説明

磁気共鳴イメージング装置およびプログラム

【課題】画像のブラーリングを低減することを提供する。
【解決手段】k空間の円の領域Rcを円周方向CDに4分割し、4個の領域R〜Rを規定する。そして、各領域R〜RのデータD〜Dを逆フーリエ変換し、画像データDI〜DIを得る。画像データDI〜DIを得た後、画像データDI〜DIの各ピクセルを、x方向にΔx〜Δx、y方向にΔy〜Δyだけシフトさせ、画像データDI′〜DI′を得る。画像データDI′〜DI′を得た後、これらの複素和を求め、最終画像データDIを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラルスキャンによって被検体を撮影する磁気共鳴イメージング装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、k空間のデータを螺旋状に埋めるスパイラルスキャンが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-279391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スパイラルスキャンの問題点の一つに、磁場不均一、感受率不均一、および共鳴周波数オフセットによって発生するブラーリング(blurring)がある。一般的に、ブラーリングは、データ取得時間Tacqに比例して増加する。データ取得時間Tacqは、例えば、以下の式(1)で表される(参考文献:Handbook
of MRI Pulse Sequence,Berstein,King,Zhou (2004,Elsevier))。

acq=(2π*L/3N)*(π/(γ*S*Δx))0・5 ・・・(1)

ここで、LはFOV、Nはアーム(arm)数、Sはスルーレートリミット(Slew
Rate limit)、Δxはピクセルサイズである。
【0005】
ブラーリングはデータ取得時間Tacqに比例して増加するので、ブラーリングを低減させるには、データ取得時間Tacqを小さくすればよい。データ取得時間Tacqは、式(1)で表されるので、式(1)の右辺に含まれるLを小さくしたり、Δxを大きくすれば、データ取得時間Tacqを小さくすることができる。しかし、Lを小さくすると、折り返しが発生しやすいという問題があり、Δxを大きくすると、空間分解能が低下してしまうという問題がある。つまり、データ取得時間Tacqを小さくしようとすると、折り返しの発生や空間分解能の低下を伴う恐れがある。
そこで、ブラーリングを低減させる方法として、データ取得時間Tacqを小さくするのではなく、k空間を輪状領域に分割して各輪状領域のデータを補正する時分割補正(time-segmented
correction)を行う方法が知られている。しかし、上記の時分割補正では、データ取得時間Tacqが長くなると、k空間の分割数を増加させる必要があるので、逆フーリエ変換を実行する回数が増加し、画像を再構成するために必要な時間が長くなるという問題がある。したがって、画像の再構成を、できるだけ短時間で行うことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、k空間の原点から螺旋状にスキャンするスパイラルスキャンによって被検体を撮影する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記k空間に、前記k空間の中心から前記k空間の周辺部に向かって広がるn個の領域を規定し、前記n個の領域のデータを実空間のデータに変換することにより、n個の画像データを得る変換手段と、
実空間上の各位置における磁気共鳴信号の中心周波数のずれと、前記n個の領域の各々の方位角とに基づいて、前記変換手段により得られたn個の画像データのピクセルをシフトするシフト手段と、
前記ピクセルがシフトされたn個の画像データに基づいて、前記被検体の最終画像データを作成する最終画像データ作成手段と、
を有する磁気共鳴イメージング装置である。
【0007】
本発明の第2の態様は、k空間の原点から螺旋状にスキャンするスパイラルスキャンによって被検体を撮影する磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記k空間に、前記k空間の中心から前記k空間の周辺部に向かって広がるn個の領域を規定し、前記n個の領域のデータを実空間のデータに変換することにより、n個の画像データを得る変換処理と、
実空間上の各位置における磁気共鳴信号の中心周波数のずれと、前記n個の領域の各々の方位角とに基づいて、前記変換処理により得られたn個の画像データのピクセルをシフトするシフト処理と、
前記ピクセルがシフトされたn個の画像データに基づいて、前記被検体の最終画像データを作成する最終画像データ作成処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
画像のブラーリングを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
【図2】ブラーリングを低減できる原理の説明図である。
【図3】、k空間にn個の領域R〜Rを規定しない場合のPSFの絶対値のシミュレーション結果を示す図である。
【図4】k空間に規定した領域を説明する図である。
【図5】第1象限の領域RのデータDのみを逆フーリエ変換したときのPSFの絶対値のシミュレーション結果を示す図である。
【図6】方位角θの値と、ΔxおよびΔyの値とを示す図である。
【図7】シミュレーション結果を示す図である。
【図8】被検体12を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
【図9】MRI装置の動作フローの一例を示す図である。
【図10】イメージングスキャンSC2により収集されるk空間のデータを示す図である。
【図11】ステップST3〜ST5の説明図である。
【図12】k空間の全領域のデータを収集し、4個の領域R〜Rを規定したときの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施するための形態について説明するが、発明を実施するための形態は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))装置100は、磁場発生装置2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0012】
磁場発生装置2は、被検体12が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0013】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、ボア21に移動できるように構成されている。クレードル31によって、被検体12はボア21に搬送される。
【0014】
受信コイル4は、被検体12の腹部から胸部に渡って取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0015】
MRI装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0016】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、スキャンを実行するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0017】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0018】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0019】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号に所定の信号処理を施し、信号処理により得られたデータを中央処理装置9に出力する。
【0020】
中央処理装置9は、シーケンサ5や表示部11などに必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、算出手段91、変換手段92、シフト手段93、最終画像データ作成手段94などを有している。
【0021】
算出手段91は、後述する式(4A)および(4B)に含まれる中心周波数のずれΔω(x,y)を算出する。
【0022】
変換手段92は、k空間に、k空間の中心からk空間の周辺部に向かって広がるn個の領域R〜Rを規定し、n個の領域R〜Rのデータを実空間のデータに変換することにより、n個の画像データを得る。
【0023】
シフト手段93は、中心周波数のずれΔω(x,y)と、n個の領域R〜Rの各々の方位角θ〜θとに基づいて、変換手段92により得られたn個の画像データDI〜DIのピクセルをシフトする。
【0024】
最終画像データ作成手段94は、ピクセルがシフトされたn個の画像データDI′〜DI′に基づいて、最終画像データを作成する。
【0025】
中央処理装置9は、算出手段91、変換手段92、シフト手段93、最終画像データ作成手段94の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。中央処理装置9は、課題を解決するための手段に記載された計算機の一例である。
【0026】
操作部10は、オペレータ13により操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
【0027】
MRI装置100は、上記のように構成されている。本形態では、k空間の原点から螺旋状にスキャンするスパイラルスキャンを用いて被検体12を撮影する場合に、ブラーリングが低減された画像を取得することができる。以下に、本形態において、ブラーリングを低減できる原理について説明する。
【0028】
図2は、ブラーリングを低減できる原理の説明図である。
図2(a)は、k空間にn個の領域を規定したときの様子を示す図である。
先ず、k空間に円の領域Rcを考え、この円の領域Rcにデータが配置されるとする。そして、円の領域Rcを円周方向CDにn分割し、k空間の中心から周辺部に向かって広がるn個の領域R(i=1〜n)を規定する。各領域Rは扇形状を有しており、各領域Rの頂角は、αとする。次に、各領域Rの方位角θを考える(図2(b1)〜(bn)参照)。
【0029】
図2(b1)〜(bn)は、各領域Rの方位角θを示す図である。
本形態では、kx軸を基準にして、各領域Rの方位角θが規定されている。例えば、領域Rの方位角はθであり(図2(b1)参照)、領域Rの方位角はθであり(図2(b2)参照)、領域Rの方位角はθである(図2(bn)参照)。尚、各領域Rの頂角αは十分に小さく、各領域R内のデータDは、方位角θのデータと見なすことができるとする。
【0030】
スパイラルスキャンによるk空間上のデータの取得タイミングは、最大スルーレートが一定の時には、k空間の原点Oからの距離kにほぼ比例する。この場合、実空間上の位置(x,y)における磁気共鳴信号の中心周波数のずれをΔω(x,y)とすると、k空間上の領域R内では、中心周波数のずれΔω(x,y)による位相のずれPDは、以下の式で表すことができる。

PD=c・Δω(x,y)・k
=c・Δω(x,y)・(kcosθ+ksinθ) ・・・(2)

cは、比例係数である。また、c・Δω(x,y)は、画像の広がり具合をピクセル数で表す指標である。位相のずれPDに、逆フーリエ変換(IFFT)のカーネルの位相PKを加えると、以下の式(3)が得られる。

PD+PK
=−k{x−c・Δω(x,y)・cosθ}−k{y−c・Δω(x,y)・sinθ
=−k(x+Δx)−k(y+Δy) ・・・(3)

ただし、
Δx=−c・Δω(x,y)・cosθ・・・(4A)
Δy=−c・Δω(x,y)・sinθ・・・(4B)
【0031】
式(3)を参照すると、第1項に、「Δx」が含まれており、第2項に「Δy」が含まれている。したがって、k空間上の各領域R内のデータDを逆フーリエ変換(IFFT)した場合、この逆フーリエ変換により得られる画像データDI(図2(c1)〜(cn)参照)は、x方向にΔxの位置ずれが発生し、y方向にΔyの位置ずれが発生することになる。そこで、本形態では、この位置ずれを補正するために、画像データDIの各ピクセルを、x方向およびy方向にそれぞれΔxおよびΔyだけシフトする(図2(d1)〜(dn)参照)。
【0032】
図2(d1)〜(dn)は、画像データDIの各ピクセルを、x方向およびy方向にそれぞれΔxおよびΔyだけシフトした後の様子を示す図である。
【0033】
ピクセルをシフトさせることによって、画像データDI′が得られる。画像データDI′は、画像データDIに対して、ピクセルがΔxおよびΔyだけシフトしているので、ピクセルの位置ずれを補正することができる。例えば、i=1、つまり、画像データDI(図2(c1)参照)について考えると、x方向にΔxの位置ずれが発生し、y方向にΔyの位置ずれが発生することになる。しかし、画像データDIの各ピクセルを、x方向およびy方向にそれぞれΔxおよびΔyだけシフトすることにより、ピクセルがシフトされた画像データDI′(図2(d1)参照)が得られる。したがって、ピクセルの位置ずれを補正することができる。
【0034】
同様に、他の画像データDI〜DI(図2(c2)〜(cn)参照)について考えると、それぞれ、x方向にΔx〜Δxの位置ずれが発生し、y方向にΔy〜Δyの位置ずれが発生することになる。しかし、画像データDI〜DIについても、ピクセルがシフトされた画像データDI′〜DI′(図2(d2)〜(dn)参照)を求めることによって、ピクセルの位置ずれを補正することができる。
【0035】
上記のようにして得られたn個の画像データDI′〜DI′の複素和を求めることによって、中心周波数のずれΔω(x,y)によるアーチファクトが低減された撮影部位の最終画像データDI(図2(e)参照)を得ることができる。
【0036】
尚、上記の説明では、領域R〜Rは扇形状を有しているが、領域R〜Rは必ずしも扇形状である必要はなく、例えば、三角形でもよい。また、領域R〜Rの形状は互いに異なっていてもよいし、領域R〜Rの面積も互いに異なっていてよい。
【0037】
次に、本形態の方法によってアーチファクトがどの程度低減できるかを検証するため、k空間にn個の領域R〜Rを規定しない場合と、k空間にn個の領域R〜Rを規定した場合に分けて、画像の広がり具合を表すPSF(Point
Spread Function)のシミュレーションを行った。以下に、シミュレーション結果について説明する。
【0038】
図3は、k空間にn個の領域R〜Rを規定しない場合のPSFの絶対値のシミュレーション結果を示す図である。
【0039】
図3(a)は、c・Δω(x,y)=0[ピクセル]の場合のシミュレーション結果である。図3(a)のPSFは、理想的な離散δ関数になっている。
【0040】
図3(b)は、c・Δω(x,y)=2[ピクセル]の場合のシミュレーション結果である。図3(b)のPSFは、全方向に2ピクセル程度の広がりを持っている。したがって、c・Δω(x,y)=2[ピクセル]の場合、数ピクセル程度のブラーリングを含む画像が得られると考えられる。
【0041】
次に、k空間にn個の領域R〜Rを規定した場合のPSFのシミュレーション結果について、図4〜図7を参照しながら説明する。
【0042】
図4は、k空間に規定した領域を説明する図である。
シミュレーションでは、k空間に、第1象限〜第4象限ごとに、領域R〜Rを規定した。そして、第1象限の領域RのデータDのみを逆フーリエ変換したときのPSFの絶対値をシミュレーションにより求めた。以下に、シミュレーション結果を示す(図5参照)。
【0043】
図5は、第1象限の領域RのデータDのみを逆フーリエ変換したときのPSFの絶対値のシミュレーション結果を示す図である。
【0044】
図5(a)は、c・Δω(x,y)=0[ピクセル]の場合のシミュレーション結果である。図5(a)では、k空間の第1象限の領域RのデータDのみをIFFTしているので、図5(a)と図3(a)とを比較すると、図5(a)のPSFの絶対値は、図3(a)のPSFの絶対値よりも、分解能が半減していることがわかる。
【0045】
図5(b)は、c・Δω(x,y)=2[ピクセル]の場合のシミュレーション結果である。図5(b)のPSFの絶対値は、図5(a)のPSFの絶対値に対して、45°方向に2ピクセルだけシフトしたものにほぼ等しくなっている。したがって、k空間の第1象限の領域RのデータDに対する方位角θ(図4参照)としては、θ=π/4が適切であることがわかる。c・Δω(x,y)=2[ピクセル]およびθ=π/4を式(4A)および(4B)に代入すると、ΔxおよびΔyは、以下の値となる。
Δx=Δy=−2/√2 ・・・(5)
【0046】
第1象限の領域Rと同様に、第2象限の領域R、第3象限の領域R、および第4象限の領域Rについてもシミュレーションを行うと、方位角θ、θ、およびθは、それぞれ、θ=3π/4、θ=5π/4、およびθ=7π/4が適切であることがわかる。したがって、θ=3π/4、θ=5π/4、およびθ=7π/4を、式(4A)および(4B)に代入することによって、方位角の値に応じたΔxおよびΔyを求めることができる。以下に、第1象限の領域R〜第4象限の領域Rについて、方位角θの値と、ΔxおよびΔyの値とを図6にまとめて示す。
【0047】
次に、第1象限の領域R〜第4象限の領域RのデータD〜Dを、図6に示す方位角θのデータと見なして逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換により得られた画像データを、図6に示すΔxおよびΔyだけシフトさせて複素和をとったときのPSFの絶対値をシミュレーションにより求めた。シミュレーション結果を図7に示す。
【0048】
図7(a)は、c・Δω(x,y)=0[ピクセル]の場合のシミュレーション結果である。したがって、図7(a)のPSFの絶対値は、図3(a)のPSFの絶対値と同様に、理想的な離散δ関数になっている。
【0049】
図7(b)は、c・Δω(x,y)=2[ピクセル]の場合のシミュレーション結果である。図7(a)と図7(b)とを比較すると、図7(b)のPSFの絶対値は、図7(a)のPSFの絶対値とほぼ同じであり、PSFの広がりがほとんどキャンセルされていることが分かる。
【0050】
上記のシミュレーション結果から、k空間に規定する領域の数が4個であっても(図4参照)、ブラーリングを十分に低減できることが分かる。
次に、被検体12を撮影するときに実行されるスキャンについて説明する。
【0051】
図8は、被検体12を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
本形態では、2つのスキャンSC1およびSC2が実行される。
【0052】
ずれ算出用スキャンSC1は、式(4A)および(4B)に含まれる中心周波数のずれΔω(x,y)を算出するために実行されるスキャンである。イメージングスキャンSC2は、被検体12の撮影部位をイメージングするために実行されるスキャンである。本形態では、ずれ算出用スキャンSC1およびイメージングスキャンSC2により収集されたデータに基づいて、被検体12の画像データを作成している。以下に、被検体12の画像データを作成するときのフローについて説明する。
【0053】
図9は、MRI装置の動作フローの一例を示す図である。
ステップST1では、中心周波数のずれΔω(x,y)を算出するためのずれ算出用スキャンSC1(図8参照)を実行する。ずれ算出用スキャンSC1は、例えば、デュアルエコー(Dual
Echo)法を用いたスキャンである。ずれ算出用スキャンSC1を実行することにより被検体12から発生した磁気共鳴信号は、受信コイル4で受信され、受信器8に出力される。受信器8は、受け取った磁気共鳴信号に対して所定の信号処理をし、信号処理により得られたデータを、中央処理装置9に出力する。
【0054】
中央処理装置9では、算出手段91(図1参照)が、受信器8から受け取ったデータに基づいて、中心周波数のずれΔω(x,y)を算出する。このようにして、式(4A)および(4B)に含まれるΔω(x,y)を得ることができる。ずれ算出用スキャンSC1を実行した後、ステップST2に進む。
【0055】
ステップST2では、イメージングスキャンSC2(図8参照)が実行され、k空間のデータが収集される(図10参照)。
【0056】
図10は、イメージングスキャンSC2により収集されるk空間のデータを示す図である。
【0057】
イメージングスキャンSC2は、k空間の原点Oから出発して、k空間を螺旋状に埋めていくスパイラルスキャンである。イメージングスキャンSC2によって、k空間の原点Oを中心とした円の領域Rcのデータが収集される。尚、ここでは、円の領域Rcのデータを収集しているが、円の領域Rcとは異なる形状の領域のデータを収集してもよいし、k空間の全領域のデータを収集してもよい。
【0058】
イメージングスキャンSC2を実行した後、ステップST3〜ST5を実行する。ステップST3〜ST5の説明にあたっては、図11を参照しながら説明する。
【0059】
図11は、ステップST3〜ST5の説明図である。
ステップST3では、変換手段92(図1参照)が、k空間の円の領域Rc(図10参照)をn分割し、n個の領域を規定する。ここでは、円の領域Rcを各象限に従って4分割し、4個の領域を規定する。図11(a)には、k空間に規定された4個の領域R〜Rが示されている。4個の領域R〜Rは、k空間の原点Oから周辺部に向かって広がる扇形状の領域である。図11(b1)〜(b4)には、k空間の4個の領域R〜Rが、各領域R〜Rごとに分けて示されている。尚、ここでは、各領域R〜Rの方位角θ〜θは、図6に示されている値であるとする。
【0060】
変換手段92は、各領域R〜RのデータD〜Dを逆フーリエ変換し、実空間のデータに変換する。したがって、各領域R〜RのデータD〜Dから、画像データDI〜DI(図11(c1)〜(c4)参照)を得ることができる。逆フーリエ変換した後、ステップST4に進む。
【0061】
ステップST4では、シフト手段93(図1参照)が、画像データDI〜DIの各ピクセルをシフトさせる。以下に、各ピクセルをシフトさせる手順について説明する。
【0062】
シフト手段93は、先ず、式(4A)のおよび(4B)に従って、Δx〜ΔxおよびΔy〜Δyを求める。式(4A)および(4B)において、cは予め決められた比例係数であり、Δω(x,y)は、ステップST1で求められており、θは、図6に示されている値である。したがって、シフト手段93は、式(4A)および(4B)に従って、Δx〜ΔxおよびΔy〜Δyを求めることができる。Δx〜Δxは、画像データDI〜DIの各ピクセルのx方向のシフト量を表しており、Δy〜Δyは、画像データDI〜DIの各ピクセルのy方向のシフト量を表している。
【0063】
次に、シフト手段93は、画像データDI〜DIの各ピクセルを、x方向にΔx〜Δxだけシフトさせ、y方向にΔy〜Δyだけシフトさせる。したがって、図11(d1)〜(d4)に示すように、ピクセルをシフトさせた後の画像データDI′〜DI′が得られる。画像データDI′〜DI′を得た後、ステップST5に進む。
【0064】
ステップST5では、最終画像データ作成手段94(図1参照)が、画像データDI′〜DI′の複素和を求める。これによって、図10(e)に示すように、最終画像データDIが得られる。
【0065】
本形態では、中心周波数のずれΔω(x,y)に基づいて、画像データの各ピクセルをシフトさせている。したがって、ピクセルの位置を補正することができるので、画像のブラーリングを低減することができる。
【0066】
また、本形態のやり方によれば、データ取得時間Tacq(式(1)参照)が長くなっても、k空間に規定するn個の領域R〜Rの数を増加させる必要がないので、IFFTの回数を増やす必要がない。したがって、従来の時分割法と比較して、画像の再構成に必要な時間が短くて済むという効果がある。
【0067】
尚、上記の説明では、k空間の中の円の領域Rcについてのみデータを収集し、4個の領域R〜Rを規定した場合について説明されている。しかし、k空間の全領域のデータを収集し、4個の領域R〜Rを規定してもよい(図12参照)。
【0068】
図12は、k空間の全領域のデータを収集し、4個の領域R〜Rを規定したときの一例を示す図である。
【0069】
図12においても、領域R〜Rについて方位角θ〜θを規定し(図12(b1)〜(b4)参照)、逆フーリエ変換により画像データDI〜DIを求める(図12(c1)〜(c4)参照)。そして、ピクセルをシフトすることによって、画像データDI′〜DI′を求め(図12(d1)〜(d4)参照)、最後に複素和をとることによって、ブラーリングが低減された画像データDI(図12(e)参照)を得ることができる。図12では、4個の領域R〜Rが規定されているが、規定される領域の数は、4個に限定されることはない。
【0070】
尚、本形態では、スパイラルスキャンによって、2軸(kx,ky)のk空間のデータを収集している。しかし、本発明は、スパイラルスキャンによって、3軸(kx,ky,kz)のk空間のデータを収集する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0071】
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
13 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
91 算出手段
92 変換手段
93 シフト手段
94 最終画像データ作成手段
100 MRI装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
k空間の原点から螺旋状にスキャンするスパイラルスキャンによって被検体を撮影する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記k空間に、前記k空間の中心から前記k空間の周辺部に向かって広がるn個の領域を規定し、前記n個の領域のデータを実空間のデータに変換することにより、n個の画像データを得る変換手段と、
実空間上の各位置における磁気共鳴信号の中心周波数のずれと、前記n個の領域の各々の方位角とに基づいて、前記変換手段により得られたn個の画像データのピクセルをシフトするシフト手段と、
前記ピクセルがシフトされたn個の画像データに基づいて、前記被検体の最終画像データを作成する最終画像データ作成手段と、
を有する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記中心周波数のずれを算出するためのずれ算出用スキャンを実行する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記ずれ算出用スキャンにより得られたデータに基づいて、前記中心周波数のずれを算出する算出手段、を有する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記シフト手段は、
前記ピクセルの第1の方向のシフト量と、前記ピクセルの第2の方向のシフト量とを求める、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記スパイラルスキャンによってk空間の所定の領域のデータを収集した後、前記所定の領域をn分割することにより、前記n個の領域を規定する、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記所定の領域は、円の領域である、請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記n個の領域は、
k空間の第1象限、第2象限、第3象限、及び第4象限に規定された4個の領域である、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記4個の領域の方位角は、π/4、3π/4、5π/4、および7π/4である、請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
k空間の原点から螺旋状にスキャンするスパイラルスキャンによって被検体を撮影する磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記k空間に、前記k空間の中心から前記k空間の周辺部に向かって広がるn個の領域を規定し、前記n個の領域のデータを実空間のデータに変換することにより、n個の画像データを得る変換処理と、
実空間上の各位置における磁気共鳴信号の中心周波数のずれと、前記n個の領域の各々の方位角とに基づいて、前記変換処理により得られたn個の画像データのピクセルをシフトするシフト処理と、
前記ピクセルがシフトされたn個の画像データに基づいて、前記被検体の最終画像データを作成する最終画像データ作成処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−90803(P2012−90803A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241070(P2010−241070)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】