説明

磁気共鳴イメージング装置及び画像補正方法

【課題】磁気共鳴イメージング装置のRF受信コイルに関する感度分布データを取得し、それに基づいた画像輝度補正を行う際に、感度分布計測および本計測間で被検体が動いた場合の補償を行う。
【解決手段】
磁気共鳴イメージング装置の制御部のCPUにおいて、感度分布計測(S301)の直前または最中と、本計測(S305)の直前または最中に被検体位置計測(S302)を行うことにより、被検体の動きに伴う変移量の計測(S303)を行い、その変位量に基づいて感度分布計測用の画像データを移動・変形処理(S304)した後、本計測画像データの感度補正処理(S306)を行い、その結果をディスプレイに画像表示する(S307)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、以下、NMRという)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging、以下、MRIという)装置に係り、特に受信に使用する高周波(Radio Frequency、以下、RFという)コイルの感度分布データに起因する画像の感度不均一を補正する画像補正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を受信信号として計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮像においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
近年のMRI装置では複数のRF受信コイルを有したマルチプルコイルを用いて、RF受信コイル毎に得られた複数の断層画像を合成して合成画像を取得することにより、目的の画像を得ることが行われている。この手法は、高いS/N比を有する合成画像を取得できる利点があるものの、各RF受信コイルの感度分布データの不均一性が合成画像に反映されてしまい、感度又は輝度の不均一(以下、感度不均一と称す)な合成画像が取得されてしまうことがある。
【0004】
この合成画像における感度不均一を補正する技術として、RF受信コイルの感度分布データを算出し、その感度分布データに基づき補正係数データを算出し、この補正係数データを用いて合成画像の感度不均一を補正する技術がある。このRF受信コイルの感度分布データを算出する方法の一例としては、均一な感度分布データを持つ全身用RFコイルを用いて取得された画像に対する、RF受信コイルを用いて得られた画像の比から、RF受信コイルの感度分布データを算出する手法(特許文献1)、RF受信コイルの低周波成分を近似的にRF受信コイルの感度分布データとみなす手法(特許文献2)、均一なファントムをあらかじめ撮像し、その断層画像を感度分布データとみなす方法(特許文献3)、磁場解析手法により数値演算にてRF受信コイルの感度分布データを算出する手法(非特許文献1)などがある。
【0005】
また、感度分布データと画像データが不一致である場合、感度補正がうまくいかないので、これらデータの不一致を補償する方法が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-56928号公報
【特許文献2】特開2002-272705号公報
【特許文献3】特開平7-59750号公報
【特許文献4】特表2007-503904号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ISMRM 1405, 1999 DF Kacher, et al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4に記載された技術においては、複数のRF受信コイルエレメントから構成されるマルチプルコイルを使用する場合などにおいて、被検体自身や被検体が動くことにより各コイルエレメントが独立して動くようなケースに対しての補償は考慮されていない。
【0009】
本発明の目的は、MRI装置において、感度分布データと合成画像データの不一致に基づく画像輝度補正を行う際に、感度分布計測および本計測間で被検体が動いた場合の補償を行う磁気共鳴イメージング装置、およびその画像補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明においては、RFコイルを有してなる受信部と、所定のシーケンスに基づきRFコイルを用いて被検体から取得された受信信号から、被検体の画像を取得する制御部を備え、この制御部がRFコイルの感度分布データを用いて、画像の感度、感度不均一を補正する磁気共鳴イメージング装置であって、制御部は、感度分布計測時と本計測時の被検体の位置情報を測定し、測定したこれら二つの位置情報の差異に基づき、本計測時の画像の感度分布の補正を行う構成の磁気共鳴イメージング装置、及びその画像補正方法を提供する。
【0011】
すなわち、本発明の装置における画像処理プロセスは以下のように構成される。感度分布データを取得する直前または最中と、合成画像データを取得する直前若しくは最中に、RFコイル全体、若しくはコイルエレメント毎に三次元被検体位置座標測定用のデータである位置情報を取得し、二つの位置情報の差分から被検体の変形量および移動量を算出し、その算出値に基づき感度分布データ或いは合成画像データの移動・変形を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感度分布データ取得後から合成画像データ取得間に被検体が何らかの理由により動いてしまったとしても、感度不均一をより正確に補正することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】各実施例に係るMRI装置の全体基本構成の一例を示す図である。
【図2A】第1の実施例に係る、k空間のX,Y,Zの3軸方向の一次元データの取得を説明するための図である。
【図2B】第1の実施例に係る、3軸方向の一次元画像データの作成を説明するための図である。
【図2C】第1の実施例に係る、3軸方向の被検体の移動、形状変形を説明するための図である。
【図2D】第1の実施例に係る、X、Y方向の感度分布直前データおよび本計測直前データの変移量作成を説明するための図である。
【図2E】第1の実施例に係る、移動・変形処理を説明するための図である。
【図3A】第1の実施例に係る装置の処理フローチャートであり、位置計測にボディコイルを使用する場合を示す図である。
【図3B】第1の実施例に係る装置の処理フローチャートであり、位置計測にマルチプルアレイコイルを使用する場合を示す図である。
【図4A】第2の実施例に係る装置の処理フローチャートであり、本計測の直前に位置計測を行う場合を示す図である。
【図4B】第2の実施例に係る装置の処理フローチャートであり、本計測時に位置計測を行う場合を示す図である。
【図5A】第3の実施例に係る装置の処理に係り、マルチプルコイルにおけるRF受信コイル毎1次元データ取得を説明する図である。
【図5B】第3の実施例に係る装置の処理に係り、移動・変形処理および感度分布計測合成画像作成を説明する図である。
【図6】第3の実施例に係る装置の処理フローチャートを示す図である。
【図7】第4の実施例に係る装置の処理フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、各実施形態を説明するための図面において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。本明細書において、MRI装置で画像を撮像する対象を、被検体あるいは被検体と呼ぶ。また、制御部のCPU等によってプログラムで実行される「処理」を「機能」、「プログラム」、「部」あるいは「手段」と呼ぶ場合がある。例えば、「感度補正処理」を「感度補正機能」、「感度補正プログラム」、「感度補正部」あるいは「感度補正手段」等である。更に、被検体位置計測で得られる被検体の画像の位置及び大きさあるいは形状を、「位置情報」と総称することとする。
【0015】
最初に、各実施例に共通するMRI装置の一例の全体概要を図面に基づき説明する。図1は、各実施例に係るMRI装置の全体構成の一例を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、処理部である中央処理装置(Central Processing Unit、以下CPUという)8とを備えて構成される。
【0016】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0017】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシ−ケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮影時には、スライス面(撮影断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置についての情報をエンコードする。
【0018】
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御のための手段で、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。シーケンサ4とCPU8とを総称して制御部と称することができる。
【0019】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1にRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。
【0020】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を受信信号として検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのデータがCPU8に入力されると、制御部を構成するCPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0021】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御するために用いられる。
【0022】
なお、図1のMRI装置において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検体1が挿入される静磁場発生系2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検体1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【0023】
現在、MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像することができる。
【実施例1】
【0024】
次に、第1の実施例に係るMRI装置の動作を図2A〜2E、図3A、3Bに基づき説明する。
【0025】
まず、図2Aに示すように、被検体201から感度分布計測で取得したデータのうち、各k空間のX、Y、Z座標軸上の第1のデータ202、203、204を取り出す。次に、感度分布計測に使用するパルスシーケンスを用いて、X、Y、Z軸方向に対し周波数エンコードのみを使用して、各k空間座標軸上の第2のデータを被検体位置計測のため取り出す。
【0026】
次に図2Bに示すように、第1のデータ202、203、204を1次元フーリエ変換して、X、Y、Z軸上の1次元プロジェクション像205、206、207を取得し、同様に第2のデータの1次元プロジェクション像を得、第1のデータと第2のデータそれぞれの像の位置と大きさあるいは形状を示す位置情報を測定する。
【0027】
図2Cに示すように、感度分布計測と画像取得のための本計測との間で、被検体の体動や呼吸動により位置移動208や形状変形209が起こるため、本実施例においては、X軸、Y軸、Z軸各々において、図2Dに示すように、第1のデータ、第2のデータ各々の画像の位置及び大きさより、変形量および移動量210、211、212を算出する。算出したデータ210、211、212を用いて、図2Eに示すように、X、Y、Z軸各々において、感度分布データの移動・変形処理213、214を行い、合成画像と大きさおよび位置を一致させる。なお、Z軸方向の移動・変形処理は図示を省略した。その後、感度分布像の作成を行い、作成した感度分布データに基づき感度補正処理を行う。
【0028】
以上説明した本実施例のMRI装置の動作について、図3Aの処理フローチャートを用いて説明する。なお、特に断らない限り、以下のフローチャートの各ステップは、図1に示した装置の制御部であるシーケンサ4とCPU8におけるプログラムなどに基づく処理として実行されることは言うまでもない。
【0029】
まず、図2A、図2Bを用いて説明したように、ステップ301において、感度分布計測を行い、感度分布計測画像を取得し、この計測したデータの一部である周波数空間軸上のデータからk空間軸上のデータを取り出し、各軸に対して1次元フーリエ変換を行う。それぞれのデータに対して閾値処理を行い、被検体の軸ごとの位置と大きさあるいは形状である位置情報を測定する(S301)。この場合の被検体の位置検出は、感度分布計測の最中に行うことに対応する。この際、使用するコイルは全身コイルでもマルチプルコイルでも良い。複数のRF受信コイルからなるマルチプルコイル対応の場合の動作は、後で図3Bを用いて説明する。
【0030】
ステップ302において、ステップ301と同様のパルスシーケンスを用い、X、Y、Z軸方向に対し周波数エンコードのみ使用して、軸毎の1次元データを取得した後、同様にフーリエ変換と処理を行い、各軸の被検体位置と形状である位置情報を計測する(S302)。この場合の被検体の位置計測は、本計測の直前に行うことに対応する。
【0031】
続いて、ステップ305の本計測を行っている間に、ステップ303の位置・形状算出処理、およびステップ304の感度分布計測データ移動・変形処理を行う。
【0032】
ステップ303においては、図2Dで示したように、ステップ301とステップ302から得た被検体位置と形状を示す位置情報の差分処理により、各軸の移動量と変形量を算出する(S303)。そして、ステップ304において、図2Eで示したように、算出した各軸の移動量と変形量に基づいて感度分布計測画像の移動・拡大処理を行う(S304)。
【0033】
ステップ305においては、通常の撮影と同様に被検体の本計測を行い、被検体の画像を取得する(S305)。
【0034】
ステップ306において、ステップ304で移動・変形させた感度分布画像を用いて、本計測で取得した被検体画像の感度補正処理を行う(S306)。なお、移動・拡大処理は感度分布計測画像と被検体の本計測画像間の相対的は処理であるため、本計測が高速で実行できる場合は、本計測した被検体画像に対して移動・変形処理を行い、その後感度補正処理を行うことも可能である。
【0035】
最後に、ステップ307において、感度補正処理を行った被検体画像を、図1の信号処理系7のディスプレイ20に表示する(S307)。
【0036】
本実施例において、ステップ301における感度分布計測のデータ並びにステップ302における被検体位置計測(2)の位置情報のデータを取得する際にマルチプルコイルを使用する場合は、図3Bに示すように、ステップ308の合成画像処理(1)(S308)、及びステップ309の合成画像処理(2)(S309)が挿入される。この合成画像処理(1)、(2)においては、SOS(Sum Of Square)法などに代表されるような合成処理を行い、1次元データを作成する。そして、これら合成画像処理(1)、(2)による合成後のデータを用いて移動・変形処理を行う(S304)。
【0037】
本実施例によれば、感度分布データ取得時と本計測画像取得時において、感度分布データ取得の最中と、本計測画像データ取得の直前に位置情報を取得し、両位置情報の差分処理により各軸の移動量と変形量を算出して感度分布データあるいは、本計測画像データを補正した後感度補償を行うため、被検体が何らかの理由により動いてしまったとしても、感度不均一をより正確に補正することが出来る。
【実施例2】
【0038】
次に、第2の実施例について図4A、図4Bを用いて説明する。第1の実施例と異なる点は、感度分布計測(S301)の直前に周波数エンコードのみを使用するパルスシーケンスを用いて、X、Y、Z軸方向について被検体位置計測(1)を行う(S310)にある。すなわち、感度分布計測時の位置計測を、感度分布計測の直前に行っていることになる。また、周波数エンコードのみを使用するパルスシーケンスを用いて、本計測の直前に同様にX、Y、Z軸方向に対し被検体位置計測(2)(S302)を行う、あるいは本計測(S305)のデータの一部である周波数空間軸上のデータからk空間軸上のデータを取り出す。前者は本計測時の被検体の位置情報を取得する位置計測を、本計測の直前に行っていることになり、後者は本計測時の被検体の位置計測を、本計測の最中に行っていることに対応する。
【0039】
この第2の実施例の動作について図4Aを用いて説明する。なお、本計測データの一部を位置情報の検出に用いる後者の手法は、図4Bに説明する。以下、先の実施例1と異なる箇所のみを説明し、同じ箇所の説明は省略する。
【0040】
まず、ステップ310にて、被検体をX、Y、Z軸方向について一次元計測し、計測したデータに対し閾値処理を行い、被検体の軸ごとの位置と形状である位置情報を測定する被検体位置計測(1)を感度分布計測の直前に行う(S310)。この際、使用するコイルは全身コイルでも複数のRF受信コイルからなるマルチプルコイルでも良い。
【0041】
ステップ302にて、本計測直前の被検体の位置情報の検出のため、ステップ310と同様の計測と処理を行い、各軸の被検体位置と形状あるいは大きさである位置情報を計測する被検体位置計測(2)を行う(S302)。そのほかは実施例1と同様である。
【0042】
次に第2の実施例において、被検体位置計測(2)を省略し、本計測データを被検体の位置検出に用いる手法、すなわち本計測の最中に被検体位置計測を行う場合について図4Bを用いて説明する。以下異なる部分のみを説明し、同じ箇所の説明は省く。
【0043】
ステップ305の本計測(S305)を行った後に、ステップ303、ステップ304の処理を行う。
【0044】
すなわち、ステップ305にて本計測を行い、本計測画像を取得する(S305)。そして、計測した周波数空間軸上のデータからk空間軸上のデータを取り出し、各軸に対して1次元フーリエ変換を行う。それぞれのデータに対して閾値処理を行い、被検体の軸ごとの位置と大きさである位置情報を測定し、被検体位置計測(1)で得られた位置情報のデータとの差分処理により、各軸の移動量と変形量を算出する(S303)。その他のステップ304、306、307等はこれまでの実施例と同様であり、説明を省略する。
【0045】
本実施例によれば、感度分布計測(S301)の直前と、本計測の直前あるいはその最中に被検体位置計測を行うため、正確な計測データの移動・変形処理を行うことができ、より精度の良い感度補正並びに画像表示を行うことができる。
【実施例3】
【0046】
次に、第3の実施例について、図5A、図5B、図6を用いて説明する。前出の実施例と異なる部分は、感度布計測データに対し、マルチプルコイルを構成する複数のRF受信コイル501、502、503、504から受信されるデータ505、506、507、508毎に処理を行うことである。以下、上述の実施例と異なる箇所のみ説明し、同じ箇所の説明は省略する。
【0047】
本実施例においては、図5Aに示すように、位置・大きさである位置情報を計測する一次元計測において、マルチプルコイルを構成する複数のRF受信コイル501、502、503、504からのデータを一次元計測する際に合成するのではなく、RF受信コイル501、502、503、504毎に3軸方向の位置・大きさである位置情報を算出する。すなわち、図5Bに示すように、感度分布計測前、および本計測前に各RF受信コイル毎に取得した2つの位置計測用のデータより、複数の各RF受信コイルごとの移動・変形を示す変位量を算出し、この変位量に基づき、各RF受信コイルの計測データを用いてそれぞれ変位させた後に、合成画像509を作成する。その後は通常の感度補正処理と同じである。
【0048】
第3の実施例の動作について図6のフローチャートを用いて説明する。以下、上述した実施例と異なる箇所のみ説明し、同じ箇所の説明は省略する。
【0049】
ステップ301にて、マルチプルコイルを形成する複数のRF受信コイル501、502、503、504毎に複数の感度分布計測を行う。感度分布計測データより、RF受信コイル毎に一次元計測データを抽出する。計測したデータに対し閾値処理を行い、被検体の軸ごとの位置と大きさである位置情報を測定する(S301)。この際、使用コイルはマルチプルコイルで行う。そして、マルチプルコイル各々からのデータを合成せず、上述のとおりRF受信コイル毎に位置と大きさあるいは形状を示す位置情報を測定する。
【0050】
ステップ302にて、ステップ301と同様の計測と処理を行い、本計測時の被検体の位置検出として、各軸の被検体位置と大きさである位置情報を計測する(S302)。ここでマルチプルコイルを構成する複数のRF受信コイルのデータを合成せず、コイルエレメント毎に位置と大きさ或いは形状を示す位置情報を測定する。
【0051】
ステップ305の本計測を行っている間に、ステップ303、ステップ304およびステップ311の処理を行う。
【0052】
本実施例においては、ステップ303にて、ステップ301とステップ302から得た被検体位置と大きさ或いは形状を示す位置情報のコイルエレメント毎の差分より、各軸の変位量あるいは移動量をコイルエレメント毎に算出する(S303)。ステップ304にて、算出した変位量あるいは移動量に基づいてコイルエレメント毎に、感度分布計測画像の変位処理、移動処理を行う(S304)。
【0053】
ステップ311にて、マルチプルコイルを構成する複数のコイルエレメント各々の感度分布計測画像データを合成する(S311)。その他はこれまでの実施形態と同様である。
【0054】
本実施例によれば、マルチプルコイルの各エレメントが独立して動くようなケースに対してもその補正を正確に補償することが可能となり、局所的な動きや移動に対して、より正確な計測データの移動・変形処理を行うことができ、より精度の良い感度補正並びに画像表示を行うことができる。
【実施例4】
【0055】
次に、図7を用いて第4の実施例を説明する。前出の実施例と異なる部分は、感度分布計測画像ではなく、RF受信コイル毎に感度マップを作成しそれについて移動、変形を行い、その後、感度マップの合成処理を行う点である。
【0056】
第4の実施例の動作について、図7を用いて説明する。以下異なる箇所のみ説明し、同じ箇所の説明は省略する。
【0057】
ステップ301でのコイルエレメント毎の感度分布計測の後、ステップ312において、コイルエレメントごとに感度マップを作成する感度マップ作成処理を行う(S312)。
【0058】
そして、ステップ305の本計測を行っている間に、ステップ303、ステップ304およびステップ313の処理を行う。ステップ304にて、コイルエレメント毎に算出した感度マップ画像の移動処理を、ステップ303にて取得した各軸の移動量と変形量に基づき、実行する。
【0059】
続いて、ステップ313において、コイルエレメント毎に移動変形した感度マップ画像の合成処理を行い合成感度マップを作成処理を実行する(S313)。
【0060】
以後のステップ305、306、307の処理は、先の実施例と同様であり、最後に補正処理後の画像をディスプレイに表示する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上詳述した本発明は、NMR信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化するMRI装置、特に受信に使用するRF受信コイルの感度分布データに起因する画像の感度不均一を補正する画像補正技術として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1…被検体、2…静磁場発生系、3…傾斜磁場発生系、4…シーケンサ、5…送信系、6…受信系、7…信号処理系、8…中央処理装置(CPU)、9…傾斜磁場コイル、10…傾斜磁場電源、11…高周波発信器、12…変調器、13…高周波増幅器、14a…高周波コイル(送信コイル)、14b…高周波コイル(受信コイル)、15…信号増幅器、16…直交位相検波器、17…A/D変換器、18…磁気ディスク、19…光ディスク、20…ディスプレイ、21…ROM、22…RAM、23…トラックボール又はマウス、24…キーボード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFコイルを有してなる受信部と、所定のシーケンスに基づき前記RFコイル用いて被検体から取得した受信信号により前記被検体の画像を取得する制御部を備え、前記制御部が、前記RFコイルの感度分布データを用いて、前記画像の感度不均一を補正する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、感度分布計測時と本計測時の前記被検体の位置情報を測定し、測定した2つの前記位置情報の差分に基づき、本計測時の前記画像の感度不均一の補正を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、前記感度分布計測および前記本計測の直前に前記位置情報を取得することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、前記感度分布計測時の計測データの一部を用いて、前記感度分布計測時の前記位置情報を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、前記本計測時の計測データの一部を用いて、前記本計測時の前記位置情報を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記RFコイルは複数のコイルエレメントからなり、
前記制御部は、複数の前記コイルエレメントが受信した受信信号を合成して得た本計測時の前記画像に対し、前記位置情報の差分に基づき前記画像の感度不均一の補正を行う、
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記RFコイルは複数のコイルエレメントからなり、
前記制御部は、複数の前記コイルエレメントが受信した受信信号を合成して前記感度分布データを得、前記位置情報の差分に従い、合成後の前記感度分布データを移動・変形することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記RFコイルは複数のコイルエレメントからなり、
前記制御部は、複数の前記コイルエレメント毎に移動・変形量を算出し、算出した前記移動・変形量に従い、前記感度分布データの補正を行った後、合成を行う、
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記RFコイルは複数のコイルエレメントからなり、
前記制御部は、複数の前記コイルエレメントの受信信号の合成前に、複数の前記コイルエレメント各々が取得した前記感度分布データに対して前記変形・移動量に基づく補正を行う、
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
所定のシーケンスにより、RF受信コイル用いて被検体から取得した受信信号から前記被検体の画像を取得し、前記RF受信コイルの感度分布データを用いて、取得した前記画像の感度不均一を補正する制御部を備えた磁気共鳴イメージング装置の画像補正方法であって、
感度分布計測時と本計測時の前記被検体の位置情報を測定し、測定した前記位置情報の差分を考慮して、本計測時の前記画像の感度不均一の補正を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の画像補正方法。
【請求項10】
請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置の画像補正方法であって、
前記位置情報の差分に従い前記感度分布データを変位し、変位後の前記感度分布データに基づき、本計測時の前記画像の感度不均一の補正を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の画像補正方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−98031(P2011−98031A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253897(P2009−253897)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】