を安定させることができる。
【0023】
押し付け手法(手段)は、磁性ホルダーに対して磁性部品を押し付ける、即ち磁性部品と磁性ホルダーとを密着させるように作用するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、錘による重力やバネによる弾性力によって少なくとも一方を他方に向かって付勢することで実現することができる。
【0024】
本発明の傷検査方法の一形態としては、磁性部品を圧粉磁心とすることが挙げられる。
【0025】
圧粉磁心は、フェライト材を用いた場合に比べ磁束密度が高く、チョークコイルや電磁弁などの磁性部品に好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の磁性部品の傷検査方法および傷検査装置は、磁性部品の傷の有無を短時間に確実に全数検査することができ、かつインライン化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1で用いた磁性部品を説明する概略図であり、(A)は、磁性部品の斜視図、(B)は、磁性部品の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る傷検査装置を説明する概略斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る傷検査装置を説明する概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る傷検査装置を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。ここでは、図1に示す形状の磁性部品を検査対象とした場合を例に説明する。
【0029】
<実施の形態1>
(磁性部品)
図1に示す磁性部品100は、略円筒状の内壁部101と、同じく略円筒状の外壁部102と、これら内外両壁部の一端側を連結する略円環状の底壁部103と、を有する。この磁性部品100は、内壁部101と外壁部102とが二重になっており、内壁部101と外壁部102と底壁部103とで囲まれ、内外両壁部の他端側に開口部を有する空間が形成された容器形状である。
【0030】
磁性部品100は、圧粉磁心であり、金型により一体成形することで製造されている。この磁性部品100は、所謂複雑形状であるため、製造上、継ぎ目に相当する箇所(この例では、内壁部101と底壁部103との連結箇所、外壁部102と底壁部103との連結箇所。図1(B)中、点線で囲む箇所)に傷(亀裂)が生じ易い。
【0031】
(傷検査装置)
図2、3に示す実施の形態1に係る傷検査装置1は、磁性ホルダー10と、誘導コイル20と、磁化特性測定手段30と、判別手段40と、を備える。以下、装置1の構成を詳しく説明する。なお、図3においては、磁性部品100および磁性ホルダー10を断面で示している(後述する図4においても同様である)。
【0032】
磁性ホルダー10は、磁性部品100と同じ圧粉磁心で形成されており、磁性部品100と組み合わされることで閉磁路を形成する。この例では、磁性ホルダー10が円環状であり、磁性部品100の底壁部103側を上側とし開口部側を下側として、磁性部品100の内壁部101及び外壁部102の端面が磁性ホルダー10の上面に接触するように取り付けられる。つまり、磁性ホルダー10の上面に磁性部品100の取り付け面11が設けられる。また、磁性ホルダー10の上面には、図3に示すように、磁性部品100の開口部に対応する箇所に溝12が形成されており、後述する誘導コイル20が一部収納されるようになっている。磁性ホルダー10は、図2に示すように、ステージ50の上に固定されている。
【0033】
閉磁路は、図3に示すように、磁性部品100が磁性ホルダー10に取り付けられ、両者が組み合わされることで形成される。この例では、磁束が、磁性部品100の外壁部102、底壁部103、内壁部101を通り、磁性ホルダー10を通って、外壁部102に戻る閉磁路が形成される(図3中の矢印は磁束の方向を示す)。なお、磁束の方向は、誘導コイル20による印加磁界によって変わる。
【0034】
誘導コイル20は、閉磁路に磁界を印加する手段である。誘導コイル20は、図示しない電源に接続されており、電源から電流が供給される。この例では、誘導コイル20が直流電源に接続され、電源からの供給電流を調整することで、印加磁界の強さを可変にすることができる。誘導コイル20は、磁性部品100が磁性ホルダー10に取り付けられ、両者が組み合わされた際、磁性部品100(内壁部101、外壁部102および底壁部103)と磁性ホルダー10とで囲まれた内部空間に収納された状態となる。
【0035】
この誘導コイル20は、導体の表面に絶縁被覆を施した巻線を巻回することで形成されている。誘導コイル20の巻数や導体径(導体断面積)は、磁化特性を測定するのに必要な印加磁界に応じて適宜決定する。磁界は巻数と電流に比例することから、巻数を増やす、或いは導体径を大きくして電流を流れ易くすることで、測定に必要な印加磁界強度を得易い。この例では、誘導コイル20の収納スペースも考慮して、直径0.35mmの丸線導体の表面にエナメル被覆を施した巻線を50回巻回して誘導コイル20を形成している。誘導コイル20は、図2に示すように、ボビン21に巻回され保持されている。
【0036】
磁化特性測定手段30は、閉磁路に磁界を印加したときの閉磁路の磁化特性を測定する手段である。この例では、磁化特性測定手段30にB‐Hアナライザを用いている。この磁化特性測定手段30は、図示しない検出コイルを備えており、検出コイルが閉磁路に発生した磁界を検出するように構成されている。この検出コイルに発生する誘起電圧を測定することによって磁化曲線を測定する。また、磁化特性測定手段30は、この磁化曲線から、最大透磁率(μm)、初透磁率(μi)、B50およびB100などの各種磁化特性も求めることができる。
【0037】
検出コイルは、誘導コイル20と同様、巻線を巻回することで形成されている。この例では、誘導コイル20の外周に、誘導コイル20と同じ巻線を10回巻回して検出コイルを形成している。
【0038】
判別手段40は、測定した閉磁路の磁化特性を磁化特性測定手段30から取得し、測定した磁化特性(測定値)に基づいて、磁性部品100の傷の有無を判別する手段である。この例では、判別手段40に電子計算機(コンピュータ)を用いている。この判別手段40には磁化特性の基準値が記憶されており、判別手段40はこの基準値と測定値とを比較することで磁性部品100の傷の有無を判別する。また、この例では、傷の有無の判別の指標となる磁化特性として最大透磁率(μm)を選択して、予め良品であることが確認された磁性部品を用いたときの最大透磁率に基づいて決定した基準値と比較し、基準値の規定範囲内であれば良品、この範囲外であれば不良品と判別する。
【0039】
さらに、装置1は、磁性ホルダー10に対して磁性部品100を押し付ける押し付け手段を備える。この例では、図2に示すように、磁性部品100を磁性ホルダー10に取り付けた後、その上(磁性部品100の底壁部103側の面)に載せられる錘55が押し付け手段を構成している。また、錘55には、ステージ50から上方に延びるガイド軸51に挿通されるガイド孔56が形成されており、錘55がスライド可能にガイドされる。このガイドにより、磁性部品100に作用する荷重が偏ることなく均等にかかり易い。この例では、錘55に銅製の重さ4kgのものを用いている。
【0040】
[実施例1]
図1に示す磁性部品100を5つ製造し、これらを試料1〜5とした。そして、各試料を用いて、実施の形態1に係る傷検査装置1を評価した。具体的には、各試料について、傷の有無の検査を複数回行い、それぞれの検査での測定により得られた最大透磁率(μm)を調べた。最大透磁率(μm)の測定値の範囲とその平均値を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
また、検査後の各試料について、断面観察により傷の有無を確認した。その結果、試料1については傷が確認されなかったが、試料2〜5についてはいずれも外壁部102と底壁部103との連結箇所に亀裂が確認された。試料2〜5における亀裂の長さを測定したところ、試料2:0.3mm、試料3:0.8mm、試料4:1.6mm、試料5:2.2mmであった。
【0043】
以上の結果から、磁性部品100の傷の有無によって測定される磁化特性(この場合は最大透磁率(μm))に差異が認められ、また、傷の大きさによっても磁化特性が変動することが分かる。このことから、磁性部品100を磁性ホルダー10に取り付けたときの磁性部品100と磁性ホルダー10とで形成される閉磁路の磁化特性を測定することで、磁性部品100の傷の有無を判別することができることが分かる。例えばこの例では、傷検査装置1の判別手段40において、基準値の範囲を320±2と設定すれば、磁性部品100の傷の有無を判別することができる。
【0044】
<実施の形態2>
図4に示す実施の形態2に係る傷検査装置2は、磁性ホルダー10の取り付け面に非磁性材料からなるギャップ部材13を配置した点が、図3に示す実施の形態1に係る傷検査装置1と相違する。この例では、ギャップ部材13にポリイミドテープを用い、磁性ホルダー10の取り付け面に貼り付けることで配置している。ギャップ部材13の厚さは、約40μmである。
【0045】
ギャップ部材13の有無が測定精度に与える影響を検証した。具体的には、同じ磁性部品100を用いて、ギャップ部材13を配置した場合と配置しない場合の両方で傷の有無の検査を10回行い、それぞれの検査での測定により得られた最大透磁率(μm)を調べた。最大透磁率(μm)の各測定値を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果から、ギャップ部材を配置した場合、ギャップ部材を配置しない場合に比較して、測定毎の測定値のばらつきが小さいことが分かる。このことから、ギャップ部材13を配置することで、測定精度を安定させることができることが分かる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、磁性部品および磁性ホルダーの形状やサイズ、材質、並びに、指標となる磁化特性を適宜変更することが可能である。また、誘導コイルに交流電流を供給し、閉磁路に交流磁界を印加して閉磁路の磁化特性を測定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の磁性部品の傷検査方法および傷検査装置は、磁性部品の検査に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1,2 傷検査装置
10 磁性ホルダー
11 取り付け面 12 溝 13 ギャップ部材
20 誘導コイル 21 ボビン
30 B‐Hアナライザ(磁化特性測定手段)
40 電子計算機(判別手段)
50 ステージ 51 ガイド軸
55 錘(押し付け手段) 56 ガイド孔
100 磁性部品
101 内壁部 102 外壁部 103 底壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料からなる磁性部品の傷の有無を検査する磁性部品の傷検査方法であって、
検査対象となる前記磁性部品を磁性材料からなる磁性ホルダーに取り付け、前記磁性部品と前記磁性ホルダーとで閉磁路を形成する工程と、
前記閉磁路に磁界を印加して、磁化特性を測定する工程と、
測定した前記磁化特性に基づいて、前記磁性部品の傷の有無を判別する工程と、
を備えることを特徴とする磁性部品の傷検査方法。
【請求項2】
前記磁性部品が取り付けられる前記磁性ホルダーの取り付け面に、非磁性材料からなるギャップ部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の磁性部品の傷検査方法。
【請求項3】
前記磁性ホルダーに対して前記磁性部品を押し付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性部品の傷検査方法。
【請求項4】
前記磁性部品を圧粉磁心とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁性部品の傷検査方法。
【請求項5】
磁性材料からなる磁性部品の傷の有無を検査する磁性部品の傷検査装置であって、
検査対象となる前記磁性部品が取り付けられ、前記磁性部品と組み合わされることで閉磁路を形成する磁性ホルダーと、
前記閉磁路に磁界を印加する誘導コイルと、
前記閉磁路の磁化特性を測定する磁化特性測定手段と、
測定した前記磁化特性に基づいて、前記磁性部品の傷の有無を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする磁性部品の傷検査装置。
【請求項6】
前記磁性部品が取り付けられる前記磁性ホルダーの取り付け面に配置される非磁性材料からなるギャップ部材を備えることを特徴とする請求項5に記載の磁性部品の傷検査装置。
【請求項7】
前記磁性ホルダーに対して前記磁性部品を押し付ける押し付け手段を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の磁性部品の傷検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−88126(P2012−88126A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233991(P2010−233991)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(593016411)住友電工焼結合金株式会社 (214)
【Fターム(参考)】