説明

磁気共鳴イメージング装置およびプログラム

【課題】短いスキャン時間は維持したままで、高品質の画像を取得することを提供する。
【解決手段】初期設定されたサンプリングパターンに従って、スキャンを開始する。所定量のK空間のデータをサンプリングしたら、それまでにサンプリングしたK空間のデータDKを用いて、画像データDIを再構成する。そして、画像データDIを再びK空間のデータに変換し、このK空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いK空間の領域を予測する。次に、予測された領域に基づいて、初期設定されたサンプリングパターンを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングパターンに従ってk空間のデータをサンプリングする磁気共鳴イメージング装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体をスキャンするときのスキャン時間を短縮する方法として、k空間の全領域のデータを取得せずに、アンダーサンプリングによって画像再構成を行う方法が知られている。画像再構成の手法としては、例えば、Compressed
Sensingという方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-268901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、サンプリングレートを低くすると、画質が劣化してしまうという問題がある。したがって、短いスキャン時間は維持したままで、高品質の画像を取得できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、サンプリングパターンに従ってk空間のデータをサンプリングするためのスキャンを行う磁気共鳴イメージング装置であって、
前記スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された領域に基づいて、前記サンプリングパターンを更新するサンプリングパターン更新手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置である。
【0006】
本発明の第2の態様は、サンプリングパターンに従ってk空間のデータをサンプリングするためのスキャンを行う磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を予測する予測処理と、
前記予測処理により予測された領域に基づいて、前記サンプリングパターンを更新するサンプリングパターン更新処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を予測することができるので、高品質な画像を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
【図2】予測手段91のブロック図である。
【図3】被検体12をスキャンするときのフローを説明する図である。
【図4】初期設定されたサンプリングパターンSPを概略的に示す図である。
【図5】時点tにおけるk空間のデータDKを示す図である。
【図6】再構成された画像を概略的に示す図である。
【図7】画像データDIをk空間のデータに変換する様子を示す図である。
【図8】更新されたk空間のサンプリングパターンSP′を示す図である。
【図9】スキャンにより得られた最終的なk空間のデータDKの一例を示す図である。
【図10】画像データDIを示す図である。
【図11】第2の形態のMRI装置の予測手段91のブロック図である。
【図12】第2の形態において、被検体12をスキャンするときのフローの説明図である。
【図13】検査範囲を示す図である。
【図14】検査範囲Cを移動させた後の様子を示す図である。
【図15】検査範囲Cがk空間の中心よりもやや左上側の位置に移動したときの様子を示す図である。
【図16】振幅和マップMを概略的に示す図である。
【図17】更新されたサンプリングパターンSP′を示す図である。
【図18】第3の形態のMRI装置の予測手段91のブロック図である。
【図19】第3の形態において、被検体12をスキャンするときのフローの説明図である。
【図20】ゼロを配置した後のk空間のデータDK10を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施するための形態について説明するが、発明を実施するための形態は、以下の形態に限定されることはない。
【0010】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図、図2は、予測手段91のブロック図である。
【0011】
磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))装置100は、磁場発生装置2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0012】
磁場発生装置2は、被検体12が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0013】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、ボア21に移動できるように構成されている。クレードル31によって、被検体12はボア21に搬送される。
【0014】
受信コイル4は、被検体12の腹部から胸部に渡って取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0015】
MRI装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0016】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、スキャンを実行するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0017】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0018】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0019】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号に所定の信号処理を施し、信号処理により得られたデータを、中央処理装置9に出力する。
【0020】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、予測手段91およびサンプリングパターン更新手段92などを有している。
【0021】
予測手段91は、スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を予測する。予測手段91は、図2に示すように、画像再構成手段91a、変換手段91b、および領域特定手段91cを有している。
【0022】
画像再構成手段91aは、スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータを用いて、画像を再構成する。
【0023】
変換手段91bは、画像再構成手段91aにより得られた画像データをk空間のデータに変換する。
【0024】
領域特定手段91cは、変換手段91bにより得られたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する。
【0025】
サンプリングパターン更新手段92は、予測手段91により予測された領域に基づいて、サンプリングパターンを更新する。
【0026】
中央処理装置9は、予測手段91およびサンプリングパターン更新手段92の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。中央処理装置9は、課題を解決するための手段に記載された計算機の一例である。
【0027】
操作部10は、オペレータ13により操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
【0028】
MRI装置100は、上記のように構成されている。以下に、MRI装置100で被検体12をスキャンするときのフローについて説明する。
【0029】
図3は、被検体12をスキャンするときのフローを説明する図である。
時点tにおいて、初期設定されたk空間のサンプリングパターンに従って、スキャンを開始する(図4参照)。
【0030】
図4は、初期設定されたk空間のサンプリングパターンSPを概略的に示す図である。
【0031】
図4には、3次元のk空間のkz−ky面が示されている。ここでは、kz−ky面は、2次元に配列された16×16の四角形で示されている。また、サンプリング点は、四角形の中に記入された白丸「○」で示されている。白丸「○」が記入されていない部分は、サンプリング点として初期設定されていないことを意味している。
【0032】
尚、図4では、16×16のサンプリングパターンSPが示されているが、一般的には、256×256のサンプリングパターン等が使用される。しかし、第1の形態では、説明の便宜上、図4に示すサンプリングパターンSPに従ってサンプリングを行うとする。
【0033】
図3に戻って説明を続ける。
サンプリングパターンSP(図4参照)に従ってスキャンが開始されたら、サンプリングされたデータ数が、N個(i=1〜zの整数)に到達したか否かを判断する。ここでは、i=1、即ち、サンプリングされたデータ数が、N個に到達したか否かを判断する。Nは、例えば、数個(例えば5個)であってもよいし、数十個(例えば30個)であってもよい。第1の形態では、時点tにおいて、サンプリングされたデータ数が、N個に到達したとする(図5参照)。
【0034】
図5は、時点tにおけるk空間のデータDKを示す図である。
図5において、サンプリング点は、黒丸「●」および白丸「○」で表されている。黒丸「●」のサンプリング点は、時点t〜tの間にサンプリングが行われた点を表している。白丸「○」のサンプリング点は、時点tにおいて、データがまだサンプリングされていない点を表している。
【0035】
サンプリングされたデータ数がN個に到達したら、スキャンは継続したままで、1回目の処理フローF(図3参照)が実行される。
【0036】
処理フローFでは、先ず、ステップST1において、予測手段91(図1および図2参照)が、k空間のデータDK(図5参照)に基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域を予測する。ステップST1は、この予測を行うために、ステップST11およびST12を有している。以下に、各ステップST11およびST12について、順に説明する。
【0037】
ステップST11では、画像再構成手段91a(図2参照)が、図5に示すk空間のデータDKを用いて、時点tにおける画像を再構成する(図6参照)。
【0038】
図6は、再構成された画像を概略的に示す図である。
図6(a)は、k空間のデータDK(図5参照)を示しており、図6(b)は、画像再構成により得られた時点tにおける画像データDIを示している。
【0039】
画像再構成の方法としては、Compressed Sensingの方法などを用いることができる。画像データDIを得た後、ステップST12進む。
【0040】
ステップST12では、変換手段91b(図2参照)が、得られた画像データDIを、フーリエ変換によって、k空間のデータに変換する(図7参照)。
【0041】
図7は、画像データDIをk空間のデータに変換する様子を示す図である。
図7(a)は、画像データDI(図6(b)参照)を示しており、図7(b)は、画像データDIをフーリエ変換することにより得られたk空間のデータDK′を示している。
【0042】
図7(b)では、k空間のデータDK′は、k空間のデータDK′の振幅が大きいか小さいかの基準となる閾値THによって、2つの領域AおよびBに分けられている。領域Bは、k空間のデータDK′の振幅が閾値THよりも小さい領域であり、クロスハッチングで示されている。一方、領域Aは、k空間のデータDK′の振幅が閾値THよりも大きい領域であり、太い実線で囲まれて示されている。また、領域Aでは、振幅が特に大きい点は白色で示されており、白色の点よりも振幅が小さい点は、記号「△」で示されている。
【0043】
領域特定手段91c(図2参照)は、k空間のデータDK′に基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域Aを特定する。領域Aは、振幅が閾値THよりも大きい領域であるので、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域と考えられる。一方、領域Bは、振幅が閾値THよりも小さい領域であるので、振幅の大きいデータが集中する可能性が低い領域と考えられる。そこで、第1の形態では、領域特定手段91cは、領域Aを、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域と特定する。
【0044】
したがって、ステップST1を実行することにより、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域Aを予測することができる。
【0045】
第1の形態では、この予測に基づいて、サンプリングパターンを更新する。サンプリングパターンを更新するために、ステップST2に進む。
【0046】
ステップST2では、サンプリングパターン更新手段92(図1参照)が、予測された領域Aに基づいて、サンプリングパターンを更新する。以下に、サンプリングパターンを更新する方法について説明する。
【0047】
サンプリングパターン更新手段92は、k空間のデータの振幅が高い点を優先的にサンプリングできるように、初期設定されたk空間のサンプリングパターンSP(図4参照)を更新する。
【0048】
図8は、更新されたk空間のサンプリングパターンSP′を示す図である。
尚、更新されたk空間のサンプリングパターンSP′に示されている領域AおよびBは、それぞれ、図7(b)に示す領域AおよびBを表している。
【0049】
図8において、黒丸「●」および白丸「○」は、初期設定されたk空間のサンプリングパターンSP(図4参照)と同じサンプリング点を表している。黒丸「●」のサンプリング点は、既にサンプリングが行われた点を表しており、白丸「○」のサンプリング点は、まだサンプリングが行われていない点を表している。また、二重丸「◎」は、サンプリングパターンの更新によって新たに発生したサンプリング点を表している。第1の形態では、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域Aの中に、新たなサンプリング点「◎」を発生させているので、領域Aに含まれる全ての点をサンプリング点とすることができ、高品質の画像を得ることが可能となる。
【0050】
尚、新たに発生したサンプリング点が多すぎると、スキャン時間が延びてしまう恐れがある。そこで、第1の形態では、新たなサンプリング点が発生しても、スキャン時間が延長しないようにするため、図4に示す初期設定されたサンプリング点の中で、データがまだ収集されていないサンプリング点の幾つかを削除する。図8では、削除されたサンプリング点を破線で示してある。ここでは、領域Bに位置するサンプリング点を削除する。領域Bは、振幅の大きいデータが集中する可能性が低い領域と考えられるので、領域Bに位置するサンプリング点は、画質に与える影響は小さいと考えられる。したがって、領域Bに位置するサンプリング点を削除しても、十分に高品質の画像を得ることができる。サンプリングパターンを更新したら、時点t′(図3参照)以降は、更新されたk空間のサンプリングパターンSP′に従って、スキャンが継続される。そして、サンプリングされたデータ数がN個になったら、2回目の処理フローFが実行される。尚、Nは、例えば、N=2Nとすることができる。
【0051】
2回目の処理フローFでは、ステップST11において、画像再構成手段91aが、スキャン開始時点t〜処理フローFの開始時点tの間にサンプリングされたN個のk空間のデータを用いて、時点tにおける画像を再構成する。画像を再構成したら、ステップST12に進む。
【0052】
ステップST12では、1回目の処理フローFと同様の手順で、画像データをk空間のデータに変換し、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域Aを求める。そして、ステップST2に進み、サンプリングパターンを更新する。したがって、時点t′以降は、2回目の処理フローFによって更新されたk空間のサンプリングパターンに従って、スキャンが継続される。
【0053】
以下、同様に、サンプリングされたデータ数がN個に到達したら、i回目の処理フローFが実行され、サンプリングパターンが更新される。例えば、時点tにおいては、サンプリングされたデータ数がN個に到達するので、k回目の処理フローFが実行され、サンプリングパターンが更新される。
【0054】
k回目の処理フローFでは、ステップST11において、画像再構成手段91aが、スキャン開始時点t〜処理フローFの開始時点tの間にサンプリングされたN個のk空間のデータを用いて、時点tにおける画像を再構成する。画像を再構成したら、ステップST12に進む。
【0055】
ステップST12では、1回目の処理フローFと同様の手順で、画像データをk空間のデータに変換し、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域Aを求める。そして、ステップST2に進み、サンプリングパターンを更新する。したがって、時点t′以降は、k回目の処理フローFによって更新されたk空間のサンプリングパターンに従って、スキャンが継続される。
【0056】
k回目の処理フローFが実行された後も、サンプリングされたデータ数がN個に到達したら、i回目の処理フローFが実行される。例えば、時点tにおいては、サンプリングされたデータ数がN個に到達するので、z回目の処理フローFが実行され、サンプリングパターンが更新される。したがって、時点t′以降は、z回目の処理フローFによって更新されたk空間のサンプリングパターンに従って、スキャンが継続される。そして、必要なサンプリング点のデータを全てサンプリングすることができた時点tにおいて、スキャンを終了する。
【0057】
図9は、スキャンにより得られた最終的なk空間のデータDKの一例を示す図である。図9では、データがサンプリングされた点を黒丸「●」で示してある。
【0058】
スキャンが終了したら、最終的なk空間のデータDKを画像データDI(図10参照)に変換し、フローを終了する。
【0059】
第1の形態では、スキャンの途中で、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域を予測することができるので、高品質な画像を取得することができる。
【0060】
上記の説明では、3次元のk空間について説明されているが、本発明は、2次元のk空間にも適用可能である。
【0061】
(2)第2の形態
第2の形態のMRI装置は、第1の形態のMRI装置100と比較すると、予測手段が異なっているが、その他の構成は同じであるので、第2の形態のMRI装置については、主に、予測手段を説明する。
【0062】
図11は、第2の形態のMRI装置の予測手段91のブロック図である。
図11(a)は、予測手段91のブロック図、図11(b)は、図11(a)に示されているフィルタ手段911のブロック図である。
【0063】
予測手段91は、画像再構成手段91a、変換手段91b、フィルタ手段911、および領域特定手段91cを有している。
【0064】
画像再構成手段91aは、スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータを用いて、画像を再構成する。
【0065】
変換手段91bは、画像再構成手段91aにより得られた画像データをk空間のデータに変換する。
【0066】
フィルタ手段911は、変換手段91bにより得られたk空間のデータをフィルタ処理する。フィルタ手段911は、図11(b)に示すように、検査範囲移動手段911aおよび特徴量算出手段911bを有している。
【0067】
検査範囲移動手段911aは、変換手段91bにより得られたk空間のデータの特徴量を求めるときの検査範囲を移動させる。
【0068】
特徴量算出手段911bは、検査範囲の各移動位置において、検査範囲内におけるk空間のデータの特徴量を算出する。
【0069】
領域特定手段91cは、フィルタ手段911により得られたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する。
【0070】
予測手段91は、上記のように構成されている。中央処理装置9は、図11に示す予測手段91の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、この手段として機能する。次に、第2の形態において、被検体12をスキャンするときのフローについて、図12を参照しながら、説明する。
【0071】
図12は、第2の形態において、被検体12をスキャンするときのフローの説明図である。
【0072】
尚、第2の形態では、各処理フローF〜FのステップST1に、ステップST13が追加されている点以外は、第1の形態と同じである。したがって、図12の説明に当たっては、主に、ステップST13について説明する。
【0073】
時点tにおいてスキャンを開始し、サンプリングされたデータ数がNに到達したら、1回目の処理フローFが開始される。
【0074】
尚、処理フローFのステップST11およびST12は、第1の形態と同じであるので説明は省略する。ステップST12において、画像データDIをk空間のデータDK′に変換した後(図7参照)、ステップST13に進む。
【0075】
ステップST13では、k空間のデータDK′をフィルタ処理する。以下に、フィルタ処理の一例について説明する。
【0076】
ステップST13では、先ず、検査範囲移動手段911a(図11(b)参照)が、k空間のデータDK′の特徴量を算出するための検査範囲を設定する。
【0077】
図13は、検査範囲を示す図である。
図13では、検査範囲Cの中心がk空間の左上隅のデータに位置するように、検査範囲Cが設定されている。検査範囲Cが設定されたら、特徴量算出手段911b(図11(b)参照)は、検査範囲Cの中に含まれる各データの振幅の和を求める。図13では、検査範囲Cには、データD11〜D31が含まれているので、これらのデータD11〜D31の振幅の和を求める。ここでは、振幅和をA11とする。特徴量算出手段911bは、検査範囲Cの中心に対応する位置に、振幅和A11を割り当てる。
【0078】
振幅和A11を求めた後、検査範囲移動手段911aは、検査範囲Cをデータ一つ分だけ移動させる(図14参照)。
【0079】
図14は、検査範囲Cを移動させた後の様子を示す図である。
図14では、移動前の検査範囲Cを破線で示し、移動後の検査範囲Cを実線で示している。特徴量算出手段911bは、移動後の検査範囲Cの中に含まれる各データの振幅の和を求める。図14では、検査範囲Cには、データD11〜D32が含まれているので、これらのデータD11〜D32の振幅の和を求める。ここでは、振幅和をA12とする。特徴量算出手段911bは、検査範囲Cの中心に対応する位置に、振幅和A12を割り当てる。
【0080】
振幅和A12を求めた後、同様の手順で、検査範囲を移動させながら、振幅和を算出する(図15参照)。
【0081】
図15は、検査範囲Cがk空間の中心よりもやや左上側の位置に移動したときの様子を示す図である。
【0082】
特徴量算出手段911bは、検査範囲Cの中に含まれる各データの振幅の和を求める。図15では、検査範囲Cには、データD46〜D86が含まれているので、これらのデータD46〜D86の振幅の和を求める。ここでは、振幅和をA66とする。特徴量算出手段911bは、検査範囲Cの中心に対応する位置に、振幅和A66を割り当てる。
【0083】
以下同様に、k空間の全領域に渡って検査範囲Cを移動させて、振幅和を算出する。したがって、k空間のデータの振幅和のマップを得ることができる。図16に、得られた振幅和マップMを概略的に示す。
【0084】
図16では、振幅和が閾値THよりも小さい領域Bは、クロスハッチングで示されており、振幅和が閾値THよりも大きい領域Aは、太い実線で囲まれて示されている。また、領域Aでは、振幅和が特に大きい点は白色で示されており、白色の点よりも振幅和が小さい点は、記号「△」で示されており、振幅和が更に小さい点は、記号「×」で示されている。
【0085】
領域Aは、振幅和が閾値THよりも大きい領域であるので、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域と考えられる。一方、領域Bは、振幅和が閾値THよりも小さい領域であるので、振幅の大きいデータが集中する可能性が低い領域と考えられる。そこで、領域特定手段91c(図11(a)参照)は、領域Aを、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域と特定する。したがって、振幅和のマップMを作成することによって、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域Aを予測することができる。
【0086】
第2の形態では、この予測に基づいて、サンプリングパターンを更新する。サンプリングパターンを更新するために、ステップST2に進む。
【0087】
ステップST2では、サンプリングパターン更新手段92(図1参照)が、予測された領域Aに基づいて、サンプリングパターンを更新する。以下に、サンプリングパターンを更新する方法について説明する。
【0088】
サンプリングパターン更新手段92は、k空間のデータの振幅が高い点を優先的にサンプリングできるように、初期設定されたサンプリングパターンSP(図4参照)を更新する。
【0089】
図17は、更新されたk空間のサンプリングパターンSP′を示す図である。
尚、更新されたk空間のサンプリングパターンSP′に示されている領域AおよびBは、それぞれ、図16に示す領域AおよびBを表している。
【0090】
図17において、黒丸「●」および白丸「○」は、初期設定されたk空間のサンプリングパターンSP(図4参照)と同じサンプリング点を表している。黒丸「●」のサンプリング点は、既にサンプリングが行われた点を表しており、白丸「○」のサンプリング点は、まだサンプリングが行われていない点を表している。また、二重丸「◎」は、サンプリングパターンの更新によって新たに発生したサンプリング点を表している。第2の形態では、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域Aの中に、新たなサンプリング点「◎」を発生させている。したがって、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域Aに含まれる点を優先的にサンプリングすることができるので、高品質の画像を得ることができる。尚、第2の形態では、サンプリング点が特定の領域に集中しすぎないようにするため、領域A内の一部の点は、サンプリング点から除外されている。
【0091】
また、第1の形態と同様に、新たなサンプリング点が発生しても、スキャン時間が延長しないようにするため、図4に示す初期設定されたサンプリング点の中で、データがまだ収集されていないサンプリング点の幾つかを削除する。図17では、削除されたサンプリング点を破線で示してある。ここでは、領域Bに位置するサンプリング点を削除する。領域Bは、振幅の大きいデータが集中する可能性が低い領域と考えられるので、領域Bに位置するサンプリング点は、画質に与える影響は小さいと考えられる。したがって、領域Bに位置するサンプリング点を削除しても、十分に高品質の画像を得ることができる。サンプリングパターンを更新したら、時点t′(図12参照)以降は、更新されたk空間のサンプリングパターンSP′に従って、スキャンが継続される。そして、サンプリングされたデータ数がN個になったら、2回目の処理フローFが実行される。
【0092】
以下、同様に、サンプリングされたデータ数がN個に到達したら、i回目の処理フローFを実行し、必要なサンプリング点のデータを全てサンプリングすることができた時点tにおいて、スキャンを終了する。スキャンを終了したら、スキャンにより得られた最終的なk空間のデータを用いて画像を再構成することにより、最終的な画像データが得られる。
【0093】
第2の形態でも、第1の形態と同様に、スキャンの途中で、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域を予測することができるので、高品質な画像を取得することができる。
【0094】
また、第2の形態では、k空間のデータの特徴量のマップMを作成し、マップMに基づいて、サンプリングパターンを更新している。このように、サンプリングパターンを更新するときは、k空間のデータの特徴量のマップMを参考にしてもよい。
【0095】
尚、第2の形態では、k空間のデータと特徴量として、振幅和を求めている。しかし、振幅の平均値など、別の特徴量を求めてもよい。
【0096】
(3)第3の形態
第3の形態のMRI装置は、第1の形態のMRI装置100と比較すると、予測手段が異なっているが、その他の構成は同じであるので、第3の形態のMRI装置については、主に、予測手段を説明する。
【0097】
図18は、第3の形態のMRI装置の予測手段91のブロック図である。
図18(a)は、予測手段91のブロック図、図18(b)は、図18(a)に示されているフィルタ手段911のブロック図である。
【0098】
予測手段91は、ゼロフィリング手段910、フィルタ手段911、および領域特定手段91cを有している。
【0099】
ゼロフィリング手段910は、スキャンの途中で、k空間のデータがサンプリングされていない領域に対してゼロフィリングを実行する。
【0100】
フィルタ手段911は、ゼロフィリングされたk空間のデータをフィルタ処理する。フィルタ手段911は、図18(b)に示すように、検査範囲移動手段911aおよび特徴量算出手段911bを有している。
【0101】
検査範囲移動手段911aは、ゼロフィリングされたk空間のデータの特徴量を求めるときの検査範囲を移動させる。
【0102】
特徴量算出手段911bは、検査範囲の各移動位置において、検査範囲内におけるk空間のデータの特徴量を算出する。
【0103】
領域特定手段91cは、フィルタ手段911により得られたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する。
【0104】
予測手段91は、上記のように構成されている。中央処理装置9は、図18に示す予測手段91の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、この手段として機能する。次に、第3の形態において、被検体12をスキャンするときのフローについて、図19を参照しながら、説明する。
【0105】
図19は、第3の形態において、被検体12をスキャンするときのフローの説明図である。
【0106】
尚、第3の形態では、各処理フローF〜FのステップST1において、ステップST11およびST12の代わりに、ステップST10が設けられている点以外は、第2の形態と同じである。したがって、図19の説明に当たっては、主に、ステップST10について説明する。
【0107】
時点tにおいてスキャンを開始し、時点tにおいて、サンプリングされたデータ数がNに到達し、図5に示すようなk空間のデータDKが得られたとする。
【0108】
サンプリングされたデータ数がNに到達したら、1回目の処理フローFが開始される。
【0109】
処理フローFでは、先ず、ステップST10において、ゼロフィリング手段910(図18(a)参照)が、図5に示すk空間のデータDKのサンプリングされていない領域にゼロを配置する(図20参照)。
【0110】
図20は、ゼロを配置した後のk空間のデータDK10を示す図である。
図20では、サンプリングが行われた点を黒丸「●」で表しており、ゼロが配置された領域は、クロスハッチングで示されている。ゼロを配置した後、ステップST13に進む。
【0111】
ステップST13では、k空間のデータDK10をフィルタ処理する。フィルタ処理は、第2の形態と同様に、検査範囲Cを移動させながら振幅和を求め、振幅和のマップを作成することによって行う。振幅和のマップを作成したら、ステップST2に進み、サンプリングパターンを更新する。
【0112】
以下、同様に、サンプリングされたデータ数がN個に到達したら、処理フローFを実行し、必要なサンプリング点のデータを全てサンプリングすることができた時点tにおいて、スキャンを終了する。スキャンを終了したら、スキャンにより得られた最終的なk空間のデータを用いて画像を再構成することにより、最終的な画像データが得られる。
【0113】
第3の形態でも、スキャンの途中で、振幅の大きいデータが集中する可能性が高い領域を予測することができるので、高品質な画像を取得することができる。
【符号の説明】
【0114】
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
13 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
91 予測手段
91a 画像再構成手段
91b 変換手段
91c 領域特定手段
92 サンプリングパターン更新手段
100 MRI装置
910 ゼロフィリング手段
911 フィルタ手段
911a 検査範囲移動手段
911b 特徴量算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングパターンに従ってk空間のデータをサンプリングするためのスキャンを行う磁気共鳴イメージング装置であって、
前記スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された領域に基づいて、前記サンプリングパターンを更新するサンプリングパターン更新手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記スキャンの間に、前記サンプリングパターンの更新が1回又は複数回行われる、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記予測手段は、
前記スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータを用いて、画像を再構成する画像再構成手段と、
前記画像再構成手段により得られた画像データをk空間のデータに変換する変換手段と、
前記変換手段により得られたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する領域特定手段と、
を有する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記画像再構成手段は、
サンプリングされたデータ数がN個(iは1〜zの整数)に到達したときに、サンプリングされたk空間のデータを用いて画像を再構成する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記領域特定手段は、
前記変換手段により得られたk空間のデータの振幅が大きいか小さいかの基準となる閾値に基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する、請求項3又は4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記予測手段は、
前記スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータを用いて、画像を再構成する画像再構成手段と、
前記画像再構成手段により得られた画像データをk空間のデータに変換する変換手段と、
前記変換手段により得られたk空間のデータをフィルタ処理するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段により得られたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する領域特定手段と、
を有する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記画像再構成手段は、
サンプリングされたデータ数がN個(iは1〜zの整数)に到達したときに、サンプリングされたk空間のデータを用いて画像を再構成する、請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記領域特定手段は、
前記フィルタ手段により得られたk空間のデータの振幅が大きいか小さいかの基準となる閾値に基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する、請求項6又は7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記フィルタ手段は、
前記変換手段により得られたk空間のデータの特徴量を求めるときの検査範囲を移動させる検査範囲移動手段と、
前記検査範囲の各移動位置において、前記検査範囲内における前記k空間のデータの特徴量を算出する特徴量算出手段と、
を有する、請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記特徴量は、k空間のデータの振幅和である、請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記予測手段は、
前記スキャンの途中で、k空間のデータがサンプリングされていない領域に対してゼロフィリングを実行するゼロフィリング手段と、
ゼロフィリングされたk空間のデータをフィルタ処理するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段により得られたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する領域特定手段と、
を有する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置
【請求項12】
前記ゼロフィリング手段は、
サンプリングされたデータ数がN個(iは1〜zの整数)に到達したときに、ゼロフィリングを実行する、請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記領域特定手段は、
前記フィルタ手段により得られたk空間のデータの振幅が大きいか小さいかの基準となる閾値に基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を特定する、請求項11又は12に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記フィルタ手段は、
前記ゼロフィリングされたk空間のデータの特徴量を求めるときの検査範囲を移動させる検査範囲移動手段と、
前記検査範囲の各移動位置において、前記検査範囲内における前記k空間のデータの特徴量を算出する特徴量算出手段と、
を有する、請求項11〜13のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記特徴量は、k空間のデータの振幅和である、請求項14に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
サンプリングパターンに従ってk空間のデータをサンプリングするためのスキャンを行う磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記スキャンの途中で、サンプリングされたk空間のデータに基づいて、振幅の大きいデータが集中する可能性が高いk空間の領域を予測する予測処理と、
前記予測処理により予測された領域に基づいて、前記サンプリングパターンを更新するサンプリングパターン更新処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−95686(P2012−95686A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243280(P2010−243280)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】