説明

磁気共鳴装置およびプログラム

【課題】送信コイルのチャンネル数が増加しても、短時間でシミングの計算を行うことを提供する。
【解決手段】送信コイルに供給される信号のパターンを変更し、信号のパターンごとに送信磁場分布B12π/8〜B116π/8を求める。そして、8個の送信磁場分布B12π/8〜B116π/8の中から、磁場の均一性が最も高い送信磁場分布B12π/8と、送信磁場分布B12π/8との相関が最も弱い送信磁場分布B110π/8とを選択する。次に、送信磁場分布B12π/8と送信磁場分布B110π/8との合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)を求め、合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)が最も均一になるときの振幅ampおよび位相θの組合せを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場の不均一性を低減するための磁気共鳴装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴装置では、被検体の電気的特性によって、送信磁場分布が不均一になることが知られている。そこで、送信磁場分布を均一化するためのRFシミングが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−029640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RFシミングの一つとして、送信コイルの各給電点に供給する信号の位相および振幅を最適化する静的RFシミング(static RF shimming)が知られている。この方法では、送信コイルのチャンネル数が少ない場合には、短時間で最適化を行うことができるが、送信コイルのチャンネル数が多くなるにつれて、最適化に必要な計算時間が増大するという問題がある。近年、送信コイルの多チャンネル化が進みつつあるので、送信コイルのチャンネル数が増加しても、短時間で最適化できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、nチャンネルの送信コイルを有する磁気共鳴装置であって、
前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号のパターンを変更したときの前記送信コイルの送信磁場分布を、前記信号のパターンごとに作成する送信磁場分布作成手段と、
前記送信磁場分布作成手段により得られた複数の送信磁場分布の中から、送信磁場の均一性が最も高い第1の送信磁場分布と、前記第1の送信磁場分布との相関が最も弱い第2の送信磁場分布とを選択する送信磁場分布選択手段と、
前記第1の送信磁場分布と前記第2の送信磁場分布とに基づいて、前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号を算出する算出手段と、
を有する磁気共鳴装置である。
【0006】
本発明の第2の態様は、nチャンネルの送信コイルを有する磁気共鳴装置のプログラムであって、
前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号のパターンを変更したときの前記送信コイルの送信磁場分布を、前記信号のパターンごとに作成する送信磁場分布作成処理と、
前記送信磁場分布作成処理により得られた複数の送信磁場分布の中から、送信磁場の均一性が最も高い第1の送信磁場分布と、前記第1の送信磁場分布との相関が最も弱い第2の送信磁場分布とを選択する送信磁場分布選択処理と、
前記第1の送信磁場分布と前記第2の送信磁場分布とに基づいて、前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号を算出する算出処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
送信磁場分布作成手段により得られた複数の送信磁場分布の中から、送信磁場の均一性が最も高い第1の送信磁場分布と、前記第1の送信磁場分布との相関が最も弱い第2の送信磁場分布とを選択し、前記第1の送信磁場分布と前記第2の送信磁場分布とに基づいて、前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号を算出している。したがって、信号を算出するために必要な変数の数を少なくすることができ、前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号を算出するために必要な計算時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
【図2】送信コイル24の構造の説明図である。
【図3】RFシミングの手順を示すフローである。
【図4】ステップST2で実行されるスキャンを示す図である。
【図5】各スキャンを実行するときに送信コイル24に供給される信号のパターンを示す図である。
【図6】スキャンSCを実行したときの送信磁場分布B1Δθの求め方の説明図である。
【図7】スキャンSCを実行したときの送信磁場分布B110π/8を示す図である。
【図8】スキャンSC〜SCごとに求められた送信磁場分布を示す図である。
【図9】相関を示す図である。
【図10】チャンネルCHの信号の算出方法の説明図である。
【図11】第2の形態におけるRFシミングの手順を示すフローである。
【図12】ステップST11で実行されるスキャンを示す図である。
【図13】各スキャンを実行するときに送信コイル24の各チャンネルに供給される信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための形態を説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0010】
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0011】
マグネット2は、被検体12が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。
【0012】
図2は、送信コイル24の構造の説明図である。
送信コイル24は、nチャンネルのコイルである。第1の形態では、n=8、つまり、送信コイル24は8チャンネルCH〜CHのコイルである。尚、nの値は、8に限定されることはなく、8より小さくてもよく、大きくてもよい。各チャンネルCH〜CHは、例えば、マイクロストリップコイルである。各チャンネルCH〜CHには、後述する送信器6から、RFパルスを送信するための信号が供給される。
【0013】
図1に戻って説明を続ける。
テーブル3は、被検体12を支持するためのクレードル3aを有している。クレードル3aが移動することによって、被検体12がボア21に搬入される。
受信コイル4は被検体12の頭部に取り付けられている。
【0014】
MR装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0015】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、パルスシーケンスの情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0016】
送信器6は、送信コイル24の各チャンネルCH〜CHに信号を供給する。
勾配磁場電源7は勾配コイル23に信号を供給する。
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、中央処理装置9に出力する。
【0017】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、送信磁場分布作成手段91、送信磁場分布選択手段92、算出手段93などを有している。
【0018】
送信磁場分布作成手段91が、スキャンによって取得されたデータに基づいて、送信磁場分布B1Δθ(図8参照)を作成する。
【0019】
送信磁場分布選択手段92は、送信磁場分布作成手段91により作成された送信磁場分布B12π/8〜B116π/8の中から、磁場の均一性が最も高い第1の送信磁場分布と、第1の送信磁場分布との相関が最も弱い第2の送信磁場分布とを選択する。
【0020】
算出手段93は、第1の送信磁場分布と第2の送信磁場分布とに基づいて、送信コイル24の各チャンネルCH〜CHに供給する信号を算出する。
【0021】
中央処理装置9は、送信磁場分布作成手段91、送信磁場分布選択手段92、算出手段93の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0022】
操作部10は、オペレータにより操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0023】
次に、第1の形態において、送信コイルの送信磁場分布を均一にするためのRFシミングを行う手順について説明する。
【0024】
図3は、RFシミングの手順を示すフローである。
ステップST1では、図1に示すように、被検体12をボア21に搬入する。被検体12をボア21に搬入したら、ステップST2に進む。
【0025】
ステップST2では、送信コイル24の送信磁場分布B1Δθを求める。第1の形態では、送信コイル24の各チャンネルCH〜CHに供給する信号のパターンを変更しながらスキャンを行い、信号のパターンごとに、送信コイル24の送信磁場分布B1Δθを求める。以下に、ステップST2で実行されるスキャンについて説明する。
【0026】
図4は、ステップST2で実行されるスキャンを示す図、図5は、各スキャンを実行するときに送信コイル24に供給される信号のパターンを示す図である。
【0027】
ステップST2では、図4に示すように、スキャンSC〜SCが実行される。各スキャンSC〜SCを実行する場合、各チャンネルCH〜CHには、図5に示すような信号が供給される。具体的には、以下の通りである。
【0028】
チャンネルCH:I=A・exp(iθ
チャンネルCH:IΔθ=A・exp{i(θ+Δθ)}
チャンネルCH:I2Δθ=A・exp{i(θ+2・Δθ)}
チャンネルCH:I3Δθ=A・exp{i(θ+3・Δθ)}
チャンネルCH:I4Δθ=A・exp{i(θ+4・Δθ)}
チャンネルCH:I5Δθ=A・exp{i(θ+5・Δθ)}
チャンネルCH:I6Δθ=A・exp{i(θ+6・Δθ)}
チャンネルCH:I7Δθ=A・exp{i(θ+7・Δθ)}

ここで、A:振幅
θ+k・Δθ(k=0〜7):位相
ただし、Δθ=2π・(M/8) (M=1〜8)
【0029】
例えば、スキャンSCを実行する場合、図5に示すように、M=1、つまり、Δθ=2π・(1/8)=2π/8となる。したがって、スキャンSCを実行する場合、各チャンネルCH〜CHに供給される信号I〜I7Δθは、Δθに2π/8を代入して、以下のようになる。
【0030】
チャンネルCH:I=A・exp(iθ
チャンネルCH:I2π/8=A・exp{i(θ+2π/8)}
チャンネルCH:I4π/8=A・exp{i(θ+4π/8)}
チャンネルCH:I6π/8=A・exp{i(θ+6π/8)}
チャンネルCH:I8π/8=A・exp{i(θ+8π/8)}
チャンネルCH:I10π/8=A・exp{i(θ+10π/8)}
チャンネルCH:I12π/8=A・exp{i(θ+12π/8)}
チャンネルCH:I14π/8=A・exp{i(θ+14π/8)}
【0031】
また、スキャンSCを実行する場合、M=2、つまり、Δθ=2π・(2/8)=4π/8となる。したがって、スキャンSCを実行する場合、各チャンネルCH〜CHに供給される信号I〜I7Δθは、Δθに4π/8を代入して、以下のようになる。
【0032】
チャンネルCH:I=A・exp(iθ
チャンネルCH:I4π/8=A・exp{i(θ+4π/8)}
チャンネルCH:I8π/8=A・exp{i(θ+8π/8)}
チャンネルCH:I12π/8=A・exp{i(θ+12π/8)}
チャンネルCH:I16π/8=A・exp{i(θ+16π/8)}
チャンネルCH:I20π/8=A・exp{i(θ+20π/8)}
チャンネルCH:I24π/8=A・exp{i(θ+24π/8)}
チャンネルCH:I28π/8=A・exp{i(θ+28π/8)}
【0033】
以下同様に、スキャンSC〜SCを実行するときのΔθは、図5に示すように、それぞれ6π/8〜16π/8となる。したがって、Δθの値を変更することによって、チャンネルCH〜CHに供給される信号I〜I7Δθのパターンを変更することができる。このように、チャンネルCH〜CHに供給される信号I〜I7Δθのパターンを変更しながら、スキャンSC〜SCを実行し、送信磁場分布B1Δθを求める。
【0034】
図6は、スキャンSCを実行したときの送信磁場分布B1Δθの求め方の説明図である。
スキャンSCでは、チャンネルCH〜CHに、Δθ=2π/8の信号I〜I14π/8が供給される。スキャンSCによって取得されたデータは、中央処理装置9に伝送される。中央処理装置9では、送信磁場分布作成手段91(図1参照)が、スキャンSCによって取得されたデータに基づいて、チャンネルCH〜CHに信号I〜I14π/8が供給されたときの送信磁場分布B1Δθ(=B12π/8)を作成する。したがって、スキャンSCを実行することによって、送信磁場分布B12π/8を作成することができる。
【0035】
以下同様に、スキャンSC〜SCを実行し、送信磁場分布を求める。例えば、図7には、スキャンSCを実行したときの送信磁場分布B110π/8が示されている。スキャンSCでは、チャンネルCH〜CHに、Δθ=10π/8の信号I〜I70π/8が供給される。スキャンSCによって取得されたデータは、中央処理装置9に伝送される。中央処理装置9では、送信磁場分布作成手段91が、スキャンSCによって取得されたデータに基づいて、チャンネルCH〜CHに信号I〜I70π/8が供給されたときの送信磁場分布B1Δθ(=B110π/8)を作成する。したがって、スキャンSCを実行することによって、送信磁場分布B110π/8を作成することができる。
【0036】
図8に、スキャンSC〜SCごとに求められた送信磁場分布B1Δθを、符号「B12π/8」〜「B116π/8」で示す。送信磁場分布B12π/8〜B116π/8を求めたら、ステップST3に進む。
【0037】
ステップST3では、送信磁場分布選択手段92(図1参照)が、ステップST2で求められた送信磁場分布B12π/8〜B116π/8の中から、磁場の均一性が最も高い送信磁場分布を選択する。磁場の均一性が最も高い送信磁場分布を求める方法の一例としては、送信磁場分布B12π/8〜B116π/8の各々について、ピクセル間の信号強度のばらつきを算出し、算出した信号強度のばらつきを比較する方法がある。第1の形態では、磁場の均一性が最も高い送信磁場分布として、送信磁場分布B12π/8が選択されたとする。送信磁場分布B12π/8を選択したら、ステップST4に進む。
【0038】
ステップST4では、送信磁場分布選択手段92が、送信磁場分布B12π/8〜B116π/8の中から、ステップST3で選択された送信磁場分布B12π/8との相関が最も弱い送信磁場分布を選択する。以下に、送信磁場分布B12π/8との相関が最も弱い送信磁場分布を選択する方法について説明する。
【0039】
送信磁場分布選択手段92は、先ず、送信磁場分布B12π/8と、その他の送信磁場分布B14π/8〜B116π/8の各々との相関を計算する。相関は、一般的な統計的手法によって算出することができる。図9に、算出した相関を概略的に示す。図9では、算出した相関を記号「C」〜「C」で示してある。送信磁場分布選択手段92は、算出したC〜Cの値を比較し、相関C〜Cの中から、最小値となる相関を特定する。ここでは、相関Cが最小値になったとする。したがって、送信磁場分布B12π/8との相関が最も弱い送信磁場分布は、送信磁場分布B110π/8となる。送信磁場分布B110π/8を選択したら、ステップST5に進む。
【0040】
ステップST5では、算出手段93(図1参照)が、ステップST3で選択された送信磁場分布B12π/8と、ステップST4で選択された送信磁場分布B110π/8とに基づいて、均一性の高い送信磁場分布を実現するための各チャンネルの信号を算出する。ステップST5は、ステップST51〜ステップST53を有している。以下に、各ステップST51〜ST53について説明する。
【0041】
ステップST51では、算出手段93は、ステップST3で選択された送信磁場分布B12π/8と、ステップST4で選択された送信磁場分布B110π/8とを合成し、合成送信磁場分布を作成する。合成送信磁場分布は、以下の式で表される。
B1comb(amp,θ)
=B12π/8+amp・exp(iθ)・B110π/8 ・・・(1)

ここで、B1comb(amp,θ):合成送信磁場分布
amp:振幅
θ:位相
尚、振幅ampおよび位相θは、変数である。
【0042】
合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)を作成したら、ステップST52に進む。
ステップST52では、算出手段93は、式(1)に基づいて、合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)が最も均一になるときの振幅ampおよび位相θの組合せを求める。この組合せは、例えば最適化手法によって求めることができる。ここでは、amp=ampuni、θ=θuniと算出されたとする。振幅ampおよび位相θの組合せを算出したら、ステップST53に進む。
【0043】
ステップST53では、算出手段93は、最も均一性の高い合成送信磁場分布B1comb(ampuni,θuni)を実現するために各チャンネルCH〜CHに供給する信号J〜Jを算出する。以下に、信号J〜Jの求め方について説明する。
【0044】
図10は、チャンネルCHの信号の算出方法の説明図である。
図10(a)は、ステップST3で選択された送信磁場分布B12π/8(図6参照)が得られるときの各チャンネルCH〜CHの信号I〜I14π/8を示す。また、図10(b)は、ステップST4で選択された送信磁場分布B110π/8(図7参照)が得られるときの各チャンネルCH〜CHの信号I〜I70π/8を示す。
【0045】
先ず、図10(b)に示されている信号I〜I70π/8に対して、ステップST52で算出された振幅ampuniおよび位相θuniを付加する。具体的には、信号I〜I70π/8の振幅Aにampuniを乗算し、信号I〜I70π/8の位相にθuniを加算する。図10(c)に、信号I〜I70π/8に振幅ampuniおよび位相θuniを付加することにより得られた信号を、符号「I′」〜「I70π/8′」で示す。信号I′〜I70π/8′は、具体的には、以下の式で表される。
【0046】
′=A・ampuni・exp{i(θ+θuni)}
10π/8′=A・ampuni・exp{i(θ+10π/8+θuni)}
20π/8′=A・ampuni・exp{i(θ+20π/8+θuni)}
30π/8′=A・ampuni・exp{i(θ+30π/8+θuni)}
40π/8′=A・ampuni・exp{i(θ+40π/8+θuni)}
50π/8′=A・ampuni・exp{i(θ+50π/8+θuni)}
60π/8′=A・ampuni・exp{i(θ+60π/8+θuni)}
70π/8′=A・ampuni・exp{i(θ+70π/8+θuni)}
【0047】
次に、図10(a)の信号I〜I14π/8と、図10(c)の信号I′〜I70π/8′とを、各チャンネルごとに加算する。図10(d)に、加算により得られた各チャンネルの信号J〜Jを示す。このようにして、最も均一性の高い合成送信磁場分布B1comb(ampuni,θuni)を実現するための各チャンネルの信号J〜Jを算出することができる。信号J〜Jを算出したら、RFシミングのフローを終了する。
【0048】
第1の形態では、送信コイル24に供給される信号のパターンを変更し、信号のパターンごとに送信磁場分布B12π/8〜B116π/8を求めている(ステップST2)。そして、8個の送信磁場分布B12π/8〜B116π/8の中から、磁場の均一性が最も高い送信磁場分布B12π/8を選択している(ステップST3)。ただし、被検体12の電気的特性などが原因で、送信磁場分布B12π/8の中にも、感度の低い部分と、感度の高い部分が現れるので、このような感度のばらつきは、できるだけ小さくすることが望ましい。そこで、第1の形態では、送信磁場分布B12π/8だけでなく、送信磁場分布B12π/8との相関が最も弱い送信磁場分布B110π/8も求め(ステップST4)、送信磁場分布B12π/8と送信磁場分布B110π/8との合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)を求めている(ステップST51)。送信磁場分布B110π/8は、送信磁場分布B12π/8との相関が最も弱いので、送信磁場分布B110π/8を用いることによって、送信磁場分布B12π/8の中の感度の低い部分を、感度が高くなるように補正することができ、更に、送信磁場分布B12π/8の中の感度の高い部分を、感度が低くなるように補正することができる。したがって、合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)が最も均一になるときの振幅ampおよび位相θの組合せを決定することによって、最も均一性の高い合成送信磁場分布B1comb(ampuni,θuni)を実現するための信号J〜Jを算出することができる。
【0049】
また、第1の形態では、ステップST2で求めた8個の送信磁場分布B12π/8〜B116π/8の中から、2つの送信磁場分布B12π/8およびB110π/8だけを選択して、合成送信磁場分布B1comb(ampuni,θuni)の式を決定している。したがって、8個の送信磁場分布B12π/8〜B116π/8を全て用いなくても、合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)の式を決定することができるので、合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)の式に必要な変数の数を少なくすることができる。第1の形態では、合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)の式に必要な変数は2つ(振幅ampおよび位相θ)だけで済む。したがって、送信コイル24に供給する信号J〜Jを決定するために必要な計算時間を短縮することができる。
【0050】
尚、第1の形態では、ステップST2において、チャンネルCH〜CHに供給される信号の位相を変化させることによって、チャンネルCH〜CHに供給される信号のパターンを変化させている。しかし、振幅Aを変化させることによって、チャンネルCH〜CHに供給される信号のパターンを変化させてもよい。また、振幅と位相の両方を変化させて、チャンネルCH〜CHに供給される信号のパターンを変化させてもよい。
【0051】
また、第1の形態では、マグネット2に内蔵された送信コイル24のシミングを行う場合について説明されている。しかし、本発明は、マグネット2とは別に備えられた送信コイル(例えば、人体の特定の部位の撮影に特化した専用コイル)のシミングを行う場合にも適用することができる。
【0052】
(2)第2の形態
第1の形態は、送信磁場分布B1Δθ(図8参照)を実測により求めている。しかし、送信磁場分布B1Δθを計算により求めてもよい。第2の形態では、送信磁場分布B1Δθを計算により求めてRFシミングを行う例について説明する。
【0053】
図11は、第2の形態におけるRFシミングの手順を示すフローである。
ステップST1では、図1に示すように、被検体12をボア21に搬入する。被検体12をボア21に搬入したら、ステップST11に進む。
【0054】
ステップST11では、送信コイル24の各チャンネルごとに送信磁場分布を求める。
図12は、ステップST11で実行されるスキャンを示す図、図13は、各スキャンを実行するときに送信コイル24の各チャンネルに供給される信号を示す図である。
【0055】
ステップST11では、図13に示すように、スキャンSC′〜SC′が実行される。各スキャンSC′〜SC′を実行する場合、各チャンネルCH〜CHには、図13に示すような信号が供給される。
【0056】
例えば、スキャンSC′を実行する場合、図13(a)に示すように、チャンネルCHにのみ信号Iが供給される。スキャンSC′によって取得されたデータは、中央処理装置9に伝送される。中央処理装置9では、送信磁場分布作成手段91(図1参照)が、スキャンSC′によって取得されたデータに基づいて、チャンネルCHの送信磁場分布B1を作成する。したがって、スキャンSC′を実行することによって、チャンネルCHによる送信磁場分布B1を作成することができる。
【0057】
また、スキャンSC′を実行する場合、図13(b)に示すように、チャンネルCHにのみ信号Iが供給される。スキャンSC′によって取得されたデータは、中央処理装置9に伝送される。中央処理装置9では、送信磁場分布作成手段91が、スキャンSC′によって取得されたデータに基づいて、チャンネルCHの送信磁場分布B1を作成する。したがって、スキャンSC′を実行することによって、チャンネルCHによる送信磁場分布B1を作成することができる。
【0058】
以下同様に、スキャンSC′〜SC′を実行する場合、図14(c)〜(h)に示すように、各チャンネルCH〜CHにのみ信号Iを供給することにより、チャンネルCH〜CHの送信磁場分布B1〜B1を求めることができる。したがって、スキャンSC′〜SC′を実行することによって、チャンネルCH〜CHごとに、送信磁場分布B1〜B1を求めることができる。送信磁場分布1〜B1を求めた後、ステップST2に進む。
【0059】
ステップST2では、送信磁場分布作成手段91が、ステップST11で求めたチャンネルCH〜CHごとの送信磁場分布B1〜B1に基づいて、送信コイル24に信号I〜I7Δθを供給したときに得られる送信磁場分布B1Δθ(図8参照)を算出する。送信磁場分布B1Δθは、例えば以下の式を用いて算出することができる。
【0060】
【数1】


送信磁場分布B1(n=1〜8)はステップST11で求められているので、求めた送信磁場分布B1を上記の式に代入することによって、送信磁場分布B1Δθ(B12π/8〜B116π/8)を算出することができる。送信磁場分布B1Δθを算出したら、ステップST3に進む。
ステップST3〜ST5は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0061】
第2の形態のように、送信磁場分布B1Δθを計算により求めても、最も均一性の高い合成送信磁場分布B1comb(ampuni,θuni)を実現するための信号J〜Jを算出することができる。
【0062】
また、計算により8個の送信磁場分布B12π/8〜B116π/8を算出した後は、第1の形態と同様に、2つの送信磁場分布B12π/8およびB110π/8だけを選択して、合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)の式を決定している。したがって、合成送信磁場分布B1comb(amp,θ)の式に必要な変数は2つ(振幅ampおよび位相θ)だけで済み、送信コイル24に供給する信号J〜Jを決定するために必要な計算時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0063】
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
91 送信磁場分布作成手段
92 送信磁場分布選択手段
93 算出手段
100 MR装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
nチャンネルの送信コイルを有する磁気共鳴装置であって、
前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号のパターンを変更したときの前記送信コイルの送信磁場分布を、前記信号のパターンごとに作成する送信磁場分布作成手段と、
前記送信磁場分布作成手段により得られた複数の送信磁場分布の中から、送信磁場の均一性が最も高い第1の送信磁場分布と、前記第1の送信磁場分布との相関が最も弱い第2の送信磁場分布とを選択する送信磁場分布選択手段と、
前記第1の送信磁場分布と前記第2の送信磁場分布とに基づいて、前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号を算出する算出手段と、
を有する磁気共鳴装置。
【請求項2】
前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号のパターンを変更し、前記被検体をスキャンするスキャン手段を有し、
前記送信磁場分布作成手段は、前記スキャンにより得られたデータに基づいて、前記信号のパターンごとに、前記送信磁場分布を作成する、請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項3】
前記スキャン手段は、前記送信コイルに信号を供給する送信器を有し、
前記送信器は、前記信号の位相を変更することによって、前記信号のパターンを変更する、請求項2に記載の磁気共鳴装置。
【請求項4】
前記位相は、以下の式で表される、請求項3に記載の磁気共鳴装置。
θ=θ+k・Δθ (k=0〜n−1)
ただし、Δθ=2π・(M/8) (M=1〜n)
【請求項5】
前記スキャン手段は、前記送信コイルに信号を供給する送信器を有し、
前記送信器は、前記信号の振幅を変更することによって、前記信号のパターンを変更する、請求項2に記載の磁気共鳴装置。
【請求項6】
前記スキャン手段は、前記送信コイルに信号を供給する送信器を有し、
前記送信器は、前記信号の位相および振幅を変更することによって、前記信号のパターンを変更する、請求項2に記載の磁気共鳴装置。
【請求項7】
前記送信磁場作成手段は、
前記送信コイルの各チャンネルごとに送信磁場分布を作成し、前記各チャンネルごとに作成した前記送信磁場分布に基づいて、前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号のパターンを変更したときの前記送信コイルの送信磁場分布を作成する、請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項8】
前記送信コイルの各チャンネルごとの送信磁場分布のデータを取得するためのスキャンを実行するスキャン手段を有する、請求項7に記載の磁気共鳴装置。
【請求項9】
前記算出手段は、
前記第1の送信磁場分布と前記第2の送信磁場分布との合成送信磁場分布を作成し、前記合成送信磁場分布が最も均一になるときの振幅および位相を算出し、前記算出した振幅および位相に基づいて、前記各チャンネルに供給する電流を算出する、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項10】
nチャンネルの送信コイルを有する磁気共鳴装置のプログラムであって、
前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号のパターンを変更したときの前記送信コイルの送信磁場分布を、前記信号のパターンごとに作成する送信磁場分布作成処理と、
前記送信磁場分布作成処理により得られた複数の送信磁場分布の中から、送信磁場の均一性が最も高い第1の送信磁場分布と、前記第1の送信磁場分布との相関が最も弱い第2の送信磁場分布とを選択する送信磁場分布選択処理と、
前記第1の送信磁場分布と前記第2の送信磁場分布とに基づいて、前記送信コイルの各チャンネルに供給する信号を算出する算出処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−27518(P2013−27518A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165151(P2011−165151)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】