磁気センサ装置
【課題】 簡易な構成で外部磁界の両方向の強度変化を検出すること。
【解決手段】 この磁気センサ装置1は、中心部6aの保磁力が外周部6bの保磁力よりも大きくなるように複数の磁性体層を有し、長手方向に沿って交互に反転する磁界が印加されることにより、外周部6bにおいて磁化反転を生じさせる線状のバルクハウゼン素子6と、バルクハウゼン素子6の外周部6bの外側において、長手方向に沿って巻き付けられたコイル7と、コイル7の両端に接続され、磁化反転によってコイル7の両端間に生じたパルス電圧の極性に応じて、2種類の光信号を出力する光出力回路12とを備える。
【解決手段】 この磁気センサ装置1は、中心部6aの保磁力が外周部6bの保磁力よりも大きくなるように複数の磁性体層を有し、長手方向に沿って交互に反転する磁界が印加されることにより、外周部6bにおいて磁化反転を生じさせる線状のバルクハウゼン素子6と、バルクハウゼン素子6の外周部6bの外側において、長手方向に沿って巻き付けられたコイル7と、コイル7の両端に接続され、磁化反転によってコイル7の両端間に生じたパルス電圧の極性に応じて、2種類の光信号を出力する光出力回路12とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼン効果における磁化反転を利用した磁気センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果を利用した磁化反転を発生可能な素子(以下、「バルクハウゼン素子」と言う。)に関する技術としては、下記特許文献1記載の磁気センサがある。この磁気センサでは、バルクハウゼン素子である複合磁性線の先端部に高透磁率を有するキャップが取り付けられると共に、複合磁性線の外周に巻き付けられたコイルの両端間にLEDが接続され、更にこのLEDには光ファイバが光学的に接続されている。この磁気センサは、外部磁界の変化をパルス電圧で検出し、このパルス電圧を光信号に変換して外部に出力する。また、下記引用文献2にも、同様の構成を有するセンサ装置が開示されている。
【特許文献1】特開平9−43326号公報
【特許文献2】特開平5−264686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したようなセンサ装置においては、外部磁界の一方向の変化を検出して光信号として出力することはできるが、外部磁界の両方向の強度変化を検出することができないため、例えば、回転計、速度計、流量計等に応用しようとした場合に、精度を確保するためには、外部磁石の構成の複雑化を招いていた。
【0004】
また、バルクハウゼン素子を複数用意することで、外部磁界の両方向の強度変化を別々に出力することは可能ではあるが、その場合は全体の装置構成が複雑となるとともに、バルクハウゼン素子の特性のばらつきにより検出感度に差が生ずるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、簡易な構成で外部磁界の両方向の強度変化を検出することが可能な磁気センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の磁気センサ装置は、中心部の保磁力が外周部の保磁力よりも大きくなるように複数の磁性体層を有し、長手方向に沿って交互に反転する磁界が印加されることにより、外周部において磁化反転を生じさせる線状のバルクハウゼン素子と、バルクハウゼン素子の外周部の外側において、長手方向に沿って巻き付けられたコイルと、コイルの両端に接続され、磁化反転によってコイルの両端間に生じたパルス電圧の極性に応じて、2種類の光信号を出力する光出力回路とを備える。
【0007】
このような磁気センサ装置によれば、バルクハウゼン素子に交互に反転する磁界が印加されることにより、バルクハウゼン素子の長手方向に沿って磁化反転が生じ、バルクハウゼン素子に巻き付けられたコイルの両端にパルス電圧が発生する。この際、コイルの両端に接続された光出力回路から、パルス電圧の極性に応じた2種類の光信号が出力されるので、バルクハウゼン素子を増設することなく、外部磁界の両方向の強度変化を検出することができる。
【0008】
また、光出力回路は、コイルの第1の端子と第2の端子との間に接続され、第1の極性のパルス電圧の発生に応じて発光する第1の発光素子と、第1の端子と第2の端子との間において第1の発光素子とは逆方向に接続され、第1の極性とは反対の第2の極性のパルス電圧の発生に応じて発光する第2の発光素子とを有することが好ましい。この場合、2つの発光素子において波長や輝度等が異なる2種類の光信号を、パルス電圧の極性に応じて出力することで、外部磁界の両方向の強度変化を容易に検出することができる。
【0009】
さらに、光出力回路は、コイルの第1の端子と第2の端子との間に直列に接続され、パルス電圧により発生する電流を第1の端子から第2の端子に向けて整流する第1及び第2の整流素子と、第1の端子と第2の端子との間に直列に接続され、電流を第2の端子から第1の端子に向けて整流する第3及び第4の整流素子と、第1及び第2の整流素子、又は第3及び第4の整流素子と直列に接続された負荷抵抗と、第1の整流素子と第2の整流素子との間、及び第3の整流素子と第4の整流素子との間に直列に接続された発光素子とを有することも好ましい。このような光出力回路を備えれば、パルス電圧がコイルの第1の端子から第2の端子に向かって発生する場合と、第2の端子から第1の端子に向かって発生する場合とで、発光素子に接続される負荷抵抗を変化させることができ、1つの発光素子でパルス電圧の極性に応じた2種類の輝度を有する光信号を出力することができる。その結果、外部磁界の2方向の強度変化を容易に検出することができる。
【0010】
またさらに、外部からの制御により、バルクハウゼン素子に対して飽和状態に達するまで磁場を印加する磁場発生回路を更に備えることも好ましい。こうすれば、磁気センサ装置の検出機能を容易に一時停止させることができる。
【0011】
さらにまた、バルクハウゼン素子の長手方向の中央部外周には、磁気シールドが設けられていることも好ましい。かかる構成を採れば、バルクハウゼン素子に余分な磁界が与えられることが防止され、検出感度の向上が実現できる。
【0012】
また、外部からバルクハウゼン素子の長手方向の中心部に向かう磁界をバイパスする磁気バイパス部を更に備えることも好ましい。一般に、外部磁界がバルクハウゼン素子の中央部に印加される場合は、素子が常に強磁場に置かれるため、磁化反転特性にバラツキが発生しやすい傾向にあった。外部からバルクハウゼン素子の中央部に向かう磁界をバイパスする構成を採ることで、不必要に印加される磁界が弱められ、磁化反転特性のバラツキが効果的に低減される。
【0013】
またさらに、バルクハウゼン素子の一端部の近傍と他端部の近傍との間に設けられた磁気誘導体を更に備えることも好ましい。こうすれば、外部磁石等の磁界印加手段とバルクハウゼン素子との間を磁気誘導体が介在することで、装置構成の自由度が広がる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の磁気センサ装置によれば、簡易な構成で外部磁界の両方向の強度変化を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る磁気センサ装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態である磁気センサ装置1は、外部磁界の磁束変化を検出するための装置であり、回転計、速度計、流量計、位置検出器等として応用されるものである。図1に示すように、磁気センサ装置1は、外部磁界の変化に応じてパルス電圧を発生させるセンサ部2と、センサ部2から出力されたパルス電圧に応じて光信号を生成・出力する光信号生成部3と、センサ部2の機能を一時停止させる一時停止部(磁場発生回路)4とが、遮光性を有する筐体5内に配置されて構成されている。
【0017】
センサ部2は、線状のバルクハウゼン素子6の外周部6bの外側にコイル7が巻き付けられてなる。このバルクハウゼン素子6は、保磁力の異なる中心部(磁性体層)6aと外周部(磁性体層)6bとから成る2層構造を有し、中心部6aの保磁力が外周部6bの保磁力よりも大きくされている。このようなバルクハウゼン素子としては、例えば、鉄、コバルト、バナジウムの合金(バイカロイ合金)のワイヤにひねり処理又はクラッド加工を施したものが用いられる。コイル7は、バルクハウゼン素子6の中心軸線を中心にしてバルクハウゼン素子6の長手方向(図1の左右方向)に沿って巻き付けられ、その両端7a,7bは、光信号生成部3の回路基板8に接続されている。
【0018】
光信号生成部3は、回路基板8上に接続された発光ダイオード(発光素子)9を備え、筐体5の端部における発光ダイオード9の光軸上には、発光ダイオード9から出射された光信号を外部に導光する導光部10が、筐体5を貫通して設けられている。この導光部10の外側端部には、さらに光ファイバ11が接続されている。発光ダイオード9が搭載される回路基板8上には、発光ダイオード9を含む光出力回路12が形成されている。
【0019】
光出力回路12の回路図である図2に示すように、バルクハウゼン素子6に巻き付けられたコイル7の一方の端子7aは、抵抗素子14を介してダイオード(整流素子)13aのアノードが接続され、ダイオード13aのカソードに発光ダイオード9のアノードが接続されている。さらに、発光ダイオード9のカソードには、ダイオード(整流素子)13bのアノードが接続され、ダイオード13bのカソードには、コイル7の他方の端子7bが接続されている。つまり、光出力回路12は、コイルの両端子間7a,7bに、抵抗素子14、ダイオード13a、発光ダイオード9、及びダイオード13bがこの順で直列に接続された構成を有している。これらのダイオード13a,13bは、コイル7におけるパルス電圧によって発生する電流を、コイル7内において端子7bから端子7aに向けて整流する役割を有する。
【0020】
さらに、発光ダイオード9のアノードには、ダイオード(整流素子)13cのカソードが接続され、ダイオード13cのアノードは端子7bに接続されるとともに、発光ダイオード9のカソードには、ダイオード(整流素子)13dのアノードが接続され、ダイオード13dのカソードは端子7aに接続されている。つまり、光出力回路12は、コイルの両端子間7b,7aに、ダイオード13c、発光ダイオード9、及びダイオード13dがこの順で直列に接続された構成を有し、ダイオード13c,13dは、コイル7におけるパルス電圧によって発生する電流を、コイル7内において端子7aから端子7bに向けて整流する役割を有する。
【0021】
ここで、ダイオード13a,13bを含む閉回路に抵抗素子14が挿入されることにより、ダイオード13c,13dを含む閉回路よりも負荷抵抗が大きくされて、パルス電圧の極性によって発光ダイオード9から出射される光信号の輝度を2種類に変化させている。なお、ダイオード13c,13dを含む閉回路上には、抵抗素子14と異なる抵抗値の抵抗素子が直列に接続されていてもよい。
【0022】
図1に戻って、筐体5の内部のセンサ部2に隣接する位置には、一時停止部4として、鉄心部15とコイル16とから構成された電磁石が設けられている。鉄心部15は、バルクハウゼン素子6の中心軸線の延長線上に沿って、片方の端面をバルクハウゼン素子6の端面に対向させるように配置され、鉄心部15の外周面の外側にはコイル16が巻き付けられている。このコイル16の両端子17は、筐体5の外部に導出されており、この端子17を介して、外部から電磁石を駆動する駆動電流が供給されて一時停止部4が生成する磁場強度が制御される。
【0023】
このような構成の磁気センサ装置1の筐体5の外側には、バルクハウゼン素子6の中心軸線と平行な回転軸18aを有する回転体18が、センサ部2に並列に配置されている。回転体18の外周部には、回転軸と平行に棒状の永久磁石19が設けられている。
【0024】
以上説明した磁気センサ装置1によれば、筐体5の外部に設置された回転体18によりバルクハウゼン素子6の端部に、交互に反転するバルクハウゼン素子6の長手方向の磁界が印加されることにより、バルクハウゼン素子6の外周部6bの長手方向に沿って磁化反転が生じ、バルクハウゼン素子6に巻き付けられたコイル7の両端子7a,7bの間にパルス電圧が発生する。本発明者らにより、このパルス電圧は、バルクハウゼン素子6に印加される磁界の変化の方向によって、正負が反転することも明らかにされた。この際、光出力回路12において、コイル7におけるパルス電圧がコイル7の端子7aから端子7bの方向に発生する場合と、端子7bから端子7aの方向に発生する場合とで、発光ダイオード9の負荷抵抗を変化させることができるので、1つの発光素子でパルス電圧の正負に応じた2種類の輝度を有する光信号が出力される。従って、バルクハウゼン素子6を増設することなく、外部磁界の両方向の強度変化を容易に検出することができると同時に、検出結果を光ファイバを介して遠隔地に自律的に伝送することができる。
【0025】
また、一時停止部4の端子17を介して、外部からバルクハウゼン素子6を磁気飽和させるのに十分な大きさの駆動電流を供給してバルクハウゼン素子6に磁場を印加することで、磁気センサ装置の検出機能を容易に一時停止させることができる。特に、この場合、光出力回路12に新たな素子を追加すること無しに一時停止機能を実現することができるので、磁気センサ装置1の信頼性が損なわれることもない。
【0026】
さらに、磁気センサ装置1の光信号生成部3においては、コイル7の1ターン当たり26.7mVの起電力が得られ、巻き数3000のコイル7で約80Vの起電力が得られており、発光ダイオード9を駆動するのに十分な起電力を持っている。このように、バルクハウゼン素子6及びコイル7により発生するパルス電圧により発光ダイオード9を直接駆動する構成を採っているので、発光素子駆動用の制御回路や電源回路が不要となり、磁気センサ装置1の小型化が可能となるとともに、制御回路、電源回路等から発生するノイズによる誤動作も防止される。
【0027】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態である磁気センサ装置21の透視図、図4は、図3の光出力回路32の回路構成図である。本実施形態にかかる磁気センサ装置21は、光信号生成部23における発光ダイオード29の構成、及び光出力回路32の回路構成が第1実施形態のものと異なる。
【0028】
すなわち、図4に示すように、回路基板28上に形成された光出力回路32は、コイル7の端子7a,7bに発光色の異なる2つのLED29a,29bが接続された構成を有し、LED29aは、端子7aと端子7bとの間に接続され、コイル7によって光出力回路32に生じるパルス電圧が端子7aと端子7bとの間で端子7aが正となる極性(第1の極性)で発生した場合に発光し、LED29bは、端子7aと端子7bとの間においてLED29aとは逆方向に接続され、コイル7によって光出力回路32に生じるパルス電圧が端子7aと端子7bとの間で端子7bが正となる極性(第2の極性)で発生した場合に発光する。より詳細には、LED29aのアノードは、コイル7の端子7aに接続され、LED29aのカソードは、コイル7の端子7bに接続されると共に、LED29bのアノードは、コイル7の端子7bに接続され、LED29bのカソードは、コイル7の端子7aに接続されている。このような構成により、コイル7の両端子7a,7bの間において発生するパルス電圧の極性に応じて、LED29a又はLED29bのいずれかが異なる発光色で発光する。発光ダイオード29は、これらのLED29a,29bを含んで構成され、LED29a,29bから発生する光を合成して光信号として外部に出射する。なお、LED29a,29bとしては、互いに発光輝度特性の異なるLEDを用いるようにしてもよい。
【0029】
なお、光出力回路32の回路構成としては、様々な変形態様を採ることができる。例えば、図5に示すように、LED29aのアノードが端子7aに接続され、LED29bのアノードが端子7bに接続され、LED29a及びLED29bのカソードどうしを接続すると共に、LED29a及びLED29bのそれぞれの両端間に抵抗素子30a,30bを接続した構成であってもよい。このような回路構成においても、パルス電圧が第1の極性で発生した場合にLED29aが発光し、第2の極性で発生した場合にLED29bが発光する。
【0030】
このような磁気センサ装置21によれば、2つのLED29a,29bにおいて波長や輝度等が異なる2種類の光信号を、コイル7の端子7a,7b間におけるパルス電圧の極性に応じて出力することで、光信号の受信側において外部磁界の両方向の強度変化を容易に検出することができる。また、光ファイバを複数用意しなくても、外部磁界の両方向の強度変化を、2種類の光信号として遠隔地に伝送することができる。
【0031】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、磁気センサ装置1,21においては、バルクハウゼン素子6の長手方向の中央部外周には、磁気シールド部材が設けられていてもよい。図6は、本発明の第1実施形態の変形例である磁気センサ装置41の透視図である。同図に示すように、バルクハウゼン素子6の中央部に巻き付けられたコイル7の外側は、鉄、コバルト合金等の磁気インピーダンスの低い材料からなる磁気シールド部材42によって覆われている。このような磁気シールド部材42の存在により、例えば、棒状の磁石をバルクハウゼン素子6の中心軸線に垂直な回転軸を中心に回転させた場合等に、バルクハウゼン素子6の中央部に強い磁界が印加されることを防止することができる。バルクハウゼン素子6が常に強い磁界内に置かれると、磁化反転特性にバラツキが発生することが分かっており、出力されるパルス電圧に20〜30%の変動が生じる。磁気シールド部材42を備えることで、このようなパルス電圧の変動を効果的に低減することができるので、磁気センサ装置の検出感度の向上が実現できる。
【0032】
また、バルクハウゼン素子6の両端部と筐体5外部の永久磁石等の磁界発生部との間には、鉄、ニッケル合金、鉄合金等で形成された磁気誘導体を設けてもよい。このような磁気誘導体を設けることで、バルクハウゼン素子6と磁界発生部との位置関係に依存しない自由な磁気経路を形成することができる。この場合でも、磁気誘導体は外部磁界の変化に対して高速で追随するので、バルクハウゼン素子6における磁化反転に影響を与えることもなく、磁気センサ装置全体の感度を維持することができる。図7〜図9には、磁気誘導体を含む磁気センサ装置の変形例を示している。なお、図8及び図9においては、磁気センサ装置におけるセンサ部2及び磁気誘導体以外の構成要素は、図示を省略している。
【0033】
図7に示す磁気センサ装置61においては、バルクハウゼン素子6の両端部の近傍には、1組の直方体形状の磁気誘導体62a,62bが、その一端をバルクハウゼン素子6の端部に挿通された状態で設けられ、他端側は、回転体18の外周部に固定された永久磁石19のN極又はS極の近傍に位置するようにされている。このようにバルクハウゼン素子6の一端部の近傍と他端部の近傍との間に磁気誘導体を備えることで、磁気センサ装置全体の感度を向上させることができる。
【0034】
図8には、エンジンにおけるシリンダ等における往復運動を検出するための磁気センサ装置における磁気誘導体の構造を示している。同図に示す磁気センサ装置81においては、磁極が互いに異なる方向を向いている1組の棒状の永久磁石82a,82bが、バルクハウゼン素子6の中心軸線と平行になるように設けられ、バルクハウゼン素子6の一端部と永久磁石82a,82bの一端部との間には、磁気誘導体83が設けられている。また、永久磁石82a,82bの他端部とバルクハウゼン素子6の他端部との間には、シリンダの往復運動に伴って永久磁石82a,82b間を往復するピストンリング等と一体化された磁気誘導体84が設けられている。磁気誘導体84とバルクハウゼン素子6の他端部との間には、磁気誘導体84の往復運動時にバルクハウゼン素子6と磁気誘導体84との間を磁気誘導する磁気誘導体85が更に設けられている。このような磁気センサ装置81によれば、エンジン等において往復運動する部位の位置を容易に検出することができ、エンジンの点火、排気等のタイミング制御を行う際の装置の小型化、簡素化が容易となる。
【0035】
図9には、棒状の永久磁石の中心部が回転中心となる場合の磁気センサ装置の構成を示す。この磁気センサ装置101は、互いに対面する平板リング状の磁気誘導体103a,103bを有し、磁気誘導体103a,103bには、それぞれ、その表面に平行に外側に向けて突出する突出部106a,106bが形成され、突出部106aと突出部106bとの間には、バルクハウゼン素子6の両端部を突出部106a,106bの内面に近接させてセンサ部2が配置されている。磁気誘導体103aと磁気誘導体103bとは、対向面上に円柱形状の非磁性体からなる接続部材107が接合されることによって、互いに支持されている。この磁気誘導体103aと磁気誘導体103bとの間には、磁気誘導体103a,103bに平行な平面に沿って棒状の永久磁石102が、その重心Gが磁気誘導体103a,103bの中心軸線上に位置するように設けられ、永久磁石102は、その磁極によって挟まれる重心Gを回転中心として磁気誘導体103a,103bに平行な平面に沿って回転可能に軸支されている。さらに、磁気誘導体103aには、磁気誘導体103bの内面に向けて突出する複数の磁気誘導体104が取り付けられ、磁気誘導体103bには、磁気誘導体103aの内面に向けて突出する複数の磁気誘導体105が取り付けられている。磁気誘導体104及び磁気誘導体105は、磁気誘導体103a,103bの外縁に沿って交互に並ぶと共に、永久磁石の重心Gを挟んで互いに対峙するように配置されている。このような配置によって、磁気誘導体104及び磁気誘導体105は、永久磁石102の回転に伴って永久磁石102の両磁極の近傍に同時に位置するようにされている。このような磁気誘導体の構成によれば、永久磁石102の回転に応じて永久磁石の両磁極とバルクハウゼン素子の両端部との間において磁気誘導することができるとともに、永久磁石が一回転する間に複数回の検出を行うことができる。
【0036】
また、バルクハウゼン素子6の中心部と外部の永久磁石等の磁界発生部との間の磁気経路上には磁気バイパス部が設けられていてもよい。磁気バイパス部を含むセンサ部2の変形例である図10に示すように、磁界発生部としての棒状の永久磁石112が、両磁極の間を回転中心としてバルクハウゼン素子6を含む平面に沿って回転可能に支持されている。センサ部2には、バルクハウゼン素子6の中心軸線に垂直な状態にある時の永久磁石112の両磁極を囲むように設けられた磁気バイパス部113が設けられている。この磁気バイパス部113は、バルクハウゼン素子6の中心軸線に対する永久磁石112の傾斜角が所定角度以上の場合に、永久磁石112から発生した磁界をバイパスすることによりバルクハウゼン素子6に印可される磁界を弱める役割を果たす。一般に、外部磁石がバルクハウゼン素子6を含む平面に沿って回転する場合は、バルクハウゼン素子6が常に強磁場に置かれるため、磁化反転特性にバラツキが発生しやすい傾向にあった。このような磁気バイパス部113を備えることで、永久磁石112の磁極が回転に伴って素子6の両端から離れた場合は素子に印可される磁界が弱められ、磁化反転特性のバラツキが効果的に低減される。
【0037】
また、磁気センサ装置1,21におけるセンサ部2及び磁界発生部である回転体18の配置方向は、特定の方向に限定されるものではなく、例えば、図11に示すように、センサ部2をバルクハウゼン素子6の中心軸線が回路基板8と平行になるように配置させてもよい。この場合は、回転体18の回転軸18aがバルクハウゼン素子6の中心軸線と平行になるように固定される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態である磁気センサ装置の平面透視図である。
【図2】図1の回路基板上に形成された光出力回路の回路図である。
【図3】本発明の第2実施形態である磁気センサ装置の平面透視図である。
【図4】図3の回路基板上に形成された光出力回路の回路図である。
【図5】図4の光出力回路の別の接続形態を示す回路図である。
【図6】本発明の変形例である磁気センサ装置の平面透視図である。
【図7】本発明の変形例である磁気センサ装置の平面透視図である。
【図8】本発明の変形例である磁気センサ装置の概略構成を示す図である。
【図9】(a)は、本発明の変形例における磁気誘導体の正面図、(b)は、(a)の磁気誘導体の側面図である。
【図10】(a)は、本発明の変形例におけるセンサ部及び磁気バイパス部を含む構成を示す側面図、(b)は、(a)のセンサ部及び磁気バイパス部の平面図である。
【図11】本発明の変形例である磁気センサ装置の平面透視図である。
【符号の説明】
【0039】
1,21,41,61,81,101…磁気センサ装置、3,23…光信号生成部、4…一時停止部(磁場発生回路)、6…バルクハウゼン素子、6a…中心部(磁性体層)、6b…外周部(磁性体層)、7…コイル、7a,7b…端子、9,29…発光ダイオード(発光素子)、29a,29b…LED(発光素子)、12,32…光出力回路、13a,13b,13c,13d…ダイオード(整流素子)、14…抵抗素子、19,82a,82b,102,112…永久磁石、42…磁気シールド部材、62a,62b,83,84,85,103a,103b,104,105…磁気誘導体、113…磁気バイパス部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼン効果における磁化反転を利用した磁気センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果を利用した磁化反転を発生可能な素子(以下、「バルクハウゼン素子」と言う。)に関する技術としては、下記特許文献1記載の磁気センサがある。この磁気センサでは、バルクハウゼン素子である複合磁性線の先端部に高透磁率を有するキャップが取り付けられると共に、複合磁性線の外周に巻き付けられたコイルの両端間にLEDが接続され、更にこのLEDには光ファイバが光学的に接続されている。この磁気センサは、外部磁界の変化をパルス電圧で検出し、このパルス電圧を光信号に変換して外部に出力する。また、下記引用文献2にも、同様の構成を有するセンサ装置が開示されている。
【特許文献1】特開平9−43326号公報
【特許文献2】特開平5−264686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したようなセンサ装置においては、外部磁界の一方向の変化を検出して光信号として出力することはできるが、外部磁界の両方向の強度変化を検出することができないため、例えば、回転計、速度計、流量計等に応用しようとした場合に、精度を確保するためには、外部磁石の構成の複雑化を招いていた。
【0004】
また、バルクハウゼン素子を複数用意することで、外部磁界の両方向の強度変化を別々に出力することは可能ではあるが、その場合は全体の装置構成が複雑となるとともに、バルクハウゼン素子の特性のばらつきにより検出感度に差が生ずるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、簡易な構成で外部磁界の両方向の強度変化を検出することが可能な磁気センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の磁気センサ装置は、中心部の保磁力が外周部の保磁力よりも大きくなるように複数の磁性体層を有し、長手方向に沿って交互に反転する磁界が印加されることにより、外周部において磁化反転を生じさせる線状のバルクハウゼン素子と、バルクハウゼン素子の外周部の外側において、長手方向に沿って巻き付けられたコイルと、コイルの両端に接続され、磁化反転によってコイルの両端間に生じたパルス電圧の極性に応じて、2種類の光信号を出力する光出力回路とを備える。
【0007】
このような磁気センサ装置によれば、バルクハウゼン素子に交互に反転する磁界が印加されることにより、バルクハウゼン素子の長手方向に沿って磁化反転が生じ、バルクハウゼン素子に巻き付けられたコイルの両端にパルス電圧が発生する。この際、コイルの両端に接続された光出力回路から、パルス電圧の極性に応じた2種類の光信号が出力されるので、バルクハウゼン素子を増設することなく、外部磁界の両方向の強度変化を検出することができる。
【0008】
また、光出力回路は、コイルの第1の端子と第2の端子との間に接続され、第1の極性のパルス電圧の発生に応じて発光する第1の発光素子と、第1の端子と第2の端子との間において第1の発光素子とは逆方向に接続され、第1の極性とは反対の第2の極性のパルス電圧の発生に応じて発光する第2の発光素子とを有することが好ましい。この場合、2つの発光素子において波長や輝度等が異なる2種類の光信号を、パルス電圧の極性に応じて出力することで、外部磁界の両方向の強度変化を容易に検出することができる。
【0009】
さらに、光出力回路は、コイルの第1の端子と第2の端子との間に直列に接続され、パルス電圧により発生する電流を第1の端子から第2の端子に向けて整流する第1及び第2の整流素子と、第1の端子と第2の端子との間に直列に接続され、電流を第2の端子から第1の端子に向けて整流する第3及び第4の整流素子と、第1及び第2の整流素子、又は第3及び第4の整流素子と直列に接続された負荷抵抗と、第1の整流素子と第2の整流素子との間、及び第3の整流素子と第4の整流素子との間に直列に接続された発光素子とを有することも好ましい。このような光出力回路を備えれば、パルス電圧がコイルの第1の端子から第2の端子に向かって発生する場合と、第2の端子から第1の端子に向かって発生する場合とで、発光素子に接続される負荷抵抗を変化させることができ、1つの発光素子でパルス電圧の極性に応じた2種類の輝度を有する光信号を出力することができる。その結果、外部磁界の2方向の強度変化を容易に検出することができる。
【0010】
またさらに、外部からの制御により、バルクハウゼン素子に対して飽和状態に達するまで磁場を印加する磁場発生回路を更に備えることも好ましい。こうすれば、磁気センサ装置の検出機能を容易に一時停止させることができる。
【0011】
さらにまた、バルクハウゼン素子の長手方向の中央部外周には、磁気シールドが設けられていることも好ましい。かかる構成を採れば、バルクハウゼン素子に余分な磁界が与えられることが防止され、検出感度の向上が実現できる。
【0012】
また、外部からバルクハウゼン素子の長手方向の中心部に向かう磁界をバイパスする磁気バイパス部を更に備えることも好ましい。一般に、外部磁界がバルクハウゼン素子の中央部に印加される場合は、素子が常に強磁場に置かれるため、磁化反転特性にバラツキが発生しやすい傾向にあった。外部からバルクハウゼン素子の中央部に向かう磁界をバイパスする構成を採ることで、不必要に印加される磁界が弱められ、磁化反転特性のバラツキが効果的に低減される。
【0013】
またさらに、バルクハウゼン素子の一端部の近傍と他端部の近傍との間に設けられた磁気誘導体を更に備えることも好ましい。こうすれば、外部磁石等の磁界印加手段とバルクハウゼン素子との間を磁気誘導体が介在することで、装置構成の自由度が広がる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の磁気センサ装置によれば、簡易な構成で外部磁界の両方向の強度変化を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る磁気センサ装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態である磁気センサ装置1は、外部磁界の磁束変化を検出するための装置であり、回転計、速度計、流量計、位置検出器等として応用されるものである。図1に示すように、磁気センサ装置1は、外部磁界の変化に応じてパルス電圧を発生させるセンサ部2と、センサ部2から出力されたパルス電圧に応じて光信号を生成・出力する光信号生成部3と、センサ部2の機能を一時停止させる一時停止部(磁場発生回路)4とが、遮光性を有する筐体5内に配置されて構成されている。
【0017】
センサ部2は、線状のバルクハウゼン素子6の外周部6bの外側にコイル7が巻き付けられてなる。このバルクハウゼン素子6は、保磁力の異なる中心部(磁性体層)6aと外周部(磁性体層)6bとから成る2層構造を有し、中心部6aの保磁力が外周部6bの保磁力よりも大きくされている。このようなバルクハウゼン素子としては、例えば、鉄、コバルト、バナジウムの合金(バイカロイ合金)のワイヤにひねり処理又はクラッド加工を施したものが用いられる。コイル7は、バルクハウゼン素子6の中心軸線を中心にしてバルクハウゼン素子6の長手方向(図1の左右方向)に沿って巻き付けられ、その両端7a,7bは、光信号生成部3の回路基板8に接続されている。
【0018】
光信号生成部3は、回路基板8上に接続された発光ダイオード(発光素子)9を備え、筐体5の端部における発光ダイオード9の光軸上には、発光ダイオード9から出射された光信号を外部に導光する導光部10が、筐体5を貫通して設けられている。この導光部10の外側端部には、さらに光ファイバ11が接続されている。発光ダイオード9が搭載される回路基板8上には、発光ダイオード9を含む光出力回路12が形成されている。
【0019】
光出力回路12の回路図である図2に示すように、バルクハウゼン素子6に巻き付けられたコイル7の一方の端子7aは、抵抗素子14を介してダイオード(整流素子)13aのアノードが接続され、ダイオード13aのカソードに発光ダイオード9のアノードが接続されている。さらに、発光ダイオード9のカソードには、ダイオード(整流素子)13bのアノードが接続され、ダイオード13bのカソードには、コイル7の他方の端子7bが接続されている。つまり、光出力回路12は、コイルの両端子間7a,7bに、抵抗素子14、ダイオード13a、発光ダイオード9、及びダイオード13bがこの順で直列に接続された構成を有している。これらのダイオード13a,13bは、コイル7におけるパルス電圧によって発生する電流を、コイル7内において端子7bから端子7aに向けて整流する役割を有する。
【0020】
さらに、発光ダイオード9のアノードには、ダイオード(整流素子)13cのカソードが接続され、ダイオード13cのアノードは端子7bに接続されるとともに、発光ダイオード9のカソードには、ダイオード(整流素子)13dのアノードが接続され、ダイオード13dのカソードは端子7aに接続されている。つまり、光出力回路12は、コイルの両端子間7b,7aに、ダイオード13c、発光ダイオード9、及びダイオード13dがこの順で直列に接続された構成を有し、ダイオード13c,13dは、コイル7におけるパルス電圧によって発生する電流を、コイル7内において端子7aから端子7bに向けて整流する役割を有する。
【0021】
ここで、ダイオード13a,13bを含む閉回路に抵抗素子14が挿入されることにより、ダイオード13c,13dを含む閉回路よりも負荷抵抗が大きくされて、パルス電圧の極性によって発光ダイオード9から出射される光信号の輝度を2種類に変化させている。なお、ダイオード13c,13dを含む閉回路上には、抵抗素子14と異なる抵抗値の抵抗素子が直列に接続されていてもよい。
【0022】
図1に戻って、筐体5の内部のセンサ部2に隣接する位置には、一時停止部4として、鉄心部15とコイル16とから構成された電磁石が設けられている。鉄心部15は、バルクハウゼン素子6の中心軸線の延長線上に沿って、片方の端面をバルクハウゼン素子6の端面に対向させるように配置され、鉄心部15の外周面の外側にはコイル16が巻き付けられている。このコイル16の両端子17は、筐体5の外部に導出されており、この端子17を介して、外部から電磁石を駆動する駆動電流が供給されて一時停止部4が生成する磁場強度が制御される。
【0023】
このような構成の磁気センサ装置1の筐体5の外側には、バルクハウゼン素子6の中心軸線と平行な回転軸18aを有する回転体18が、センサ部2に並列に配置されている。回転体18の外周部には、回転軸と平行に棒状の永久磁石19が設けられている。
【0024】
以上説明した磁気センサ装置1によれば、筐体5の外部に設置された回転体18によりバルクハウゼン素子6の端部に、交互に反転するバルクハウゼン素子6の長手方向の磁界が印加されることにより、バルクハウゼン素子6の外周部6bの長手方向に沿って磁化反転が生じ、バルクハウゼン素子6に巻き付けられたコイル7の両端子7a,7bの間にパルス電圧が発生する。本発明者らにより、このパルス電圧は、バルクハウゼン素子6に印加される磁界の変化の方向によって、正負が反転することも明らかにされた。この際、光出力回路12において、コイル7におけるパルス電圧がコイル7の端子7aから端子7bの方向に発生する場合と、端子7bから端子7aの方向に発生する場合とで、発光ダイオード9の負荷抵抗を変化させることができるので、1つの発光素子でパルス電圧の正負に応じた2種類の輝度を有する光信号が出力される。従って、バルクハウゼン素子6を増設することなく、外部磁界の両方向の強度変化を容易に検出することができると同時に、検出結果を光ファイバを介して遠隔地に自律的に伝送することができる。
【0025】
また、一時停止部4の端子17を介して、外部からバルクハウゼン素子6を磁気飽和させるのに十分な大きさの駆動電流を供給してバルクハウゼン素子6に磁場を印加することで、磁気センサ装置の検出機能を容易に一時停止させることができる。特に、この場合、光出力回路12に新たな素子を追加すること無しに一時停止機能を実現することができるので、磁気センサ装置1の信頼性が損なわれることもない。
【0026】
さらに、磁気センサ装置1の光信号生成部3においては、コイル7の1ターン当たり26.7mVの起電力が得られ、巻き数3000のコイル7で約80Vの起電力が得られており、発光ダイオード9を駆動するのに十分な起電力を持っている。このように、バルクハウゼン素子6及びコイル7により発生するパルス電圧により発光ダイオード9を直接駆動する構成を採っているので、発光素子駆動用の制御回路や電源回路が不要となり、磁気センサ装置1の小型化が可能となるとともに、制御回路、電源回路等から発生するノイズによる誤動作も防止される。
【0027】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態である磁気センサ装置21の透視図、図4は、図3の光出力回路32の回路構成図である。本実施形態にかかる磁気センサ装置21は、光信号生成部23における発光ダイオード29の構成、及び光出力回路32の回路構成が第1実施形態のものと異なる。
【0028】
すなわち、図4に示すように、回路基板28上に形成された光出力回路32は、コイル7の端子7a,7bに発光色の異なる2つのLED29a,29bが接続された構成を有し、LED29aは、端子7aと端子7bとの間に接続され、コイル7によって光出力回路32に生じるパルス電圧が端子7aと端子7bとの間で端子7aが正となる極性(第1の極性)で発生した場合に発光し、LED29bは、端子7aと端子7bとの間においてLED29aとは逆方向に接続され、コイル7によって光出力回路32に生じるパルス電圧が端子7aと端子7bとの間で端子7bが正となる極性(第2の極性)で発生した場合に発光する。より詳細には、LED29aのアノードは、コイル7の端子7aに接続され、LED29aのカソードは、コイル7の端子7bに接続されると共に、LED29bのアノードは、コイル7の端子7bに接続され、LED29bのカソードは、コイル7の端子7aに接続されている。このような構成により、コイル7の両端子7a,7bの間において発生するパルス電圧の極性に応じて、LED29a又はLED29bのいずれかが異なる発光色で発光する。発光ダイオード29は、これらのLED29a,29bを含んで構成され、LED29a,29bから発生する光を合成して光信号として外部に出射する。なお、LED29a,29bとしては、互いに発光輝度特性の異なるLEDを用いるようにしてもよい。
【0029】
なお、光出力回路32の回路構成としては、様々な変形態様を採ることができる。例えば、図5に示すように、LED29aのアノードが端子7aに接続され、LED29bのアノードが端子7bに接続され、LED29a及びLED29bのカソードどうしを接続すると共に、LED29a及びLED29bのそれぞれの両端間に抵抗素子30a,30bを接続した構成であってもよい。このような回路構成においても、パルス電圧が第1の極性で発生した場合にLED29aが発光し、第2の極性で発生した場合にLED29bが発光する。
【0030】
このような磁気センサ装置21によれば、2つのLED29a,29bにおいて波長や輝度等が異なる2種類の光信号を、コイル7の端子7a,7b間におけるパルス電圧の極性に応じて出力することで、光信号の受信側において外部磁界の両方向の強度変化を容易に検出することができる。また、光ファイバを複数用意しなくても、外部磁界の両方向の強度変化を、2種類の光信号として遠隔地に伝送することができる。
【0031】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、磁気センサ装置1,21においては、バルクハウゼン素子6の長手方向の中央部外周には、磁気シールド部材が設けられていてもよい。図6は、本発明の第1実施形態の変形例である磁気センサ装置41の透視図である。同図に示すように、バルクハウゼン素子6の中央部に巻き付けられたコイル7の外側は、鉄、コバルト合金等の磁気インピーダンスの低い材料からなる磁気シールド部材42によって覆われている。このような磁気シールド部材42の存在により、例えば、棒状の磁石をバルクハウゼン素子6の中心軸線に垂直な回転軸を中心に回転させた場合等に、バルクハウゼン素子6の中央部に強い磁界が印加されることを防止することができる。バルクハウゼン素子6が常に強い磁界内に置かれると、磁化反転特性にバラツキが発生することが分かっており、出力されるパルス電圧に20〜30%の変動が生じる。磁気シールド部材42を備えることで、このようなパルス電圧の変動を効果的に低減することができるので、磁気センサ装置の検出感度の向上が実現できる。
【0032】
また、バルクハウゼン素子6の両端部と筐体5外部の永久磁石等の磁界発生部との間には、鉄、ニッケル合金、鉄合金等で形成された磁気誘導体を設けてもよい。このような磁気誘導体を設けることで、バルクハウゼン素子6と磁界発生部との位置関係に依存しない自由な磁気経路を形成することができる。この場合でも、磁気誘導体は外部磁界の変化に対して高速で追随するので、バルクハウゼン素子6における磁化反転に影響を与えることもなく、磁気センサ装置全体の感度を維持することができる。図7〜図9には、磁気誘導体を含む磁気センサ装置の変形例を示している。なお、図8及び図9においては、磁気センサ装置におけるセンサ部2及び磁気誘導体以外の構成要素は、図示を省略している。
【0033】
図7に示す磁気センサ装置61においては、バルクハウゼン素子6の両端部の近傍には、1組の直方体形状の磁気誘導体62a,62bが、その一端をバルクハウゼン素子6の端部に挿通された状態で設けられ、他端側は、回転体18の外周部に固定された永久磁石19のN極又はS極の近傍に位置するようにされている。このようにバルクハウゼン素子6の一端部の近傍と他端部の近傍との間に磁気誘導体を備えることで、磁気センサ装置全体の感度を向上させることができる。
【0034】
図8には、エンジンにおけるシリンダ等における往復運動を検出するための磁気センサ装置における磁気誘導体の構造を示している。同図に示す磁気センサ装置81においては、磁極が互いに異なる方向を向いている1組の棒状の永久磁石82a,82bが、バルクハウゼン素子6の中心軸線と平行になるように設けられ、バルクハウゼン素子6の一端部と永久磁石82a,82bの一端部との間には、磁気誘導体83が設けられている。また、永久磁石82a,82bの他端部とバルクハウゼン素子6の他端部との間には、シリンダの往復運動に伴って永久磁石82a,82b間を往復するピストンリング等と一体化された磁気誘導体84が設けられている。磁気誘導体84とバルクハウゼン素子6の他端部との間には、磁気誘導体84の往復運動時にバルクハウゼン素子6と磁気誘導体84との間を磁気誘導する磁気誘導体85が更に設けられている。このような磁気センサ装置81によれば、エンジン等において往復運動する部位の位置を容易に検出することができ、エンジンの点火、排気等のタイミング制御を行う際の装置の小型化、簡素化が容易となる。
【0035】
図9には、棒状の永久磁石の中心部が回転中心となる場合の磁気センサ装置の構成を示す。この磁気センサ装置101は、互いに対面する平板リング状の磁気誘導体103a,103bを有し、磁気誘導体103a,103bには、それぞれ、その表面に平行に外側に向けて突出する突出部106a,106bが形成され、突出部106aと突出部106bとの間には、バルクハウゼン素子6の両端部を突出部106a,106bの内面に近接させてセンサ部2が配置されている。磁気誘導体103aと磁気誘導体103bとは、対向面上に円柱形状の非磁性体からなる接続部材107が接合されることによって、互いに支持されている。この磁気誘導体103aと磁気誘導体103bとの間には、磁気誘導体103a,103bに平行な平面に沿って棒状の永久磁石102が、その重心Gが磁気誘導体103a,103bの中心軸線上に位置するように設けられ、永久磁石102は、その磁極によって挟まれる重心Gを回転中心として磁気誘導体103a,103bに平行な平面に沿って回転可能に軸支されている。さらに、磁気誘導体103aには、磁気誘導体103bの内面に向けて突出する複数の磁気誘導体104が取り付けられ、磁気誘導体103bには、磁気誘導体103aの内面に向けて突出する複数の磁気誘導体105が取り付けられている。磁気誘導体104及び磁気誘導体105は、磁気誘導体103a,103bの外縁に沿って交互に並ぶと共に、永久磁石の重心Gを挟んで互いに対峙するように配置されている。このような配置によって、磁気誘導体104及び磁気誘導体105は、永久磁石102の回転に伴って永久磁石102の両磁極の近傍に同時に位置するようにされている。このような磁気誘導体の構成によれば、永久磁石102の回転に応じて永久磁石の両磁極とバルクハウゼン素子の両端部との間において磁気誘導することができるとともに、永久磁石が一回転する間に複数回の検出を行うことができる。
【0036】
また、バルクハウゼン素子6の中心部と外部の永久磁石等の磁界発生部との間の磁気経路上には磁気バイパス部が設けられていてもよい。磁気バイパス部を含むセンサ部2の変形例である図10に示すように、磁界発生部としての棒状の永久磁石112が、両磁極の間を回転中心としてバルクハウゼン素子6を含む平面に沿って回転可能に支持されている。センサ部2には、バルクハウゼン素子6の中心軸線に垂直な状態にある時の永久磁石112の両磁極を囲むように設けられた磁気バイパス部113が設けられている。この磁気バイパス部113は、バルクハウゼン素子6の中心軸線に対する永久磁石112の傾斜角が所定角度以上の場合に、永久磁石112から発生した磁界をバイパスすることによりバルクハウゼン素子6に印可される磁界を弱める役割を果たす。一般に、外部磁石がバルクハウゼン素子6を含む平面に沿って回転する場合は、バルクハウゼン素子6が常に強磁場に置かれるため、磁化反転特性にバラツキが発生しやすい傾向にあった。このような磁気バイパス部113を備えることで、永久磁石112の磁極が回転に伴って素子6の両端から離れた場合は素子に印可される磁界が弱められ、磁化反転特性のバラツキが効果的に低減される。
【0037】
また、磁気センサ装置1,21におけるセンサ部2及び磁界発生部である回転体18の配置方向は、特定の方向に限定されるものではなく、例えば、図11に示すように、センサ部2をバルクハウゼン素子6の中心軸線が回路基板8と平行になるように配置させてもよい。この場合は、回転体18の回転軸18aがバルクハウゼン素子6の中心軸線と平行になるように固定される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態である磁気センサ装置の平面透視図である。
【図2】図1の回路基板上に形成された光出力回路の回路図である。
【図3】本発明の第2実施形態である磁気センサ装置の平面透視図である。
【図4】図3の回路基板上に形成された光出力回路の回路図である。
【図5】図4の光出力回路の別の接続形態を示す回路図である。
【図6】本発明の変形例である磁気センサ装置の平面透視図である。
【図7】本発明の変形例である磁気センサ装置の平面透視図である。
【図8】本発明の変形例である磁気センサ装置の概略構成を示す図である。
【図9】(a)は、本発明の変形例における磁気誘導体の正面図、(b)は、(a)の磁気誘導体の側面図である。
【図10】(a)は、本発明の変形例におけるセンサ部及び磁気バイパス部を含む構成を示す側面図、(b)は、(a)のセンサ部及び磁気バイパス部の平面図である。
【図11】本発明の変形例である磁気センサ装置の平面透視図である。
【符号の説明】
【0039】
1,21,41,61,81,101…磁気センサ装置、3,23…光信号生成部、4…一時停止部(磁場発生回路)、6…バルクハウゼン素子、6a…中心部(磁性体層)、6b…外周部(磁性体層)、7…コイル、7a,7b…端子、9,29…発光ダイオード(発光素子)、29a,29b…LED(発光素子)、12,32…光出力回路、13a,13b,13c,13d…ダイオード(整流素子)、14…抵抗素子、19,82a,82b,102,112…永久磁石、42…磁気シールド部材、62a,62b,83,84,85,103a,103b,104,105…磁気誘導体、113…磁気バイパス部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部の保磁力が外周部の保磁力よりも大きくなるように複数の磁性体層を有し、長手方向に沿って交互に反転する磁界が印加されることにより、外周部において磁化反転を生じさせる線状のバルクハウゼン素子と、
前記バルクハウゼン素子の外周部の外側において、前記長手方向に沿って巻き付けられたコイルと、
前記コイルの両端に接続され、前記磁化反転によって前記コイルの両端間に生じたパルス電圧の極性に応じて、2種類の光信号を出力する光出力回路と、
を備えることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記光出力回路は、
前記コイルの第1の端子と第2の端子との間に接続され、第1の極性の前記パルス電圧の発生に応じて発光する第1の発光素子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間において前記第1の発光素子とは逆方向に接続され、前記第1の極性とは反対の第2の極性の前記パルス電圧の発生に応じて発光する第2の発光素子と、
を有することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記光出力回路は、
前記コイルの第1の端子と第2の端子との間に直列に接続され、前記パルス電圧により発生する電流を前記第1の端子から前記第2の端子に向けて整流する第1及び第2の整流素子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に直列に接続され、前記電流を前記第2の端子から前記第1の端子に向けて整流する第3及び第4の整流素子と、
前記第1及び第2の整流素子、又は前記第3及び第4の整流素子と直列に接続された負荷抵抗と、
前記第1の整流素子と前記第2の整流素子との間、及び前記第3の整流素子と前記第4の整流素子との間に直列に接続された発光素子と、
を有することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
外部からの制御により、前記バルクハウゼン素子に対して飽和状態に達するまで磁場を印加する磁場発生回路を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記バルクハウゼン素子の長手方向の中央部外周には、磁気シールドが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
外部から前記バルクハウゼン素子の長手方向の中央部に向かう磁界をバイパスする磁気バイパス部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記バルクハウゼン素子の一端部の近傍と他端部の近傍との間に設けられた磁気誘導体を更に備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項1】
中心部の保磁力が外周部の保磁力よりも大きくなるように複数の磁性体層を有し、長手方向に沿って交互に反転する磁界が印加されることにより、外周部において磁化反転を生じさせる線状のバルクハウゼン素子と、
前記バルクハウゼン素子の外周部の外側において、前記長手方向に沿って巻き付けられたコイルと、
前記コイルの両端に接続され、前記磁化反転によって前記コイルの両端間に生じたパルス電圧の極性に応じて、2種類の光信号を出力する光出力回路と、
を備えることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記光出力回路は、
前記コイルの第1の端子と第2の端子との間に接続され、第1の極性の前記パルス電圧の発生に応じて発光する第1の発光素子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間において前記第1の発光素子とは逆方向に接続され、前記第1の極性とは反対の第2の極性の前記パルス電圧の発生に応じて発光する第2の発光素子と、
を有することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記光出力回路は、
前記コイルの第1の端子と第2の端子との間に直列に接続され、前記パルス電圧により発生する電流を前記第1の端子から前記第2の端子に向けて整流する第1及び第2の整流素子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に直列に接続され、前記電流を前記第2の端子から前記第1の端子に向けて整流する第3及び第4の整流素子と、
前記第1及び第2の整流素子、又は前記第3及び第4の整流素子と直列に接続された負荷抵抗と、
前記第1の整流素子と前記第2の整流素子との間、及び前記第3の整流素子と前記第4の整流素子との間に直列に接続された発光素子と、
を有することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
外部からの制御により、前記バルクハウゼン素子に対して飽和状態に達するまで磁場を印加する磁場発生回路を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記バルクハウゼン素子の長手方向の中央部外周には、磁気シールドが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
外部から前記バルクハウゼン素子の長手方向の中央部に向かう磁界をバイパスする磁気バイパス部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記バルクハウゼン素子の一端部の近傍と他端部の近傍との間に設けられた磁気誘導体を更に備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−107971(P2007−107971A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297998(P2005−297998)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000143396)株式会社高見沢サイバネティックス (55)
【出願人】(595139060)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000143396)株式会社高見沢サイバネティックス (55)
【出願人】(595139060)
【Fターム(参考)】
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