説明

磁気センサ装置

【課題】 磁性パターンを有する被検知物を磁気抵抗効果素子から微小距離離間させた非接触状態で、安定して感度良く被検知物の磁性パターンを検出する磁気センサ装置を得る。
【解決手段】 搬送路を搬送される被検知物と、この被検知物の一方の面に磁極が配置され、前記被検知物に交差する交差磁界を生成する磁石と、前記被検知物の他方の面に設けられ、出力端子を有し、前記交差磁界内を搬送される前記被検知物の磁気成分による前記交差磁界の搬送方向成分の変化を抵抗値の変化として出力する磁気抵抗効果素子とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙幣等の紙葉状媒体上に形成された微小磁性パターンを検出する磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサ装置は、磁界強度に対応して抵抗値が変化する特性を有している磁気抵抗効果素子を使用したセンサ装置である。紙幣等の紙葉状媒体に含まれる磁性パターンを検出する磁気センサ装置においては、この磁性パターンの磁化量が微小であるため、感度良く磁性パターンを検出するためには、半導体磁気抵抗効果素子よりも感度の高い異方性磁気抵抗効果素子を使用し、異方性磁気抵抗効果素子を感度がもっとも高くなる磁界強度環境下に設ける上で、紙幣など紙葉状媒体は強磁界環境を通過させる必要がある。
【0003】
しかしながら、異方性磁気抵抗効果素子を使用した磁気センサ装置においては、異方性磁気抵抗効果素子が10mT程度の磁界強度で飽和するため、異方性磁気抵抗効果素子が飽和せず感度がもっとも高くなる磁界強度環境下に配置することが難しいという問題があった。
【0004】
また、非接触型の磁気センサ装置においては、紙葉状媒体などの被検知物と磁気抵抗効果素子とは所定の距離離れているため、磁気抵抗効果素子の抵抗値変化出力が小さくなり被検知物に含まれる磁性パターンの検出感度が低下する問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、特開2008−145379号公報(特許文献1参照)には、永久磁石による検出用磁界が同時に付与する強磁性体薄膜磁気抵抗素子の感磁方向のバイアス磁界強度が飽和磁界以下の磁束量となるように永久磁石の位置を調整して配置した磁気センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−145379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気センサでは、具体的な強磁性体薄膜磁気抵抗素子の感磁方向のバイアス磁界強度が飽和磁界以下の磁束量となるような永久磁石の配置方法が開示されていない。また、非接触磁気センサにおいて被検知物の検出感度を向上させるには、バイアス磁石の磁力を高め、異方性磁気抵抗効果素子に適切なバイアス磁界を印加しつつ、被検知物が搬送される搬送路の磁界強度を高める必要があるが、被検知物は異方性磁気抵抗効果素子よりもバイアス磁石の遠方を通過するため、被検知物による磁界強度の変化は小さく個々の異方性磁気抵抗効果素子の出力信号が小さくなるという課題がある。
【0008】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、磁性パターンを有する被検知物を磁気抵抗効果素子から微小距離離間させた非接触状態で、安定して感度良く被検知物の磁性パターンを検出する磁気センサ装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る磁気センサ装置は、搬送路を搬送される被検知物と、この被検知物の一方の面に磁極が配置され、前記被検知物に交差する交差磁界を生成する磁石と、前記被検知物の他方の面に設けられ、出力端子を有し、前記交差磁界内を搬送される前記被検知物の磁気成分による前記交差磁界の搬送方向成分の変化を抵抗値の変化として出力する磁気抵抗効果素子とを備えたものである。
【0010】
また、この発明に係る磁気センサ装置は、搬送路を搬送される被検知物と、この被検知物の一方の面に磁極が配置され、前記被検知物に交差する交差磁界を生成する磁石と、この磁石と前記被検知物との間に設けられ、出力端子を有し、前記交差磁界内を搬送される前記被検知物の磁気成分による前記交差磁界の搬送方向成分の変化を抵抗値の変化として出力する磁気抵抗効果素子とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、搬送経路に交差する交差磁界内に磁気抵抗効果素子が配置されているので、磁気抵抗効果素子の感磁方向の磁界強度は弱磁界強度であるため磁気抵抗効果素子は飽和することなく、被検知物には搬送経路に交差する方向の強磁界強度が印加されるため、感度良く被検知物の磁気パターンが検出される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における磁気センサ装置の被検出体の挿排出方向から見た断面図である。
【図3】図1における金属キャリアへの多層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。
【図4】図1における中空部から多層基板側を見たAMR素子の実装状態を示す上面図である。
【図5】この発明の実施の形態1における磁気センサ装置のAMR素子と外部回路との接続状態を示す接続図である。
【図6】図1に示す磁気センサ装置における第1の磁石と第2の磁石から生成される搬送路での磁界分布を示す図である。
【図7】図6における間隔方向(Z軸方向)の磁界の搬送方向(X軸方向)における強度変化を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1における磁気センサの検出原理を説明する磁力線ベクトル図である。
【図9】図6におけるX軸方向およびZ軸方向の磁界強度の第1の磁石と第2の磁石との間隔方向(Z軸方向)における強度変化を示す図である。
【図10】AMR素子の印加磁界と抵抗変化率を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態1におけるミアンダ形状の抵抗パターンを有するAMR素子の上面図である。
【図12】この発明の実施の形態2におけるAMR磁気センサ装置の中空部から多層基板側を見たAMR素子の実装状態を示す上面図である。
【図13】この発明の実施の形態2における磁気センサ装置のAMR素子と外部回路との接続状態を示す接続図である。
【図14】この発明の実施の形態2におけるミアンダ形状の抵抗パターンを有するAMR素子の上面図である。
【図15】この発明の実施の形態3における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図16】図15に示す磁気センサ装置における第1の磁石用ヨークと第2の磁石用ヨークから生成される間隔方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。
【図17】図15におけるX軸方向とZ軸方向の磁界強度の第1の磁石と第2の磁石との間隔方向(Z軸方向)における強度変化を示す図である。
【図18】この発明の実施の形態4における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図19】図18に示す磁気センサ装置における磁石と磁性体から生成される搬送路での磁界分布を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態5における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図21】図20に示す磁気センサ装置における磁石用ヨークと磁性体から生成される搬送路での磁界分布を示す図である。
【図22】この発明の実施の形態6における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図23】図22に示す磁気センサ装置における磁石と磁性体から生成される搬送路での磁界分布を示す図である。
【図24】この発明の実施の形態7におけるライン型磁気センサ装置の中空部から多層基板側を見たAMR素子の実装状態を示す上面図である。
【図25】この発明の実施の形態8における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図26】図25に示す磁気センサ装置における磁石と磁性体から生成される搬送路での磁界分布を示す図である。
【図27】この発明の実施の形態9における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図28】図27における金属キャリアへの単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。
【図29】この発明の実施の形態10における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図30】図29における金属キャリアへの単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。
【図31】この発明の実施の形態11における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図32】図31における単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。
【図33】この発明の実施の形態12における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図34】図33における単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。
【図35】この発明の実施の形態13における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図36】図35における単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図2は、この発明の実施の形態1における磁気センサ装置の被検出体の挿排出方向から見た断面図である。図1及び図2において、筐体1は内部に中空部2を有し、筐体1の一方の側面(側壁)に読取り幅(被検出体の搬送方向と直交する方向)に亘って第1のスリット部3を備え、他方の側面(側壁)に第1のスリット部3に平行に第2のスリット部4を備え、中空部2を介して第1のスリット部3と第2のスリット部4とが接続されており、例えば、被検出体である磁性パターンを含んだ紙幣5は第1のスリット部3から挿入され、中空部2を搬送経路として搬送され、第2のスリット部4から排出される。
【0014】
中空部2における搬送方向の一方の面に搬送方向に沿ってN極S極を有する第1の磁石6が筐体1に紙幣5から離間して設置され、対向する他方の面に搬送方向に沿ってN極S極が第1の磁石6と異極対向となるように第2の磁石7が筐体1に紙幣5から離間して設置されている。
【0015】
第2の磁石7の搬送路側に、紙幣5から離間して、金属キャリア191の表面にガラスエポキシ等の樹脂で形成された多層基板9が設けられ、この金属キャリア191に異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10が実装されている。このAMR素子10は基板表面に抵抗体を備え、この抵抗体に流れる電流の方向に直交する磁界の変化に対応して抵抗値が変化する特性を有している。
【0016】
図3は、図1における金属キャリア191への多層基板9とAMR素子10の実装状態を示す拡大図である。図4は、図1における中空部2から多層基板9側を見たAMR素子10の実装状態を示す上面図である。図3及び図4において、多層基板9は、少なくとも1層目基板91、2層目基板92で構成され、非磁性体の金属キャリア191に固定されている。この多層基板9は、穴部9aを有し、この穴部9aの1層目基板91と2層目基板92にはそれぞれ1層目基板の穴部91a、2層目基板の穴部92aを備え、1層目基板の穴部91aの開口は2層目基板の穴部92aの開口よりも大きい凹構造となっている。尚、多層基板9は、回路規模が大きい場合は、3層目基板以降が追加されることもある。
【0017】
AMR素子10は、多層基板9に包囲されるように2層目基板の穴部92aに露出している金属キャリア191の表面に接着材で固定されている。AMR素子10の電極101a〜101cは、多層基板9の穴部9a内に露出している2層目基板92の表面に設けられた電極111a〜111cとそれぞれ金属ワイヤ12で接続され、電極111a〜111cは伝送線路11を通して多層基板9の外部の裏面に設けられた外部パッド112a〜112cと接続されている。外部パッド112a〜112cには、信号処理回路、バイアス電圧等の外部回路が接続される。また、1層目の穴部91aと2層目の穴部92aは、樹脂13にて1層目基板91の表面を越えないように封止されている。
【0018】
図4において、AMR素子10の抵抗体パターン102aと102bは矩形形状の長辺が読取り幅方向(Y軸方向)に延在するように平行に配置され、隣接する抵抗体パターン102aと102bとは直列接続され、この直列接続部がAMR素子10の電極101bに、抵抗体パターン102aの他方が電極101aに、抵抗体パターン102bの他方が電極101cに接続されている。
【0019】
図5は、この発明の実施の形態1における磁気センサ装置のAMR素子10と外部回路との接続状態を示す接続図である。図4及び図5において、電極101aは金属ワイヤ12(電気接続手段)にて電極111aに接続され、外部パッド112aを経由して直流電源電圧Vccに接続されている。電極101bは金属ワイヤ12にて電極111bに接続され、外部パッド112bを経由して信号を処理する処理回路15に接続されている。電極101cは金属ワイヤ12にて電極111cに接続され、外部パッド112cを経由して直流接地(GND)されている。
【0020】
図6は、図1に示す磁気センサ装置における第1の磁石6と第2の磁石7から生成される搬送路での磁界分布を示す図である。図7は、図6における対向する第1の磁石6と第2の磁石との間隔方向(Z軸方向)の磁界の紙幣5の搬送方向(X軸方向)における強度変化を示す図である。図8は、図6におけるD部を拡大し、この発明の実施の形態1における磁気センサの検出原理を説明する磁力線ベクトル図である。図9は、図6におけるX軸方向およびZ軸方向の磁界強度の第1の磁石6と第2の磁石7との間隔方向(Z軸方向)における強度変化を示す図である。なお、図6及び図8では図1の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。
【0021】
図6に示すように、AMR素子10は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置に設けられ、紙幣5は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置を間隔方向の磁界を交差するように通過する。
【0022】
図6において、磁力線17は異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10が配置されている付近では、搬送経路に交差する交差磁界である第1の磁石6のN極から第2の磁石7のS極へと向かう成分が主成分となっているが、図8(a)に示すように、間隔方向(Z軸方向)から少しだけ搬送方向(X軸方向)に傾いているため、この磁界の搬送方向(X軸方向)成分が異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10のバイアス磁界として作用している。
【0023】
被検知物(紙幣)5が近づいてくると、図8(b)に示すように、磁力線17が被検知物(紙幣)5側に傾くため搬送方向(X軸方向)の磁界が小さくなり、被検知物(紙幣)5が離れていくと、図8(c)に示すように、磁力線17が被検知物(紙幣)5側に傾くため搬送方向(X軸方向)の磁界が大きくなることにより、X方向成分を感磁する異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10の抵抗値が変化し、被検知物(紙幣)5を検知することができる。
【0024】
図9は、図6において第1の磁石6及び第2の磁石7において搬送方向の長さA=5mm、第1の磁石6及び第2の磁石7の厚さB=10mm、第1の磁石6と第2の磁石7との間隔G=5mm、第1の磁石6及び第2の磁石7の材質をネオジム焼結磁石とし、第1の磁石の中心から搬送方向に距離C=2.7mm離れた位置での、搬送方向(X軸方向)の磁界強度成分Bxと間隔方向(Z軸方向)の磁界強度成分BzのZ軸方向における強度変化を計算した結果である。
【0025】
前記磁界強度は、第1の磁石6と第2の磁石7との間隙Gの中間地点(Z=2.5mm=G/2)で磁界強度Bxが0となっている。AMR素子10として図10の実線に示す飽和磁界強度が5mTのAMR素子を用いる場合、Z=2.65mm付近でBxが5mTとなる。すなわち、AMR素子10の位置としては0<α<0.15mmに設定すると、AMR素子10の出力が飽和することなく適切なバイアス磁界を印加される。最も望ましいのは磁気抵抗素子の感度傾きが最も大きい磁界強度Bx=2.5mT程度のバイアス磁界が印加される状態であり、α=0.08mm付近にAMR素子10配置すると最も高い出力が得られる。なお、αは微小距離を示す。
【0026】
紙幣5が抵抗体パターン102a、102bに掛かったときの磁界変化は、紙幣5の周辺の磁界(紙幣5に印加される磁界)に比例し、その磁界変化をAMR素子10で検出するため、高出力化のためには紙幣5にはより大きな磁界をかける必要があり、この発明の実施の形態1では、紙幣5とAMR素子10の距離が近い場合例えばZ=3mm付近にある場合、図9より紙幣5に印加される磁界はBx=約300mTであるが、紙幣5とAMR素子10の距離が離れてZ=4mm付近にある場合にはBx=約370mTとなり、AMR素子10と紙幣5が離間しても感度良く紙幣5の磁性パターンが検出される。
【0027】
AMR素子10と紙幣5との間隔は、紙幣5がZ=4mmの地点を通過するよう構成した場合、AMR素子10と紙幣5との間隔は上述の記載から1.5mm程度と近接しており、非接触状態を保ちつつAMR素子10を保護するAMR素子10の実装方法について図3及び図4を用いて説明する。
【0028】
AMR素子10の厚みは0.5mm程度であり、抵抗体パターン102a、102bはAMR素子10の表面に形成されているため、抵抗体パターン102a、102bがZ=G/2+α=2.52mmの地点に来るように、厚さが2.02mmの金属キャリア191の表面にAMR素子10が接着されている。
【0029】
2層目基板92は厚み0.5mmとし、2層目基板92のパッド111a〜111cとAMR素子10の電極101a〜101cとは金属ワイヤ12で接続されている。2層目基板92の厚みをAMR素子10の厚みと同一にすることで、金属ワイヤ12のループ高さを最小に抑えることができる。
【0030】
1層目基板91の厚みは金属ワイヤ12のループ高さと同程度の0.3mmとし、1層目基板91の穴部91a及び2層目基板92の穴部92aに粘性の低いエポキシ系の樹脂13を1層目基板91の表面から突出しないように塗布し、AMR素子10と金属ワイヤ12を保護する。2層目基板92のパッド111a〜111cは伝送線路11を経由して金属キャリア191の裏面に設けたパッド112a〜112cに接続されており、このパッド112a〜112cを介して電源電圧Vcc、処理回路15等に接続されている。この実装により、AMR素子10を保護し、紙幣5の搬送を妨げる突起物は無く、安定して多層基板9の表面と紙幣5とは1.2mmの間隔が確保される。
【0031】
このように、紙幣には間隔方向(Z軸方向)の強磁界が印加され、AMR素子との距離が離れるにしたがって、さらに強磁界が印加されるため、AMR素子と紙幣が離間していても、感度良く紙幣の磁性パターンが検出される。また、異方性磁気抵抗効果素子(AMR)10に印加する搬送方向(X軸方向)のバイアス磁界強度は、間隔方向(Z軸方向)位置での変化が小さいため、組付け精度が向上する。さらに、第1の磁石6と第2の磁石7を対向配置としているため、安定した磁路が形成され、外部の磁性体の影響を受けにくく、安定して被検知物の磁気パターンが検出される。
【0032】
AMR素子10の抵抗体パターン102a、102bは矩形形状としたが、図11に示すように長辺が読取り幅方向(Y軸方向)に延在するように配置したミアンダ形状としても良い。この場合、抵抗体パターン102a、102bの抵抗値が矩形形状のものより増加し高抵抗値となるので、AMR素子10の磁界変化の検出感度が向上し、磁気センサ装置の検出感度が増加する。
【0033】
AMR素子10は多層基板9の金属キャリア191の表面に接着したが、AMR素子10の抵抗変化率や飽和磁界強度が本実施の形態1と異なり、AMR素子10を第1の磁石6に近接させる場合においては、金属キャリア191を設けず、第1の磁石6の搬送路側の表面にAMR素子10を接着する構造としても良い。
【0034】
なお、本実施の形態1では、磁気抵抗効果素子10は、AMR素子を用いたが、巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル磁気抵抗効果(TMR)素子を用いても良い。
【0035】
実施の形態2.
図12は、この発明の実施の形態2における磁気センサ装置の中空部2から多層基板9側を見たAMR素子10の実装状態を示す上面図である。図4と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。図12において、AMR素子10の抵抗体パターン102aは矩形形状の長辺が読取り幅方向(Y軸方向)に延在するように配置され、抵抗体パターン102cは矩形形状の長辺が搬送方向(X軸方向)に延在するように配置され、抵抗体パターン102aと102cとは直列接続され、この直列接続部がAMR素子10の電極101bに、抵抗体パターン102aの他方が電極101aに、抵抗体パターン102bの他方が電極101cに接続されている。
【0036】
図13は、この発明の実施の形態2における磁気センサ装置のAMR素子10と外部回路との接続状態を示す接続図である。図5と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。図12及び図13において、電極101aは金属ワイヤ12にて電極111aに接続され、外部パッド112aを経由して直流電源電圧Vccに接続されている。電極101bは金属ワイヤ12にて電極111bに接続され、外部パッド112bを経由して信号を処理する処理回路15に接続されている。電極101cは金属ワイヤ12にて電極111cに接続され、外部パッド112cを経由して直流接地(GND)されている。
【0037】
この発明の実施の形態2では、この発明の実施の形態1と同様に磁界は間隔方向(Z軸方向)成分が主成分となっているが、間隔方向(Z軸方向)から少しだけ搬送方向(X軸方向)に傾いているため、この磁界の搬送方向(X軸方向)成分が異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10のバイアス磁界として作用しており、抵抗体パターン102aはバイアス磁界Bxが掛かるが抵抗体パターン102cはBxが感磁方向ではないため、バイアス磁界が印加されない。この状態で紙幣5がX軸方向に搬送されると、抵抗体パターン102a上に紙幣5の磁性パターンが掛かると、抵抗体パターン102a付近の磁界Bxが変化して抵抗体パターン102aの抵抗値が変化するが、抵抗体パターン102c付近の磁界Bxが変化してもその変化を抵抗体パターン102cは感じないため、抵抗体パターン102cの抵抗値は常に一定であり、抵抗体パターン102aのみの変化で磁気パターンを検知することが出来る。
【0038】
AMR素子10の抵抗体パターン102a、102cは矩形形状としたが、図14に示すように抵抗体パターン102aは長辺が読取り幅方向(Y軸方向)に延在するように配置したミアンダ形状とし、抵抗体パターン102cは長辺が搬送方向(X軸方向)に延在するように配置したミアンダ形状としても良い。この場合、抵抗体パターン102a、102cの抵抗値が矩形形状のものより増加し高抵抗値となるので、AMR素子10の磁界変化の検出感度が向上し、磁気センサ装置の検出感度が増加する。
【0039】
実施の形態3.
図15は、この発明の実施の形態3における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図1と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。図1に示すこの発明の実施の形態1から、第1の磁石6の搬送方向の両側面に一対の第1の磁石用ヨーク81と第2の磁石7の搬送方向の両側面に一対の第2の磁石用ヨーク82を配置している。
【0040】
図16は、図15に示す磁気センサ装置における第1の磁石用ヨーク81と第2の磁石用ヨーク82から生成される間隔方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。なお、図16では、図15の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。
【0041】
図16に示すように、AMR素子10は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置に設けられ、紙幣5は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置を間隔方向の磁界を交差するように通過する。
【0042】
第1の磁石用ヨーク81は、所定の厚さP(磁石厚さB>P)を持った板状の軟磁性体により形成され、間隔方向(Z方向)は第1の磁石6の下側を揃えるか、一定の飛び出し量を持って第1の磁石6の両側に接着、一体成型、磁力による吸引などの方法で取り付けられる。第2の磁石用ヨーク82は、所定の厚さを持った板状の軟磁性体により形成され、間隔方向(Z方向)は第2の磁石7の上側を揃えるか、一定の飛び出し量を持って第1の磁石6の両側に接着、一体成型、磁力による吸引などの方法で取り付けられる。
【0043】
本構成によれば、第1の磁石6や第2の磁石7の側面から発せられた磁力線がヨーク厚さPの中に集磁され、磁力線17は図16に示すように磁石のN極側ヨーク端から発せられ、S極のヨーク端に向かうループを描く。この効果により、磁石のみを対向させて場合に比べてさらに大きな磁界を被検出物(紙幣)5に印加され、更にはヨークの効果により組付け精度が改善される。
【0044】
図17は、第1の磁石6及び第2の磁石7において搬送方向の長さA=5mm、第1の磁石6及び第2の磁石7の厚さB=10mm、第1の磁石用ヨーク81及び第2の磁石用ヨーク82の厚さP=3mm、第1の磁石6及び第2の磁石7からの第1の磁石用ヨーク81及び第2の磁石用ヨーク82それぞれの飛び出し量Q=1mm、第1の磁石用ヨーク81と第2の磁石用ヨーク82との間隔G=5mm、第1の磁石6及び第2の磁石7の材質をネオジム焼結磁石とし、第1の磁石6及び第2の磁石7の中心から搬送方向に距離C=4.0mm離れた位置での、搬送方向(X軸方向)の磁界強度成分Bxと間隔方向(Z軸方向)の磁界強度成分BzのZ軸方向における強度変化を計算した結果である。
【0045】
前記磁界強度は、第1の磁石用ヨーク81と第2の磁石用ヨーク82との間隔Gの中間地点(Z=2.5mm=G/2)で磁界強度Bxが0となっている。AMR素子10として図9の実線に示す飽和磁界が5mTのAMR素子を用いる場合、Z=3.0mm付近でBxが5mTとなる。すなわち、AMR素子10の位置としては0<α<0.5mmに設定すると、AMR素子10の出力が飽和することなく適切なバイアス磁界を印加される。これは、実施の形態1の組付精度(0<α<0.15mm)と比較すると大幅に改善されていることが分かる。また、最も望ましいのは磁気抵抗素子の感度傾きが最も大きい磁界強度Bx=2.5mT程度のバイアス磁界が印加される状態であり、α=0.25mm付近にAMR素子10配置すると最も高い出力が得られる。なお、αは微小距離を示す。
【0046】
紙幣5が抵抗体パターン102a、102bに掛かったときの磁界変化は、紙幣5の周辺の磁界(紙幣5に印加される磁界)に比例し、その磁界変化をAMR素子10で検出するため、高出力化のためには紙幣5にはより大きな磁界をかける必要があり、この発明の実施の形態2では、紙幣5とAMR素子10の距離が近い場合例えばZ=3mm付近にある場合、図9より紙幣5に印加される磁界はBx=約480mTであるが、紙幣5とAMR素子10の距離が離れてZ=4mm付近にある場合にはBx=約540mTとなり、AMR素子10と紙幣5が離間しても感度良く紙幣5の磁性パターンが検出される。これは、この発明の実施の形態1の印加磁界と比較して大幅に強化されていることが分かる。その結果、安定した出力を得ることができる。
【0047】
また、第1の磁石用ヨーク81、第2の磁石用ヨーク82をそれぞれ第1の磁石6、第2の磁石7の両側面に取り付けることにより、磁石の読み取り幅方向(Y軸方向)の磁力ばらつきを均一化することができ、特にライン型磁気センサの場合、各チャンネル間のバイアス磁界ばらつきを抑え、結果的にライン間の出力ばらつきを抑えることができ、歩留り向上、コスト削減につながる。
【0048】
実施の形態4.
図18は、この発明の実施の形態4における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図1と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この発明の実施の形態4は、図1に示すこの発明の実施の形態1から、第2の磁石を磁性体80に置き換えたものである。尚、磁性体80は鉄などの軟磁性体である。
【0049】
図19は、図18に示す磁気センサ装置における磁石8と磁性体80により生成される間隔方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。なお、図19では、図18の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。図19において、対向する磁石8と磁性体80との間隔方向(Z軸方向)の磁界の紙幣5の搬送方向(X軸方向)における強度変化は、この発明の実施の形態1の図7と同様である。
【0050】
図19に示すように、AMR素子10は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置に設けられ、紙幣5は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置を間隔方向の磁界を交差するように通過する。
【0051】
図19において、磁力線17は異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10が配置されている付近では、磁石8のN極から磁性体80へ向かう間隔方向(Z軸方向)成分が主成分となっており、実施の形態1と同様の原理で紙幣等の被検出物5の検出が可能である。
【0052】
この発明の実施の形態4によれば、バイアス磁石は片側のみの配置で、対向側には安価な鉄等の軟磁性体を配置するため、コスト削減が可能である。
【0053】
実施の形態5.
図20は、この発明の実施の形態4における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図18と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この発明の実施の形態5は、図18に示すこの発明の実施の形態4から、磁石8の搬送方向の両側面に一対の磁石用ヨーク83を配置しており、ヨークの形状はこの発明の実施の形態3と同じである。
【0054】
図21は、図20に示す磁気センサ装置における磁石用ヨーク83と磁性体80により生成される対向する磁石用ヨーク83と磁性体80との間隔方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。なお、図21では、図20の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。
【0055】
図21に示すように、AMR素子10は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置に設けられ、紙幣5は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置を間隔方向の磁界を交差するように通過する。
【0056】
図21において、磁力線17は異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10が配置されている付近では、磁石用ヨーク83のN極から磁性体9へ向かう間隔方向(Z軸方向)成分が主成分となっており、この発明の実施の形態1と同様の原理で紙幣等の被検出物5の検出が可能である。
【0057】
本構成によれば、磁石8の側面から発せられた磁力線がヨーク厚さPの中に集磁され、磁力線17は図21に示すように磁石のN極側ヨーク端から発せられ、磁性体80に向かうループを描く。この効果によりこの発明の実施の形態3と比べてより大きな磁界を被検出物(紙幣)5に印加することができるだけではなく、ヨークの効果により組付け精度が改善される。
【0058】
また、この発明の実施の形態5によれば、バイアス磁石は片側のみの配置で、対向側には安価な鉄等の軟磁性体を配置するため、コスト削減が可能である。
【0059】
実施の形態6.
図22は、この発明の実施の形態6における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図18と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この発明の実施の形態6は、図18に示すこの発明の実施の形態4から、磁石8の着磁方向を対向する磁石8と磁性体80との間隔方向(Z軸方向)に変更したものである。
【0060】
図23は、図22に示す磁気センサ装置における磁石8と磁性体80により生成される間隔方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。なお、図23では、図22の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。図23において、間隔方向(Z軸方向)の磁界の搬送方向(X軸方向)における強度変化は、磁石8の略中央部で最大となり、磁石の両端部に向けて減少していく分布を有するので、異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10は、間隔方向(Z軸方向)の磁界強度が強くなる磁石8の略中央部に配置される。
【0061】
図23に示すように、AMR素子10は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置に設けられ、紙幣5は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置を間隔方向の磁界を交差するように通過する。
【0062】
図23において、磁力線17は異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10が配置されている付近では、磁石8のN極から磁性体80へ向かう間隔方向(Z軸方向)成分が主成分となっており、この発明の実施の形態1と同様の原理で紙幣等の被検出物5の検出が可能である。
【0063】
実施の形態7.
図24は、この発明の実施の形態7におけるライン型磁気センサ装置の中空部2から多層基板9側を見たAMR素子10の実装状態を示す上面図である。図24において図12と同一の構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。図24において、多層基板9の穴部9aに、読取り幅方向(Y軸方向)に亘ってAMR素子10がアレイ状に実装されている。動作については、この発明の実施の形態1の磁気センサ装置と同じである。なお、AMR素子10の抵抗体パターンは図12に示す抵抗体パターンを用いたが図14に示す抵抗体パターンを用いても良く、また図4、図11及び図14に示すいずれかの抵抗体パターンを用いてもよい。また、第1の磁石及び第2の磁石若しくは第1の磁性体の配置は、この発明の実施の形態1〜6のいずれの配置でも良い。
【0064】
図24においては、全てのAMR素子10を1つの穴部9aで包囲しているが、1つのAMR素子10を1つの穴部9aで包囲した磁気センサ装置を読取り幅方向に亘ってアレイ状に実装してもよく、また、複数のAMR素子10を1つの穴部9aで包囲した磁気センサ装置を読取り幅方向に亘ってアレイ状に実装してもよい。
【0065】
このように、AMR素子10を読取り幅方向に複数個アレイ状に配置したライン型磁気センサ装置とすることにより、検知幅が広がる。
【0066】
実施の形態8.
図25は、この発明の実施の形態8における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図18と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この発明の実施の形態8は、図1に示すこの発明の実施の形態1から、第1の磁石を磁性体80に置き換えたものである。尚、磁性体80は鉄などの軟磁性体である。
【0067】
図26は、図25に示す磁気センサ装置における磁石8と磁性体80により生成される間隔方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。なお、図26では、図25の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。図26において、対向する磁石8と磁性体80との間隔方向(Z軸方向)の磁界の紙幣5の搬送方向(X軸方向)における強度変化は、この発明の実施の形態1の図7と同様である。
【0068】
図26に示すように、AMR素子10は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置に設けられ、紙幣5は間隔方向の磁界が強磁界強度である位置を間隔方向の磁界を交差するように通過する。
【0069】
図26において、磁力線17は異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10が配置されている付近では、磁石8のN極から磁性体80へ向かう間隔方向(Z軸方向)成分が主成分となっており、実施の形態1と同様の原理で紙幣等の被検出物5の検出が可能である。
【0070】
この発明の実施の形態8によれば、この発明の実施の形態4と同様に、バイアス磁石は片側のみの配置で、対向側には安価な鉄等の軟磁性体を配置するため、コスト削減が可能である。
【0071】
この発明の実施の形態5と同様に、この発明の実施の形態8の磁石8の搬送方向の両側面に一対の磁石用ヨークを配置したとき、この発明の実施の形態5と同様の作用効果が得られる。
【0072】
この発明の実施の形態6と同様に、この発明の実施の形態8の磁石の着磁方向を間隔方向(Z軸方向)としたとき、この発明の実施の形態6と同様の作用効果が得られる。
【0073】
実施の形態9.
この発明の実施の形態1では、AMR素子10は、多層基板9の穴部に実装されていたが、多層基板に代えて単層基板の穴部に実装しても良い。図27は、この発明の実施の形態9における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図であり、図28は、図27における金属キャリアへの単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。図27及び図28において、それぞれ図1及び図3と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
図27及び図28において、単層基板20は非磁性体の金属キャリア191に固定されており、穴部20aを有する。AMR素子10は、単層基板20に包囲されるように穴部20aに露出している金属キャリア191の表面に接着剤で固定されている。AMR素子10の電極101a〜101cは、単層基板20表面に設けられた電極111a〜111cとそれぞれ金属ワイヤ12で接続され、電極111a〜111cは伝送線路11を通して単層基板20の外部の裏面に設けられた外部パッド112a〜112cと接続されている。外部パッド112a〜112cには、信号処理回路、バイアス電圧等の外部回路が接続される。また、AMR素子10と金属ワイヤ12を保護するために樹脂13にて封止されている。
【0075】
この発明の実施の形態9においても、この発明の実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
【0076】
実施の形態10.
この発明の実施の形態1では、AMR素子10は、多層基板9の穴部に実装されていたが、多層基板に代えて単層基板の穴部に実装しても良い。図29は、この発明の実施の形態10における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図であり、図30は、図29における金属キャリアへの単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。図29及び図30において、それぞれ図1及び図3と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図29及び図30において、単層基板20は非磁性体の金属キャリア191に固定されており、穴部20aを有する。AMR素子10は、単層基板20に包囲されるように穴部20aに露出している金属キャリア191の表面に接着剤で固定されている。AMR素子10の電極101a〜101cは、単層基板20表面に設けられた電極111a〜111cとそれぞれ金属タブ21で接続され、電極111a〜111cは伝送線路11を通して単層基板20の外部の裏面に設けられた外部パッド112a〜112cと接続されている。外部パッド112a〜112cには、信号処理回路、バイアス電圧等の外部回路が接続される。
【0078】
この発明の実施の形態10においても、この発明の実施の形態1と同様の作用効果が得られる。さらに、AMR素子10の電極と単層基板20の電極とが金属タブ21で接続されているので、AMR素子10と電気シールド板31との隙間が小さくなり、AMR素子10と被検知物5との距離が小さくなるので、検出感度が向上する。
【0079】
実施の形態11.
この発明の実施の形態1では、AMR素子10は、金属キャリア191上の多層基板9の穴部に実装されていたが、多層基板に代えて単層基板とし、金属キャリアを省略して単層基板上にAMR素子10を実装しても良い。図31は、この発明の実施の形態11における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図であり、図32は、図31における単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。図31及び図32において、それぞれ図1及び図3と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
図31及び図32において、AMR素子10は、単層基板20の表面に接着剤で固定されている。AMR素子10の電極101a〜101cは、単層基板20表面に設けられた電極111a〜111cとそれぞれ金属ワイヤ12で接続され、電極111a〜111cは伝送線路11を通して単層基板20の外部の裏面に設けられた外部パッド112a〜112cと接続されている。外部パッド112a〜112cには、信号処理回路、バイアス電圧等の外部回路が接続される。また、AMR素子10と金属ワイヤ12を保護するために樹脂13にて封止されている。
【0081】
この発明の実施の形態11においても、この発明の実施の形態1と同様の作用効果が得られる。また、金属キャリア191を省略しているので、構造が簡単になる効果がある。
【0082】
実施の形態12.
図33は、この発明の実施の形態6において、磁性体80に変えて、磁石8と磁極が対向するように磁石70を配置し、AMR素子10を直接磁石70に載置し、単層基板20の穴部20aに実装したものである。図34は、図33における単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。図33、図34において、図22と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
図33及び図34において、単層基板20は磁石70に固定されており、穴部20aを有する。AMR素子10は、単層基板20に包囲されるように穴部20aに露出している磁石70の表面に接着剤で固定されている。AMR素子10の電極101a〜101cは、単層基板20表面に設けられた電極111a〜111cとそれぞれ金属ワイヤ12で接続され、電極111a〜111cは伝送線路11を通して単層基板20の外部の裏面に設けられた外部パッド112a〜112cと接続されている。外部パッド112a〜112cには、信号処理回路、バイアス電圧等の外部回路が接続される。また、AMR素子10と金属ワイヤ12を保護するために樹脂13にて封止されている。
【0084】
磁石8と磁石70は異極が対向しているので、図23と同様に被検知物5及びAMR素子10にはZ方向の磁界が印加されるので、この発明の実施の形態6と同様の作用効果が得られる。
【0085】
実施の形態13.
図35は、この発明の実施の形態12において、金属ワイヤ12に代えて、金属タブ21でAMR素子10の電極と単層基板20の電極とを接続したものである。図36は、図35における単層基板とAMR素子の実装状態を示す拡大図である。図35及び図36において、図33及び図34と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
図35及び図36において、単層基板20は磁石70に固定されており、穴部20aを有する。AMR素子10は、単層基板20に包囲されるように穴部20aに露出している磁石70の表面に接着剤で固定されている。AMR素子10の電極101a〜101cは、単層基板20表面に設けられた電極111a〜111cとそれぞれ金属タブ21で接続され、電極111a〜111cは伝送線路11を通して単層基板20の外部の裏面に設けられた外部パッド112a〜112cと接続されている。外部パッド112a〜112cには、信号処理回路、バイアス電圧等の外部回路が接続される。
【0087】
磁石8と磁石70は異極が対向しているので、図23と同様に被検知物5及びAMR素子10にはZ方向の磁界が印加されるので、この発明の実施の形態6と同様の作用効果が得られる。さらに、AMR素子10の電極と単層基板20の電極とが金属タブ21で接続されているので、AMR素子10と電気シールド板31との隙間が小さくなり、AMR素子10と被検知物5との距離が小さくなるので、検出感度が向上する。
【符号の説明】
【0088】
1 筐体
1a 第1の筐体
1b 第2の筐体
1c 嵌合ブロック
1d 保持ブロック
2 中空部
3 第1のスリット部
4 第2のスリット部
5 被検知物(紙幣)
6 第1の磁石
7 第2の磁石
8 磁石
9 多層基板、 9a 多層基板の穴部
91 1層目基板、 91a 1層目基板の穴部
92 2層目基板、 92a 2層目基板の穴部
10 異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)
101a〜101c AMR素子の電極
102a〜102c 抵抗体パターン
11 伝送線路
111a〜111c 伝送線路の電極
112a〜112c 伝送線路の外部パッド
12 金属ワイヤ(電気接続手段)
13 樹脂
15 処理回路
17 磁力線
191 金属キャリア
20 単層基板
20a 単層基板の穴部
21 金属タブ(電気接続手段)
31 電気シールド板
70 磁石
71 ケーブル
80 磁性体
81 第1の磁石用ヨーク
82 第2の磁石用ヨーク
83 磁石用ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を搬送される被検知物と、この被検知物の一方の面に磁極が配置され、前記被検知物に交差する交差磁界を生成する磁石と、前記被検知物の他方の面に設けられ、出力端子を有し、前記交差磁界内を搬送される前記被検知物の磁気成分による前記交差磁界の搬送方向成分の変化を抵抗値の変化として出力する磁気抵抗効果素子とを備えた磁気センサ装置。
【請求項2】
搬送路を搬送される被検知物と、この被検知物の一方の面に磁極が配置され、前記被検知物に交差する交差磁界を生成する磁石と、この磁石と前記被検知物との間に設けられ、出力端子を有し、前記交差磁界内を搬送される前記被検知物の磁気成分による前記交差磁界の搬送方向成分の変化を抵抗値の変化として出力する磁気抵抗効果素子とを備えた磁気センサ装置。
【請求項3】
筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1のスリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、前記搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極が対向して配置され、前記第1の磁石との間で形成され前記被検知物に交差する磁界強度が前記第1の磁石の前記搬送方向の略中央部に零点を持ち両端部に向かうにつれ強くなるように勾配変化する交差磁界を生成する第2の磁石と、前記被検知物と前記第2の磁石との間に設けられ、出力端子を有し、前記交差磁界内を搬送される前記被検知物の磁気成分による前記交差磁界の前記搬送方向成分の変化を抵抗値の変化として出力する前記搬送方向に感磁作用を有する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力する基板と、この基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記交差磁界の磁界強度の強磁界強度領域に設けられた磁気センサ装置。
【請求項4】
筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1のスリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、前記搬送方向に沿って前記第1の磁石と対向して配置され、前記第1の磁石との間で形成され前記被検知物に交差する磁界強度が前記第1の磁石の前記搬送方向の略中央部に零点を持ち両端部に向かうにつれ強くなるように勾配変化する交差磁界を生成する第1の磁性体と、前記被検知物と前記第1の磁性体との間に設けられ、出力端子を有し、前記勾配磁界内を搬送される前記被検知物の磁気成分による前記交差磁界の前記搬送方向成分の変化を抵抗値の変化として出力する前記搬送方向に感磁作用を有する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力する基板と、この基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記交差磁界の磁界強度の強磁界強度領域に設けられた磁気センサ装置。
【請求項5】
筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1のスリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って所定の長さの磁極を配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、前記搬送方向に沿って前記第1の磁石と対向して配置され、前記第1の磁石との間で形成され前記被検知物に交差する交差磁界を生成する第1の磁性体と、前記被検知物と前記第1の磁性体との間に設けられ、出力端子を有し、前記交差磁界内を搬送される前記被検知物の磁気成分による前記交差磁界の前記搬送方向成分の変化を抵抗値の変化として出力する前記搬送方向に感磁作用を有する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力する基板と、この基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記第1の磁石の前記搬送方向の略中央部に設けられた磁気センサ装置。
【請求項6】
前記第1の磁石の前記搬送方向の両側面に、一対の磁性体から成る第1のヨークを設け、前記第2の磁石の前記搬送方向の両側面に、一対の磁性体から成る第2のヨークを設けた請求項3に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記第1の磁石の前記搬送方向の両側面に、一対の磁性体から成る第1のヨークを設けた請求項4に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記磁気抵抗効果素子は、前記搬送方向と直交する方向に延在された矩形状の第1の抵抗体パターンと矩形状の第2の抵抗体パターンとを直列接続して平行に配置し、直列接続された前記第1の抵抗体パターンと前記第2の抵抗体パターンとの共通接続点を前記出力端子と接続する請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記磁気抵抗効果素子は、前記搬送方向と直交する方向に延在された矩形状の第1の抵抗体パターンと前記搬送方向に延在された矩形状の第2の抵抗体パターンとを直列接続して配置し、直列接続された前記第1の抵抗体パターンと前記第2の抵抗体パターンとの共通接続点を前記出力端子と接続する請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項10】
前記磁気抵抗効果素子は、前記第1の抵抗体パターン及び前記第2の抵抗体パターンのそれぞれの矩形状パターンを、それぞれミアンダ形状に折り曲げた配置である請求項8又は請求項9に記載の磁気センサ装置。
【請求項11】
前記基板は、前記磁気抵抗効果素子を包囲する穴部を有する請求項3乃至請求項10のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項12】
前記基板は、前記搬送方向と直交する方向に複数個アレイ状に配置された前記磁気抵抗効果素子を一纏めに包囲し、前記磁気抵抗効果素子の前記出力端子からの抵抗値変化を前記接続パッドから外部にそれぞれ出力する請求項3乃至請求項10のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項13】
前記磁気抵抗効果素子と前記基板は、前記搬送方向と直交する方向に複数個アレイ状に配置され、前記磁気抵抗効果素子の前記出力端子からの抵抗値変化を前記接続パッドから外部にそれぞれ出力する請求項3乃至請求項10のいずれかに記載の磁気センサ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate


【公開番号】特開2012−255770(P2012−255770A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77356(P2012−77356)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】