説明

磁気共鳴イメージング方法、磁気共鳴イメージング装置およびその制御装置

【課題】MRIにおいて渦電流による磁場成分を簡便に補償することで、画質を改善するための従来とは異なる技術を提供する。
【解決手段】一実施形態では、MRI装置は、信号収集部と、画像生成部と、位置取得部と、補正部とを備える。信号収集部は、被検体が置かれる撮像空間に傾斜磁場およびRFパルスを印加することで被検体から発せられる磁気共鳴信号を収集する。画像生成部は、磁気共鳴信号に基づいて被検体の画像データを再構成する。位置取得部は、撮像空間内の位置的な情報として、撮像領域を取得する。補正部は、傾斜磁場の印加に伴って発生する渦電流による磁場である渦電流磁場が相殺されるように、前記位置的な情報および前記渦電流磁場の時定数に基づいて前記傾斜磁場の波形を補正することで、発生する傾斜磁場の分布を目標分布に近づける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング方法、磁気共鳴イメージング装置およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRFパルスで磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。なお、上記MRIは磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging)の意味であり、RFパルスは高周波パルス(radio frequency pulse)の意味であり、MR信号は核磁気共鳴信号(nuclear magnetic resonance signal)の意味である。
【0003】
MRIの画質劣化の要因の1つとして、傾斜磁場分布の歪みが知られている。スライス選択方向、位相エンコード方向、周波数エンコード方向の各傾斜磁場の分布は、例えば、印加方向に沿った位置に応じて直線的に磁場強度が変化するのが理想である。しかしながら実際には、傾斜磁場コイルにパルス電流を供給すると渦電流が発生し、渦電流による磁場が傾斜磁場に加わって傾斜磁場分布の歪みが生じる。
【0004】
通常の渦電流補償は、渦電流による磁場の各成分の内、空間的に線形に変化する1次成分を対象として傾斜磁場波形の入力を補正するものであるため、渦電流による磁場の2次以上の成分については補償できない。そこで、高次のシムコイルに電流を流すことで、渦電流による磁場の2次以上の成分を補償する技術がある。
【0005】
また、特許文献1では、予め設けた複数の渦電流補償回路の中から1つまたは複数を選択することで、渦電流による磁場を補償する構成について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−195539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
傾斜磁場分布の歪みは、一般に、磁場中心から離れるほど大きくなる。従って、渦電流による磁場の1次成分のみを補償する従来技術では、特にオフセンターを撮像領域とする場合に、渦電流による磁場の2次以上の成分によって、傾斜磁場分布の歪みに伴う画質劣化が発生する。なお、上記オフセンターは、磁場中心から離れた位置の意味である。
【0008】
渦電流による磁場の2次以上の成分を高次シムコイルによって補償する従来技術は、他コイルとのカップリング等の影響を避けるために、例えば数秒の待ち時間を設けるといったデメリットがある。また、高次シム成分と、渦電流による磁場の高次成分とのチャネルが対応していない場合がある。具体的には例えば、シムコイルがXZやYYなどの各2次成分を補償する各コイルのみを具備していても、渦電流による磁場の3次成分や4次成分が大きい場合、渦電流による磁場を十分に補償できない。
【0009】
本発明の一実施形態は、MRIにおいて渦電流による磁場成分を簡便に補償することで、画質を改善するための従来とは異なる技術の提供を目的とするが、本発明は当該目的に限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、MRI装置は、信号収集部と、画像生成部と、位置取得部と、補正部とを有する。
信号収集部は、被検体が置かれる撮像空間内で傾斜磁場およびRFパルスを印加することで被検体から発せられる磁気共鳴信号を収集する。
画像生成部は、磁気共鳴信号に基づいて被検体の画像データを再構成する。
位置取得部は、撮像空間内の位置的な情報として、撮像領域を取得する。
補正部は、傾斜磁場の印加に伴って発生する渦電流による磁場である渦電流磁場が相殺されるように、位置的な情報および渦電流磁場の時定数に応じて傾斜磁場の波形を変形することで、発生する傾斜磁場の分布を目標分布に近づける。
【0011】
一実施形態では、制御装置は、傾斜磁場コイルに電流を供給することで被検体が置かれる撮像空間内で傾斜磁場を印加し、傾斜磁場を伴って被検体の磁気共鳴イメージングを実行するMRI装置の制御装置であって、上記位置取得部と、上記補正部とを有する。
【0012】
一実施形態では、MRI方法は、取得ステップと、補正ステップと、収集ステップと、再構成ステップとを有する。
取得ステップでは、被検体が置かれる撮像空間内での位置的な情報として、MRIの撮像領域を取得する。
補正ステップでは、傾斜磁場の印加に伴って発生する渦電流による磁場である渦電流磁場が相殺されるように、前記位置的な情報および渦電流磁場の時定数に基づいて傾斜磁場の波形を変形することで、発生する傾斜磁場の分布を目標分布に近づける。
収集ステップでは、補正ステップにより変形された傾斜磁場と、RFパルスとを撮像空間内で印加することで、被検体から発せられる磁気共鳴信号を収集する。
再構成ステップでは、磁気共鳴信号に基づいて被検体の画像データを再構成する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るMRI装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】図1に示すコンピュータ58の機能ブロック図。
【図3】Y軸正方向に磁場中心から5cm離れた領域における、渦電流による磁場の一成分のX軸方向強度分布の一例を示す模式図。
【図4】Xオフセンターでの各渦磁場成分の各パラメータの値の一例を示す表。
【図5】Yオフセンターでの各渦磁場成分の各パラメータの値の一例を示す表。
【図6】Zオフセンターでの各渦磁場成分の各パラメータの値の一例を示す表。
【図7】渦電流の影響を受けた傾斜磁場波形の一例と、これに対応する理想的な傾斜磁場波形の一例とを対比した模式図。
【図8】Y軸正方向に磁場中心から5cm離れた領域における、渦電流による磁場の別の一成分のX軸方向強度分布の一例を示す模式図。
【図9】マルチスライス撮像における撮像スライスの一例を示す模式図。
【図10】スピンエコー法を例としたマルチスライス撮像におけるパルスシーケンスの一例を示す模式図。
【図11】本実施形態に係るMRI装置の動作の流れを示すフローチャート。
【図12】渦磁場成分を考慮した傾斜磁場の補正を行わずに、ファントムを撮像した画像の一例を示す図。
【図13】本実施形態の手法に従って傾斜磁場分布の補正を行って、図12と同一のファントムを撮像した画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、MRI装置およびその制御装置と、MRI方法の実施形態について添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(本実施形態の構成)
図1は、本実施形態におけるMRI装置20の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、MRI装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場磁石22と、静磁場磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御装置30と、被検体Hが乗せられる寝台32とを有する。
【0016】
ここでは一例として、装置座標系の互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、静磁場磁石22およびシムコイル24は、それらの軸方向が鉛直方向に直交するように配置されているものとし、静磁場磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。また、鉛直方向をY軸方向とし、寝台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとする。
【0017】
MRI装置20の制御装置30は、例えば、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、寝台駆動装置50と、シーケンスコントローラ56と、コンピュータ58とを含む。
【0018】
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。また、コンピュータ58は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とで構成されている。
【0019】
静磁場磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給された電流により撮像空間に静磁場を形成させる。
【0020】
上記撮像空間とは、例えば、被検体Hが置かれて、静磁場が印加されるガントリ内の空間の意味である。ガントリとは、静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28を含むように、例えば円筒状に形成された構造体である。被検体Hが乗せられた寝台32がガントリの内部に移動できるように、ガントリおよび寝台32は構成される。なお、図1では煩雑となるので、ガントリ内の静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28を構成要素として図示し、ガントリ自体は図示していない。
【0021】
撮像領域は、例えば、「1つの画像」または「1セットの画像」の生成に用いるMR信号の収集範囲であって、撮像空間の一部として設定される領域の意味である。ここでの「1つの画像」および「1セットの画像」とは、2次元画像の場合もあれば3次元画像の場合もある。ここでの「1セットの画像」とは、例えば、マルチスライス撮像などのように、1つのパルスシーケンス内で「複数の画像」のMR信号が一括的に収集される場合の、「複数の画像」である。撮像領域は、例えば、装置座標系によって3次元的に規定される。ここでは一例として、撮像領域は、厚さの薄い領域であれば撮像スライスと称し、ある程度の厚みのある領域であれば撮像スラブと称することとする。
【0022】
シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。静磁場磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0023】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとを有し、静磁場磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、傾斜磁場電源44のX軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
【0024】
そして、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
【0025】
即ち、装置座標系の3軸方向の各傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、および、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。スライス方向、位相エンコード方向、および、読み出し方向の各傾斜磁場Gss、Gpe、Groは、静磁場に重畳される。
【0026】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルス(RF電流パルス)を生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイルや、寝台32または被検体Hの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。送信用のRFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて被検体Hに送信する。受信用のRFコイル28は、被検体Hの内部の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
【0027】
RF受信器48は、検出したMR信号に前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データを生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
演算装置60は、MRI装置20全体のシステム制御を行う。
【0028】
シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
【0029】
シーケンスコントローラ56は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることにより、傾斜磁場Gx、Gy、GzおよびRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ56は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データを受けて、これを演算装置60に入力する。
【0030】
寝台駆動装置50は、シーケンスコントローラ56を介して演算装置60に接続される。シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って寝台駆動装置50を制御することで寝台32の天板を移動させる。
【0031】
図2は、図1に示すコンピュータ58の機能ブロック図である。コンピュータ58の演算装置60は、MPU(Micro Processor Unit)86と、システムバス88と、画像再構成部90と、画像データベース94と、画像処理部96と、表示制御部98と、位置取得部100と、補正部102とを備える。
【0032】
MPU86は、撮像条件の設定、撮像動作および撮像後の画像表示において、システムバス88等の配線を介してMRI装置20全体のシステム制御を行う。また、MPU86は、撮像条件設定部としても機能し、入力装置62からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ56に入力する。そのために、MPU86は、表示制御部98を制御して、撮像条件の設定用画面情報を表示装置64に表示させる。
入力装置62は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
【0033】
画像再構成部90は、内部にk空間データベース92を有する。画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間において、シーケンスコントローラ56から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置する。画像再構成部90は、k空間データに2次元フーリエ変換などを含む画像再構成処理を施して、被検体Hの各スライスの画像データを生成する。画像再構成部90は、生成した画像データを画像データベース94に保存する。
【0034】
画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置66に記憶させる。
【0035】
記憶装置66は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像条件や被検体Hの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
【0036】
表示制御部98は、MPU86の制御に従って、撮像条件の設定用画面や、撮像により生成された画像データが示す画像を表示装置64に表示させる。
【0037】
位置取得部100は、撮像空間内での装置座標系に基づく位置的情報として、撮像領域を取得して、これを補正部102に入力する。
【0038】
補正部102は、傾斜磁場コイル26にパルス電流を供給することで生じる渦電流による磁場の大きさを算出する。
【0039】
以下、渦電流による磁場の大きさの算出方法について説明する。まず、ここでは一例として、磁場中心は、装置座標系の原点に位置するものとする。また、「Xオフセンター」は、X軸方向に磁場中心から離れた位置の意味で用いる。同様に、「Yオフセンター」、「Zオフセンター」はそれぞれ、Y軸方向、Z軸方向に磁場中心から離れた位置の意味で用いる。
【0040】
図3は、Y軸正方向に磁場中心から5cm離れた領域における、渦電流による生じる磁場の一成分のX軸方向強度分布の一例を示す。図3の横軸は、オフセンター軸であり、X軸方向の位置を示す。図3の縦軸は、観測軸であり、渦電流による磁場のY成分の2次成分における、ある時定数τの磁場強度を示す。Y軸負方向に磁場中心から5cm離れた領域での同一の磁場成分の磁場強度のX軸方向分布は、図3の縦軸方向正負を逆にしたものとなる。
【0041】
上記一例のように、渦電流による生じる磁場強度は、どの成分も一般に磁場中心から離れるほど大きく、渦電流による生じる磁場の影響度は、撮像領域の位置によって異なる。そこで補正部102は、各傾斜磁場Gss、Gpe、Groの分布が目標分布となるように、渦電流による磁場の大きさと、撮像領域の位置とに基づいて、X軸、Y軸、Z軸の各傾斜磁場コイル26x、26y、26zへの供給電流の補正値を算出する。ここで、渦電流により発生する磁場の各成分を以下のように定義する。
【0042】
Xオフセンターにおいて、X軸方向の傾斜磁場Gxを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、XX_X,XY_X,XZ_X,とする。
Xオフセンターにおいて、Y軸方向の傾斜磁場Gyを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、YX_X,YY_X,YZ_X,とする。
Xオフセンターにおいて、Z軸方向の傾斜磁場Gzを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、ZX_X,ZY_X,ZZ_X,とする。
【0043】
Yオフセンターにおいて、X軸方向の傾斜磁場Gxを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、XX_Y,XY_Y,XZ_Y,とする。
Yオフセンターにおいて、Y軸方向の傾斜磁場Gyを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、YX_Y,YY_Y,YZ_Y,とする。
Yオフセンターにおいて、Z軸方向の傾斜磁場Gzを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、ZX_Y,ZY_Y,ZZ_Y,とする。
【0044】
Zオフセンターにおいて、X軸方向の傾斜磁場Gxを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、XX_Z,XY_Z,XZ_Z,とする。
Zオフセンターにおいて、Y軸方向の傾斜磁場Gyを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、YX_Z,YY_Z,YZ_Z,とする。
Zオフセンターにおいて、Z軸方向の傾斜磁場Gzを印加したときに渦電流で発生する磁場のX成分、Y成分、Z成分をそれぞれ、ZX_Z,ZY_Z,ZZ_Z,とする。
【0045】
即ち、アンダーバーを含め4文字で表される各符号の先頭文字は、傾斜磁場Gx、Gy、Gzのどれを印加する場合に対応するかを示す。また、各符号の2番目の文字は、(渦電流による磁場の観測軸として)X成分、Y成分、Z成分のどれに着目しているかを示す。また、各符号の末尾の文字は、Xオフセンター、Yオフセンター、Zオフセンターのどれに対応するかを示す。
【0046】
以下、渦電流により発生する磁場の各成分を渦磁場成分と称し、渦磁場成分XX_Xのように表記する。各渦磁場成分は、振幅と、時定数τに従って指数関数的に減衰する減衰項との積で与えられるが、異なる時定数の成分を持つこともある。そこで、上記27の渦磁場成分に対して、時定数毎にそれぞれ振幅を算出する。
【0047】
なお、渦電流磁場の時定数τは、渦電流の時定数により定まるものであり、例えば以下の要素によって定まる。第1に、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zと、静磁場磁石22との相対的位置関係である。第2に、傾斜磁場コイル26の形状、材質などである。これら時定数τは、例えば、MRI装置20の据付調整時に渦磁場成分を測定することで算出し、算出データをテーブルデータのようにして補正部102に記憶させておけばよい。或いは、傾斜磁場コイル26と、静磁場磁石22との相対的位置関係や、傾斜磁場コイル26の形状、材質などに基づいてシミュレーションによって渦電流磁場の時定数τを算出し、算出結果を補正部102に記憶させてもよい。
次に、上記27の渦磁場成分に対する、時定数毎の振幅の算出方法を説明する。
【0048】
第1に、上記27の渦磁場成分の内、オフセンター軸と、観測軸とが同じ渦磁場成分(符号の末尾の文字と、2番目の文字とが同じもの)に対しては、一例として以下の式で振幅を計算する。具体的には、XX_X,YX_X,ZX_X,XY_Y,YY_Y,ZY_Y,XZ_Z,YZ_Z,ZZ_Z,の9の渦磁場成分に対しては、以下の(1)式で振幅Lを計算する。
【0049】
L=A1+A2×{pol(p)}×|p|
+A3×|p|+A4×{pol(p)}×|p| …(1)
【0050】
(1)式において、|p|はpの絶対値を示し、pol(p)はプラスかマイナスかのPの極性を示し、Pの極性に応じて+1または−1を代入する。
【0051】
第2に、上記27の渦磁場成分の内、オフセンター軸と、観測軸とが異なる渦磁場成分に対しては、一例として以下の(2)式で振幅を計算する。具体的には、XY_X,XZ_X,YY_X,YZ_X,ZY_X,ZZ_X,XX_Y,XZ_Y,YX_Y,YZ_Y,ZX_Y,ZZ_Y,XX_Z,XY_Z,YX_Z,YY_Z,ZX_Z,ZY_Z,の18の渦磁場成分に対しては、以下の(2)式で振幅Lを計算する。
【0052】
L=A1×p+A2×p+A3×p+A4×p …(2)
【0053】
(1)式および(2)式におけるA1、A2、A3、A4は、渦磁場成分毎に異なる。A1〜A4については、例えばMRI装置20の据付調整時に各渦磁場成分を測定することで取得し、取得したデータをルックアップテーブル(テーブルデータ)のようにして補正部102に入力設定し、記憶させておけばよい。
【0054】
図4は、Xオフセンターでの各渦磁場成分の各パラメータの値の一例を示す表である。
図5は、Yオフセンターでの各渦磁場成分の各パラメータの値の一例を示す表である。
図6は、Zオフセンターでの各渦磁場成分の各パラメータの値の一例を示す表である。
【0055】
なお、図4〜図6における時定数τの単位はミリ秒である。前述のように、27種類の渦磁場成分は、時定数に応じて、さらに複数項に分かれるものがある。図4の例では、渦磁場成分XX_X,YY_X,ZZ_X,が複数項に分かれる。また、図4〜図6では、A1、A3、A4を一律にゼロとしているが、これは以下の説明の簡単化のための一例にすぎず、実際には測定値等に基づいて適切な値を用いる。
【0056】
本実施形態では、(1)式、(2)式、図4〜図6のように予め記憶した多項式モデル化されたデータを用いることで、Xオフセンター、Yオフセンター、Zオフセンターでの渦電流による磁場の1次および2次以上の成分に対する補正を行う。これにより、傾斜磁場分布を目標分布に近づける。
【0057】
具体的には、撮像空間内における、(撮像スライスまたは撮像スラブとしての)撮像領域の中心の座標位置を、装置座標系に従って規定して(x1,y1,z1)とする。この場合、Xオフセンター成分(上記27の渦磁場成分の内、符号末尾の文字がXのもの)をX座標値のx1によって計算する。同様にして、Yオフセンター成分をY座標値のy1によって計算し、Zオフセンター成分をZ座標値のz1によって計算する。
【0058】
これにより、全27の渦磁場成分の各時定数の項に対して、その振幅を計算する。一例として、装置座標系に基づく撮像スライスの中心座標を(−10、5、2)として、各渦磁場成分の振幅の計算例を具体的に説明する。
【0059】
渦磁場成分XX_Xについては、(符号の2番目の文字と末尾の文字が同じゆえに)観測軸とオフセンター軸とが同じなので、上記(1)式を用い、図4の各パラメータの値に従って計算する。また、渦磁場成分XX_Xは、(符号の末尾文字により)Xオフセンターの成分であるから、X座標値の−10を(1)式におけるpの値として用いる。そうすると、渦磁場成分XX_Xの第1項(時定数τ=40ミリ秒に対応)の振幅LXX_X1は、以下の(3)式のように計算される。
【0060】
XX_X1=A1+A2×{pol(p)}×|p|
+A3×|p|+A4×{pol(p)}×|p|
=0+30×(−1)×|−10|+0×|−10|
+0×(−1)×|−10|
=−300…(3)
【0061】
即ち、X座標値が−10のXオフセンターにおいて、X軸方向の傾斜磁場Gxを印加したときに渦電流により発生する磁場のX成分の第1項は、傾斜磁場Gxの印加開始時刻を時間t=0とすれば、およそ以下の(4)式で表される。
【0062】
XX_X1×{exp(−t/τ)}
=−300×{exp(−t/0.04)} …(4)
【0063】
なお、(4)式で与えられる磁場強度の単位は、例えばテスラである。同様に、渦磁場成分XX_Xの第2項(時定数τ=3ミリ秒に対応)の振幅LXX_X2は、以下の(5)式のように計算される。
【0064】
XX_X2=A1+A2×{pol(p)}×|p|
+A3×|p|+A4×{pol(p)}×|p|
=−32 …(5)
【0065】
渦磁場成分YX_Zについては、オフセンター軸と観測軸とが異なるので、上記(2)式を用い、図6の各パラメータの値に従って計算する。また、渦磁場成分YX_Zは、Zオフセンターの成分であるから、Z座標値の2を(2)式におけるpの値として用いる。図6の例では、渦磁場成分YX_Zは、時定数τ=40ミリ秒に対応する項しかないので、その振幅LYX_Zは、以下の(6)式のように計算される。
【0066】
YX_Z=A1×p+A2×p+A3×p+A4×p
=0×2+1.5×2+0×2+0×2 =6 …(6)
【0067】
このように(1)式、(2)式、および、図4〜図6のようなテーブルデータを用いることで、27の渦磁場成分に対して、その振幅を時定数毎に全て計算できる。これにより、渦電流により生じる磁場分布の時間変化を算出できる。
【0068】
傾斜磁場分布の補正に際しては、全ての渦磁場成分が相殺されるように、傾斜磁場コイル26への供給電流を補正することで、傾斜磁場の時間波形を変形すればよい。例えば、渦電流を考慮しない場合に、目標とする傾斜磁場分布(目標分布)を与えるX軸、Y軸、Z軸の各傾斜磁場コイル26x、26y、26zへの供給電流値を「暫定値」として算出する。
【0069】
次に、渦磁場成分とは符号が反対の磁場分布を与える各傾斜磁場コイル26x、26y、26zへの供給電流値を「調整値」として算出する。そして、「暫定値」と「調整値」を加算することで、各傾斜磁場コイル26x、26y、26zへの最終的な供給電流値を決定すればよい。
【0070】
或いは、目標とする傾斜磁場分布から全渦磁場成分を差し引いた傾斜磁場分布を与えるように、各傾斜磁場コイル26x、26y、26zへの供給電流値を補正してもよい。
【0071】
ここで、渦磁場成分は(4)式のように時定数に従って減衰していく。従って、この時定数を考慮した補正として、傾斜磁場コイル26への供給電流値に対する「調整値」を、各々の傾斜磁場パルスの印加開始時刻(後述の図7の時刻t1に相当)からの経過時間に応じて変化させる。
【0072】
なお、「各々の傾斜磁場パルス」とは、後述の図10に示すマルチスライス撮像のパルスシーケンスの場合、例えば、スライス選択パルス200、202、位相エンコードパルス204、読み出しパルス206、208のそれぞれを指す。即ち、「各々の傾斜磁場パルス」とは、一般には、スライス選択方向、位相エンコード方向、読み出し方向、の各論理軸では、時間軸上で離散したものである。
【0073】
例えば、上記した「暫定値」と「調整値」の加算により、各傾斜磁場コイル26x、26y、26zへの最終的な供給電流値を決定する補正を考える。この場合、「調整値」は、渦磁場成分とは符号が反対の磁場分布を与える傾斜磁場コイル26への供給電流値なので、時間経過に伴い、上記時定数に従って減少する。
【0074】
渦磁場成分が時定数に従って減衰する以上、傾斜磁場コイル26への供給電流値の内、補正成分である「調整値」の絶対値も、時間経過と共に減少させるべきだからである。即ち、各傾斜磁場パルスの印加開始からの時間の経過と共に、補正量に相当する「調整値」が減少するような補正となる。
【0075】
以上のように傾斜磁場波形を変形させる補正では、渦電流を考慮しなければ、目標とする傾斜磁場分布(目標分布)から全渦磁場成分を差し引いた傾斜磁場分布が得られるが、実際には渦磁場成分が重畳され、先に差し引いた全渦磁場成分が相殺される。即ち、ほぼ目標とする傾斜磁場分布が得られる。
【0076】
図7は、渦電流の影響を受けた傾斜磁場波形の一例と、これに対応する理想的な傾斜磁場波形の一例とを対比した模式図である。図7(A)では、渦電流の影響を受けた傾斜磁場波形の一例を太線で示し、この波形に対応する理想的な傾斜磁場波形を点線で示す。図7(B)は、理想的な傾斜磁場波形を太線で示すものであり、図7(A)の点線部分と同じである。なお、図7(A)、(B)において、縦軸は傾斜磁場の強度を示し、横軸は経過時間tを示す。
【0077】
図7において、時刻t1を傾斜磁場パルスの印加開始時刻(傾斜磁場コイル26への電流の供給開始時刻とほぼ同じ)とする。渦電流磁場に対する補償を行わない場合、図7(A)に示すように、傾斜磁場波形は曲線的になる(なまる)。傾斜磁場コイル26への電流供給開始に同期して、渦電流磁場も発生し、渦電流磁場が傾斜磁場に重畳されるからである。但し、渦電流磁場は時定数τに従って、時間経過と共に減少する。従って、図7における台形状の理想的な傾斜磁場波形の平坦部分の後半では、渦電流磁場が殆どなくなるため、理想的な傾斜磁場波形と、渦電流の影響を受けた傾斜磁場波形とがほぼ合致する。
【0078】
しかし、本実施形態では、渦電流磁場が相殺されるように傾斜磁場の波形を変形させるため、図7(B)のような理想的な傾斜磁場波形が得られる。本実施形態では、上記のように傾斜磁場コイル26への供給電流値を、撮像領域の位置および渦電流磁場の時定数τに基づいて時間変化するように補正するからである。
【0079】
図3における撮像領域Img1は、中心座標が(上記の(−10、5、2)の例のように)X軸負方向に磁場中心から10cm離れた位置とするものの一例である。例えば、肩や手首などの撮像などでは、撮像領域Img1のように、X軸方向の−側に局在することがある。
【0080】
この場合、撮像領域Img1の中心位置を基準とした渦磁場成分を相殺するように、傾斜磁場Gx、Gy、Gzを補正することで、撮像領域Img1の中心では、渦磁場成分の影響をほぼ完全に除去しうる。撮像領域Img1の外縁の領域では、各渦磁場成分の振幅が撮像領域Img1の中心とは異なるため、完全には補正しきれないものの、1次成分のみに対して補正を行う従来技術よりも画質を改善できる。
【0081】
図8は、Y軸正方向に磁場中心から5cm離れた領域における、渦電流による生じる磁場の別の一成分のX軸方向強度分布の一例を図3と同様に示す模式図である。図8の横軸は、X軸方向の位置を示す。図8の縦軸は、渦電流による磁場のY成分の2次成分における、ある時定数τの磁場強度を示す。
【0082】
図8において斜線領域で示した撮像領域Img2は、一例として、X軸方向に−10cm〜10cmの範囲、Y軸方向に−10cm〜10cmの範囲、Z方向に−0.5cm〜0.5cmの範囲に亘る直方体状の撮像スラブであるものとする。即ち、撮像領域Img2は、その中心が装置座標系の原点(この例では磁場中心)に合致する。
【0083】
ここで、上記渦磁場成分の振幅については、撮像領域内の平均値により求めてもよい。撮像領域Img2を例に、X軸方向、Y軸方向に関して、渦磁場成分のズレを平均化する一例を説明する。
【0084】
例えば、渦磁場成分XY_Xは、図4の例では時定数50ミリ秒の1項だけであり、その振幅LXY_Xは、(2)式におけるpとして、撮像領域Img2のX座標値を代入することで計算できる。ここで、撮像領域Img2のX軸方向の一端から他端までを含むように、X座標値として−10,−9,…0,1,…9,10のように1cm刻みに21計測点を抽出する。そして、各計測点でLXY_Xを計算し、これを計測点数で平均化した平均振幅AVLXY_Xを計算する。ここで、図4の例では、A1=0,A3=0,A4=0であるから、平均振幅AVLXY_Xは、以下の(7)式のように計算できる。
【0085】
【数1】

【0086】
また、例えば、渦磁場成分XY_Yは、図5の例では時定数100ミリ秒の1項だけであり、その振幅LXY_Yは、(1)式におけるpとして、撮像スライスのY座標値を代入することで計算できる。上記同様に、撮像領域Img2のY軸方向の一端から他端までを含むように、Y座標値として−10,−9,…10のように1cm刻みに21計測点を抽出し、各計測点でLXY_Yを計算し、これを平均化した平均振幅AVLXY_Yを計算する。ここで、図5の例では、A1=0、A3=0、A4=0であるから、平均振幅AVLXY_Yは、以下の(8)式のように計算できる。
【0087】
【数2】

【0088】
他の渦磁場成分に関しても、同様にして平均振幅を計算できる。これにより、傾斜磁場分布の渦電流によるズレ量を画像全体として平均化できる。
また、マルチスライス撮像を行う場合、上記の傾斜磁場分布の補正は、各撮像スライス毎に補正を行うことが望ましい。
【0089】
図9は、頭部のマルチスライス撮像における撮像スライスの一例を示す模式図である。マルチスライス撮像では、ある撮像領域を選択すると共に当該撮像領域からMR信号を収集後、当該撮像領域の繰り返し時間(TR)が経過するまでの待ち時間の間に、周波数を変えたRFパルスを送信して別の撮像領域を選択すると共に当該別の撮像領域に励起パルスを印加してMR信号を収集する。このようにして、一のMR信号収集シーケンスの中で、異なる複数の撮像スライスのMR信号を収集する。
【0090】
図10は、図9の撮像スライスSL1〜SL7に対するマルチスライス撮像として、スピンエコー法のパルスシーケンスの一例を示す模式図である。図10において、Gssはスライス選択方向傾斜磁場、Gpeは位相エンコード方向傾斜磁場、Groは読み出し方向傾斜磁場、Sigは検出されるMR信号、RFは90°励起パルスおよび180°再収束パルスをそれぞれ示す。図9および図10の例では、撮像スライスSL1〜SL7からの各MR信号が、一のMR信号収集シーケンスで収集される。
【0091】
(本実施形態の動作説明)
図11は、MRI装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、前述の図1〜図10を適宜参照しながら、図11に示すステップ番号に従って、スピンエコー法によるマルチスライス撮像を例に、傾斜磁場分布の補正を含むMRI装置20の動作について説明する。
【0092】
[ステップS1]MPU86(図2参照)は、入力装置62を介して演算装置60に対して入力された入力情報等に基づいて、MRI装置20の初期設定を行う。ここでの「入力情報」とは、「撮像条件」の少なくとも一部を規定する入力を含む。「撮像条件」としては、例えば、フリップ角、繰り返し時間、スライス数、(位置的情報としての)撮像領域、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のステップ数、EPI(Echo Planar Imaging)やスピンエコー法などのパルスシーケンスの種類、などが挙げられる。
【0093】
ここでは一例として、この初期設定において、マルチスライス撮像の撮像条件が設定されるものとする。
【0094】
[ステップS2]MRI装置20は、プレスキャンを行うことで、どのような条件で撮像をするかを計算する。例えば、原子核スピンの縦磁化成分を90°倒すRFパルスとして必要なパワー(90°条件)や、RFパルスの中心周波数の計算などが行われる。
【0095】
[ステップS3]MPU86は、ステップS1での入力情報等に基づいて、アキシャル断面、コロナル断面、サジタル断面などの各位置決め画像の撮像領域を決定する。位置取得部100は、各位置決め画像の撮像領域を、撮像空間内での位置的な情報としてMPU86から取得して、これらを補正部102に入力する。
【0096】
ここでの「位置的な情報」は、撮像領域の中心位置、および、3次元的な範囲(撮像領域の3次元的な外縁)を装置座標系に従って規定するものである。例えば、撮像スラブとして厚みのある直方体状の撮像領域であれば、撮像領域の8つの頂点の装置座標系での座標位置を「位置的な情報」としてもよい。或いは、撮像スライスとしての撮像領域の場合、その中心座標と、スライス厚さと、断面方向と、スライスの縦横の寸法とをセットにした情報を「位置的な情報」としてもよい。
【0097】
ここでは一例として、補正部102は、位置決め画像の撮像領域の中心座標を基準にして、27種類の渦磁場成分に対して、渦磁場成分の振幅を時定数毎に全て計算する。これらの振幅は、補正部102に予め記憶された(1)式、(2)式、および、これら2式のA1〜A4等の各パラメータ値を用いることで(図4〜図6参照)、前述の手法で計算する。なお、渦磁場成分の振幅については、(7)式、(8)式を用いて前述したように、撮像領域の一端側から他端側までの複数の座標位置で平均化した値として算出してもよい。
【0098】
次に、補正部102は、目標とする傾斜磁場分布(目標分布)が得られるように、前述の手法で傾斜磁場コイル26への供給電流値を算出して、これをMPU86に入力する。ここでの傾斜磁場コイル26への供給電流値とは、例えば、目標とする傾斜磁場分布から全渦磁場成分を差し引いた傾斜磁場分布を与えるように傾斜磁場コイル26への供給電流値を補正したものである。
【0099】
[ステップS4]MPU86は、上記のように算出された傾斜磁場コイル26への供給電流値を含めて、位置決め画像のMR信号収集用のシーケンスをシーケンスコントローラ56に入力する。そして、位置決め画像が生成される。
【0100】
具体的には、MPU86は、パルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ56に入力する。また、静磁場電源40により励磁された静磁場磁石22によってガントリ内の撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源42からシムコイル24に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
【0101】
シーケンスコントローラ56は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることで、被検体Hの撮像対象部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイル28からRF信号を発生させる。このとき、X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zへの供給電流値は、前述のように補正されたものである。このため、前述のように撮像領域の位置および渦電流磁場の時定数に応じて、渦電流磁場が相殺されるように傾斜磁場波形が変形される。即ち、撮像領域において、ほぼ目標とする傾斜磁場分布が形成される。
【0102】
そして、被検体Hの内部の核磁気共鳴により生じたMR信号がRFコイル28により受信されて、RF受信器48により検出される。RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理を施した後、これをA/D変換することで、デジタル化したMR信号である生データを生成する。RF受信器48は、生成した生データをシーケンスコントローラ56に入力する。シーケンスコントローラ56は、生データを画像再構成部90に入力し、画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間において、生データをk空間データとして配置する。
【0103】
画像再構成部90は、k空間データベース92からk空間データを取り込み、これにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース94に保存する。
【0104】
画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置66に保存する。
【0105】
[ステップS5]表示制御部98は、MPU86の指令に従って表示装置64のモニタ上に位置決め画像を表示させる。この表示画像に基づいて、入力装置62を介して演算装置60に対して撮像領域等を設定する情報が(ユーザにより)入力される。
【0106】
具体的には、例えば、位置決め画像上で撮像領域の2次元的な範囲が長方形の枠によって入力設定される。また、例えば、撮像領域の厚さが入力装置62を介して入力設定される。
【0107】
MPU86は、ここでの入力された条件を取得することで、複数の撮像スライスの範囲および中心位置を、例えば装置座標系に基づいて3次元的に算出し、撮像空間内での「位置的な情報」として記憶する。なお、これは一例にすぎず、「位置的な情報」については、2次元的に算出してもよい。前述のように、撮像スライスとしての撮像領域の場合、その中心座標と、スライス厚さと、断面方向と、スライスの縦横の寸法とをセットにした情報を「位置的な情報」としてもよい。
ここでは一例として、図9に示すスライスSL1〜SL7等が撮像領域として設定される。
【0108】
[ステップS6]位置取得部100は、MPU86から各撮像スライスの位置および3次元的範囲を規定する「位置的な情報」を取得して、これらを補正部102に入力する。
【0109】
補正部100は、ステップS3と同様にして、27の渦磁場成分の時定数毎の振幅を撮像スライス毎に計算する。ここでの振幅は、各撮像スライスの中心座標を基準に算出してもよいし、(7)式および(8)式で前述したように撮像スライス内で平均した値として算出してもよい。次に、補正部102は、ステップS3と同様に、目標とする傾斜磁場分布が得られるように傾斜磁場コイル26への供給電流値を算出して、MPU86に入力する。
【0110】
[ステップS7]ステップS6までに設定されたマルチスライス撮像のシーケンスの下で、設定された撮像領域(撮像スライスSL1〜SL7等)からMR信号が収集される。
【0111】
具体的には、MPU86はマルチスライス撮像のパルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ56に入力し、位置決め画像の撮像時と同様に静磁場が形成されて均一化される。シーケンスコントローラ56は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることで、撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイル28からRF信号を発生させる。
【0112】
具体的には例えば、第1の位相エンコードのMR信号収集では、スライスSL1の繰り返し時間TRの間に、撮像スライスSL1〜SL7の7スライス分のMR信号が収集される(図10参照)。このとき、傾斜磁場コイル26への供給電流の補正値は、ステップS6において各撮像スライスSL1〜SL7毎に算出済であるため、各撮像スライスSL1〜SL7毎に前述した傾斜磁場の補正が行われ、どの撮像スライスのMR信号も、目標とする傾斜磁場分布の下で収集される。ここでの傾斜磁場とは、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、読み出し方向傾斜磁場Groである。
【0113】
第1の位相エンコードのMR信号の収集が終了すると、スライスSL1から順にスライスSL7までの第2の位相エンコードのMR信号の収集が同様にして実行される。このようにして、繰り返し時間TRの時間間隔で位相エンコードを1ステップずつ増加させながら、位相エンコード方向のステップ数だけ、MR信号の収集を繰り返す。
【0114】
そして、位置決め画像の場合と同様に、RFコイル28により受信されたMR信号から生データが生成され、k空間データベース92に形成されたk空間に生データがk空間データとして配置される。
【0115】
[ステップS8]画像再構成部90は、k空間データベース92からk空間データを取り込み、これにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで全ての撮像スライスの画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース94に保存する。
【0116】
画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置66に保存する。表示制御部98は、MPU86の指令に従って、表示装置64のモニタ上に表示用画像データをMR画像として表示させる。
以上が本実施形態のMRI装置20の動作説明である。
【0117】
(本実施形態の効果)
このように本実施形態では、撮像領域(の位置)に応じて、1次成分のみならず2次以上の成分も加味して渦磁場成分の振幅を時定数毎に算出する。そして、渦電流磁場が相殺されるように傾斜磁場コイル26への供給電流を補正することで、傾斜磁場波形を変形させるため、ほぼ目標とする傾斜磁場分布(目標分布)を得ることができる。このため、傾斜磁場分布の歪みを起因とする画質劣化を改善できる。
【0118】
撮像領域の中心が磁場中心と合致する場合には、一般に傾斜磁場分布の歪みを起因とする画質劣化は相対的に小さいが、本実施形態では撮像スライスの位置に応じて、撮像スライス毎に傾斜磁場コイル26への供給電流を補正する。このため、撮像スライスが磁場中心から離れている場合にも、ほぼ目標とする傾斜磁場分布を得ることで、傾斜磁場分布の歪みを起因とする画質劣化を改善できる。
【0119】
また、マルチスライス撮像では、各撮像スライスの位置に基づいて、時定数毎の渦磁場成分の振幅の算出と、この算出結果に基づく傾斜磁場コイル26への供給電流の補正とを撮像スライス毎に行う。従って、マルチスライス撮像においても、目標とする傾斜磁場分布の下で各撮像スライスのMR信号を収集できるので、画質劣化を改善することができる。
【0120】
即ち、以上説明した実施形態によれば、MRIにおいて渦電流による磁場成分を簡便に補償することで、画質を改善できる。
【0121】
図12は、渦磁場成分に基づく傾斜磁場の補正を行わずに、ファントムを撮像したサジタル断面像の一例を示す図である。このファントムは、略円形であり、その中央に黒いリング状の低信号領域(水素原子が殆どない領域)を有する。
【0122】
図13は、本実施形態の手法で傾斜磁場分布の補正を行って、図12と同一のファントムを撮像したサジタル断面像の一例を示す図である。図12も、図13も、FSE(Fast Spin Echo)法によってXオフセンターで撮像した画像である。画像の横方向がY軸方向である。図12において、画像中心から左側にかけて、黒いリング状の領域を跨るようにやや黒くなった部分が画像の劣化部分である。これは、FSE法のCPMG(Carr−Purcell Meiboom−Gill Sequence)条件のずれによる感度むらである。図13において、画像中心から左側にかけての領域に着目すると、上記の画像の劣化部分が綺麗に写っていることが確認できる。
【0123】
(本実施形態の補足事項)
[1]本実施形態では、(1)式、(2)式、および、図4〜図6に基づいて渦磁場成分の振幅を4次まで考慮して算出する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。(1)式、(2)式、および、図4〜図6は、渦磁場成分の振幅の算出方法の一例にすぎず、他の計算方法を用いてもよい。また、5次以上の成分を考慮する計算方法としてもよい。
【0124】
また、磁場中心が装置座標系の原点に位置するものとしたが、これは一例にすぎない。磁場中心と、装置座標系の原点とが合致しない構成であっても、本実施形態の手法は適用可能である。
【0125】
[2]図9〜図11では、スピンエコー法によるマルチスライス撮像を例に、傾斜磁場分布の補正を含むMRI装置20の動作を説明したが、本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。MR信号収集シーケンスについては、フィールドエコー法などの他の手法によるマルチスライス撮像でもよい。或いは、マルチスライス撮像ではなく、オブリーク撮像などの他の撮像シーケンスでもよい。
【0126】
[3]MRI装置20として、静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイルユニット26、RFコイル28が含まれるガントリの外にRF受信器48が存在する例を述べた(図1参照)。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。RF受信器48がガントリ内に含まれる態様でもよい。
【0127】
具体的には例えば、RF受信器48に相当する電子回路基盤をガントリ内に配設する。そして、受信用RFコイルによって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号を、当該電子回路基盤内のプリアンプによって増幅し、デジタル信号としてガントリ外に出力し、シーケンスコントローラ56に入力してもよい。ガントリ外への出力に際しては、例えば光通信ケーブルを用いて光デジタル信号として送信すれば、外部ノイズの影響が軽減されるので、望ましい。
【0128】
[4]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
【0129】
静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御装置30の全体(図1参照)が、傾斜磁場およびRFパルスの印加を伴った撮像により被検体HからMR信号を収集する機能は、請求項記載の信号収集部の一例である。
【0130】
収集されたMR信号に基づいて被検体Hの画像データを生成する画像再構成部90、画像データベース94、画像処理部96(図2参照)の機能は、請求項記載の画像生成部の一例である。
【0131】
[5]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0132】
20 MRI装置
22 静磁場磁石
24 シムコイル
26 傾斜磁場コイル
26x X軸傾斜磁場コイル
26y Y軸傾斜磁場コイル
26z Z軸傾斜磁場コイル
28 RFコイル
30 制御装置
32 寝台
40 静磁場電源
42 シムコイル電源
44 傾斜磁場電源
44x X軸傾斜磁場電源
44y Y軸傾斜磁場電源
44z Z軸傾斜磁場電源
46 RF送信器
48 RF受信器
50 寝台駆動装置
56 シーケンスコントローラ
58 コンピュータ
60 演算装置
62 入力装置
64 表示装置
66 記憶装置
86 MPU
88 システムバス
90 画像再構成部
92 k空間データベース
94 画像データベース
96 画像処理部
98 表示制御部
100 位置取得部
102 補正部
H 被検体
Img1、Img2 撮像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が置かれる撮像空間内で傾斜磁場およびRFパルスを印加することで前記被検体から発せられる磁気共鳴信号を収集する信号収集部と、前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の画像データを再構成する画像生成部とを備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像空間内での位置的な情報として撮像領域を取得する位置取得部と、
前記傾斜磁場の印加に伴って発生する渦電流による磁場である渦電流磁場が相殺されるように、前記位置的な情報および前記渦電流磁場の時定数に基づいて前記傾斜磁場の波形を変形することで、発生する前記傾斜磁場の分布を目標分布に近づける補正部と
を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
静磁場を発生させる静磁場磁石と、供給される電流に応じた前記傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルとをさらに備え、
前記補正部は、前記傾斜磁場コイルと前記静磁場磁石との相対的位置関係と、前記傾斜磁場コイルの形状および材質とに基づいた値として前記渦電流磁場の時定数を予め記憶し、この時定数に応じて前記傾斜磁場の波形を変形する
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
供給される電流に応じた前記傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルをさらに備え、
前記補正部は、前記信号収集部が前記傾斜磁場コイルに供給する電流を補正することで、前記傾斜磁場の波形を変形する
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記補正部は、前記位置的な情報から得られる前記撮像領域と磁場中心との距離に応じて、前記渦電流磁場の装置座標系X軸方向成分の振幅と、前記渦電流磁場の装置座標系Y軸方向成分の振幅と、前記渦電流磁場の装置座標系Z軸方向成分の振幅とを前記傾斜磁場の印加方向毎にそれぞれ算出する演算処理を行い、前記演算処理の結果に基づいて前記傾斜磁場コイルへの供給電流を補正する
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記補正部は、前記信号収集部が前記傾斜磁場コイルに供給する電流値を、前記渦電流磁場の時定数に応じて時間変化させることで、前記傾斜磁場の分布を前記目標分布に近づけることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記補正部は、前記位置的な情報に基づいて前記撮像領域の中心位置を取得し、前記中心位置と前記磁場中心との距離に応じて前記演算処理を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記補正部は、前記信号収集部が前記傾斜磁場コイルに供給する電流値を、前記渦電流磁場の時定数に応じて時間変化させることで、前記傾斜磁場の分布を前記目標分布に近づけることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記信号収集部は、複数の画像にそれぞれ対応する複数の前記撮像領域から前記磁気共鳴信号を収集するように構成され、
前記位置取得部は、複数セットの前記位置的な情報として、複数の前記撮像領域を取得するように構成され、
前記補正部は、前記傾斜磁場コイルへの供給電流を各々の前記撮像領域毎に補正するように構成される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記補正部は、前記撮像領域内の複数の位置における前記磁場中心との各距離を用いることで、前記渦電流磁場の装置座標系X軸方向成分、装置座標系Y軸方向成分、装置座標系Z軸方向成分の各振幅の算出結果が前記撮像領域の幅に亘って平均された値となるように前記演算処理を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項9記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記補正部は、前記信号収集部が前記傾斜磁場コイルに供給する電流値を、前記渦電流磁場の時定数に応じて時間変化させることで、前記傾斜磁場の分布を前記目標分布に近づけることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項9記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記信号収集部は、複数の画像にそれぞれ対応する複数の前記撮像領域から前記磁気共鳴信号を収集するように構成され、
前記位置取得部は、複数セットの前記位置的な情報として、複数の前記撮像領域を取得するように構成され、
前記補正部は、前記傾斜磁場コイルへの供給電流を各々の前記撮像領域毎に補正するように構成される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記信号収集部は、複数の画像にそれぞれ対応する複数の前記撮像領域から前記磁気共鳴信号を収集するように構成され、
前記位置取得部は、複数セットの前記位置的な情報として、複数の前記撮像領域を取得するように構成され、
前記補正部は、前記傾斜磁場コイルへの供給電流を各々の前記撮像領域毎に補正するように構成される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記信号収集部は、マルチスライス撮像として、ある撮像領域を選択励起する前記傾斜磁場および前記RFパルスを印加することで当該撮像領域から前記磁気共鳴信号を収集すると共に、当該撮像領域での繰り返し時間が経過するまでの間に別の撮像領域を選択励起する前記傾斜磁場および前記RFパルスを印加することで前記別の撮像領域から前記磁気共鳴信号を収集し、
前記位置取得部は、前記マルチスライス撮像によって選択励起される各々の撮像領域を前記位置的な情報とし、
前記補正部は、前記渦電流磁場の装置座標系X軸方向成分の振幅と、前記渦電流磁場の装置座標系Y軸方向成分の振幅と、前記渦電流磁場の装置座標系Z軸方向成分の振幅とを各々の撮像領域毎に算出し、算出結果に基づいて前記傾斜磁場コイルへの供給電流を各々の撮像領域毎に補正する
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記補正部は、前記信号収集部が前記傾斜磁場コイルに供給する電流値を、前記渦電流磁場の時定数に応じて時間変化させることで、前記傾斜磁場の分布を前記目標分布に近づけることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記位置的な情報は、前記撮像領域の3次元的な範囲を規定する情報であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記位置的な情報は、前記撮像領域の外縁の各頂点の装置座標系での座標位置であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記位置的な情報は、前記撮像領域の中心座標、スライス厚さ、断面方向、スライスの縦横の寸法をセットにした情報であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
傾斜磁場コイルに電流を供給することで被検体が置かれる撮像空間内で傾斜磁場を印加し、前記傾斜磁場を伴って前記被検体の磁気共鳴イメージングを実行する磁気共鳴イメージング装置の制御装置であって、
前記撮像空間内での位置的な情報として、前記磁気共鳴イメージングの撮像領域を取得する位置取得部と、
前記傾斜磁場の印加に伴って発生する渦電流による磁場である渦電流磁場が相殺されるように、前記位置的な情報および前記渦電流磁場の時定数に基づいて前記傾斜磁場の波形を変形することで、発生する前記傾斜磁場の分布を目標分布に近づける補正部と
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項19】
被検体が置かれる撮像空間内での位置的な情報として、磁気共鳴イメージングの撮像領域を取得する取得ステップと、
前記傾斜磁場の印加に伴って発生する渦電流による磁場である渦電流磁場が相殺されるように、前記位置的な情報および前記渦電流磁場の時定数に基づいて前記傾斜磁場の波形を変形することで、発生する前記傾斜磁場の分布を目標分布に近づける補正ステップと、
前記補正ステップにより変形された前記傾斜磁場と、RFパルスとを前記撮像空間内で印加することで、前記被検体から発せられる磁気共鳴信号を収集する収集ステップと、
前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の画像データを再構成する再構成ステップと
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−40362(P2012−40362A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144834(P2011−144834)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】