説明

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法

【課題】浮上量が10nm以下の低浮上量で磁気ヘッドを浮上飛行させる磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、該ガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板の鏡面研磨処理と洗浄処理を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、フッ素含有量が5重量%以下である希土類酸化物を主成分とする研磨剤をガラス基板に供給し、研磨布とガラス基板とを相対的に移動させてガラス基板の端面を鏡面研磨した後に、このガラス基板をアスコルビン酸及びフッ素イオンと、3重量%以上の硫酸を含有する洗浄液に接触させて、前記研磨剤を溶解除去する。洗浄液に含有されるアスコルビン酸の濃度は0.1重量%以上とし、フッ素イオンの含有量は1ppm以上40ppm以下とする。得られた磁気ディスク用ガラス基板上に少なくとも磁性層を成膜して磁気ディスクを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクの製造方法又は、該磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)等の情報処理機器用記録媒体の一つとして磁気ディスクがある。磁気ディスクは、基板上に磁性層等の薄膜を形成して構成されたものであり、その基板としてはアルミ基板が用いられてきた。しかし、最近では、高記録密度化の追求に呼応して、アルミと比べて磁気ヘッドと磁気ディスクとの間隔をより狭くすることが可能なガラス基板の占める比率が次第に高くなってきている。また、ガラス基板表面は磁気ヘッドの浮上高さを極力下げることができるように、高精度に研磨して高記録密度化を実現している。
上述したように高記録密度化にとって必要な低フライングハイト(浮上量)化のために磁気ディスク表面の高い平滑性は必要不可欠である。磁気ディスク表面の高い平滑性を得るためには、結局、高い平滑性の基板表面が求められるが、もはや、高精度に基板表面を研磨するだけでは、磁気ディスクの高記録密度化を実現できない段階まできている。つまり、いくら、高精度に研磨しても基板上に異物が付着していては高い平滑性は得られない。勿論、従来から異物の除去はなされていたが、従来では許容されていた基板上の異物が、今日の高密度化のレベルでは問題視される状況にある。
【0003】
高い平滑性を有するガラス基板は、酸化セリウム系研磨剤を使った精密研磨によって得ることが可能である。しかし、酸化セリウム系研磨剤による研磨工程の後、通常の洗浄では除去できない突起異物が残ることで、表面粗さの低減ができないという問題がある。この突起異物は研磨砥粒が基板上に残留して形成されている場合が多い。
付着した酸化セリウム砥粒により形成された突起異物を除去する技術として、例えば情報記録媒体用ガラス基板の技術分野においては、酸化セリウム砥粒を用いた研磨の後に、硫酸洗浄を行うことが提案されている(下記特許文献1)。更に例えば、情報記録媒体、液晶又は有機ELディスプレー、フォトマスク等の技術分野では、酸、還元剤及びフッ素イオンの3成分を含む洗浄薬液でガラス基材を洗浄する技術が提案されている(下記特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−348338号公報
【特許文献2】特開2004−059419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、ハードディスクドライブ(HDD)では60Gbit/inch以上の情報記録密度が要求されるようになってきた。これは一つに、HDDが従来のコンピュータ用記憶装置としてのニーズに加えて、携帯電話やナビゲーションシステム、デジタルカメラ等に搭載されるようになってきたことと関係がある。
これらの新規用途の場合、HDDを搭載する筐体スペースがコンピュータに比べて著しく小さいので、HDDを小型化する必要がある。このためには、HDDに搭載する磁気ディスクの径を小径化する必要がある。例えば、コンピュータ用途では3.5インチ型や2.5インチ型の磁気ディスクを用いることが出来たが、上記新規用途の場合では、これよりも小径の、例えば0.8インチ型〜1.8インチ型などの小径磁気ディスクが用いられる。このように磁気ディスクを小径化した場合であっても一定以上の情報容量を格納させる必要があるので、勢い、情報記録密度の向上に拍車がかかることになる。
【0006】
また、限られたディスク面積を有効に利用するために、従来のCSS(Contact Start and Stop)方式に代えてLUL(Load Unload:ロードアンロード)方式のHDDが用いられるようになってきた。LUL方式では、HDDの停止時には、磁気ヘッドを磁気ディスクの外に位置するランプと呼ばれる傾斜台に退避させておき、起動動作時には磁気ディスクが回転開始した後に、磁気ヘッドをランプから磁気ディスク上に滑動させ、浮上飛行させて記録再生を行なう。停止動作時には磁気ヘッドを磁気ディスク外のランプに退避させたのち、磁気ディスクの回転を停止する。この一連の動作はLUL動作と呼ばれる。LUL方式HDD用の磁気ディスクでは、CSS方式のような磁気ヘッドとの接触摺動用領域(CSS領域)を設ける必要がなく、記録再生領域を拡大させることができ、高情報容量化にとって好ましいからである。
このような状況の下で情報記録密度を向上させるためには、磁気ヘッドの浮上量を低減させることにより、スペーシングロスを限りなく低減する必要がある。1平方インチ当り60ギガビット以上の情報記録密度を達成するためには、磁気ヘッドの浮上量は10nm以下にする必要がある。LUL方式ではCSS方式と異なり、磁気ディスク面上にCSS用の凸凹形状を設ける必要が無く、磁気ディスク面上を極めて平滑化することが可能となる。よってLUL方式用磁気ディスクでは、CSS方式に比べて磁気ヘッド浮上量を一段と低下させることができるので、記録信号の高S/N比化を図ることができ、磁気ディスク装置の高記録容量化に資することができるという利点もある。
【0007】
最近のLUL方式の導入に伴う、磁気ヘッド浮上量の一段の低下により、10nm以下の極低浮上量においても、磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきた。しかしながら、このような極低浮上量で磁気ディスク面上に磁気ヘッドを浮上飛行させると、フライスティクション障害が頻発するという問題が発生した。フライスティクション障害とは、記録再生中に突然、磁気ヘッドの浮上姿勢が不安定になり、記録信号、再生信号に異常な変動を来たす障害である。このフライスティクション障害はNPAB(negativepressure air bearing surface)スライダー、即ち、負圧スライダーで浮上を行う磁気ヘッドにおいて特に生じやすい。負圧スライダーを備える磁気ヘッドは10nm、或いはそれ以下の低浮上量においても安定した浮上飛行を行うことができるという利点があるが、磁気ヘッドの下面(すなわち、磁気ディスクに対向する面)に強い負圧を生じさせる。従って、フライスティクション障害を発生させ易いという事情がある。
更に、磁気ヘッドの浮上量が10nm以下となると、磁気抵抗効果型再生素子、例えばTMR(トンネルMR、tunneling magneto-resistance)型再生素子が搭載された磁気ヘッドでは、サーマルアスペリティ(thermalasperity)障害が発生し易いという問題が生じた。サーマルアスペリティ障害が発生するとエラーレートが極端に悪化し、所定の記録密度、例えば1平方インチ当り60ギガビット以上での情報記録再生を行うことが困難になる。
【0008】
本発明者はこれらの状況に鑑み、磁気ヘッドの浮上量が10nm以下で浮上飛行したとしても、クラッシュ障害、フライスティクション障害、サーマルアスペリティ障害が生じることの無い、安全に記録再生ができる磁気ディスク、磁気ディスク用ガラス基板の開発に努めた。例えば、研磨砥粒を微細化して精密な鏡面研磨加工を実施したり、その後洗浄工程において洗浄薬液を調整して、付着した研磨剤を精密に除去しようと努めた。例えば上記特許文献1や特許文献2の技術を利用した洗浄を含む様々な洗浄技術を利用したが、必ずしも確実にこれら障害が防止されない場合があることが判明した。
また、このような問題は基板の表面(主表面)に限らず、基板の端面においても起こりうる。基板の外周側及び内周側端面において異物付着があると、基板端面からの発塵によりサーマルアスペリティ発生の原因となる。通常磁気ディスクの製造には、中心部に円孔を有するディスク状(円板状)の基板が用いられるが、基板の端面は主表面よりも粗面であるため、端面研磨に用いた研磨剤が食い込み、除去が難しい。また、基板の端面が研磨される前の研削工程において付着した研削剤が食い込んでいる場合もある。とりわけ、小径ディスクの場合、例えば0.8インチ型〜1インチ型の小径磁気ディスクでは、内径が例えば7mm以下とされるので、このような小径磁気ディスク用の基板は、特に内径の洗浄が困難であり、付着研磨剤を除去することが難しく、異物として残留し易いということが判明した。従って、基板端面においても、研磨剤残渣を確実に除去することは重要な課題である。
【0009】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであって、その第1の目的は、浮上量が10nm、或いはそれ以下の低浮上量で磁気ヘッドを浮上飛行させる磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、又は該製造方法によって製造されたガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、磁気抵抗効果型再生素子、特にTMR(トンネルMR、tunneling magneto-resistance)型再生素子が搭載された磁気ヘッドで記録情報が再生される磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、又は該製造方法によって製造されたガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、ロードアンロード方式で起動停止動作を行うハードディスクドライブに搭載される磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、又は該製造方法によって製造されたガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することにある。
本発明の第4の目的は、1平方インチ当り60ギガビット、或いはそれ以上の高い情報記録密度で記録再生される磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、又は該製造方法によって製造されたガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく、酸化セリウム系研磨剤で鏡面研磨され、その後、硫酸等の酸を含む洗浄液で洗浄された磁気ディスク用ガラス基板の表面を原子間力顕微鏡、電子顕微鏡で詳細に観察を行った。取り分け1辺が5μmの微小な矩形領域を拡大して丹念に観察を行ったところ、洗浄後のガラス基板表面には、開口部の大きさがおおよそ0.1μm〜0.5μm程度、深さがおおよそ6nmから8nm程度の小さな穴(凹部)が開口していることを発見した。このガラス基板には突起異物は観察されなかったことから、付着した研磨砥粒は概ね除去されていると思われるが、微小な凹部が形成されていたのである。従来、磁気ディスク用ガラス基板においては、上方を浮上飛行する磁気ヘッドに悪影響を与える凸状異物の除去が主眼に置かれていた。凹状の形状は上方の磁気ヘッドと衝突することが無いので、然程問題視されていなかったという事情がある。本発明者はこの凹部が、上記の課題を引き起こしているのではないかと確信した。磁気ヘッドの浮上量が従来に比べて一段と低下したために、従来は然程問題視されていなかった凹部が磁気ヘッドに悪影響を与えるようになったのではないかと考えたからである。
また、上記磁気ディスク用ガラス基板の端面についても同様に詳細な観察を行ったところ、研磨砥粒の残渣によるものと思われる突起異物が観察され、特に基板の内周側端面に突起異物が多く発見された。
【0011】
そこで本発明者は、第1に鏡面研磨されたガラス基板表面の鏡面状態を維持できること、第2に研磨剤の付着により形成された突起異物(凸部)が確実に除去できること、第3に磁気ヘッドが10nm以下の低い浮上量で上方を通過する場合に磁気ヘッドに悪影響を与える開口部(凹部)が形成されないこと、そして第4に鏡面研磨されたガラス基板の端面についても、研磨剤の付着により形成された突起異物(凸部)が確実に除去でき、表面の鏡面状態を維持できることに着目して研究を行い、本発明を完成した。
本発明は以下の構成を有する発明である。
【0012】
(発明の構成1)
ガラス基板の鏡面研磨処理と洗浄処理を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、フッ素含有量が5重量%以下である希土類酸化物を主成分とする研磨剤をガラス基板に供給し、研磨布とガラス基板とを相対的に移動させてガラス基板の端面を鏡面研磨した後に、このガラス基板をアスコルビン酸及びフッ素イオンと、3重量%以上の硫酸を含有する洗浄液に接触させて、前記研磨剤を溶解除去することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
ここで、フッ素含有量とは、研磨剤中に含まれるフッ素原子の含有量である。フッ素原子は研磨剤中では含フッ素物質(フッ化物及び/又はフッ素)として含有されている。
この発明の構成1においては、洗浄液に含有される硫酸の濃度は、好ましくは4重量%以上とすることができる。また、洗浄液に含有される硫酸の濃度は、好ましくは10重量%以下とすることができる。
なお、ガラス基板の端面とは、ガラス基板の表裏の主表面の間に形成される主表面とは略直交する面のことであり、例えば中心部に円孔を有するディスク状のガラス基板の場合、外周側及び内周側の端面のことを指す。
【0013】
(発明の構成2)
前記洗浄液に含有されるアスコルビン酸の濃度は、0.1重量%以上とすることを特徴とする発明の構成1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
なお、洗浄液に含有されるアスコルビン酸の濃度は、好ましくは0.5重量%以上とすることができる。また、洗浄液に含有されるアスコルビン酸の濃度は、好ましくは3重量%以下とすることができる。
(発明の構成3)
前記洗浄液に含有されるフッ素イオンの含有量は1ppm以上40ppm以下とすることを特徴とする発明の構成1又は2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
なお、洗浄液に含有されるフッ素イオンの含有量は、好ましくは3ppm以上20ppm以下とすることができる。
【0014】
(発明の構成4)
前記ガラス基板を構成するガラスは、SiO2 が58重量%以上75重量%以下、Al23が5重量%以上23重量%以下、Li2 Oが3重量%以上10重量%以下、Na2 Oが4重量%以上13重量%以下を主成分として含有するアモルファスのアルミノシリケートガラスであることを特徴とする発明の構成1乃至3の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
(発明の構成5)
前記洗浄処理後のガラス基板の端面は、最大谷深さRvが、4nm以下である鏡面とされることを特徴とする発明の構成1乃至4の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
なお、好ましくは最大粗さRmaxで6nm以下である鏡面とすることができる。
【0015】
(発明の構成6)
発明の構成1乃至5の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造されたガラス基板上に、少なくとも磁性層を成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法である。
(発明の構成7)
1平方インチ当り60ギガビット以上のビット記録密度で情報を記録再生するための磁気ディスクを製造することを特徴とする発明の構成6に記載の磁気ディスクの製造方法である。
なお、本発明においてRmaxというときは、日本工業規格(JIS)B0601に準拠して算出される最大粗さのことであって、表面粗さ(すなわち表面形状)の平均面を基準面としたときに、該基準面からみて最も高い山までの高さの絶対値(これを最大山高さRpと呼称する。)と、該基準面からみて最も深い谷までの深さの絶対値(これを最大谷深さRvと呼称する。)の合計である。すなわち、Rmax=Rp+Rvとして算出することができる。また、本発明において表面粗さ(例えば、最大粗さRmax、最大山高さRp、最大谷深さRv、算術平均粗さRa)は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定したときに得られる表面形状の表面粗さとすることが好ましい。例えば、基板の表面及び端面の縦5μm、横5μmの正方形領域を測定した場合の表面形状の表面粗さとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、ガラス基板の鏡面研磨処理と洗浄処理を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、フッ素含有量が5重量%以下である希土類酸化物を主成分とする研磨剤をガラス基板に供給し、研磨布とガラス基板とを相対的に移動させてガラス基板の端面を鏡面研磨した後に、このガラス基板をアスコルビン酸及びフッ素イオンと、3重量%以上の硫酸を含有する洗浄液に接触させて、前記研磨剤を溶解除去することを特徴とするので、洗浄後のガラス基板端面には、例えば10nm或いはそれ以下の浮上量で浮上飛行する磁気ヘッドに悪影響を与える凹部が形成されることがなく、研磨剤が付着して形成された突起が除去され、ガラス基板端面の表面も鏡面であるので、このガラス基板を用いて製造された磁気ディスクにおいて、ヘッドクラッシュ障害、サーマルアスペリティ障害、フライスティクション障害が生じることを防止できる。
【0017】
よって、磁気抵抗効果型再生素子、特にTMR(トンネルMR、tunneling magneto-resistance)型再生素子が搭載された磁気ヘッドで記録情報が再生される磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、又は該製造方法によって製造されたガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することができる。また、ロードアンロード方式で起動停止動作を行うハードディスクドライブに搭載される磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、又は該製造方法によって製造されたガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することができる。また、1平方インチ当り60ギガビット、或いはそれ以上の高い情報記録密度で記録再生される磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、又は該製造方法によって製造されたガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することができる。
さらに、NPABスライダー、即ち負圧スライダーで浮上を行う磁気ヘッドで記録情報が再生される磁気ディスクを製造する場合に特に有益な磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、又は該製造方法によって製造されたガラス基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
本発明者が様々な洗浄用試薬を組成して、研磨剤の主成分である酸化セリウム(二酸化セリウム)に対する溶解性能を比較したところ、硫酸とアスコルビン酸を含有する処理液に対しては、良好な溶解性能が得られることを確認した。特に、硫酸とアスコルビン酸を含む処理液に、更に添加剤としてフッ酸又はフッ化ナトリウムを添加することによりフッ素イオンを供給すると、迅速な溶解性能が得られることを確認した。酸化セリウム以外にも、酸化ランタン、酸化プラセオジウム、酸化ネオジウム等の希土類酸化物に対する溶解性能を確認したところ、酸化セリウムと同等の溶解性能が得られることを確認した。実際に、酸化セリウム系研磨剤を含む研磨液でガラス基板の鏡面研磨を行い、その後に硫酸、アスコルビン酸、フッ素イオンを含有する洗浄液で洗浄を行ったところ、硫酸の濃度に関わらず、研磨剤がガラス基板に付着して形成された突起(凸部)を除去することができた。
【0019】
ところが、原子間力顕微鏡で詳細に表面を観察すると、硫酸濃度が所定濃度よりも低い洗浄液にガラス基板を接触させた場合、ガラス基板表面に小さな穴(凹部)が開口することを発見した。具体的には硫酸濃度が3重量%未満の場合、ガラス基板表面に凹部が形成されることが分かった。硫酸、アスコルビン酸、フッ素イオンが共存する系統の洗浄液においては、硫酸濃度が3重量%を下回った場合、硫酸がガラスに対してリーチング作用を働くようになり、その表面を変質させて表面粗さを粗しているのではないかと考えられる。なお、リーチングとは、アルミノシリケートガラス等の多成分系ガラスにおいて、ガラスの骨格部分(SiO骨格)を維持したまま、ガラス中に含まれる酸に可溶な物質が溶出してしまう現象のことである。リーチングはSiO以外の元素を含有させた多成分系ガラスにおいて顕著に生じる現象である。リーチングはガラス自体が溶解してしまうエッチングとは異なる現象である。
従って、ガラス基板表面の凹部の形成を防止して本発明の課題を解決するためには、硫酸、アスコルビン酸、フッ素イオンが共存する系統の洗浄液においては、硫酸は少なくとも1.5重量%を超え、取り分け3重量%以上含有されている必要があることが分かった。
【0020】
更に本発明者がこの洗浄液を用いて、ガラス基板の洗浄を行ったところ、酸化セリウム系研磨剤の種類によって、ガラス基板上の凸部や凹部の生成態様が異なることを発見した。ガラス基板の鏡面研磨に利用される酸化セリウム系研磨剤と一口にいっても、その製造方法、その他により多くの種類が存在する。また、酸化セリウム系研磨剤において、酸化セリウムは主成分ではあるものの、酸化セリウム以外の他の希土類酸化物、例えば、酸化ランタン、酸化プラセオジウム、酸化ネオジウム等の希土類酸化物が含有されている。即ち、酸化セリウム系研磨剤とは酸化セリウムを主成分として含む希土類酸化物系研磨剤なのである。
現在(西暦2005年現在)、比較的入手が容易な酸化セリウム系研磨剤としては、含フッ素物質を含有するバストネサイト鉱石を原料として焼成等の処理を行い製造される酸化セリウム系研磨剤と、精製した希土類化合物を原料に焼成等の処理を行い製造される酸化セリウム系研磨剤との2種類に分類することができる。前者の酸化セリウム研磨剤は原料鉱石自体が含フッ素物質を含むために、主に希土類フッ化物の形態でフッ素を含有する。他方、後者の酸化セリウム系研磨剤は、フッ素を含有しないか、含有していても微量である。なお、研磨剤中のフッ素含有量はXPS(X線光電子分光分析法)等によりフッ素原子の含有量として測定することができる。
【0021】
以上のように得られる様々なフッ素含有量の酸化セリウム系研磨剤に対する、硫酸(但し硫酸濃度は3重量%以上)、アスコルビン酸、フッ素イオンが共存する系統の本発明による洗浄液の洗浄性能を比較したところ、フッ素含有量が所定含有量を超える研磨剤では、ガラス基板表面に生成される凸部を所定に除去できないことが判明した。また、フッ素含有量が所定含有量を超える研磨剤では凹部が形成される場合もあることが判明した。
この観点から、本発明の洗浄液を利用して磁気ディスク用ガラス基板を洗浄する場合、その表面に付着している酸化セリウム系研磨剤(すなわち希土類酸化物系研磨剤)は、フッ素を含有していないか、含フッ素研磨剤であっても、フッ素の含有量は5重量%以下とする必要があることを突き止めた。
【0022】
フッ素含有量の多い酸化セリウム系研磨剤では、酸化セリウムなどの希土類酸化物の他に、フッ化セリウムなどの希土類フッ化物が多く含まれている。そして、硫酸を含む洗浄液と接触すると、おもにフッ化セリウムと硫酸が反応してフッ酸と硫酸セリウムを生成するものと考えられる。一方で、酸化セリウムと硫酸が反応して水と硫酸セリウムを生成する反応も並行して行われるが、どちらかといえば、フッ化セリウムと硫酸が反応してフッ酸と硫酸セリウムを生成する反応の方が優勢であると考えられる。すなわち、希土類酸化物系研磨剤に所定量を超えるフッ素が含有されていると、不純物である希土類フッ化物と硫酸との反応が生じる等の理由により、研磨剤の主成分である希土類酸化物の溶解が阻害されてしまうと考えられる。このためガラス基板上に研磨剤が付着して生成された凸部を、好適に除去できなくなるものと考えられる。
また、希土類フッ化物と硫酸との反応の結果、洗浄液中にフッ酸が生成されてしまうが、この生成したフッ酸により洗浄液中のフッ素イオン濃度が乱され、濃度が所望濃度に比べて増大してしまう恐れがある。さらに、ガラス基板に付着した研磨剤とガラスとの界面付近でフッ酸が生成すると、生成したフッ酸によりガラス基板表面が微小領域においてエッチング(凹部の生成)されてしまう恐れがある。
【0023】
本発明においては、研磨剤中に含有されるフッ素含有量が5重量%以下である低フッ素研磨剤を用いているので、上記のような問題を生ずることなく、凸部、凹部の生成がない、鏡面状のガラス基板を製造することができるのである。
本発明においては、ガラス基板の洗浄液に含有される硫酸の濃度を3重量%以上とすれば、ガラス基板の表面に凹状の形状が生成されることを抑制できるが、例えば、研磨剤の溶解速度を高め、生産効率を向上させたいとの観点で考えると、実用上硫酸濃度を4重量%以上とすることができる。また、硫酸濃度を上昇させればさせるほど生産効率は高まるが、30重量%を超えると、逆に酸化セリウムの溶解速度が減少する場合があるので好ましくない。この観点から硫酸濃度は30重量%以下とすることが好ましい。更に、含フッ素酸化セリウム系研磨剤の場合、上述のとおり、希土類フッ化物と硫酸との反応が生じることから、過剰に硫酸濃度を高めることは好ましくない。この観点から、硫酸濃度は30重量%以下、取り分け10重量%以下とすることが好適である。
【0024】
本発明においては、ガラス基板の洗浄液に含有されるアスコルビン酸は、L−アスコルビン酸とすることができる。L−アスコルビン酸の塩として供給してもよい。洗浄液に含有されるアスコルビン酸の濃度は、洗浄液として研磨剤に対する所定の溶解性能を保持できる範囲で調整することができるが、例えば、0.1重量%以上の濃度とすることができる。0.1重量%を下回ると研磨剤の溶解速度が遅くなり、生産効率を悪化させる場合がある。生産速度を考慮すると、0.5重量%以上、特に1重量%以上とすることが好適である。アスコルビン酸の濃度の上限値については特に限定する必要はないが、実用上4重量%以下とすることができる。但し、4重量%近傍ではアスコルビン酸の飽和濃度に近く、洗浄液を組成することが実用上難しい。従って、生産効率を考慮すると3重量%以下とすることが好ましい。3重量%近傍では洗浄液の組成を迅速に行うことができるので生産効率を向上させることができる。
【0025】
本発明においては、ガラス基板の洗浄液に含有されるフッ素イオンは、洗浄液にフッ酸、又はフッ化ナトリウムを添加することにより供給することが好ましい。特にフッ酸を用いることが好適である。フッ素イオンの濃度については、本発明の作用が得られる範囲内で所定に調整することができるが、1ppm以上とすることが好ましい。フッ素イオンの濃度が1ppm未満では、研磨剤に対する洗浄液の溶解速度が遅いので生産効率を悪化させるとともに、研磨剤に対する溶解性能が十分でない場合がある。この観点からは、特にフッ素イオンの濃度は3ppm以上とすることが好適である。また、フッ素イオン濃度の上限値については、40ppm以下、取り分け20ppm以下とすることを推奨する。40ppmを超えると、研磨剤に対する洗浄液の溶解速度が遅いので生産効率を悪化させるとともに、研磨剤に対する溶解性能が十分でない場合がある。また、フッ素濃度が40ppmを超えると、ガラス基板に対するエッチング作用を働く恐れがある。ガラス基板にエッチング作用を働くと、ガラス基板の鏡面研磨面が粗度が大きくなるとともに、ガラス基板の表面に凸形状、凹形状を生じさせる恐れがある。
なお、含フッ素酸化セリウム系研磨剤では、上述のように、希土類フッ化物と洗浄液に含有される硫酸との反応によりフッ酸を生じる。従って、本発明においては、硫酸濃度はppmレベルで管理する必要がある。取り分け研磨剤に含有されるフッ素が5重量%を超えると、洗浄液中のフッ素イオンの濃度を管理することが困難となる場合がある。
【0026】
本発明においては、ガラス基板の鏡面研磨に利用する研磨剤は、フッ素含有量が5重量%以下である希土類酸化物を主成分とする研磨剤であれば特に制限されることはない。取り分け、酸化セリウムを主成分として含む酸化セリウム系研磨剤であることが好ましい。ここで、フッ素含有量が5重量%以下である希土類酸化物を主成分とする研磨剤とは、フッ素を含有していないか、含フッ素研磨剤であっても、フッ素の含有量は5重量%以下である希土類酸化物を主成分とする研磨剤のことである。また、フッ素含有量とは、研磨剤中に含まれるフッ素原子の含有量である。フッ素原子は研磨剤中では含フッ素物質(フッ化物及び/又はフッ素)として含有されている。研磨剤中にフッ素を含有する場合にあっては、フッ素含有量は好ましくは3重量%以下とすると良い。
【0027】
本発明における鏡面研磨の方法は特に限定されるものではないが、例えば、ガラス基板と研磨布を接触させ、研磨剤を供給しながら、前記研磨布とガラス基板とを相対的に移動させて、ガラス基板の少なくとも端面を鏡面状に研磨すればよい。研磨布としては研磨パッドを用いることができる。研磨パッドとしては、軟質ポリッシャの研磨パッドであることが好ましい。研磨パッドの硬度はアスカーC硬度で、60以上80以下とすることが好適である。研磨パッドのガラス基板との当接面は、発泡ポアが開口した発泡樹脂、取り分け発泡ポリウレタンとすることがこのましい。研磨剤に含有される研磨砥粒(本発明の場合は、酸化セリウムを主成分とする研磨砥粒)の平均粒径は0.1μm以上1μm以下とすることができる。このようにして研磨を行うと、ガラス基板の端面を平滑な鏡面状に研磨することができる。
【0028】
本発明による鏡面研磨処理と洗浄処理は、特に基板の端面に適用するのが好適である。基板の端面(外周側及び内周側)において異物付着があると、基板端面からの発塵によりサーマルアスペリティ発生の原因となる。通常磁気ディスクの製造には、中心部に円孔を有するディスク状(円板状)の基板が用いられるが、基板の端面は主表面よりも粗面であるため、端面研磨に用いた研磨剤が食い込み、除去が難しい。また、基板の端面が研磨される前の研削工程において付着した研削剤が食い込んでいる場合もある。従って、本発明を少なくとも基板の端面の鏡面研磨と洗浄処理に適用することにより、端面における研磨剤残渣を確実に除去することが出来るので好ましい。また、このため基板端面からの研磨剤等の異物発塵を防止できるので、サーマルアスペリティを確実に防止することができる。
【0029】
また、本発明は、とりわけ小径磁気ディスク用のガラス基板に好適である。小径ディスクの場合、例えば0.8インチ型〜1インチ型の小径磁気ディスクでは、内径が例えば7mm以下とされるので、このような小径磁気ディスク用の基板は、特に内周側端面の洗浄が困難であり、付着研磨剤を除去することが難しく、異物として残留し易いという問題があるが、本発明によれば、小径磁気ディスク用のガラス基板においても、基板端面(特に内周側端面)において研磨剤残渣を確実に除去することができるので好ましい。
なお、本発明を適用する基板端面の表面状態については特に限定されないが、好ましくは表面粗さRaが1μm以下、特に好ましくはRaが0.5μm以下、更にはRaが0.05μm以下である端面に適用することが好ましい。また、鏡面研磨処理された基板端面に本発明を適用することが好ましい。
本発明を特に基板の端面の鏡面研磨と洗浄処理に適用することが好ましいが、基板の主表面の鏡面研磨と洗浄処理に際しても本発明を適用することが好適であることは勿論である。
【0030】
本発明においては、ガラス基板を構成するガラスは、アモルファスのアルミノシリケートガラスとすることが好ましい。このようなガラス基板は表面を鏡面研磨することにより平滑な鏡面に仕上げることができる。このようなアルミノシリケートガラスとしては、SiO2が58重量%以上75重量%以下、Al23が5重量%以上23重量%以下、Li2Oが3重量%以上10重量%以下、Na2Oが4重量%以上13重量%以下を主成分として含有するアルミノシリケートガラス(ただし、リン酸化物を含まないアルミノシリケートガラス)を用いることができる。例えば、SiO2 が62重量%以上75重量%以下、Al23が5重量%以上15重量%以下、Li2 Oが4重量%以上10重量%以下、Na2 Oが4重量%以上12重量%以下、ZrO2が5.5重量%以上15重量%以下を主成分として含有するとともに、Na2O/ZrO2 の重量比が0.5以上2.0以下、Al23 /ZrO2 の重量比が0.4以上2.5以下であるリン酸化物を含まないアモルファスのアルミノシリケートガラスとすることができる。なお、CaOやMgOといったアルカリ土類金属酸化物を含まないガラスであることが望ましい。このようなガラスとしては、HOYA株式会社製のN5ガラス(商品名)を挙げることができる。
【0031】
なお、アルミノシリケートガラスでは、硫酸との接触によりリーチング作用を受ける場合があり、ガラス基板の表面を変質させて表面粗さが粗される場合がある。本発明による洗浄液は、前述の如く、これらの問題に配慮した組成としているので、好適である。
本発明においては、洗浄処理後のガラス基板の端面は、最大谷深さRvが、4nm以下である鏡面とされることが好ましい。Rvが4nmを超える、即ち、凹部深さが深いと、10nm程度、或いはそれ以下で浮上飛行する磁気ヘッドの浮上姿勢を乱す場合があり、また、フライスティクション障害を生じせしめる恐れがあるからである。更に、最大粗さRmaxが6nm以下である鏡面とされることが好ましい。このような鏡面状態は、本発明の鏡面研磨処理と洗浄処理をこの順で行うことにより実現することができる。
【0032】
本発明においては、本発明による洗浄処理の後に、化学強化処理を施すことが好ましい。化学強化処理の方法としては、例えば、ガラス転移点の温度を超えない温度領域、例えば摂氏300度以上400度以下の温度で、イオン交換を行う低温型イオン交換法などが好ましい。化学強化処理とは、溶融させた化学強化塩とガラス基板とを接触させることにより、化学強化塩中の相対的に大きな原子半径のアルカリ金属元素と、ガラス基板中の相対的に小さな原子半径のアルカリ金属元素とをイオン交換し、ガラス基板の表層に該イオン半径の大きなアルカリ金属元素を浸透させ、ガラス基板の表面に圧縮応力を生じさせる処理のことである。化学強化処理されたガラス基板は耐衝撃性に優れているので、例えばモバイル用途のHDDに搭載するのに特に好ましい。化学強化塩としては、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属硝酸を好ましく用いることができる。
【0033】
本発明になるガラス基板の端面は鏡面且つ、研磨剤が確実に除去されているので、化学強化処理を行うことにより、ガラス基板の端面に均一な圧縮応力を生じせしめることができる。研磨剤が十分に除去されないままガラス基板の化学強化処理を行うと、例えば摂氏300度以上400度以下の温度でイオン交換処理される過程において、研磨剤がガラス基板に固着してしまい容易に除去できなくなる。更に、付着した研磨剤の真下のガラスには圧縮応力の生成が阻害されてしまうので、その部分が凸状、又は凹状に変形してしまう場合がある。鏡面研磨処理に用いられる研磨剤の平均粒径は0.1μm〜1μm程度であるので、それに相当する大きさの形状変形、凸状変形や凹状変形を生じさせる場合がある。本発明では、確実に研磨剤を除去することができるとともに、化学強化処理に供されるガラス基板の端面は、凸状、凹状の形状もない鏡面状の平滑面であるので、微細領域においても均一な圧縮応力を生じせしめることができる。従って、化学強化処理後においても、凸状、凹状の形状もない鏡面状の平滑面を維持することができる。
【0034】
本発明においては、本発明による洗浄処理の後に、テープ研磨処理を行うことができる。本発明ではテープ研磨処理に供されるガラス基板の表面は、凸状、凹状の形状もない鏡面状の平滑面であるので、テープ研磨処理において異物の噛み込みにより表面形状を乱す恐れが無い。
最近では、磁気ディスクの情報記録密度を向上させる目的で、磁気ディスクの磁性層に対して、ディスクの円周方向に沿う磁気異方性を付与する場合がある。ディスクの円周方向とは即ち磁気ヘッドの移動方向であるので、この方向に沿って磁気異方性が付与されていると、高記録密度化に資するからである。ディスク状ガラス基板の表面にテープ研磨処理を行うことにより、ディスクの円周方向に配向する筋状の筋からなるテクスチャを形成することができる。このテクスチャ処理が施されたガラス基板上に磁性層を形成すると、ディスクの円周方向に磁気異方性を生じせしめることができる。このテクスチャ処理は、テープ研磨処理において研磨剤としてダイヤモンド研磨剤を利用する。研磨テープとガラス基板とを接触させ、ダイヤモンド研磨剤を供給し、研磨テープとガラス基板とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の表面にテクスチャが形成される。このとき、ガラス基板の表面に異物が付着していたり、凸状、或いは凹状の形状が生じていると所望のテクスチャを形成することが阻害されてしまう。このため磁気ディスクに所定の磁気異方性を付与することが困難となる。本発明では、ガラス基板の表面は、凸状、凹状の形状もない鏡面状の平滑面であるので、微細領域においても均一なテクスチャを形成せしめることができる。従って、本発明は磁気ディスクの高記録密度化に資する。
【0035】
本発明において磁気ディスクは、本発明による磁気ディスク用ガラス基板の上に少なくとも磁性層を形成して製造される。磁性層の材料としては、異方性磁界の大きな六方晶系であるCoPt系強磁性合金を用いることができる。磁性層の形成方法としてはスパッタリング法、例えばDCマグネトロンスパッタリング法によりガラス基板の上に磁性層を成膜する方法を用いることができる。またガラス基板と磁性層との間に、下地層を介挿することにより磁性層の磁性グレインの配向方向や磁性グレインの大きさを制御することができる。例えば,Cr系合金など立方晶系下地層を用いることにより、例えば磁性層の磁化容易方向を磁気ディスク面に沿って配向させることができる。この場合、面内磁気記録方式の磁気ディスクが製造される。また、例えば、RuやTiを含む六方晶系下地層を用いることにより、例えば磁性層の磁化容易方向を磁気ディスク面の法線に沿って配向させることができる。この場合、垂直磁気記録方式の磁気ディスクが製造される。下地層は磁性層同様にスパッタリング法により形成することができる。
【0036】
また、本発明においては、磁性層の上に、保護層、潤滑層をこの順に形成するとよい。保護層としてはアモルファスの水素化炭素系保護層が好適である。例えばプラズマCVD法により保護層を形成することができる。保護層の膜厚としては、30オングストロームから80オングストロームが好ましい。また、潤滑層としては、パーフルオロポリエーテル化合物の主鎖の末端に官能基を有する潤滑剤を用いることができる。取り分け、極性官能基として水酸基を末端に備えるパーフルオロポリエーテル化合物を主成分とすることが好ましい。潤滑層の膜厚は5オングストロームから15オングストロームとすることが好ましい。潤滑層はディップ法により塗布形成することができる。
本発明になる磁気ディスクは、携帯電話やナビゲーションシステム、デジタルカメラなどのモバイル機器に搭載されるハードディスクドライブ用磁気ディスクとして特に好ましい。また該磁気ディスク用ガラス基板として本発明になる磁気ディスク用ガラス基板は特に好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法を更に詳細に説明する。
[実施例1]
実施例1にかかる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、(1)荒ずり工程、(2)端面鏡面研磨工程、(3)洗浄工程(端面鏡面研磨後洗浄工程)、(4)ラッピング工程、(5)第一研磨工程、(6)第二研磨工程(主表面鏡面研磨工程)、(7)化学強化工程、を有する。以下、これらの工程を詳細に説明する。
【0038】
(1)荒ずり工程
まず、プレス法で成型したガラスディスクを、比較的粗いダイヤモンド砥石で研削加工した。素材となるガラス組成物として、SiO2 を62重量%以上75重量%以下、Al23を5重量%以上15重量%以下、Li2 Oを4重量%以上10重量%以下、Na2 Oを4重量%以上12重量%以下、ZrO2を5.5重量%以上15重量%以下を主成分として含有するとともに、Na2O/ZrO2 の重量比が0.5以上2.0以下、Al23/ZrO2 の重量比が0.4以上2.5以下であるガラス組成物を利用した。このガラス組成物は、リン酸化物や、CaOやMgOといったアルカリ土類金属酸化物を含まないガラスである。具体的にはHOYA株式会社製のアモルファスのアルミノシリケートガラスであるN5ガラス(商品名)を用いた。
次いで、上記砥石よりも粒度の細かいダイヤモンド砥石で上記ガラスディスクの両面を研削加工した。これにより、ガラス基板表面の表面粗さをRmax(JISB0601で測定)で10μm程度に仕上げた。次に、円筒状の砥石を用いてディスク状のガラス基板の中心部に孔を開けてドーナツ状のガラス基板とした。
【0039】
(2)端面鏡面研磨工程
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面の表面粗さを、Rmaxで1μm、Raで0.3μm程度に鏡面研磨した。研磨剤としては酸化セリウム研磨剤を用いた。なお、この酸化セリウム研磨剤に含有されるフッ素量をXPS(X線光電子分光分析法)で分析したところ、F(フッ素原子)で3重量%であった。
【0040】
次に、この端面鏡面研磨工程を終えたガラス基板の洗浄処理を下記の通りに行った。この研磨工程を終えたガラス基板を乾燥(自然乾燥を含む)させることなく、水中で保管し、湿潤状態のまま次の洗浄工程へ搬送した。研磨残渣が残った状態のままガラス基板を乾燥させてしまうと、洗浄処理により研磨剤を除去することが困難になる場合があるからである。
(3)洗浄工程(端面鏡面研磨後洗浄工程)
この洗浄工程は、鏡面研磨工程で鏡面に仕上げられたガラス基板の端面に残留する研磨剤を除去するための洗浄工程である。鏡面仕上げされたガラス表面を粗らすこと無く、研磨剤を除去する必要がある。例えば、洗浄液がガラスに対してエッチング作用やリーチング作用を有していると、折角鏡面仕上げしたガラス表面が粗されてしまい、鏡面では無く、梨子地面のガラス表面となってしまう。従って、本発明における洗浄液はガラスに対して、エッチング作用やリーチング作用を有せず、特定の研磨剤に対して選択的溶解性能を備える洗浄液として組成される。
予め、硫酸が4.5重量%、L−アスコルビン酸が1重量%の洗浄液を作製し、この洗浄液中のフッ素イオン濃度が10ppmとなるように、フッ酸を10ppm添加した。以上のようにしてこの洗浄処理における洗浄液を組成した。この洗浄液に、上記端面鏡面研磨工程で用いたのと同様の酸化セリウム研磨剤を分散させたところ、約4分程度で完全に溶解することを確認した。また、ガラス(アルミノシリケートガラス)に対して問題となるようなエッチング作用、リーチング作用が働かないことも確認した。
【0041】
なお、フッ酸を添加せず、硫酸とL−アスコルビン酸で作製した洗浄液では、研磨剤の溶解速度が遅く、溶解するまでに20分程度を要した。従って、本実施例では、硫酸、L−アスコルビン酸、フッ酸からなる洗浄液でガラス基板の洗浄を行うこととした。
上述した組成の硫酸、アスコルビン酸、フッ酸からなる洗浄液に、端面鏡面研磨工程を終えたガラス基板を浸漬し、洗浄処理を行った。約5分間、この洗浄液に浸漬させた、洗浄液の温度は摂氏約40度とした。
この洗浄処理を終えたガラス基板の端面の縦5μm、横5μmの正方形領域の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、Rmaxで4.0nm、Rpで2.0nm、Rvで2.0nm、Raで0.4nmであった。また、その表面を原子間力顕微鏡及び電子顕微鏡で分析したところ鏡面状であり、凸状、凹状の欠陥や異物は観察されなかった。研磨剤の残渣も検出されなかった。
【0042】
(4)ラッピング工程
次に、ガラス基板にラッピング処理を施した。このラッピング工程は、寸法精度及び形状精度の向上を目的としている。ラッピング処理は、ラッピング装置を用いて行い、砥粒の粒度を#400、#1000と替えて2回行った。詳しくは、はじめに、粒度#400のアルミナ砥粒を用い、内転ギアと外転ギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面の主表面を面精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。次いで、アルミナ砥粒の粒度を#1000に替えてラッピングを行い、表面粗さ(Rmax)2μm程度とした。ラッピング処理を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0043】
(5)第一研磨工程
次に、第一研磨工程を施した。この第一研磨工程は、上述したラッピング工程で残留した傷や歪みの除去を目的とするもので、研磨装置を用いて行った。詳しくは、ポリウレタン製の硬質研磨パッドを用い、以下の研磨条件で第一研磨工程を実施した。研磨剤としては酸化セリウム研磨剤を用いた。上記第一研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
(6)第二研磨工程(主面鏡面研磨工程)
次に、第一研磨工程で使用したのと同様の研磨装置を用い、研磨パッドを硬質研磨パッドから軟質研磨パッドに替えて、第二研磨工程を実施した。この第二研磨工程で行う処理は、上述した第一研磨工程で得られた平坦な主表面を維持しつつ、例えば主表面の表面粗さRmaxが6nm程度以下である平滑な鏡面に仕上げる鏡面研磨処理である。研磨パッドはアスカーC硬度で72の軟質研磨パッドを用いた。また研磨パッドの表面は発泡ポアが開口する発泡ポリウレタンとした。研磨液は、酸化セリウム研磨剤を純水に分散させた研磨液とした。研磨剤の平均粒径は0.8μmである。この研磨液とガラス基板に供給し、研磨パッドとガラス基板の摺動させてガラス基板の表面を鏡面研磨した。
上記第二研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0044】
(7)化学強化工程
第二研磨工程を終えたガラス基板に化学強化処理を施した。化学強化処理は、化学強化塩を化学強化処理槽に入れ、保持部材で保持したガラス基板を溶融させた化学強化塩に浸漬して行う。化学強化処理の具体的方法は、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムを混合した化学強化塩を用意し、この化学強化塩を400℃に加熱して溶融させ、300℃に予熱された洗浄済みのガラス基板を約3時間浸漬して行った。このように、化学強化溶融塩にガラス基板を浸漬処理することによって、ガラス基板表層のリチウム、ナトリウムは、化学強化溶融塩中のナトリウム、カリウムにそれぞれ置換され、ガラス基板は化学強化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100μmであった。化学強化処理を終えたガラス基板を、硫酸洗浄、中性洗剤洗浄、純水洗浄、アルコール洗浄、アルコール蒸気乾燥の順に洗浄及び乾燥工程を行った。
上記の工程を経て得られたガラス基板の主表面を原子間力顕微鏡及び電子顕微鏡で分析したところ鏡面状であり、凸状、凹状の欠陥や異物は観察されなかった。研磨剤の残渣も検出されなかった。
以上のようにして磁気ディスク用ガラス基板が製造された。
【0045】
(8)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られた磁気ディスク用ガラス基板の両面に、DCマグネトロン型スパッタリング装置を用いて、NiTaの第1下地層、Ruの第2下地層、CoCrPtB磁性層を順次成膜し、次いでプラズマCVD法により水素化炭素保護層を40オングストロームの膜厚で成膜し、ディップ法によりアルコール変性パーフルオロポリエーテル潤滑剤を10オングストロームの膜厚で塗布成膜して磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクは垂直磁気記録方式用の磁気ディスクである。
【0046】
[HDD搭載試験]
得られた磁気ディスクを、最高記録密度が1平方インチ当り60ギガビットとされるロードアンロード方式のハードディスクドライブ(HDD)に搭載した。このハードディスクドライブに搭載される磁気ヘッドの浮上量は10nmであり、スライダーはNPABスライダー(負圧スライダー)が採用されている。再生素子は磁気抵抗効果型再生素子である。このハードディスクドライブで試験を行ったところ、ヘッドクラッシュ障害、サーマルアスペリティ障害、フライスティクション障害が生じることがなく、安全に記録再生を行うことができた。ロードアンロード動作を60万回繰り返したが、故障することもなかった。
【0047】
[実施例2][比較例1]
洗浄工程(端面鏡面研磨後洗浄工程)の洗浄液として様々な洗浄液を組成して、洗浄能力を対比した。洗浄液の組成、洗浄液の作用、洗浄液の効果については、下記表1にまとめて掲げる。これらの点以外は実施例1と同様の製造方法による同様の磁気ディスク用ガラス基板、磁気ディスクである。評価方法等は前述の通りである。
【0048】
【表1】

【0049】
[比較例2]
次に、前記端面鏡面研磨工程において、F(フッ素原子)で6重量%の含フッ素酸化セリウム研磨剤を用いて鏡面研磨を行った。この点以外は、実施例1と同様の製造方法による同様の磁気ディスク用ガラス基板、磁気ディスクである。評価方法等は前述の通りである。
結果、研磨剤に対する溶解能が十分ではなく、洗浄後のガラス基板表面を原子間力顕微鏡、電子顕微鏡で観察したところ、研磨剤の残渣と思われる微細な突起が確認されるガラス基板があった。また、所々に凹みが形成されている部位、表面粗さが大きい部位が見つかったが、ガラス基板の微細な領域において研磨剤の残りがエッチング作用を働いたのでは無いかと思われる。
同様に、F(フッ素原子)の含有量を様々に変更(5重量%、2重量%、1重量%)した含フッ素酸化セリウム研磨剤を用いた実験を行ったところ、5重量%以下であれば、実施例1と同様の結果が得られることが分かった。
【0050】
[参考例]
次に、本発明の実施形態に係る参考的実験を行ったので付記する。
実施例1の洗浄工程(端面鏡面研磨後洗浄工程)で利用した洗浄液と同様の組成の試薬を組成して、アルミノシリケートガラスに対する作用を調査した。具体的には硫酸、アスコルビン酸の組成は実施例1の洗浄液と同様とし、フッ酸の添加量を調整し様々なフッ素イオン濃度の試薬を組成した。通常、フッ酸はガラスに対するエッチング液として利用される液体であるので、ここで、本発明の作用効果を阻害しないフッ素イオン濃度を開示しておく方がよいと思われたからである。
【0051】
具体的には、フッ素イオン濃度が1ppm、5ppm、10ppm、30ppm、40ppm、50ppm、100ppmの7水準の試薬を組成した。この試薬を、実施例1と同様の組成のアルミノシリケートガラスに接触させて、エッチング速度を調査した。結果、フッ素イオン濃度が40ppm以下ではエッチング速度が大きくても0.01nm/分であり、実質的にエッチング作用が起こらないのに対して、50ppmでは0.1nm/分に急増し、100ppmでは、0.5nm/分を超えるエッチング速度となることが分かった。洗浄処理を行う時間を厳密に管理することにより、50ppm以上においても、エッチング量を所定以下に管理することは可能であるが、工程管理が困難となる。従って、安定した量産工程を維持する観点からは、フッ素イオン濃度を40ppm以下とすることが好ましいといえる。
【0052】
[実施例3]
次に、実施例1において、化学強化工程の後であって、磁気ディスク製造工程の前に、テープ研磨処理を行った磁気ディスク用ガラス基板、磁気ディスクを製造した。ディスク状のガラス基板の表面にテープ研磨処理を行うことにより、ディスクの円周方向に配向する筋状の溝からなるテクスチャを形成した。具体的には、化学強化処理を行ったガラス基板の表面に、樹脂繊維の織物からなる研磨テープを当接させ、ダイヤモンド砥粒を供給しながら、ガラス基板を回転させることにより、ガラス基板の表面に微細なテクスチャを形成した。このテクスチャ形成処理を終えたガラス基板の表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、表面粗さは実施例1と同様であったが、その表面には精緻なテクスチャ形状が形成されていた。テクスチャを構成する筋はディスクの円周方向に沿って配向していた。テクスチャ形状を乱すような、凸部、凹部や異物の噛み込みにより形成される傷なども見られなかった。このガラス基板上に実施例1と同様に成膜を行い磁気ディスクを製造した。但し、第1下地層をCrTa下地層に換え、第2下地層をAlRu下地層とし、第2下地層と磁性層の間に、第3下地層としてCrMo下地層を介挿入させた。
【0053】
以上のようにして面内記録方式用磁気ディスクを製造した。これらの点以外は実施例1と同様の製造方法による同様の磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクである。
得られた磁気ディスクのHDD搭載試験を行ったところ実施例1と同様の好適な結果が得られた。次に磁気ディスクの磁気異方性を調べた。具体的には、磁気ディスクの円周方向の保磁力(Hc1)と半径方向の保磁力(Hc2)を測定し、Hc1/Hc2を磁気異方性指数(OR)として評価した。保磁力の測定はVSM(振動試料型磁化測定装置)による磁気特性評価方法を利用した。このとき、最大印加外部磁場は8キロエルステッドとした。結果、ORは1.2程度付与されていた。即ちこの磁気ディスクは円周方向の磁気特性(この場合保磁力)が半径方向のそれに対して20%卓越していることを示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の鏡面研磨処理と洗浄処理を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
フッ素含有量が5重量%以下である希土類酸化物を主成分とする研磨剤をガラス基板に供給し、研磨布とガラス基板とを相対的に移動させてガラス基板の端面を鏡面研磨した後に、このガラス基板をアスコルビン酸及びフッ素イオンと、3重量%以上の硫酸を含有する洗浄液に接触させて、前記研磨剤を溶解除去することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄液に含有されるアスコルビン酸の濃度は、0.1重量%以上とすることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄液に含有されるフッ素イオンの含有量は1ppm以上40ppm以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記ガラス基板を構成するガラスは、SiO2 が58重量%以上75重量%以下、Al23が5重量%以上23重量%以下、Li2 Oが3重量%以上10重量%以下、Na2 Oが4重量%以上13重量%以下を主成分として含有するアモルファスのアルミノシリケートガラスであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記洗浄処理後のガラス基板の端面は、最大谷深さRvが、4nm以下である鏡面とされることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造されたガラス基板上に、少なくとも磁性層を成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【請求項7】
1平方インチ当り60ギガビット以上のビット記録密度で情報を記録再生するための磁気ディスクを製造することを特徴とする請求項6に記載の磁気ディスクの製造方法。


【公開番号】特開2009−245467(P2009−245467A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287971(P2005−287971)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(503069159)ホーヤ ガラスディスク タイランド リミテッド (85)
【Fターム(参考)】