説明

磁気共鳴撮像システム向けの端部フランジ並びに製造方法

【課題】磁気共鳴撮像MRIシステム向けの端部フランジ並びに端部フランジを製造するための方法を提供する。
【解決手段】磁気共鳴撮像MRIシステム向けの端部フランジ並びに端部フランジを製造するための方法を提供する。端部フランジの1つは、MRIシステム20の真空容器24向けのものである。この真空容器は、マグネットアセンブリをその内部に受け容れるように構成されたハウジング24と、ハウジングの端部を形成する端部フランジ32と、を含む。このフランジは、外表面と、内表面と、外表面と内表面の間に結合されたコアと、を含んでおり、コアは外表面及び内表面と比べてより大きな剛度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した主題は全般的には冷媒冷却式の磁気共鳴撮像(MRI)システムに関し、またさらに詳細にはMRIシステム用の真空容器向けの端部フランジに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導コイルMRIシステムでは、超伝導マグネットを形成するコイルをヘリウム容器を用いて冷媒冷却している。こうしたMRIシステムのうちの幾つかに関する冷媒冷却システムは、システムの動作時に超伝導マグネットコイルを連続して冷却することができる。さらに、典型的には真空容器内部で真空容器とヘリウム容器の間に位置決めした熱シールドを設けることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
MRIシステムの真空容器向けの従来のフランジは、その内部の構成要素を支持するために厚い金属構造として形成しなければならない。この厚い金属フランジによってMRIシステム全体に対するコスト及び重量が増大する。さらに、この端部フランジを覆うようにその間にギャップを備えたカバーを設けるのが一般的である。したがってMRIシステムに対して与えられた占有領域では、ギャップがつくる空間のために超伝導マグネットアセンブリに対するコイル長が短くなる結果となる。コイル長がこのように短くなると電磁気(EM)エンベロープが低下することになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施形態では、磁気共鳴撮像(MRI)システム向けの真空容器を提供する。本真空容器は、マグネットアセンブリをその内部に受け容れるように構成されたハウジングと、該ハウジングの端部を形成する端部フランジと、を含む。このフランジは、外表面と、内表面と、該外表面と内表面の間に結合されたコアと、を含んでおり、該コアは外表面及び内表面と比べてより大きな剛度を有する。
【0005】
別の実施形態では、磁気共鳴撮像(MRI)デバイス向けのマグネットシステムを提供する。本マグネットシステムは、平面壁を形成する外表面及び内表面を有する非中実のコアから形成された少なくとも1つの端部フランジを有する真空容器を含む。この非中実のコアは、外表面及び内表面と比べてより大きな剛度を有する。本マグネットシステムはさらに、真空容器の内部にあってその内部に液体ヘリウムを有する冷媒容器を含む。本マグネットシステムはさらに、冷媒容器の内部にある超伝導マグネットを含む。
【0006】
さらに別の実施形態では、マグネット共鳴撮像(MRI)システム用の真空容器向けのフランジを製造する方法を提供する。本方法は、真空容器フランジのコア、外表面及び内表面を形成するステップであって、該コアは外表面及び内表面と比べてより大きな剛度を有する形成ステップを含む。本方法はさらに、コアを外表面及び内表面と一体に結合させるステップであって、該コアは外表面と内表面の間にあると共に一体となって概して平面状の真空容器フランジを画定している結合ステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態に従って形成した磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムの簡略ブロック図である。
【図2】様々な実施形態に従って形成した端部フランジを表しているMRIマグネットシステムの断面図である。
【図3】様々な実施形態に従って形成したフランジを備えた真空容器を表した簡略図である。
【図4】様々な実施形態に従って形成したフランジを備えた真空容器を表した簡略ブロック図である。
【図5】一実施形態に従って形成した真空容器フランジの一部分の断面図である。
【図6】別の実施形態に従って形成した真空容器フランジの一部分の断面図である。
【図7】図6の真空容器フランジのコアの一部分の平面図である。
【図8】図6の真空容器フランジのコアの一部分の斜視図である。
【図9】様々な実施形態によるMRIシステム用の真空容器向けのフランジを製造するための方法の流れ図である。
【図10】様々な実施形態に従って形成した真空容器フランジをその内部に実現し得るMRIシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述した要約、並びにある種の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むことによってさらに十分な理解が得られよう。これらの図面が様々な実施形態の機能ブロックからなる図を表している場合も、必ずしもこれらの機能ブロックがハードウェア間で分割されることを意味するものではない。したがって例えば、1つまたは複数の機能ブロックを単一のハードウェアの形で実現させることも、複数のハードウェアの形で実現させることもあり得る。こうした様々な実施形態は図面に示した配置や手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0009】
本明細書で使用する場合、単数形で「a」や「an」の語を前に付けて記載した要素やステップは、これに関する複数の要素やステップも排除していない(こうした排除を明示的に記載している場合を除く)と理解すべきである。さらに、「一実施形態」に対する言及は、記載した特徴を同様に組み込んでいる追加的な実施形態の存在を排除すると理解されるように意図したものではない。さらに特に明示的に否定する記述をしない限り、ある具体的な性状を有する1つまたは複数の構成要素を「備える(comprising)」または「有する(having)」実施形態は、こうした構成要素で当該性状を有しない追加的な構成要素も含むことがある。
【0010】
様々な実施形態によって、磁気共鳴撮像(MRI)システムの真空容器向けの1つまたは複数の端部フランジを提供する。幾つかの実施形態ではその端部フランジは、端部フランジの外表面及び内表面と異なる材料から形成されたコアを有するマルチ材料構造として形成されている。別の実施形態ではそのコアは、外表面及び内表面と異なる構造を有する。少なくとも1つの実施形態の実施によって、MRIマグネットの全長が短縮されることがあり、あるいはマグネット長さを同じままとした場合に電磁気(EM)エンベロープが増大されることがある。さらに少なくとも1つの実施形態の実施によって、マグネットアセンブリ用のカバーが不要となることや、MRIシステムの音響ノイズが低減されることがある。
【0011】
図1は、様々な実施形態に従って形成したMRIマグネットシステム20の簡略ブロック図である。MRIマグネットシステム20は、液体ヘリウムなどの液体冷媒を保持している容器22を含む。したがってこの実施形態では容器22は、ヘリウム圧力容器と呼ぶこともあるヘリウム容器である。容器22は、真空容器24によって囲繞されていると共に、これの内部及び/またはこれらの間に熱シールド26を含む。熱シールド26は例えば、断熱用の放射シールドとすることがある。真空容器24は、1つまたは複数の端部フランジ32をその1つまたは複数の端部(ヘリウム容器22を含むマグネットアセンブリの端部とし得る)に配置させて含む。様々な実施形態において端部フランジ32は、コアと、本明細書の以下でより詳細に説明するような異なる材料または構造から形成された外表面及び内表面と、を含む。
【0012】
様々な実施形態ではクライオクーラとしているコールドヘッド28は、コールドヘッドスリーブ30(例えば、ハウジング)内部で真空容器24を通過して延びている。したがって真空容器24内部の真空に影響を及ぼさないようにして、コールドヘッド28の低温端部をコールドヘッドスリーブ30内部に位置決めすることができる。コールドヘッド28は、コールドヘッドスリーブ30内部に挿入されると共に、1つまたは複数のフランジ及びボルトなどの適当な任意の手段あるいは当技術分野で周知の別の手段を用いて確保されている。さらに、真空容器24の外部にコールドヘッド28のモータ42(図2参照)を設けている。
【0013】
様々な実施形態では超伝導マグネットを形成する1つまたは複数のマグネットコイル34が、ヘリウム容器22の内部に設けられると共に、本明細書でより詳細に記載しているようなMRIシステムの動作時にMRI画像データを収集するように制御を受けている。さらに、MRIシステムの動作時において、MRIマグネットシステム20のヘリウム容器22内部にある液体ヘリウムが超伝導マグネット34を冷却している。超伝導マグネットコイル34は、超伝導温度(例えば、4.2ケルビン(K))まで冷却されることがある。この冷却過程は、ボイルオフしたヘリウムガスをヘリウム再凝縮システム(図1では図示せず)によって液体になるように再凝縮させると共にこれをヘリウム容器22に戻すことを含むことがある。ボイルオフしたヘリウムは、ヘリウム容器22を熱シールド26に接続している気体通路36を通って渡すことがあることに留意すべきである。気体通路36から熱シールド26までのヘリウムガスの通過は熱シールド26を冷却する役割をする。この冷却システムはさらに、冷媒を冷却するようにヘリウム容器22をコールドヘッド28に接続するための気体通路38及び40(例えば、チューブ)を含む。
【0014】
例えば図1及び2に示したような様々な実施形態では、ボイルオフしたヘリウムガスをコールドヘッド28に出入りするように循環させるために気体通路38と気体通路40のそれぞれが、ヘリウム容器22からのヘリウムガスの転送または伝達を行うように動作する。さらに通路36は、例えば通常動作時やコールドヘッド28のパワーオフ状態中にヘリウム容器22からのヘリウムガス(例えば、ボイルオフしたヘリウムガス)を熱シールド26内でまたはその位置で循環させるために、ヘリウム容器22からのヘリウムガスを転送または伝達するように動作する。ヘリウム容器22に出入りするようにヘリウムを転送するためには任意の結合配列や結合手段を用い得ることに留意すべきである。
【0015】
したがって様々な実施形態ではクライオクーラであるようなコールドヘッド28は、コールドヘッド28のモータ42が真空容器24の外部に設けられた状態で、コールドヘッドスリーブ30(例えば、ハウジング)内部の真空容器24を通過して延びている。この冷却過程は、ヘリウム再凝縮システム50によりボイルオフしたヘリウムガスを液体に再凝縮させてヘリウム容器22に戻すことを含むことがある。ボイルオフしたヘリウムは、ヘリウム容器22を再凝縮システム50に接続する気体通路38を通過することがあること、並びに再凝縮させたヘリウムは通路40を通ってヘリウム容器まで戻されることがあることに留意すべきである。
【0016】
図2は、様々な実施形態に従って形成した端部フランジ32を備えた真空容器24を表しているMRIマグネットシステム20の一部分の断面図である。図面全体を通じて同じ参照番号が同じまたは同様の部分を示していることに留意すべきである。図のようにヘリウム容器22は、真空容器24に囲繞されると共にその内部及び/またはその間に熱シールド26を含んでおり、この熱シールドは例えば、断熱性の放射シールドとすることができる。
【0017】
真空容器24の端部フランジ32は、真空容器24の外側壁と内側壁のそれぞれの一部を概して画定している外表面44と内表面46を含む。外表面44は一般に、環境または外気に対して曝露された表面(例えば、オペレータに見えている表面)であり、また内表面46は、真空容器24のうち端部フランジ32に沿った内部表面を画定している。端部フランジ32は、外表面44と内表面46の間にコア48を含む。したがって、様々な実施形態によるコア48は、外表面44と内表面46の間に挟み合されている。一実施形態ではそのコア48は、外表面44及び内表面46と異なる材料または構造(例えば、中実な外表面44と内表面46を備えた非中実のコア)から形成されている。さらに、外表面44と内表面46は、同じ材料から形成されることも、異なる材料から形成されることもある。
【0018】
様々なハウジング、超伝導マグネットコイル34及びコールドヘッド28を表した簡略図面である図3には、MRIマグネットシステム20の一構成を表している。この実施形態ではMRIマグネットシステム20は、例えば熱伝導率が高い円筒状シェル(例えば、1つまたは複数のコイル支持シェル)の内部に支持されると共に、極低温冷凍システムとして動作するコールドヘッド28によって冷却されている同心性の超伝導主コイル34とバッキングコイル62から形成された超伝導MRIマグネット60を含む。
【0019】
様々な実施形態による超伝導コイル34及び/または62はエポキシ樹脂によって成形されている。例えば成形されるコイルは、ウェット状態のエポキシを巻き付けかつ硬化させて自己支持構造を形成させることがある。次いで超伝導コイル34及び/または62をコイル支持シェルに結合させることがある。形成させる超伝導コイル34及び/または62は、その中を通過するように対象(例えば、患者)の撮像に使用されるボア64が画定されるようなサイズ設定としている。例えば、本明細書の以下でより詳細に説明するような対象の特定の部分を撮像するように視野域(FOV)を画定させることがある。
【0020】
図から分かるように真空容器24は、概して平面状の外側壁66を含んでおり、この外側壁66は同様に概して平面状または平坦な端部フランジ32を含む。図4には、ヘリウム容器22がマグネット60を形成する1つまたは複数のコイルをその内部に含むような一実施形態を表している。例えば、複数のコイル34は巻き型70(例えば、主マグネット巻き型)上に支持かつ維持されることがあり、また複数のコイル62は巻き型72(例えば、副次巻き型)上に支持かつ維持されることがある。巻き型70及び72は、超伝導マグネットのコイルを支持かつ維持することが可能な適当な任意の巻き型とすることができる。一実施形態では、コイル34が主マグネットコイルであり、またコイル62がバッキングコイルまたはシールドコイルである。コイル34及び62の数及び位置決めは所望によりまたは必要に応じて様々とすることができる。
【0021】
コイル34及び62は、ヘリウム容器22で包含された液体ヘリウム内に浸漬されている。この実施形態では、真空容器フランジ32はより薄い構造から形成されている(これについては以下でより詳細に説明することにする)。例えば一実施形態では、真空容器フランジ32は複数の材料及び/または全体厚が約10ミリメートル(mm)の複数の構造または構成から形成されており、外表面44と内表面46はそれぞれ厚さが約2mmである。
【0022】
図5に示したように様々な実施形態では、外表面44及び内表面46はコア48と比べて曲げ弾性係数(または、弾性率)がより大きい材料から形成されており、またコア48は外表面44及び内表面46と比べてせん断係数(または、剛性率)がより大きい材料または構造から形成されている。幾つかの実施形態では、コア48と外表面44及び内表面46とを同じ材料から形成しているが、それぞれの特性に影響を与えるように厚さや構造は異なることに留意すべきである。したがって様々な実施形態では、フランジ32の剛性は主に、外表面44及び内表面46によって剛性コアのカバーまたはハウジングを画定させたコア48の構造によって規定される。
【0023】
一実施形態ではその外表面44及び内表面46は、例えばステンレス鋼や適当な別の金属からなる2mm厚の層などの金属シートまたは金属層から形成されている。しかし、外表面44と内表面46のうちの少なくとも一方を形成するために非金属材料を用いることもあり得る。例えば一実施形態では、外表面46(見えている表面)をガラス繊維材料や別の強化ポリマーから形成させている。幾つかの実施形態では、炭素繊維ベースの材料を用いることもある。外表面46を仕上げ外観を備えたガラス繊維や同様の材料から形成させる場合は、(MRIマグネットシステム20の美観のための)追加のカバーは設けていない。したがって、外表面46がMRIマグネットシステム20の最外側表面を形成しており、これがMRIマグネットシステム20の見えているハウジングとなる。
【0024】
幾つかの実施形態ではそのコア48を複合材料から形成させている。この複合材料は一般に、サブストレート及び樹脂から形成されている。この複合材料はさらに繊維強化させることがある。例えば、コア48を炭素繊維強化プラスチックまたはガラス強化プラスチックから形成させることがある。この複合材料はさらに、金属基複合材料の形など別の金属を強化する金属繊維を含むことがある。例えば、セラミック基複合材料や熱可塑性の複合材料を含む別の非金属複合材料を用いることもある。したがって様々な実施形態では、コア48は高密度複合材料から形成させることがある。
【0025】
幾つかの実施形態ではそのコア48を中実構造でない金属材料から形成させている。これらの実施形態では、外表面44及び内表面46は金属材料から形成させることも、非金属材料から形成させることもある。コア48は、一実施形態では図6〜8に示したような複数の6角形セル82を有する蜂の巣様構成80を含むような構造によって画定されている。蜂の巣様構成80の構造の幾何学構成は様々とすることが可能であり、例えば薄い垂直な壁(例えば、厚さが約1〜5mmの壁)とし得る壁84によって分離された中空の6角形セル82(図8参照)からなるアレイとして図示している。この実施形態ではその6角形セル82は柱状である。しかし、例えばダイヤモンド形状や8角形状(ただし、これらに限らない)など6角形以外の様々な形状でセル82を形成し得ることに留意すべきである。これらの実施形態におけるコア84は一般に、本明細書に記載したように密度を低下または最小限にしかつ面外(out−of−plane)圧縮特性及び面外せん断特性を比較的高くした材料を提供する構造から形成されている。例えば蜂の巣様構成80を用いる場合に幾つかの実施形態では、(中実のコアと比較して)約4分の1の材料を用いて約4倍のせん断係数の上昇が得られる。
【0026】
フランジ32の構成要素または層を形成する様々な材料は、希望されるまたは要求されることがある追加の特性を有するように選択し得ることに留意すべきである。例えば外表面44を、MRI用途に対する保険業者試験所(Underwriters Laboratories:UL)可燃性要件機能を提供する材料から形成させることがある。別法としてその外表面44は、例えばUL耐燃焼性材料層でコーティングすることがある。
【0027】
外表面44、内表面46及びコア48を含むフランジ32の様々な構成要素は、適当な任意の締結手段を用いて一体に結合させることがある。例えば様々な構成要素を、ねじやボルトを用いるなどにより機械的に留めることがある。別の例では、エポキシなどの接着材や糊を用いることがある。さらに別の例には、例えば様々な構成要素を一体に溶接することを含む。
【0028】
したがって様々な実施形態では、フランジ32がサンドイッチ状または層状の構造(例えば、多層構造)から形成されており、サンドイッチタイプの複合材料構造によればフランジ32をより薄くできると共に、中実フランジと同じまたは同様の特徴または特性(例えば、同じまたは同様の支持)を提供することが可能である。様々な実施形態ではそのコア48の材料は、外表面44及び内表面46を剛性がより小さくかつ/または厚さがより薄い材料から形成できるようにより高い剛性または剛度を備えている。
【0029】
様々な実施形態はさらに、MRIシステム用の真空容器向けのフランジを製造するための図9に示したような方法90を提供する。本方法は92において、より高い剛性または剛度を提供する材料によりまたはこうした構成を有するようにフランジ用のコアを形成するステップを含む。本明細書に記載したように、このコアはより高い剛性または剛度を提供するように選択した材料から形成させること、あるいはより高い剛性または剛度を有する構成(例えば、蜂の巣形状)で設けられることがある。例えばこのコアは、例えば75GPaを超える高いせん断係数を有するように形成させることがある。幾つかの実施形態ではそのコアは、約79.3GPaのせん断係数を有するような鋼とほぼ同じまたは少なくとも同じ高さのせん断係数を有するように形成されることがある。
【0030】
本方法はさらに94において、厚さがより薄いまたは剛度がより低い材料から外表面と内表面を形成するステップを含む。例えば一実施形態では、外表面と内表面を薄い金属層から(例えば、厚さが約2mmのステンレス鋼材料から)形成している。
【0031】
真空容器向けの端部フランジを形成するように、96においてコアと外表面及び内表面とを一体に結合させている。これらの構成要素は、本明細書に記載したような適当な任意の手段を用いて一体に結合させることがある。外表面と内表面は一般に、その間にあるコアが端部フランジの体部を画定するようにして端部フランジの外側壁と内側壁を画定している。
【0032】
次いで98において、MRIシステム用の真空容器に対して端部フランジを結合させている。例えば端部フランジは、適当な任意の結合手段を用いて真空容器側面に結合させることがある。
【0033】
幾つかの実施形態について超伝導マグネットを有するMRIシステム用の真空容器の端部フランジと連携させて説明することがあるが、これらの様々な実施形態は超伝導マグネットを有する任意のタイプのシステムと連携して実現し得ることに留意すべきである。この超伝導マグネットは、別のタイプの医用撮像デバイス形で、また非医用の撮像デバイスの形で実現させることもある。さらに様々な実施形態は、別のタイプのMRIシステムと連携させて実現させることもある。
【0034】
したがってこの様々な実施形態は、様々なタイプのMRIシステム向けの真空容器と連携して実現させることがある。例えばこの様々な実施形態は、図10に示したMRIシステム100で実現させることがある。システム100を単一モダリティの撮像システムとして図示しているが、マルチモダリティ撮像システムの形であるいはマルチモダリティ撮像システムを用いてこの様々な実施形態を実現し得ることを理解されたい。システム100はMRI撮像システムとして図示しており、またシステム100は、コンピュータ断層(CT)、陽電子放出断層(PET)、単一光子放出コンピュータ断層(SPECT)、並びに超音波システム、あるいは人の画像などの画像作成が可能な別の任意のシステムなど様々なタイプの医用撮像システムと組み合わせることができる。さらにこれらの様々な実施形態は人を対象とした撮像のための医用撮像システムに限定されるものではなく、人以外の対象、手荷物、その他を撮像するための獣医学や非医用のシステムを含むことができる。
【0035】
図10を参照するとMRIシステム100は一般に、撮像部分102と、プロセッサやその他のコンピュータ処理デバイスや制御器デバイスを含み得る処理部分104と、を含む。MRIシステム100はガントリ106の内部に、マグネットコイル支持構造上に支持されることがある超伝導マグネットコイル34を含む。ヘリウム容器22(クライオスタットとも呼ぶ)は超伝導マグネットコイル34を囲繞すると共に、液体ヘリウムで満たされている。この液体ヘリウムは、本明細書でより詳細に記載しているようなコールドヘッドスリーブ及び/または熱シールドの冷却のために使用されることがある。真空容器24は、ヘリウム容器34を囲繞すると共に、本明細書に記載すると共に図1〜8に示したような端部フランジ32を含む。
【0036】
ヘリウム容器22の外表面と超伝導マグネットコイル34の内表面を囲繞して断熱体112が設けられている。超伝導マグネットコイル34の内部には複数の傾斜磁場コイル114が設けられており、またこの複数の傾斜磁場コイル114の内部にはRF送信コイル116が設けられている。幾つかの実施形態ではそのRF送信コイル116が送信/受信コイルに置き換えられることがある。ガントリ106内部の構成要素により撮像部分102が形成されるのが一般的である。超伝導マグネットコイル34を円筒形状としているが、別の形状のマグネットを使用することが可能であることに留意すべきである。
【0037】
処理部分104は一般に、制御器118、主磁場制御120、傾斜磁場制御122、メモリ124、表示デバイス126、送信−受信(T−R)スイッチ128、RF送信器130及び受信器132を含む。
【0038】
動作時において、撮像しようとする患者やファントームなどの対象物は、ボア134内で適当な支持体(例えば、患者テーブル)上に配置される。超伝導マグネットコイル34はボア134全体にわたって均一で静的な主磁場B0を生成する。ボア134内及び対応する患者内の電磁場の強度は、主磁場制御120を介して制御器118により制御されており、制御器118はさらに超伝導マグネットコイル34に対する励起電流の提供も制御している。
【0039】
傾斜磁場コイル114(1つまたは複数の傾斜コイル素子を含む)は、超伝導マグネットコイル34内部のボア134内において直交する3つの方向x、y及びzのうちの1つまたは幾つかの方向で磁場B0に対して磁場傾斜を付与できるように設けられている。傾斜磁場コイル114は傾斜磁場制御122によって励起され、さらに制御器118によって制御を受ける。
【0040】
複数のコイルを含むことがあるRF送信コイル116は、磁気パルスの送信及び/または任意選択で(RF受信コイルとして構成した表面コイルなどの受信コイル素子も設けられる場合に)患者からのMR信号の同時検出を行うように配列させている。RF受信コイルは、任意のタイプまたは構成(例えば、単独の受信表面コイル)とすることができる。受信表面コイルは、RF送信コイル116の内部に設けられたRFコイルからなるアレイとすることがある。
【0041】
RF送信コイル116と受信表面コイルはそれぞれ、RF送信器130と受信器132のうちの一方に対してT−Rスイッチ128によって選択的に相互接続させている。RF送信器130及びT−Rスイッチ128は、RF送信器130によりRF磁場パルスまたは信号を発生させ、これを患者内に磁気共鳴を励起するために患者に選択的に印加するように制御器118によって制御されている。患者に対してRF励起パルスを印加している間に受信表面コイルを受信器132から切断するためにもT−Rスイッチ128を作動させている。
【0042】
RFパルスの印加に続いて、RF送信コイル116をRF送信器130から切断しかつ受信表面コイルを受信器132に接続するようにT−Rスイッチ128を再度作動させている。受信表面コイルは、患者内の励起した原子核に起因するMR信号を検出または検知するように動作すると共に、このMR信号を受信器132に伝送する。検出したこれらのMR信号は次いで制御器118に伝送される。制御器118は例えば、患者の画像を表す信号を生成するようにMR信号の処理を制御するプロセッサ(例えば、画像再構成プロセッサ)を含む。
【0043】
さらに画像を表す処理済み信号は、画像の視覚表示を提供するために表示デバイス126に送られる。具体的にはこのMR信号によって、観察可能な画像が得られるようにフーリエ変換を受けるk空間が満たされる、またはk空間が形成される。次いで、画像を表す処理済み信号は表示デバイス126に送られる。
【0044】
上の記述は例示であって限定でないことを理解されたい。例えば上述の実施形態(及び/または、その態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。さらに、具体的な状況や材料を様々な実施形態の教示に適応させるように本趣旨を逸脱することなく多くの修正を実施することができる。本明細書に記載した材料の寸法及びタイプが様々な実施形態のパラメータを規定するように意図していても、これらは決して限定ではなく単なる例示である。上の記述を検討することにより当業者には別の多くの実施形態が明らかとなろう。様々な実施形態の範囲はしたがって、添付の特許請求の範囲、並びに本請求範囲が規定する等価物の全範囲を参照しながら決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「を含む(including)」や「ようになった(in which)」という表現を「を備える(comprising)」や「であるところの(wherein)」という対応する表現に対する平易な英語表現として使用している。さらに添付の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」及び「第3の」その他の表現を単にラベル付けのために使用しており、その対象に対して数値的な要件を課すことを意図したものではない。さらに、添付の特許請求の範囲の限定は手段プラス機能形式で記載しておらず、また35 U.S.C.§112、第6パラグラフに基づいて解釈されるように意図したものでもない(ただし、本特許請求の範囲の限定によって「のための手段(means for)」の表現に続いて追加的な構造に関する機能排除の記述を明示的に用いた場合を除く)。
【0045】
この記載では、様々な実施形態(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む様々な実施形態の実施を可能にするために例を使用している。様々な実施形態の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、その例が本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、その例が本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0046】
20 MRIマグネットシステム
22 ヘリウム容器
24 真空容器
26 熱シールド
28 コールドヘッド
30 コールドヘッドスリーブ
32 真空容器フランジ
34 超伝導コイル
36 通路
38 通路
40 通路
42 モータ
44 外表面
46 内表面
48 コア
50 再凝縮システム
60 超伝導MRIマグネット
62 コイル
64 ボア
66 外側壁
70 巻き型
72 巻き型
80 蜂の巣様構成
82 6角形セル
84 壁
90 方法
92 剛度を増大させた材料または構成によってフランジ向けのコアを形成する
94 厚さを低下または剛度を低下させた材料から外表面及び内表面を形成する
96 フランジを形成するように外表面及び内表面をコアに結合させる
98 MRIシステム用の真空容器にフランジを結合させる
100 MRIシステム
102 撮像部分
104 処理部分
106 ガントリ
112 断熱体
114 傾斜磁場コイル
116 RF送信コイル
118 制御器
120 主磁場制御
122 傾斜磁場制御
124 メモリ
126 表示デバイス
128 T−Rスイッチ
130 RF送信器
132 受信器
134 ボア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像(MRI)システム(20)向けの真空容器(24)であって、
マグネットアセンブリをその内部に受け容れるように構成されたハウジング(30)と、
ハウジングの端部を形成する端部フランジ(32)であって、外表面(44)、内表面(46)、及び該外表面と内表面の間に結合されたコア(48)を含み、該コアは外表面及び内表面と比べてより大きな剛度を有する端部フランジ(32)と、
を備える真空容器(24)。
【請求項2】
前記端部フランジ(32)は概して平面状である、請求項1に記載の真空容器(24)。
【請求項3】
前記外表面と内表面(44、46)は金属材料から形成されており、かつ前記コア(48)は複合材料から形成されている、請求項1に記載の真空容器(24)。
【請求項4】
前記金属材料はステンレス鋼であると共に約2ミリメートルの厚さを有する、請求項3に記載の真空容器(24)。
【請求項5】
前記外表面と内表面(44、46)はガラス繊維から形成されている、請求項1に記載の真空容器(24)。
【請求項6】
前記コア(48)は蜂の巣様構成(80)で金属から形成されている、請求項1に記載の真空容器(24)。
【請求項7】
前記外表面(44)は耐燃焼性材料を含む、請求項1に記載の真空容器(24)。
【請求項8】
前記外表面(44)は真空容器の外側ハウジングを画定すると共にカバーを含まない、請求項1に記載の真空容器(24)。
【請求項9】
前記外表面(44)、内表面(46)及びコア(48)は、サンドイッチ配列で約10ミリメートルの全体厚を有するように一体に結合されている、請求項1に記載の真空容器(24)。
【請求項10】
マグネット共鳴撮像(MRI)システム用の真空容器向けのフランジを製造する方法(90)であって、
真空容器フランジのコア、外表面及び内表面を形成するステップ(92、94)であって、該コアは外表面及び内表面と比べてより大きな剛度を有する形成ステップ(92、94)と、
コアを外表面及び内表面と一体に結合させるステップ(96)であって、該コアは外表面と内表面の間にあると共に一体となって概して平面状の真空容器フランジを画定している結合ステップ(96)と、
を含む方法(90)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−27700(P2013−27700A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−163194(P2012−163194)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】