説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】ユーザの負担を増加させることなく、適切な静磁場補正領域を容易に決定する。
【解決手段】静磁場均一度を補正する補正領域を、撮影領域に基づいて自動設定する。補正領域は、静磁場計測領域と底面が平行であって、軸方向が同一の直方体で、撮影領域と重心を同一にする領域とする。底面は撮影領域を静磁場計測領域の底面に投影した投影面を含む最小の領域で、高さは、部位に応じて撮影領域と同一かまたは撮影領域の高さを静磁場計測領域に投影した高さとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(以下、MRIという)装置において静磁場の均一化を図る方法に関し、特に、均一化を図る最適領域を自動設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生する核磁気共鳴(以下、NMRという)信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的、或いは3次元的に画像化する装置である。MRIの代表的な画像構成方法である2D或いは3Dフーリエ変換法では、空間的に一様で一定方向を向いた静磁場内に被写体を置き、この被写体の核スピンを高周波パルスの印加により横平面へ倒し、その後、所定の組合せの傾斜磁場を印加することにより、核スピンの位相に空間的位置に応じた分布を生じさせて信号を計測する。
【0003】
このため、静磁場が均一でない場合は、この不均一により位相回転が生じ、これにより偽像,位置歪み等が発生し、画質が劣化する。この静磁場の不均一を補正するため、MRI装置では、本撮影の前に静磁場を均一化するシミングを行う。シミングは、磁場補正コイル(シムコイル)に流す電流量を調整することによって行う。印加する電流量は、予め静磁場分布計測を行い、その結果に基づいて調整される。
【0004】
静磁場不均一は、静磁場を発生する磁石の装置的限界、および、被検体である生体自体の持つ透磁率が組織毎に僅かに異なること、等により生じる。生体に起因する静磁場不均一を補正する場合、被検体が静磁場内に配された後に行うため、短時間で行う必要がある。
【0005】
静磁場分布計測を実施した全領域を短時間に均一化することは難しいため、一般に、撮影領域のみ静磁場を補正し均一化を図る。これにより、シミングの時間を短縮するとともに、領域内の磁場均一度を向上させる。補正する領域を限定すると、特に、生体シミングにおいて、静磁場の均一度を低下させる、心臓等の領域が撮影領域に含まれる場合、このような領域を排除することができ、有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−113880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、ユーザがMRI装置が備えるGUIを介して補正対象とする領域を指定している。しかし、ユーザは撮影領域の設定に加え、補正対象とする領域の設定も必要となるため、ユーザの負担が増加している。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ユーザの負担を増加させることなく、適切な静磁場補正領域を容易に決定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、静磁場均一度を補正する補正領域を、撮影領域に基づいて自動設定する。
【0010】
具体的には、被検体に静磁場を与える静磁場発生手段と、装置全体を制御して撮影を実行するとともに得られた信号を処理する中央制御手段と、前記中央制御手段に指示を入力する入力手段と、前記中央制御手段で処理されたデータを表示および保存する出力手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置であって、前記中央制御手段は、予め定められた計測領域内の静磁場分布を計測する静磁場分布計測手段と、前記静磁場分布の不均一性を補正する静磁場補正手段と、前記静磁場補正手段が静磁場分布の不均一性を補正する補正領域を決定する補正領域決定手段と、を備え、前記補正領域決定手段は、入力手段を介して入力された撮影パラメータに従って、前記計測領域内に前記補正領域を決定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザの負担を増加させることなく、適切な静磁場補正領域を容易に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一の実施形態のMRI装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第一の実施形態の情報処理系の機能構成図である。
【図3】第一の実施形態の補正領域底面決定法を説明するための図である。
【図4】第一の実施形態の補正領域底面決定法を説明するための図である。
【図5】第一の実施形態の第一の補正領域高さ決定法を説明するための図である。
【図6】第一の実施形態の第二の補正領域高さ決定法を説明するための図である。
【図7】第一の実施形態の補正領域決定処理の処理フローである。
【図8】第二の実施形態の補正領域決定処理の処理フローである。
【図9】各実施形態の補正領域底面決定法の別の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
まず、本実施形態のMRI装置の全体構成について説明する。図1は、本実施形態のMRI装置100の全体構成を示すブロック図である。本実施形態のMRI装置100は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、シーケンサ4と、送信系5と、受信系6と、情報処理系7と、を備える。
【0015】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、被検体1の体軸方向に均一な静磁場を発生させるため、被検体1の周りに配置される永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源(不図示)と、この静磁場発生源による静磁場の不均一を補正する複数のチャンネルを有するシムコイル21と、シムコイル21の各チャンネルに電流を供給して駆動するシム電源22とを備える。
【0016】
シムコイル21は、互いに直交する磁場を発生する3チャンネル以上の静磁場発生コイルからなる。シムコイル21による静磁場の調整(シミング)は、静磁場発生源により生成される静磁場と、各シムコイル21に電流を流すことによって生成される付加的な静磁場とを重ね合わせることにより行う。
【0017】
傾斜磁場発生系3は、直交する3方向に磁場強度が線形に変化する傾斜磁場パルスGx、Gy、Gzを発生させる傾斜磁場コイル31と、傾斜磁場コイル31に電流を供給し、傾斜磁場コイル31を駆動する傾斜磁場電源33とを備える。
【0018】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1に高周波磁場(RF)パルスを照射する高周波コイル(送信コイル)51と、高周波コイル51に印加する高周波信号を発生するシンセサイザ52と、高周波信号をシーケンサ7の制御により変調する変調器53と、変調された信号を増幅する増幅器54とを備える。
【0019】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出する高周波コイル(受信コイル)61と、検出したエコー信号を増幅する増幅器62と、増幅された信号を直交位相検波する直交位相検波器63と、直交位相検波器63からのアナログ出力をディジタル信号に変換するA/D変換器64とを備える。A/D変換器64で変換後のディジタル信号は、計測データとして信号処理系7に送られる。
【0020】
なお、図1において、送信コイル51と傾斜磁場コイル31とは、被検体1が挿入される静磁場発生系2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置される。また、受信コイル61は、被検体1に対向して、或いは被検体1を取り囲むように設置される。また、ここでは、送信コイル51と受信コイル61とを別個に設ける場合を例示しているが、これに限られない。例えば、1の高周波コイルで、両機能を兼用させるよう構成してもよい。
【0021】
シーケンサ4は、所定のパルスシーケンスに従って、RFパルスと傾斜磁場パルスとを繰り返し印加するよう制御するもので、情報処理系7の制御に従って動作し、被検体1の断層画像を再構成するためのデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。送信系5および傾斜磁場発生系3は、シーケンサ4からの指示に従って、RFパルスの印加タイミング、期間および強度、傾斜磁場パルスの印加タイミング、期間および強度をそれぞれ制御する。また、受信系6は、シーケンサ4からの指示に従って、エコー信号を検出する。パルスシーケンスは、計測の目的に従って予め作成され、プログラムおよびデータとして情報処理系7内の後述する記憶装置72等に格納される。
【0022】
情報処理系7は、ユーザから入力された撮影条件に従ってMRI装置100全体の動作を制御して撮影を実行するとともに、得られた計測データを処理する。情報処理系7は、CPU71と、ROM、RAM等の記憶装置72と、光ディスク、磁気ディスク等の外部記憶装置73と、ディスプレイ等の表示装置74と、トラックボール又はマウス、キーボード等の入力装置75とを備える。入力装置75は表示装置74に近接して配置され、ユーザは、表示装置74を見ながら入力装置75を介してインタラクティブにMRI装置100の各種処理に必要な情報を入力する。
【0023】
図2に、本実施形態の情報処理系7の機能構成図を示す。本実施形態の情報処理系7は、上記機能を実現するため、本図に示すように、撮影を制御する撮影部710と、計測データを処理する信号処理部720と、静磁場分布を調整する静磁場調整部730とを備える。これらの機能は、記憶装置72に格納されるプログラムをCPU71が実行することにより実現する。
【0024】
撮影部710は、入力装置74を介してユーザから入力された撮影条件と、予め記憶装置72等に格納されているパルスシーケンスに従って、シーケンサ4に指示を与え、撮影条件で定められる撮影領域の撮影を実行する。現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0025】
信号処理部720は、受信系6からの計測データを受信すると、信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果を表示装置74に表示すると共に、記憶装置72または外部記憶装置73に記録する。
【0026】
静磁場調整部730は、静磁場発生系2による静磁場の分布を計測する静磁場分布計測部731と、静磁場分布計測部731による計測結果および入力装置75を介して設定される撮影条件に基づいて、静磁場の均一度を向上させるため、静磁場強度を補正する(シミングを行う)補正領域を決定する補正領域決定部732と、補正領域決定部732が決定した補正領域に対し、シミングを行う静磁場補正部733と、を備える。
【0027】
静磁場分布計測部731は、予め定められた静磁場分布計測領域について、予め定められた複数の格子点それぞれの静磁場強度を計算する。静磁場分布計測領域は、被検体1の傾き等にあわせて予め定められた直交する3軸方向の1軸方向を軸方向とする四角柱(直方体)の内部の領域である。例えば、静磁場発生源により静磁場が形成される全領域を略包含する領域などが静磁場分布計測領域として指定され、計測される。計測は、例えば、特許文献1に記載のパルスシーケンスを用いて行う。また、得られた各格子点の静磁場強度は、MRI装置100固有の座標系で特定される各格子点の座標に対応づけて記憶装置72等に格納される。
【0028】
静磁場補正部733は、補正領域決定部732が決定した補正領域に対し、シミングを行う。静磁場分布計測部731が計測した静磁場分布に従って、補正領域決定部732が決定した領域内の静磁場の均一性が向上するよう周知の手法で各シムコイル21に印加する電流量を決定する。
【0029】
補正領域決定部732は、静磁場分布計測領域内で、シミングを行う領域を補正領域として決定する。本実施形態では、補正領域は、撮影領域と重心が一致し、かつ、静磁場分布計測領域と底面が平行な四角柱(直方体)でとして求める。補正領域決定部732による補正領域の決定は、撮影条件として入力される撮影パラメータの中で、撮影領域を特定する撮影パラメータが変更される毎に行う。以下、本実施形態の均一領域決定部732の詳細について説明する。
【0030】
まず、補正領域決定部732による、補正領域の底面の決定手法(補正領域底面決定法)を説明する。図3および図4は、本実施形態の補正領域決定部732による補正領域底面決定法を説明するための図である。ここでは、ユーザから入力された撮影パラメータで特定される撮影領域を、静磁場分布領域の予め定められた面に投影する。ここでは、撮影領域の中心を原点とし、静磁場分布計測領域の四角柱(直方体)の各辺に平行な3軸を、それぞれ、Sx軸、Sy軸、Sz軸とする。四角柱(直方体)の底面は、Sx軸とSy軸とで決定されるSxy面とし、四角柱(直方体)の軸方向は、Sz軸とする。従って、補正領域の底面を決定するために投影する面は、Sxy平面である。図3は、Sxy平面上での底面の決定手法を説明するための図であり、図4は、Sx軸とSy軸とで決定する面上で底面の決定手法を説明するための図である。
【0031】
これらの図に示すように、補正領域決定部732は、Sxy平面上のSx軸およびSy軸にそれぞれ平行な辺で囲まれた長方形であって、投影面全体を含む最小の長方形を均一領域の底面とする。具体的には、本図に示すように、撮影領域420を構成する直方体の8つの頂点に対応する投影点431、432、433、434、435、436、437、438それぞれのSx座標およびSy座標の、両軸方向の最大値SxmaxおよびSymaxと、最小値SxminおよびSyminとで決定するSxy平面上の長方形を補正領域の底面430と決定する。決定結果は、記憶装置72等に保持する。なお、補正領域の底面430の4頂点の座標は(Sxmax、Symax)、(Sxmax、Symin)、(Sxmin、Symax)、(Sxmin、Symin)である。
【0032】
次に、補正領域決定部732による補正領域の高さの決定手法を説明する。本実施形態では高さの決定手法をその撮影領域の部位に応じて2種類用意する。以後、第一の補正領域高さ決定法および第二の補正領域高さ決定法と呼ぶ。補正領域の高さは、上述のように、静磁場分布計測領域の高さ(軸方向)と同じ方向、すなわち、Sz軸方向である。
【0033】
図5は、本実施形態の第一の補正領域高さ決定法を説明するための図である。第一の補正領域高さ決定法では、撮影領域420の高さ429と同じ長さを補正領域の高さ(第一の補正領域高さ)440と決定する。具体的には、図5に示すように、撮影領域420の高さ429をSx軸、Sy軸、Sz軸で定まる座標の原点を中心にSz軸まで回転させた際のSz軸上の両端部間の長さを第一の補正領域高さ440とする。決定結果は、記憶装置72などに保持する。なお、本実施形態では、撮影領域420を構成する直方体の直交する3辺の中で、Sz軸に投影した長さが最も長い辺の長さを、撮影領域420の高さ429とする。
【0034】
第一の補正領域高さ決定法によれば、補正領域として決定する領域において、撮影領域420の端部領域を除外することができる。例えば、撮影対象部位が頭部の場合、撮影領域端部には鼻腔がある。このような、静磁場均一度補正における電流量計算に悪影響を与える部位を、除くことができる。
【0035】
図6は、本実施形態の第二の補正領域高さ決定法を説明するための図である。第二の補正領域高さ決定法では、撮影領域420の高さ429をSz軸に投影した長さを高さ(第二の補正領域高さ)450と決定する。具体的には、図6に示すように、撮影領域420の各頂点をSz軸上に投影した投影点(451、453、454、454、456、458)のSz座標の最大値と最小値とで決定する長さを第二の補正領域高さ450とする。決定結果は記憶装置72等に保持する。
【0036】
第二の補正領域高さ決定法により高さが決定された補正領域には、撮影領域420全体が含まれる。従って、撮影領域420全体の静磁場均一度を補正することができる。
【0037】
なお、補正領域の高さを決定するにあたり、上記第一の補正領域高さ決定法および第二の補正領域高さ決定法のいずれを用いるかは、予め定められ、記憶装置72等に保持される。本実施形態では、撮影部位に応じて予めいずれの決定法を用いるか対応づけ、決定法データベースとして記憶装置72等に保持する。すなわち、本実施形態の補正領域決定部732は、入力された撮影条件の中の撮影部位を特定する撮影パラメータに基づき、決定法データベースを参照し、いずれの決定法を用いるか判別する。
【0038】
以下、本実施形態の均一領域決定部732による補正領域決定処理の流れについて説明する。図7は、本実施形態の補正領域決定処理の処理フローである。本実施形態の補正領域決定部732は、撮影条件の中の、撮影領域420を特定する情報、例えば、傾き、位置、撮影面の大きさ等の撮影パラメータが変更されたことを受けて、補正領域決定処理を開始する。
【0039】
撮影領域決定部732は、撮影パラメータの変更を受け、まず、上記の補正領域底面決定法を用いて補正領域の底面430を決定する(ステップS201)。次に、補正領域決定部732は、決定法データベースを参照し、撮影パラメータで指定された撮影部位に従っていずれの高さ決定法を用いるか決定する(ステップS202)。
【0040】
第一の補正領域高さ決定法を用いると決定した場合、補正領域決定部732は、上述の第一の補正領域高さ決定法に従って補正領域の高さ440を決定し(ステップS203)、一方、第二の補正領域高さ決定法を用いると決定した場合、補正領域決定部732は、上述の第二の補正領域高さ決定法に従って補正領域の高さ450を決定する(ステップS204)。
【0041】
補正領域決定部732は、以上の手順で決定した底面430および高さ440または450により特定される直方体領域であって、撮影領域420と重心を同一とする直方体領域を、補正領域として記憶装置72に保持するとともに、均一度を補正する領域として、表示装置74に表示し(ステップS205)、処理を終了する。
【0042】
なお、静磁場補正部733は、記憶装置72に保持された補正領域の情報に基づき、本撮影の前に上記シミングを行う。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、撮影領域に応じて、自動的に静磁場均一度を補正する領域が決定される。また、静磁場均一度を補正する領域は、ユーザが撮影パラメータを変更することにより撮影領域を変更する毎に行われる。従って、ユーザは、従来どおり撮影パラメータを設定し、撮影領域を特定するだけの操作で、自動的に静磁場均一度を補正する最適な領域が決定される。
【0044】
また、上述したように、補正領域は、撮影部位に応じて、適切な範囲が設定される。従って、本実施形態によれば、ユーザの負担を増加させることなく、撮影領域および撮影部位に応じて最適な静磁場補正領域を容易かつ高速に特定することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、静磁場補正部733が上記処理で決定した補正領域をそのまま用いるよう構成しているが、これに限られない。例えば、上記ステップS205で表示後、ユーザからの調整を受け入れるよう構成してもよい。ユーザは表示装置74に表示された補正領域をみながら、入力装置75を用い、補正領域の微調整を行う。ユーザが補正領域の微調整を行う手法は、従来のユーザが補正領域をGUIを介して入力する技術を用いる。
【0046】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態について説明する。本実施形態のMRI装置は基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。第一の実施形態では、撮影対象部位に応じて、撮影領域の高さの決定手法を変更している。しかし、本実施形態では、補正領域の大きさに応じて高さの決定手法を変更する。以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0047】
静磁場均一度を向上させるための補正は、必要最小限の領域で行う方がより均一性を高めることができる。しかし、静磁場分布計測で静磁場強度を得た格子点の数であって、補正領域として抽出した領域内に含まれる格子点の数が少ない場合、データ数が少ないために補正の精度が高まらないことがある。これを避けるため、本実施形態の補正領域決定部732は、補正領域の高さを決定するにあたり、第一の補正領域高さ決定法および第二の補正領域高さ決定法のいずれを用いるか、補正領域の広さで決定する。決定は、予め記憶装置72に保持される閾値との比較により行う。以下、本実施形態の補正領域決定部732による補正領域決定処理を説明する。
【0048】
図8は、本実施形態の補正領域決定部732による補正領域決定処理の処理フローである。本実施形態においても、第一の実施形態同様、撮影条件の中で撮影領域を特定する撮影パラメータが変更されたことを受けて、補正領域決定処理は開始される。
【0049】
補正領域決定部732は、撮影パラメータの変更を受け、まず、第一の実施形態で説明した補正領域底面決定法を用いて補正領域の底面430を決定する(ステップS301)。次に、補正領域決定部732は、第一の実施形態で説明した第一の補正領域高さ決定法を用い、補正領域の高さ440を決定し(ステップS302)、補正領域全体を決定する。
【0050】
次に、補正領域決定部732は、決定した補正領域内に、静磁場分布計測部731により静磁場強度を得た格子点の数をカウントする(ステップS303)。補正領域内の格子点の数は、例えば、静磁場分布計測時に得た各格子点の間隔と、補正領域の体積とから算出する。そして、得られた格子点の数が、予め記憶装置72に保持される閾値以上か否かを判別する(ステップS304)。
【0051】
ステップS304において閾値未満の場合、補正領域決定部732は、第一の実施形態で説明した第二の補正領域高さ決定法により補正領域の高さ450を算出し、ステップS702で算出した高さ440を置き換える(ステップS305)。一方、ステップS704において、閾値以上の場合は、そのまま、得られた高さ440を補正領域の高さとする。
【0052】
補正領域決定部732は、以上の手順で決定した底面430および高さ440または450により特定される直方体領域であって、撮影領域420と重心を同一とする直方体領域を、補正領域として記憶装置72に保持するとともに、に均一度を補正する領域として、表示装置74に表示し(ステップS306)、処理を終了する。なお、本実施形態においても、上記ステップS306で表示後、ユーザからの調整を受け入れるよう構成してもよい。
【0053】
また、本実施形態においても、静磁場補正部733は、記憶装置72に保持された補正領域の情報に基づき、本撮影の前に上記シミングを行う。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態と同様に、撮影領域に応じて、自動的に静磁場均一度を補正する領域が決定される。また、静磁場均一度を補正する領域は、ユーザが撮影パラメータを変更することにより撮影領域を変更する毎に行われる。従って、ユーザは、従来どおり撮影パラメータを設定し、撮影領域を特定するだけの操作で、自動的に静磁場均一度を補正する最適な領域が決定される。
【0055】
また、本実施形態によれば、補正領域として、補正による静磁場の均一度を向上させるために必要最小限の領域を選択できる。
【0056】
なお、上記第一の実施形態および第二の実施形態を組み合わせた構成としてもよい。すなわち、補正領域決定部732は、補正領域の底面430を決定後、撮影部位により第一の補正領域高さ決定法および第二の補正領域高さ決定法のいずれを用いるか、第一の実施形態と同様の判別手法により判別する。そして、第一の補正領域高さ決定法を用いると判別された場合、第二の実施形態のステップS302以降の処理を行う。
【0057】
このように構成することにより、部位に応じて最適な補正領域を決定することができるとともに、必要最低限の領域も確保可能となる。従って、より効率的に最適な補正領域を決定することができる。
【0058】
さらに、上記各実施形態では、補正領域の底面を、撮影領域をSxy平面に投影し、それらを全て含み、Sx軸およびSy軸に平行な直線で規定される長方形として決定しているが、これに限られない。例えば、図9に示すように撮影領域420をSxy平面に投影して得た領域そのままであってもよい。具体的には、撮影領域をSxy平面に投影した際の撮影領域の6つの頂点の座標を結んだ六角形を底面460とする。
【0059】
底面460をこのように決定することで、より撮影領域420との合致度の高い領域を、補正領域として決定することができ、撮影領域420内の静磁場均一度の補正の精度を高めることができる。
【0060】
いずれの手法で底面を決定するかは、予め定めておく。または、第一の実施形態同様、撮影部位に応じて決定してもよい。この場合、第一の実施形態同様、撮影部位に対応づけていずれの底面決定手法を用いるか、データベースに保持する。さらに、底面の決定法も閾値と比較して決定するよう構成してもよい。すなわち、まず、上記手法で補正領域の底面460を決定し、第一の実施形態と同様の手法で、撮影部位に応じて高さを決定し、補正領域を決定する。その後、補正領域内のデータ点数を予め保持する閾値と比較し、閾値未満である場合、底面の決定法を上記各実施形態で示したものに変更するよう構成してもよい。
【0061】
また、補正領域の高さを決定する際、決定法を撮影パラメータの部位に対応付けて記憶装置72に保持しているが、これに限られない。例えば、用いる受信コイル61の種別に対応付けて決定法を保持してもよい。これは、部位に応じて用いる受信コイル61が異なるため、受信コイル61の種別がわかれば、撮影部位も特定できるからである。また、部位と受信コイル61種別の両情報に対応づけて保持してもよい。
【0062】
なお、上記各実施形態では、静磁場分布の不均一性を補正するために、シムコイル21およびシム電源22を備え、これらを駆動させることで補正を行っているが、これに限られない。例えば、傾斜磁場コイル31を用い、静磁場分布の不均一を補正するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1:被検体、2:静磁場発生系、3:傾斜磁場発生系、4:シーケンサ、5:送信系、6:受信系、7:情報処理系、21:シムコイル、22:シム電源、31:傾斜磁場コイル、33:傾斜磁場電源、51:送信コイル、52:シンセサイザ、53:変調器、54:増幅器、61:受信コイル、62:増幅器、63:直交位相検波器、64:A/D変換器、71:CPU、72:記憶装置、73:外部記憶装置、74:表示装置、75:入力装置、100:MRI装置、420:撮影領域、429:撮影領域の高さ、430:補正領域の底面、431:投影点、432:投影点、433:投影点、434:投影点、435:投影点、436:投影点、437:投影点、438:投影点、440:第一の補正領域高さ、450:第二の補正領域高さ、451:投影点、453:投影点、454:投影点、455:投影点、456:投影点、458:投影点、460:補正領域の底面、710:撮影部、720:信号処理部、730:静磁場調整部、731:静磁場分布計測部、732:補正領域決定部、733:静磁場補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に静磁場を与える静磁場発生手段と、装置全体を制御して撮影を実行するとともに得られた信号を処理する中央制御手段と、前記中央制御手段に指示を入力する入力手段と、前記中央制御手段で処理されたデータを表示および保存する出力手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置であって、
前記中央制御手段は、
予め定められた計測領域内の静磁場分布を計測する静磁場分布計測手段と、
前記静磁場分布の不均一性を補正する静磁場補正手段と、
前記静磁場補正手段が静磁場分布の不均一性を補正する補正領域を決定する補正領域決定手段と、を備え、
前記補正領域決定手段は、入力手段を介して入力された撮影パラメータに従って、前記計測領域内に前記補正領域を決定すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記計測領域は、予め定められた直交する3軸の1軸方向を軸方向とする四角柱の内部領域であり、
前記補正領域は、前記計測領域と軸方向を同一にし、かつ、前記撮影パラメータで特定される撮影領域と中心を同一にする多角柱の内部領域であり、
前記補正領域決定手段は、
前記撮影領域を、前記軸方向に直交する面に投影して得られた投影形状を少なくとも含む形状を、前記多角柱の底面形状とする底面形状決定手段と、
前記撮影領域の高さと同じ長さおよび前記撮影領域の高さを前記軸方向に投影した長さのいずれか一方の長さを前記多角柱の高さとする高さ決定手段と、を備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮影パラメータで指定された撮影対象部位毎に、前記2種の長さのうちいずれの長さを前記多角柱の高さと決定するか予め定められていること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記静磁場分布計測手段は、前記計測領域内の予め定められた複数の格子点の静磁場強度を前記静磁場分布として計測し、
前記撮影領域の高さと同一の長さを前記多角柱の高さとした場合の前記補正領域内に含まれる前記格子点の数が所定値以上である場合、前記高さ決定手段は、前記撮影領域の高さと同一の長さを前記多角柱の高さとすること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項2から4いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記底面形状は、前記投影形状を含み、かつ、前記軸方向に直交する2軸にそれぞれ平行な長方形であって面積が最小の長方形であること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項2から4いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記底面形状は、前記投影形状であること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記静磁場分布計測手段は、前記計測領域内の予め定められた複数の格子点の静磁場強度を前記静磁場分布として計測し、
前記撮影領域の高さと同一の長さを前記多角柱の高さとした場合の前記補正領域内に含まれる前記格子点の数が所定値未満である場合、前記高さ決定手段は、当該撮影対象部位が前記撮影領域の高さと同一の長さを前記多角柱の高さとするよう定められている場合であっても、前記撮影領域の高さを前記軸方向に投影した長さを前記多角柱の高さとすること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記補正領域決定手段は、前記撮影パラメータの変更により前記撮影領域が変更される毎に、前記補正領域を決定すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
被検体に静磁場を与える静磁場発生手段と、装置全体を制御して撮影を実行するとともに得られた信号を処理する中央制御手段と、前記中央制御手段に指示を入力する入力手段と、前記中央制御手段で処理されたデータを表示および保存する出力手段と、前記静磁場の均一度を補正する静磁場均一度補正手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置における、前記静磁場均一度補正手段が前記静磁場の均一度を補正する補正領域を決定する静磁場均一度補正領域決定方法であって、
前記補正領域の底面を算出する底面算出ステップと、
前記入力手段を介して入力された撮影パラメータで特定される撮影部位に応じて前記補正領域の高さを算出する高さ算出ステップと、
前記底面算出ステップで算出した底面と前記高さ算出ステップで算出した高さとを用い、前記撮影パラメータで決定される撮影領域と重心を同一とする領域を前記補正領域として決定する補正領域決定ステップと、を備え、
前記底面算出ステップでは、前記計測領域の底面に平行な面に前記撮影領域を投影して得られた投影形状を少なくとも含む形状を前記底面として算出し、
前記高さ算出ステップでは、前記撮影部位に応じて、前記撮影領域の高さと同じ長さおよび前記撮影領域の高さを前記計測領域の底面に直交する軸方向に投影した長さのいずれか一方の長さを前記高さとして算出すること
を特徴とする静磁場均一度補正領域決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−213994(P2010−213994A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66447(P2009−66447)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】