説明

磁気ヘッド収容ケース

【課題】磁気ヘッド収容ケースに関し、収容ケース固有の情報、あるいは収容される磁気ヘッドに関する情報を確実に保持し、収容される磁気ヘッドの不良発生を防止することを目的とする。
【解決手段】磁気ヘッド1を収容可能で、少なくとも表層に導電性が付与されたケース本体2内にRFIDタグ3を埋め込んで構成する。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッド収容ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドを工程間で搬送する際に使用される磁気ヘッド収容ケースとしては、特許文献1に記載されるように、導電性を有する合成樹脂材料をボックス形状に成型したものが知られている。
【0003】
このような収容ケースは繰り返し使用され、使用に際しては、塵埃等の磁気ヘッドへの付着を防止するために洗浄される。収容ケースは多種類の磁気ヘッドの搬送に汎用的に使用されるために、磁気ヘッドを取り出すことなく磁気ヘッドの種類を知るためには、収容ケースに磁気ヘッドに関する品番等の情報を表示しておく必要がある。
【0004】
さらに、収容ケースには、収容される磁気ヘッドに関する情報に加え、収容ケース自体の情報を表示する必要がある。例えば、収容ケースには、表層に導電層を形成し、あるいは母材に導電体を混入させることにより磁気ヘッドの静電破壊を防止するための導電性が付与されるが、洗浄等による導電層の破壊、あるいは母材溶出、水垢による導電性フィラーの被覆等による導電性喪失のおそれがあるために、導電性の有無についての情報を収容ケースにもたせる必要がある。また、母材の経時劣化による母材微細脱落粉が磁気ヘッドに付着した場合には、磁気ディスクのクラッシュの原因となるために、母材の経時劣化を評価するための情報を収容ケースにもたせる必要がある。
【0005】
しかし、上述した従来例の収容ケースは、特別の情報担持手段を有しないために、かかる情報を表示するためには、例えば、バーコードを貼付したり、あるいは収容ケースに直接記入する必要がある。収容ケースに表示される情報が、例えば磁気ヘッドの品番のように磁気ヘッドに関する情報である場合には、収容される磁気ヘッド種が変わるたびにバーコードの貼り替え等が必要になるという欠点がある。これに対し、表示される情報が収容ケース固有の管理値である場合には、洗浄工程で洗い流されたり、剥離してしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2001-118224
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、収容ケース固有の情報、あるいは収容される磁気ヘッドに関する情報を確実に保持し、収容される磁気ヘッドの不良発生を防止できる磁気ヘッド収容ケースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
磁気ヘッド収容ケースは、磁気ヘッド1を収容するケース本体2内にRFID(Radio Frequency IDentification)タグを埋め込んで形成される。RFIDタグ3には、上述した収容ケース固有の情報と収容される磁気ヘッド1に関する情報を格納することができ、必要に応じてリーダ装置を介して読み出し、書き込みされる。
【0008】
情報記憶媒体としてケース本体2内に埋め込まれたRFIDタグ3を利用するこの発明において、例えば、ケース寿命等、ケース本体2固有の情報は洗浄により洗い流されることがなくなるために、導電性能が劣化した収容ケースを使用することによる磁気ヘッド1の不良発生を確実に防止することができる。
【0009】
また、収容される磁気ヘッド1の品番等の情報は、適宜のリーダ装置により随時任意に書き替えることができる。
【0010】
さらに、格納可能な情報量は収容ケースに直接表示する場合に比して多くすることができるために、種々の情報を格納することが可能になり、磁気ヘッド1、あるいは収容ケースの性能に対する統計的評価も容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収容ケース固有の情報、あるいは収容される磁気ヘッドに関する情報を確実に保持することができるので、収容される磁気ヘッドの不良発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、磁気ヘッド収容ケースAは、磁気ヘッド1を収容することができるようにトレイ形状をなすケース本体2にRFIDタグ3を埋め込んで形成される。ケース本体2は、熱処理等の高温環境下での使用に耐えることができるように、耐熱性を有する合成樹脂材を射出成型して形成される。
【0013】
また、上述したように、収容される磁気ヘッド1の静電破壊を防止するために、ケース本体2には導電性が付与される。導電性の付与は、導電性を有するフィラーを混入した合成樹脂材を射出成型することにより、あるいは導電性を有しない合成樹脂製のケース本体2の表層に導電性ポリマー加工を施すことにより実現できる。
【0014】
この実施の形態において、ケース本体2は、後述するRFIDタグ3による識別に加え、例えば収容される磁気ヘッド1の種類等の大まかな識別のために色分けされる。導電性フィラーを混入させた合成樹脂材を成型して導電性を付与する場合には、導電性フィラーの色彩によってケース本体2の色彩が決定される(通常「黒色」)ために、色分けは、黒色と、その他の色彩が設定される。
【0015】
黒色以外の色彩を有するケース本体2は、黒色以外の種々の色彩の顔料を混合させた非導電性合成樹脂材を成型して形成され、上述したように、この表面に導電性ポリマー加工を施して導電性が与えられる。
【0016】
RFIDタグ3は、RFIDチップ3aにアンテナ3bを接続して形成される。このRFIDタグ3は図2(b)に示すように、まず、合成樹脂材により予備成型された後、ケース本体2に二色成型される。予備成型、および二色成型時にRFIDタグ3が熱により破壊されることのないように、RFIDチップ3aとアンテナ3bは、まず、ラミネートフィルム5を使用してラミネート処理され、次いで、耐熱シート(シート状断熱材4)に包んで予備成型する。耐熱シート4にはセラミックペーパが使用でき、予備成型は、耐熱シート4に包んだRFIDタグ3を金型にセットして合成樹脂材による射出成型を行う。
【0017】
導電性フィラー混入樹脂により成型することによりケース本体2に付与された導電性が電波シールドとして機能する虞がある場合、上記予備成型品6は非導電性合成樹脂材により成型され、ケース本体2の外壁面に露出させる。また、導電性ポリマー加工を施して導電性を付与する場合、導電性ポリマー加工を磁気ヘッド1が収容される内壁面にのみ施すことにより電波シールドの影響を防止することができる。
【0018】
以上のように構成される収容ケースAの運用例を部品保管部署を例にとって図3に示す。この実施の形態において、RFIDタグ3には図3(b)に示すケース固有情報と、図3(c)に示すヘッド情報とを記憶する記憶領域が設定される。
【0019】
運用に際し、まず、ケース固有情報として、ケース名、この収容ケースAの各部寸法を記載した図面の図番、表面抵抗値、測定日、測定結果の合否、測定者が記憶される。収容ケースA内の磁気ヘッド1が使用されて収容ケースAが空になると、洗浄装置7により塵埃等を洗い流し、保管庫8に戻される。
【0020】
洗浄工程自体が付与された導電性の劣化、あるいは母材の劣化原因となるのに加え、洗浄回数が収容ケースAの使用回数、すなわち、乾燥工程の熱処理の通過回数等を示す。このため、収容ケースAが洗浄される度にRFリーダ装置9を使用してRFIDタグ3の洗浄回数情報を更新する。この洗浄回数が所定回数に達した場合、表面抵抗を実測し、RFIDに表面抵抗値、測定日、合否、測定者を書き込み、必要に応じてデータ収集用パソコン10にデータを蓄積する。
【0021】
さらに、前工程ステージ11から磁気ヘッド1を受領した場合には、ヘッド情報記憶領域に磁気ヘッド1の品番、種類、検査日、検査担当、出庫日、出庫先、入荷日等を記憶させた後、保管庫8に保管し、必要に応じて次工程に出庫する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を示す図で、(a)は、平面図、(b)は正面図である。
【図2】収容ケースの要部を示す図で、(a)はRFIDタグを示す図、(b)は(a)の2B-2B線断面図である。
【図3】収容ケースの運用方法を示す説明図で、(a)は保管庫への入出庫を示す図、(b)はRFIDタグのケース固有情報格納領域を示す図、(c)はRFIDタグのヘッド情報記憶領域を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 磁気ヘッド
2 ケース本体
3 RFIDタグ
4 シート状断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドを収容可能で、少なくとも表層に導電性が付与されたケース本体内にRFIDタグが埋め込まれた磁気ヘッド収容ケース。
【請求項2】
前記RFIDタグに洗浄履歴を格納可能な請求項1記載の磁気ヘッド収容ケース。
【請求項3】
前記ケース本体は、合成樹脂材を射出成型して形成されるとともに、
前記RFIDタグは、シート状断熱材に包まれた状態で前記ケース本体の成型時に同時成型される請求項1または2記載の磁気ヘッド収容ケース。
【請求項4】
磁気ヘッドを収容可能なケース本体内にRFIDタグが埋め込まれた磁気ヘッド収容ケースの製造方法であって、
前記RFIDタグは、シート状断熱材に包まれてケース本体の成形金型内に保持され、ケース本体の射出成型時に同時成型される磁気ヘッド収容ケースの製造方法。
【請求項5】
前記シート状断熱材がセラミックペーパである請求項4記載の磁気ヘッド収容ケースの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−320590(P2007−320590A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151038(P2006−151038)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】