説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】傾斜磁場コイルを均等に冷却することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置100が、静磁場内に置かれた被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイル20を有する。そして、第1冷却管が、傾斜磁場コイル20に設けられ、所定の方向に冷媒を循環させる。また、第2冷却系が、第1冷却管と並列になるように傾斜磁場コイル20に設けられ、第1冷却管が冷媒を循環させる方向と反対の方向に冷媒を循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を画像化する装置である。かかる磁気共鳴イメージング装置は、撮像領域に静磁場を発生させる静磁場磁石や、静磁場内に置かれた被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイル、傾斜磁場が印加された被検体から磁気共鳴信号を受信する高周波コイルなどの各種ユニットを備える。
【0003】
これら各種ユニットのうち、傾斜磁場コイルは、撮像中にパルス電流が繰り返して供給されるため、大きく発熱する。特に、近年では、イメージング技術の高速化にともなって、傾斜磁場のスイッチングの高速化および傾斜磁場の高強度化が必須となっており、傾斜磁場コイルの発熱がさらに顕著になっている。
【0004】
傾斜磁場コイルの発熱は、撮像される画像の画質に影響を与えたり、撮像対象となる被検体に苦痛を与えたりする可能性がある。そこで、従来、撮像中に傾斜磁場コイルの発熱を抑えるための各種技術が考案されている。例えば、傾斜磁場コイルに設けられた冷却管に冷媒を循環させることによって、撮像中に傾斜磁場コイルを冷却させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−311957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の磁気共鳴イメージング装置では、以下に示すように、傾斜磁場コイルを均等に冷却することができないという課題があった。
【0007】
具体的には、上述した従来の技術では、傾斜磁場コイルにおいて、冷却管の入口と出口とがそれぞれ反対側に配置されるのが一般的である。そして、冷却管を流れる冷媒は、傾斜磁場コイルの一方の側から流入して反対側から流出するまでの間に、傾斜磁場コイルが発する熱量を奪って徐々に温度が上昇してゆく。したがって、冷却管の入口付近と出口付近とでは、冷媒の温度に差が生じることになる。その結果、傾斜磁場コイル内を流れる冷却水に温度勾配が生じることになり、傾斜磁場コイルを均等に冷却することができなかった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、傾斜磁場コイルを均等に冷却することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る磁気共鳴イメージング装置は、静磁場内に置かれた被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイルと、前記傾斜磁場コイルに設けられ、所定の方向に冷媒を循環させる第1の冷却管と、前記第1の冷却管と並列になるように前記傾斜磁場コイルに設けられ、前記第1の冷却管が冷媒を循環させる方向と反対の方向に冷媒を循環させる第2の冷却管と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、傾斜磁場コイルを均等に冷却することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施例に係るMRI装置の概要を説明するための図である。
【図2】図2は、本実施例に係るMRI装置の構成を示す構成図である。
【図3】図3は、本実施例に係る傾斜磁場コイルの構造を示す斜視図である。
【図4】図4は、本実施例に係る傾斜磁場コイルの内部構造を示す構造図である。
【図5】図5は、本実施例に係るMRI装置における冷却水の循環経路を示す図である。
【図6】図6は、本実施例に係るMRI装置における冷却水の循環経路の他の例を示す図である。
【図7】図7は、本実施例に係るメインコイル側冷却系における冷却管の配置の一例を示す図である。
【図8】図8は、本実施例に係る入口側マニホールドおよび出口側マニホールドの一例を示す図である。
【図9】図9は、本実施例に係る第1冷却管および第2冷却管の配置の他の例を示す図である。
【図10】図10は、本実施例に係る入口側マニホールドおよび出口側マニホールドの他の例を示す図である。
【図11】図11は、第1冷却管および第2冷却管をそれぞれ3本ずつ用いた場合の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」と呼ぶ)の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例によって本発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施例では、傾斜磁場コイルを冷却するための冷媒として水(以下、「冷却水」と呼ぶ)を用いた場合について説明する。
【実施例】
【0013】
まず、本実施例に係るMRI装置の概要について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置の概要を説明するための図である。本実施例に係るMRI装置は、静磁場内に置かれた被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイルを有している。本実施例では、傾斜磁場コイルは、ASGC(Actively Shielded Gradient Coil)である。
【0014】
ここで、傾斜磁場コイルには、それぞれ並列に配置された複数の冷却管を有する第1冷却系および第2冷却系が設けられている。そして、本実施例では、図1に示すように、第1冷却系と第2冷却系とが、それぞれ反対の方向に冷却水を循環させるようにしている。
【0015】
これにより、傾斜磁場コイルにおいて、第1冷却系を流れる冷却水の温度が低い箇所では、第2冷却系を流れる冷却水の温度が高くなり、逆に、第1冷却系を流れる冷却水の温度が高い箇所では、第2冷却系を流れる冷却水の温度が低くなる。したがって、冷却管同士での熱のやり取りは発生するが、傾斜磁場コイル全体としては、一方の側の温度が高くなることはない。その結果、冷却水に温度勾配が生じるのを防ぐことができるので、傾斜磁場コイルを均等に冷却することが可能になる。
【0016】
次に、本実施例に係るMRI装置100の構成について説明する。図2は、本実施例に係るMRI装置100の構成を示す構成図である。同図に示すように、このMRI装置100は、静磁場磁石10と、傾斜磁場コイル20と、RFコイル30と、天板40と、傾斜磁場電源50と、送信部60と、受信部65と、シーケンス制御装置70と、計算機システム80と、冷却装置90とを有する。
【0017】
静磁場磁石10は、概略円筒形状の真空容器11と、真空容器11の中で冷却液に浸漬された超伝導コイル12とを有し、撮像領域であるボア(静磁場磁石10の円筒内部の空間)内に静磁場を発生させる。
【0018】
傾斜磁場コイル20は、概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に固定されている。この傾斜磁場コイル20は、傾斜磁場電源50から供給される電流によりX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を印加するメインコイル21と、メインコイル21の漏洩磁場をキャンセルするシールドコイル22とを有している。
【0019】
ここで、メインコイル21とシールドコイル22との間には、シムトレイ挿入ガイド23が形成されている。このシムトレイ挿入ガイド23には、ボア内の磁場不均一を補正するための鉄シム25を収納したシムトレイ24が挿入される。かかる傾斜磁場コイル20の構造については、後に詳細に説明する。
【0020】
RFコイル30は、傾斜磁場コイル20の内側に、被検体Pを挟んで対向するように固定されている。このRFコイル30は、送信部60から送信されるRFパルスを被検体Pに照射し、また、水素原子核の励起によって被検体Pから放出される磁気共鳴信号を受信する。
【0021】
天板40は、図示していない寝台に水平方向へ移動可能に設けられており、撮影時には被検体Pが載置されてボア内へ移動される。傾斜磁場電源50は、シーケンス制御装置70からの指示に基づいて、傾斜磁場コイル20に電流を供給する。
【0022】
送信部60は、シーケンス制御装置70からの指示に基づいて、RFコイル30にRFパルスを送信する。受信部65は、RFコイル30によって受信された磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号をデジタル化して得られる生データをシーケンス制御装置70に対して送信する。
【0023】
シーケンス制御装置70は、計算機システム80による制御のもと、傾斜磁場電源50、送信部60および受信部65をそれぞれ駆動することによって被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御装置70は、スキャンを行った結果、受信部65から生データが送信されると、その生データを計算機システム80に送信する。
【0024】
計算機システム80は、MRI装置100全体を制御する。具体的には、この計算機システム80は、操作者から各種入力を受け付ける入力部や、操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス制御装置70にスキャンを実行させるシーケンス制御部、シーケンス制御装置70から送信された生データに基づいて画像を再構成する画像再構成部、再構成された画像などを記憶する記憶部、再構成された画像など各種情報を表示する表示部、操作者からの指示に基づいて各機能部の動作を制御する主制御部などを有する。
【0025】
冷却装置90は、傾斜磁場コイル20に設けられた冷却管に冷却水を供給する。具体的には、冷却装置90は、傾斜磁場コイル20が有する第1冷却系および第2冷却系それぞれに冷却水を供給する。ここで、冷却装置90は、第1冷却系を流れる冷却水の方向と第2冷却系を流れる冷却水の方向とがそれぞれ反対の方向になるように、それぞれの冷却系に冷却水を供給する。
【0026】
次に、図2に示した傾斜磁場コイル20の構造について説明する。図3は、本実施例に係る傾斜磁場コイル20の構造を示す斜視図である。同図に示すように、傾斜磁場コイル20は、概略円筒形状をなすメインコイル21と、シールドコイル22とを有している。そして、これら二つのコイルの間には、複数のシムトレイ挿入ガイド23が形成されている。
【0027】
シムトレイ挿入ガイド23は、傾斜磁場コイル20の両端面に開口を形成する貫通穴であり、傾斜磁場コイル20の長手方向に全長にわたって形成されている。このシムトレイ挿入ガイド23は、メインコイル21およびシールドコイル22に挟まれた領域に、互いに平行となるように円周方向に等間隔に形成されている。そして、かかるシムトレイ挿入ガイド23には、シムトレイ24が挿入されている。
【0028】
シムトレイ24は、非磁性かつ非電導性材料である樹脂にて作製され、概略棒状をなしている。このシムトレイ24には、所定の数の鉄シム25が収納されている。そして、シムトレイ24は、シムトレイ挿入ガイド23に挿入されて、それぞれ傾斜磁場コイル20の中央部に固定されている。また、図3では図示を省略しているが、傾斜磁場コイル20には、円筒形状に沿って、螺旋状に冷却管が埋設されている。
【0029】
図4は、本実施例に係る傾斜磁場コイル20の内部構造を示す構造図である。同図は、傾斜磁場コイル20の一部分を示しており、同図における上側が円筒形状の外側を示しており、同図における下側が円筒形状の内側を示している。
【0030】
図4に示すように、傾斜磁場コイル20において、シムトレイ挿入ガイド23とメインコイル21との間には、メインコイル側冷却系26が設けられている。また、シムトレイ挿入ガイド23とシールドコイル22との間には、シールドコイル側冷却系27が設けられている。ここで、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27は、それぞれ、螺旋状に埋設された複数の冷却管を有している。
【0031】
具体的には、メインコイル側冷却系26は、第1冷却管と、第1冷却管と並列になるように設けられた第2冷却管とを有している。第1冷却管は、所定の方向(図4に示す点線矢印の方向)に冷却水を循環させ、第2冷却管は、第1冷却管が冷却水を循環させる方向と反対の方向(図4に示す実線矢印の方向)に冷却水を循環させる。なお、シールドコイル側冷却系27も同様に、第1冷却管と第2冷却管とを有している。
【0032】
すなわち、傾斜磁場コイル20では、メインコイル21と鉄シム25との間にメインコイル側冷却系26が配置され、シールドコイル22と鉄シム25との間にシールドコイル側冷却系27が配置される。そして、メインコイル側冷却系26とシールドコイル側冷却系27とは、鉄シム25を挟むようにそれぞれ配置される。これにより、メインコイル21およびシールドコイル22によって発生する熱が鉄シム25に伝わりにくくなる。
【0033】
次に、本実施例に係るMRI装置100における冷却水の循環経路について説明する。図5は、本実施例に係るMRI装置100における冷却水の循環経路を示す図である。図5に示すように、例えば、MRI装置100は、冷媒供給管90a、90bおよび90cと弁90dとを備える。冷媒供給管90aは、一端が冷却装置90に接続され、他端が弁90dに接続される。冷媒供給管90bは、一端が弁90dに接続され、他端が傾斜磁場コイル20の側端に接続される。冷媒供給管90cは、一端が弁90dに接続され、他端が傾斜磁場コイル20の側端に接続される。ここで、冷媒供給管90cは、傾斜磁場コイル20に対して、冷媒供給管90bとは反対の側に接続される。
【0034】
また、MRI装置100は、冷媒排出管90e、90fおよび90gと弁90hとを備える。冷媒排出管90eは、一端が傾斜磁場コイル20の側端に接続され、他端が弁90hに接続される。冷媒排出管90fは、一端が傾斜磁場コイル20の側端に接続され、他端が弁90hに接続される。ここで、冷媒供給管90fは、傾斜磁場コイル20に対して、冷媒供給管90eとは反対の側に接続される。冷媒供給管90gは、一端が弁90hに接続され、他端が冷却装置90に接続される。
【0035】
そして、冷媒供給管90aは、冷却装置90から供給される冷却水を弁90dへ流す。弁90dは、冷媒供給管90aから流れ込む冷却水を2つの流路に分岐し、一方の流路の冷却水を冷媒供給管90bへ流し、他方の流路の冷却水を冷媒供給管90cへ流す。冷媒供給管90bは、弁90dから流れ込む冷却水をメインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第1冷却管に供給する。冷却管90cは、弁90dから流れ込む冷却水をメインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第2冷却管に流入させる。
【0036】
また、冷媒排出管90eは、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第1冷却管から流出する冷却水を弁90hへ流す。冷媒排出管90fは、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第2冷却管から流出する冷却水を弁90hへ流す。弁90hは、冷媒排出管90eおよび90fから流れ込む冷却水を合流させて冷媒排出管90gへ流す。冷媒供給管90gは、弁90hから流れ込む冷却水を冷却装置90に戻す。
【0037】
これにより、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第1冷却管に冷却水が循環される。また、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第2冷却管にも冷却水が循環される。
【0038】
このように、本実施例では、冷媒供給管90a、90bおよび90cが、冷却装置90から供給される冷却水の流路を2つの流路に分岐し、一方の流路を流れる冷却水を傾斜磁場コイル20の一方の側端から第1冷却管に供給し、第2の流路を流れる冷却水を傾斜磁場コイル20の他方の側端から第2冷却管に供給する。すなわち、本実施例では、傾斜磁場コイル20において、第1冷却系および第2冷却系にはそれぞれ反対側から冷却水が供給される。
【0039】
なお、冷却水の循環経路はこれに限られるものではない。図6は、本実施例に係るMRI装置における冷却水の循環経路の他の例を示す図である。図6に示す例は、MRI装置100が2つの冷却装置91および92を備えている場合を示している。この場合には、例えば、MRI装置100は、冷媒供給管91aおよび92a、ならびに、冷媒排出管91bおよび92bを備える。
【0040】
冷媒供給管91aは、一端が冷却装置91に接続され、他端が傾斜磁場コイル20の側端に接続される。冷媒供給管92aは、一端が冷却装置92に接続され、他端が傾斜磁場コイル20の側端に接続される。ここで、冷媒供給管92aは、傾斜磁場コイル20に対して、冷媒供給管91aとは反対の側に接続される。
【0041】
冷媒排出管91bは、一端が傾斜磁場コイル20の側端に接続され、他端が冷却装置91に接続される。冷媒排出管92bは、一端が傾斜磁場コイル20の側端に接続され、他端が冷却装置92に接続される。ここで、冷媒排出管92bは、傾斜磁場コイル20に対して、冷媒排出管92bとは反対の側に接続される。
【0042】
そして、冷媒供給管91aは、冷却装置91から供給される冷却水をメインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第1冷却管に流入させる。また、冷媒排出管91bは、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第1冷却管から流出する冷却水を冷却装置91に戻す。これにより、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第1冷却管に冷却水が循環される。
【0043】
また、冷媒供給管92aは、冷却装置92から供給される冷却水をメインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第2冷却管に流入させる。また、冷媒排出管92bは、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第2冷却管から流出する冷却水を冷却装置92に戻す。これにより、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27それぞれの第2冷却管に冷却水が循環される。
【0044】
このように、例えば、冷却装置91が、傾斜磁場コイル20の一方の側端から第1の冷却管に冷却水を供給する。また、冷却装置92が、傾斜磁場コイル20の他方の側端から第2の冷却管に冷却水を供給する。この例でも、傾斜磁場コイル20において、第1冷却系および第2冷却系はそれぞれ反対側から冷却水が供給されることになる。
【0045】
次に、メインコイル側冷却系26およびシールドコイル側冷却系27における冷却管の配置について説明する。なお、メインコイル側冷却系26における冷却管の配置とシールドコイル側冷却系27における冷却管の配置とはそれぞれ同様であるので、ここでは、メインコイル側冷却系26を例にあげて説明する。
【0046】
図7は、本実施例に係る傾斜磁場コイル20のメインコイル側冷却系26における冷却管の配置の一例を示す図である。同図は、第1冷却管および第2冷却管をそれぞれ2本ずつ用いた場合を示している。例えば、同図に示すように、メインコイル側冷却系26において、第1冷却管26aと第2冷却管26bとが交互に配置される。
【0047】
また、図7では図示を省略しているが、各冷却管の入口および出口には、それぞれマニホールド(分岐管)が設けられている。入口に設けられたマニホールド(以下、「入口側マニホールド」と呼ぶ)は、冷却装置90から供給される冷却水を所定の分岐数に分岐して、各冷却管にそれぞれ流入させる。出口に設けられたマニホールド(以下、「出口側マニホールド」と呼ぶ)は、各冷却管から流出した冷却水を合流させて冷却装置90へ送る。
【0048】
図8は、本実施例に係る入口側マニホールドおよび出口側マニホールドの一例を示す図である。同図は、図7に示したメインコイル側冷却系26の冷却管に設けられるマニホールドを示している。例えば、図8に示すように、メインコイル側冷却系26において、第1冷却管26aの入口に入口側マニホールド28aが設けられ、第2冷却管26bの出口に出口側マニホールド29bが設けられる。
【0049】
入口側マニホールド28aは、冷却装置90から供給される冷却水を2つに分岐して、各第1冷却管26aにそれぞれ流入させる。なお、図8には図示していないが、第2冷却管26bの入口に設けられる入口側マニホールドも同様に、冷却装置90から供給される冷却水を2つに分岐して、各第2冷却管にそれぞれ流入させる。
【0050】
一方、出口側マニホールド29bは、各第2冷却管26bから流出した冷却水を合流させて冷却装置90へ送る。なお、図8には図示していないが、第1冷却管26aの出口に設けられる出口側マニホールドも同様に、各第1冷却管26aから流出した冷却水を合流させて冷却装置90へ送る。
【0051】
ここで、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、各マニホールドの分岐数は、それぞれ、各冷却管の圧力損失がそれぞれ同じになるように決められている。例えば、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、および、各マニホールドの分岐数を全て同じにする。また、例えば、いずれかの冷却管の長さを他の冷却管の長さより短くする場合には、長さが短い冷却管の管径を他の冷却管の管径より太くすることで、各冷却管の圧力損失を同じにする。また、例えば、いずれかのマニホールドの分岐数を他のマニホールドの分岐数より多くする場合には、分岐数が多いマニホールドに接続される冷却管の管径を他のマニホールドに接続される冷却管の管径より細くすることで、各冷却管の圧力損失を同じにする。このように、各冷却管の圧力損失を同じにすることによって、各冷却管に流れる冷却水の流量が一定になる。
【0052】
上述してきたように、本実施例では、第1冷却管が、傾斜磁場コイル20に設けられ、所定の方向に冷媒を循環させる。また、第2冷却系が、第1冷却管と並列になるように傾斜磁場コイル20に設けられ、第1冷却管26aが冷媒を循環させる方向と反対の方向に冷媒を循環させる。したがって、本実施例によれば、冷却水に温度勾配が生じるのを防ぐことができるので、傾斜磁場コイルを均等に冷却することが可能になる。
【0053】
また、本実施例では、第1冷却管および第2冷却管が、それぞれメインコイル21と鉄シム25との間、および、シールドコイル22と鉄シム25との間に配置されている。したがって、本実施例によれば、鉄シム25に温度勾配が生じるのを防ぐことができる。鉄シム25の温度変化は、磁場均一性が変動する原因となるため、撮像される画像の画質に影響を与えることが知られている。本実施例では、鉄シム25に温度勾配が生じるのを防ぐことが可能になる結果、磁場均一性を向上させることができるので、安定した画質の画像を得ることができる。
【0054】
また、本実施例によれば、第1冷却管と第2冷却管とが交互に配置されている。したがって、本実施例によれば、冷却水の温度分布をより均一にすることができるので、傾斜磁場コイルをより均等に冷却することが可能になる。
【0055】
また、本実施例によれば、各冷却管の圧力損失がそれぞれ同じになるように、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、各マニホールドの分岐数がそれぞれ決められている。したがって、本実施例によれば、各冷却管に流れる冷却水の流量が一定になるので、傾斜磁場コイル20をより精度よく均等に冷却することができる。
【0056】
なお、上記実施例では、第1冷却管と第2冷却管とが交互に配置される場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、複数の第1冷却管を並べた組と、複数の第2冷却管を並べた組とを交互に配置するようにしてもよい。
【0057】
図9は、本実施例に係る第1冷却管および第2冷却管の配置の他の例を示す図である。ここでも、メインコイル側冷却系26を例にあげて説明する。例えば、図9に示すように、メインコイル側冷却系26において、2本の第1冷却管を並べた組と、2本の第2冷却管を並べた組とを交互に配置してもよい。このように、複数本の冷却管を組にして、その組ごとに冷却管を配置することによって、マニホールドの部分で冷却管が交差することがなくなる。
【0058】
図10は、本実施例に係る入口側マニホールド28aおよび出口側マニホールド29bの他の例を示す図である。同図は、図9に示したメインコイル側冷却系26の冷却管に設けられるマニホールドを示している。例えば、図10に示すように、2本の第1冷却管26aが隣接して配置され、2本の第2冷却管26bが隣接して配置されることによって、入口側マニホールド28aと出口側マニホールド29bとを交差させずに配置することができる。これにより、より省スペースで冷却管を分岐することができる。また、小さなサイズのマニホールドを用いることができる。
【0059】
また、各マニホールドをそれぞれ前記傾斜磁場コイルの内部に設けられているようにしてもよい。これにより、さらに少ないスペースで冷却管を分岐することが可能になる。
【0060】
また、上記実施例では、各冷却管の圧力損失がそれぞれ同じになるように、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、各マニホールドの分岐数がそれぞれ決められていることとした。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、シールドコイル側冷却系27に含まれる冷却管と比べてメインコイル側冷却系26に含まれる冷却管の圧力損失が小さくなるように、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、各マニホールドの分岐数をそれぞれ決めるようにしてもよい。これにより、メインコイル側冷却系26に流れる冷却水の流量をシールドコイル側冷却系27と比べて大きくすることができる。メインコイル21は、シールドコイル22と比べて発熱が大きいので、メインコイル側冷却系26に流れる冷却水の流量を大きくすることによって、傾斜磁場コイル20をより均等に冷却することができる。また、限られた流量で効率よく傾斜磁場コイル20を冷却することができる。
【0061】
また、上記実施例では、第1冷却管および第2冷却管をそれぞれ2本ずつ用いた場合について説明したが、各冷却管の本数はこれに限られない。図11は、第1冷却管および第2冷却管をそれぞれ3本ずつ用いた場合の実施例を示す図である。同図は、メインコイル側冷却系26における第1冷却管26aおよび第2冷却管26bの配置を示している。
【0062】
図11に示すように、第1冷却管26aおよび第2冷却管26bをそれぞれ3本ずつ用いる場合、入口側マニホールド28aは、冷却水を3つに分岐して、各第1冷却管26aにそれぞれ流入させる。また、出口側マニホールド29aは、各第2冷却管26aから流出した冷却水を合流させて冷却装置90へ送る。また、入口側マニホールド28bは、冷却水を3つに分岐して、各第2冷却管26bにそれぞれ流入させる。また、出口側マニホールド29bは、各第2冷却管26bから流出した冷却水を合流させて冷却装置90へ送る。
【0063】
このように、冷却水の分岐数を増やすことによって、個々の冷却管の長さが短くてすむようになるので、各冷却管の圧力損失が抑えられる。その結果、冷却水の流量を増やすことが可能になるので、より効率よく傾斜磁場コイル20を冷却することができる。
【0064】
また、上記実施例では、傾斜磁場コイル20において冷却管が螺旋状に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、冷却管が傾斜磁場コイル20の長手方向に沿って並列に配置されているような場合でも同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
10 静磁場磁石
11 真空容器
12 超伝導コイル
20 傾斜磁場コイル
21 メインコイル
22 シールドコイル
23 シムトレイ挿入ガイド
24 シムトレイ
25 鉄シム
26 メインコイル側冷却系
26a,26b 冷却管
27 シールドコイル側冷却系
28a,28b 入口側マニホールド
29a,29b 出口側マニホールド
30 RFコイル
40 天板
50 傾斜磁場電源
60 送信部
65 受信部
70 シーケンス制御装置
80 計算機システム
90 冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場内に置かれた被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイルと、
前記傾斜磁場コイルに設けられ、所定の方向に冷媒を循環させる第1の冷却管と、
前記第1の冷却管と並列になるように前記傾斜磁場コイルに設けられ、前記第1の冷却管が冷媒を循環させる方向と反対の方向に冷媒を循環させる第2の冷却管と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記傾斜磁場コイルは、所定の磁場を発生させるコイルと、前記静磁場の均一度を調整する鉄シムとを有しており、
前記第1の冷却管および前記第2の冷却管は、それぞれ前記コイルと前記鉄シムとの間に配置されている、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第1の冷却管および前記第2の冷却管は、それぞれ複数設けられており、
第1の冷却管と第2の冷却管とが交互に配置されている、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1の冷却管および前記第2の冷却管は、それぞれ複数設けられており、
第1の冷却管と第2の冷却管とが交互に配置されている、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1の冷却管および前記第2の冷却管は、それぞれ複数設けられており、
複数の第1の冷却管を並べた組と、複数の第2の冷却管を並べた組とが交互に配置されている、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第1の冷却管および前記第2の冷却管は、それぞれ複数設けられており、
複数の第1の冷却管を並べた組と、複数の第2の冷却管を並べた組とが交互に配置されている、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
冷媒を所定の分岐数に分岐して複数の第1の冷却管に流入させる第1の冷媒分岐管と、
冷媒を所定の分岐数に分岐して複数の第2の冷却管に流入させる第2の冷媒分岐管とを備え、
前記第1の冷却管および前記第2の冷却管の圧力損失がそれぞれ同じになるように、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、各冷媒分岐管の分岐数がそれぞれ決められている、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
冷媒を所定の分岐数に分岐して複数の第1の冷却管に流入させる第1の冷媒分岐管と、
冷媒を所定の分岐数に分岐して複数の第2の冷却管に流入させる第2の冷媒分岐管とを備え、
前記第1の冷却管および前記第2の冷却管の圧力損失がそれぞれ同じになるように、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、各冷媒分岐管の分岐数がそれぞれ決められている、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記傾斜磁場コイルは、メインコイルおよびシールドコイルを有しており、
前記メインコイルに沿って並列に配置された前記第1の冷却管および前記第2の冷却管を含んだメインコイル側冷却系と、
前記シールドコイルに沿って並列に配置された前記第1の冷却管および前記第2の冷却管を含んだシールドコイル側冷却系とを備え、
前記シールドコイル側冷却系に含まれる冷却管と比べて前記メインコイル側冷却系に含まれる冷却管の圧力損失が小さくなるように、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、各冷媒分岐管の分岐数がそれぞれ決められている、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記傾斜磁場コイルは、メインコイルおよびシールドコイルを有しており、
前記メインコイルに沿って並列に配置された前記第1の冷却管および前記第2の冷却管を含んだメインコイル側冷却系と、
前記シールドコイルに沿って並列に配置された前記第1の冷却管および前記第2の冷却管を含んだシールドコイル側冷却系とを備え、
前記シールドコイル側冷却系に含まれる冷却管と比べて前記メインコイル側冷却系に含まれる冷却管の圧力損失が小さくなるように、各冷却管の管径、各冷却管の長さ、各冷媒分岐管の分岐数がそれぞれ決められている、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記第1の冷媒分岐管および前記第2の冷媒分岐管は、それぞれ前記傾斜磁場コイルの内部に設けられている、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記第1の冷媒分岐管および前記第2の冷媒分岐管は、それぞれ前記傾斜磁場コイルの内部に設けられている、
請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
冷媒を供給する冷却装置と、
前記冷却装置から供給される冷媒の流路を第1の流路と第2の流路とに分岐し、前記第1の流路を流れる冷媒を前記傾斜磁場コイルの一方の側端から前記第1の冷却管に供給し、前記第2の流路を流れる冷媒を前記傾斜磁場コイルの他方の側端から前記第2の冷却管に供給する冷媒供給管とを備える、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
冷媒を供給する冷却装置と、
前記冷却装置から供給される冷媒の流路を第1の流路と第2の流路とに分岐し、前記第1の流路を流れる冷媒を前記傾斜磁場コイルの一方の側端から前記第1の冷却管に供給し、前記第2の流路を流れる冷媒を前記傾斜磁場コイルの他方の側端から前記第2の冷却管に供給する冷媒供給管とを備える、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
冷媒を供給する冷却装置と、
前記冷却装置から供給される冷媒の流路を第1の流路と第2の流路とに分岐し、前記第1の流路を流れる冷媒を前記傾斜磁場コイルの一方の側端から前記第1の冷却管に供給し、前記第2の流路を流れる冷媒を前記傾斜磁場コイルの他方の側端から前記第2の冷却管に供給する冷媒供給管とを備える、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
冷媒を供給する冷却装置と、
前記冷却装置から供給される冷媒の流路を第1の流路と第2の流路とに分岐し、前記第1の流路を流れる冷媒を前記傾斜磁場コイルの一方の側端から前記第1の冷却管に供給し、前記第2の流路を流れる冷媒を前記傾斜磁場コイルの他方の側端から前記第2の冷却管に供給する冷媒供給管とを備える、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
前記傾斜磁場コイルの一方の側端から前記第1の冷却管に冷媒を供給する第1の冷却装置と、
前記傾斜磁場コイルの他方の側端から前記第2の冷却管に冷媒を供給する第2の冷却装置とを備える、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
前記傾斜磁場コイルの一方の側端から前記第1の冷却管に冷媒を供給する第1の冷却装置と、
前記傾斜磁場コイルの他方の側端から前記第2の冷却管に冷媒を供給する第2の冷却装置とを備える、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
前記傾斜磁場コイルの一方の側端から前記第1の冷却管に冷媒を供給する第1の冷却装置と、
前記傾斜磁場コイルの他方の側端から前記第2の冷却管に冷媒を供給する第2の冷却装置とを備える、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項20】
前記傾斜磁場コイルの一方の側端から前記第1の冷却管に冷媒を供給する第1の冷却装置と、
前記傾斜磁場コイルの他方の側端から前記第2の冷却管に冷媒を供給する第2の冷却装置とを備える、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−5238(P2011−5238A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94217(P2010−94217)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】