説明

磁気共鳴画像化装置および磁気共鳴画像化方法

【課題】核磁気共鳴を利用して、可聴領域の音の振動数程度に高速に振動する発話器官の断面を動画として画像化することが可能な磁気共鳴画像化装置を提供する。
【解決手段】MRI装置1000は、被測定対象の発話器官の周期的な運動の位相と1対1に対応した音声信号を記憶するデータ記憶部258と、振動磁場をRFコイル104に与え、検出信号を受けて時系列のフレームとして断層動画像を生成するための画像再構成部260とを備える。画像再構成部260は、発話器官の運動とは非同期に、断面画像を再構成するためのデータをk空間のリードアウト軸に沿う行ごとに複数回にわたって取得し、複数回の測定中の断面画像を再構成する動画像の各フレームのタイミングで、音声信号に基づいて、発話器官の運動の同一の位相に相当する行を選択することで、当該位相の画像を再構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体の断層撮影を行なうための磁気共鳴画像化(MRI : Magnetic Resonance Imaging)装置の構成および磁気共鳴画像化方法に関し、より特定的には、高いフレームレートで被測定対象の断層の動画撮像が可能な磁気共鳴画像化装置および磁気共鳴画像化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の脳や全身の断面(断層)を画像化する方法として、生体中の原子、特に、水素原子の原子核に対する核磁気共鳴現象を利用した磁気共鳴画像法が、人間の臨床画像診断等に使用されている。
【0003】
磁気共鳴画像法は、それを人体に適用する場合、同様の人体内断層画像法である「X線CT」に比較して、たとえば、以下のような特徴がある。
【0004】
(1)水素原子の分布と、その信号緩和時間に対応した濃度の画像が得られる。このため、組織の性質の差異に応じた濃淡を呈し、組織の違いを観察しやすい。
【0005】
(2)骨は他の部位と比べて、水素原子の密度が低い。このため、骨に囲まれた部位(頭蓋内、脊髄など)を観察しやすい。
【0006】
(3)X線のように人体に害になるということがないので、広範囲に活用できる。
このような磁気共鳴画像法は、人体の各細胞に最も多く含まれ、かつ最も大きな磁性を有している水素原子核(陽子)の磁気性を利用する。水素原子核の磁性を担うスピン角運動量の磁場内での運動は、古典的には、コマの歳差運動にたとえられる。
【0007】
以下、この直感的な古典的モデルで、簡単に核磁気共鳴の原理をまとめておく。
上述したような水素原子核のスピン角運動量の方向(コマの自転軸の方向)は、磁場のない環境では、ランダムな方向を向いているものの、静磁場を印加すると、磁力線の方向を向く。
【0008】
この状態で、さらに電磁波(RF(Radio Frequency)パルス)を重畳すると、この電磁場の周波数が、静磁界の強さで決まる共鳴周波数f0=γB0/2π(γ:物質に固有の係数)であると、共鳴により原子核側にエネルギーが移動し、磁化ベクトルの方向が変わる(歳差運動が大きくなる)。この状態で、電磁波を切ると、歳差運動は、フリップアングルを戻しながら、静磁界における方向に復帰していく。この過程を外部からアンテナコイルにより検知することで、NMR信号を得ることができる。
【0009】
このような共鳴周波数f0は、静磁界の強度がB0(T)であるとき、水素原子では、42.6×B0(MHz)となる。
【0010】
そして、このような核磁気共鳴を利用したMRIが、以下に説明するように、発話中の人間の調音器官の状態の観察にも使用されている。
【0011】
ここで、舌や声帯等の動的な運動をする発話器官の動態の可視化についてこれまでさまざまな手法が用いられてきた。
【0012】
調音運動については、超音波、X線マイクロビーム、MRIを用いた動画撮像(以下、”MRI movie”と呼ぶ)(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3を参照)やEMMA(ElectroMagnetic Midsagittal Articulometer)などを用いることにより、体外からは視認できない舌や喉頭の動きが分かるようになってきた。
【0013】
一方、声帯振動や歯茎ふるえ音のような非常に高速で振動する発話器官はこれまでは上記の手法では発話同期や振動部位のサイズ等に制限されて観測することはできなかった。このため、100Hz以上で振動する声帯については喉頭ストロボスコピーや高速度カメラを用いた上方からの観測や、摘出した喉頭に人工的な空気流を流すことによる観測がなされている(非特許文献4、非特許文献5を参照)。内視鏡による観測では主に上方からの観測のみにとどまるため、声帯の下唇の様子は上唇の閉鎖により観測できない時間的区間が生じる。摘出喉頭は人体の場合で行うことは困難であり、そのため人間の話声・歌声を特徴付けるような声帯運動の再現は難しくなる。
【0014】
MRIの特徴としては、発話器官の断面形状の観測が可能であり、複数の断面での撮像も可能である点がある。さらに侵襲性の心配がないという利点が挙げられる。これらの長所を生かして、さらに発展させたMRI movie撮像法はこれまで調音運動の観測に用いられてきてきた。これにより、1発話あたり120フレームの動画が得られ、調音器官の可視化に成功している。
【0015】
しかしながら、調音運動よりもより高速に変化する器官の画像化はこれまでに提案されているMRI movie撮像法では困難である。スパイラルk空間を用いて一度の発話で動画を作成する方法(非特許文献6を参照)では、声帯振動等に対してはフレームレートが足りない問題がある。
【0016】
また、MRI movie撮像に際して被験者が発話同期を行う手法(非特許文献1を参照)は、声帯振動等では発話者自身が閉鎖-開放を制御できないため、そのままでは適用できない。撮像時の被験者の発話音声を収録し、それをもとにしてk空間内のデータを並べ替えることで発話同期を必要としない方法も提案されている(非特許文献2を参照)が、高周波数で振動する発話器官の動画化は、困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】S.Masaki, M.K.Tiede, K.Honda, Y.Shimada, I.Fujimoto, Y.Nakamura and N.Ninomiya:“MRI-based speech pro-duction study using a synchronized sampling method”, J.A coust.Soc. Jpn.(E),20, 5, pp. 375-379 (1999).
【非特許文献2】M.Mohammad, E.Moore, J.N.Carter, C.H.Shadle and S. J.Gunn:“Using MRI to image the moving vocal tract during speech”,Proc.Eurospeech’97,Vol.4,pp.2027-2030 (1997).
【非特許文献3】S.Narayanan, K.Nayak, S.Lee, A.Sethy and D.Byrd:“An approach to real-time magnetic resonance imaging for speech production”, J.Acoust.Soc.Am.,115,4,pp.1771-1776(2004).
【非特許文献4】T.Baer: “Investigation of phonation using excised larynxes”, PhD thesis, Massachusetts Institute of Technology (1975).
【非特許文献5】D.A.Berry, D.W.Montequin and N.Tayama:“High-speed digital imaging of the medial surface of the vocal folds”,J.Acoust.Soc.Am.,110,5,pp.2539-2547(2001).
【非特許文献6】S.Narayanan, K.Nayak, S.Lee, A.Sethy and D.Byrd:“An approach to real-time magnetic resonance imaging for speech production”, J.Acoust.Soc.Am., 115,4,pp.1771-1776(2004).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以下では、このような従来のMRI movie撮像法の動作とその問題点について、簡単に説明する。
【0019】
図13は、MRIの動作原理を示す概念図である。
MRIでは、静磁界を生成するための静磁場コイル内に被験者10が横たえられ、傾斜磁場コイルによる磁場により、被験者10における観測断面(スライス)の位置の情報が観測信号に付与される。これを「スライス選択」と呼ぶ。さらに、スライス内の位置情報を付加する位相エンコードのための傾斜磁場が所定のタイミングで印加される。さらに、RFコイルにより、観測対象となる原子核に電磁波(RFパルス)が印加されるとともに、スライス内の上記一方向に直交する方向の位置を特定するための周波数エンコードを行なうための読取傾斜磁場が印加される。
【0020】
このようにして、外部磁場、RF波、傾斜磁場が所定のシーケンスに従って与えられることで、観測対象の水素原子核からの信号を受信コイルで受信してk空間内のリードアウトライン1本分のデータが取得される。一般には、このようなシーケンスを位相エンコードのための傾斜磁場の強度をリードアウトラインごとに変化させながら、所定回数繰り返すことでk空間内の全ての点のデータが取得される。
【0021】
k空間内のデータを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)することで、画像が再構成される。
【0022】
図14は、k空間において、観測される取得データのトラジェクトリを示す図である。
図14において、縦軸の方向は、位相エンコードによる位相の変化を表しており、縦軸の間隔は、RFパルス印加の繰返し時間間隔TRに対応する。横軸は、周波数を示し、間隔はリードアウトサンプリング時間Tsに対応する。この図において、横軸方向の一列のデータを「リードアウトライン」と呼ぶ。
【0023】
図15は、上述した被験者が発話同期を行う手法の構成を示す概念図である。
被験者10は、同一の発話タスクを発話タイミングの通知音に合わせて繰り返す。MRI装置側では、この発話タイミングの通知音生成部からのタイミングに合わせて、外部トリガ生成部から出力されるトリガ信号に合わせてデータ取得を行なう。
【0024】
ここでは、一回のデータ取得期間では、位相エンコードのための傾斜磁場は一定値として、異なる繰返しタイミングでリードアウト方向にデータが取得される。図15の例では、このようなデータ取得を128回繰り返す場合が示されている。
【0025】
128回のデータ取得において、外部トリガから同一のタイミングのリードアウト方向のデータを組合せると、外部トリガから同一のタイミングについて、異なる位相エンコードの大きさに相当するデータが得られ、1つの撮像野FOVに対応するk空間のデータが取得される。このようにして、外部トリガを基準として、各経過時間のタイミングの撮像野FOVに対応するk空間のデータが、撮像野ごとに集められる。このようにして集められたk空間のデータを高速フーリエ変換すると、各撮像野ごとの画像データが再構成される。
【0026】
このような画像データは、外部トリガを基準として、各経過時間のタイミングで得られるので、これが動画の各フレームを構成することになる。
【0027】
しかしながら、上述したように、このような手法では、声帯振動等では発話者自身が閉鎖-開放を制御できないため、調音運動よりもより高速に変化する器官の動画としての画像化が困難であるという問題があった。
【0028】
たとえば、歯茎ふるえ音(いわゆる「巻き舌」。Trrrr…音。)、声帯振動、マウスピース装着時の口唇の振動などにおいて、これらの器官の断面の動画としての画像化は困難であった。
【0029】
言い換えると、より一般には、音声の基本周波数程度に高速に振動する振動子の断面を動画として画像化することは困難であった。
【0030】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、核磁気共鳴を利用して、たとえば可聴領域の音声の基本周波数程度に高速に振動する振動子の断面を動画として画像化することが可能な磁気共鳴画像化装置および磁気共鳴画像化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この発明の1つの局面に従うと、被測定対象の振動子からの核磁気共鳴に起因する検出信号を検知して、被測定対象の断層動画像を生成するための磁気共鳴画像化装置であって、被測定対象に静磁場を印加するための静磁場印加手段と、被測定対象の選択された断面内において、検出信号を発する原子核の位置情報を検出信号が有するように変調した磁場を被測定対象に印加するための傾斜磁場印加手段と、被測定対象に対して電磁場を印加し、被測定対象からの検出信号を検知するための電磁場送受信手段と、被測定対象の振動子の周期的な運動の位相と1対1に対応した振動子からの出力信号を記憶する記憶手段と、電磁場を電磁場送受信手段に与え、検出信号を受けて時系列のフレームとして断層動画像を生成するための断層撮影制御手段とを備え、断層撮影制御手段は、振動子の運動とは非同期に、断面画像を再構成するためのデータをk空間のリードアウト軸に沿う行ごとに複数回にわたって取得するデータ取得手段と、複数回の測定中の断面画像を再構成する動画像の各フレームのタイミングで、出力信号に基づいて、振動子の運動の同一の位相に相当する行を選択することで、当該位相の画像を再構成する画像再構成手段とを含む。
【0032】
好ましくは、リードアウト軸に沿う行ごとの測定タイミングを特定するための情報を取得するタイミング検出手段をさらに備え、記憶手段は、データ取得手段は、測定タイミングを示す情報とともに、断面画像を再構成するためのデータを記憶する。
【0033】
好ましくは、出力信号は、振動子からの音声信号である。
好ましくは、音声信号を磁気共鳴画像化装置からの騒音と分離するための帯域透過フィルタをさらに備える。
【0034】
この発明の他の局面に従うと、被測定対象の振動子からの核磁気共鳴に起因する検出信号を検知して、被測定対象の断層動画像を生成するための磁気共鳴画像化方法であって、被測定対象に静磁場を印加し、被測定対象の選択された断面内において、検出信号を発する原子核の位置情報を検出信号が有するように変調した磁場を被測定対象に印加して、被測定対象に対して電磁場を印加することにより、被測定対象からの検出信号を検知するステップと、被測定対象の振動子の周期的な運動の位相と1対1に対応した振動子からの出力信号を記憶するステップと、電磁場を被測定対象に与え、検出信号を受けて時系列のフレームとして断層動画像を生成するステップとを備え、断層動画像を生成するステップは、振動子の運動とは非同期に、断面画像を再構成するためのデータをk空間のリードアウト軸に沿う行ごとに複数回にわたって取得するステップと、複数回の測定中の断面画像を再構成する動画像の各フレームのタイミングで、出力信号に基づいて、振動子の運動の同一の位相に相当する行を選択することで、当該位相の画像を再構成するステップとを含む。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、たとえば音声の基本周波数程度の高速で振動する振動子の断面を動画として画像化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る磁気共鳴画像化装置の一例のMRI装置1000の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】MRI装置1000による画像の再構成処理を説明するための概念図である。
【図3】画像再構成処理を従来の画像再構成処理と比較して説明するための概念図である。
【図4】発声器官として声帯を考えた場合に、声帯の断面形状の時間変化と音声波形と音声信号を帯域透過フィルタを通した後の信号波形とを示す図である。
【図5】MRI装置1000のパルスシーケンスを示す図である。
【図6】MRI装置1000の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図7】ファントムを構成する部品を説明する図である。
【図8】ファントムの外観と断面図を示す図である。
【図9】MRI装置1000から発生するノイズと、振動子から生じる音のスペクトログラムを示す図である。
【図10】収録された傾斜磁場と音声を示す図である。
【図11】MRI movieと高速度カメラの画像を対比して示す図である。
【図12】50フレームのうちの26〜50フレーム分のデータを示す図である。
【図13】MRIの動作原理を示す概念図である。
【図14】k空間において、観測される所得データのトラジェクトリを示す図である。
【図15】発話同期を行う手法の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[磁気共鳴画像化装置の構成および動作]
図1は、本発明に係る磁気共鳴画像化装置の一例のMRI装置1000の構成を示す機能ブロック図である。
【0038】
以下に説明するとおり、MRI装置1000では、MRI movie技術を基にして、これを高時間分解能化することが可能である。
【0039】
図1に示したMRI装置1000は、被験者10を支持するための台部12と、静磁界を生成するための静磁場コイル100と、後に説明するように被験者における観測断面(スライス)の位置およびスライス内の位置の情報を観測信号に付与するための傾斜磁場コイル102と、観測対象となる原子核に電磁波(RFパルス)を出力するRFコイル104と、観測対象となる原子核からの信号を受信するための受信コイル106と、コイル100〜104を制御し、かつ、受信コイル106で受信された信号を基に、断層画像を生成するための断層撮影制御部200とを備える。
【0040】
RFコイル104と受信コイル106とは、別々のコイルであるものとして記載しているが、同一のコイルを送信用と受信用で共用することもできる。
【0041】
なお、被験者10の近傍には、被験者の発話音声を取得するための光マイクロフォン108が設置され、MRI装置のガントリ(gantry)内には、傾斜磁場の変化を検知するためのソレノイド型コイル110が設けられている。光マイクロフォンを用いるのは、金属類を使用していないために強磁界環境においても音声をとらえることが可能なためである。
【0042】
さらに、断層撮影制御部200は、使用者からの指示等の入力を行うための入力部210と、入力部210からの指示に基づいて、たとえば、各被験者10に対する測定ごとに、RFコイル104から与える電磁場の強度および受信コイル106で検出される信号強度の調整値や測定される共鳴周波数(以下、中心周波数と呼ぶ)の値fの合わせ込みの結果(較正値)などをチューニング値として保存するためのチューニング値記憶部220とを備える。ここで、被験者10ごとに、このようなチューニングを行うのは、被験者10によって、コイル内の磁場の環境が微妙に変化するために、これを調整する必要があるからである。
【0043】
断層撮影制御部200は、さらに、上述したようなチューニング動作や測定動作の制御を行うための制御部230と、制御部230に制御されてRFコイル104に対してRFパルスを与えるためのRFパルス送信部240と、受信コイル106からの信号を増幅して検出信号を取得するためのMRI信号増幅部250と、光マイクロフォン108からの音声信号を受けて増幅するための音声信号増幅部252と、制御部230の制御によってMRI信号増幅部250からの検出信号に対応する測定データと音声信号増幅部252からの音声信号データとをデータ取得タイミングとともに記憶するデータ記憶部258と、後に説明するように、データ記憶部258に記憶された音声信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを取得するための帯域透過フィルタ254と、データ記憶部258からの測定データと帯域透過フィルタ254を通過した音声信号データとに基づいて、フーリエ変換処理を行なうことにより、観測する断面の断面画像データを再構成するための画像再構成部260と、画像再構成部260からの情報をもとに再構成された断面画像を表示するための表示部270とを備える。なお、このようにして再構成された断面画像データは、データ記憶部258に格納される。
【0044】
ここで、好ましくは、画像再構成部260における画像の再構成処理において、チューニング値記憶部220中に格納されている中心周波数の較正値等の情報を使用することにより、画質の向上を図ることが可能である。また、図1では、傾斜磁場の変化をソレノイド型コイル110により検知する構成となっているが、制御部230が傾斜磁場を制御する制御信号により、傾斜磁場が変化するタイミングを取得することとしてもよい。
【0045】
特に限定されないが、制御部230および画像再構成部260は、図示しない記憶装置に格納されたソフトウェアに基づいて動作する同一の演算プロセッサ、または、それぞれの処理に対応した個別の演算プロセッサにより実現することが可能である。
【0046】
ここで、静磁場コイル100は、より詳しくは、たとえば、4個の空芯コイルから構成され、その組み合わせで内部に均一な磁界を作り、被験者10の体内の水素原子核のスピンに配向性を与える。
【0047】
RFコイル104は、高周波を発して被験者10の体内の原子核を励起し、受信コイル106は、生じた核磁気共鳴を起因とする検出信号(エコー信号)を検知する。
【0048】
傾斜磁場コイル102は、図示しないX, Y, Zの3組の傾斜コイルを備え、Zコイルは励起時に、磁界強度をZ方向に傾斜させて共鳴面を限定するためのスライス選択傾斜磁場を生成し、Yコイルは、Z方向の磁界印加の直後に短時間の傾斜を加えて検出信号にY座標に比例した位相変調を加え(位相エンコーディング)、Xコイルは、続いてデータ採取時に傾斜を加えて、検出信号にX座標に比例した周波数変調を与える(周波数エンコーディング)。
【0049】
すなわち、静磁界にZ軸傾斜磁界を加えた状態にある被験者10に、共鳴周波数の高周波電磁界を、RFコイル104を通じて印加すると、磁界の強さが共鳴条件になっている部分の水素原子核が、選択的に励起されて共鳴し始める。共鳴条件に合致した部分(たとえば、被験者10の所定の厚さの断層)にある水素原子核が励起され、スピンがいっせいに回転する。励起パルスを止めると、受信コイル106には、今度は、回転しているスピンが放射する電磁波が信号を誘起し、しばらくの間、この信号が検出される。この信号によって、被験者10の体内の、水素原子を含んだ組織を観察する。そして、信号の発信位置を知るために、XとYの傾斜磁界を加えて信号を検知する、という構成になっている。
【0050】
制御部230は、励起信号を繰り返し与えつつ検出信号を測定し、画像再構成部260は、フーリエ変換計算により、共鳴の周波数をX座標に還元し、Y座標を復元して画像を得て、表示部270に対応する画像を表示する。
【0051】
図2は、図1に示したMRI装置1000による画像の再構成処理を説明するための概念図である。
【0052】
図2を参照して、被験者10は、所定の発話タスクの発話を行なう。このとき、データ取得のタイミングと発話のタイミングとは同期していない。MRI装置1000側では、光マイクロフォン108により取得される発話の音声を取得タイミングの情報とともにデータ記憶部258に記憶し、ソレノイドコイル110で検出される傾斜磁場からデータ取得タイミングを制御部230が受けて、MRI信号を取得タイミングの情報とともに記憶部258に記憶する。
【0053】
ここで、「取得タイミングの情報」としては、時間情報そのものであってもよいし、後に説明するように、「発話音声」と「MRI信号」とを同一の時間軸に沿って記録する媒体の異なるチャンネルに同時記録することとしてもよい。
【0054】
MRI信号の取得は、特に限定されないが、たとえば、いわゆる「グラジエントエコー法」のパルスシーケンスに従い、位相エンコードのための傾斜磁場の大きさを順次変化させつつ、1つの撮像野に対応するk空間内のデータを取得する。1つの撮像野に対応するk空間内のデータ取得が完了すると、このようなデータ取得を所定回数繰り返す。
【0055】
その後、取得された音声データに基づき、動画を構成する各フレームのタイミングにおける音声の振動の位相が一致するk空間のデータをソーティングして組合せることで、各動画のフレームのタイミングについてのk空間データを得る。このようにして得られたk空間のデータを撮像野ごとに高速フーリエ変換することで、動画の各フレームの画像データを再構成して得ることができる。
【0056】
図3は、画像再構成処理を従来の画像再構成処理と比較して説明するための概念図である。
【0057】
図3を参照して、MRI装置1000における画像再構成の処理は、対象となる振動子を連続スキャンし、k空間上のリードアウトラインを振動タイミングごとに収集し、画像化することである。これにより、発話者自身が位相を制御できない振動をする発話器官を対象とした場合でもMRI movieを撮像することができるようになる。
【0058】
図3においては、一般的なMRI静止画撮像法(a)と、MRI装置1000の手法(b)とを比較し示している。
【0059】
MRI装置1000の撮像法は具体的には以下の手順となる。
1)撮像タイミングと、そのときの振動子の位置を同時に計測、記憶する。撮像は連続スキャンとし、発話者は自身のタイミングで発話器官を一定の周波数で振動させる。撮像タイミングの記憶方法として、MRI装置1000のガントリ付近に空芯ソレノイドコイル110を設置することで傾斜磁場の計測を行う。このデータをシーケンスチャートと比較することで撮像タイミングを知ることができる。
【0060】
なお、撮像タイミングの記憶の他の方法として、制御部230の回路からRF波(RFパルス)用トリガを分岐させてこのタイミングを記憶することとしてもよい。一方、振動子(この場合は発声器官)の位置は光マイクロホンを用いて、振動により生じる音から推定を行う。
【0061】
撮像中は大きな騒音がMRI装置1000から生じるが、その騒音の周波数と振動子の周波数が重なっていなければ帯域通過フィルタ254を用いることで、振動子の基本周波数を含む音波形が検出可能である。スキャナーの騒音により振動子からの音が計測できない場合は、骨伝導型マイクロホンが有効である。
【0062】
振動子の振動が断続的でない場合は、振動区間の検出も必要となる。
2)1)で得られたデータから、RFパルス照射時の振動子の位置を求める。振動子の1周期を時間的に等分割し、画像再構成演算のために、それに対する空のk空間に対応する変数を用意する。これが、処理後の動画の各フレームに相当する。各々の空のk空間に対応する振動子の振動の位相に基づいて、このk空間に対応した生データのリードアウトラインで空のk空間を埋める。振動周波数は一定とはならないことが多く、かつRFパルス照射時に振動子の位置が常に同じになるわけではないので、これらの誤差が最小となるリードアウトラインデータを選択して用いる。
【0063】
3)振動子のそれぞれの位置(位相)ごとに作成されたk空間データについて画像の再構築を行い、各フレームのMRI画像を得る。この画像を連続再生することで、MRI movieとなる。
【0064】
図3では、連続するn個のデータでリードアウトライン(RO−line)を順に埋めて画像を再構成する一般的な手法ではモーションアーチファクトが現れるのに対して、MRI装置1000の手法ではアーチファクトはなく、振動子の形状が視認できる。
【0065】
図4は、発声器官として声帯を考えた場合に、声帯の断面形状の時間変化と音声波形と音声信号を帯域透過フィルタを通した後の信号波形とを示す図である。
【0066】
上述のとおり、MRI装置1000の騒音が存在する場合であっても、所定の透過帯域を有する帯域透過フィルタ254を用いると、音声信号のうちから、被験者10の発話音声の信号を分離することが可能である。
【0067】
被験者10の発話音声の信号の1周期が、声帯振動の1周期と対応している。したがって、振動子(この場合は、声帯)からの音声信号を記憶しておくことで、音声信号の振動の位相から、振動子の振動の位相を特定することができる。言い換えると、音声信号の振動の位相が同一であるタイミングで取得されたk空間のデータは、振動子の同じ振動位相における断面画像に対応しているといえる。
【0068】
図5は、MRI装置1000のパルスシーケンスを示す図である。また、図6は、MRI装置1000の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0069】
図5および図6を参照して、処理が開始されると、被験者10ごとに装置の初期チューニング処理が行われ、制御部230は、RFコイル104から与える電磁場の強度および受信コイル106で検出される信号強度の調整値や測定される中心波数値fの合わせ込みの結果(較正値)などをチューニング値として、チューニング値記憶部220に保存する(ステップS100)。
【0070】
続いて、被験者10に対する測定が開始されると、制御部230は、傾斜磁場コイル102を制御しつつ、RFパルス送信部240からの電磁波をRFコイル104から出力させるとともに、スライス選択傾斜磁場GSSを印加する(ステップS102)。
【0071】
続いて、制御部230は、位相エンコード用の傾斜磁場の大きさを設定し(ステップS104)、傾斜磁場コイル102を制御して、位相エンコード用の傾斜磁場GPEを印加する(ステップS106)。一方、並行して、ソレノイド型コイル110により傾斜磁場変動の受信処理が実行される(ステップS105)。
【0072】
制御部230は、周波数エンコード用(読取用)の傾斜磁場GROを印加するとともに(ステップS108)、被験者10からのMRI信号を、受信コイル106により受信し、信号増幅部250により増幅させて(ステップS110)、取得タイミング情報とともにデータ記憶部258に記憶させる。
【0073】
一方、制御部230は、光マイクロフォン108からの信号を音声信号増幅部252で増幅させ、帯域透過フィルタ254を透過した音声信号を取得タイミング情報とともにデータ記憶部258に記憶させる。
【0074】
続いて、処理が所定回数終了していない場合は(ステップS114)、処理はステップS102に復帰する。一方で、処理が所定回数終了している場合は(ステップS114)、続いて、画像再構成部260は、データ取得のタイミング情報に基づいて、動画の各フレームについて、その時点での振動子の同一の位相に対応するk空間内のデータをソートして組合せる(ステップS118)。
【0075】
画像再構成部260は、フーリエ変換処理を利用して、画像を再構成する(ステップS120)。
【0076】
続いて、画像再構成部260は、再構成した断面画像を表示部270に表示する(ステップS122)。
【0077】
測定が終了していなければ(ステップS124)、さらに、処理はステップ102に復帰して、測定が続行される。一方、処理が終了していると判断されれば、処理は終了する。
[実証実験]
(振動子付ファントム)
以上説明したようなMRI装置1000の画像再構成手法の有効性を確認するために、空気圧により振動する振動子付のファントムでMR撮像を行った。
【0078】
図7は、ファントムを構成する部品を説明する図である。
また、図8は、ファントムの外観と断面図を示す図である。
【0079】
このファントムは2枚の低発泡塩化ビニル板(図7(a)の右端と左端)と1枚の熱可塑性エラストーマ(図7(a)中央)から構成される。なお、MRI画像上では低発泡塩化ビニル板は空気と輝度値が同じであるため黒く写り視認できないが、熱可塑性エラストーマは白く写る。
【0080】
図7(b)は、各部品の寸法を示す。それぞれ部品の厚みは5mmであり、一辺が50mmの略正方形である。低発泡塩化ビニル板のうち一枚は中央に10mm角の穴があけられており、そこから空気が供給される。もう一枚の低発泡塩化ビニル板は30mm×20mmの切り欠きが設けられている。ファントムの組み立て後の外観は、図8(a)のようになる。
【0081】
図8(b)に示すように、この2枚の板で熱可塑性エラストーマを挟み、ノズルより空気を供給することで熱可塑性エラストーマが振動する。
【0082】
振動子の位置を計測するためには、光マイクロホン108を使用する。静かな部屋で振動子を振動させて音の収録を行い振動周波数を分析したところ、112.4Hzであることが確認された。振動子の音は光マイクロホン108を用いてサンプリング周波数44.1kHz、量子化数16bitでステレオ音声右側に収録した。
【0083】
MRI装置1000の傾斜磁場の変化を計測するために、ガントリ入り口に半径50mmの空芯ソレノイドコイル110を設置した。このコイルからの出力は光マイクロホン108のステレオ音声左側に同時収録した。
【0084】
使用した撮像パラメータは、以下のとおりである。
1)シーケンス : 2D FLASH
2)FOV(撮像領域) : 128mm×128mm
3)マトリックス : 128×128
4)TR : 4.9ms (繰返し時間)
5)TE : 1.93ms (エコー時間)
6)フリップ角 : 10°
7)バンド幅 : 735Hz/pixel
8)スライス厚 : 4mm
9)繰返し回数 : 512
TEが最小で撮像ノイズの主要成分が振動子の振動周波数と異なるように設定した。
【0085】
撮像面は、図8(b)のように、振動子はMR撮像時の位相方向に対して20度傾けられている。これはMRI画像上にモーションアーチファクトが出る場合はMRI画像の位相方向に現れるため、本実験の場合は振動子自体に重なってしまう。これを避ける目的で、位相方向と平行にならないように角度をつけている。
【0086】
(収録データの分析とk空間の並び替え)
収録された音声データから、RFパルス照射時の振動子の位相を計測する。光マイクにより収録された音はMRI装置1000の雑音が混入しているため、スライス励起時における振動子の位相を直接決定することができない。
【0087】
図9は、MRI装置1000から発生するノイズと、振動子から生じる音のスペクトログラムを示す図である。この図から、ファントムの振動子の基本周波数はスキャナーの振動ノイズと重なっていないことが分かる。よって、振動子が生じる音に対して帯域通過型フィルタをかけることで、振動子の位置を推定できる。帯域透過フィルタとしては、振動子の基本周波数を含み、MRI装置1000の騒音成分を含まないように設定したカットオフ周波数100Hzと150Hzの帯域通過型フィルタを適用して振動子の位置(位相)を決定した。音響データに対して本フィルタを一度前方からフィルタリングした後、さらに後方からフィルタリングをしている。これによりフィルタの位相特性はキャンセルされ、収録波形の時間情報は保持される。
【0088】
図10は、収録された傾斜磁場と音声を示す図である。
図10の上図は、MRI装置1000のガントリ横に設置された空芯ソレノイドコイルから収録された傾斜磁場であり、下図は光マイクロホンで収録された音声波形である。
【0089】
上図では、傾斜磁場として、スライス選択傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、読取傾斜磁場が検出されている。さらに、クラッシャーパルスも検出されている。
【0090】
下図で、破線は収録されたもとのデータであり、スキャナーの音響ノイズを含んでいる。実線は100Hz−150Hzの帯域通過型フィルタによる処理後の波形である。
【0091】
ガントリ中に設置した空芯ソレノイドコイルの信号から、傾斜磁場の変化の様子を確認することができる。このデータの中の一番最初のピークを基準として、撮像周期TRの正確な検出を行い、これらの時間をk空間のリードアウトラインの並べ替えのための基準とした。
【0092】
MRI装置1000の手法を用いて撮像を行い、MRI movieの再構成を行った。スキャンにより得られた生データからk空間のリードアウトラインを収集した。このk空間のリードアウトラインのうち、特に限定されないが、たとえば、ファントムの基本周波数が112Hzに対して±10%以内の誤差で振動している場合で、かつ動画のフレーム中心に対して±20%以内の誤差のリードアウトラインを動画再構成に使用した。
【0093】
また、検証のためにMRI movie撮像後に高速度カメラによる撮影も行った。高速度カメラのフレームレートは1200FPSに設定した。画像は336×96 pixels、フルカラー24 bitで撮影を行った。高速カメラのフレームレートに合わせるために、MRI movieを振動子1周期辺り11フレームとなるように作成した。
【0094】
図11は、MRI movieと高速度カメラの画像を対比して示す図である。
このような撮像により、MRI movieの振動子の動きは実際の振動子の動きをよく再現していることが分かった。
【0095】
上述した測定では振動子1周期あたりのフレーム数が最大57フレームとなるMRI movieが得られた。この場合のk空間のリードアウトラインはファントムの基本周波数112Hzに対する許容誤差は±10%の場合のものを使用した。この場合、1フレーム当たり0.16msの時間幅で運動を捉えていることになる。フレームレートは約6834fps (frame per second)となり、時間分解能が非常に高いといえる。
【0096】
[歯茎ふるえ音のMRI movie]
MRI装置1000の手法を用いた歯茎ふるえ音のMRI movieの作成も行った。被験者は男性1名である。MRI撮像パラメータ、および音声、傾斜磁場の収録方法は、ファントムの場合と同じである。ただし、連続スキャンは100測定(約1分) とし、1分間の休憩を挟みこれを10回繰り返した。結果として1000測定分のデータが得られたことになる。
【0097】
歯茎ふるえ音の基本周波数の平均は25.8Hzであった。k空間のリードアウトラインは、たとえば、この平均基本周波数に対し±15%の誤差範囲内のものを採用し、動画の各フレームに対して±100%の誤差範囲で並べ替えを行ったところ、最大で歯茎ふるえ音一周期あたり50フレーム分になるMRI movieを得ることができた。
【0098】
図12は、このようにして得られた50フレームのうちの26〜50フレーム分のデータを示す図である。舌が硬口蓋に接触しているのは33フレーム目から45フレーム目の間であった。これは歯茎ふるえ音一周期38.8msのうち閉鎖時間は10.1msとなり、全体の26%に相当することがわかる。
【0099】
以上説明したとおり、MRI装置1000の画像再構成の手法によれば、発話期間のうち、声帯や歯茎ふるえ音のような高速で振動する定常振動子を撮像するための超高時間分解能のMRI movie撮像法が実現できる。
【0100】
したがって、音声の振動数程度に高速に振動する振動子の断面を動画として画像化することが可能となる。
【0101】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
10 被験者、12 台部、100 静磁場コイル、102 傾斜磁場コイル、104,106 RFコイル、200 断層撮影制御部、210 入力部、220 チューニング値記憶部、230 制御部、240 RFパルス送信部、250 MRI信号増幅部、252 音声信号増幅部、254 帯域透過フィルタ、258 データ記憶部、260 画像再構成部、270 表示部、1000 MRI装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象の振動子からの核磁気共鳴に起因する検出信号を検知して、前記被測定対象の断層動画像を生成するための磁気共鳴画像化装置であって、
前記被測定対象に静磁場を印加するための静磁場印加手段と、
前記被測定対象の選択された断面内において、前記検出信号を発する原子核の位置情報を前記検出信号が有するように変調した磁場を前記被測定対象に印加するための傾斜磁場印加手段と、
前記被測定対象に対して電磁波を印加し、前記被測定対象からの前記検出信号を検知するための電磁波送受信手段と、
前記被測定対象の前記振動子の周期的な運動の位相と1対1に対応した前記振動子からの出力信号を記憶する記憶手段と、
前記電磁波を前記電磁波送受信手段に与え、前記検出信号を受けて時系列のフレームとして前記断層動画像を生成するための断層撮影制御手段とを備え、
前記断層撮影制御手段は、
前記振動子の運動とは非同期に、断面画像を再構成するためのデータをk空間のリードアウト軸に沿う行ごとに複数回にわたって取得するデータ取得手段と、
前記複数回の測定中の断面画像を再構成する動画像の各フレームのタイミングで、前記出力信号に基づいて、前記振動子の運動の同一の位相に相当する行を選択することで、当該位相の画像を再構成する画像再構成手段とを含む、磁気共鳴画像化装置。
【請求項2】
前記リードアウト軸に沿う行ごとの測定タイミングを特定するための情報を取得するタイミング検出手段をさらに備え、
前記記憶手段は、前記データ取得手段は、前記測定タイミングを示す情報とともに、前記断面画像を再構成するためのデータを記憶する、請求項1記載の磁気共鳴画像化装置。
【請求項3】
前記出力信号は、前記振動子からの音声信号である、請求項1または2記載の磁気共鳴画像化装置。
【請求項4】
前記音声信号を前記磁気共鳴画像化装置からの騒音と分離するための帯域透過フィルタをさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気共鳴画像化装置。
【請求項5】
被測定対象の振動子からの核磁気共鳴に起因する検出信号を検知して、前記被測定対象の断層動画像を生成するための磁気共鳴画像化方法であって、
前記被測定対象に静磁場を印加し、前記被測定対象の選択された断面内において、前記検出信号を発する原子核の位置情報を前記検出信号が有するように変調した磁場を前記被測定対象に印加して、前記被測定対象に対して電磁波を印加することにより、前記被測定対象からの前記検出信号を検知するステップと、
前記被測定対象の前記振動子の周期的な運動の位相と1対1に対応した前記振動子からの出力信号を記憶するステップと、
前記電磁波を前記被測定対象に与え、前記検出信号を受けて時系列のフレームとして前記断層動画像を生成するステップとを備え、
前記断層動画像を生成するステップは、
前記振動子の運動とは非同期に、断面画像を再構成するためのデータをk空間のリードアウト軸に沿う行ごとに複数回にわたって取得するステップと、
前記複数回の測定中の断面画像を再構成する動画像の各フレームのタイミングで、前記出力信号に基づいて、前記振動子の運動の同一の位相に相当する行を選択することで、当該位相の画像を再構成するステップとを含む、磁気共鳴画像化方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図14】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−184(P2011−184A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143510(P2009−143510)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】