磁気テープの膜厚測定装置および膜厚測定方法
【課題】 ロール間を走行する磁気テープがバタツキを生じても、磁性膜の膜厚を正確に測定することができる膜厚測定装置および膜厚測定方法を提供すること。
【解決手段】磁気テープTの表面側に配置したX線管球4から所定の入射角で1次X線x1 を入射させ、磁性膜3内のターケット元素から発生する蛍光X線f1 の強度を入射角に対応する反射角の方向に配置した半導体検出器11で検出する。また、磁気テープTの裏面側には表面側のX線管球4に対向させてX線管球5を配置して1次X線x2 を入射させ、ターケット元素から発生する蛍光X線f2 の強度を表面側の半導体検出器11に対向させて配置した半導体検出器12で検出する。磁気テープTがバタツキを生じても、半導体検出器11によって検出される蛍光X線f1 の強度のカウント値と、半導体検出器12によって検出される蛍光X線f2 の強度のカウント値との合算値は磁性層3の正確な膜厚を与える。
【解決手段】磁気テープTの表面側に配置したX線管球4から所定の入射角で1次X線x1 を入射させ、磁性膜3内のターケット元素から発生する蛍光X線f1 の強度を入射角に対応する反射角の方向に配置した半導体検出器11で検出する。また、磁気テープTの裏面側には表面側のX線管球4に対向させてX線管球5を配置して1次X線x2 を入射させ、ターケット元素から発生する蛍光X線f2 の強度を表面側の半導体検出器11に対向させて配置した半導体検出器12で検出する。磁気テープTがバタツキを生じても、半導体検出器11によって検出される蛍光X線f1 の強度のカウント値と、半導体検出器12によって検出される蛍光X線f2 の強度のカウント値との合算値は磁性層3の正確な膜厚を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気テープの膜厚測定装置および膜厚測定方法に関するものであり、更に詳しくは、磁気テープにおける塗布膜の膜厚を、製造プロセスにおいて磁気テープの走行中に正確に測定する膜厚測定装置および膜厚測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高密度の情報記録用磁気テープについてのLTO(リニア・テープ・オープン規格)等における磁性層は、図6に示すような多層構成となっており、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)のベースフィルムBの上に下層の非磁性層2と上層の磁性層3からな二層を形成するか、またはそれ以上の多層を形成したものである。上記の二層構造で高密度記録の可能な磁気テープとする場合、上層の磁性層3の膜厚は数十nmオーダの薄膜とされる傾向にある。そして磁性層3の膜厚が不均一であると記録特性を大きく低下させることから、磁性層3の膜厚をどのように正確に測定し、どのように膜厚の均一化させるかが重要になっている。
【0003】
膜厚の測定方法としては、レーザ光などを用いて透過率を求める方法やX線回折方法があるが、これら以外に、図7に示すように、測定対象の磁性層3にターゲット元素を添加した磁気テープTに対して、X線管球4から1次X線xを入射させて、ターゲット元素から発生する蛍光X線fの強度を半導体検出器11で検出して磁性層3の厚さを測定する方法がある。このターゲット元素は非磁性層2に添加して当該非磁性層の膜厚を測定してもよく、また多層構造の複数の任意の層に異なる種類のターゲット元素を添加しておくことにより、ターゲット元素を添加した複数層それぞれの膜厚を同時に測定できると言う長所を有している(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平02−013803号公報
【0005】
蛍光X線分析方法によって磁性層の膜厚をインラインで、すなわち製造プロセスにおいて磁気テープの走行中に測定する場合には、測定精度を高めることのほかに、測定時間を如何に短縮するかも重要である。蛍光X線分析において使用する蛍光X線の検出器には波長分散型とエネルギー分散型とがある。エネルギー分散型の検出器は波長分解能に劣るものの、 多数種の元素を同時に短時間で検出することが可能であるという点において好ましく、多用されている。
【0006】
磁気テープTは、数・m厚さのPETなどのベースフィルムB上に鉄やコバルト等の磁性材料とそれらを結合させる塩化ビニル系共重合樹脂を主成分とする結合材料とからなる塗膜を極めて薄く形成し乾燥して磁性層3としている。そのため、図8に示すように、X線管球4から入射する1次X線xは磁気テープTを透過して裏面側へ突き抜けるので、入射点の裏面側に走行用のガイドロール20等が存在すると、磁気テープTからの蛍光X線fのほかに、ガイドロール20の構成元素からの蛍光X線f’が大量に発生する。これを避けるために、図9に示すように、磁性膜3の膜厚の測定は磁気テープTにおける1次X線xの入射点の裏面側には何も存在しない状態で行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、磁気テープTにおける磁性塗料の塗布、乾燥工程では、ベースフィルムBまたは磁気テープTは多数本の走行ロール20によってガイドされて走行し、走行中のベースフィルムBまたは磁気テープTは走行速度やテンションの微妙な変動により、走行ロール20、20の間でバタツキを生ずる。このバタツキは図9に示した磁気テープTにおける磁性層3の膜厚測定を測定する場合にも当然に発生し、図10に示すように、X線管球4および半導体検出器11からなる膜厚測定部10と磁気テープTとの間の距離gを変動させる。図11は実験によって求めた磁気テープTと膜厚測定部10との距離gと、検出される蛍光X線fの強度との関係を示す図であり、距離gが1mm離れると、蛍光X線fの強度はカウント値で4450cps程度から4100cps程度に低下する。このカウント値の低下は磁性層3の膜厚との関係を示す検量線によれば膜厚で約20%の減少に相当する。 そして磁気テープTのバタツキはベースフィルムBの幅が大になるほど激しく、磁性層3の膜厚の高精度な測定が困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、ロール間を走行する磁気テープの磁性膜または非磁性層の膜厚を測定する場合に、磁気テープがバタツキを生じても、磁性膜または非磁性層の膜厚を正確に測定することができる膜厚測定装置および膜厚測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は請求項1または請求項6の構成によって解決されるが、その解決手段を説明すれば次に示す如くである。
【0010】
請求項1の磁気テープの膜厚測定装置は、走行するプラスチックフィルムの表面に、非磁性層の塗料を塗布し、乾燥させることなく、その上へ磁性層の塗料を塗布した後、両者を乾燥して形成される磁気テープの磁性層または非磁性層の膜厚を乾燥直後のインラインで測定する磁気テープの膜厚測定装置において、磁気テープの表面側に、磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x1 を入射する第1X線管球と、一次X線x1 を受けて、磁性層または非磁性層に予め添加されているターゲット元素から発生する蛍光X線f1 を検出する第1半導体検出器が入射角に対応する反射角の方向に配置され、かつ、磁気テープの裏面側に、磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x2 を入射する第2X線管球と、一次X線x2 を受けて、ターゲット元素から発生する蛍光X線f2 を検出する第2半導体検出器が入射角に対応する反射角の方向に配置されている装置である。
【0011】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、磁気テープの表面側の第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と、磁気テープの裏面側の第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度とに基づいて膜厚を求めることにより、走行中の磁気テープがバタツキを生じ、例えば磁気テープが第1X線管球と第1半導体検出器側へ接近して、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度が増大する場合、磁気テープは第2X線管球と第2半導体検出器から遠ざかり、第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度は低下することから、第1半導体検出器によって検出される強度と第2半導体検出器によって検出される強度の和は、磁気テープがバタツキを生じていない時の同様な強度の和と同等である。
【0012】
請求項2の磁気テープの膜厚測定装置は、第1X線管球から入射される一次X線x1 と第2X線管球から入射される一次X線x2 とが同軸上にあるように、第1X線管球と第2X線管球とが磁気テープを介し対向して配置されており、同様に第1半導体検出器と第2半導体検出器とが磁気テープを介し対向して配置されている装置である。
【0013】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、第1X線管球からの一次X線x1 の磁気テープを透過したものが第2半導体検出器へ入射すること、および第2X線管球からの一次X線x2 の磁気テープを透過したものが第1半導体検出器へ入射することが防がれ、第1半導体検出器で検出される蛍光X線f1 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、第2半導体検出器で検出される蛍光X線f2 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させない。
【0014】
請求項3の磁気テープの膜厚測定装置は、ターゲット元素を添加した磁性層または非磁性層の膜厚に応じて第1半導体検出器で検出され該第1半導体検出器に接続された第1計数回路によってカウントされる蛍光X線f1 の強度のカウント値、および第2半導体検出器で検出され該第2半導体検出器に接続された第2計数回路によってカウントされる蛍光X線f2 の強度のカウント値との合算値を演算し、合算値を予め作成された検量線と対照して磁性層または非磁性層の膜厚を測定する計測装置が第1計数回路および第2計数回路に接続されている装置である。
【0015】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、計測装置内において第1計数回路による蛍光X線f1 のカウント値と第2計数回路による蛍光X線f2 のカウント値とが合算され、その合算値を検量線と対照して、磁気テープの磁性層または非磁性層の膜厚を測定することことから、磁気テープがバタツキを生じても精度の高い膜厚を与える。
【0016】
請求項4の磁気テープの膜厚測定装置は、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による蛍光X線f2 のカウントが同期してカウントされる装置である。
【0017】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による蛍光X線f2 のカウントが、磁気テープの同一部分の表裏で同時に行われる。
【0018】
請求項5の磁気テープの膜厚測定装置は、走行する磁気テープに対し、第1X線管球と第1半導体検出器、および第2X線管球と第2半導体検出器が一体として、走行方向とは直角な磁気テープの幅方向に往復可能に設置されている装置である。
【0019】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、一次X線x1 や一次X線x2 がスポット状に入射されることから、測定スポットを移動させない場合には磁気テープの走行方向に沿う線状にしか膜厚を測定できないが、測定スポットを幅方向に往復させることにより磁気テープの全面に亘る膜厚を測定することができる。
【0020】
請求項6の磁気テープの膜厚測定方法は、走行するプラスチックフィルムの表面に、非磁性層の塗料を塗布し、乾燥させることなく、その上へ磁性層の塗料を塗布した後、両者を乾燥して形成される磁気テープの磁性層または非磁性層の膜厚を乾燥直後のインラインで測定する磁気テープの膜厚測定方法において、磁気テープの表面側に配置した第1X線管球から磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x1 を入射させ、その一次X線x1 を受けて、磁性層または非磁性層に予め添加したターゲット元素から発生する蛍光X線f1 を磁気テープの表面側において入射角に対応する反射角の方向に配置した第1半導体検出器によって検出し、
同時に、磁気テープの裏面側に配置した第2X線管球から磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x2 を入射させ、その一次X線x2 を受けて、ターゲット元素から発生する蛍光X線f2 を磁気テープの裏面側において入射角に対応する反射角の方向に配置した第2半導体検出器によって検出し、
第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と、第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度とに基づいて磁性層または非磁性層の膜厚を測定する方法である。
【0021】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、磁気テープの表面側の第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と、磁気テープの裏面側の第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度とに基づいて膜厚を求めることから、走行中の磁気テープがバタツキを生じ、例えば磁気テープが第1X線管球と第1半導体検出器から遠ざかり、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度が低下する場合は、磁気テープは第2X線管球と第2半導体検出器の方へ近付き、第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度は増大するので、第1半導体検出器によって検出される強度と第2半導体検出器によって検出される強度との和は、磁気テープがバタツキを生じていない時の同様な強度の和と同等である。
【0022】
請求項7の磁気テープの膜厚測定方法は、第1X線管球から入射される一次X線x1 と第2X線管球から入射される一次X線x2 とが同軸上にあるように、第1X線管球と第2X線管球とを磁気テープを介し対向させて配置し、同様に第1半導体検出器と第2半導体検出器とを磁気テープを介し対向させて配置することにより、一次X線x1 が磁気テープを透過して第2半導体検出器へ入射しないように、また一次X線x2 が磁気テープを透過して第1半導体検出器へ入射しないようにして計測する方法である。
【0023】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、第1X線管球からの一次X線x1の磁気テープを透過したものが第2半導体検出器へ入射すること、および第2X線管球からの一次X線x2の磁気テープを透過したものが第1半導体検出器へ入射することを防ぐので、第1半導体検出器で検出される蛍光X線f1の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、また第2半導体検出器で検出される蛍光X線f2の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させない。
【0024】
請求項8の磁気テープの膜厚測定方法は、ターゲット元素を添加した磁性層または非磁性層の膜厚に応じて生ずる蛍光X線f1 の強度を第1半導体検出器で検出し、検出される蛍光X線f1 の強度を第1半導体検出器に接続された第1計数回路によってカウントし、同じく生ずる蛍光X線f2 の強度を第2半導体検出器で検出し、検出される蛍光X線f2 の強度を第2半導体検出器に接続された第2計数回路によってカウントし、第1計数回路および第2計数回路が接続されている計測装置において、蛍光X線f1 のカウント値と蛍光X線f2のカウント値との合算値を求め、その合算値を予め作成した検量線と対照して磁性層または非磁性層の膜厚を測定する方法である。
【0025】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウント値と、第2計数回路による蛍光X線f2 のカウント値との合算値を検量線と対照することにより、走行中に磁気テープがバタツキを生じても、磁気テープの磁性層の膜厚を正確に測定することができる。
【0026】
請求項9の磁気テープの膜厚測定方法は、第1計数回路における蛍光X線f1 のカウントと、第2計数回路における蛍光X線f2 のカウントとを同期させてカウントする方法である。
【0027】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による蛍光X線f2 のカウントを、磁気テープの同一部分の表裏で同時に行わせる。
【0028】
請求項10の磁気テープの膜厚測定方法は、走行する磁気テープに対し、第1X線管球と第1半導体検出器、および第2X線管球と第2半導体検出器を一体として磁気テープの幅方向に往復させる方法である。
【0029】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、一次X線x1 および一次X線x2 はスポット状に入射されることから、第1X線管球および第2X線管球を移動させない場合には磁気テープの走行方向の線状部分しか膜厚を測定できないが、第1X線管球と第1半導体検出器、および第2X線管球と第2半導体検出器を磁気テープの幅方向に往復させることにより磁気テープの全面に亘る膜厚を測定することができる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1の膜厚測定装置によれば、磁気テープの表面側において第1X線管球からの一次X線x1 によって生ずる蛍光X線f1 の強度を第1半導体検出器によって検出することができ、磁気テープの裏面側において第2X線管球からの一次X線x2 によって生ずる蛍光X線f2 の強度を第2半導体検出器によって検出することができ、走行中の磁気テープがバタツキを生じ、例えば磁気テープが第1X線管球と第1半導体検出器の方へ接近して、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度が増大する場合には、磁気テープは第2X線管球と第2半導体検出器から遠ざかり、第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度は低下するので、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度との和は、磁気テープがバタツキを生じていない時の第1半導体検出器による蛍光X線f1 の強度と第2半導体検出器による蛍光X線f1 の強度の和と同等であるから、磁気テープの走行中のバタツキとは無関係に正確な膜厚を与える。
【0031】
請求項2の膜厚測定装置によれば、第1X線管球からの一次X線x1 の磁気テープを透過したものが第2半導体検出器へ入射することを防ぎ、第2X線管球からの一次X線x2の磁気テープを透過したものが第1半導体検出器へ入射することを防ぐので、第1半導体検出器で検出される蛍光X線f1 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、また第2半導体検出器で検出される蛍光X線f2 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、膜厚の正確な測定が不能になるような事態を招かない。
【0032】
請求項3の膜厚測定装置によれば、計測装置内において第1計数回路による蛍光X線f1 の強度のカウント値と、第2計数回路による蛍光X線f2 の強度のカウント値とが合算され、その合算値が予め作成された検量線と対照されるので、磁気テープがバタツキを生じていても、バタツキが生じていない状態における磁気テープの磁性層の膜厚として測定することができる。
【0033】
請求項4の膜厚測定装置によれば、第1計数回路によるカウントと第2計数回路によるカウントが同期して行なわれ、磁気テープの同一部分の表裏が同時にカウントされるので、バタツキによって磁気テープの位置が変動しても、その位置に関係なく常に精度の高い膜厚を与える。
【0034】
請求項5の膜厚測定装置によれば、一次X線x1 および一次X線x2 の入射スポットを走行中の磁気テープの幅方向に往復させることができるので、磁気テープの全面に亘る膜厚を測定することができ、磁気テープ全面における膜厚分布を正確に知ることができる。
【0035】
請求項6の膜厚測定方法によれば、磁気テープの表面側の第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と、磁気テープの裏面側の第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度とに基づいて膜厚を求めることができ、走行中の磁気テープがバタツキを生じ、例えば磁気テープが第1X線管球と第1半導体検出器から遠ざかり、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度が低下する場合には、磁気テープは第2X線管球と第2半導体検出器へ接近し、第2半導体検出器による蛍光X線f2 の強度が増大するので、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度の和は、磁気テープがバタツキを生じていない時の蛍光X線f1 の強度と蛍光X線f2 の強度の和と同等であり、磁気テープの走行中のバタツキと無関係に正確な膜厚を与える。
【0036】
請求項7の膜厚測定方法によれば、第1X線管球からの一次X線x1 の磁気テープを透過したものが第2半導体検出器へ入射することを防ぎ、第2X線管球からの一次X線x2の磁気テープを透過したものが第1半導体検出器へ入射することを防ぐので、第1半導体検出器で検出される蛍光X線f1 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、また第2半導体検出器で検出される蛍光X線f2 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、膜厚を精度高く測定することができる。
【0037】
請求項8の膜厚測定方法によれば、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウント値と第2計数回路による蛍光X線f2 のカウント値とを合算し、その合算値が予め作成されている検量線と対照されるので、磁気テープがバタツキを生じていても、バタツキが生じていない状態における磁気テープの磁性層の膜厚として測定することができる。
【0038】
請求項9の膜厚測定方法によれば、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による蛍光X線f2 のカウントを同期させ、磁気テープの同一部分の表裏を同時にカウントするので、バタツキによって磁気テープの位置が変動しても、その位置に関係なく常に精度の高い膜厚を与える。
【0039】
請求項10の膜厚測定方法によれば、一次X線x1 および一次X線x2 の入射スポットを走行中の磁気テープの幅方向に往復させるので、磁気テープの全面における膜厚の測定が可能であり、磁気テープの全面に亘る膜厚分布の状態を知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は、図6に示した磁気テープTの磁性層3の膜厚を測定するための、磁気テープTの表面側と裏面側との両側に配置されるX線管球と半導体検出器、すなわち膜厚測定部10、10’を示す図である。磁気テープTの非磁性層2は、例えばα酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック等の非磁性材料の微粉末と結合材を主成分とするものであり、磁性層3は例えば鉄(Fe)を主成分とする強磁性金属粉末に固有の蛍光X線を発生させるターゲット元素を少量添加した磁性材料と結合材を主成分とするものである。ターゲット元素としては、一般的にはクロム、アルミニウム、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、その他が使用される。また結合材としては、一般的には塩化ビニル系共重合樹脂を主体とし、これに架橋性のポリウレタン系樹脂を混合したものが使用される。
【0041】
このような磁気テープTの表面側に、X線管球4からの1次X線x1 を磁気テープTへ所定の入射角度で入射させ、磁性層3に含まれるターゲット元素から磁性層3の膜厚に応じて発生する蛍光X線f1 の強度を1次X線x1 の入射角度に対応する反射角度の方向に配置した半導体検出器11で検出し、半導体検出器11に接続された計数回路13によって蛍光X線f1 の強度をカウントすると同時に、磁気テープTの裏面側には表面側のX線管球4に対向させてX線管球5を配置し、そのX線管球5からの1次X線x2 を磁気テープTへ所定の入射角度で入射させ、磁性層3に含まれるターゲット元素から磁性層3の膜厚に応じて発生する蛍光X線f2 の強度を1次X線x2 の入射角度に対応する反射角度の方向に配置した半導体検出器12で検出し、半導体検出器12に接続された計数回路14によって蛍光X線f2 の強度をカウントすることによって、磁性層3の膜厚を求めるようにした装置である。
【0042】
すなわち、磁気テープTと膜厚測定部10との距離gが小さくなると検出される蛍光X線fの強度は大になり、 距離gが大になると検出される蛍光X線fの強度は小さくなることから、磁気テープTの表面側にX線管球4と半導体検出器11、および裏面側にX線管球5と半導体検出器12を配置することによって、走行する磁気テープTのバタツキによる蛍光X線fの強度の変動を表裏で相殺することができ、磁気テープTのバタツキと無関係に磁性層3の膜厚を正確に測定することができるようにした装置である。
【0043】
図1に示したように、X線管球4とX線管球5、および半導体検出器11と半導体検出器12を対向させて配置するのは、表面側のX線管球4からの1次X線x1の磁気テープTを透過したものが裏面側の半導体検出器12へ入射して半導体検出器12に接続される計数回路14の能力が飽和することを防ぐためであり、裏面側のX線管球5からの1次X線x2 の磁気テープTを透過したものが表面側の半導体検出器11へ入射して半導体検出器11に接続される計数回路13の能力が飽和することを防ぐためである。
【0044】
使用するエネルギー分散型の半導体検出器11は、P型Si(シリコン)にLi(リチウム)を拡散させたPIN接合を有する半導体によって蛍光X線の強度をエネルギー的に分光して電流パルスに変換し、計数回路13によって電流パルスの波高を蛍光X線の強度としてカウントするものであり、シンチレーション計数管ないしは光電子増倍管を使用しないので装置が小型になることから多用されるようになっている。本発明では、半導体検出器のなかでも検出性能が優れたシリコンドリフト検出器(SDD)を使用する。SDDはP型Siから発生した電子を同心円状の電極構造のアノードへ効率よく導き、検出される電流パルスを内蔵された電気回路によって電圧パルスに変換するものである。
【0045】
そして、上記の計数回路13、14は、SDDからの電圧パルスの波高を蛍光X線のエネルギー強度としてカウントするものであるが、カウント漏れを生じないように電圧パルスを高速でカウントし得るもの、低くとも100kcps以上のカウントが可能であるような計数率を有するデジタル・シグナル・プロセッシング基板(DSP基板)を使用したものとすることにより、磁性層3の膜厚を短時間で精度高く測定することができる。
【0046】
図2は図1に示したX線管球4と半導体検出器11、およびX線管球5と半導体検出器12を有する膜厚測定装置1の構成をブロック的に示す図である。1次X線を入射させるX線管球4、5はそれぞれ高圧電源6、7から電圧が印加されるが、その高圧電源6、7は制御装置8によってX線管球4、5に発生させる1次X線の出力を制御する。発生する1次X線は磁気テープTへスポット状に入射されるが、磁性膜3が形成されている磁気テープTは幅が広いので、磁気テープTの全体に亘る膜厚分布の状態を知るために、磁気テープTへのX線管球4からの1次X線x1 の入射スポット、X線管球5からの1次X線x2 の入射スポットを走行する磁気テープTの幅方向に往復させることを要する。そのために表面側のX線管球4と半導体検出器11、および裏面側のX線管球5と半導体検出器12を一体として幅方向に往復させるが、そのトラバース動作のためのモータ10と同モータの制御装置9が設けられている。
【0047】
そして、半導体検出器11、12によって検出される蛍光X線の強度は、それぞれに接続される計数回路13、14によってエネルギー毎にカウントされる。膜厚計測装置15は、計数回路13、14における一定期間毎のパルスカウントを同期させて取り込み、計数回路13、14のカウント値を次式(1)で示すように合算し、その合算値を予め作成され内蔵されている検量線と対照し、膜厚として表示する。
膜厚計測装置15におけるカウントの合算値
= 計数回路13のカウント値 + 計数回路14のカウント値 ???????? 式(1)
この時、計数回路13によるカウントと計数回路14によるカウントを同期させているので、磁気テープのバタツキによって測定場所における磁気テープの位置が変動しても、その位置に関係なく磁性層3の膜厚を高い精度で測定することができる。
【実施例】
【0048】
厚さ12μmのPETフィルムをベースフィルムBとして、図3に概念的に示すダイコーティング方式、すなわち、走行するベースフィルムBの面に、先ず、ダイ21Nによって非磁性塗料22が塗布され、続いて非磁性塗料22の塗布膜の上へダイ23Mによって磁性塗料24が塗布され、その後で乾燥する方式(ウエット・オン・ウエット方式)による磁気テープTの製造プロセスにいて、塗料の乾燥の直後において、形成されている非磁性層2上の磁性層3の厚さを測定した。上記において非磁性材料にはα酸化鉄(α−Fe2 O3 )の粉末を使用し、磁性材料にはFe系金属強磁性材料の粉末を使用し、同強磁性材料に添加するターゲット元素にはFe系金属強磁性材料の酸化防止に使用されるイットリウム(Y)を採用した。また結合材には、非磁性層2と磁性層3の何れにも上述した塩化ビニル系共重合樹脂を主体とするものを使用した。そして上記の塗料は結合材を有機溶剤に溶解させた溶液の中に、非磁性材料の微粉末、または磁性材料の微粉末を分散させたものである。
【0049】
上記のようなダイコーティング方式によって磁性層3の厚さが異なる4種の磁気テープの試料A、B、C、Dを作成した。これらを図1に示した膜厚測定装置1によって磁気テープTの表裏の半導体検出器11による蛍光X線f1 の強度のカウント値[cps]、および半導体検出器12による蛍光X線f2 の強度のカウント値[cps]と、試料A、B、C、Dのそれぞれをウルトラ・ミクロトームで厚さ方向に細断した薄片を透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察して計測される膜厚とを比較して表1、表2に示した。また、それらの関係を図4に示した。図4に見られるように、TEMによる計測値とターゲット元素であるYによる蛍光X線の強度のカウント値との間には検量線で換算することができる相関関係のあることが確認された。
【0050】
【表1】
【表2】
【0051】
試料A、B、C、Dの表裏の半導体検出器11による蛍光X線f1 の強度のカウント値と、半導体検出器12による蛍光X線f2 の強度のカウント値との合算値[cps]と、TEMによって計測される膜厚との関係を表3と図5に示した。合算値によって膜厚を測定することにより検量線は1本で用を達すると言う実質的なメリットがある。
【0052】
【表3】
【0053】
以上、本発明の磁気テープの膜厚測定方法を実施例によって説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0054】
例えば本実施例においては、磁性層3にターゲット元素を添加しておき、そのターゲット元素が発生する蛍光X線の強度に基づいて磁性層3の膜厚を求めたが、非磁性層2にターゲット元素を添加しておき、非磁性層2の膜厚を求めることも可能である。
【0055】
また本実施例においては、二層構造の磁気テープTのターゲット元素を添加した上側の磁性層3の膜厚を測定する場合を述べたが、特許文献1に関して説明したように、ターゲット元素を利用して膜厚を測定する方法は、多層構造の任意の複数層に異なる種類のターゲット元素を添加しておくことにより、ターゲット元素を添加した複数層の膜厚を同時に測定できると言う長所を有している。そのような多層構造の磁気テープついて複数層の膜厚を同時に測定する場合にも、本発明の膜厚測定装置および膜厚測定方法を適用することができる。
【0056】
また本実施例においては、非磁性層2の材料としてα酸化鉄(α−Fe2 O3 )を使用し、磁性層3の材料としてFe系金属強磁性材料を使用し、非磁性層2と磁性層3との何れにもFeを含有することから、Feが発生する蛍光X線によって磁性層3の膜厚を測定することができないことから、磁性層3にターゲット元素Yを添加したが、非磁性層2の材料にFeを含有しない材料、例えば酸化チタンやカーボンブラックを使用する場合には、磁性層3にターゲット元素を添加せずとも、磁性層3のFe系金属強磁性材料から発生する蛍光X線によって膜厚を測定することができる。このような場合にも、本発明の膜厚測定装置および膜厚測定方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例における磁気テープの磁性膜の膜厚測定に使用した測定装置におけるX線管球と蛍光X線を検出するための半導体検出器との配置を示す図である。
【図2】同測定装置の全体の構成を示すブロック図である。
【図3】ベースフィルムに非磁性塗料と磁性塗料を塗布するダイコーティングの方法を概念的に示す図である。
【図4】磁気テープの表面側の半導体検出器によって検出された蛍光X線の強度のカウント値と、透過型電子顕微鏡によって計測された磁性膜の厚さとの関係を示す図である。
【図5】表面側の半導体検出器によるカウント値と裏面側の半導体検出器によるカウント値との合算値と、透過型電子顕微鏡によって計測された磁性膜の厚さとの関係を示す図である。
【図6】ベースフィルムに下層の非磁性層と上層の磁性層を形成した二層構造の磁気テープを示す斜視図である。
【図7】磁気テープの磁性層にX線管球がら1次X線を入射させ、磁性層に含まれるテーゲット元素から発生する蛍光X線の強度を半導体検出器で検出して磁性層の膜厚を測定する方法をモデル的に示す図である。
【図8】図7の測定方法では磁気テープの裏面にロールが存在する場合には、ロールから発生する蛍光X線も同時にカウントされることを示す図である。
【図9】図8に示すような状態を避けるために、蛍光X線による膜厚の測定は磁気テープの裏面側にロール類が存在しない箇所で行われることを示す図である。
【図10】図9に示すように蛍光X線による膜厚の測定をロール間で行うと、磁気テープが多少の差はあってもバタツキを生じ、磁性層と半導体検出器との間の距離と半導体検出器によって検出されるが変動し正確な測定ができないことを示す図である。
【図11】磁気テープのバタツキによる磁性層と半導体検出器との間の距離の変動と半導体検出器によって検出される蛍光X線の強度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・膜厚測定装置、 2・・・非磁性層、 3・・・磁性層、
4・・・X線管球、 5・・・X線管球、 10・・・膜厚測定部、
11・・・半導体検出器、 12・・・半導体検出器、 13・・・計数回路、 14・・・計数回路、 15・・・計測装置、 21・・・ダイN、
22・・・ 非磁性塗料、 23・・・ダイM、 24・・・磁性塗料、
B・・・ベースフィルム、 f・・・蛍光X線、 T・・・磁気テープ、
x・・・一次X線、
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気テープの膜厚測定装置および膜厚測定方法に関するものであり、更に詳しくは、磁気テープにおける塗布膜の膜厚を、製造プロセスにおいて磁気テープの走行中に正確に測定する膜厚測定装置および膜厚測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高密度の情報記録用磁気テープについてのLTO(リニア・テープ・オープン規格)等における磁性層は、図6に示すような多層構成となっており、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)のベースフィルムBの上に下層の非磁性層2と上層の磁性層3からな二層を形成するか、またはそれ以上の多層を形成したものである。上記の二層構造で高密度記録の可能な磁気テープとする場合、上層の磁性層3の膜厚は数十nmオーダの薄膜とされる傾向にある。そして磁性層3の膜厚が不均一であると記録特性を大きく低下させることから、磁性層3の膜厚をどのように正確に測定し、どのように膜厚の均一化させるかが重要になっている。
【0003】
膜厚の測定方法としては、レーザ光などを用いて透過率を求める方法やX線回折方法があるが、これら以外に、図7に示すように、測定対象の磁性層3にターゲット元素を添加した磁気テープTに対して、X線管球4から1次X線xを入射させて、ターゲット元素から発生する蛍光X線fの強度を半導体検出器11で検出して磁性層3の厚さを測定する方法がある。このターゲット元素は非磁性層2に添加して当該非磁性層の膜厚を測定してもよく、また多層構造の複数の任意の層に異なる種類のターゲット元素を添加しておくことにより、ターゲット元素を添加した複数層それぞれの膜厚を同時に測定できると言う長所を有している(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平02−013803号公報
【0005】
蛍光X線分析方法によって磁性層の膜厚をインラインで、すなわち製造プロセスにおいて磁気テープの走行中に測定する場合には、測定精度を高めることのほかに、測定時間を如何に短縮するかも重要である。蛍光X線分析において使用する蛍光X線の検出器には波長分散型とエネルギー分散型とがある。エネルギー分散型の検出器は波長分解能に劣るものの、 多数種の元素を同時に短時間で検出することが可能であるという点において好ましく、多用されている。
【0006】
磁気テープTは、数・m厚さのPETなどのベースフィルムB上に鉄やコバルト等の磁性材料とそれらを結合させる塩化ビニル系共重合樹脂を主成分とする結合材料とからなる塗膜を極めて薄く形成し乾燥して磁性層3としている。そのため、図8に示すように、X線管球4から入射する1次X線xは磁気テープTを透過して裏面側へ突き抜けるので、入射点の裏面側に走行用のガイドロール20等が存在すると、磁気テープTからの蛍光X線fのほかに、ガイドロール20の構成元素からの蛍光X線f’が大量に発生する。これを避けるために、図9に示すように、磁性膜3の膜厚の測定は磁気テープTにおける1次X線xの入射点の裏面側には何も存在しない状態で行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、磁気テープTにおける磁性塗料の塗布、乾燥工程では、ベースフィルムBまたは磁気テープTは多数本の走行ロール20によってガイドされて走行し、走行中のベースフィルムBまたは磁気テープTは走行速度やテンションの微妙な変動により、走行ロール20、20の間でバタツキを生ずる。このバタツキは図9に示した磁気テープTにおける磁性層3の膜厚測定を測定する場合にも当然に発生し、図10に示すように、X線管球4および半導体検出器11からなる膜厚測定部10と磁気テープTとの間の距離gを変動させる。図11は実験によって求めた磁気テープTと膜厚測定部10との距離gと、検出される蛍光X線fの強度との関係を示す図であり、距離gが1mm離れると、蛍光X線fの強度はカウント値で4450cps程度から4100cps程度に低下する。このカウント値の低下は磁性層3の膜厚との関係を示す検量線によれば膜厚で約20%の減少に相当する。 そして磁気テープTのバタツキはベースフィルムBの幅が大になるほど激しく、磁性層3の膜厚の高精度な測定が困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、ロール間を走行する磁気テープの磁性膜または非磁性層の膜厚を測定する場合に、磁気テープがバタツキを生じても、磁性膜または非磁性層の膜厚を正確に測定することができる膜厚測定装置および膜厚測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は請求項1または請求項6の構成によって解決されるが、その解決手段を説明すれば次に示す如くである。
【0010】
請求項1の磁気テープの膜厚測定装置は、走行するプラスチックフィルムの表面に、非磁性層の塗料を塗布し、乾燥させることなく、その上へ磁性層の塗料を塗布した後、両者を乾燥して形成される磁気テープの磁性層または非磁性層の膜厚を乾燥直後のインラインで測定する磁気テープの膜厚測定装置において、磁気テープの表面側に、磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x1 を入射する第1X線管球と、一次X線x1 を受けて、磁性層または非磁性層に予め添加されているターゲット元素から発生する蛍光X線f1 を検出する第1半導体検出器が入射角に対応する反射角の方向に配置され、かつ、磁気テープの裏面側に、磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x2 を入射する第2X線管球と、一次X線x2 を受けて、ターゲット元素から発生する蛍光X線f2 を検出する第2半導体検出器が入射角に対応する反射角の方向に配置されている装置である。
【0011】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、磁気テープの表面側の第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と、磁気テープの裏面側の第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度とに基づいて膜厚を求めることにより、走行中の磁気テープがバタツキを生じ、例えば磁気テープが第1X線管球と第1半導体検出器側へ接近して、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度が増大する場合、磁気テープは第2X線管球と第2半導体検出器から遠ざかり、第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度は低下することから、第1半導体検出器によって検出される強度と第2半導体検出器によって検出される強度の和は、磁気テープがバタツキを生じていない時の同様な強度の和と同等である。
【0012】
請求項2の磁気テープの膜厚測定装置は、第1X線管球から入射される一次X線x1 と第2X線管球から入射される一次X線x2 とが同軸上にあるように、第1X線管球と第2X線管球とが磁気テープを介し対向して配置されており、同様に第1半導体検出器と第2半導体検出器とが磁気テープを介し対向して配置されている装置である。
【0013】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、第1X線管球からの一次X線x1 の磁気テープを透過したものが第2半導体検出器へ入射すること、および第2X線管球からの一次X線x2 の磁気テープを透過したものが第1半導体検出器へ入射することが防がれ、第1半導体検出器で検出される蛍光X線f1 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、第2半導体検出器で検出される蛍光X線f2 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させない。
【0014】
請求項3の磁気テープの膜厚測定装置は、ターゲット元素を添加した磁性層または非磁性層の膜厚に応じて第1半導体検出器で検出され該第1半導体検出器に接続された第1計数回路によってカウントされる蛍光X線f1 の強度のカウント値、および第2半導体検出器で検出され該第2半導体検出器に接続された第2計数回路によってカウントされる蛍光X線f2 の強度のカウント値との合算値を演算し、合算値を予め作成された検量線と対照して磁性層または非磁性層の膜厚を測定する計測装置が第1計数回路および第2計数回路に接続されている装置である。
【0015】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、計測装置内において第1計数回路による蛍光X線f1 のカウント値と第2計数回路による蛍光X線f2 のカウント値とが合算され、その合算値を検量線と対照して、磁気テープの磁性層または非磁性層の膜厚を測定することことから、磁気テープがバタツキを生じても精度の高い膜厚を与える。
【0016】
請求項4の磁気テープの膜厚測定装置は、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による蛍光X線f2 のカウントが同期してカウントされる装置である。
【0017】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による蛍光X線f2 のカウントが、磁気テープの同一部分の表裏で同時に行われる。
【0018】
請求項5の磁気テープの膜厚測定装置は、走行する磁気テープに対し、第1X線管球と第1半導体検出器、および第2X線管球と第2半導体検出器が一体として、走行方向とは直角な磁気テープの幅方向に往復可能に設置されている装置である。
【0019】
このような磁気テープの膜厚測定装置は、一次X線x1 や一次X線x2 がスポット状に入射されることから、測定スポットを移動させない場合には磁気テープの走行方向に沿う線状にしか膜厚を測定できないが、測定スポットを幅方向に往復させることにより磁気テープの全面に亘る膜厚を測定することができる。
【0020】
請求項6の磁気テープの膜厚測定方法は、走行するプラスチックフィルムの表面に、非磁性層の塗料を塗布し、乾燥させることなく、その上へ磁性層の塗料を塗布した後、両者を乾燥して形成される磁気テープの磁性層または非磁性層の膜厚を乾燥直後のインラインで測定する磁気テープの膜厚測定方法において、磁気テープの表面側に配置した第1X線管球から磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x1 を入射させ、その一次X線x1 を受けて、磁性層または非磁性層に予め添加したターゲット元素から発生する蛍光X線f1 を磁気テープの表面側において入射角に対応する反射角の方向に配置した第1半導体検出器によって検出し、
同時に、磁気テープの裏面側に配置した第2X線管球から磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x2 を入射させ、その一次X線x2 を受けて、ターゲット元素から発生する蛍光X線f2 を磁気テープの裏面側において入射角に対応する反射角の方向に配置した第2半導体検出器によって検出し、
第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と、第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度とに基づいて磁性層または非磁性層の膜厚を測定する方法である。
【0021】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、磁気テープの表面側の第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と、磁気テープの裏面側の第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度とに基づいて膜厚を求めることから、走行中の磁気テープがバタツキを生じ、例えば磁気テープが第1X線管球と第1半導体検出器から遠ざかり、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度が低下する場合は、磁気テープは第2X線管球と第2半導体検出器の方へ近付き、第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度は増大するので、第1半導体検出器によって検出される強度と第2半導体検出器によって検出される強度との和は、磁気テープがバタツキを生じていない時の同様な強度の和と同等である。
【0022】
請求項7の磁気テープの膜厚測定方法は、第1X線管球から入射される一次X線x1 と第2X線管球から入射される一次X線x2 とが同軸上にあるように、第1X線管球と第2X線管球とを磁気テープを介し対向させて配置し、同様に第1半導体検出器と第2半導体検出器とを磁気テープを介し対向させて配置することにより、一次X線x1 が磁気テープを透過して第2半導体検出器へ入射しないように、また一次X線x2 が磁気テープを透過して第1半導体検出器へ入射しないようにして計測する方法である。
【0023】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、第1X線管球からの一次X線x1の磁気テープを透過したものが第2半導体検出器へ入射すること、および第2X線管球からの一次X線x2の磁気テープを透過したものが第1半導体検出器へ入射することを防ぐので、第1半導体検出器で検出される蛍光X線f1の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、また第2半導体検出器で検出される蛍光X線f2の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させない。
【0024】
請求項8の磁気テープの膜厚測定方法は、ターゲット元素を添加した磁性層または非磁性層の膜厚に応じて生ずる蛍光X線f1 の強度を第1半導体検出器で検出し、検出される蛍光X線f1 の強度を第1半導体検出器に接続された第1計数回路によってカウントし、同じく生ずる蛍光X線f2 の強度を第2半導体検出器で検出し、検出される蛍光X線f2 の強度を第2半導体検出器に接続された第2計数回路によってカウントし、第1計数回路および第2計数回路が接続されている計測装置において、蛍光X線f1 のカウント値と蛍光X線f2のカウント値との合算値を求め、その合算値を予め作成した検量線と対照して磁性層または非磁性層の膜厚を測定する方法である。
【0025】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウント値と、第2計数回路による蛍光X線f2 のカウント値との合算値を検量線と対照することにより、走行中に磁気テープがバタツキを生じても、磁気テープの磁性層の膜厚を正確に測定することができる。
【0026】
請求項9の磁気テープの膜厚測定方法は、第1計数回路における蛍光X線f1 のカウントと、第2計数回路における蛍光X線f2 のカウントとを同期させてカウントする方法である。
【0027】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による蛍光X線f2 のカウントを、磁気テープの同一部分の表裏で同時に行わせる。
【0028】
請求項10の磁気テープの膜厚測定方法は、走行する磁気テープに対し、第1X線管球と第1半導体検出器、および第2X線管球と第2半導体検出器を一体として磁気テープの幅方向に往復させる方法である。
【0029】
このような磁気テープの膜厚測定方法は、一次X線x1 および一次X線x2 はスポット状に入射されることから、第1X線管球および第2X線管球を移動させない場合には磁気テープの走行方向の線状部分しか膜厚を測定できないが、第1X線管球と第1半導体検出器、および第2X線管球と第2半導体検出器を磁気テープの幅方向に往復させることにより磁気テープの全面に亘る膜厚を測定することができる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1の膜厚測定装置によれば、磁気テープの表面側において第1X線管球からの一次X線x1 によって生ずる蛍光X線f1 の強度を第1半導体検出器によって検出することができ、磁気テープの裏面側において第2X線管球からの一次X線x2 によって生ずる蛍光X線f2 の強度を第2半導体検出器によって検出することができ、走行中の磁気テープがバタツキを生じ、例えば磁気テープが第1X線管球と第1半導体検出器の方へ接近して、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度が増大する場合には、磁気テープは第2X線管球と第2半導体検出器から遠ざかり、第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度は低下するので、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度との和は、磁気テープがバタツキを生じていない時の第1半導体検出器による蛍光X線f1 の強度と第2半導体検出器による蛍光X線f1 の強度の和と同等であるから、磁気テープの走行中のバタツキとは無関係に正確な膜厚を与える。
【0031】
請求項2の膜厚測定装置によれば、第1X線管球からの一次X線x1 の磁気テープを透過したものが第2半導体検出器へ入射することを防ぎ、第2X線管球からの一次X線x2の磁気テープを透過したものが第1半導体検出器へ入射することを防ぐので、第1半導体検出器で検出される蛍光X線f1 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、また第2半導体検出器で検出される蛍光X線f2 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、膜厚の正確な測定が不能になるような事態を招かない。
【0032】
請求項3の膜厚測定装置によれば、計測装置内において第1計数回路による蛍光X線f1 の強度のカウント値と、第2計数回路による蛍光X線f2 の強度のカウント値とが合算され、その合算値が予め作成された検量線と対照されるので、磁気テープがバタツキを生じていても、バタツキが生じていない状態における磁気テープの磁性層の膜厚として測定することができる。
【0033】
請求項4の膜厚測定装置によれば、第1計数回路によるカウントと第2計数回路によるカウントが同期して行なわれ、磁気テープの同一部分の表裏が同時にカウントされるので、バタツキによって磁気テープの位置が変動しても、その位置に関係なく常に精度の高い膜厚を与える。
【0034】
請求項5の膜厚測定装置によれば、一次X線x1 および一次X線x2 の入射スポットを走行中の磁気テープの幅方向に往復させることができるので、磁気テープの全面に亘る膜厚を測定することができ、磁気テープ全面における膜厚分布を正確に知ることができる。
【0035】
請求項6の膜厚測定方法によれば、磁気テープの表面側の第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と、磁気テープの裏面側の第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度とに基づいて膜厚を求めることができ、走行中の磁気テープがバタツキを生じ、例えば磁気テープが第1X線管球と第1半導体検出器から遠ざかり、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度が低下する場合には、磁気テープは第2X線管球と第2半導体検出器へ接近し、第2半導体検出器による蛍光X線f2 の強度が増大するので、第1半導体検出器によって検出される蛍光X線f1 の強度と第2半導体検出器によって検出される蛍光X線f2 の強度の和は、磁気テープがバタツキを生じていない時の蛍光X線f1 の強度と蛍光X線f2 の強度の和と同等であり、磁気テープの走行中のバタツキと無関係に正確な膜厚を与える。
【0036】
請求項7の膜厚測定方法によれば、第1X線管球からの一次X線x1 の磁気テープを透過したものが第2半導体検出器へ入射することを防ぎ、第2X線管球からの一次X線x2の磁気テープを透過したものが第1半導体検出器へ入射することを防ぐので、第1半導体検出器で検出される蛍光X線f1 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、また第2半導体検出器で検出される蛍光X線f2 の強度をカウントする部分におけるカウント能力を飽和させず、膜厚を精度高く測定することができる。
【0037】
請求項8の膜厚測定方法によれば、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウント値と第2計数回路による蛍光X線f2 のカウント値とを合算し、その合算値が予め作成されている検量線と対照されるので、磁気テープがバタツキを生じていても、バタツキが生じていない状態における磁気テープの磁性層の膜厚として測定することができる。
【0038】
請求項9の膜厚測定方法によれば、第1計数回路による蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による蛍光X線f2 のカウントを同期させ、磁気テープの同一部分の表裏を同時にカウントするので、バタツキによって磁気テープの位置が変動しても、その位置に関係なく常に精度の高い膜厚を与える。
【0039】
請求項10の膜厚測定方法によれば、一次X線x1 および一次X線x2 の入射スポットを走行中の磁気テープの幅方向に往復させるので、磁気テープの全面における膜厚の測定が可能であり、磁気テープの全面に亘る膜厚分布の状態を知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は、図6に示した磁気テープTの磁性層3の膜厚を測定するための、磁気テープTの表面側と裏面側との両側に配置されるX線管球と半導体検出器、すなわち膜厚測定部10、10’を示す図である。磁気テープTの非磁性層2は、例えばα酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック等の非磁性材料の微粉末と結合材を主成分とするものであり、磁性層3は例えば鉄(Fe)を主成分とする強磁性金属粉末に固有の蛍光X線を発生させるターゲット元素を少量添加した磁性材料と結合材を主成分とするものである。ターゲット元素としては、一般的にはクロム、アルミニウム、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、その他が使用される。また結合材としては、一般的には塩化ビニル系共重合樹脂を主体とし、これに架橋性のポリウレタン系樹脂を混合したものが使用される。
【0041】
このような磁気テープTの表面側に、X線管球4からの1次X線x1 を磁気テープTへ所定の入射角度で入射させ、磁性層3に含まれるターゲット元素から磁性層3の膜厚に応じて発生する蛍光X線f1 の強度を1次X線x1 の入射角度に対応する反射角度の方向に配置した半導体検出器11で検出し、半導体検出器11に接続された計数回路13によって蛍光X線f1 の強度をカウントすると同時に、磁気テープTの裏面側には表面側のX線管球4に対向させてX線管球5を配置し、そのX線管球5からの1次X線x2 を磁気テープTへ所定の入射角度で入射させ、磁性層3に含まれるターゲット元素から磁性層3の膜厚に応じて発生する蛍光X線f2 の強度を1次X線x2 の入射角度に対応する反射角度の方向に配置した半導体検出器12で検出し、半導体検出器12に接続された計数回路14によって蛍光X線f2 の強度をカウントすることによって、磁性層3の膜厚を求めるようにした装置である。
【0042】
すなわち、磁気テープTと膜厚測定部10との距離gが小さくなると検出される蛍光X線fの強度は大になり、 距離gが大になると検出される蛍光X線fの強度は小さくなることから、磁気テープTの表面側にX線管球4と半導体検出器11、および裏面側にX線管球5と半導体検出器12を配置することによって、走行する磁気テープTのバタツキによる蛍光X線fの強度の変動を表裏で相殺することができ、磁気テープTのバタツキと無関係に磁性層3の膜厚を正確に測定することができるようにした装置である。
【0043】
図1に示したように、X線管球4とX線管球5、および半導体検出器11と半導体検出器12を対向させて配置するのは、表面側のX線管球4からの1次X線x1の磁気テープTを透過したものが裏面側の半導体検出器12へ入射して半導体検出器12に接続される計数回路14の能力が飽和することを防ぐためであり、裏面側のX線管球5からの1次X線x2 の磁気テープTを透過したものが表面側の半導体検出器11へ入射して半導体検出器11に接続される計数回路13の能力が飽和することを防ぐためである。
【0044】
使用するエネルギー分散型の半導体検出器11は、P型Si(シリコン)にLi(リチウム)を拡散させたPIN接合を有する半導体によって蛍光X線の強度をエネルギー的に分光して電流パルスに変換し、計数回路13によって電流パルスの波高を蛍光X線の強度としてカウントするものであり、シンチレーション計数管ないしは光電子増倍管を使用しないので装置が小型になることから多用されるようになっている。本発明では、半導体検出器のなかでも検出性能が優れたシリコンドリフト検出器(SDD)を使用する。SDDはP型Siから発生した電子を同心円状の電極構造のアノードへ効率よく導き、検出される電流パルスを内蔵された電気回路によって電圧パルスに変換するものである。
【0045】
そして、上記の計数回路13、14は、SDDからの電圧パルスの波高を蛍光X線のエネルギー強度としてカウントするものであるが、カウント漏れを生じないように電圧パルスを高速でカウントし得るもの、低くとも100kcps以上のカウントが可能であるような計数率を有するデジタル・シグナル・プロセッシング基板(DSP基板)を使用したものとすることにより、磁性層3の膜厚を短時間で精度高く測定することができる。
【0046】
図2は図1に示したX線管球4と半導体検出器11、およびX線管球5と半導体検出器12を有する膜厚測定装置1の構成をブロック的に示す図である。1次X線を入射させるX線管球4、5はそれぞれ高圧電源6、7から電圧が印加されるが、その高圧電源6、7は制御装置8によってX線管球4、5に発生させる1次X線の出力を制御する。発生する1次X線は磁気テープTへスポット状に入射されるが、磁性膜3が形成されている磁気テープTは幅が広いので、磁気テープTの全体に亘る膜厚分布の状態を知るために、磁気テープTへのX線管球4からの1次X線x1 の入射スポット、X線管球5からの1次X線x2 の入射スポットを走行する磁気テープTの幅方向に往復させることを要する。そのために表面側のX線管球4と半導体検出器11、および裏面側のX線管球5と半導体検出器12を一体として幅方向に往復させるが、そのトラバース動作のためのモータ10と同モータの制御装置9が設けられている。
【0047】
そして、半導体検出器11、12によって検出される蛍光X線の強度は、それぞれに接続される計数回路13、14によってエネルギー毎にカウントされる。膜厚計測装置15は、計数回路13、14における一定期間毎のパルスカウントを同期させて取り込み、計数回路13、14のカウント値を次式(1)で示すように合算し、その合算値を予め作成され内蔵されている検量線と対照し、膜厚として表示する。
膜厚計測装置15におけるカウントの合算値
= 計数回路13のカウント値 + 計数回路14のカウント値 ???????? 式(1)
この時、計数回路13によるカウントと計数回路14によるカウントを同期させているので、磁気テープのバタツキによって測定場所における磁気テープの位置が変動しても、その位置に関係なく磁性層3の膜厚を高い精度で測定することができる。
【実施例】
【0048】
厚さ12μmのPETフィルムをベースフィルムBとして、図3に概念的に示すダイコーティング方式、すなわち、走行するベースフィルムBの面に、先ず、ダイ21Nによって非磁性塗料22が塗布され、続いて非磁性塗料22の塗布膜の上へダイ23Mによって磁性塗料24が塗布され、その後で乾燥する方式(ウエット・オン・ウエット方式)による磁気テープTの製造プロセスにいて、塗料の乾燥の直後において、形成されている非磁性層2上の磁性層3の厚さを測定した。上記において非磁性材料にはα酸化鉄(α−Fe2 O3 )の粉末を使用し、磁性材料にはFe系金属強磁性材料の粉末を使用し、同強磁性材料に添加するターゲット元素にはFe系金属強磁性材料の酸化防止に使用されるイットリウム(Y)を採用した。また結合材には、非磁性層2と磁性層3の何れにも上述した塩化ビニル系共重合樹脂を主体とするものを使用した。そして上記の塗料は結合材を有機溶剤に溶解させた溶液の中に、非磁性材料の微粉末、または磁性材料の微粉末を分散させたものである。
【0049】
上記のようなダイコーティング方式によって磁性層3の厚さが異なる4種の磁気テープの試料A、B、C、Dを作成した。これらを図1に示した膜厚測定装置1によって磁気テープTの表裏の半導体検出器11による蛍光X線f1 の強度のカウント値[cps]、および半導体検出器12による蛍光X線f2 の強度のカウント値[cps]と、試料A、B、C、Dのそれぞれをウルトラ・ミクロトームで厚さ方向に細断した薄片を透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察して計測される膜厚とを比較して表1、表2に示した。また、それらの関係を図4に示した。図4に見られるように、TEMによる計測値とターゲット元素であるYによる蛍光X線の強度のカウント値との間には検量線で換算することができる相関関係のあることが確認された。
【0050】
【表1】
【表2】
【0051】
試料A、B、C、Dの表裏の半導体検出器11による蛍光X線f1 の強度のカウント値と、半導体検出器12による蛍光X線f2 の強度のカウント値との合算値[cps]と、TEMによって計測される膜厚との関係を表3と図5に示した。合算値によって膜厚を測定することにより検量線は1本で用を達すると言う実質的なメリットがある。
【0052】
【表3】
【0053】
以上、本発明の磁気テープの膜厚測定方法を実施例によって説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0054】
例えば本実施例においては、磁性層3にターゲット元素を添加しておき、そのターゲット元素が発生する蛍光X線の強度に基づいて磁性層3の膜厚を求めたが、非磁性層2にターゲット元素を添加しておき、非磁性層2の膜厚を求めることも可能である。
【0055】
また本実施例においては、二層構造の磁気テープTのターゲット元素を添加した上側の磁性層3の膜厚を測定する場合を述べたが、特許文献1に関して説明したように、ターゲット元素を利用して膜厚を測定する方法は、多層構造の任意の複数層に異なる種類のターゲット元素を添加しておくことにより、ターゲット元素を添加した複数層の膜厚を同時に測定できると言う長所を有している。そのような多層構造の磁気テープついて複数層の膜厚を同時に測定する場合にも、本発明の膜厚測定装置および膜厚測定方法を適用することができる。
【0056】
また本実施例においては、非磁性層2の材料としてα酸化鉄(α−Fe2 O3 )を使用し、磁性層3の材料としてFe系金属強磁性材料を使用し、非磁性層2と磁性層3との何れにもFeを含有することから、Feが発生する蛍光X線によって磁性層3の膜厚を測定することができないことから、磁性層3にターゲット元素Yを添加したが、非磁性層2の材料にFeを含有しない材料、例えば酸化チタンやカーボンブラックを使用する場合には、磁性層3にターゲット元素を添加せずとも、磁性層3のFe系金属強磁性材料から発生する蛍光X線によって膜厚を測定することができる。このような場合にも、本発明の膜厚測定装置および膜厚測定方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例における磁気テープの磁性膜の膜厚測定に使用した測定装置におけるX線管球と蛍光X線を検出するための半導体検出器との配置を示す図である。
【図2】同測定装置の全体の構成を示すブロック図である。
【図3】ベースフィルムに非磁性塗料と磁性塗料を塗布するダイコーティングの方法を概念的に示す図である。
【図4】磁気テープの表面側の半導体検出器によって検出された蛍光X線の強度のカウント値と、透過型電子顕微鏡によって計測された磁性膜の厚さとの関係を示す図である。
【図5】表面側の半導体検出器によるカウント値と裏面側の半導体検出器によるカウント値との合算値と、透過型電子顕微鏡によって計測された磁性膜の厚さとの関係を示す図である。
【図6】ベースフィルムに下層の非磁性層と上層の磁性層を形成した二層構造の磁気テープを示す斜視図である。
【図7】磁気テープの磁性層にX線管球がら1次X線を入射させ、磁性層に含まれるテーゲット元素から発生する蛍光X線の強度を半導体検出器で検出して磁性層の膜厚を測定する方法をモデル的に示す図である。
【図8】図7の測定方法では磁気テープの裏面にロールが存在する場合には、ロールから発生する蛍光X線も同時にカウントされることを示す図である。
【図9】図8に示すような状態を避けるために、蛍光X線による膜厚の測定は磁気テープの裏面側にロール類が存在しない箇所で行われることを示す図である。
【図10】図9に示すように蛍光X線による膜厚の測定をロール間で行うと、磁気テープが多少の差はあってもバタツキを生じ、磁性層と半導体検出器との間の距離と半導体検出器によって検出されるが変動し正確な測定ができないことを示す図である。
【図11】磁気テープのバタツキによる磁性層と半導体検出器との間の距離の変動と半導体検出器によって検出される蛍光X線の強度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・膜厚測定装置、 2・・・非磁性層、 3・・・磁性層、
4・・・X線管球、 5・・・X線管球、 10・・・膜厚測定部、
11・・・半導体検出器、 12・・・半導体検出器、 13・・・計数回路、 14・・・計数回路、 15・・・計測装置、 21・・・ダイN、
22・・・ 非磁性塗料、 23・・・ダイM、 24・・・磁性塗料、
B・・・ベースフィルム、 f・・・蛍光X線、 T・・・磁気テープ、
x・・・一次X線、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するプラスチックフィルムの表面に、非磁性層の塗料を塗布し、乾燥させることなく、その上へ磁性層の塗料を塗布した後、両者を乾燥して形成される磁気テープの前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を乾燥直後のインラインで測定する磁気テープの膜厚測定装置において、
前記磁気テープの表面側に、前記磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x1 を入射する第1X線管球と、前記一次X線x1 を受けて、前記磁性層または前記非磁性層に予め添加されているターゲット元素から発生する蛍光X線f1 を検出する第1半導体検出器が前記入射角に対応する反射角の方向に配置され、
かつ、前記磁気テープの裏面側に、前記磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x2 を入射する第2X線管球と、前記一次X線x2 を受けて、前記ターゲット元素から発生する蛍光X線f2 を検出する第2半導体検出器が前記入射角に対応する反射角の方向に配置されていることを特徴とする磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項2】
前記第1X線管球から入射される前記一次X線x1 と前記第2X線管球から入射される前記一次X線x2 とが同軸上にあるように、前記第1X線管球と前記第2X線管球とが前記磁気テープを介し対向して配置されており、同様に前記第1半導体検出器と前記第2半導体検出器とが前記磁気テープを介し対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項3】
前記ターゲット元素を添加した前記磁性層または前記非磁性層の膜厚に応じて前記第1半導体検出器で検出され該第1半導体検出器に接続された第1計数回路によってカウントされる前記蛍光X線f1 の強度のカウント値、および前記第2半導体検出器で検出され該第2半導体検出器に接続された第2計数回路によってカウントされる前記蛍光X線f2 の強度のカウント値との合算値を演算し、前記合算値を予め作成された検量線と対照して前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を測定する計測装置が前記第1計数回路および前記第2計数回路に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項4】
第1計数回路による前記蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による前記蛍光X線f2 のカウントが同期してカウントされることを特徴とする請求項3に記載の磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項5】
走行する前記磁気テープに対し、前記第1X線管球と前記第1半導体検出器、および前記第2X線管球と前記第2半導体検出器が一体として、走行方向と直角な前記磁気テープの幅方向に往復動可能に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項6】
走行するプラスチックフィルムの表面に、非磁性層の塗料を塗布し、乾燥させることなく、その上へ磁性層の塗料を塗布した後、両者を乾燥して形成される磁気テープの前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を乾燥直後のインラインで測定する磁気テープの膜厚測定方法において、
前記磁気テープの表面側に配置した第1X線管球から前記磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x1 を入射させ、前記一次X線x1 を受けて、前記磁性層または前記非磁性層に予め添加したターゲット元素から発生する蛍光X線f1 を前記磁気テープの表面側において前記入射角に対応する反射角の方向に配置した第1半導体検出器によって検出し、
同時に、前記磁気テープの裏面側に配置した第2X線管球から前記磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x2 を入射させ、前記一次X線x2 を受けて、前記ターゲット元素から発生する蛍光X線f2 を前記磁気テープの裏面側において前記入射角に対応する反射角の方向に配置した第2半導体検出器によって検出し、
前記第1半導体検出器によって検出される前記蛍光X線f1 の強度と、前記第2半導体検出器によって検出される前記蛍光X線f2 の強度とに基づいて前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を測定することを特徴とする磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項7】
前記第1X線管球から入射される前記一次X線x1 と前記第2X線管球から入射される前記一次X線x2 とが同軸上にあるように、前記第1X線管球と前記第2X線管球とを前記磁気テープを介し対向させて配置し、同様に前記第1半導体検出器と前記第2半導体検出器とを前記磁気テープを介して対向させて配置することにより、前記一次X線x1 が前記磁気テープを透過して前記第2半導体検出器へ入射しないように、かつ前記一次X線x2 が前記磁気テープを透過して前記第1半導体検出器へ入射しないようにして計測することを特徴とする請求項6に記載の磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項8】
前記ターゲット元素を添加した前記磁性層または前記非磁性層の膜厚に応じて生ずる前記蛍光X線f1 の強度を前記第1半導体検出器で検出し、検出される前記蛍光X線f1 の強度を前記第1半導体検出器に接続された第1計数回路によってカウントし、同じく生ずる前記蛍光X線f2 の強度を前記第2半導体検出器で検出し、検出される前記蛍光X線f2 の強度を前記第2半導体検出器に接続された第2計数回路によってカウントし、前記第1計数回路および前記第2計数回路が接続されている計測装置において、前記蛍光X線f1 のカウント値と前記蛍光X線f2のカウント値との合算値を求め、前記合算値を予め作成した検量線と対照して前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を測定することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項9】
前記第1計数回路における前記蛍光X線f1 のカウントと、前記第2計数回路における前記蛍光X線f2 のカウントとを同期させてカウントすることを特徴とする請求項8に記載の磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項10】
走行する前記磁気テープに対し、前記第1X線管球と前記第1半導体検出器、および前記第2X線管球と前記第2半導体検出器を一体として前記磁気テープの幅方向に往復動させることを特徴とする請求項6から請求項9までの何れかに記載の磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項1】
走行するプラスチックフィルムの表面に、非磁性層の塗料を塗布し、乾燥させることなく、その上へ磁性層の塗料を塗布した後、両者を乾燥して形成される磁気テープの前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を乾燥直後のインラインで測定する磁気テープの膜厚測定装置において、
前記磁気テープの表面側に、前記磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x1 を入射する第1X線管球と、前記一次X線x1 を受けて、前記磁性層または前記非磁性層に予め添加されているターゲット元素から発生する蛍光X線f1 を検出する第1半導体検出器が前記入射角に対応する反射角の方向に配置され、
かつ、前記磁気テープの裏面側に、前記磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x2 を入射する第2X線管球と、前記一次X線x2 を受けて、前記ターゲット元素から発生する蛍光X線f2 を検出する第2半導体検出器が前記入射角に対応する反射角の方向に配置されていることを特徴とする磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項2】
前記第1X線管球から入射される前記一次X線x1 と前記第2X線管球から入射される前記一次X線x2 とが同軸上にあるように、前記第1X線管球と前記第2X線管球とが前記磁気テープを介し対向して配置されており、同様に前記第1半導体検出器と前記第2半導体検出器とが前記磁気テープを介し対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項3】
前記ターゲット元素を添加した前記磁性層または前記非磁性層の膜厚に応じて前記第1半導体検出器で検出され該第1半導体検出器に接続された第1計数回路によってカウントされる前記蛍光X線f1 の強度のカウント値、および前記第2半導体検出器で検出され該第2半導体検出器に接続された第2計数回路によってカウントされる前記蛍光X線f2 の強度のカウント値との合算値を演算し、前記合算値を予め作成された検量線と対照して前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を測定する計測装置が前記第1計数回路および前記第2計数回路に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項4】
第1計数回路による前記蛍光X線f1 のカウントと第2計数回路による前記蛍光X線f2 のカウントが同期してカウントされることを特徴とする請求項3に記載の磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項5】
走行する前記磁気テープに対し、前記第1X線管球と前記第1半導体検出器、および前記第2X線管球と前記第2半導体検出器が一体として、走行方向と直角な前記磁気テープの幅方向に往復動可能に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の磁気テープの膜厚測定装置。
【請求項6】
走行するプラスチックフィルムの表面に、非磁性層の塗料を塗布し、乾燥させることなく、その上へ磁性層の塗料を塗布した後、両者を乾燥して形成される磁気テープの前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を乾燥直後のインラインで測定する磁気テープの膜厚測定方法において、
前記磁気テープの表面側に配置した第1X線管球から前記磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x1 を入射させ、前記一次X線x1 を受けて、前記磁性層または前記非磁性層に予め添加したターゲット元素から発生する蛍光X線f1 を前記磁気テープの表面側において前記入射角に対応する反射角の方向に配置した第1半導体検出器によって検出し、
同時に、前記磁気テープの裏面側に配置した第2X線管球から前記磁気テープへ向かって所定の入射角で一次X線x2 を入射させ、前記一次X線x2 を受けて、前記ターゲット元素から発生する蛍光X線f2 を前記磁気テープの裏面側において前記入射角に対応する反射角の方向に配置した第2半導体検出器によって検出し、
前記第1半導体検出器によって検出される前記蛍光X線f1 の強度と、前記第2半導体検出器によって検出される前記蛍光X線f2 の強度とに基づいて前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を測定することを特徴とする磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項7】
前記第1X線管球から入射される前記一次X線x1 と前記第2X線管球から入射される前記一次X線x2 とが同軸上にあるように、前記第1X線管球と前記第2X線管球とを前記磁気テープを介し対向させて配置し、同様に前記第1半導体検出器と前記第2半導体検出器とを前記磁気テープを介して対向させて配置することにより、前記一次X線x1 が前記磁気テープを透過して前記第2半導体検出器へ入射しないように、かつ前記一次X線x2 が前記磁気テープを透過して前記第1半導体検出器へ入射しないようにして計測することを特徴とする請求項6に記載の磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項8】
前記ターゲット元素を添加した前記磁性層または前記非磁性層の膜厚に応じて生ずる前記蛍光X線f1 の強度を前記第1半導体検出器で検出し、検出される前記蛍光X線f1 の強度を前記第1半導体検出器に接続された第1計数回路によってカウントし、同じく生ずる前記蛍光X線f2 の強度を前記第2半導体検出器で検出し、検出される前記蛍光X線f2 の強度を前記第2半導体検出器に接続された第2計数回路によってカウントし、前記第1計数回路および前記第2計数回路が接続されている計測装置において、前記蛍光X線f1 のカウント値と前記蛍光X線f2のカウント値との合算値を求め、前記合算値を予め作成した検量線と対照して前記磁性層または前記非磁性層の膜厚を測定することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項9】
前記第1計数回路における前記蛍光X線f1 のカウントと、前記第2計数回路における前記蛍光X線f2 のカウントとを同期させてカウントすることを特徴とする請求項8に記載の磁気テープの膜厚測定方法。
【請求項10】
走行する前記磁気テープに対し、前記第1X線管球と前記第1半導体検出器、および前記第2X線管球と前記第2半導体検出器を一体として前記磁気テープの幅方向に往復動させることを特徴とする請求項6から請求項9までの何れかに記載の磁気テープの膜厚測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−39542(P2008−39542A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213142(P2006−213142)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]