説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】スライス位置を補正することができる磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】1D投影データDCrlに基づいて、RL方向に関して肝臓を横切る位置Lを検出し、2D投影画像データIcoの中から、位置Liのデータを特定することにより、位置LiにおけるAP方向の積分値を表すプロファイルPRを得る。また、データ収集シーケンスASを実行し、位置LiにおけるAP方向の投影データを表すプロファイルPRを得る。そして、プロファイルPRと、プロファイルPRとに基づいて、スライス位置SP〜SPを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の所定の部位を撮影する磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の体動により変位する部位(肝臓など)の体動アーチファクトを低減する方法として、被検体に息止めをしてもらい、被検体が息止めをしている間に撮影を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-302214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、肝臓を撮影する方法の場合、一般的には、被検体に息止めをしてもらい、スカウト画像を収集するためのスカウトスキャンが実行される。オペレータは、スカウトスキャンにより得られたスカウト画像を参考にして、スライス位置を設定する。その後、被検体に再度息止めをしてもらい本スキャンを実行する。本スキャンでは、オペレータが設定したスライス位置に従ってデータが収集される。しかし、肝臓は被検体の呼吸により変位するので、本スキャンのときの肝臓の位置が、スカウトスキャンのときの肝臓の位置からずれてしまうという問題がある。
したがって、このような肝臓の位置ずれが生じても、設定したスライス位置を補正できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、被検体の所定の部位を撮影する磁気共鳴イメージング装置であって、
スカウトスキャンにより収集された前記所定の部位のスカウト画像データに基づいて、前記所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定手段と、
前記スカウト画像データに基づいて、前記所定の部位を横切る位置を検出し、検出された位置における第1のプロファイルを作成する第1のプロファイル作成手段と、
前記検出された位置を含む領域のデータを収集するためのデータ収集シーケンスを実行するデータ収集手段と、
前記データ収集手段により得られたデータに基づいて、前記検出された位置における第2のプロファイルを作成する第2のプロファイル作成手段と、
前記第1のプロファイルと、前記第2のプロファイルとに基づいて、前記スライス位置を補正するスライス位置補正手段と、
を有し、
前記スライス位置補正手段により補正された後のスライス位置に従って、前記所定の部位の画像データを収集するためのイメージングスキャンを実行する、磁気共鳴イメージング装置である。
【発明の効果】
【0006】
所定の部位の位置がずれたときにスライス位置を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
【図2】第1のプロファイル作成手段91のブロック図である。
【図3】被検体12を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
【図4】MRI装置100の処理フローを示す図である。
【図5】3Dスカウト画像データBSを概略的に示す図である。
【図6】肝臓12aのスライス位置を位置決めするときの説明図である。
【図7】2D投影画像データIcoを示す一例である。
【図8】作成された一次元の投影データの一例を示す図である。
【図9】RL方向に関して肝臓12aを横切る位置を示す図である。
【図10】特定された位置Lにおけるデータを示す図である。
【図11】ステップST8の息止めの指示RIにより被検体12が息止めをしたときの肝臓の位置を概略的に示す図である。
【図12】データ収集シーケンスACの説明図である。
【図13】第2のプロファイル作成手段92により作成されるプロファイルPRを概略的に示す図である。
【図14】肝臓12aの位置ずれ量ΔSを算出するときの説明図である。
【図15】ステップST3で入力されたスライス位置SP〜SPと、スライス位置SP〜SPを位置ずれ量ΔSだけ変位させた後のスライス位置SP′〜SP′との違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施するための形態について説明するが、発明を実施するための形態は、以下の形態に限定されることはない。
【0009】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図、図2は、第1のプロファイル作成手段91のブロック図である。
【0010】
磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))装置100は、磁場発生装置2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0011】
磁場発生装置2は、被検体12が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0012】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、テーブル3からボア21に移動できるように構成されている。クレードル31によって、被検体12はボア21に搬送される。
【0013】
受信コイル4は、被検体12の腹部から胸部に渡って取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0014】
MRI装置1は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0015】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、後述するスカウトスキャンおよび本スキャン(図3参照)を実行するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0016】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0017】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0018】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号に所定の信号処理を施し、中央処理装置9に出力する。
【0019】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、スライス位置設定手段90、第1のプロファイル作成手段91、第2のプロファイル作成手段92、スライス位置補正手段93などを有している。
【0020】
スライス位置設定手段90は、3Dスカウト画像データBS(図5参照)と、操作部10から入力された情報とに基づいて、肝臓のスライス位置SP〜SP(図6参照)を設定する。
【0021】
第1のプロファイル作成手段91は、3Dスカウト画像データBS(図5参照)に基づいて肝臓を横切る位置を検出し、検出された位置における第1のプロファイルPR(図10参照)を作成する。第1のプロファイル作成手段91は、図2に示すように、二次元投影手段911、一次元投影手段912、検出手段913、およびデータ特定手段914を有している。
【0022】
二次元投影手段911は、3Dスカウト画像データBS(図5参照)を投影し、二次元の投影画像データを作成する。
一次元投影手段912は、2D投影画像データIco(図7参照)を投影し、一次元の投影データを作成する。
検出手段913は、1D投影データDCrl(図9参照)に基づいて、RL方向に関して肝臓を横切る位置L(図9参照)を検出する。
データ特定手段914は、2D投影画像データIcoの中から、検出手段913により検出された位置Lのデータを特定する。
【0023】
第2のプロファイル作成手段92は、検出手段913により検出された位置Lにおける第2のプロファイルPR(図13参照)を作成する。
【0024】
スライス位置補正手段93は、第1のプロファイルPRと、第2のプロファイルPRとに基づいて、スライス位置を補正する。
【0025】
中央処理装置9は、スライス位置設定手段90、第1のプロファイル作成手段91、第2のプロファイル作成手段92、スライス位置補正手段93の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0026】
操作部10は、オペレータ13により操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。例えば、操作部10は、オペレータ13により操作され、所定の部位(例えば、肝臓)のスライス位置を設定するための情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
【0027】
尚、磁場発生装置2と、受信コイル4と、シーケンサ5と、送信器6と、勾配磁場電源7と、受信器8とを合わせたものが、課題を解決するための手段に記載されたデータ収集手段に相当する。
【0028】
磁気共鳴イメージング装置100は、上記のように構成されている。
次に、被検体12を撮影するときに実行されるスキャンについて説明する。
【0029】
図3は、被検体12を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
本形態では、スカウトスキャンSCおよび本スキャンMCおよびMCが実行される。
【0030】
スカウトスキャンSCは、被検体12の撮像部位(例えば、肝臓)からスカウト画像データを得るためのスキャンである。スカウト画像データは、オペレータ13が撮像部位のスライス位置を位置決めするときに使用されるデータである。本形態では、スカウトスキャンSCは、3D(Dimension)イメージングのためのパルスシーケンスを用いて被検体をスキャンする3Dスキャンである。尚、スカウトスキャンSCは、被検体12に息止めの指示RIが与えられた後に実行される。スカウトスキャンSCが終了した後、被検体12に、息止め解除の指示RRが与えられる。スカウトスキャンSCの後、本スキャンMCおよびMCが実行される。
【0031】
本スキャンMCでは、撮影部位のk空間の低周波領域のデータを収集するためのイメージングISが実行される。また、本スキャンMCでは、イメージングスキャンISの前に、データ収集シーケンスACが実行される。データ収集シーケンスACについては、後述する。尚、本スキャンMCは、被検体12に息止めの指示RIが与えられた後に実行される。本スキャンMCが終了した後、被検体12に、息止め解除の指示RRが与えられる。本スキャンMCの後、本スキャンMCが実行される。
【0032】
本スキャンMCでは、撮影部位のk空間の高周波領域のデータを収集するためのイメージングISが実行される。また、本スキャンMCでは、イメージングスキャンISの前に、データ収集シーケンスACが実行される。データ収集シーケンスACについては、後述する。尚、本スキャンMCは、被検体12に息止めの指示RIが与えられた後に実行される。本スキャンMCが終了した後、被検体12に、息止め解除の指示RRが与えられる。
【0033】
上記のようにして、被検体12の撮影が行われる。
次に、MRI装置100の処理フローについて説明する。
【0034】
図4は、MRI装置100の処理フローを示す図である。
尚、以下では、肝臓を撮影するときの処理フローについて説明するが、本発明は、肝臓以外の別の部位を撮影する場合にも適用できる。
【0035】
ステップST1では、被検体12に息止めの指示RIが与えられる(図3参照)。被検体12は、息止めの指示RIに従って、息止めをする。被検体12に息止めの指示RIが与えられた後、ステップST2に進む。
【0036】
ステップST2では、スカウトスキャンSC(図3参照)が実行される。スカウトスキャンSCが終了したら、被検体12に対して、息止め解除の指示RRが与えられる(図3参照)。これによって、被検体12は呼吸を再開することができる。本形態では、スカウトスキャンSCは3Dスキャンであるので、スカウトスキャンSCを実行することにより、肝臓を含む撮影部位から、3Dのスカウト画像データ(以下、「3Dスカウト画像データ」と呼ぶ。)を収集することができる(図5参照)。
【0037】
図5は、3Dスカウト画像データBSを概略的に示す図である。
3Dスカウト画像データBSには、肝臓12aのデータが含まれている。尚、図5に示す記号R−L、S−I、およびA−Pは、それぞれ、RL方向(左右方向)、SI方向(頭尾方向)、およびAP方向(前後方向)を表している。
【0038】
3Dスカウト画像データBSを作成した後、ステップST3の処理と、ステップST4〜ST7の処理が実行される。ここでは、先ず、ステップST3の処理について説明し、その後に、ステップST4〜ST7の処理について説明する。
【0039】
(1)ステップST3について
ステップST3では、オペレータ13は、3Dスカウト画像データBSのアキシャル断面、サジタル断面、およびコロナル断面の画像を参考にして、肝臓12aのスライス位置を位置決めする(図6参照)。
【0040】
図6は、肝臓12aのスライス位置を位置決めするときの説明図である。
肝臓12aのスライス位置を位置決めする場合、表示部11には、3Dスカウト画像データBSのアキシャル断面、サジタル断面、およびコロナル断面の画像が表示される。尚、図6では、説明の便宜上、コロナル断面の画像(以下、「コロナル画像」と呼ぶ)COのみが示されており、アキシャル断面の画像、およびサジタル断面の画像は、図示省略されている。オペレータ13は、操作部10を操作し、肝臓12aのスライス位置SP〜SPを設定するための情報を入力する。スライス位置設定手段90(図1参照)は、3Dスカウト画像データBSと、操作部10から入力された情報とに基づいて、肝臓12aのスライス位置SP〜SPを設定する。
【0041】
(2)ステップST4〜ステップST7について
ステップST4では、二次元投影手段911(図2参照)が、3Dスカウト画像データBS(図5参照)を投影し、2次元の投影画像データ(以下、「2D投影画像データ」と呼ぶ)を作成する(図7参照)。
【0042】
図7は、2D投影画像データIcoを示す一例である。
本形態では、2D投影画像データIcoは、3Dスカウト画像データBSのAP方向の積分値を投影することにより得られる2D投影画像データである。2D投影画像データIcoを作成した後、ステップST5に進む。
【0043】
ステップST5では、一次元投影手段912(図2参照)が、2D投影画像データIcoを投影し、一次元の投影データを作成する(図8参照)。
【0044】
図8は、作成された一次元の投影データの一例を示す図である。
本形態では、一次元の投影データ(以下、「1D投影データ」と呼ぶ)DCrlは、2D投影画像データIcoのSI方向の積分値を投影することにより得られる投影データである。
1D投影データDCrlを作成した後、ステップST6に進む。
ステップST6では、検出手段913(図2参照)が、1D投影データDCrlに基づいて、RL方向に関して肝臓を横切る位置を検出する(図9参照)。
【0045】
図9は、RL方向に関して肝臓12aを横切る位置を示す図である。
肝臓12aの信号強度は比較的大きいので、1D投影データDCrlの中から値が最大となるピークPを検出することにより、RL方向に関して肝臓12aを横切る位置Lを検出することができる。RL方向に関して肝臓12aを横切る位置Lを検出した後、ステップST7に進む。
【0046】
ステップST7では、データ特定手段914(図2参照)が、2D投影画像データIcoの中から、位置Lにおけるデータを特定する(図10参照)。
【0047】
図10は、特定された位置Lにおけるデータを概略的に示す図である。
2D投影画像データIcoは、3Dスカウト画像データBS(図7参照)のAP方向の積分値を投影することにより得られたデータである。したがって、2D投影画像データIcoの位置Lにおけるデータを特定することによって、位置LにおけるAP方向の積分値を表すプロファイルPRを得ることができる。肝臓12aの領域では、プロファイルPRの値は大きくなるが、肺の領域では、プロファイルPRの値が小さくなる。したがって、プロファイルPRの値が急激に変化する位置UPが、肝臓12aの上端の位置に対応する。
上記のようにして、ステップST3〜ST7が終了した後、ステップST8に進む。
【0048】
ステップST8では、被検体12に息止めの指示RIが与えられる(図3参照)。被検体12は、息止めの指示RIに従って、再び息止めをする。
【0049】
図11は、ステップST8の息止めの指示RIにより被検体12が息止めをしたときの肝臓の位置を概略的に示す図である。図11では、ステップST8の息止めの指示RIにより被検体12が息止めをしたときの肝臓12aが実線で示されており、ステップST1の息止めの指示RIにより被検体12が息止めをしたときの肝臓12aが破線で示されている。また、ステップST3において入力されたスライス位置SP〜SPも破線で示されている。
【0050】
図11に示すように、ステップST8の息止めの指示RIにより被検体12が息止めをしたときの肝臓12aの位置(実線)は、ステップST1の息止めの指示RIにより被検体12が息止めをしたときの肝臓12aの位置(破線)に対して、ΔSだけずれている。したがって、肝臓12a(実線)に対するスライス位置SP〜SPは、肝臓12a(破線)に対するスライス位置SP〜SPと比較すると、ΔSだけずれている。そこで、本スキャンMCのイメージングスキャンISを実行する前に、スライス位置SP〜SPのずれ量ΔSを補正する。以下に、スライス位置SP〜SPのずれ量ΔSを補正する手順について説明する。
【0051】
ステップST9では、本スキャンMCのデータ収集シーケンスACが実行される。
図12は、データ収集シーケンスACの説明図である。
図12(a)は、データ収集シーケンスACの一例を示す図、図12(b)は、データ収集シーケンスACの励起面を示す図である。
【0052】
データ収集シーケンスACは、RFパルスおよびRL方向の勾配磁場Grlによって、RL方向の位置Lを含むサジタル面の領域SAを励起した後、位相エンコードのための勾配磁場は印加せずに、SI方向に周波数エンコードのための勾配磁場Gsiを印加する。データ収集シーケンスACを実行することによって、サジタル面の領域SAのデータを収集することができる。データ収集シーケンスACを実行した後、ステップST10に進む。
【0053】
ステップST10では、第2のプロファイル作成手段92(図1参照)が、データ収集シーケンスACによりサジタル面の領域SAから収集されたデータに基づいて、プロファイルを作成する(図13参照)。
【0054】
図13は、第2のプロファイル作成手段92により作成されるプロファイルPRを概略的に示す図である。
【0055】
データ収集シーケンスAC(図12参照)を実行する場合、AP方向に勾配磁場は印加されない。したがって、データ収集シーケンスACを実行することによって、位置LにおけるAP方向の投影データを表すプロファイルPRを得ることができる。肝臓12aの領域では、プロファイルPRの値は大きくなるが、肺の領域では、プロファイルPRの値が小さくなる。したがって、プロファイルPRの値が急激に変化する位置UPが、肝臓12aの上端の位置に対応する。プロファイルPRを作成した後、ステップST11に進む。
【0056】
ステップST11では、スライス位置補正手段93(図1参照)が、ステップST7において得られたプロファイルPRと、ステップST10において得られたプロファイルPRとに基づいて、ステップST3で入力されたスライス位置SP〜SPを補正する。ステップST11は、ステップST111およびST112を有している。以下に、ステップST111およびST112について、順に説明する。
【0057】
ステップST111では、スライス位置補正手段93は、ステップST8の息止めをしたときの肝臓12aと、ステップST1の息止めをしたときの肝臓12aとの位置ずれ量ΔSを算出する(図14参照)。
【0058】
図14は、肝臓12aの位置ずれ量ΔSを算出するときの説明図である。
スライス位置補正手段93は、先ず、プロファイルPRを用いて、ステップST1の息止めをしたときの肝臓12a(破線で示されている)の上端の位置UPを検出する。肝臓12aの領域では、プロファイルPRの値は大きくなるが、肺の領域では、プロファイルPRの値が小さくなる。したがって、プロファイルPRの値が急激に変化する位置UPを検出することによって、ステップST1の息止めをしたときの肝臓12aの上端の位置を検出することができる。プロファイルPRの値が急激に変化する位置UPを検出する方法としては、例えば、プロファイルPRを微分し、微分値が最大になるときの位置を、プロファイルPRの値が急激に変化する位置UPとして検出する方法がある。
【0059】
次に、スライス位置補正手段93は、プロファイルPRを用いて、ステップST8の息止めをしたときの肝臓12a(実線で示されている)の上端の位置UPを検出する。プロファイルPRについても、値が急激に変化する位置UPを検出することによって、ステップST8の息止めをしたときの肝臓12aの上端の位置を検出することができる。肝臓12aの上端の位置UPおよびUPを検出した後、スライス位置補正手段93は、位置UPとUPとの差ΔSを算出する。差ΔSを算出することによって、肝臓の位置ずれ量ΔSを算出することができる。位置ずれ量ΔSを算出した後、ステップST112に進む。
【0060】
ステップST112では、スライス位置補正手段93が、ステップST3で入力されたスライス位置SP〜SP(図6参照)を、ステップST111で算出した位置ずれ量ΔSだけ変位させる(図15参照)。
【0061】
図15は、ステップST3で入力されたスライス位置SP〜SP(図6参照)と、スライス位置SP〜SPを位置ずれ量ΔSだけ変位させた後のスライス位置SP′〜SP′との違いを示す図である。
【0062】
図15では、ステップST3で入力されたスライス位置SP〜SPが破線で示されており、ΔSだけ変位させた後のスライス位置SP′〜SP′が実線で示されている。
【0063】
図15に示すように、ステップST3で入力されたスライス位置SP〜SPを、位置ずれ量ΔSだけ変位させることにより、肝臓の位置ずれ量に合わせてスライス位置をSP′〜SP′に補正することができる。スライス位置を補正した後、ステップST12に進む。
【0064】
ステップST12では、ステップST11の補正により得られたスライス位置SP′〜SP′に従って、本スキャンMCのイメージングスキャンISが実行される。イメージングスキャンISを実行することによって、k空間の低周波成分のデータが収集される。イメージングスキャンISを実行した後、被検体12に対して、息止め解除の指示RRが与えられる(図3参照)。これによって、被検体12は呼吸を再開することができる。イメージングスキャンISが終了した後、ステップST13に進む。
【0065】
ステップST13〜ST17における動作は、ステップST8〜ST12と同様であるので詳しい説明は省略する。尚、ステップST17では、k空間の高周波成分のデータが収集される。したがって、ステップST12およびST17を実行することによって、k空間の全領域のデータを収集することができる。このようにして、フローが終了する。
【0066】
本形態では、プロファイルPRおよびPRに基づいて、スカウトスキャンSCのときの肝臓12aと、本スキャンのときの肝臓12aとの位置ずれ量ΔSを算出し、スライス位置SP〜SPをΔSだけ補正している。したがって、本スキャンのときの肝臓12aの位置が、スカウトスキャンSCのときの肝臓12aの位置からずれていても、スライス位置を補正することができる。
【0067】
本形態では、スカウトスキャンSCは3Dスキャンである。しかし、3Dスキャンの代わりに、2Dのマルチスライススキャンを実行してスカウト画像データを作成してもよい。
【0068】
本形態では、データ収集シーケンスACは、サジタル面の領域SAからデータを収集している。しかし、位置LにおけるプロファイルPRを得ることができるのであれば、サジタル面の領域SAとは別の領域からデータを収集してもよい。
【0069】
本形態では、3Dスカウト画像データBSのAP方向の積分値を投影することにより、2D投影画像データIcoを得ている。しかし、AP方向の積分値の代わりに、AP方向の最大値、平均値、又は最小値など、積分値以外の値を投影して2D投影画像データIcoを作成してもよい。また、AP方向とは別の方向の積分値(最大値、平均値、又は最小値)を投影することによって、2D投影画像データIcoを作成してもよい。
【0070】
本形態では、2D投影画像データIcoのSI方向の積分値を投影することにより、1D投影データDCrlを得ている。しかし、SI方向の積分値の代わりに、SI方向の最大値、平均値、又は最小値など、積分値以外の値を投影して1D投影データDCrlを作成してもよい。また、SI方向とは別の方向の積分値(最大値、平均値、又は最小値)を投影することによって、1D投影データDCrlを作成してもよい。
【0071】
本形態では、スカウトスキャンSCの後、本スキャンは2回実行されている。しかし、本スキャンは、1回のみ実行してもよいし、3回以上実行してもよい。
【0072】
本形態では、ステップST3において、オペレータ13が、操作部10を操作して、スライス位置SP〜SPを設定するための情報を入力している。しかし、スライス位置設定手段90が、3Dスカウト画像データBSに基づいて、肝臓12aのスライス位置を自動的に設定してもよい。
【0073】
本形態では、被検体12の撮影部位が呼吸により動いた場合にスライス位置を補正する例について説明されている。しかし、本発明を用いることにより、心臓の拍動など、呼吸以外の原因で撮影部位が動いてしまう場合や、被検体自身の動き(被検体が上半身を動かしてしまう動作など)により撮影部位が動いた場合にも、スライス位置を補正することができる。
【符号の説明】
【0074】
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
13 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
90 スライス位置設定手段
91 第1のプロファイル作成手段
92 第2のプロファイル作成手段
93 スライス位置補正手段
911 二次元投影手段
912 一次元投影手段
913 検出手段
914 データ特定手段
100 MRI装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定の部位を撮影する磁気共鳴イメージング装置であって、
スカウトスキャンにより収集された前記所定の部位のスカウト画像データに基づいて、前記所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定手段と、
前記スカウト画像データに基づいて、前記所定の部位を横切る位置を検出し、検出された位置における第1のプロファイルを作成する第1のプロファイル作成手段と、
前記検出された位置を含む領域のデータを収集するためのデータ収集シーケンスを実行するデータ収集手段と、
前記データ収集手段により得られたデータに基づいて、前記検出された位置における第2のプロファイルを作成する第2のプロファイル作成手段と、
前記第1のプロファイルと、前記第2のプロファイルとに基づいて、前記スライス位置を補正するスライス位置補正手段と、
を有し、
前記スライス位置補正手段により補正された後のスライス位置に従って、前記所定の部位の画像データを収集するためのイメージングスキャンを実行する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1のプロファイル作成手段は、
前記スカウト画像データを投影し、2D投影画像データを作成する二次元投影手段と、
前記2D投影画像データを投影し、1D投影データを作成する一次元投影手段と、
前記1D投影データに基づいて、前記所定の部位を横切る位置を検出する検出手段と、
前記2D投影画像データの中から、前記検出手段により検出された位置のデータを特定するデータ特定手段と、
を有する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記2D投影画像データは、前記スカウト画像データのAP方向の積分値を投影することにより得られる、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記1D投影データは、前記2D投影画像データのSI方向の積分値を投影することにより得られる、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記データ収集シーケンスは、
SI方向には周波数エンコードのための勾配磁場を印加し、AP方向には勾配磁場を印加しない、請求項3又は4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記スライス位置補正手段は、
前記第1のプロファイルと、前記第2のプロファイルとに基づいて、前記所定の部位の位置ずれ量を算出し、前記位置ずれ量に基づいて、前記スライス位置を補正する、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記スカウトスキャン、前記データ収集シーケンス、および前記イメージングスキャンは、被検体が息止めした状態で実行される、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記所定の部位のスライス位置を設定するための情報を入力する操作部を有する、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記所定の部位は、肝臓である、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−70982(P2012−70982A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218824(P2010−218824)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】