説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】オペレータが水励起や脂肪抑制等の所望の目的を有する単一または複数のプレパルスの印加を伴う撮影条件を容易に設定することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、被検体からの磁気共鳴信号の周波数スペクトルを取得する周波数スペクトル取得手段と、プレパルスの印加を伴う撮影条件を入力するための入力部並びに前記周波数スペクトルとともに所望の物質からの信号の中心周波数を示す情報および前記プレパルスの帯域を表示する表示部を備える撮影条件設定手段と、前記撮影条件に従ってイメージングし、収集したデータに基づいて画像を生成する画像収集手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置に係り、特に、複数のプレパルスの印加を伴う撮影条件をオペレータが容易に設定することが可能な磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するNMR信号から画像を再構成する撮像法である。すなわち、被検体の撮像領域に含まれるスピンに関するエコー信号が収集され、収集されたエコー信号に基づいてMRI画像が生成される。
【0003】
通常のMRI撮像では、NMR信号の収集用の励起パルスの印加に先立って複数のプレパルスが印加される。プレパルスの種類としては、SORS (slice-selective off-resonance sinc pulse)、Presat (presaturation)パルス、t-SLIP (time-Spatial Labeling Inversion Pulse)、MTC (magnetization transfer contrast)等のパルスが挙げられる。例えばt-SLIP法では、インバージョンパルスによって撮像領域のスピンが反転させらせた後、スライス選択励起傾斜磁場パルスとともにタグ付けインバージョンパルスが印加される。これにより、領域選択されたタグ領域のスピンが反転してタグ付けされる(例えば特許文献1参照)。また、Presatパルスは、フローアーティファクト、静脈信号或いは動きや振動の影響を抑制するために印加されるパルスであり、複数回に亘って印加される場合もある。
【0004】
従ってオペレータは、撮像条件を設定する際に、撮像の断面に加え、印加すべきプレパルスの種類や順序を設定する必要がある。
【0005】
図1は、従来のプレパルスの設定画面の一例を示す図である。
【0006】
プレパルスによって励起される断面は、撮像断面とは別に設定される場合があるため、図1に示すように、プレパルスごとに断面が設定される。すなわち、モニタ1には、励起断面を設定するためのLOCATOR IMAGE2が表示される。そして、撮像断面として励起されるスライスS02が設定される。また、撮像断面に流入する血流にタグ付けを行うためのプレパルスであるASL (Arterial spin labeling) PULSEによって励起させるスライスS01が設定される。加えて、2つの信号抑制用のプレパルス(SATBAND PULSE 1、SATBAND PULSE 2)によって励起させるスライスS03, S04が設定される。
また、プレパルスとして水選択励起パルスや脂肪抑制パルスを印加する場合には、プレパルスの中心周波数が血液等の水領域からの信号(水信号)や脂肪領域からの信号(脂肪信号)の共鳴周波数に合わせられることによって、水励起や脂肪抑制が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−252263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のプレパルスの設定画面では、図1に示すように各プレパルスによって励起されるスライスが単なるボックスとして表示されるのみである。このため、オペレータにとって、プレパルスとスライスとの関連付けを把握するのが困難となる恐れがある。すなわち、各プレパルスがどのスライス位置にどのような順序で印加されるのかをオペレータが容易に把握することが困難である。特に、Presatパルスとt-SLIPとが印加される場合や、複数のPresatパルスが印加される場合には、時系列な情報が理解し難い状況となっている。
【0009】
さらに、プレパルスとして水選択励起パルスや脂肪抑制パルスを印加する場合には、プレパルスの中心周波数を水信号や脂肪信号の共鳴周波数に合わせる必要がある。しかしながら、被検体内における部位や撮像対象の形状によっては、水信号や脂肪信号の周波数スペクトル上におけるピークが広がり、オペレータによる水選択励起パルスや脂肪抑制パルスの中心周波数の設定が困難になるという問題がある。
【0010】
このため、オペレータが水励起や脂肪抑制等の様々な目的を有する単一または複数のプレパルスを容易に設定できるように操作性を向上させたインターフェースの構築が望まれる。
【0011】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、オペレータが水励起や脂肪抑制等の所望の目的を有する単一または複数のプレパルスの印加を伴う撮影条件を容易に設定することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、上述の目的を達成するために、被検体からの磁気共鳴信号の周波数スペクトルを取得する周波数スペクトル取得手段と、プレパルスの印加を伴う撮影条件を入力するための入力部並びに前記周波数スペクトルとともに所望の物質からの信号の中心周波数を示す情報および前記プレパルスの帯域を表示する表示部を備える撮影条件設定手段と、前記撮影条件に従ってイメージングし、収集したデータに基づいて画像を生成する画像収集手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置においては、オペレータが水励起や脂肪抑制等の所望の目的を有する単一または複数のプレパルスの印加を伴う撮影条件を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のプレパルスの設定画面の一例を示す図。
【図2】本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図。
【図3】図2に示すコンピュータの機能ブロック図。
【図4】図3に示す撮像条件設定部によって表示装置に表示されるプレパルスの設定画面の一例を示す図。
【図5】図3に示す撮像条件設定部によって表示装置に表示されるプレパルスの設定画面の別の例を示す図。
【図6】図3に示す撮像条件設定部によってPresatパルスの印加方向および胎児の向きを表示装置に表示させた例を示す図。
【図7】水信号のピークが良好に得られた周波数スペクトルに基づいて水選択励起パルスの中心周波数を調整する場合に表示装置に表示される画面の一例を示す図。
【図8】水信号および脂肪信号の帯域が広がった周波数スペクトルに基づいて水選択励起パルスの中心周波数を調整する場合に表示装置に表示される画面の一例を示す図。
【図9】水信号および脂肪信号の帯域が広がった周波数スペクトルに基づいて脂肪抑制パルスの中心周波数を調整する場合に表示装置に表示される画面の一例を示す図。
【図10】図9に示す脂肪抑制パルスの中心周波数を脂肪信号の広がりに応じて調整した例を示す図。
【図11】周波数スペクトルの形状に応じて脂肪抑制パルスの帯域幅を参照しつつ脂肪抑制パルスの中心周波数を調整する場合の実際的な設定画面の例を示す図。
【図12】図2に示す磁気共鳴イメージング装置により複数のプレパルスの印加を伴う撮像条件を設定し、設定した撮像条件に従って被検体の画像を収集する際の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
図2は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
【0017】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21と、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23およびRFコイル24とを図示しないガントリに内蔵した構成である。
【0018】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0019】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0020】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0021】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
【0022】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0023】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0024】
RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0025】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。
【0026】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0027】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0028】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、被検体PのECG (electrocardiogram) 信号を取得するECGユニット38が備えられる。ECGユニット38により取得されたECG信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
【0029】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられるとともに磁気共鳴イメージングデータ処理システム43が構成される。ただし、プログラムによらず、特定の回路を設けてコンピュータ32を構成してもよい。
【0030】
図3は、図2に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0031】
コンピュータ32は、プログラムにより撮像条件設定部39、シーケンスコントローラ制御部39、k空間データベース41、画像再構成部42、画像データベース43、画像処理部44として機能する。
【0032】
撮像条件設定部39は、表示装置34に撮影条件の設定画面を表示させ、入力装置33からの情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定する機能と、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ制御部40に与える機能とを有する。
【0033】
特に、撮像条件設定部39には、単一または複数のプレパルスの印加を伴うパルスシーケンスを設定する機能が備えられる。従って、撮像条件設定部39には、撮像断面(スライス)に加え、印加すべきプレパルスの名称(種類)およびプレパルスによる励起断面(スライス)や励起領域を設定する機能が設けられる。このため、撮影条件の設定画面には、プレパルスの印加領域や印加位置の設定の際に参照するためのスカウト像やリファレンス像を表示させることができる。スカウト像には、AXIAL断面像、CORONAL断面像、SAGITTAL断面像等の位置決め画像がある。ただし、スカウト像以外の動態を比較することが可能な画像をプレパルスの印加領域や印加位置の設定のためのリファレンス像として表示させることもできる。例えば、血管像をイメージングする場合には、リファレンス像として非造影血管像を用いることができる。リファレンス用の非造影血管像は、FBI (Fresh Blood Imaging)法、TOF (time of flight)法あるいはスピンラベリングパルスを伴わない3D (three dimensional) 定常自由歳差運動(SSFP: steady state free precession)法により取得することができる。
【0034】
FBI法は、R波等の被検体Pの心時相を表す基準波に同期したトリガ信号から所定時間遅延させて複数心拍毎にエコーデータを繰り返して収集する非造影磁気共鳴血管撮影法(MRA: magnetic resonance angiography)である。FBI法によれば、複数心拍の経過によって血液の横緩和(T2)成分の磁化が回復し、血液のT2磁化成分を強調した水(血液)強調画像を血管画像として得ることができる。さらに、FBI法では所定スライスエンコード量分のエコーデータ(ボリュームデータ)を収集する3次元スキャンが実行される。
【0035】
TOF法は、血液の撮影断面へのinflow効果を利用する血管画像の取得法である。すなわち、TOF法は、サチュレーションパルスの印加後に撮像断面に流入する血液信号を画像化するものである。TOF法では、FE (field echo)系シーケンスを用いてより早いデータ収集タイミングでスキャンが行われ、縦緩和(T1)強調画像が血管画像として取得される。
【0036】
そして、FBI法、TOF法あるいは3D SSFP法により得られた非造影血管像をリファレンス像として、非造影血管像のイメージングのために用いられるt-SLIPパルス等のプレパルスの印加領域を設定することができる。
【0037】
また、撮影条件の設定画面には各プレパルスの条件の設定を容易にするために、設定中または設定されたプレパルスの名称等の属性情報を印加領域とともに表示させることができる。
【0038】
プレパルスの属性情報としては、プレパルスにより励起される断面(スライス)位置情報および断面方向情報の他、プレパルスの名称(種類)、印加目的・効果、印加順序等の情報が挙げられる。プレパルスの名称(種類)、印加目的・効果、印加順序等の属性情報は、励起されるスライス位置を示す枠内または枠近傍に表示させることができる。また、表示されるプレパルスの属性情報と対応するスライス位置を示す枠をプレパルスごとに異なる態様で表示させることができる。例えば、表示されるプレパルスの属性情報と対応するスライス位置を示す枠の色および/または線種をプレパルスごとに識別可能となるように異なる色および/または線種とすることができる。加えて、プレパルスの印加対象となる被検体や被検体内の胎児の向き等の印加対象情報を表示装置34に表示させることもできる。
【0039】
プレパルスの名称(種類)としては、水選択励起パルス等の選択励起パルス、脂肪抑制パルスやシリコーン抑制パルス等の抑制パルス、SORSパルス、t-SLIPパルスやASLパルス等のスピンラベリング(タグ付けまたは標識化ともいう)パルス、MTCパルス、(プレ)サチュレーション(Presat)パルスが挙げられる。水選択励起パルスは、水を選択的に励起するプレパルスであり、脂肪抑制パルスは脂肪を抑制するためのプレパルスである。水選択励起パルスや脂肪抑制パルス等の選択励起パルスや抑制パルスには、共鳴周波数が物質ごとに異なるケミカルシフトを利用するものがある。
【0040】
スピンラベリングパルスは、撮像断面に流入する血液や脳脊髄液(CSF: cerebrospinal fluid)等の動体にタグ付けを行うためのプレパルスである。特に血液のスピンラベリングを行うためのスピンラベリングパルスは、ASLパルスと呼ばれる。また、スピンラベリングパルスの1つとして複数のラベリング用のパルスの印加を伴うt-SLIPパルスがある。
【0041】
t-SLIPパルスは、領域非選択インバージョンパルスと領域選択インバージョンパルスとで構成される。領域非選択インバージョンパルスはON/OFFの切換が可能である。つまり、t-SLIPパルスは、領域選択インバージョンパルスを少なくとも含み、領域選択インバージョンパルスのみで構成される場合や領域選択インバージョンパルスおよび領域非選択インバージョンパルスの双方で構成される場合がある。
【0042】
領域選択インバージョンパルスは、撮影断面と独立に任意に設定することが可能である。この領域選択インバージョンパルスで撮影領域に流入する血液をラベリングすると、反転時間(TI: inversion time)後に血液が到達した部分の信号強度が高くなる。尚、領域非選択インバージョンパルスをOFFにすると、TI後に血液が到達した部分の信号強度が低くなる。このため血液の移動方向や距離を把握することができる。すなわち、TI後に撮影断面に到達した血液のみの信号強度を選択的に強調または抑制することができる。尚、必要に応じてt-SLIPパルスはECG 信号のR波から一定の遅延時間(delay time)経過後に印加され、心電同期下において撮像が行われる。
【0043】
また、Presatパルスは、所望の物質のスピンを飽和させることによって所望の物質からの信号を抑制するためのプレパルスである。Presatパルスは、ディフェージンググラジエント傾斜磁場の印加前に印加される。MTCパルスは、MTC効果を利用して結合水のプロトンの磁化を飽和させ、実質臓器の信号を抑制するプレパルスである。SORSパルスは、スライス選択傾斜磁場とともに印加されるMTCパルスである。
【0044】
Presatパルスの印加目的・効果としては、静脈抑制、フローアーティファクト抑制、腸管の動き抑制、振動抑制等の目的・効果が挙げられる。尚、Presatパルス以外の目的や効果が特定されているようなプレパルスの目的や効果を参照用に表示装置34に表示させてもよい。また、複数のプレパルスが印加される場合、特に複数のPresatパルスが印加される場合には、印加順序を表示させることができる。例えば、Presat 1, Presat 2, Presat 3, …のように印加順序を数字として表現することによって時系列にPresatパルスの属性情報を表示させることができる。
【0045】
実用的な複数のプレパルスの印加例としては、撮像領域を励起するインバージョンパルスを選択的に印加し、インバージョンパルスの直後に撮像領域内の標識化領域に含まれるスピンを反転させる標識化パルスが印加される。さらに、撮像領域内の一部領域に流入する血液のスピンを飽和させるサチュレーションパルスが印加され、標識化パルスの印加から一定時間後にエコー信号が収集される。この場合には、撮像領域、標識化パルスの印加領域およびサチュレーションパルスの印加領域とともに標識化パルスの印加領域の名称、サチュレーションパルスの印加領域の名称、標識化パルスの印加目的、サチュレーションパルスの印加目的、標識化パルスの印加順序およびサチュレーションパルスの印加順序の少なくとも1つを撮影条件の設定画面に表示させることが、撮像条件の設定の支援に繋がる。
【0046】
さらに、撮影条件の設定画面には、各プレパルスの条件の設定を支援にするために、過去にイメージングを行った際に設定されたプレパルスのパラメータを並列表示または重畳表示させることができる。また、過去のプレパルスのパラメータは、撮影条件の設定画面の別の画面に表示させることもできる。すなわち、過去に収集された画像を収集するために用いられたプレパルスを決定するためのパラメータを参照値またはデフォルト値として撮影条件の設定画面に表示されば、ユーザは、過去に用いられたプレパルスのパラメータを参照して容易に設定すべきプレパルスのパラメータを決定することができる。
【0047】
プレパルスのパラメータとしては、プレパルスの属性情報の他、TIやBBTI (black blood TI)等のパラメータが挙げられる。BBTIは、t-SLIPパルスの領域非選択インバージョンパルスとイメージングパルスとの印加間隔である。また、プレパルスがスピンラベリングパルスである場合には、タグ付け位置もパラメータとすることができる。
【0048】
上述したようなプレパルスの属性情報や印加順序の表示機能を備えるために撮像条件設定部39には、プレパルス属性情報表示部39A、プレパルス印加順序決定部39B、リファレンス像表示部39C、プレパルスパラメータ履歴保存部39Dおよび参照パラメータ表示部39Eが設けられる。
【0049】
プレパルス属性情報表示部39Aは、入力装置33からの情報に基づいて設定中または設定されたスライス選択性のあるプレパルスの属性情報を表示装置34に表示させる機能を有する。
【0050】
プレパルス印加順序決定部39Bは、入力装置33からの情報やプレパルスの属性情報に基づいて、設定中または設定されたスライス選択性のあるプレパルスの印加順序を設定する機能を有する。プレパルスの印加順序は、入力装置33から数値として設定することができるが、表示装置34に表示されたプレパルスの属性情報やスライス位置を示す枠をマウス等の入力装置33により選択することによって自動的に印加順序が設定されるようにすることもできる。例えば、複数のプレパルスのうち所望のプレパルスがイメージング用の90度励起パルスの直前に印加されるようにプレパルスの印加順序を決定するもできる。特に、複数のPresatパルスが印加される場合には、データ収集用の90度励起パルスの直前、すなわち最後に印加されるPresatパルスによる信号抑制効果がそれ以前に印加されるPresatパルスによる信号抑制効果よりも大きい。そこで、より良好な信号抑制効果が望まれる印加目的を有するPresatパルスの印加順序を自動的に90度励起パルスの直前に設定する機能をプレパルス印加順序決定部39Bに設けることができる。良好な信号抑制効果が望まれる印加目的の例としては、静脈信号の抑制が挙げられる。
【0051】
リファレンス像表示部39Cは、プレパルスの印加領域や印加位置の設定の際に参照するためのスカウト像やリファレンス像を画像データベース43から取得して表示装置34に表示される撮影条件の設定画面に表示させる機能を有する。
【0052】
プレパルスパラメータ履歴保存部39Dには、過去に撮像された画像を収集するために用いられたプレパルスのパラメータが画像や撮像部位に関連付けられて保存される。
【0053】
参照パラメータ表示部39Eは、設定されるプレパルスと同一または関連するプレパルスを用いて収集された過去の画像に関連付けられたプレパルスのパラメータや、撮像される画像と同一または関連する撮像部位における過去の画像の収集の際に用いられたプレパルスのパラメータをプレパルスパラメータ履歴保存部39Dから取得して表示装置34に表示させる機能を有する。
【0054】
図4は、図3に示す撮像条件設定部39によって表示装置34に表示されるプレパルスの設定画面の一例を示す図である。
【0055】
図4に示すように、表示装置34には、プレパルスおよびその励起位置を設定するためリファレンス像としてLOCATOR IMAGEが表示される。そして、撮像断面として励起されるスライス位置を示す枠が表示される。撮像断面を示す枠内には、IMAGING PLANE AXというスライスの属性情報が表示される。IMAGING PLANE AXという文字および撮像断面を示す枠は、例えばいずれも黄色に着色される。このため、オペレータは、黄色表示された枠が、撮影断面であることを容易に理解することができる。このように、プレパルスの励起断面に限らず撮影断面を識別可能に表示装置34に表示するようにすることもできる。
【0056】
また、赤色の枠が表示され、枠内には、赤色でASL PULSEという文字が表示される。このため、黄色の枠で表示された撮像断面に流入する血流にタグ付けを行うためのASL PULSEによって、赤色の枠で示される領域が励起されることが容易に理解できる。
【0057】
さらに、青色の点線枠が2つ表示され、一方の枠内には、青色でSATBAND PULSE 1という文字が表示され、他方の枠内には、青色でSATBAND PULSE 2という文字が表示される。このため、2つの青色で表示された枠内の領域が、それぞれPresatパルスの印加によって信号抑制されることが容易に理解できる。加えて、SATBAND PULSE 1で示されるPresatパルスが1番目に印加されるパルスであり、SATBAND PULSE 2で示されるPresatパルスが2番目に印加されるパルスであることも容易に確認することができる。
【0058】
加えて、必要に応じてLOCATOR IMAGEと同一または近い撮像部位における過去の画像(PAST IMAGE)を収集する際に用いられた各プレパルスの種類やそれぞれの印加領域を参照用に並列表示させることもできる。これによりオペレータは、例えば過去に撮像された画像の収集の際に用いられたプレパルスと同一のプレパルスを簡易に設定することができる。
【0059】
図5は、図3に示す撮像条件設定部39によって表示装置34に表示されるプレパルスの設定画面の別の例を示す図である。
【0060】
図5に示すように、表示装置34には、プレパルスおよびその励起位置を設定するためLOCATOR IMAGEが表示される。そして、撮像断面として励起されるスライス位置を示す枠が黄色で表示される。また、撮像断面を示す枠内には、IMAGING PLANE AXというスライスの属性情報が黄色で表示される。
【0061】
また、赤色の枠が表示され、枠内には、赤色でASL PULSEという文字が表示される。このため、ASL PULSEによって、赤色の枠で示される領域に含まれるスピンが励起によってタグ付けされることが容易に理解できる。
【0062】
さらに、青色の点線枠が2つ表示され、一方の枠内には、青色でSATBAND PULSE 1という文字が表示され、他方の枠内には、青色でSATBAND PULSE 2という文字が表示される。このため、2つの青色で表示された枠内の領域が、それぞれPresatパルスの印加によって信号抑制されることが容易に理解できる。
【0063】
また、プレパルスの設定画面の任意の位置、図5の例ではLOCATOR IMAGEの下部に、各Presatパルスの印加目的および印加順序が表示される。Presatパルスの印加目的はマウス等の入力装置33の操作によって、予め設定された項目の中から選択することができる。図5の例では、SATBAND PULSE 1で示されるPresatパルスの印加目的が静脈信号の抑制に設定されており、SATBAND PULSE 2で示されるPresatパルスの印加目的が腸管の動きによる影響の抑制に設定されている。
【0064】
ここで、静脈信号の抑制は、腸管の動きによる影響の抑制よりもより良好な信号抑制効果が要求されるものである。また、信号抑制効果は、データ収集用の90度励起パルスの直前に印加されるPresatパルス程、大きいことが知られている。そこで、プレパルス印加順序決定部39Bは、SATBAND PULSE 1で示されるPresatパルスの印加目的が静脈信号の抑制に設定されると、より良好に静脈信号が抑制されるように自動的にSATBAND PULSE 1で示されるPresatパルスの印加順序を90度励起パルスの直前に設定する。一方、プレパルス印加順序決定部39Bは、SATBAND PULSE 2で示されるPresatパルスの印加順序をSATBAND PULSE 1で示されるPresatパルスの印加前に設定する。この結果、プレパルスの設定画面には、SATBAND PULSE 1で示されるPresatパルスおよびSATBAND PULSE 2で示されるPresatパルスの印加順序がそれぞれ90度励起パルスの直前およびSATBAND PULSE 1で示されるPresatパルスの印加前として表示される。
【0065】
すなわち、図4の例では、Presatパルスの印加順序が数字として表示されているが、図5の例では、数字はPresatパルスの識別のみに用いられ、印加順序は別途表示されている。このようにオペレータの理解を助けるために所望の表示方法によってプレパルスの属性情報を表示させることが可能であり、かつ表示させた属性情報を利用してプレパルスの印加順序を設定または変更することも可能である。
【0066】
図6は、図3に示す撮像条件設定部39によってPresatパルスの印加方向および胎児の向きを表示装置34に表示させた例を示す図である。
【0067】
Presatパルスの印加対象となる複数のスライスを含む印加領域は長方形として2次元のLOCATOR IMAGE上に示されることとなる。しかし、Presatパルスの印加対象となるスライスの数が多くなるとPresatパルスの印加領域は正方形に近い形状となる場合がある。このような場合、オペレータは誤ってスライスに垂直な方向をスライスに平行な方向として認識してしまう恐れがある。そこで、図6に示すように、Presatパルスの印加領域のスライス方向(スライスに垂直な方向)およびスライスに平行な方向を明示的に示すために複数の線種でPresatパルスの印加領域を表示させることができる。図6の例では、スライスに平行な方向が実線で表示される一方、スライスに垂直な方向が点線で表示されている。これにより、オペレータはPresatパルスの印加方向を容易に把握することが可能となる。尚、Presatパルスの印加領域のスライス方向やスライスに平行な方向を直接文字や記号として表示させてもよい。
【0068】
また、撮像条件設定部39によってPresatパルスの印加対象情報として胎児の向きを表示装置34に表示させることもできる。通常被検体の体位は、うつ伏せか仰向けであることから被検体の向きが判明し、H(HEAD), F(FEET), L(LIGHT), R(RIGHT)として表示させることによってオペレータは容易に被検体の向きを把握することができる。しかし、胎児は逆子である可能性があることからLR方向やHF方向の向きの判断が困難となる恐れがある。そこで、胎児の向きを表示させることによってオペレータの理解を助けることができる。胎児の向きは、例えば、母体である被検体の向きに対して同じ方向または逆方向(すなわち逆子)というように相対的に表示させることもできるし、通常の被検体の向きに対して同じ方向または逆向きというように絶対的に表示させることもできる。図6には、胎児の向き(FETAL DIRECTION)を逆子(BREECH BABY)として表示させた例を示している。胎児の向きは、HFやLR等の文字によって表示させることもできる。
【0069】
さらに、撮像条件設定部39には、上述した機能の他に共鳴周波数のケミカルシフトを利用して周波数選択的に脂肪信号、水信号あるいはシリコーン信号等の所望の物質からの信号を抑制はたは選択励起するための抑制パルスまたは選択励起パルスをプレパルスとして印加する場合に、抑制パルスまたは選択励起パルスの中心周波数を設定する機能が備えられる。
【0070】
水選択励起パルスはWET (water excitation technique)やPASTA (polarity altered spectral-selevtive acquisition)法による撮像を行う場合等に用いられる。PASTA法は、binominal pulse(2項パルス)で水信号を選択励起して水強調画像を得る撮像法である。このため、PASTA法による撮像によって相対的に脂肪信号が抑制された画像が得られる。このため、広義の脂肪抑制には水選択励起も含まれる。尚、PASTA法と同様な原理によりシリコーン信号を選択励起する撮像法としてPASTASiがある。
【0071】
選択励起パルスや抑制パルスを用いる場合には、選択励起または抑制する信号の周波数、すなわちパルスの中心周波数を設定することが必要となる。選択励起パルスや抑制パルスを用いる場合には、選択励起パルスや抑制パルスの中心周波数を決定するために予め磁気共鳴信号の周波数スペクトルが取得される。
【0072】
周波数スペクトルは、周波数スペクトルの収集用のスキャンやその他の任意の手法によって収集することができる。そして、取得された周波数スペクトルに基づいて選択励起パルスや抑制パルスの中心周波数が調整され、中心周波数が水、脂肪、シリコーン等の所望の物質の共鳴周波数に合わせられる。通常は、周波数スペクトルのピークが明瞭となるように、周波数スペクトルの取得に先立って或いは取得後に静磁場強度の均一性を調整するシミングが行われる。
【0073】
従って、撮像条件設定部39は、表示装置34に選択励起パルスや抑制パルスの中心周波数の設定画面を表示させ、入力装置33からの情報に基づいて選択励起パルスや抑制パルスの中心周波数を設定するように構成される。中心周波数の設定画面には、周波数スペクトルが表示される。さらに、選択励起パルスや抑制パルスの中心周波数の設定を支援するために周波数スペクトル上には、所望の物質からの信号の中心周波数を示す情報、選択励起パルスや抑制パルスの中心周波数および周波数帯域を表示させることができる。具体的には、選択励起パルスや抑制パルスの周波数帯域として、パルス印加強度の半値幅(FWHM: Full Width at Half Max)を表示することができる。また、水励起、脂肪抑制等のプレパルスの印加目的を表示させてもよい。
【0074】
これにより、オペレータは、例えば脂肪抑制を行う場合には、水信号の共鳴周波数、脂肪抑制パルスの中心周波数および脂肪抑制の効果が得られる周波数帯域の相対的な位置関係を視認により容易に確認することができる。例えば、水信号と脂肪信号の共鳴周波数の差は-3.5ppmであるため、-3.5 ppmという周波数距離を周波数スペクトル上に表示させることも選択励起パルスや抑制パルスの中心周波数の設定の支援に繋がる。
【0075】
ここで、信号の中心周波数を示す線等の情報および選択励起パルスや抑制パルスの周波数帯域を示す線等の情報の一方をシフトさせる情報が入力装置33から撮像条件設定部39に入力された場合に、シフトさせる情報に従って信号の中心周波数を示す線等の情報および選択励起パルスや抑制パルスの周波数帯域を示す線等の情報の双方を更新させて表示装置34に表示させるように撮像条件設定部39を構成することができる。
【0076】
そうすると、オペレータは、周波数帯域が広がった水信号や脂肪信号が水選択励起パルスや脂肪抑制パルスのFWHMの範囲内に入るようにマウス等の入力装置33の操作によって共鳴周波数を表す線またはパルスの周波数帯域や中心周波数を表す線を移動させれば、水選択励起パルスや脂肪抑制パルスの中心周波数を容易に調整することが可能となる。これにより水選択励起効果、シリコーン選択励起効果あるいは脂肪抑制効果を改善することができる。尚、水選択励起パルスや脂肪抑制パルスの周波数の調整は、閾値処理やピークの自動検出処理により自動的に行うようにすることもできる。
【0077】
図7は、水信号のピークが良好に得られた周波数スペクトルに基づいて水選択励起パルスの中心周波数を調整する場合に表示装置34に表示される画面の一例を示す図である。
【0078】
図7に示すように、脂肪の共鳴周波数は水の共鳴周波数から-3.5ppmだけケミカルシフトしている。そこで、水信号の共鳴周波数に合わせて水選択励起パルスの中心周波数を設定し、水選択励起パルスの帯域に脂肪信号が存在していないことが確認できれば、良好な水選択励起を行うことができる。シリコーン選択励起の場合も同様である。
【0079】
図8は、水信号および脂肪信号の帯域が広がった周波数スペクトルに基づいて水選択励起パルスの中心周波数を調整する場合に表示装置34に表示される画面の一例を示す図である。
【0080】
図8に示すように水信号および脂肪信号の帯域が広がっていたとしても、水選択励起パルスの帯域に脂肪信号が存在していないことが確認できれば、良好な水選択励起を行うことができる。また、仮に、水選択励起パルスの帯域に脂肪信号が存在していれば、水選択励起パルスの帯域に脂肪信号がかからないように容易に水選択励起パルスの中心周波数を適切な値に変更することができる。
【0081】
図9は、水信号および脂肪信号の帯域が広がった周波数スペクトルに基づいて脂肪抑制パルスの中心周波数を調整する場合に表示装置34に表示される画面の一例を示す図であり、図10は、図9に示す脂肪抑制パルスの中心周波数を脂肪信号の広がりに応じて調整した例を示す図である。
【0082】
図9に示すように水信号および脂肪信号の帯域が広がっている場合に、水信号の最大ピークに対応する周波数から-3.5ppmだけシフトした周波数に脂肪抑制パルスの中心周波数を設定すると、脂肪信号が脂肪抑制パルスの周波数帯域の外側にも存在する恐れがある。そこで、図10に示すように、脂肪抑制パルスのFMHWの範囲に脂肪信号の帯域が入るように脂肪抑制パルスの中心周波数をシフトさせれば脂肪抑制を向上することができる。
【0083】
図11は、周波数スペクトルの形状に応じて脂肪抑制パルスの帯域幅を参照しつつ脂肪抑制パルスの中心周波数を調整する場合の実際的な設定画面の例を示す図である。
【0084】
図11に示すように、設定画面には、水選択励起および脂肪抑制の選択用のチェックボックスが表示され、例えば脂肪抑制が選択される。そして、周波数スペクトルの脂肪信号付近に表示されている脂肪抑制パルスの周波数帯域幅を示す枠を入力装置33の操作により脂肪信号のスペクトラム形状に合わせて移動させることによって脂肪抑制パルスの中心周波数を適切な値に調整することができる。
【0085】
上述したような周波数スペクトルに基づくプレパルスの中心周波数の設定支援機能を備えるために撮像条件設定部39には、周波数スペクトル取得部39F、周波数帯域幅表示部39Gおよび中心周波数設定部39Hが設けられる。
【0086】
周波数スペクトル取得部39Fは、被検体Pから得られたk空間データ等のデータに基づいて周波数スペクトルを取得する機能を有する。周波数帯域幅表示部39Gは、脂肪抑制パルス等のプレパルスの周波数帯域幅を表示装置34に表示させる機能を有する。また、中心周波数調整部39Hは、入力装置33からのシフト指示情報に従って、プレパルスの中心周波数を調整する機能を有する。
【0087】
次に、コンピュータ32の他の機能について説明する。
【0088】
シーケンスコントローラ制御部40は、入力装置33またはその他の構成要素からの情報に基づいてシーケンスコントローラ31にパルスシーケンスを含む撮像条件を与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部40は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース41に形成されたk空間(フーリエ空間)に配置する機能を有する。
【0089】
このため、k空間データベース41には、受信器30において生成された各生データがk空間データとして保存される。
【0090】
画像再構成部42は、k空間データベース41からk空間データを取り込んでフーリエ変換処理等の画像再構成処理を行うことにより画像データを生成する機能と、生成した画像データを画像データベース43に書き込む機能とを有する。
【0091】
このため、画像データベース43には、画像再構成部42において生成された、すなわちスキャンによって収集された画像データが保存される。
【0092】
画像処理部44は、画像データベース43から読み込んだ画像データに所望の画像処理を施して表示装置34に表示させる機能を有する。
【0093】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
【0094】
図12は、図2に示す磁気共鳴イメージング装置20により複数のプレパルスの印加を伴う撮像条件を設定し、設定した撮像条件に従って被検体Pの画像を収集する際の手順の一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0095】
まずステップS1において、撮像条件として撮影断面が設定される。すなわち、撮像条件設定部39は、表示装置34に撮像断面の設定用にLOCATOR IMAGEを表示させる。そして、オペレータがLOCATOR IMAGEを参照しつつ、入力装置33の操作によって撮像断面の設定情報を撮像条件設定部39に与えると、撮像断面が設定されて領域が枠で表示される。このとき撮像条件設定部39は、枠近傍に撮像断面であることを示すIMAGING PLANE等の文字を枠と同じ色、例えば黄色で表示させる。
【0096】
次に、ステップS2において、撮像条件設定部39により撮像条件として印加するプレパルスの種類および印加断面が設定される。すなわち、オペレータがLOCATOR IMAGEを参照しつつ、入力装置33の操作によって所望の数のプレパルスの種類および印加断面を設定する。
【0097】
そうすると、ステップS3において、プレパルス属性情報表示部39Aにより、設定されたプレパルスの属性情報が表示装置34に表示される。すなわち、設定されたプレパルスの数分だけ印加断面の領域がそれぞれ枠で表示される。このとき各枠の近傍には、プレパルスの印加断面であることが視認できるように、対応するプレパルスの属性情報、例えば、プレパルスの名称が表示される。プレパルスの名称およびプレパルスの印加断面を示す枠は、それぞれ対応していることが視認できるように同じ色で表示され、異なるプレパルス間では、必要に応じて異なる色で表示される。
【0098】
次に、ステップS4において、Presatパルスが設定された場合には、入力装置33の操作によってPresatパルスの印加目的が選択される。選択された印加目的は、プレパルス印加順序決定部39Bおよびプレパルス属性情報表示部39Aに与えられる。例えば、2つのPresatパルスが設定されている場合には、一方のPresatパルスの印加目的を静脈信号の抑制に、他方のPresatパルスの印加目的を腸管の動きによる影響の抑制に設定することができる。設定されたPresatパルスの印加目的は、プレパルス属性情報表示部39Aにより表示装置34の所望の位置に表示される。
【0099】
そうすると、ステップS5において、設定された各Presatパルスの印加目的に応じて各Presatパルスの印加順序がプレパルス印加順序決定部39Bにより自動設定される。例えば、静脈信号の抑制用のPresatパルスの印加順序は、データ収集用の90度励起パルスの直前に、腸管の動きによる影響の抑制用のPresatパルスの印加順序は、静脈信号の抑制用のPresatパルスの印加前に設定される。
【0100】
尚、データ収集用のパルスシーケンスの種類等のその他の撮影条件は、任意のタイミングで設定される。また、上述した撮影条件の設定順序は変更してもよい。
【0101】
さらに、プレパルスにケミカルシフトを利用した抑制パルスや選択励起パルスが含まれる場合には、イメージング前の任意の時点で、周波数スペクトルに基づいて抑制パルスや選択励起パルスの中心周波数が調整される。具体的には、周波数スペクトル取得部39Fが、例えば予め周波数スペクトルの収集スキャンによって被検体Pから得られたk空間データをk空間データベース41から読み込んで周波数スペクトルを取得する。次に、周波数帯域幅表示部39Gは、抑制パルスや選択励起パルスの周波数帯域幅を表示装置34に表示させる。そして、オペレータの入力装置33の操作により手動で、あるいは自動的に中心周波数調整部39Hは、抑制パルスや選択励起パルスの中心周波数を調整する。
【0102】
次に、ステップS6において、設定された撮像条件に従ってデータ収集が行われる。すなわち、オペレータがデータ収集を入力装置34から指示すると、パルスシーケンスを含む撮像条件が撮像条件設定部39からシーケンスコントローラ制御部40を通じてシーケンスコントローラ31に与えられる。
【0103】
そうすると、シーケンスコントローラ31は、パルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gzおよび複数のプレパルスや90度励起パルス等のRFパルスに対応するRF信号を発生させる。このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。
【0104】
このとき、撮像条件として設定された特定の領域の不要な信号、例えば静脈信号や腸管からの動きを伴う信号がPresatパルスによって抑制される。また、撮像条件としてタグ付け用のプレパルスが印加された場合には、特定のスピン、例えば撮像断面に流入する血流に含まれるスピンがタグ付けされる。
【0105】
受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部40に与え、シーケンスコントローラ制御部40はk空間データベース41に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。このようなデータ収集は、必要に応じてECGユニット38により取得されたECG信号に基づいて心電同期下で行われる。
【0106】
次に、ステップS7において、収集されたデータから画像データが再構成され、再構成された画像データが表示される。すなわち、画像再構成部42は、k空間データベース41からk空間データを取り込んでフーリエ変換処理等の画像再構成処理を行うことにより画像データを生成する。生成された画像データは画像データベース43に書き込まれる。そして、画像処理部44は、画像データベース43から読み込んだ画像データに所望の画像処理を施して表示装置34に表示させる。
【0107】
この結果、表示装置34には、コントラストを制御するための各種プレパルスの印加によってコントラストが向上した画像が表示される。例えば、静脈信号や腸管からの動きを伴う信号が抑制される一方、タグ付けされた血流が強調された撮像断面における画像が表示装置34に表示される。
【0108】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、撮影条件として設定されるプレパルスの種類、名称、印加範囲等の属性情報をプレパルスの設定画面に表示させることによって、オペレータの操作性の向上を図ったものである。特に、プレパルスの名称等の属性情報とともに印加範囲を示す枠をプレパルス別に異なる色を用いて色づけ表示することによってオペレータは容易にプレパルスの設定を行うことができる。
【0109】
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、オペレータの負担を低減してデータ収集を行うことができる。特に、t-SLIPおよびPresatパルスの双方の印加を伴う撮像条件を設定するような場合に、オペレータの誤操作を低減することが期待できる。
【0110】
また、磁気共鳴イメージング装置20では、プレパルスの印加順序が容易に把握できるように時系列表示されるのみならず、プレパルスの印加目的や効果を選択および表示することができる。さらに、プレパルスの印加目的や効果が最大限に得られるようにプレパルスの印加順序を自動設定することもできる。
【0111】
このため、例えば、複数のPresatパルスを印加する場合に、容易かつ適切にPresatパルスの印加順序を設定することが可能となる。例えば、信号抑制効果が最も要求されるPresatパルスの印加順序を自動的に90度励起パルスの直前に設定することができる。これにより、Presatパルスの効果を向上させてフローアーティファクト等のアーティファクトを低減させることができる。
【0112】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20によれば、脂肪抑制パルスや水選択励起パルスの周波数帯域が視認できるように表示装置34に表示できるため、脂肪抑制パルスや水選択励起パルスの中心周波数の値を容易に適切な値に調整することが可能となる。これにより、脂肪抑制や水選択励起等の抑制効果や選択励起効果を改善することができる。
【符号の説明】
【0113】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイル
24 RFコイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
38 ECGユニット
39 撮像条件設定部
39A プレパルス属性情報表示部
39B プレパルス印加順序決定部
39C リファレンス像表示部
39D プレパルスパラメータ履歴保存部
39E 参照パラメータ表示部
39F 周波数スペクトル取得部
39G 周波数帯域幅表示部
39H 中心周波数調整部
40 シーケンスコントローラ制御部
41 k空間データベース
42 画像再構成部
43 画像データベース
44 画像処理部
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からの磁気共鳴信号の周波数スペクトルを取得する周波数スペクトル取得手段と、
プレパルスの印加を伴う撮影条件を入力するための入力部並びに前記周波数スペクトルとともに所望の物質からの信号の中心周波数を示す情報および前記プレパルスの帯域を表示する表示部を備える撮影条件設定手段と、
前記撮影条件に従ってイメージングし、収集したデータに基づいて画像を生成する画像収集手段と、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記撮影条件設定手段は、前記プレパルスが水励起パルスである場合に、水信号または脂肪信号の中心周波数を示す情報および前記水励起パルスの帯域を前記表示部に表示させるように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記撮影条件設定手段は、前記プレパルスが脂肪抑制パルスである場合に、水信号の中心周波数を示す情報および前記脂肪抑制パルスの帯域を前記表示部に表示させるように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記プレパルスの周波数方向における印加強度の半値幅を表示させるように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記撮影条件設定手段は、前記所望の物質からの信号の中心周波数を示す情報および前記プレパルスの帯域のいずれかをシフトさせる情報が前記入力部から入力された場合に、前記シフトさせる情報に従って前記所望の物質からの信号の中心周波数を示す情報および前記プレパルスの帯域の双方を更新させて前記表示部に表示させるように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−52300(P2013−52300A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−277998(P2012−277998)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2008−92664(P2008−92664)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】