説明

磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置

【課題】 遮蔽する空間内への磁界の漏洩を低減することが可能な磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置を提供する。
【解決手段】 1つの空間12を取り囲むように磁性体で形成された壁部材11を有しており、壁部材11が、継ぎ目のない一体構造である磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置とする。遮蔽する空間内への磁界の漏洩を低減することが可能な磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部からの磁界を遮蔽する磁気シールド装置として、透磁率が大きい磁性体で形成された遮蔽体で空間を取り囲んだ磁気シールド装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。このような磁気シールド装置によれば、遮蔽体に囲まれた空間内への外部磁界の侵入を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−354339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の磁気センサ装置においては、複数の部材を継ぎ合わせて遮蔽体を構成していることから、継ぎ目における各部材の端部に磁荷が現れ、遮蔽体で囲まれた空間内へ磁界が漏洩するという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、遮蔽する空間内への磁界の漏洩を低減することが可能な磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の磁気シールド装置は、1つの空間を取り囲むように磁性体で形成された壁部材を有しており、該壁部材が、継ぎ目のない一体構造であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の磁気シールド装置は、前記第1の磁気シールド装置において、前記壁部材は、少なくともその一部が折り曲げられた形状を有していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の磁気シールド装置は、前記第1または第2の磁気シールド装置において、前記壁部材の互いに対向する部分に形成された2つの貫通穴をさらに有していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第4の磁気シールド装置は、前記第3の磁気シールド装置において、前記2つの貫通穴に接する部分のみが前記壁部材の端部であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の電流センサ装置は、前記第1乃至第3のいずれかの磁気シールド装置と、前記空間内に収容された電流センサとを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁気シールド装置によれば、遮蔽する空間内への磁界の漏洩を低減することが可能な磁気シールド装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の磁気シールド装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す磁気シールド装置を示す模式的な平面図である。
【図3】図1に示す磁気シールド装置の構造を簡略化して示す模式的な断面図である。
【図4】図1に示す磁気シールド装置の折り曲げる前の状態を模式的に示す斜視図である。
【図5】図1に示す磁気シールド装置の折り曲げる前の状態を模式的に示す断面図である。
【図6】図1に示す磁気シールド装置の折り曲げ方を説明するための模式的な斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態の第2の例の電流センサ装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の磁気シールド装置ならびにそれを用いた電流センサ装置を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態の第1の例)
図1は、本発明の実施の形態の第1の例の磁気シールド装置を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す磁気シールド装置を示す模式的な平面図である。図3は、図1に示す磁気シールド装置の構造を簡略化して示す模式的な断面図である。なお、図3においては、図の+y方向の端面における壁部材11の折り曲げ構造の図示を省略し、磁気シールド装置の構造を簡略化して示している。図4は、図1に示す磁気シールド装置の折り曲げる前の状態を模式的に示す斜視図である。図5は、図1に示す磁気シールド装置の折り曲げる前の状態を模式的に示す断面図である。図6は、図1に示す磁気シールド装置の折り曲げ方を説明するための模式的な斜視図である。
【0015】
本例の磁気シールド装置は、図1〜3に示すように、空間12を取り囲む壁部材11と、壁部材11に形成された貫通穴21,22とを備えている。
【0016】
壁部材11は、空間12を取り囲むように薄板状の軟磁性体で形成されており、大まかには中空の円柱状の形状を有している。また、円柱の一方の端面(図の+y方向の端面)は、図2に示すように、壁部材11が折り曲げられて形成されており、壁部材11は、継ぎ目のない一体構造となっている。
【0017】
また、壁部材11で形成された円柱の両端面(図のy軸方向の両端面)の中央部には、貫通穴21,22が形成されている。すなわち、貫通穴21,22は、壁部材11の互いに対向する部分に形成されている。
【0018】
このような構造を有する本例の磁気シールド装置は、例えば、次のようにして形成することができる。
(1)図4および図5に示すような、一方(図の+y方向)の端部が開放されており、他方(図の−y方向)の端部が閉じられているとともに、閉じられた側の端面の中央に貫通穴21が形成された筒状の形状を有する壁部材11を形成する。
(2)遮蔽すべき対象物を、空間12内に収容する。
(3)壁部材11の一方側(図の+y方向側)を、図6に示すように折り曲げることにより、図2に示すように、一方側(図の+y方向側)の端面と貫通穴22とを同時に形成する。
なお、図6においては、山折りする部分を2点鎖線で示し、谷折りする部分を破線で示し
ている。
【0019】
このような構成を備える本例の磁気シールド装置は、壁部材11が継ぎ目のない一体構造であり、2つの貫通穴21,22に接する部分のみが壁部材11の端部である。よって、磁化が生じるのは、壁部材11の2つの貫通穴21,22に接する部分のみであり、空間12内へ漏洩する磁界は、貫通穴21,22の一方から他方へ向かう磁界のみである。このため、複数の部材が継ぎ合わされて構成された従来の磁気シールド装置と比較して、磁気的に遮蔽すべき空間内への磁界の漏洩を低減することができる。
【0020】
本例の磁気シールド装置において、壁部材11は、軟磁性体材料を用いて形成するのが望ましく、例えば、FeとNiとの合金であるパーマロイや、MoとFeとNiとの合金であるスーパーマロイや、純鉄のような、透磁率が大きい軟磁性体を好適に用いることができる。また、壁部材11の厚みは、厚いほど磁気シールド性が高くなるが、厚すぎると加工が困難になるので、必要な磁気シールド性に応じて適宜設定することができる。例えば、0.01〜0.1mm程度に設定すると、加工が容易である。
【0021】
(実施の形態の第2の例)
図7は、本発明の実施の形態の第2の例の電流センサ装置を模式的に示す断面図である。なお、本例においては、前述した実施の形態の第1の例と異なる部分について説明し、同様の要素には同様の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
本例の電流センサ装置は、図7に示すように、図1〜図6に示した実施の形態の第1の例の磁気シールド装置と、空間12内に収容された電流センサ31とを有している。
【0023】
電流センサ31は、環状であり、測定対象である電流が流れるケーブル32を取り囲むように配置されている。また、電流センサ31は、磁気シールド装置の壁部材11で囲まれた空間12内に収容されており、ケーブル32が磁気シールド装置の2つの貫通穴21,22を通過するようにされている。
【0024】
このような構成を備える本例の電流センサ装置によれば、外部磁界が電流センサ31に与える影響をとても小さくできるので、高精度な電流センサ装置を得ることができる。この効果が得られる理由は、空間12内へ漏洩する磁界が、殆ど貫通穴21,22の一方から他方へ向かう磁界のみになり、その磁界の向きが、ケーブル32を流れる電流によって発生する磁界の向きと直交するためであると推測される。
【0025】
本例の電流センサ装置において、電流センサ31としては、周知の電流センサを用いることができる。例えば、測定対象である電流が流れるケーブル32を取り囲む環状の磁性体コアと、その磁性体コアに巻き付けられた、磁界発生用コイルおよび検出用コイルとを備える周知の電流センサを好適に用いることができる。
【0026】
(変形例)
本発明は前述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0027】
例えば、前述した実施の形態の例においては、筒の一方端側のみが折り曲げられた形状の壁部材11を有する例を示したが、これに限定されるものではない。継ぎ目のない一体構造の壁部材11によって空間12が取り囲まれていれば良く、他の形状の壁部材11を有するものであっても構わない。例えば、長さ方向の両端が開放された筒の両側を折り曲げて得られる形状の壁部材11を有するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0028】
11:壁部材
12:空間
21,22:貫通穴
31:電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの空間を取り囲むように磁性体で形成された壁部材を有しており、該壁部材が、継ぎ目のない一体構造であることを特徴とする磁気シールド装置。
【請求項2】
前記壁部材は、少なくともその一部が折り曲げられた形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の磁気シールド装置。
【請求項3】
前記壁部材の互いに対向する部分に形成された2つの貫通穴をさらに有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気シールド装置。
【請求項4】
前記2つの貫通穴に接する部分のみが前記壁部材の端部であることを特徴とする請求項3に記載の磁気シールド装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の磁気シールド装置と、前記空間内に収容された電流センサとを少なくとも有していることを特徴とする電流センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−30555(P2013−30555A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164496(P2011−164496)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】