説明

磁気によって生じた梁要素の変形に基づく角度位置の検出

静磁場に対する器具の角度位置を検出するためのセンサは、柔軟性の梁要素、電磁装置、及び測定装置を備えている。梁要素は、その一端部分で器具に連結されているとよく、梁要素が非屈曲状態にあるときにセンサ軸に沿って延びた状態になっている。電磁装置は、梁要素に連結されており、かつセンサ軸と整列したセンサ磁場を生成するように構成されている。測定装置は、梁要素に連通しており、かつ梁要素の屈曲の大きさに関する梁要素の特性を測定するように構成されている。センサは、器具を操作する前に器具を所望の角度に設定し、該器具が操作中に所望の角度からズレていないかどうかを判断するために、利用されるとよい。器具の例として、磁気共鳴実験法に利用されるようなプローブ回転モジュールが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2009年 7月24日に出願された米国特許出願第12/509,320号の利得を主張するものである。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、典型的には、器具の位置の検出に関する。さらに詳細には、本発明は、磁場の方位のような基準方向に対する器具の角度位置の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの場合、種々の器具の操作において、器具は基準データ(例えば、軸、表面、面、点等)に対する特定位置に設置又は保持されることが望ましいとされている。器具の操作の成功又は最適化は、器具を正確な位置に設置し、及び/又は該位置を操作中に維持する能力に依存している。器具の特性によっては、当該器具が、必要とされる位置に正確に設置されているにも関わらず、温度変動、振動、外部衝撃、構成部品の取外し、及び再設置のような影響によって、当該設置位置からズレることがある。
【0004】
位置に依存する器具の一例は、核磁気共鳴(NMR)分析法に利用される試料ホルダ(又はロータ)、並びにそれに関連するプローブ回転モジュール及びプローブRF回路である。当業者には明らかなように、典型的なNMR分析計は、通常、高周波(RF)を送信/受信する電子機器、NMR試料プローブ、及び試料プローブを配置した強力な静磁場(B磁場)の源、例えば、超電導磁石を備えている。NMR試料プローブは、プローブ回転モジュールと、(液体試料又は固体試料を含む)試料ホルダと、RF電子機器及び試料の間の電磁結合部として機能する1つ又は複数のRFコイルとを備えている。RF電子機器は、試料にRFエネルギー(B磁場)を放射し、RF入力に応じて試料から放出されたRF信号を受信するように操作されるものである。応答信号は、試料に関する情報を抽出するのに利用されることになる。固体試料及びある種の不均質液体試料に対するスペクトルデータの分解能を大幅に改良するために、試料ホルダは、プローブ回転モジュール内に支持され、回転されてもよく、この場合、試料ホルダは、ロータとして機能し、プローブ回転モジュールは、試料ホルダを高速(例えば、10RPM)で回転するように構成された対応するステータとして機能する。マジック角回転(MAS)技法では、試料ホルダ又はロータは、分解能をさらに高めるために、外部から印加された静止B磁場の方向に対して正確に54.7°の「マジック角(magic angle)」で回転するように位置決めされている。
【0005】
NMR器具類は、一般的に、高レベルの精度及び安定性を必要としており、このことは、特に、試料ホルダが実験の全体にわたってマジック角に設置され、かつ保持されねばならない回転技法の場合に当てはまる。試料ホルダをマジック角に設定するために、プローブ回転モジュールは、ユーザが該プローブ回転モジュールを適切な位置に移動又は枢動することができる調節機構に接続されているとよい。プローブ回転モジュールの角度位置を正確かつ容易に設定し、その設定された位置が正しいことを検証するための適切な技術は、現在、存在していない。その結果、NMR分析計のユーザは、多くの場合、試料ホルダが所望の角度で操作されていないことを知ることもなく、従って、得られたデータが角度ズレした操作によって損なわれていることを知ることもなく、実験を継続していることになる。さらに、プローブ回転モジュール(及び試料ホルダ)が正しい角度に設定されていたとしても、実験中に生じる種々の影響によって、試料ホルダは、この角度からズレることがある。具体的には、試料の温度が変化すると、本来的に温度に敏感な(すなわち、熱膨張係数を有する)器具類の構成部品又は構造体の寸法が変化することがある。これらの構成部品がどこに配置されているか又は該構成部品がいかに機能するかにもよるが、この寸法の変化は、プローブの角度位置に影響を及ぼすおそれがある。従って、このような構成部品又は構造体が熱伝達を受けると、プローブ回転モジュールに角度ズレが生じる可能性がある。この問題に対処する満足のいく解決策は、現在、存在していない。実験中にプローブ回転モジュールの適切な位置決めを検証するために、ユーザは、実験を中断し、実験用試料を含むプローブ回転モジュールを取り外し、角度を確認するように意図されている基準試料を含む試料ホルダを設置し、基準試料を含むプローブ回転モジュールを操作し、プローブ回転モジュールの位置に対して必要な調節を行い、角度検出用試料ホルダを取り外し、実験用試料ホルダを再設置し、次いで、実験を再開する必要がある。種々の所定温度での試料照射を必要とする実験の場合、これらのステップは、実験の全体にわたって数回行われる必要がある。さらに、プローブの物理的な切換えは、本質的に、プローブの角度の適切な設置に悪影響を与える可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、一般的には器具、特に、NMR試料ホルダの回転に付随して設けられた器具の位置の検出を改良する必要性が知られている。
【課題が解決するための手段】
【0007】
上述の問題の全て若しくは一部、及び/又は当業者によって見出されてきている他の問題に対処するために、本開示は、以下に述べる実施形態において例を挙げて説明するように、比例バルブに関する装置、デバイス、システム、及び/又は方法を提供するものである。
【0008】
一実施形態によれば、静磁場に対する器具の角度位置を検出するためのセンサが提供されている。センサは、柔軟性の梁要素、電磁装置、及び測定装置を備えている。梁要素は、近位端部分、遠位端部分、及び近位端部分から遠位端部分に延在する長手部分を備えている。近位端部分は、器具に連結されるように構成されており、梁要素が非屈曲状態にあるときに長手部分はセンサ軸に沿って延びた状態になっている。電磁装置は、梁要素に連結されており、センサ軸に整列した(aligned)センサ磁場を生成するように構成されている。測定装置は、梁要素と連通しており、梁要素の屈曲の大きさに関連する梁要素の特性を測定するように構成されている。
【0009】
他の実施形態によれば、プローブ回転器具は、プローブ回転モジュールと、静磁場に対するプローブ回転モジュールの角度位置を検出するためのセンサとを備えている。センサは、柔軟性の梁要素、電磁装置、及び測定装置を備えている。梁要素は、近位端部分と、遠位端部分と、近位端部分から遠位端部分に延在する長手部分とを備えている。近位端部分は、プローブ回転モジュールに連結されるように構成されており、梁要素が非屈曲状態にあるときに長手部分がセンサ軸に沿って延びた状態になっている。電磁装置は、梁要素に連結されており、センサ軸と整列したセンサ磁場を生成するように構成されている。測定装置は、梁要素と連通しており、梁要素の屈曲の大きさに関連する梁要素の特性を測定するように構成されている。
【0010】
他の実施形態によれば、器具を配置した(浸した、immersed)静磁場に対する器具の角度位置を検出するための方法が提供されている。該方法は、センサのセンサ軸に整列したセンサ磁場を生成するステップであって、該センサが器具に取り付けられた柔軟性の梁要素を備えている、ステップを含んでいる。梁要素が非屈曲状態から屈曲した大きさが、測定されるようになっている。最初に生じたセンサ磁場が静磁場に整列している場合、梁要素は、センサ軸に沿って延びている非屈曲状態にある。一方で、最初に生じたセンサ磁場が静磁場に整列していない場合、センサ磁場は強制的に静磁場に整列し、その結果、梁要素が屈曲することになる。測定値は、器具の角度位置に関連付けられているとよい。
【0011】
本発明は、以下の図面を参照することによって、さらによく理解されることだろう。図面の構成部品は、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ、本発明の原理を説明する上で誇張されている。図面では、種々の図を通して、同様の参照番号は、対応する部品を示すものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本示唆によって設けられたセンサ用操作環境の実施形態としての器具アセンブリの立面図である。
【図2】図1に示されている器具アセンブリに用いられる試料ホルダの実施形態の斜視図である。
【図3】本示唆の一実施形態によるセンサの実施形態の斜視図である。
【図4】図3に示されているセンサの操作の実施形態を示す図である。
【図5】本示唆の他の実施形態によるセンサの実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示されている主題は、一般的に、例えば、NMR試料のような材料を回転させるのに利用される位置センサに関するシステム、装置、デバイス、器具、プロセス、及び方法に関する。以下、図1−図5を参照して、本発明に関する実施形態の実施形態について、さらに詳細に説明する。これらの実施形態は、NMR分光法に関連してもたらされているが、本発明の広義の態様は、器具の位置を測定するためにセンサの使用を伴う他の技術に適用されてもよいことを理解されたい。
【0014】
図1は、本示唆によって設けられたセンサ110用操作環境の実施形態としての器具アセンブリ100の立面図である。一般的に、センサ110は、基準軸(又は、基準面、基準点等)118に対する位置が使用又は操作の前、最中、及び/又は後に測定、保持、及び/又は調節される必要がある任意の対象物又は器具114に取り付けられるとよい。基準軸118は、器具アセンブリ10、他の器具、又は他の構造体に関連付けられているとよい。図示されている実施形態では、基準軸118は、器具114及びセンサ110が配置されることになる印加された静磁場(B磁場)の方向並びに大きさを表すベクトルである。器具114の位置は、例えば、器具114に関連付けられている軸122によって表されているとよい。従って、検出されることになる位置は、器具軸122と基準軸118との間の角度αとして表されることになる。操作時に、センサ110は、センサ磁場126と呼ばれる磁場μを生成するように作動されるとよい。以下にさらに詳細に説明するように、静止B磁場118に対する器具114の位置は、B磁場118とセンサ磁場126との間の相互作用に影響を与える。この相互作用に対するセンサ110の応答を利用して、器具114の位置を定量化することができる。
【0015】
図1に示されている特定の実施形態では、器具アセンブリ100は、NMR分析計であり、その一部のみが図示されている。器具114は、固体NMR分析法、特に、マジック角回転(MAS)を伴う種類のNMR実験法に利用される形式のプローブ回転モジュールである。一般的に、NMR分析法及び利用される関連する器具類並びに実施される実験法は、当業者に知られているものである。従って、NMRに関するこの実施形態では、開示される本発明の主題に関するもの以外は、詳細に記載しないことにする。
【0016】
プローブ回転モジュール114は、NMR試料ホルダ202が挿入される孔130を備えている。一例を挙げれば、試料ホルダ202は、図2に示されている形式のものであるとよい。図示されている試料ホルダ202は、一般的に、NMRプローブのRFコイルによって照射されることになるNMR試料を含む本体206と、タービン構造210とを備えている。プローブ回転モジュール114は、1つ以上のガス噴流をタービン構造210に加え、これによって、試料ホルダ202が、適切な構造的軸受又は気体軸受によって支持されながら、孔130内において特定の角速度で回転するように構成されているとよい。孔130、従って、試料ホルダ202は、器具軸122に沿って延びている。固体NMRの場合、Bo磁場118に対する試料ホルダ202の最適な角度位置は、「マジック角」として知られている54.7°である。従って、いくつかの実施形態では、センサ110は、器具軸122とBo磁場118との間の角度αが所望の値である54.7°であるかどうかを判断するために利用されるとよい。
【0017】
プローブ回転モジュール114は、手動又は自動化によってプローブ回転モジュール114の角度を調節するように構成された角度調節機構140をさらに備えているとよい。この実施形態では、プローブ回転モジュール114は、軸144(すなわち、心棒のような構造部材)を中心として枢動可能である。角度調節機構140は、リンク機構148を備えている。リンク機構148は、器具アセンブリ100の構造部分152を貫通し、プローブ回転モジュール114の端に配置された連結具156に取り付けられている。リンク機構148が、例えば、ネジ付き部材156を対応する方向に回転させることによって、上下に作動されると、プローブ回転モジュール114が、一方向又は他の方向に枢動し、角度αを増減することになる。
【0018】
図3は、本示唆の一実施形態によるセンサ310の実施形態の斜視図である。センサ310は、概して、柔軟性の又は変形可能な梁要素(又は、ロッド、バー、板、シート等)314と、上述のセンサ磁場126(図1)を生成するために梁要素314に連結された手段又は装置320と、梁要素314の屈曲の大きさ又は程度に関する梁要素314の特性を測定するために梁要素314に操作可能に連通している手段又は装置322とを備えている。
【0019】
梁要素314は、一般的に、近位端部分328、遠位端部分330、及び近位端部分328から遠位端部分330に延在する長手部分334を備えている。遠位端部分330は、任意の適切な手段によって、プローブ回転モジュール又は他の器具114(図1)に固定して取り付けられるとよい。従って、梁要素314が屈曲すると、該梁要素314は、片持ち梁として、プローブ回転モジュール114に係留することになる。梁要素314とプローブ回転モジュール114との連結関係は、センサ310が点検、取換え等のために取り外し可能であるように構成されているとよい。梁要素314が図3に示されている非屈曲状態にあるとき、梁要素314の全長334はセンサ軸338に沿って延びた状態になっている。この実施形態では、長手部分334は梁要素314の支配的な寸法をなしているので、梁要素314がセンサ軸338に沿って配向されたとき、センサ軸338が、梁要素314の長軸に略対応する。梁要素314が、センサ磁場126と印加されているBo磁場118との相互作用によって与えられる力に比例して、屈曲可能又は変形可能であるように、梁要素314を構成する材料並びに梁要素314の長手部分334及び厚みは選択されているとよい。さらに、梁要素314は、屈曲状態と非屈曲状態との間を繰り返し移行することができるように、十分な柔軟性を有しているべきである。
【0020】
センサ磁場生成装置320は、該センサ磁場生成装置320が正確な方位で梁要素314に取り付けられたとき、センサ軸338に沿ってセンサ磁場126を生成するのに適するどのような装置であってもよい。例えば、センサ磁場生成装置320は、ソレノイド又は電流ループのような電磁装置であるとよい。図3に具体的に示されている実施形態では、センサ磁場生成装置320は、スプール346の周囲に螺旋巻き、すなわち、コイル巻きされた所定長さの導電体(例えば、ワイヤ)342を備えている。スプール346は、任意の適切な手段によって、例えば、梁要素314をスプール346の溝又は孔内に固定させることによって、梁要素314の遠位端部分330に連結されているとよい。導電体342のリード線352,356は、任意の適切なAC又はDC電源(図示せず)と信号連通するように配置されているとよい。センサ磁場生成装置320が作動されると、導電体342の巻装部分内に流れる電流によって、図1に示されている方向においてセンサ軸338に沿ってセンサ磁場126が生成されることになる。
【0021】
測定装置322は、梁要素314の屈曲の大きさ又は程度に関する梁要素314の特性を測定するのに適するどのような装置であってもよい。この実施形態では、測定装置322は、梁要素314の平面に取り付けられた歪ゲージである。歪ゲージは、基板366上に形成された抵抗回路網362と、抵抗回路網362を任意の適切な測定信号調節回路(例えば、増幅ブリッジ回路、図示せず)に相互接続するための電気リード線372,376と、を備えているとよい。典型的な歪ゲージの操作及び設計は、当業者に知られているので、ここでは詳細に説明しないことにする。一般的に、梁要素314の屈曲又は湾曲によって、梁要素314内に歪みが生じる。この歪みの大きさは、梁要素314が湾曲した程度に比例する。歪みεの値の簡易表示は、以下の通り、すなわち、ε=sin(θ)t/Lであり、θは、梁要素314が湾曲した角度であり、tは、梁要素314の厚みであり、Lは、梁要素の長手部分334である。抵抗回路網362の抵抗は、歪みの大きさに比例して変化する。従って、リード線372,376の測定信号を利用して、歪みの大きさを梁要素屈曲の大きさに関連付けることができる。この実施形態では、1つの歪ゲージが用いられているが、2つ以上の歪ゲージが梁要素314に取り付けられ、それらのそれぞれの機能が適切に組み合わされてもよいことに留意されたい。
【0022】
図1を再び参照すると、プローブ回転モジュール114(又は任意の他の器具)がその操作中に特定の位置、例えば、マジック角に保持されることが望ましい実施形態において、センサ110は、特に有用である。センサ110は、プローブ回転モジュール114がB磁場118(又は他の基準軸)に対して所望の角度αに位置決めされたとき、センサ110によって生じた検出磁場126がB磁場118に整列するように、すなわち、検出磁場126とB磁場118との間の角度がゼロになるように、プローブ回転モジュール114に対して配向されるとよい。例えば、センサ110の梁要素は、梁要素及び生じているセンサ磁場126がB磁場118と平行になるように、プローブ回転モジュール114に取り付けられるとよい。図1に示されている実施形態では、器具軸122とB磁場118との間の所望の角度αが54.7°のマジック角であると共に、プローブ回転モジュール114の外面が器具軸114と平行である場合には、センサ110の梁要素は、梁要素と外面との間の角度が35.3°であるように、プローブ回転モジュール114に取り付けられるとよい。操作の一実施形態として、プローブ回転モジュール114が54.7°の所望の角度で適切に位置決めされており、次いで、センサ110がセンサ磁場126を生成するように作動されたと仮定する。この場合、生成されたセンサ磁場126は、B磁場118に整列しており、その結果、どのような力もセンサ110の梁要素に生じない。センサ110からの電気応答は、プローブ回転モジュール114が所望の角度位置にあり、その結果、どのような調節も必要ではないことを示すことになる。
【0023】
図4は、器具が角度ズレして配置されており、その結果、調節が必要になる場合の図3に示されている形式のセンサ310の操作を示している。具体的には、図4の左部分は、励起されていないセンサ310を示しており、図4の右部分は、励起され、その結果、梁要素屈曲をもたらしている同じセンサ310を示している。センサ310が係留されている器具は、簡単にするために、図4には示されていない。図4の左部分を参照すると、器具の位置は、B磁場318に対する所望の角度にはない。センサ310がまだ励起されていないので、センサ310の梁要素314は、非屈曲状態にあり、完全にセンサ軸338に沿って延びている。センサ310が器具に連結されているので、センサ軸338とB磁場318との間に角度が付いており、これは、器具がB磁場318と所望の角度で整列していないことを示している。センサ310の設計及び操作原理に基づき、センサ軸338とB磁場318との間の角度を器具が所望の角度からズレた角度に正確に比例又は対応させることができる
【0024】
図4の右部分を参照すると、センサ310が励起されており、センサ軸338に沿って配向されたセンサ磁場326を生成している。センサ磁場326及びB磁場338は最初、互いに整列していないので、磁気モーメントが存在し、力が梁要素314に与えられることになる。図4の右部分から分かるように、力が梁要素314を曲げ、歪みを与えることによって、センサ磁場326がB磁場318に整列することになる。梁要素314に取り付けられた歪ゲージ322は、梁要素314のこの歪みの大きさを測定する。歪みの大きさは、センサ軸338(及び最初に加えられたときのセンサ磁場326)とB磁場318との間の角度差に依存している。器具の位置は、歪ゲージ322が、ゼロを示すまで、すなわち、梁要素314が非屈曲状態に戻ったことを示すまで、さらに詳細には、磁気モーメントが所望の角度でB磁場に整列していることを示すまで調節されるとよい。梁要素314を偏向させてB磁場318に整列させるのに必要なモーメントMoの1つの表示は、以下の通り、すなわち、Mo=sin(θ)2EI/Lであり、θは、梁要素が屈曲又は偏向した角度であり、Eは、梁要素314の弾性係数であり、Iは、梁要素314の慣性モーメントであり、Lは、梁要素314の長さである。
【0025】
図5は、本示唆の他の実施形態によるセンサ510の実施形態の斜視図である。センサ510は、概して、柔軟性の又は変形可能な梁要素514と、センサ軸538に沿って上述のセンサ磁場を生成するために梁要素514に連結された手段又は装置520と、梁要素514の屈曲の大きさ又は程度に関する梁要素514の特性を測定するために梁要素514に操作可能に連通している手段又は装置522とを備えている。この実施形態では、梁要素514は、圧電材料から構成されている。一般的に、圧電材料は、加えられた機械的な応力に応じて電気ポテンシャルを生成することができるどのような材料であってもよい。非制限的な例として、種々の結晶及びセラミック(例えば、水晶、チタン酸ジルコン酸鉛、又はPZT等)、並びにある種のポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF))が挙げられる。センサ磁場生成装置520は、上述したような電磁装置であればよい。従って、例えば、センサ磁場生成装置520は、センサ軸538を中心としてスプール546に巻装された導体542を備えているとよく、リード線552,556が適切な電源に接続されるように巻装部分から延在しているとよい。測定装置522は、梁要素514の厚さ方向の両側において梁要素514に適切に接続された2つの電気リード線572,576を備えており、これによって、梁要素514の屈曲に応じてリード線572,576に加えられた電圧が、梁要素514が屈曲した大きさ又は程度に関連付けられることになる。梁要素514の屈曲が電荷の非対称をもたらし、これによって、圧電効果を介して梁要素514を横切る電圧が生じるので、この実施形態では、梁要素514自体が測定装置522の一部を構成していると考えられる。図示されている実施形態では、梁要素514は、互いに隣接する2つの梁要素ユニット582,586を備えており、これらの各々が、それぞれのリード線572,576に接続されている。センサ磁場生成装置520によって生じたセンサ磁場がB磁場に整列していないとき、梁要素ユニット582,586に加えられた力は、梁要素ユニット582又は586の1つを圧縮状態とし、他の梁要素ユニット586又は582を引張状態とし、これによって、正味の電荷が圧電材料に生じ、これらの電荷による出力電圧がリード線572,576にもたらされることになる。図5に示されているセンサ510は、これ以外は、図3及び図4に示されているセンサ310と同様に操作されるようになっている。
【0026】
以下、図1を参照して、センサ110(具体的には、センサ310又は510)の操作の実施形態をNMR実験法と関連させて説明する。最初に、例えば、上述した角度調節機構140を利用することによって、プローブ回転モジュール114の角度を所望のマジック角である54.7°に設定する。この最初の設定中、センサ110を利用して、マジック角が得られていることを検証するとよい。次いで、実験用試料を含む試料ホルダ202(図2)をプローブ回転モジュール114内に装填し、NMR分析計を操作し、実験を開始することになる。実験中に一回以上、実験を中断させ、センサ110を操作し、試料ホルダ202がまだマジック角に位置していることを検証するとよい、すなわち、プローブ回転モジュール114がマジック角からズレているかどうかを確定するとよい。この角度ズレは、種々の理由、例えば、試料温度の変化(これは、可変温度(VT)NMR実験法の場合には、意図的になされる)によって生じることがある。試料ホルダ202がもはやマジック角に位置していないと判断された場合には、マジック角が復旧するまで、プローブ回転モジュール114の位置を調節する。次いで、実験を再開することになる。
【0027】
上述のプロセスにおいて、センサ110及び角度調節機構140を操作するそれぞれのステップは、互いに無関係に人手によって行われてもよい。すなわち、NMR分析計のユーザは、実験の中断、センサ110及び角度調節機構140の操作、及び実験の再開に関与するようになっていてもよい。しかし、他の実施形態では、これらのステップは、完全に又は部分的に自動化されていてもよい。例えば、NMR分析計の制御回路(図示せず)は、所定のNMR実験法用に設計されたプログラムに従って、これらのステップを実行してもよい。センサ110及び角度調節機構140のそれぞれの機能は、連係されているとよい。例えば、角度調節機構140は、所定の時刻に、プローブ回転モジュール114の角度位置に関してセンサ110によってもたらされるフィードバックに基づいて制御されるとよい。角度調節機構140は、センサ110から出力された測定信号がゼロになるまで(すなわち、センサ110の梁要素110がもはや屈曲していない状態になるまで)プローブ回転モジュール114の調節を行うモータ及び釣合錘(図示せず)を備えているとよい。
【0028】
センサ110を用いていない場合、ユーザは、試料を室温に戻し、実験用試料を角度検出用試料と取り換え、試料を冷却し、角度を点検し、実験用試料を再設置し、次いで、実験を再開する必要があるだろう。実験用試料と角度検出用試料とを切り換えるには、NMRプローブをB磁場から外に物理的に移動させる必要がある。NMRプローブは、B磁場内の元の位置に再び配置されないことがあり、これによって、角度設定を劣化させることになる。さらに、センサ110を用いないこの角度調節プロセスは、試験される全ての実験温度に対して行う必要があるだろう。これは、プローブ回転モジュール114の種々の構成部品が、それらの熱膨張係数に起因して、種々の温度において、角度位置に異なって影響を及ぼすからである。
【0029】
従って、センサ110が、試料の取換えを必要とすることなく、又はNMR実験法を過度に妨げることなく、プローブ回転モジュール114の測定及び調節を可能にすることが、明らかであろう。センサ110は、プローブ回転モジュール114のすでに存在している操作パラメータ又は操作状態、すなわち、静止B磁場を直接利用することによって、測定値をもたらすようになっている。センサ110は、試料回転に適しているNMRプローブを用いるどのような形式の技法に実施されてもよい。例として、制限されるものではないが、マジック角回転(MAS)法、二重配向回転(DOR)法、スイッチ角回転(SAS)法、可変(VT)用途、低温用途等、及びそれらの変形形態に関する技法が挙げられる。しかし、センサ110の用途は、NMR実験法に利用されるプローブ回転モジュール114に制限されないことも分かるだろう。代わって、基準データに対する位置が重要となる種々の器具が、センサ110を用いることによって、利得を得ることになるだろう。さらに、2つの磁場の相互作用に基づいて操作する上述のセンサ110の特定の実施形態は、通常の状態では、静磁場の使用に関連しない、すなわち、静磁場の使用を必要としない器具に適用されてもよい。例えば、上述したようにセンサ磁場を生成するように構成されたセンサ110が、器具に適切に取り付けられたとする。この場合、該器具の角度位置を測定することが望ましいときに、センサ磁場を生成するために、センサ110が励起されるのみならず、静磁場がセンサ110及び該器具に対する適切な方位に沿って生成されることになる。
【0030】
一般的に、本明細書では、「連通する(communicate)という用語(例えば、第1の構成部品が第2の構成部品に「連通する」又は「連通している」)という用語は、2つ以上の構成部品又は要素間の構造的、機能的、機械的、電気的、光学的、磁気的、イオン的、又は流体的な関係を示している。従って、1つの構成部品が第2の構成部品に連通しているという事実は、付加的な構成部品が第1及び第2の構成部品間に存在している可能性、並びに/又は付加的な構成部品が第1及び第2の構成部品と操作可能に関連若しくは係合している可能性を排除するものではない。
【0031】
本発明の種々の態様又は詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく変更されてもよいことをさらに理解されたい。さらに、上述の説明は、単なる例示にすぎず、制限することを目的とするものではない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲によって定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場に対する器具の角度位置を検出するためのセンサにおいて、
近位端部分、遠位端部分、及び前記近位端部分から前記遠位端部分に延在する長手部分を備えている柔軟性の梁要素であって、前記近位端部分が前記器具に連結されるように構成されており、柔軟性の梁要素が非屈曲状態にあるときに前記長手部分がセンサ軸に沿って延びた状態になっている、柔軟性の梁要素と、
前記梁要素に連結されており、かつ前記センサ軸と整列したセンサ磁場を生成するように構成された電磁装置と、
前記梁要素に連通しており、かつ前記梁要素の屈曲の大きさに関連した前記梁要素の特性を測定するように構成された測定装置と
を備えているセンサ。
【請求項2】
前記電磁装置は、前記センサ軸の周りに巻装された導電体から構成されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記測定装置は、前記梁要素に取り付けられた歪ゲージから構成されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記梁要素は、圧電材料から構成されており、
前記測定装置は、前記梁要素の厚さ方向の両側にそれぞれ接続された2つの電気リード線から構成されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
プローブ回転モジュールと、
静磁場に対する前記プローブ回転モジュールの角度位置を検出するためのセンサと
を備え、
前記センサが、前記プローブ回転モジュールに連結された近位端部分、遠位端部分、及び前記近位端部分から前記遠位端部分に延在する長手部分を備えている柔軟性の梁要素であって、前記梁要素が非屈曲状態にあるときに前記長手部分がセンサ軸に沿って延びた状態になっている、柔軟性の梁要素と、前記梁要素に連結されており、かつ前記センサ軸と整列したセンサ磁場を生成するように構成された電磁装置と、前記梁要素に連通しており、かつ前記梁要素の屈曲の大きさに関する前記梁要素の特性を測定するように構成された測定装置とを備えている、プローブ回転器具。
【請求項6】
前記電磁装置が、前記センサ軸の周りに巻装された導電体から構成されている、請求項5に記載のプローブ回転器具。
【請求項7】
前記測定装置が、前記梁要素に取り付けられた歪ゲージから構成されている、請求項5に記載のプローブ回転器具。
【請求項8】
前記梁要素が、圧電材料から構成されており、
前記測定装置が、前記梁要素の厚さ方向の両側にそれぞれ接続された2つの電気リード線から構成されている、請求項5に記載のプローブ回転器具。
【請求項9】
前記プローブ回転モジュールの前記角度位置を調節するための機構をさらに備えている請求項5に記載のプローブ回転器具。
【請求項10】
前記測定装置から受信した測定信号を処理するための回路をさらに備えている請求項5に記載のプローブ回転器具。
【請求項11】
前記プローブ回転モジュール及び前記センサを前記静磁場内に配置するための装置をさらに備えている請求項5に記載のプローブ回転器具。
【請求項12】
器具を配置した静磁場に対する前記器具の角度位置を検出するための方法において、
センサのセンサ軸と整列したセンサ磁場を生成するステップであって、前記センサが前記器具に取り付けられた柔軟性の梁要素を備えている、ステップと、
前記梁要素が非屈曲状態から屈曲した程度を測定するステップであって、最初に生じた前記センサ磁場が前記静磁場に整列している場合、前記梁要素が、前記梁要素が前記センサ軸に沿って延びている非屈曲状態になっており、一方で、最初に生じた前記センサ磁場が前記静磁場と整列していない場合、前記センサ磁場が強制的に前記静磁場に整列されて、その結果、前記梁要素が屈曲することになる、ステップと、
前記測定値を前記器具の前記角度位置に関連付けるステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記センサ磁場を生成するステップは、前記梁要素に取り付けられた電磁装置を励起することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記梁要素が屈曲した程度を測定するステップは、前記梁要素の屈曲に応じて前記梁要素に生じた歪みを測定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記梁要素が屈曲した程度を測定するステップは、前記梁要素に取り付けられた歪ゲージから信号を受信することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記梁要素が屈曲した程度を測定するステップは、前記梁要素の屈曲に応じて前記梁要素に生じた応力を測定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記梁要素は、圧電材料から構成されており、
前記梁要素が屈曲した程度を測定するステップは、前記梁要素に接続された1対の電気リード線から信号を受信することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記梁要素が非屈曲状態にあることが測定にて示されるまで、前記器具の前記角度位置を調節することをさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項19】
プローブ回転モジュールとなっている前記器具内に装填された試料プローブを回転させるように、前記プローブ回転モジュールを操作し、かつ前記静磁場を生成させることによって、磁気共鳴実験を開始することをさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項20】
試料プローブを回転させるように前記プローブ回転モジュールを操作する前に、前記プローブ回転モジュールの前記角度位置を前記静磁場に対する所望の角度に設定し、前記梁要素が非屈曲状態にあることが測定にて示された場合、前記プローブ回転モジュールの前記角度位置を調節することをさらに含む請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−500477(P2013−500477A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521854(P2012−521854)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043139
【国際公開番号】WO2011/011745
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】