磁気共鳴イメージング装置
【課題】磁気共鳴イメージングにおいて、撮影タイミングに依存しない簡便な手法で確実に呼吸体動の影響を低減する技術を提供する。
【解決手段】呼吸動、心拍動などの周期的体動により変位する被検体において、特定の体動時相で収集したエコー信号を特定のk空間に集め、その結果から画像を再構成する。被検体の体動時相は、受信コイルを構成する複数のサブコイルの感度分布を用い、各サブコイルで受信したエコー信号のピーク値に基づき、被検体の変位を特定し、判別する。
【解決手段】呼吸動、心拍動などの周期的体動により変位する被検体において、特定の体動時相で収集したエコー信号を特定のk空間に集め、その結果から画像を再構成する。被検体の体動時相は、受信コイルを構成する複数のサブコイルの感度分布を用い、各サブコイルで受信したエコー信号のピーク値に基づき、被検体の変位を特定し、判別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を検出し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)技術に関する。特に、呼吸体動の影響を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングにおいて、呼吸体動による画質劣化を低減する手法としてゲート法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、横隔膜の一部を励起した信号をトリガとして、横隔膜の動きに合わせて撮影断面を移動させ、呼吸体動による影響を低減する技術が開示されている。ここでは、体軸方向の動きを相殺し、被検体が相対的に静止した状態を作り出すため、撮影断面を、被検体の体軸方向に移動させる。
【0003】
また、受信コイルを複数のチャンネル(サブコイル)によって構成し、各々のサブコイルの感度分布を画像再構成時に用いるものがある(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、感度分布を折り返しアーチファクトを除去するために用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−057226号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Klass P. Pruessmann, Markus Weiger, Markus B. Scheidegger, and Peter Boesiger. SENSE Sensitivity Encoding for Fast MRI. Magnetic Resonance in Medicine 42:952−962(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
呼吸体動による画質劣化を低減するため、横隔膜の信号をトリガとして用いる場合、通常の撮影パルスシーケンスに加えて横隔膜の選択とトリガ信号発生のための第二のパルスシーケンスが必要となる。また、トリガ信号から被検体の変位を算出し、励起毎に算出した変位に合わせた撮影断面に変更するといった作業が必要となり、撮影手順全体が煩雑となる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、磁気共鳴イメージングにおいて、撮影タイミングに依存しない簡便な手法で確実に呼吸体動の影響を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、呼吸動、心拍動などの周期的体動により変位する被検体において、特定の体動時相で収集したエコー信号を特定のk空間に集め、その結果から画像を再構成する。被検体の体動時相は、受信コイルを構成する複数のサブコイルの感度分布を用いて特定する。
【0009】
具体的には、均一な磁場空間を生成する静磁場生成手段と、x、y、zの3軸方向に沿って磁場強度が線形に変化する傾斜磁場を生成する傾斜磁場生成手段と、被検体内の原子核スピンに磁気共鳴を誘起する高周波磁場パルスを照射する高周波磁場送信手段と、前記原子核スピンから放出されるエコー信号を検出する受信手段と、前記受信手段で検出したエコー信号を用いて画像を再構成する信号処理手段と、前記傾斜磁場生成手段、前記高周波磁場送信手段、および前記受信手段の動作を制御する動作制御手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置であって、前記受信手段は、複数のサブコイルを備え、前記動作制御手段は、非直交系サンプリング法に基づくパルスシーケンスに従って前記制御を行い、前記信号処理手段は、前記複数のサブコイル各々の感度分布と当該複数のサブコイルで検出したエコー信号各々のピーク値の変化量とにより前記被検体の体動時相を判別し、前記検出したエコー信号を予め用意された複数のk空間の中で前記判別した体動時相に対応づけられたk空間にk空間データとして配置するk空間配置手段と、前記k空間データから画像を再構成する画像再構成手段と、を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気共鳴イメージングにおいて、撮影タイミングに依存しない簡便な手法で確実に呼吸体動の影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態のMRI装置の機器構成および機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態のパルスシーケンス例である。
【図3】(a)および(b)は、ラディアルサンプリング法によるk空間充填の様子を説明するための図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態の変位特定手法を説明するための図であり、(b)は、本発明の実施形態の各サブコイルの感度分布を示す図である。
【図5】(a)および(b)は、本発明の実施形態の被検体の変位特定手法を説明するための図である。
【図6】(a)および(b)は、本発明の実施形態の被検体の変位特定手法を説明するための図である。
【図7】(a)および(b)は、本発明の実施形態の被検体の変位特定手法を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態の信号処理の処理フローである。
【図9】(a)〜(d)は、本発明の実施形態の計測軌跡を説明するための図である。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の実施形態のk空間充填の様子を説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態の他の例の変位特定手法を説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態の他の例の変位特定手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用する実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
本実施形態の磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置)について説明する。図1は、本実施形態のMRI装置100の機器構成および機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態のMRI装置100は、均一な磁場空間を発生する超伝導コイルからなる静磁場発生コイル1と、傾斜磁場発生系を構成するx、y、zの3軸方向に沿って磁場強度が線形に変化する傾斜磁場を発生する3組の傾斜磁場発生コイル2および傾斜磁場電源5と、送信系を構成する被検体10の磁気共鳴を誘起する高周波磁場発生コイル3および高周波磁場電源6と、受信系を構成する被検体10から発生する核磁気共鳴信号(エコー信号)を受信する受信コイル4および受信コイル4で受信した信号を検出する信号検出部8と、被検体10を静磁場発生コイル1内に搬送する寝台7と、シーケンサ9と、制御装置11と、ユーザインタフェースとして制御装置11に接続される表示装置12と、操作装置13と、を備える。
【0014】
なお、本実施形態の受信コイル4は、少なくとも2つのサブコイル41を備えた、多チャンネル型受信コイルにより構成される。サブコイル41それぞれに、信号検出部8として増幅器、直交位相検波器、A/D変換器が接続される。各サブコイル41で収集されたデータは、シーケンサ9を介して制御装置11に送られ、それぞれ処理される。
【0015】
シーケンサ9は、制御装置11からの指示を受け、予め記憶するパルスシーケンスに従って、傾斜磁場電源5、高周波磁場電源6および信号検出部8の動作を制御する。パルスシーケンスには、これらの各部を動作させるために必要な情報、たとえば、傾斜磁場および高周波磁場の印加強度、印加時間、印加タイミング、エコー信号検出タイミング等が含まれる。
【0016】
制御装置11は、シーケンサ9に制御指示を与える動作制御部110と、信号検出部8が検出したエコー信号を処理して画像を再構成する信号処理部120とを備え、MRI装置100全体の動作を制御する。制御装置11は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、CPUが記憶装置に格納されているプログラムをメモリにロードして実行することにより、動作制御部110と信号処理部120とを実現する。
【0017】
次に、本実施形態の動作制御部110が、シーケンサ9に実行させるパルスシーケンスの一例を説明する。本実施形態では、直交系サンプリング法の場合と比較して、被検体の体動による影響が少ない非直交系サンプリング法を用いる。ここでは、非直交系サンプリング法の一つであるラディアルサンプリング法を用いる場合を例にあげて説明する。ラディアルサンプリング法では、k空間を放射線状に走査し、原点を通る放射状の軌跡を有するサンプリングデータを取得する。なお、本実施形態では、以下のパルスシーケンスで選択励起される平面をxy平面とし、それに直交する方向をz方向とする。
【0018】
図2は、ラディアルサンプリング法を用いた本実施形態のパルスシーケンス201の例である。なお、図2のRF、Gz、Gx,Gy、ech0は、それぞれ、高周波磁場パルス、z方向の傾斜磁場、x方向の傾斜磁場、y方向の傾斜磁場の印加およびエコー信号収集のタイミングチャートである。本図に示すように、まず、高周波磁場21とz方向の傾斜磁場22とを同時に印加し、傾斜磁場22により特定される領域(xy平面)を選択励起する。次に、x方向に傾斜磁場23を印加し、y方向に傾斜磁場24を印加しながら、エコー信号25をサンプリングする。
【0019】
エコー信号25を配置するk空間において、傾斜磁場23の時間積分値はkx方向に沿って変化し、傾斜磁場24の時間積分値はky方向に沿って変化するため、傾斜磁場23および傾斜磁場24を合成することによりk空間におけるサンプリングの軌跡が示される。本実施形態では、ラディアルサンプリング法を用いるため、動作制御部110は、これらの軌跡がk空間で放射状になるよう、傾斜磁場23および傾斜磁場24を変化させ、シーケンサ9にパルスシーケンス201の実行を繰り返させる。なお、パルスシーケンス201は、繰り返し時間TRごとに繰り返される。k空間を360度走査し、画像再構成に必要な数のエコー信号25を収集するため、繰り返し毎に軌跡がkx軸と成す角度が変化するよう傾斜磁場23および傾斜磁場24の印加強度、印加時間は制御される。
【0020】
図2に示すパルスシーケンス201を実行し、サンプリングしたエコー信号25をk空間に配置した結果を図3に示す。図3(a)では、パルスシーケンス201を1回実行し、軌跡31に沿ってエコー信号25を取得した結果である。図3(b)は、パルスシーケンス201を10回繰り返し、それぞれ、軌跡30〜39に沿ってエコー信号25を取得した結果である。
【0021】
従来は、図3に示すように、1のk空間に取得した全てのエコー信号25(軌跡)を配置する。そして、エコー信号25(軌跡)が画像再構成に必要な数だけ得られたら、補間処理を用いて規則正しい格子座標上のデータを作成するグリッディング処理を行い、画像を再構成する。
【0022】
本実施形態では、従来のように、受信(取得)したエコー信号25を1のk空間に配置せず、被検体10の基準位置からの変位に応じて、予め設けられた複数のk空間のいずれかに配置し、少なくとも1のk空間に配置されたエコー信号25から画像を再構成する。すなわち、本実施形態では、呼吸動、心拍動などの周期的体動により変位する被検体10において、特定の体動時相で収集したエコー信号25を特定のk空間に集め、その結果から画像を再構成する。
【0023】
これを実現するため、本実施形態の信号処理部120は、エコー信号25取得時の被検体10の体動時相を判別し、体動時相毎に予め設けられているk空間に当該エコー信号25を配置するk空間配置部121と、画像再構成可能なエコー信号25が充填された際、当該k空間データから画像を再構成する画像再構成部122とを備える。
【0024】
k空間配置部121は、被検体10の体動時相を判別するにあたり、各サブコイル41の感度分布を用いる。すなわち、各サブコイル41の感度分布と各サブコイル41で受信したエコー信号25のピーク値とから算出した被検体10の基準位置からの変位に基づき、当該エコー信号25取得時の被検体10の体動時相を判別する体動時相判別部123を備える。また、エコー信号25がいずれかのk空間に配置される毎に、当該k空間において充填されたエコー信号25により画像再構成が可能か否かを判別する再構成可否判別部124とを備える。k空間配置部121は、体動時相判別部123が判別した体動時相に応じて、予め設けられた複数のk空間の中の、当該体動時相に応じて設けられたk空間に受信したエコー信号25を配置する。また、画像再構成部122は、再構成可否判別部124で画像再構成に必要なだけのエコー信号25が充填されたと判別されたk空間について、当該k空間に配置されたエコー信号25に対してフーリエ変換を行い、実空間の画像を再構成する。
【0025】
次に、本実施形態の体動時相判別部123が、各サブコイル41の感度分布と、各サブコイル41で受信したエコー信号25のピーク値とから、被検体10の体動時相を判別する処理の詳細について説明する。体動時相判別部123は、取得した各エコー信号25について、当該エコー信号25取得時の被検体10の変位を特定し、同程度の変位のものを、同体動時相で収集したエコー信号25と判別する。
【0026】
以下、各サブコイル41が受信したエコー信号25のピーク値の変化から、被検体10の変位を特定する変位特定手法について説明する。図4(a)は、本実施形態の変位特定手法を説明するための図である。ここでは、簡単のため、被検体10が1方向(x方向とする)のみ変位する場合を例にあげて説明する。1方向のみの変位を検出するため、受信コイル4は少なくとも2つのサブコイル41aとサブコイル41bとを備える。
【0027】
ここでは、サブコイル41aとサブコイル41bとが、図示するような略同一の感度分布特性を持つ同種のコイルである場合を例にあげて説明する。そして、サブコイル41aおよび41bは、傾斜磁場12により選択励起された領域40により特定されるxy平面上のx軸方向に沿って、被検体10を中心に対向する位置に配置されるものとする。また、本実施形態では、サブコイル41aおよび41bのx軸方向の中間点を座標軸の原点とする。また、各サブコイル41aおよび41bの感度分布は、予め求め、記憶装置などに格納しておく。感度分布を求める際には、空間分解能は低くてもよいため、被検体の動きが影響しないような短時間で画像を取得可能なパルスシーケンスを用いる。
【0028】
サブコイル41aで受信したエコー信号25を、エコー信号25aとし、サブコイル41bで受信したエコー信号をエコー信号25bとする。これらのエコー信号25aおよび25bのピーク値は、k空間において、原点を走査した時刻において得られる。
【0029】
ここで、各サブコイル41aおよびサブコイル41bのx軸方向の感度分布61aおよび61bを図4(b)に示す。本図に示すように、各サブコイル41aおよびサブコイル41bの感度は、サブコイル41aおよびサブコイル41bの近傍は高く、コイルから離れるに従ってなめらかに低くなるよう変化する。ピーク値は、コイルの感度分布に依存して変化するため、被検体10がサブコイル41aに近いと、サブコイル41aで検出するエコー信号25aのピーク値は高くなり、被検体10がサブコイル41aから離れるに従って同ピーク値は低くなる。サブコイル41bで受信するエコー信号25bについても同様である。
【0030】
図5から図7を用い、変位特定手法を具体的に説明する。ここでは、被検体10の重心が原点にある場合の、エコー信号25aおよび25bそれぞれのピーク値を、Pa0、Pb0とし、各サブコイル41aおよび41bの感度分布61aおよび感度分布61bの、原点における感度をs0とする。また、被検体10の重心が原点にある場合の被検体10の位置を基準位置と呼ぶ。
【0031】
図5は、被検体10がx軸上でサブコイル41b側に移動した場合の、変位特定手法を説明するための図である。図5(a)は被検体10の移動とピーク値の変化の様子を、図5(b)は、各サブコイル41aおよび41bの感度分布61aおよび61bを示す。本図に示すように、被検体10がx軸上でサブコイル41b側に移動した場合、エコー信号25aのピーク値Paは、ピーク値Pa0から減少し、エコー信号25bのピーク値PbはPb0から増加する。
【0032】
このとき、例えば、本図に示すように、エコー信号25aのピーク値Paがピーク値Pa0から例えば10%減少したとすると、サブコイル41aに関して、被検体10は、基準位置から感度分布61a上で感度がs0から10%低い感度(s11)に対応する位置(x11)に移動したものと考えられる。また、エコー信号25bのピーク値Pbが、ピーク値Pb0から例えば20%増加したとすると、サブコイル41bに関して、被検体10は、基準位置から感度分布61b上で感度がs0から20%高い感度(s12)に対応する位置(x12)に移動したものと考えられる。
【0033】
なお、|x11|と|x12|とが等しい場合、図5(a)に示すように、被検体10は略その形状を保ち、x軸方向に平行移動した状態と考えられる。一方、|x11|と|x12|とが異なる値であれば、被検体10は、サブコイル41aおよびサブコイル41bに対して、異なる変位を示したことになる。この場合は、図6に示すように、変形してx軸方向に移動した状態と考えられる。なお、図6(a)は、被検体10の移動とピーク値の変化の様子を、図6(b)は、各サブコイル41aおよび41bの感度分布61aおよび61bを示す。本図における各符号は、図5と同じ意味である。
【0034】
図7は、被検体10がx軸上でサブコイル41a側に移動した場合の、変位特定手法を明するための図である。図7(a)は被検体10の移動とピーク値の変化の様子を、図7(b)は、各サブコイル41aおよび41bの感度分布61aおよび61bを示す。本図に示すように、上記図5で説明した場合とは逆に、被検体10がx軸上でサブコイル41a側に移動した場合、エコー信号25aのピーク値Paは、ピーク値Pa0から増加し、エコー信号25bのピーク値PbはPb0から減少する。
【0035】
このとき、例えば、エコー信号25aのピーク値Paがピーク値Pa0から例えば20%増加したとすると、サブコイル41aに関し、被検体10は、基準位置から感度分布61a上で感度がs0から20%高くなる感度(s21)に対応する位置(x21)に移動したものと考えられる。また、エコー信号25bのピーク値Pbが、ピーク値Pb0から例えば10%減少したとすると、サブコイル41bに関し、被検体10は、基準位置から感度分布61b上で感度がs0から10%低い感度(s22)に対応する位置(x22)に移動したものと考えられる。なお、|x21|と|x22|とが等しい場合、被検体10は略その形状を保ち、x軸方向に平行移動した状態と考えられる。一方、|x21|と|x22|とが異なる値である場合、被検体10は変形してx軸方向に移動した状態と考えられる。
【0036】
上述のように、エコー信号25aおよび25bのピーク値の変化量に応じて、サブコイル41aおよび41bそれぞれに関する、被検体10の基準位置からの変位を特定することができる。体動時相判別部123は、この結果を用い、各エコー信号25について、取得時の被検体10の体動時相を判別する。
【0037】
具体的には、本実施形態の体動時相判別部123は、各サブコイル41aおよび41bで得たエコー信号25aおよび25bそれぞれについて、ピーク値の変化量を求める。そして、それぞれ、感度分布を参照し、ピーク値の変化量に相当する変化量を示す変位を特定し、当該エコー信号25aおよび25b取得時の被検体10の、サブコイル41aに関する変位およびサブコイル41bに関する変位の組を得る。そして、得られた変位の組が、変位の組に応じて予め定められた区分(体動時相区分)のいずれに該当するか判別する。
【0038】
なお、各体動時相区分に該当する変位の組の範囲は、予め定められ、記憶装置などに格納される。本実施形態では、体動時相区分ごとにk空間が用意される。k空間配置部121は、体動時相判別部123による判別結果に応じて、該当するk空間に、エコー信号25aおよびエコー信号25bを合成してエコー信号25を生成し、生成したエコー信号25を配置する。
【0039】
以下、本実施形態の信号処理部120による、本実施形態の信号処理手順について説明する。図8は、本実施形態の信号処理の処理フローである。なお、本実施形態では、上述のように、動作制御部110が、繰り返し時間TRごとにパルスシーケンス201に従ってMRI装置100を動作させ、エコー信号25を収集する。なお、信号処理は、エコー信号25を取得する毎に行われるため、ここでは、エコー信号の取得も1ステップとして記載する。また、基準位置および基準位置における各エコー信号25aおよび25bのピーク値(基準ピーク値)は、予め測定され、記憶装置に格納されているものとする。
【0040】
各サブコイル41aおよび41bが、それぞれエコー信号25aおよび25bを取得する(ステップS1001)と信号処理を開始する。まず、体動時相判別部123は、各エコー信号25aおよび25bのピーク値の基準ピーク値からの変化量に基づき、被検体10の変位を特定し、体動時相を判別する(ステップS1002)。
【0041】
k空間配置部121は、判別された体動時相に応じて、エコー信号25を配置すべきk空間を決定し(ステップS1003)、決定したk空間に得られたエコー信号25を配置する(ステップS1004)。その後、再構成可否判別部124は、ステップS1002においてエコー信号25が配置されたk空間について、現在充填されているエコー信号25により、画像を再構成することが可能か否かを判別する(ステップS1005)。ここで、再構成可否判別部124は、動作制御部110が撮影時に用いた撮影パラメータ等、パルスシーケンス9を構成する条件から、各k空間に充填された軌跡を特定し、予め定められた画像再構成に必要な軌跡が充填されているか否かを判別する。具体的には、撮影条件(分解能)から、k空間上の走査線の数(例えば256本)を算出する。そして、k空間ごとに設定したカウンタでデータ格納ごとにカウントアップし、算出した数の走査線の数に等しくデータを格納したか否かを判別する。
【0042】
ステップS1005において、再構成可否判別部124が画像再構成不能と判別した場合、ステップS1001に戻り、次のエコー信号25の取得を待ち処理を継続する。一方、画像再構成可能と判別した場合、再構成可否判別部124は、動作制御部110に撮影終了を意味する信号を送出し、撮影を終了させるとともに、画像再構成部122にデータ収集完了とデータ収集が完了したk空間を特定する情報を通知する(ステップS1006)。画像再構成122は、特定されたk空間に配置されたエコー信号25から画像を再構成する(ステップS1007)。
【0043】
次に、本実施形態の動作制御部110が図2に示すパルスシーケンス201を実行し、信号処理部120のk空間配置部121が得られたエコー信号25を予め用意された複数のk空間に配置するまでの処理の具体例を図9および図10を用いて説明する。ここでは、簡単のため、被検体10が略形状を保ったままx軸方向に変位するものとし、また、被検体10の体動時相区分は、A、B、Cの3区分とし、それぞれに対応づけて、図10(a)、(b)、(c)にそれぞれ示すk空間801、802、803が用意されているものとする。なお、それぞれ、被検体10の変位xがx<−Lのとき体動時相区分Aに、−L≦x≦Lのとき体動時相区分Bに、x>Lのとき体動時相区分Cに区分けされるものとする。なお、図9に示すk空間は、走査の軌跡を説明するためのものである。
【0044】
図4に示す位置に被検体10が位置する場合の時刻をt0とし、このときの撮影断面上の被検体10の重心の位置ををx0とする。第一回目のパルスシーケンス201は、時刻t0から開始されるものとする。なお、パルスシーケンス201のエコー時間TEは十分短いため、エコー信号25取得時の被検体10の状態は時刻t0における状態と略同一である。実際、エコー時間TEは、数msから数十msであり、本設定は妥当といえる。
【0045】
動作制御部110により第1回目のパルスシーケンス201が実行され、図9(a)に示すk空間において軌跡71が走査される。このとき、サブコイル41aおよびサブコイル41bで受信するエコー信号25aおよび25bは、図9(b)に示すk空間において、軌跡71aおよび軌跡71bに対応する。
【0046】
体動時相判別部123は、このとき得られたエコー信号25aおよび25bのピーク値の変位量から被検体10の変位xを0と特定し、体動時相区分Bと判別する。k空間配置部121は、図10(b)に示すように、区分Bに対応づけて設けられたk空間802に配置する。図10(b)では、軌跡t0と表す。
【0047】
第1回目のパルスシーケンス201の実行からTR時間後の時刻t1に、動作制御部110は、第2回目のパルスシーケンス201を実行する。ここでは、図9(a)のk空間において、軌跡72が走査される。サブコイル41aおよびサブコイル41bで検出されたエコー信号25aおよび25bは、図9(c)のk空間において、軌跡72aおよび72bに対応する。
【0048】
ここで、図5に示すように、被検体10(の重心)が、時刻t0からt1の間にx0からx1(<−L)に変位したものとする。体動時相判別部123は、このとき得られたエコー信号25aおよび25bのピーク値の変位量から被検体10の変位をx1と特定する。そして、x1<Lであるため、このとき取得したエコー信号25の体動時相区分をAと判別する。k空間配置部121は、図10(a)に示すように、区分Aに対応づけて設けられたk空間801に配置する。図10(a)では、軌跡t1と表す。
【0049】
第2回目のパルスシーケンス201の実行からTR時間後の時刻t2(=t1×2)に、動作制御部110は、第3回目のパルスシーケンス201を実行する。ここでは、図9(a)のk空間において、軌跡73に沿って走査する。サブコイル41aおよびサブコイル41bで検出されたエコー信号25aおよび25bは、図9(d)のk空間において、軌跡73aおよび73bに対応する。
【0050】
図7に示すように、被検体10(の重心)が、時刻t1からt2の間にx1からx2(>L)に変位したものとする。体動時相判別部123は、このとき得られたエコー信号25aおよび25bのピーク値の変位量から被検体10の変位xをx2と特定する。そして、L<x2であるため、このとき取得したエコー信号25の体動時相区分をCと判別する。そして、k空間配置部123は、図10(c)に示すように、区分Cに対応づけた設けられたk空間803に配置する。図10(c)では、軌跡t2と表す。
【0051】
動作制御部110による第4回目以降のパルスシーケンス201の実行においても、同様の処理を繰り返し、両サブコイル41aおよび41bで取得したエコー信号25aおよび25bのピーク値の変化から、被検体10の体動時相を判別し、上記体動時相区分の中の該当する区分に対応づけて設けられるk空間801、802、803のいずれかに格納していく。
【0052】
例えば、被検体10の変位が、上記x1、x0、x2に限定され、時刻t0、TR間隔の各時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8におけるそれぞれの変位が、x0、x1、x2、x2、x1、x0、x2、x0、x2であったとする。このときの、各k空間801、802、803のデータ(エコー信号)の格納状況は図10のとおりである。なお、図10では、各軌跡に取得時刻を符号として付す。本実施形態では、以上の処理を再構成可否判別部124が、いずれかのk空間801、802、803において、画像再構成に必要なだけのデータが格納されたと判別するまで継続する。
【0053】
ここで、本実施形態では、被検体10の呼吸や心拍による周期的な体動による画質の劣化を防ぐことを目的としている。一般には、被検体10の変位の周期Tとシーケンス201の繰り返し時間TRとは、独立しているため、計測を繰り返すにつれて、予め定めた体動時相区分ごとに設けたk空間の中の所定のk空間において、画像再構成可能な状態を得ることができる。
【0054】
また、k空間における未走査領域の信号は補間処理により推定することができる。従って、再構成可否判別部124は、上述のように、撮影条件(分解能)から算出した走査線数ではなく、その過半数の走査を終えている場合、パルスシーケンス201の繰り返しを終了するよう構成してもよい。
【0055】
以下、被検体の変位の周期Tとシーケンス201の繰り返し時間TRとの関係で特定される計測パターンについて説明する。
【0056】
第一のパターンは、被検体10の変位の周期Tがシーケンス201の繰り返し時間TRと等しい場合である。この場合は、各計測時刻における被検体10の変位は、いずれも同じとなり、被検体10は見かけ上静止している。従って、各計測時刻で検出されたエコー信号は全て同じk空間に格納される。このとき、再構成可否判別部124は略360度分の軌跡が得られたか否か、従来と同手法で必要数の満足を判別すればよい。
【0057】
第二のパターンは、被検体10の変位の周期Tが、シーケンス201の繰り返し時間TRと異なる場合であって、TRの整数倍である場合である。例えば、3倍の場合、上記t0、t3、t6において、被検体10の変位は同一となり、第一のk空間に格納され、t1、t4、t7において、被検体10の変位は同一となり、第二のk空間に格納され、t2、t5、t8において、被検体10の変位は同一となり、第三のk空間に格納される。
【0058】
第三のパターンは、被検体10の変位の周期Tが不規則で、かつ、繰り返し時間TRに比べ、十分大きい場合である。例えば、上記時刻t0〜t8における被検体10の各変位が、それぞれ異なる場合である。この場合、各変位ごとに、予め定められた体動時相区分に判別され、対応するk空間に格納される。
【0059】
以上説明したように、被検体の変位の周期Tとシーケンス201の繰り返し時間TRとの関係に応じて、k空間への格納のされ方が異なり、画像再構成可能となるまでに必要な計測数も異なる。従って、全体の計測時間が異なるため、実用的な範囲で計測を終了させるため、上述のように過半の領域の走査で計測を終了し、補間処理を行うよう構成すると効果的である。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、呼吸動、心拍動などの周期的体動により変位する被検体10において、特定の体動時相で収集したエコー信号25を特定のk空間に集め、その結果から画像を再構成する。従って、各k空間に配置されるエコー信号25は、被検体10が略同じ体動状態の時に収集したものとなり、被検体10の動きによる影響は低減される。
【0061】
また、本実施形態によれば、被検体10の周期的体動による変位は、多チャンネル型受信コイルにおける感度分布を用いて検出する。このため、特定のトリガ信号を要しないし、また、体動の周期が不規則であっても対応できる。従って、トリガ信号との関係を満たす複雑なパルスシーケンスも不要であるし、トリガ信号の間隔との整合をとるための無駄な時間もない。従って、本実施形態によれば、ナビエコー等の付加的な信号を取得することなく、簡易な手法で、確実に被検体の動きの影響を低減させたMRI画像を得ることができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、2つのサブコイル41aおよびサブコイル41bが、略同一の感度分布特性を持つ同種のコイルである場合を例にあげて説明したが、これに限られない。また、2つのサブコイル41aおよびサブコイル41bが被検体10を中心に対向する位置に配置される場合を例にあげて説明している。しかし、配置もこれに限られない。2つのサブコイル41aおよび41bで2つの信号を独立して検出可能な配置であればよい。
【0063】
また、上記実施形態では、受信コイル4が、2つのサブコイル41aおよびサブコイル41bから構成される場合であって、被検体10の変位がx軸1方向である場合を例にあげて説明した。しかし、受信コイル4を構成するサブコイル数はこれに限られない。
【0064】
例えば、図11および図12に示すように、4つ以上のサブコイルで構成される場合、被検体10の2次元の動きにも対応できる。図11に示すように、サブコイル41aおよび41bは、上記実施形態同様、xy平面上のx軸方向に沿って、被検体10を中心に対向する位置に配置され、サブコイル41cおよび41dは、同y軸方向に沿って、被検体10を中心に対向する位置に配置される。サブコイル41aおよび41bとにより、ピーク値がPa0のエコー信号25aおよびピーク値がPb0のエコー信号25bが、サブコイル41cおよび41dにより、ピーク値がPc0のエコー信号25cおよびピーク値がPd0のエコー信号25dを得る。
【0065】
例えば、図12に示すように、被検体10が選択励起された領域上で動いた場合、x方向に設置されたサブコイル41aおよび41bとにより、ピーク値がPa1のエコー信号25aおよびピーク値がPb1のエコー信号25bが、y方向に設置されたサブコイル41cおよび41dにより、ピーク値がPc1のエコー信号25cおよびピーク値がPd1のエコー信号25dを得る。これらの各エコー信号のピーク値を比較し、x方向およびy方向の変位を特定し、体動時相を判別することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、エコー信号25の収集にラディアルサンプリング法を用いる場合を例にあげて説明しているが、これに限られない。例えば、ラディアルサンプリング法に位相エンコードの概念を適用した非直交系のサンプリング法(例えば、特許文献2参照)等各種の非直交系サンプリング法を適用することができる。
【特許文献2】国際公開第2005/023108号
【0067】
また、上記実施形態では、1のk空間において画像が再構成可能となった場合、そのk空間のデータを用いて画像を再構成して処理を終了するよう構成しているが、これに限られない。用意した全てのk空間が画像再構成可能となるまでエコー信号25を収集し、被検体10の各体動時相の画像を再構成するよう構成してもよい。
【0068】
なお、上記実施形態では、ピーク値の変化量から被検体10の変位を特定し、変位に基づいて被検体10の体動時相区分を判別し、対応するk空間にデータを分配している。しかし、ピーク値の変化量(基準値に対する割合)から変位を算出することなく、変化量により体動時相区分に分類(判別)し、対応するk空間にデータを分配するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:静磁場発生コイル、2:傾斜磁場発生コイル、3:高周波磁場発生コイル、4:受信コイル、5:傾斜磁場電源、6:高周波磁場電源、7:寝台、8:信号検出部、9:シーケンサ、10:被検体、11:制御装置、12:表示装置、13:操作装置、21:高周波磁場、22:傾斜磁場、23:傾斜磁場、24:傾斜磁場、25:エコー信号、25a:エコー信号、25b:エコー信号、30:軌跡、31:軌跡、32:軌跡、33:軌跡、34:軌跡、35:軌跡、36:軌跡、37:軌跡、38:軌跡、39:軌跡、40:領域、41:サブコイル、41a:サブコイル、41b:サブコイル、41c:サブコイル、41d:サブコイル、61a:感度分布、61b:感度分布、71:軌跡、71a:軌跡、71b:軌跡、72:軌跡、72a:軌跡、72b:軌跡、73:軌跡、73a:軌跡、73b:軌跡、100:MRI装置、110:動作制御部、120:信号処理部、121:体動時相判別部、122:画像再構成部、123:k空間配置部、124:再構成可否判別部、201:パルスシーケンス、801:k空間、802:k空間、803:k空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を検出し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)技術に関する。特に、呼吸体動の影響を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングにおいて、呼吸体動による画質劣化を低減する手法としてゲート法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、横隔膜の一部を励起した信号をトリガとして、横隔膜の動きに合わせて撮影断面を移動させ、呼吸体動による影響を低減する技術が開示されている。ここでは、体軸方向の動きを相殺し、被検体が相対的に静止した状態を作り出すため、撮影断面を、被検体の体軸方向に移動させる。
【0003】
また、受信コイルを複数のチャンネル(サブコイル)によって構成し、各々のサブコイルの感度分布を画像再構成時に用いるものがある(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、感度分布を折り返しアーチファクトを除去するために用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−057226号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Klass P. Pruessmann, Markus Weiger, Markus B. Scheidegger, and Peter Boesiger. SENSE Sensitivity Encoding for Fast MRI. Magnetic Resonance in Medicine 42:952−962(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
呼吸体動による画質劣化を低減するため、横隔膜の信号をトリガとして用いる場合、通常の撮影パルスシーケンスに加えて横隔膜の選択とトリガ信号発生のための第二のパルスシーケンスが必要となる。また、トリガ信号から被検体の変位を算出し、励起毎に算出した変位に合わせた撮影断面に変更するといった作業が必要となり、撮影手順全体が煩雑となる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、磁気共鳴イメージングにおいて、撮影タイミングに依存しない簡便な手法で確実に呼吸体動の影響を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、呼吸動、心拍動などの周期的体動により変位する被検体において、特定の体動時相で収集したエコー信号を特定のk空間に集め、その結果から画像を再構成する。被検体の体動時相は、受信コイルを構成する複数のサブコイルの感度分布を用いて特定する。
【0009】
具体的には、均一な磁場空間を生成する静磁場生成手段と、x、y、zの3軸方向に沿って磁場強度が線形に変化する傾斜磁場を生成する傾斜磁場生成手段と、被検体内の原子核スピンに磁気共鳴を誘起する高周波磁場パルスを照射する高周波磁場送信手段と、前記原子核スピンから放出されるエコー信号を検出する受信手段と、前記受信手段で検出したエコー信号を用いて画像を再構成する信号処理手段と、前記傾斜磁場生成手段、前記高周波磁場送信手段、および前記受信手段の動作を制御する動作制御手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置であって、前記受信手段は、複数のサブコイルを備え、前記動作制御手段は、非直交系サンプリング法に基づくパルスシーケンスに従って前記制御を行い、前記信号処理手段は、前記複数のサブコイル各々の感度分布と当該複数のサブコイルで検出したエコー信号各々のピーク値の変化量とにより前記被検体の体動時相を判別し、前記検出したエコー信号を予め用意された複数のk空間の中で前記判別した体動時相に対応づけられたk空間にk空間データとして配置するk空間配置手段と、前記k空間データから画像を再構成する画像再構成手段と、を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気共鳴イメージングにおいて、撮影タイミングに依存しない簡便な手法で確実に呼吸体動の影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態のMRI装置の機器構成および機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態のパルスシーケンス例である。
【図3】(a)および(b)は、ラディアルサンプリング法によるk空間充填の様子を説明するための図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態の変位特定手法を説明するための図であり、(b)は、本発明の実施形態の各サブコイルの感度分布を示す図である。
【図5】(a)および(b)は、本発明の実施形態の被検体の変位特定手法を説明するための図である。
【図6】(a)および(b)は、本発明の実施形態の被検体の変位特定手法を説明するための図である。
【図7】(a)および(b)は、本発明の実施形態の被検体の変位特定手法を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態の信号処理の処理フローである。
【図9】(a)〜(d)は、本発明の実施形態の計測軌跡を説明するための図である。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の実施形態のk空間充填の様子を説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態の他の例の変位特定手法を説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態の他の例の変位特定手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用する実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
本実施形態の磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置)について説明する。図1は、本実施形態のMRI装置100の機器構成および機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態のMRI装置100は、均一な磁場空間を発生する超伝導コイルからなる静磁場発生コイル1と、傾斜磁場発生系を構成するx、y、zの3軸方向に沿って磁場強度が線形に変化する傾斜磁場を発生する3組の傾斜磁場発生コイル2および傾斜磁場電源5と、送信系を構成する被検体10の磁気共鳴を誘起する高周波磁場発生コイル3および高周波磁場電源6と、受信系を構成する被検体10から発生する核磁気共鳴信号(エコー信号)を受信する受信コイル4および受信コイル4で受信した信号を検出する信号検出部8と、被検体10を静磁場発生コイル1内に搬送する寝台7と、シーケンサ9と、制御装置11と、ユーザインタフェースとして制御装置11に接続される表示装置12と、操作装置13と、を備える。
【0014】
なお、本実施形態の受信コイル4は、少なくとも2つのサブコイル41を備えた、多チャンネル型受信コイルにより構成される。サブコイル41それぞれに、信号検出部8として増幅器、直交位相検波器、A/D変換器が接続される。各サブコイル41で収集されたデータは、シーケンサ9を介して制御装置11に送られ、それぞれ処理される。
【0015】
シーケンサ9は、制御装置11からの指示を受け、予め記憶するパルスシーケンスに従って、傾斜磁場電源5、高周波磁場電源6および信号検出部8の動作を制御する。パルスシーケンスには、これらの各部を動作させるために必要な情報、たとえば、傾斜磁場および高周波磁場の印加強度、印加時間、印加タイミング、エコー信号検出タイミング等が含まれる。
【0016】
制御装置11は、シーケンサ9に制御指示を与える動作制御部110と、信号検出部8が検出したエコー信号を処理して画像を再構成する信号処理部120とを備え、MRI装置100全体の動作を制御する。制御装置11は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、CPUが記憶装置に格納されているプログラムをメモリにロードして実行することにより、動作制御部110と信号処理部120とを実現する。
【0017】
次に、本実施形態の動作制御部110が、シーケンサ9に実行させるパルスシーケンスの一例を説明する。本実施形態では、直交系サンプリング法の場合と比較して、被検体の体動による影響が少ない非直交系サンプリング法を用いる。ここでは、非直交系サンプリング法の一つであるラディアルサンプリング法を用いる場合を例にあげて説明する。ラディアルサンプリング法では、k空間を放射線状に走査し、原点を通る放射状の軌跡を有するサンプリングデータを取得する。なお、本実施形態では、以下のパルスシーケンスで選択励起される平面をxy平面とし、それに直交する方向をz方向とする。
【0018】
図2は、ラディアルサンプリング法を用いた本実施形態のパルスシーケンス201の例である。なお、図2のRF、Gz、Gx,Gy、ech0は、それぞれ、高周波磁場パルス、z方向の傾斜磁場、x方向の傾斜磁場、y方向の傾斜磁場の印加およびエコー信号収集のタイミングチャートである。本図に示すように、まず、高周波磁場21とz方向の傾斜磁場22とを同時に印加し、傾斜磁場22により特定される領域(xy平面)を選択励起する。次に、x方向に傾斜磁場23を印加し、y方向に傾斜磁場24を印加しながら、エコー信号25をサンプリングする。
【0019】
エコー信号25を配置するk空間において、傾斜磁場23の時間積分値はkx方向に沿って変化し、傾斜磁場24の時間積分値はky方向に沿って変化するため、傾斜磁場23および傾斜磁場24を合成することによりk空間におけるサンプリングの軌跡が示される。本実施形態では、ラディアルサンプリング法を用いるため、動作制御部110は、これらの軌跡がk空間で放射状になるよう、傾斜磁場23および傾斜磁場24を変化させ、シーケンサ9にパルスシーケンス201の実行を繰り返させる。なお、パルスシーケンス201は、繰り返し時間TRごとに繰り返される。k空間を360度走査し、画像再構成に必要な数のエコー信号25を収集するため、繰り返し毎に軌跡がkx軸と成す角度が変化するよう傾斜磁場23および傾斜磁場24の印加強度、印加時間は制御される。
【0020】
図2に示すパルスシーケンス201を実行し、サンプリングしたエコー信号25をk空間に配置した結果を図3に示す。図3(a)では、パルスシーケンス201を1回実行し、軌跡31に沿ってエコー信号25を取得した結果である。図3(b)は、パルスシーケンス201を10回繰り返し、それぞれ、軌跡30〜39に沿ってエコー信号25を取得した結果である。
【0021】
従来は、図3に示すように、1のk空間に取得した全てのエコー信号25(軌跡)を配置する。そして、エコー信号25(軌跡)が画像再構成に必要な数だけ得られたら、補間処理を用いて規則正しい格子座標上のデータを作成するグリッディング処理を行い、画像を再構成する。
【0022】
本実施形態では、従来のように、受信(取得)したエコー信号25を1のk空間に配置せず、被検体10の基準位置からの変位に応じて、予め設けられた複数のk空間のいずれかに配置し、少なくとも1のk空間に配置されたエコー信号25から画像を再構成する。すなわち、本実施形態では、呼吸動、心拍動などの周期的体動により変位する被検体10において、特定の体動時相で収集したエコー信号25を特定のk空間に集め、その結果から画像を再構成する。
【0023】
これを実現するため、本実施形態の信号処理部120は、エコー信号25取得時の被検体10の体動時相を判別し、体動時相毎に予め設けられているk空間に当該エコー信号25を配置するk空間配置部121と、画像再構成可能なエコー信号25が充填された際、当該k空間データから画像を再構成する画像再構成部122とを備える。
【0024】
k空間配置部121は、被検体10の体動時相を判別するにあたり、各サブコイル41の感度分布を用いる。すなわち、各サブコイル41の感度分布と各サブコイル41で受信したエコー信号25のピーク値とから算出した被検体10の基準位置からの変位に基づき、当該エコー信号25取得時の被検体10の体動時相を判別する体動時相判別部123を備える。また、エコー信号25がいずれかのk空間に配置される毎に、当該k空間において充填されたエコー信号25により画像再構成が可能か否かを判別する再構成可否判別部124とを備える。k空間配置部121は、体動時相判別部123が判別した体動時相に応じて、予め設けられた複数のk空間の中の、当該体動時相に応じて設けられたk空間に受信したエコー信号25を配置する。また、画像再構成部122は、再構成可否判別部124で画像再構成に必要なだけのエコー信号25が充填されたと判別されたk空間について、当該k空間に配置されたエコー信号25に対してフーリエ変換を行い、実空間の画像を再構成する。
【0025】
次に、本実施形態の体動時相判別部123が、各サブコイル41の感度分布と、各サブコイル41で受信したエコー信号25のピーク値とから、被検体10の体動時相を判別する処理の詳細について説明する。体動時相判別部123は、取得した各エコー信号25について、当該エコー信号25取得時の被検体10の変位を特定し、同程度の変位のものを、同体動時相で収集したエコー信号25と判別する。
【0026】
以下、各サブコイル41が受信したエコー信号25のピーク値の変化から、被検体10の変位を特定する変位特定手法について説明する。図4(a)は、本実施形態の変位特定手法を説明するための図である。ここでは、簡単のため、被検体10が1方向(x方向とする)のみ変位する場合を例にあげて説明する。1方向のみの変位を検出するため、受信コイル4は少なくとも2つのサブコイル41aとサブコイル41bとを備える。
【0027】
ここでは、サブコイル41aとサブコイル41bとが、図示するような略同一の感度分布特性を持つ同種のコイルである場合を例にあげて説明する。そして、サブコイル41aおよび41bは、傾斜磁場12により選択励起された領域40により特定されるxy平面上のx軸方向に沿って、被検体10を中心に対向する位置に配置されるものとする。また、本実施形態では、サブコイル41aおよび41bのx軸方向の中間点を座標軸の原点とする。また、各サブコイル41aおよび41bの感度分布は、予め求め、記憶装置などに格納しておく。感度分布を求める際には、空間分解能は低くてもよいため、被検体の動きが影響しないような短時間で画像を取得可能なパルスシーケンスを用いる。
【0028】
サブコイル41aで受信したエコー信号25を、エコー信号25aとし、サブコイル41bで受信したエコー信号をエコー信号25bとする。これらのエコー信号25aおよび25bのピーク値は、k空間において、原点を走査した時刻において得られる。
【0029】
ここで、各サブコイル41aおよびサブコイル41bのx軸方向の感度分布61aおよび61bを図4(b)に示す。本図に示すように、各サブコイル41aおよびサブコイル41bの感度は、サブコイル41aおよびサブコイル41bの近傍は高く、コイルから離れるに従ってなめらかに低くなるよう変化する。ピーク値は、コイルの感度分布に依存して変化するため、被検体10がサブコイル41aに近いと、サブコイル41aで検出するエコー信号25aのピーク値は高くなり、被検体10がサブコイル41aから離れるに従って同ピーク値は低くなる。サブコイル41bで受信するエコー信号25bについても同様である。
【0030】
図5から図7を用い、変位特定手法を具体的に説明する。ここでは、被検体10の重心が原点にある場合の、エコー信号25aおよび25bそれぞれのピーク値を、Pa0、Pb0とし、各サブコイル41aおよび41bの感度分布61aおよび感度分布61bの、原点における感度をs0とする。また、被検体10の重心が原点にある場合の被検体10の位置を基準位置と呼ぶ。
【0031】
図5は、被検体10がx軸上でサブコイル41b側に移動した場合の、変位特定手法を説明するための図である。図5(a)は被検体10の移動とピーク値の変化の様子を、図5(b)は、各サブコイル41aおよび41bの感度分布61aおよび61bを示す。本図に示すように、被検体10がx軸上でサブコイル41b側に移動した場合、エコー信号25aのピーク値Paは、ピーク値Pa0から減少し、エコー信号25bのピーク値PbはPb0から増加する。
【0032】
このとき、例えば、本図に示すように、エコー信号25aのピーク値Paがピーク値Pa0から例えば10%減少したとすると、サブコイル41aに関して、被検体10は、基準位置から感度分布61a上で感度がs0から10%低い感度(s11)に対応する位置(x11)に移動したものと考えられる。また、エコー信号25bのピーク値Pbが、ピーク値Pb0から例えば20%増加したとすると、サブコイル41bに関して、被検体10は、基準位置から感度分布61b上で感度がs0から20%高い感度(s12)に対応する位置(x12)に移動したものと考えられる。
【0033】
なお、|x11|と|x12|とが等しい場合、図5(a)に示すように、被検体10は略その形状を保ち、x軸方向に平行移動した状態と考えられる。一方、|x11|と|x12|とが異なる値であれば、被検体10は、サブコイル41aおよびサブコイル41bに対して、異なる変位を示したことになる。この場合は、図6に示すように、変形してx軸方向に移動した状態と考えられる。なお、図6(a)は、被検体10の移動とピーク値の変化の様子を、図6(b)は、各サブコイル41aおよび41bの感度分布61aおよび61bを示す。本図における各符号は、図5と同じ意味である。
【0034】
図7は、被検体10がx軸上でサブコイル41a側に移動した場合の、変位特定手法を明するための図である。図7(a)は被検体10の移動とピーク値の変化の様子を、図7(b)は、各サブコイル41aおよび41bの感度分布61aおよび61bを示す。本図に示すように、上記図5で説明した場合とは逆に、被検体10がx軸上でサブコイル41a側に移動した場合、エコー信号25aのピーク値Paは、ピーク値Pa0から増加し、エコー信号25bのピーク値PbはPb0から減少する。
【0035】
このとき、例えば、エコー信号25aのピーク値Paがピーク値Pa0から例えば20%増加したとすると、サブコイル41aに関し、被検体10は、基準位置から感度分布61a上で感度がs0から20%高くなる感度(s21)に対応する位置(x21)に移動したものと考えられる。また、エコー信号25bのピーク値Pbが、ピーク値Pb0から例えば10%減少したとすると、サブコイル41bに関し、被検体10は、基準位置から感度分布61b上で感度がs0から10%低い感度(s22)に対応する位置(x22)に移動したものと考えられる。なお、|x21|と|x22|とが等しい場合、被検体10は略その形状を保ち、x軸方向に平行移動した状態と考えられる。一方、|x21|と|x22|とが異なる値である場合、被検体10は変形してx軸方向に移動した状態と考えられる。
【0036】
上述のように、エコー信号25aおよび25bのピーク値の変化量に応じて、サブコイル41aおよび41bそれぞれに関する、被検体10の基準位置からの変位を特定することができる。体動時相判別部123は、この結果を用い、各エコー信号25について、取得時の被検体10の体動時相を判別する。
【0037】
具体的には、本実施形態の体動時相判別部123は、各サブコイル41aおよび41bで得たエコー信号25aおよび25bそれぞれについて、ピーク値の変化量を求める。そして、それぞれ、感度分布を参照し、ピーク値の変化量に相当する変化量を示す変位を特定し、当該エコー信号25aおよび25b取得時の被検体10の、サブコイル41aに関する変位およびサブコイル41bに関する変位の組を得る。そして、得られた変位の組が、変位の組に応じて予め定められた区分(体動時相区分)のいずれに該当するか判別する。
【0038】
なお、各体動時相区分に該当する変位の組の範囲は、予め定められ、記憶装置などに格納される。本実施形態では、体動時相区分ごとにk空間が用意される。k空間配置部121は、体動時相判別部123による判別結果に応じて、該当するk空間に、エコー信号25aおよびエコー信号25bを合成してエコー信号25を生成し、生成したエコー信号25を配置する。
【0039】
以下、本実施形態の信号処理部120による、本実施形態の信号処理手順について説明する。図8は、本実施形態の信号処理の処理フローである。なお、本実施形態では、上述のように、動作制御部110が、繰り返し時間TRごとにパルスシーケンス201に従ってMRI装置100を動作させ、エコー信号25を収集する。なお、信号処理は、エコー信号25を取得する毎に行われるため、ここでは、エコー信号の取得も1ステップとして記載する。また、基準位置および基準位置における各エコー信号25aおよび25bのピーク値(基準ピーク値)は、予め測定され、記憶装置に格納されているものとする。
【0040】
各サブコイル41aおよび41bが、それぞれエコー信号25aおよび25bを取得する(ステップS1001)と信号処理を開始する。まず、体動時相判別部123は、各エコー信号25aおよび25bのピーク値の基準ピーク値からの変化量に基づき、被検体10の変位を特定し、体動時相を判別する(ステップS1002)。
【0041】
k空間配置部121は、判別された体動時相に応じて、エコー信号25を配置すべきk空間を決定し(ステップS1003)、決定したk空間に得られたエコー信号25を配置する(ステップS1004)。その後、再構成可否判別部124は、ステップS1002においてエコー信号25が配置されたk空間について、現在充填されているエコー信号25により、画像を再構成することが可能か否かを判別する(ステップS1005)。ここで、再構成可否判別部124は、動作制御部110が撮影時に用いた撮影パラメータ等、パルスシーケンス9を構成する条件から、各k空間に充填された軌跡を特定し、予め定められた画像再構成に必要な軌跡が充填されているか否かを判別する。具体的には、撮影条件(分解能)から、k空間上の走査線の数(例えば256本)を算出する。そして、k空間ごとに設定したカウンタでデータ格納ごとにカウントアップし、算出した数の走査線の数に等しくデータを格納したか否かを判別する。
【0042】
ステップS1005において、再構成可否判別部124が画像再構成不能と判別した場合、ステップS1001に戻り、次のエコー信号25の取得を待ち処理を継続する。一方、画像再構成可能と判別した場合、再構成可否判別部124は、動作制御部110に撮影終了を意味する信号を送出し、撮影を終了させるとともに、画像再構成部122にデータ収集完了とデータ収集が完了したk空間を特定する情報を通知する(ステップS1006)。画像再構成122は、特定されたk空間に配置されたエコー信号25から画像を再構成する(ステップS1007)。
【0043】
次に、本実施形態の動作制御部110が図2に示すパルスシーケンス201を実行し、信号処理部120のk空間配置部121が得られたエコー信号25を予め用意された複数のk空間に配置するまでの処理の具体例を図9および図10を用いて説明する。ここでは、簡単のため、被検体10が略形状を保ったままx軸方向に変位するものとし、また、被検体10の体動時相区分は、A、B、Cの3区分とし、それぞれに対応づけて、図10(a)、(b)、(c)にそれぞれ示すk空間801、802、803が用意されているものとする。なお、それぞれ、被検体10の変位xがx<−Lのとき体動時相区分Aに、−L≦x≦Lのとき体動時相区分Bに、x>Lのとき体動時相区分Cに区分けされるものとする。なお、図9に示すk空間は、走査の軌跡を説明するためのものである。
【0044】
図4に示す位置に被検体10が位置する場合の時刻をt0とし、このときの撮影断面上の被検体10の重心の位置ををx0とする。第一回目のパルスシーケンス201は、時刻t0から開始されるものとする。なお、パルスシーケンス201のエコー時間TEは十分短いため、エコー信号25取得時の被検体10の状態は時刻t0における状態と略同一である。実際、エコー時間TEは、数msから数十msであり、本設定は妥当といえる。
【0045】
動作制御部110により第1回目のパルスシーケンス201が実行され、図9(a)に示すk空間において軌跡71が走査される。このとき、サブコイル41aおよびサブコイル41bで受信するエコー信号25aおよび25bは、図9(b)に示すk空間において、軌跡71aおよび軌跡71bに対応する。
【0046】
体動時相判別部123は、このとき得られたエコー信号25aおよび25bのピーク値の変位量から被検体10の変位xを0と特定し、体動時相区分Bと判別する。k空間配置部121は、図10(b)に示すように、区分Bに対応づけて設けられたk空間802に配置する。図10(b)では、軌跡t0と表す。
【0047】
第1回目のパルスシーケンス201の実行からTR時間後の時刻t1に、動作制御部110は、第2回目のパルスシーケンス201を実行する。ここでは、図9(a)のk空間において、軌跡72が走査される。サブコイル41aおよびサブコイル41bで検出されたエコー信号25aおよび25bは、図9(c)のk空間において、軌跡72aおよび72bに対応する。
【0048】
ここで、図5に示すように、被検体10(の重心)が、時刻t0からt1の間にx0からx1(<−L)に変位したものとする。体動時相判別部123は、このとき得られたエコー信号25aおよび25bのピーク値の変位量から被検体10の変位をx1と特定する。そして、x1<Lであるため、このとき取得したエコー信号25の体動時相区分をAと判別する。k空間配置部121は、図10(a)に示すように、区分Aに対応づけて設けられたk空間801に配置する。図10(a)では、軌跡t1と表す。
【0049】
第2回目のパルスシーケンス201の実行からTR時間後の時刻t2(=t1×2)に、動作制御部110は、第3回目のパルスシーケンス201を実行する。ここでは、図9(a)のk空間において、軌跡73に沿って走査する。サブコイル41aおよびサブコイル41bで検出されたエコー信号25aおよび25bは、図9(d)のk空間において、軌跡73aおよび73bに対応する。
【0050】
図7に示すように、被検体10(の重心)が、時刻t1からt2の間にx1からx2(>L)に変位したものとする。体動時相判別部123は、このとき得られたエコー信号25aおよび25bのピーク値の変位量から被検体10の変位xをx2と特定する。そして、L<x2であるため、このとき取得したエコー信号25の体動時相区分をCと判別する。そして、k空間配置部123は、図10(c)に示すように、区分Cに対応づけた設けられたk空間803に配置する。図10(c)では、軌跡t2と表す。
【0051】
動作制御部110による第4回目以降のパルスシーケンス201の実行においても、同様の処理を繰り返し、両サブコイル41aおよび41bで取得したエコー信号25aおよび25bのピーク値の変化から、被検体10の体動時相を判別し、上記体動時相区分の中の該当する区分に対応づけて設けられるk空間801、802、803のいずれかに格納していく。
【0052】
例えば、被検体10の変位が、上記x1、x0、x2に限定され、時刻t0、TR間隔の各時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8におけるそれぞれの変位が、x0、x1、x2、x2、x1、x0、x2、x0、x2であったとする。このときの、各k空間801、802、803のデータ(エコー信号)の格納状況は図10のとおりである。なお、図10では、各軌跡に取得時刻を符号として付す。本実施形態では、以上の処理を再構成可否判別部124が、いずれかのk空間801、802、803において、画像再構成に必要なだけのデータが格納されたと判別するまで継続する。
【0053】
ここで、本実施形態では、被検体10の呼吸や心拍による周期的な体動による画質の劣化を防ぐことを目的としている。一般には、被検体10の変位の周期Tとシーケンス201の繰り返し時間TRとは、独立しているため、計測を繰り返すにつれて、予め定めた体動時相区分ごとに設けたk空間の中の所定のk空間において、画像再構成可能な状態を得ることができる。
【0054】
また、k空間における未走査領域の信号は補間処理により推定することができる。従って、再構成可否判別部124は、上述のように、撮影条件(分解能)から算出した走査線数ではなく、その過半数の走査を終えている場合、パルスシーケンス201の繰り返しを終了するよう構成してもよい。
【0055】
以下、被検体の変位の周期Tとシーケンス201の繰り返し時間TRとの関係で特定される計測パターンについて説明する。
【0056】
第一のパターンは、被検体10の変位の周期Tがシーケンス201の繰り返し時間TRと等しい場合である。この場合は、各計測時刻における被検体10の変位は、いずれも同じとなり、被検体10は見かけ上静止している。従って、各計測時刻で検出されたエコー信号は全て同じk空間に格納される。このとき、再構成可否判別部124は略360度分の軌跡が得られたか否か、従来と同手法で必要数の満足を判別すればよい。
【0057】
第二のパターンは、被検体10の変位の周期Tが、シーケンス201の繰り返し時間TRと異なる場合であって、TRの整数倍である場合である。例えば、3倍の場合、上記t0、t3、t6において、被検体10の変位は同一となり、第一のk空間に格納され、t1、t4、t7において、被検体10の変位は同一となり、第二のk空間に格納され、t2、t5、t8において、被検体10の変位は同一となり、第三のk空間に格納される。
【0058】
第三のパターンは、被検体10の変位の周期Tが不規則で、かつ、繰り返し時間TRに比べ、十分大きい場合である。例えば、上記時刻t0〜t8における被検体10の各変位が、それぞれ異なる場合である。この場合、各変位ごとに、予め定められた体動時相区分に判別され、対応するk空間に格納される。
【0059】
以上説明したように、被検体の変位の周期Tとシーケンス201の繰り返し時間TRとの関係に応じて、k空間への格納のされ方が異なり、画像再構成可能となるまでに必要な計測数も異なる。従って、全体の計測時間が異なるため、実用的な範囲で計測を終了させるため、上述のように過半の領域の走査で計測を終了し、補間処理を行うよう構成すると効果的である。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、呼吸動、心拍動などの周期的体動により変位する被検体10において、特定の体動時相で収集したエコー信号25を特定のk空間に集め、その結果から画像を再構成する。従って、各k空間に配置されるエコー信号25は、被検体10が略同じ体動状態の時に収集したものとなり、被検体10の動きによる影響は低減される。
【0061】
また、本実施形態によれば、被検体10の周期的体動による変位は、多チャンネル型受信コイルにおける感度分布を用いて検出する。このため、特定のトリガ信号を要しないし、また、体動の周期が不規則であっても対応できる。従って、トリガ信号との関係を満たす複雑なパルスシーケンスも不要であるし、トリガ信号の間隔との整合をとるための無駄な時間もない。従って、本実施形態によれば、ナビエコー等の付加的な信号を取得することなく、簡易な手法で、確実に被検体の動きの影響を低減させたMRI画像を得ることができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、2つのサブコイル41aおよびサブコイル41bが、略同一の感度分布特性を持つ同種のコイルである場合を例にあげて説明したが、これに限られない。また、2つのサブコイル41aおよびサブコイル41bが被検体10を中心に対向する位置に配置される場合を例にあげて説明している。しかし、配置もこれに限られない。2つのサブコイル41aおよび41bで2つの信号を独立して検出可能な配置であればよい。
【0063】
また、上記実施形態では、受信コイル4が、2つのサブコイル41aおよびサブコイル41bから構成される場合であって、被検体10の変位がx軸1方向である場合を例にあげて説明した。しかし、受信コイル4を構成するサブコイル数はこれに限られない。
【0064】
例えば、図11および図12に示すように、4つ以上のサブコイルで構成される場合、被検体10の2次元の動きにも対応できる。図11に示すように、サブコイル41aおよび41bは、上記実施形態同様、xy平面上のx軸方向に沿って、被検体10を中心に対向する位置に配置され、サブコイル41cおよび41dは、同y軸方向に沿って、被検体10を中心に対向する位置に配置される。サブコイル41aおよび41bとにより、ピーク値がPa0のエコー信号25aおよびピーク値がPb0のエコー信号25bが、サブコイル41cおよび41dにより、ピーク値がPc0のエコー信号25cおよびピーク値がPd0のエコー信号25dを得る。
【0065】
例えば、図12に示すように、被検体10が選択励起された領域上で動いた場合、x方向に設置されたサブコイル41aおよび41bとにより、ピーク値がPa1のエコー信号25aおよびピーク値がPb1のエコー信号25bが、y方向に設置されたサブコイル41cおよび41dにより、ピーク値がPc1のエコー信号25cおよびピーク値がPd1のエコー信号25dを得る。これらの各エコー信号のピーク値を比較し、x方向およびy方向の変位を特定し、体動時相を判別することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、エコー信号25の収集にラディアルサンプリング法を用いる場合を例にあげて説明しているが、これに限られない。例えば、ラディアルサンプリング法に位相エンコードの概念を適用した非直交系のサンプリング法(例えば、特許文献2参照)等各種の非直交系サンプリング法を適用することができる。
【特許文献2】国際公開第2005/023108号
【0067】
また、上記実施形態では、1のk空間において画像が再構成可能となった場合、そのk空間のデータを用いて画像を再構成して処理を終了するよう構成しているが、これに限られない。用意した全てのk空間が画像再構成可能となるまでエコー信号25を収集し、被検体10の各体動時相の画像を再構成するよう構成してもよい。
【0068】
なお、上記実施形態では、ピーク値の変化量から被検体10の変位を特定し、変位に基づいて被検体10の体動時相区分を判別し、対応するk空間にデータを分配している。しかし、ピーク値の変化量(基準値に対する割合)から変位を算出することなく、変化量により体動時相区分に分類(判別)し、対応するk空間にデータを分配するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:静磁場発生コイル、2:傾斜磁場発生コイル、3:高周波磁場発生コイル、4:受信コイル、5:傾斜磁場電源、6:高周波磁場電源、7:寝台、8:信号検出部、9:シーケンサ、10:被検体、11:制御装置、12:表示装置、13:操作装置、21:高周波磁場、22:傾斜磁場、23:傾斜磁場、24:傾斜磁場、25:エコー信号、25a:エコー信号、25b:エコー信号、30:軌跡、31:軌跡、32:軌跡、33:軌跡、34:軌跡、35:軌跡、36:軌跡、37:軌跡、38:軌跡、39:軌跡、40:領域、41:サブコイル、41a:サブコイル、41b:サブコイル、41c:サブコイル、41d:サブコイル、61a:感度分布、61b:感度分布、71:軌跡、71a:軌跡、71b:軌跡、72:軌跡、72a:軌跡、72b:軌跡、73:軌跡、73a:軌跡、73b:軌跡、100:MRI装置、110:動作制御部、120:信号処理部、121:体動時相判別部、122:画像再構成部、123:k空間配置部、124:再構成可否判別部、201:パルスシーケンス、801:k空間、802:k空間、803:k空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一な磁場空間を生成する静磁場生成手段と、x、y、zの3軸方向に沿って磁場強度が線形に変化する傾斜磁場を生成する傾斜磁場生成手段と、被検体内の原子核スピンに磁気共鳴を誘起する高周波磁場パルスを照射する高周波磁場送信手段と、前記原子核スピンから放出されるエコー信号を検出する受信手段と、前記受信手段で検出したエコー信号を用いて画像を再構成する信号処理手段と、前記傾斜磁場生成手段、前記高周波磁場送信手段、および前記受信手段の動作を制御する動作制御手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置であって、
前記受信手段は、複数のサブコイルを備え、
前記動作制御手段は、非直交系サンプリング法に基づくパルスシーケンスに従って前記制御を行い、
前記信号処理手段は、
前記複数のサブコイル各々の感度分布と当該複数のサブコイルで検出したエコー信号各々のピーク値の変化量とにより前記被検体の体動時相を判別し、前記検出したエコー信号を予め用意された複数のk空間の中で前記判別した体動時相に対応づけられたk空間にk空間データとして配置するk空間配置手段と、
前記k空間データから画像を再構成する画像再構成手段と、を備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記複数のサブコイルの少なくとも2個のサブコイルは、前記被検体を中心に対向した位置に配置されること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記k空間配置手段は、各サブコイルにおいて、前記被検体が基準位置にある場合のエコー信号のピーク値からの前記検出したエコー信号のピーク値の変化量を特定し、前記被検体が基準位置にある場合の当該サブコイルの感度からの感度の変化量が前記ピーク値の変化量と同等となる位置を特定し、当該位置に応じて前記体動時相を判別する体動時相判別手段を備えること、
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記k空間配置手段は、所定の体動時相範囲毎に前記k空間を用意すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記k空間配置手段は、前記k空間データとして配置後、当該k空間において画像再構成の可否を判別し、不可能な場合、前記動作制御手段に前記制御を行うよう通知する画像再構成可否判別手段、を備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記非直交系サンプリング法に基づくパルスシーケンスは、ラディアルサンプリング法であること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項1】
均一な磁場空間を生成する静磁場生成手段と、x、y、zの3軸方向に沿って磁場強度が線形に変化する傾斜磁場を生成する傾斜磁場生成手段と、被検体内の原子核スピンに磁気共鳴を誘起する高周波磁場パルスを照射する高周波磁場送信手段と、前記原子核スピンから放出されるエコー信号を検出する受信手段と、前記受信手段で検出したエコー信号を用いて画像を再構成する信号処理手段と、前記傾斜磁場生成手段、前記高周波磁場送信手段、および前記受信手段の動作を制御する動作制御手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置であって、
前記受信手段は、複数のサブコイルを備え、
前記動作制御手段は、非直交系サンプリング法に基づくパルスシーケンスに従って前記制御を行い、
前記信号処理手段は、
前記複数のサブコイル各々の感度分布と当該複数のサブコイルで検出したエコー信号各々のピーク値の変化量とにより前記被検体の体動時相を判別し、前記検出したエコー信号を予め用意された複数のk空間の中で前記判別した体動時相に対応づけられたk空間にk空間データとして配置するk空間配置手段と、
前記k空間データから画像を再構成する画像再構成手段と、を備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記複数のサブコイルの少なくとも2個のサブコイルは、前記被検体を中心に対向した位置に配置されること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記k空間配置手段は、各サブコイルにおいて、前記被検体が基準位置にある場合のエコー信号のピーク値からの前記検出したエコー信号のピーク値の変化量を特定し、前記被検体が基準位置にある場合の当該サブコイルの感度からの感度の変化量が前記ピーク値の変化量と同等となる位置を特定し、当該位置に応じて前記体動時相を判別する体動時相判別手段を備えること、
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記k空間配置手段は、所定の体動時相範囲毎に前記k空間を用意すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記k空間配置手段は、前記k空間データとして配置後、当該k空間において画像再構成の可否を判別し、不可能な場合、前記動作制御手段に前記制御を行うよう通知する画像再構成可否判別手段、を備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記非直交系サンプリング法に基づくパルスシーケンスは、ラディアルサンプリング法であること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−162112(P2010−162112A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5570(P2009−5570)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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