説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】磁気共鳴イメージング装置全体の軸長を短く保ちつつ、十分に漏れ磁場を低減することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】円筒形状の真空容器7内に収納され、真空容器7の内筒壁7aより中心軸側の撮像空間9に均一な静磁場8を形成する静磁場コイルと、傾斜磁場を形成するメインコイル3mと、メインコイル3mの漏れ磁場を抑制し内筒壁7aに沿って設けられる円筒形状のシールドコイル3sを有する傾斜磁場コイル3とを備える磁気共鳴イメージング装置において、シールドコイル3sは、周方向に2分された領域にそれぞれに配置される湾曲コイル12a、12bと、内筒壁7aと湾曲コイル12a、12bとの隙間10を引き回されて湾曲コイル12a、12b同士を接続する引き回し線13ay、13byとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜磁場コイルを有する磁気共鳴イメージング(以下、MRIと称す)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、生体内の画像を低浸襲に取得でき、形態情報に加え機能情報を得られ、放射線による被曝がないことから、患部の診断に広く利用されている。MRI装置は複数の磁場発生源を有し、具体的には、撮像空間に均一な磁場を生成する静磁場コイル(超伝導コイル)と、撮像空間に位置情報を付加し撮像断面を形成するためにパルス状の磁場(傾斜磁場)を撮像空間に生成する傾斜磁場コイルと、撮像空間内の核スピンを励起させるRFコイルとを有している。
【0003】
傾斜磁場コイルは、メインコイルとシールドコイルを有している。メインコイルは、撮像空間に傾斜磁場を形成するが、同時に撮像空間以外には不要な磁場を作る。この不要な磁場は周囲の構造物に渦電流を発生させ、渦電流が作る磁場が断層像に悪影響を及ぼす。そこで、この不要な磁場を抑制するために,メインコイルとは反対方向に電流が流れるシールドコイルが設けられている。シールドコイルを配置してもまだ残っている不要な磁場が、いわゆる漏れ磁場である。
【0004】
トンネル型のMRI装置では、シールドコイルの軸長が長くなればなるほど漏れ磁場が小さくなる。そのため、シールドコイルの軸長は長くするのが望ましいが、シールドコイルの筒状の中に入ることになる被検体(人)の不安感を低減するためには、軸長はできるだけ短くしたい。そこで、シールドコイルを含めた傾斜磁場コイルの軸長は、一般的に、真空容器の軸長と同じ程度の長さに設定されている。
【0005】
例えば、シールドコイルの軸方向の外側にシールドコイルを構成する複数の湾曲コイルの間を接続する引き回し線が設けられる配置法が開示されている(特許文献1参照)。この配置法では、引き回し線の配線スペースの分だけ傾斜磁場コイルの軸長が長くなっている。また、真空容器の軸方向の外側に複数の湾曲コイル間を接続する引き回し線が設けられる配置法が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−327953号公報(図1)
【特許文献2】特開2006−158697号公報(図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された配置法では、シールドコイルの軸長が規定されると、引き回し線の配線スペースを設けるために、湾曲コイルの軸長が短くなり、漏れ磁場を十分に低減できないと考えられた。また、特許文献2に開示された配置法では、真空容器の外側に引き回し線の配線スペースを設けるために、MRI装置が大きくなり商品性を低下させると考えられた。真空容器の軸長を短くしてMRI装置を大きくならないようにすると、静磁場コイルの設置範囲が狭まり撮像空間となる静磁場の均一な範囲が狭くなり、狭い範囲の断面像しか得られなくなってしまうので、真空容器の軸長は短くし難い。
【0007】
そこで、本発明の目的は、MRI(磁気共鳴イメージング)装置全体の軸長を短く保ちつつ、十分に漏れ磁場を低減することが可能なMRI装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、前記シールドコイルが、周方向に2分された領域にそれぞれに配置される湾曲コイルと、前記内筒壁と前記湾曲コイルとの隙間を引き回されて前記湾曲コイル同士を接続する引き回し線とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、MRI装置全体の軸長を短く保ちつつ、十分に漏れ磁場を低減することが可能なMRI装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0011】
図1に、本発明の実施形態に係るトンネル型MRI(磁気共鳴イメージング)装置1の断面図を示す。MRI装置1は複数の磁場発生源を有し、具体的には、撮像空間9に時間的空間的に均一な静磁場8を生成する静磁場コイル(超伝導コイル)2と、撮像空間9に位置情報を付加し撮像断面を形成するためにパルス状の傾斜磁場を撮像空間9に生成する傾斜磁場コイル3と、撮像空間9内の核スピンを励起させるRFコイル4とを有している。
【0012】
静磁場コイル(超伝導コイル)2は、液体ヘリウムを充填したヘリウム容器5内に収められ、ヘリウム容器5は、外部からの熱輻射を遮断する輻射シールド6に包まれている。静磁場コイル2、ヘリウム容器5と輻射シールド6は、内部を真空(減圧)状態に保った真空容器7に収められている。図1に示すトンネル型のMRI装置1の場合、真空容器7は中空円筒形状となり、外筒壁と内筒壁7aの間に環状の静磁場コイル2が配置され、その内筒壁7aの中心軸(z軸)側に傾斜磁場コイル3とRFコイル4が設置されている。
【0013】
撮像空間9中に被検体(通常人体)を挿入して、RFコイル4によってRFパルスを照射し、これにより被検体の生体内から発生する磁気共鳴信号を受信して、医療診断用の断層像を生成する。このとき、傾斜磁場コイル3により、被検体が置かれた撮像空間9にx、y、z方向に線形に磁場強度が変化する傾斜磁場をそれぞれパルス状に印加することで、磁気共鳴信号に生体内の位置情報を付与している。
【0014】
傾斜磁場コイル3は、メインコイル3mとシールドコイル3sを有している。メインコイル3mは、撮像空間9に傾斜磁場を形成するが、同時に撮像空間9以外に不要な磁場を作る。この不要な磁場を抑制するために、メインコイル3mとは反対方向の電流が流れるシールドコイル3sが設けられている。トンネル型のMRI装置1では、シールドコイル3sの軸長が長くなればなるほど漏れ磁場が小さくなる。そのため、シールドコイル3sの軸長は長くするのが望ましいが、シールドコイル3sの筒状の中に入ることになる被検体の不安感を低減するためには、軸長はできるだけ短くしたい。そこで、シールドコイル3sの軸長は、真空容器7の軸長と同じ程度の長さに設定されている。メインコイル3mの軸長は、シールドコイル3sの軸長より短く設定されている。なお、後記するが、シールドコイル3sの筒状の両端部には、複数の貫通孔14が設けられている。また、真空容器7の内筒壁7aと、傾斜磁場コイル3のシールドコイル3sとの間には、隙間10が設けられている。
【0015】
そして、MRI装置1を後記に詳述するために、真空容器7の円筒形状の中心軸上にz軸を設定している。中心軸の軸方向の中央に原点を設定し、原点から真空容器7の円筒形状の半径方向の垂直(鉛直)方向を、y軸に設定している。同様に、半径方向の水平方向(紙面手前から奥への方向)を、x軸(図2参照)に設定している。
【0016】
図2に、図1のA−A方向の矢視断面図を示す。図2では、傾斜磁場コイル3と真空容器7の内筒壁7aを記載し、RFコイル4等の他の構成物の記載を省略している。傾斜磁場コイル3は、静磁場8(図1参照)に平行な磁場成分が、x、y、z軸方向それぞれに線形に変化する傾斜磁場を作る。このため、傾斜磁場コイル3は、メインコイル3mとして、x軸方向に線形に変化する傾斜磁場を作るxメインコイル3mxと、y軸方向に線形に変化する傾斜磁場を作るyメインコイル3myと、z軸方向に線形に変化する傾斜磁場を作るzメインコイル3mzを有している。そして、傾斜磁場コイル3は、シールドコイル3sとして、xメインコイル3mxの磁場を周囲に漏れるのを抑制するxシールドコイル3sxと、yメインコイル3myの磁場を周囲に漏れるのを抑制するyシールドコイル3syと、zメインコイル3mzの磁場を周囲に漏れるのを抑制するzシールドコイル3szとを有している。xメインコイル3mxと、yメインコイル3myと、zメインコイル3mzと、xシールドコイル3sxと、シールドコイル3syと、zシールドコイル3szとは、それぞれ断面方向に基材(樹脂モールド)3aを挟んで積層されている。この積層は、樹脂モールド3aによって一体化されている。
【0017】
詳細は後記するが、xシールドコイル3sxは、周方向に2分された領域にそれぞれに配置され、断面が半円形状に湾曲しているサドル型のx湾曲コイル11aと11bを有している。x湾曲コイル11aと11bとは、y−z軸平面に対して対称になっている。xシールドコイル3sxと同じ層の、x湾曲コイル11aと11bの間には、yシールドコイル3sy用の軸方向接続線19ayと19byが配置されている。
【0018】
同様に、yシールドコイル3syは、周方向に2分された領域にそれぞれに配置され、断面が半円形状に湾曲しているサドル型のy湾曲コイル12aと12bを有している。y湾曲コイル12aと12bとは、z−x軸平面に対して対称になっている。yシールドコイル3syと同じ層の、y湾曲コイル12aと12bの間には、xシールドコイル3sx用の軸方向接続線19axと19bxが配置されている。また、傾斜磁場コイル3のシールドコイル3sは真空容器7の内筒壁7aに沿って設けられ、傾斜磁場コイル3のシールドコイル3sと真空容器7の内筒壁7aとの間には隙間10が形成されている。なお、y湾曲コイル12aと12bを後記に詳述するために、z軸回りにθ座標を設定している。θ座標の0(ゼロ)[rad]は、x軸上に設定している。
【0019】
図3に、図1のB−B方向の矢視断面図を示す。図3では、傾斜磁場コイル3と真空容器7の内筒壁7aを記載している。RFコイル4(図1参照)は軸長が短いので、真空容器7の軸方向の端部には達せず、図3には描かれていない。また、傾斜磁場コイル3のメインコイル3m(3mx、3my、3mz)も軸長が短いので、真空容器7の軸方向の端部には達せず、図3には描かれていない。傾斜磁場コイル3のシールドコイル3sのzシールドコイル3szも軸長が短いので、真空容器7の軸方向の端部には達せず、図3には描かれていない。このため、傾斜磁場コイル3として真空容器7の軸方向の端部にまで達しているのは、図3に示すように、シールドコイル3sのxシールドコイル3sxとyシールドコイル3syである。
【0020】
真空容器7の軸方向の端部においては、xシールドコイル3sxとyシールドコイル3syとが周方向に配置されていない領域があり、その領域に支持部材15が設けられている。支持部材15によって、傾斜磁場コイル3は真空容器7の内筒壁7aから支持されている。また、前記領域には、傾斜磁場コイル3、すなわち基材(樹脂モールド)3aを貫通する貫通孔14(図1と図4参照)が設けられている。端部には、磁場の調整のために、xシールドコイル3sxとyシールドコイル3syとが周方向に配置されていない、比較的大きな領域が存在し、その領域に、支持部材15と貫通孔14とが設けられる。
【0021】
x湾曲コイル11aと11bとは、y−z軸平面(z=0平面)に対して対称になっており、y湾曲コイル12aと12bとは、z−x軸平面(y=0平面)に対して対称になっているので、z座標が正(z>0)の領域に8個の貫通孔14を設けることができる。
【0022】
引き回し線13ayと13byと13cと13dは、内筒壁7aとy湾曲コイル12a、12bとの隙間10を引き回されて、y湾曲コイル12aと12b同士を接続している。引き回し線13ayと13byと13cと13dは、引き回し線13cと13dによって、貫通孔14内に引き出され、引き回し線13cと13dから引き回し線13ayと13byによって、貫通孔14から隙間10に引き出されている。引き回し線13ay(13c)と13by(13d)は、図3に示すように、z−x軸平面(y=0平面)に対して対称に配置される2本の半円状の銅線である。2本の引き回し線13ayと13byと13cと13dに流れる電流は、それぞれ無視できない磁場を発生させるため、隣接して配置し互いに反対方向に同じ大きさの電流を流し、発生する磁場を相殺させている。
【0023】
引き回し線13axと13bxと13cと13dは、隙間10を引き回されて、x湾曲コイル11aと11b同士を接続している。引き回し線13axと13bxと13cと13dは、引き回し線13cと13dによって、貫通孔14内に引き出され、引き回し線13cと13dから引き回し線13axと13bxによって、貫通孔14から隙間10に引き出されている。引き回し線13ax(13c)と13bx(13d)は、図3に示すように、y−z軸平面(x=0平面)に対して対称に配置される2本の半円状の銅線である。2本の引き回し線13ax(13c)と13bx(13d)に流れる電流は、それぞれ無視できない磁場を発生させるため、隣接して配置し互いに反対方向に同じ大きさの電流を流し、発生する磁場を相殺させている。前記から、xシールドコイル3sxは、引き回し線13axと13bxと13cと13dも含めて、yシールドコイル3syを縮径してθ方向にπ/2[rad]回転させた形状と一致することがわかる。
【0024】
本実施形態によれば、引き回し線13axと13bxと13ayと13byと13cと13dの配線スペースによって、シールドコイル3sの軸長や真空容器7の軸長は左右されないので、MRI装置1全体の軸長を短く保ちつつ、十分に漏れ磁場を低減することができる。
【0025】
図4に、傾斜磁場コイル3の斜視図を示す。なお、図4においては、理解を容易にするため、yメインコイル3myとyシールドコイル3syを記載し、xメインコイル3mx、xシールドコイル3sx、zメインコイル3mz、zシールドコイル3szの記載を省略している。yメインコイル3myは、yシールドコイル3syの内側に配置されている。yメインコイル3myの軸長は、yシールドコイル3syの軸長より短くなっている。yシールドコイル3syの軸方向の両端部には、貫通孔14が設けられている。yシールドコイル3syは、渦巻き状のy湾曲コイル12aと、撮像空間9(図1参照)およびz軸を挟むように配置されy湾曲コイル12aに対向する渦巻き状のy湾曲コイル12bと、撮像空間9(図1参照)とz軸に対してy湾曲コイル12a側に配置される渦巻き状のy湾曲コイル12cと、撮像空間9(図1参照)とz軸を挟むようにy湾曲コイル12cに対向する渦巻き状のy湾曲コイル12dとを有している。y湾曲コイル12a、12b、12c、12dは、薄く形成するために、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)などの良導体の板を渦巻状のコイル線に切り抜いて製作されている。渦巻状に切り抜く手法としては、エッチング、ウォータジェット、パンチングによる切断などの手法を用いることができる。
【0026】
そして、y湾曲コイル12bにy湾曲コイル12aに流す電流と同じ大きさで同じ方向の電流を流し、y湾曲コイル12cとy湾曲コイル12dにy湾曲コイル12aとは同じ大きさであるが逆方向の電流を流している。なお、yメインコイル3myに流す電流の大きさは、y湾曲コイル12aに流す電流の大きさに等しい。これらにより、yシールドコイル3syは、傾斜磁場を発生させるyメインコイル3myのシールドとして機能する。
【0027】
引き回し線13ayと13byは、y湾曲コイル12aと12bとに同じ大きさで同じ方向の電流を流すために、y湾曲コイル12aと12bとを接続している。引き回し線20aと20bは、y湾曲コイル12cと12dとに同じ大きさで同じ方向の電流を流すために、y湾曲コイル12aと12bとを接続している。引き回し線20aと20bも、引き回し線13ayと13byと同様に、貫通孔14から引き出され、傾斜磁場コイル3の外側面と真空容器7の内筒壁7aの隙間10(図1参照)を引き回されている。
【0028】
なお、貫通孔14は、両端合わせて16個設けることができるが、図4においては引き回し線13ayと13byと20aと20bが引き出されているのは、それぞれ2個ずつ使用するので、4個の貫通孔14である。xシールドコイル3sxを考慮してもさらに4個の貫通孔14しか使用しない。このため、使用する8個の貫通孔14のみで、他の貫通孔14は必ずしも形成する必要はない。
【0029】
そして、引き回し線13ayと13byと20aと20bが、シールドコイル3s端部外側に配置されないことから、MRI装置1(図1参照)の大きさはそのままで、シールドコイル3sの軸長を伸ばすことが可能となる。
【0030】
図5に、実施形態のyメインコイル3myとyシールドコイル3syを流れる電流の流路を示す。また、図5には、実線でy湾曲コイル12aを周方向に展開した図も合わせて示し、点線でxシールドコイル3sxのx湾曲コイル11aと11bを周方向に展開した図を示している。実線と点線上の矢印は電流の向きを表しているので、矢印付きの実線と点線に沿ってコイル線が形成されている。
【0031】
y傾斜磁場コイル電源24がyメインコイル3myに接続され、yメインコイル3myに電流が流れる。yメインコイル3myの接続線16a、16bとyシールドコイル3syの端子17a、17bが接続されている。接続線16aから端子17aを通って、y湾曲コイル12aの最外周ターン21に電流が流れる。最外周ターン21から内側に向かって渦巻き状に電流が流れ、貫通孔14に最も近いターン22と接続した引き回し線13c及び貫通孔14から引き出された引き回し線13ayによりy湾曲コイル12bに電流が流れる。y湾曲コイル12bから引き回し線13by及び引き回し線13dによりターン23に電流が流れ、y湾曲コイル12aのターンの中心の渦中心位置18までの残りのターンに電流が流れる。渦中心位置18とyシールドコイル用の軸方向接続線19ayが接続され、yシールドコイル用の軸方向接続線19ay、19byが、y湾曲コイル12c接続している。渦中心位置18からyシールドコイル用の軸方向接続線19ayを通ってy湾曲コイル12cに電流が流れる。引き回し線20bを介してy湾曲コイル12cからy湾曲コイル12dへ電流が流れ、引き回し線20aを介してy湾曲コイル12dからy湾曲コイル12cへ電流が流れる。yシールドコイル用の軸方向接続線19byは、y湾曲コイル12cと端子17bとを接続している。電流は、y湾曲コイル12cから、yシールドコイル用の軸方向接続線19byと端子17bを通って、yメインコイル3myを流れ、y傾斜磁場コイル電源24に戻る。前記で、y傾斜磁場コイル電源24に対して、yメインコイル3my、y湾曲コイル12a、12b、12c、12dが直列に接続され、y傾斜磁場コイル電源24から流れ出た電流が、yメインコイル3my、y湾曲コイル12a、12b、12c、12dの全てを流れることがわかる。
【0032】
また、貫通孔14と支持部材15は、y湾曲コイル12aの端部において、渦巻き状のコイル線のターン21とターン22の線間とターン22とターン23の線間に設けられている。y湾曲コイル12aの端部では、中央部に比べ、コイル線の密度が疎になっている。このため、y湾曲コイル12aの端部に貫通孔14と支持部材15を設けることができる。なお、貫通孔14と支持部材15は、x湾曲コイル11a、11bに対しても、端部のコイル線の密度が疎になっている領域に配置されている。そして、x湾曲コイル11a、11bの端部においても、貫通孔14と支持部材15は、渦巻き状のコイル線の線間に設けられている。貫通孔14と支持部材15は、互いに近接して設けられている。
【0033】
図6に、実施形態の変形例のyメインコイル3myとyシールドコイル3sy(y湾曲コイル12a、12b、12c、12d)を流れる電流の流路を示す。変形例の流路が、図5の実施形態の流路と異なる点は、端子17aと17bがy湾曲コイル12aの内側に位置している点である。端子17aと17bのスペースを確保するために、シールドコイル3sの軸長を短くする必要がない。変形例では、端子17aと17bをy湾曲コイル12aの内部に配置して、y湾曲コイル12aの端部外側の配線スペースをなくし、シールドコイル3sの軸長を伸ばすことを可能としている。後記に電流の流れを述べる。y傾斜磁場コイル電源24から、yメインコイル3my、接続線16aを通って、端子17aに電流が流れる。端子17aは、y湾曲コイル12aの内側に位置しているので、最外周のターン21ではなく、最外周のターン21より内側のターン23と接続している。ここで、ターン23は、貫通孔14に近ければどのターンでも良い。ターン23から内側に向かって渦巻き状に電流が流れ、渦中心位置18まで流れると軸方向接続線19cにより最外周ターン21に電流が流れる。最外周ターン21からまた内側に向かって渦巻き状に電流が流れ、貫通孔14に最も近いターン22を電流が流れる。ターン22と接続した引き回し線13c及び貫通孔14から引き出された引き回し線13ayによりy湾曲コイル12bに電流が流れる。y湾曲コイル12bから引き回し線13by及び引き回し線13dによりyシールドコイル用の軸方向接続線19ayに電流が流れる。以降の電流の流れは、実施形態と同じである。
【0034】
図7に、実施形態の傾斜磁場コイル3の端部の斜視図を示す。x湾曲コイル11a、11bとy湾曲コイル12aの存在しない領域25は、貫通孔14に対して周方向に存在するので、この領域25上に配置される支持部材15は、図7に示すように、引き回し線13cと13dに沿った方向に配置されることになる。そこで、引き回し線13ay、13byは、支持部材15を迂回するように折り曲げて引き回している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の断面図である。
【図2】図1のA−A方向の矢視断面図であり、傾斜磁場コイルと真空容器の内筒壁を記載し、他の構成物は記載を省略している。
【図3】図1のB−B方向の矢視断面図であり、傾斜磁場コイルと真空容器の内筒壁を記載し、他の構成物は記載を省略している。
【図4】傾斜磁場コイルの斜視図であり、yメインコイルとyシールドコイルを記載し、xメインコイル、xシールドコイル、zメインコイル、zシールドコイルの記載を省略している。
【図5】実施形態のyメインコイルとyシールドコイルを流れる電流の流路を示す結線図である。
【図6】実施形態の変形例のyメインコイルとyシールドコイルを流れる電流の流路を示す結線図である。
【図7】傾斜磁場コイルの端部の斜視図であり、貫通孔での引き出し線の引き回しの様子を示している。
【符号の説明】
【0036】
1 磁気共鳴イメージング(MRI)装置
2 静磁場コイル
3 傾斜磁場コイル
3m メインコイル
3mx xメインコイル
3my yメインコイル
3mz zメインコイル
3s シールドコイル
3sx xシールドコイル
3sy yシールドコイル
3sz zシールドコイル
3a 基材(樹脂モールド)
4 RFコイル
5 ヘリウム容器
6 輻射シールド
7 真空容器
7a 内筒壁
8 静磁場
9 撮像空間
10 隙間
11a、11b x湾曲コイル
12a、12b、12c、12d y湾曲コイル
13ay、13by、13ax、13bx、13c、13d 引き回し線
14 貫通孔
15 支持部材
16a、16b メインコイルとシールドコイルを接続する接続線
17a、17b 外部と接続用のシールドコイルの端子
18 y湾曲コイルの渦巻き(ターン)の中心
19ay、19by yシールドコイル用の軸方向接続線
19ax、19bx xシールドコイル用の軸方向接続線
19c 軸方向接続線
20a、20b 引き出し線
21 y湾曲コイル(yシールドコイル)の最外周ターン
22 最外周ターンより1ターン内側のターン
23 最外周ターンより2ターン内側のターン
24 y傾斜磁場コイル電源
25 x湾曲コイルとy湾曲コイルとが径方向に存在しない領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の真空容器内に収納され、前記真空容器の内筒壁より中心軸側の撮像空間に均一な静磁場を形成する静磁場コイルと、
傾斜磁場を形成するメインコイル及び、前記メインコイルの漏れ磁場を抑制し前記内筒壁に沿って設けられる円筒形状のシールドコイルを有する傾斜磁場コイルとを備える磁気共鳴イメージング装置において、
前記シールドコイルは、
周方向に2分された領域にそれぞれに配置される湾曲コイルと、
前記内筒壁と前記湾曲コイルとの隙間を引き回されて前記湾曲コイル同士を接続する引き回し線とを有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記シールドコイルは、端部において、前記湾曲コイルの渦巻き状のコイル線の線間に貫通孔を有し、
前記引き回し線は、前記貫通孔から前記隙間に引き出されることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記引き回し線は、渦巻き状の前記コイル線の複数のターンの内、前記貫通孔に最も近いターンに接続することを特徴とする請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記シールドコイルは、前記メインコイルと接続する端子を有し、
前記端子は、前記シールドコイルの内側に設置され、前記湾曲コイルの渦巻き状のコイル線の複数のターンの最外周ターンより内側のターンと接続することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記貫通孔が設けられた近傍の前記線間に、前記傾斜磁場コイルを前記真空容器から支持する支持部材を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記引き回し線が、前記支持部材を迂回して引き回されることを特徴とする請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−279049(P2009−279049A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131569(P2008−131569)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】