説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】各種機能を利用する際に必要となる操作を簡便にすることで操作者の負担を軽減する。
【解決手段】シリーズリスト表示部26bが、検査において撮像の単位となるシリーズのリストであるシリーズリストを表示部25に表示させ、操作受付部26cが、表示されたシリーズリストの中から少なくとも一つのシリーズを選択する選択操作を操作者から受け付ける。そして、撮像状態判定部26dが、受け付けられた選択操作により選択されたシリーズの撮像状態を判定し、機能実行部26eが、判定された撮像状態に対応付けられている機能を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気共鳴現象を利用して被検体を画像化する磁気共鳴イメージング装置に関し、特に、各種機能を利用する際に必要となる操作を簡便にすることで操作者の負担を軽減することができる磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を表すデータを収集し、収集したデータから画像を再構成することで被検体内を撮像する。かかる磁気共鳴イメージング装置は、操作者によって設定された撮像条件に基づいて撮像を行う。また、磁気共鳴イメージング装置は、検査の種類に応じて、心電や脈、呼吸に同期した撮像を行うこともできる。
【0003】
通常、上述した磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件編集機能や画像表示機能、電波形表示機能、収集状態表示機能などの各種機能を備えている(例えば、特許文献1または2参照)。操作者は、検査中、これらの機能を撮像の状態に応じて適宜に利用することによって、撮像された画像を確認したり、撮像の状況を観察したりすることができる。
【0004】
例えば、操作者は、撮像が完了した状態では、画像表示機能を利用して撮像済みの画像を参照する。また、撮像が失敗した状態では、収集状態表示機能を利用してログなどから失敗の原因を確認する。また、撮像中の状態では、電波系表示機能を利用して心電や脈、呼吸等の同期波形を観察する(同期撮像が行われる場合)。また、撮像前の状態では、撮像条件編集機能を利用して撮像パラメータの変更などを行う。
【0005】
【特許文献1】特開2003−190119号公報
【特許文献2】特開平10−124649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の磁気共鳴イメージング装置では、上述した各種機能はそれぞれ独立した機能として実装されるのが一般的であり、各機能を利用するために必要となる操作も機能ごとに異なっている。したがって、操作者は、撮像の状態に応じて各種機能を利用するためには、機能ごとに異なる操作を行う必要があった。
【0007】
また、一般的に、磁気共鳴イメージング装置による検査では、「シリーズ」と呼ばれる単位で複数の撮像が続けて行われる。その場合、各シリーズの状態は検査の進捗状況によって異なる。したがって、操作者は、複数のシリーズを含む検査で前述した各種機能を利用する際には、検査の進捗状態に応じてシリーズごとに異なる操作を行う必要があった。
【0008】
このように、従来、磁気共鳴イメージング装置による検査では、磁気共鳴イメージングが有する各種機能を利用するために複雑な操作や判断を行う必要があり、操作者の負担が非常に大きかった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による課題を解決するためになされたものであり、各種機能を利用する際に必要となる操作を簡便にすることで操作者の負担を軽減することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を表すデータを収集し、収集したデータから画像を再構成することで被検体内を撮像する磁気共鳴イメージング装置であって、検査において撮像の単位となるシリーズのリストを表示させるシリーズリスト表示手段と、前記シリーズリスト表示手段によって表示されたリストの中から少なくとも一つのシリーズを選択する選択操作を操作者から受け付ける操作受付手段と、前記操作受付手段によって受け付けられた選択操作により選択されたシリーズの撮像状態を判定する撮像状態判定手段と、前記撮像状態判定手段によって判定された撮像状態に対応付けられている機能を実行する機能実行手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、各種機能を利用する際に必要となる操作を簡便にすることで操作者の負担を軽減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る磁気共鳴イメージング装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、磁気共鳴イメージング装置を「MRI装置」と呼ぶ。
【実施例】
【0013】
最初に、本実施例に係るMRI装置の全体構成について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置100の全体構成を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信用RF(Radio Frequency)コイル6、送信部7、受信用RFコイル8、受信部9、シーケンス制御部10および計算機システム20を備える。
【0014】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成されており、内部の空間に一様な静磁場を発生させる。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石などが用いられる。
【0015】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されており、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されている。これら3つのコイルは、傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けることによって、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0016】
かかる傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、リードアウト用傾斜磁場Gr、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびスライス選択用傾斜磁場Gsにそれぞれ対応している。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。
【0017】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部26による制御のもと、寝台4を駆動して天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0018】
送信用RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用RFコイル6に送信する。
【0019】
受信用RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信用RFコイル6によって発生した高周波磁場の影響で被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。受信部9は、受信用RFコイル8によって受信された磁気共鳴信号をデジタル化することによって生データを生成する。
【0020】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス情報に基づいて傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動することによって被検体Pのスキャンを行う。そして、スキャンを行った結果として受信部9から生データが送信されると、シーケンス制御部10は、そのk空間データを計算機システム20へ転送する。
【0021】
なお、ここでいう「シーケンス情報」とは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7がRFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を定義した情報である。
【0022】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う。この計算機システム20は、特に、インタフェース部21、データ処理部22、記憶部23、入力部24、表示部25および制御部26を有する。
【0023】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、このインタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス情報を送信したり、シーケンス制御部10から生データを受信したりする。
【0024】
ここで、インタフェース部21によって受信された生データは、傾斜磁場コイル2により発生したスライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場GrによってSE(Slice Encode)方向、PE(Phase Encode)方向およびRO(Read Out)方向における空間周波数の情報が対応付けられたk空間データとして、記憶部23に格納される。
【0025】
データ処理部22は、記憶部23に記憶されたk空間データに対してフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する。
【0026】
記憶部23は、インタフェース部21によって受信された生データ(k空間データ)や、データ処理部22によって生成された画像データなどを被検体Pごとに記憶する。
【0027】
入力部24は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に用いられる。
【0028】
表示部25は、制御部26による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスが適宜に用いられる。
【0029】
制御部26は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、この制御部26は、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部10に送信することによって被検体Pのスキャンを実行させる。また、制御部26は、データ処理部22によって行われる画像の再構成を制御する。また、制御部26は、入力部24を介して操作者から入力される指示に応じて、インタフェース部21を介して寝台制御部5を制御する。
【0030】
以上、本実施例に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施例では、制御部26が、検査において撮像の単位となるシリーズのリストを表示部25に表示させるとともに、入力部24を介して、表示されたリストの中から少なくとも一つのシリーズを選択する選択操作を操作者から受け付ける。そして、制御部26は、選択操作により選択されたシリーズの撮像状態を判定し、判定した撮像状態に対応付けられている機能を実行する。
【0031】
これにより、操作者は、検査の進捗状況によってシリーズの撮像状態が異なるような場合でも、リストからシリーズを選択するという同じ操作を行うだけで、シリーズごとに、撮像状態に応じた目的の機能を実行することができるようになる。すなわち、本実施例1に係るMRI装置100によれば、各種機能を利用する際に必要となる操作を簡便にすることで、操作者の負担を軽減することができる。
【0032】
以下、制御部26に関する機能を中心に、上述したMRI装置100の機能について詳細に説明する。まず、図1に示した記憶部23および制御部26の構成について説明する。図2は、図1に示した記憶部23および制御部26の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、記憶部23は、特に、シリーズリスト記憶部23a、機能情報記憶部23b、画像データ記憶部23c、撮像条件記憶部23dおよびログ記憶部23eを有する。
【0033】
シリーズリスト記憶部23aは、検査において撮像の単位となるシリーズの撮像状態を示す情報をシリーズごとに記憶する。具体的には、シリーズリスト記憶部23aは、検査内でのシリーズの順番を示すシリーズ番号と、各シリーズの撮像状態を示すステータスとを対応付けた情報を記憶する。図3は、シリーズリスト記憶部23aによって記憶される情報の一例を示す図である。
【0034】
図3に示すように、例えば、シリーズリスト記憶部23aは、ステータスとして、「Done」、「Failed」、「Current」、「Wait」のいずれかをシリーズごとに記憶する。ここで、「Done」は撮像が完了した状態を示しており、「Failed」は撮像が失敗した状態を示している。また、「Current」は撮像中の状態を示しており、「Wait」は撮像前の状態を示している。
【0035】
このシリーズリスト記憶部23aによって記憶される情報は、検査が行われている間、後述するシリーズリスト更新部26aによって、シリーズごとに随時最新の状態に更新される。
【0036】
図2にもどって、機能情報記憶部23bは、撮像状態に応じて利用される機能を示す情報を記憶する。具体的には、機能情報記憶部23bは、撮像状態を示すステータスと、MRI装置100が有する機能とを対応付けた情報を記憶する。図4は、機能情報記憶部23bによって記憶される情報の一例を示す図である。
【0037】
図4に示すように、例えば、機能情報記憶部23bは、撮像が完了した状態を示す「Done」と画像表示機能とを対応付けて記憶し、撮像が失敗した状態を示す「Failed」とログ表示機能とを対応付けて記憶する。また、機能情報記憶部23bは、撮像中の状態を示す「Current」と参照情報表示機能とを対応付けて記憶し、撮像前の状態を示す「Wait」と撮像条件編集機能とを対応付けて記憶する。
【0038】
この機能情報記憶部23bによって記憶される情報は、MRI装置100が病院等に設置される際に保守員が登録することとしてもよいし、MRIR装置100が設置された後に操作者が登録することとしてもよい。いずれにしても、情報登録の担当者は、撮像状態ごとに、操作者によって利用される可能性が高い機能をあらかじめ登録しておく。
【0039】
図2にもどって、画像データ記憶部23cは、データ処理部22によって再構成された画像データを記憶する。
【0040】
撮像条件記憶部23dは、検査が行われる際に操作者によって事前に設定された撮像条件をシリーズごとに記憶する。具体的には、撮像条件記憶部23dは、複数種類の撮像パラメータを撮像条件として記憶する。例えば、撮像条件記憶部23dは、撮像パラメータの1つとして撮像の種類を記憶する。ここでいう「撮像の種類」とは、例えば、同期撮像やシミング撮像、動き補償撮像、ダイナミック撮像、寝台移動撮像などである。
【0041】
また、撮像条件記憶部23dは、操作者によって撮像条件とともに設定される後処理の種類や、撮像される画像の種類なども記憶する。ここでいう「後処理」とは、画像が再構成された後に行われる処理であり、「後処理の種類」とは、例えば、MIP(Maximum Intensity Projection)処理やダイナミック差分処理、フィルミングなどである。また、「撮像される画像の種類」とは、例えば、T強調画像やT強調画像、拡散強調画像、ダイナミック画像などである。
【0042】
ログ記憶部23eは、MRI装置100の動作に関する各種のログを記憶する。例えば、ログ記憶部23eは、例えば、MRI装置100が有するハードウェアの状態(例えば、温度や負荷などの状態)が変化した場合に出力される情報や、撮像が失敗した場合に出力される失敗の原因を示す情報などの各種情報をログとして記憶する。
【0043】
一方、制御部26は、特に、シリーズリスト更新部26a、シリーズリスト表示部26b、操作受付部26c、撮像状態判定部26dおよび機能実行部26eを有する。
【0044】
シリーズリスト更新部26aは、検査が行われている間、シリーズリスト記憶部23aによって記憶される情報をシリーズごとに随時最新の状態に更新する。
【0045】
シリーズリスト表示部26bは、検査において撮像の単位となるシリーズのリスト(以下、「シリーズリスト」と呼ぶ)を表示部25に表示させる。ここで、「シリーズリスト」とは、検査中のステータスごとに、撮像の状態を示すステータスを列挙したリストである(例えば、図6参照)。具体的には、シリーズリスト表示部26bは、検査中、所定の周期でシリーズリスト記憶部23aからシリーズごとに撮像状態を示す情報を取得し、取得した情報に基づいて表示部25にシリーズリストを表示させる。
【0046】
操作受付部26cは、入力部24を介して操作者から各種指示や情報入力を受け付ける。例えば、操作受付部26cは、シリーズリスト表示部26bによって表示部25に表示されたシリーズリストの中から少なくとも一つのシリーズを選択する選択操作を操作者から受け付ける。
【0047】
撮像状態判定部26dは、操作受付部26cによって受け付けられた選択操作により選択されたシリーズの撮像状態を判定する。具体的には、撮像状態判定部26dは、操作受付部26cによってシリーズを選択する選択操作が受け付けられると、シリーズリスト記憶部23aに記憶されている情報(図3参照)に基づいて、選択されたシリーズのステータスを判定する。
【0048】
例えば、図3に示した情報がシリーズリスト記憶部23aに記憶されていたとする。その場合、撮像状態判定部26dは、操作者によってシリーズ番号が「1」のシリーズが選択されたときには、そのシリーズのステータスが「Done」(撮像が完了した状態)であると判定する。また、例えば、操作者によってシリーズ番号が「4」のシリーズが選択されたときには、そのシリーズのステータスが「Wait」(撮像前の状態)であると判定する。
【0049】
機能実行部26eは、撮像状態判定部26dによって判定された撮像状態に対応付けられている機能を実行する。具体的には、機能実行部26eは、撮像状態判定部26dによってシリーズのステータスが判定されると、機能情報記憶部23bに記憶されている情報(図4参照)に基づいて、判定されたステータスに対応付けられている機能を特定する。そして、機能実行部26eは、特定した機能を実行する。なお、かかる機能実行部26eによる各種機能の実行ついては、後に詳細に説明する。
【0050】
次に、本実施例に係るMRI装置100における各種機能の実行手順について説明する。図5は、本実施例に係るMRI装置100における各種機能の実行手順を示すフローチャートである。
【0051】
図5に示すように、MRI装置100では、操作者によって検査が開始されると(ステップS101,Yes)、まず、シリーズリスト表示部26bが、表示部25にシリーズリストを表示させる(ステップS102)。図6は、シリーズリスト表示部26bによって表示されるシリーズリストの一例を示す図である。
【0052】
図6に示すように、例えば、シリーズリスト表示部26bは、表示部25が有する表示領域の左側に、シリーズリスト記憶部23aから取得したシリーズ番号およびステータスをシリーズごとに並べて表示する。なお、図6の例は、図3に示した情報がシリーズリスト記憶部23aに記憶されていた場合のシリーズリストを示している。また、図6の例において、シリーズリスト右横の領域は、撮像状態に応じた各種情報を表示するための表示領域である。
【0053】
図5にもどって、続いて、操作受付部26cが、表示部25に表示されたシリーズリストからシリーズを選択する選択操作を操作者から受け付けると(ステップS103,Yes)、撮像状態判定部26dが、操作者によって選択されたシリーズのステータスを判定する(ステップS104)。
【0054】
そして、撮像状態判定部26dによってステータスが「Wait」であると判定された場合には(ステップS105,Yes)、機能実行部26eが、撮像条件編集機能を実行する(ステップS106)。ここで、「撮像条件編集機能」とは、操作者から各種撮像パラメータの変更を受け付け、受け付けた変更を前述した撮像条件記憶部23dに反映する機能である。図7は、撮像条件編集機能による撮像条件編集画面の一例を示す図である。
【0055】
図7に示すように、例えば、機能実行部26eは、操作者によってステータスが「Wait」であるシリーズが選択されると、各種撮像パラメータを変更するための撮像条件編集画面をシリーズリストの右横に表示し、選択されたシリーズに関するパラメータの変更を受け付ける。
【0056】
図5にもどって、ステータスが「Current」であると判定された場合には(ステップS107,Yes)、機能実行部26eは、参照情報表示機能を実行する(ステップS108)。ここで、「参照情報表示機能」とは、実施中の撮像に関する各種の情報を表示する機能である。この参照情報表示機能については、後に詳細に説明する。
【0057】
また、ステータスが「Failed」であると判定された場合には(ステップS109,Yes)、機能実行部26eは、ログ表示機能を実行する(ステップS110)。ここでいう「ログ表示機能」とは、ログ記憶部23eに記憶されているログを参照して、操作者によって選択されたシリーズの撮像が失敗した原因を示す情報を取得して表示部25に表示する機能である。
【0058】
なお、このとき、機能実行部26eは、ログから取得した情報を表示する替わりに、例えば、ログ記憶部23eに記憶されているログに基づいて、メンテナンスに関する処理を実行したり、サービスマン(保守員)への通知を実行したりしてもよい。または、例えば、失敗を防ぐための指示を表示してもよい。または、再撮像の指示を受け付けるためのボタンをさらに表示するなどして、再撮像を行うことができるようにしてもよい。図8は、メンテナンスに関する処理の一例を示す図である。
【0059】
図8に示すように、例えば、機能実行部26eは、操作者によってステータスが「Failed」であるシリーズが選択されると、選択されたシリーズに関するメンテナンス情報をシリーズリストの右横に表示する。なお、図8の例において、「アクション」は、撮像を行っている操作者向けの情報であり、「原因」は、サービスマン(保守員)向けの情報である。
【0060】
図5にもどって、ステータスが「Done」であると判定された場合には(ステップS111,Yes)、機能実行部26eは、画像表示機能を実行する(ステップS112)。ここで、「画像表示機能」とは、MRI装置100によって撮像された画像を表示する機能である。図9は、画像表示機能による画像表示の一例を示す図である。
【0061】
図9に示すように、例えば、機能実行部26eは、操作者によってステータスが「Done」であるシリーズが選択されると、選択されたシリーズで撮像された画像をシリーズリストの右横に表示する。なお、図9の例では、ひとつの画像のみを表示する場合を示しているが、複数の画像が表示されてもよい。
【0062】
また、画像表示機能によって表示された画像に対して、各種の画像処理を行うことができるようにしてもよい。その場合、機能実行部26eは、データ処理部22などを適宜に制御して、選択されたシリーズで撮像された画像に対して輝度調整やフィルター処理、MIP(Maximum Intensity Projection)処理、他の装置(例えば、画像保管サーバなど)への転送処理、画像をフィルムに転写するフィルミングなどの後処理を施す。
【0063】
このように、本実施例に係るMRI装置100では、操作者によって選択されたシリーズの撮像状態に応じて、実行される機能が変わる。すなわち、操作者によって選択されたシリーズの撮像状態に応じて、装置の振る舞いが変わる。
【0064】
次に、図5に示した参照情報表示機能の処理手順について説明する。図10は、図5に示した参照情報表示機能の処理手順を示すフローチャートである。図10に示すように、機能実行部26eは、参照情報表示機能として、まず、撮像条件記憶部23dを参照して、操作者によって選択されたシリーズの撮像条件を確認する(ステップS201)。
【0065】
続いて、機能実行部26eは、確認した撮像条件に応じて、各種機能を実行する。具体的には、機能実行部26eは、撮像条件に含まれる撮像の種類を確認し、撮像の種類が「同期撮像」であった場合には(ステップS202,Yes)、実施中の撮像において用いられている同期信号を取得し、取得した同期信号の波形を示す同期波形を表示部25に表示する(ステップS203)。図11は、参照情報表示機能による同期波形の表示の一例を示す図であり、心電同期波形を表示した場合を示している。
【0066】
図11に示すように、例えば、機能実行部26eは、操作者によってステータスが「Current」であるシリーズが選択されると、例えば、心電や脈、呼吸などの同期波形をシリーズリストの右横に表示する。また、例えば、機能実行部26eは、RF信号の波形などを表示してもよい。
【0067】
図5に戻って、撮像の種類が「シミング撮像」であった場合には(ステップS204,Yes)、機能実行部26eは、シミングが行われた後の磁場の中心周波数(f0)を検出し、検出した中心周波数を表示する(ステップS205)。
【0068】
また、撮像の種類が「動き補償撮像」であった場合には(ステップS206,Yes)、機能実行部26eは、横隔膜の動きを示すエコー信号に基づいて、横隔膜の状態波形を表示する(ステップS207)。
【0069】
また、撮像の種類が「ダイナミック撮像」であった場合には(ステップS208,Yes)、機能実行部26eは、ダイナミック撮像によって経時的に撮像される画像を撮像順に並べて表示することによって、ダイナミック撮像の進捗状況を表示する(ステップS209)。
【0070】
また、撮像の種類が「寝台移動撮像」であった場合には(ステップS210,Yes)、機能実行部26eは、寝台制御部5から天板4aの移動量を取得し、取得した移動量に基づいて、天板4aの位置を示す寝台位置状況を表示する(ステップS211)。
【0071】
このように、本実施例に係るMRI装置100では、操作者によって選択されたシリーズの撮像条件に応じて、実行される機能が変わる。なお、ここでは、撮像の種類に応じて、実行される機能を変える場合について説明したが、例えば、撮像部位の種類や撮像される画像の枚数など、他の撮像パラメータに応じて、実行される機能を変えてもよい。
【0072】
上述してきたように、本実施例では、シリーズリスト表示部26bが、検査において撮像の単位となるシリーズのリストであるシリーズリストを表示部25に表示させ、操作受付部26cが、表示されたシリーズリストの中から少なくとも一つのシリーズを選択する選択操作を操作者から受け付ける。そして、撮像状態判定部26dが、受け付けられた選択操作により選択されたシリーズの撮像状態を判定し、機能実行部26eが、判定された撮像状態に対応付けられている機能を実行する。
【0073】
かかる構成により、操作者は、シリーズリストからシリーズを選択するという同じ操作を行うだけで、シリーズごとの状態に応じた目的の処理を実行することができるようになる。また、操作者は、複雑な操作を覚える必要もない。したがって、本実施例によれば、各種機能を利用する際に必要となる操作を簡便にすることで操作者の負担を軽減することができる。
【0074】
また、本実施例では、機能実行部26eが、機能を実行する際に、検査が行われる際に設定される撮像条件に応じて、実行する機能を変えるので、撮像条件に応じた機能を自動的に実行することが可能になり、操作者の負担をさらに軽減することができる。
【0075】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態で実施されてもよいものである。
【0076】
例えば、機能実行部26eが、検査が行われる際に設定される後処理の種類に応じて、実行する機能を変えるようにしてもよい。この場合、例えば、機能実行部26eが、操作者によってステータスが「Done」であるシリーズが選択された場合に、撮像条件記憶部23dを参照して、選択されたシリーズの撮像条件に含まれている後処理の種類を確認する。
【0077】
そして、例えば、後処理の種類がMIP処理であった場合には、機能実行部26eは、MIP処理を行ううえで必要となるパラメータの入力を操作者から受け付けるためのパラメータ入力画面を表示部25に表示する。その後、操作者によってパラメータが入力されると、機能実行部26eは、入力されたパラメータに基づいてMIP処理を行うようデータ処理部22を制御する。
【0078】
このように、機能実行部26eが、検査が行われる際に設定される後処理の種類に応じて、実行する機能を変えることによって、例えば、撮像された画像に対して実施される後処理の種類ごとに操作者が利用可能な機能が限られるような場合に、操作者に不要な操作を行わせることがなくなるので、操作者の負担をより軽減することが可能になる。
【0079】
または、機能実行部26eが、検査において撮像される画像の種類に応じて、実行する機能を変えるようにしてもよい。この場合、例えば、機能実行部26eが、操作者によってステータスが「Done」であるシリーズが選択された場合に、撮像条件記憶部23dを参照して、選択されたシリーズで撮像される画像の種類を確認する。
【0080】
そして、機能実行部26eは、例えば、データ処理部22が実行できる後処理の中から、確認した種類の画像に対して実施可能なものを選び出し、選び出した後処理の一覧を表示部25に表示する。その後、表示した一覧の中から後処理を選択する操作が操作者によって行われた場合には、機能実行部26eは、データ処理部22を制御して、選択された後処理を実行させる。
【0081】
このように、機能実行部26eが、検査において撮像される画像の種類に応じて、実行する機能を変えることによって、例えば、撮像される画像の種類ごとに操作者が利用可能な機能が限られるような場合に、操作者に不要な操作を行わせることがなくなるので、操作者の負担をより軽減することができる。
【0082】
または、機能実行部26eが、操作者に応じて、実行する機能を変えるようにしてもよい。この場合、例えば、機能実行部26eが、図8に示したメンテナンス情報を表示する際に、MRI装置100を使用する際に入力されるユーザID等によって操作者の属性を確認し、操作者が撮影技師であった場合には「アクション」の情報のみを表示部25に表示させ、操作者がサービスマンであった場合には「原因」の情報のみを表示部25に表示させる。
【0083】
このように、機能実行部26eが、操作者に応じて、実行する機能を変えることによって、操作者ごとに利用する機能が異なるような場合に、操作者に不要な操作を行わせることがなくなるので、操作者の負担をより軽減することができる。また、操作者ごとに適切な機能を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件編集機能や画像表示機能、電波形表示機能、収集状態表示機能などの各種機能を備える場合に有用であり、特に、各種機能を利用する際に必要となる操作を簡便にすることで操作者の負担を軽減することが求められる場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施例に係るMRI装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示した記憶部および制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】シリーズリスト記憶部によって記憶される情報の一例を示す図である。
【図4】機能情報記憶部によって記憶される情報の一例を示す図である。
【図5】本実施例に係るMRI装置における各種機能の実行手順を示すフローチャートである。
【図6】シリーズリスト表示部によって表示されるシリーズリストの一例を示す図である。
【図7】撮像条件編集機能による撮像条件編集画面の一例を示す図である。
【図8】メンテナンスに関する処理の一例を示す図である。
【図9】画像表示機能による画像表示の一例を示す図である。
【図10】図5に示した参照情報表示機能の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】参照情報表示機能による同期波形の表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 寝台
4a 天板
5 寝台制御部
6 送信用RFコイル
7 送信部
8 受信用RFコイル
9 受信部
10 シーケンス制御部
20 計算機システム
21 インタフェース部
22 データ処理部
23 記憶部
23a シリーズリスト記憶部
23b 機能情報記憶部
23c 画像データ記憶部
23d 撮像条件記憶部
23e ログ記憶部
24 入力部
25 表示部
26 制御部
26a シリーズリスト更新部
26b シリーズリスト表示部
26c 操作受付部
26d 撮像状態判定部
26e 機能実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴現象を利用して被検体内を表すデータを収集し、収集したデータから画像を再構成することで被検体内を撮像する磁気共鳴イメージング装置であって、
検査において撮像の単位となるシリーズのリストを表示させるシリーズリスト表示手段と、
前記シリーズリスト表示手段によって表示されたリストの中から少なくとも一つのシリーズを選択する選択操作を操作者から受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段によって受け付けられた選択操作により選択されたシリーズの撮像状態を判定する撮像状態判定手段と、
前記撮像状態判定手段によって判定された撮像状態に対応付けられている機能を実行する機能実行手段と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記機能実行手段は、前記機能を実行する際に、検査が行われる際に設定される撮像条件に応じて、実行する機能を変えることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記機能実行手段は、前記機能を実行する際に、検査が行われる際に設定される後処理の種類に応じて、実行する機能を変えることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記機能実行手段は、前記機能を実行する際に、検査において撮像される画像の種類に応じて、実行する機能を変えることを特徴とする請求項1、2または3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記機能実行手段は、前記機能を実行する際に、操作者に応じて、実行する機能を変えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−142423(P2010−142423A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322856(P2008−322856)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】