説明

磁気共鳴装置用ファントム

【課題】手間がかからず、容易に製造できる磁気共鳴装置用ファントムを提供する。
【解決手段】多数のマーカー孔11を所定の配列で穿設した3枚以上のマーカー孔板と、マーカー孔11より小さい断面積の連通孔21をマーカー孔11の配列と同じ配列で穿設した連通孔板20とを交互に積層し、マーカー孔11および連通孔21にマーカー流体30を充填する。
【効果】マーカー孔板10と連通孔板20とを交互に積層し、マーカー孔11にマーカー流体30を充填すればよく、多数のマーカー孔11にそれぞれビタミンビーズを収める作業が必要ないから、手間がかからず、容易に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴装置用ファントムに関し、さらに詳しくは、手間がかからず、容易に製造できる磁気共鳴装置用ファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数のマーカー孔を所定の配列で穿設し各マーカー孔にビタミンビーズを収めたマーカー孔板を多数積層した構造の磁気共鳴装置用ファントムが知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−141782号公報([0015]〜[0023])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の磁気共鳴装置用ファントムでは、1枚のマーカー孔板に穿設するマーカー孔の数を10行×10列=100個とし、積層するマーカー孔板の数を10枚とすると、全体として1000個のマーカー孔に1000個のビタミンビーズを収める必要がある。
しかし、1000個のマーカー孔に1000個のビタミンビーズを収める作業は、非常に手間がかかる問題点がある。
そこで、本発明の目的は、手間がかからず、容易に製造できる磁気共鳴装置用ファントムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、多数の断面積Aのマーカー孔を所定の配列で穿設したB(≧3)枚のマーカー孔板と、断面積C(≦A/2)の連通孔を前記配列と同じ配列で穿設した連通孔板とが、交互に積層され、前記マーカー孔および前記連通孔にマーカー流体が充填されていることを特徴とする磁気共鳴装置用ファントムを提供する。
上記第1の観点による磁気共鳴装置用ファントムでは、マーカー孔および連通孔に充填されているマーカー流体から磁気共鳴信号が得られるが、マーカー孔の断面積Aは連通孔の断面積Cより200%以上大きいため、画像上で容易に識別できる。つまり、画像上でマーカー孔の位置を判別できる。よって、磁気共鳴装置用ファントムとして使用できる。そして、この磁気共鳴装置用ファントムの製造に際しては、マーカー孔板と連通孔板とを交互に積層し、マーカー孔にマーカー流体を充填すればよいから、手間がかからず、容易に製造できる。
【0005】
なお、連通孔は、積層体の内部のマーカー孔にマーカー流体を充填するための流路になるものであり、マーカー流体の粘度が許す限り断面積Bは小さいほどよい。
一方、マーカー孔は、空間位置を検出するためのものであり、画像上での4ピクセル以上に対応する断面積Aを有するのが好ましい。そして、連通孔との判別のために連通孔の断面積Bの200%以上の断面積Aとする。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による磁気共鳴装置用ファントムにおいて、前記マーカー孔板および前記連通孔板が樹脂製であり、前記マーカー流体が塩化ニッケル水溶液または硫酸銅水溶液に電解質を加えた液体であることを特徴とする磁気共鳴装置用ファントムを提供する。
上記第2の観点による磁気共鳴装置用ファントムでは、マーカー孔板および連通孔板からの磁気共鳴信号よりもマーカー流体からの磁気共鳴信号を十分大きくすることが出来る。
【0007】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点による磁気共鳴装置用ファントムにおいて、前記マーカー孔の配列が縦ピッチ=横ピッチ=Eの格子点状の配列であり、前記マーカー孔板の厚さ=前記連通孔板の厚さ=E/2であることを特徴とする磁気共鳴装置用ファントムを提供する。
上記第3の観点による磁気共鳴装置用ファントムでは、縦ピッチ=横ピッチ=厚さ方向ピッチ=Eの規則的な3次元格子点状にマーカー孔を3次元配列することが出来る。
【0008】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点による磁気共鳴装置用ファントムにおいて、前記マーカー孔板と前記連通孔板の積層体の両側に、マーカー流体の流出を防止する封止板を積層したことを特徴とする磁気共鳴装置用ファントムを提供する。
上記第4の観点による磁気共鳴装置用ファントムでは、必要なマーカー流体が少なくて済む。
【0009】
第5の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点による磁気共鳴装置用ファントムにおいて、前記マーカー孔板と前記連通孔板の積層体を、前記マーカー流体を満たした樹脂製容器に入れたことを特徴とする磁気共鳴装置用ファントムを提供する。
上記第5の観点による磁気共鳴装置用ファントムでは、マーカー流体の充填作業が容易になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁気共鳴装置用ファントムによれば、マーカー孔板と連通孔板とを交互に積層し、マーカー孔にマーカー流体を充填すればよく、多数のマーカー孔にそれぞれビタミンビーズを収める作業が必要ないから、手間がかからず、容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る磁気共鳴装置用ファントム100を示す斜視図である。
この磁気共鳴装置用ファントム100において、10はマーカー孔板であり、20は連通孔板であり、41および42は封止板であり、42aは栓である。
マーカー孔板10は例えば10枚、連通孔板20は例えば9枚で、交互に積層されている。
【0013】
図2は、磁気共鳴装置用ファントム100を示す断面図である。
マーカー孔板10には、例えば直径10mmの円形のマーカー孔11が穿設されている。
連通孔板20には、例えば直径2mmの円形の連通孔21が穿設されている。
マーカー孔11および連通孔21には、マーカー流体30が充填されている。
そして、栓41aを有する封止板41および栓42aを有する封止板42によって、積層体の両側でマーカー流体30が封止されている。
【0014】
マーカー孔板10および連通孔板20は、例えばアクリル樹脂製である。
マーカー流体30は、例えば塩化ニッケル水溶液または硫酸銅水溶液に電解質を加えた液体である。
【0015】
図3は、マーカー孔板10と連通孔板20の積層体を示す分解斜視図である。
マーカー孔11は、縦ピッチ=横ピッチ=例えば20mmの格子点状の配列である。
マーカー孔板10の厚さは、10mmである。
連通孔21は、マーカー孔11と同じ格子点状の配列である。つまり、マーカー孔11とそれに対応する連通孔21は、中心が一致している。
マーカー孔板20の厚さは、10mmである。
なお、封止板41,42には、連通孔板20と同じものである。
【0016】
磁気共鳴装置用ファントム100は、次の手順で製造される。
(1)10枚のマーカー孔板10と11枚の連通孔板20を交互に積層し、エポキシ樹脂で一体化し、積層体とする。なお、最外側の連通孔板20が封止板41,42に相当する。
(2)封止板41が下側、封止板42が上側になるような姿勢で積層体を浮かして支持する。
(3)封止板42の一つの連通孔を選び、その連通孔からマーカー流体30を注入する。その連通孔に対応する封止板41の連通孔からのマーカー流体30の流出流量よりも注入流量を多くすれば、やがてマーカー孔11および連通孔21にマーカー流体30が充填され、封止板42の連通孔からマーカー流体30が溢れるようになる。マーカー流体30が溢れたら、マーカー流体30の注入を停止する。
(4)マーカー流体30が溢れた封止板42の連通孔を栓42aで塞ぐと共にその連通孔に対応する封止板41の連通孔を栓41aで塞ぐ。
(5)上記の(3)(4)を封止板42の全ての連通孔について繰り返す。
【0017】
実施例1の磁気共鳴装置用ファントム100によれば、マーカー孔11および連通孔21に充填されているマーカー流体30から磁気共鳴信号が得られるが、マーカー孔11は直径10mm×厚さ10mmの体積であり、連通孔21は直径2mm×厚さ10mmの体積であり、両者は磁気共鳴画像上で容易に識別できる。つまり、磁気共鳴画像上でマーカー孔11の位置を判別できる。よって、磁気共鳴装置用ファントムとして使用できる。
そして、磁気共鳴装置用ファントム100の製造に際しては、マーカー孔板10と連通孔板20とを交互に積層し、マーカー孔11にマーカー流体30を充填すればよいから、手間がかからず、容易に製造できる。
【実施例2】
【0018】
図4は、実施例2に係る磁気共鳴装置用ファントム200を示す斜視図である。
この磁気共鳴装置用ファントム200において、50は例えばアクリル樹脂製の密閉容器である。
【0019】
図5は、磁気共鳴装置用ファントム200を示す断面図である。
磁気共鳴装置用ファントム200は、実施例1の(1)(2)で製造した積層体の8つの隅をスペーサ60で支えて密閉容器50中に収容し、密閉容器50にマーカー流体30を充填したものである。
【0020】
実施例2の磁気共鳴装置用ファントム200によれば、マーカー孔11および連通孔21および積層体の周りに充填されているマーカー流体30から磁気共鳴信号が得られるが、マーカー孔11は直径10mm×厚さ10mmの体積であり、連通孔21は直径2mm×厚さ10mmの体積であり、両者は磁気共鳴画像上で容易に識別できる。また、マーカー孔11は縦ピッチ=横ピッチ=厚さ方向ピッチ=20mmの格子点状の配列であり、積層体の周りと磁気共鳴画像上で容易に識別できる。つまり、磁気共鳴画像上でマーカー孔11の位置を判別できる。よって、磁気共鳴装置用ファントムとして使用できる。
そして、磁気共鳴装置用ファントム200の製造に際しては、積層体を密閉容器50に入れてマーカー流体30を充填すればよいから、手間がかからず、容易に製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の磁気共鳴装置用ファントムは、磁気共鳴撮影装置における撮影空間の位置と画像上の位置の対応を校正するのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係る磁気共鳴装置用ファントムを示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る磁気共鳴装置用ファントムを示す断面図である。
【図3】実施例1に係る磁気共鳴装置用ファントムにおけるマーカー孔板と連通孔板20の積層体を示す分解斜視図である。
【図4】実施例2に係る磁気共鳴装置用ファントムを示す斜視図である。
【図5】実施例2に係る磁気共鳴装置用ファントムを示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 マーカー孔板
11 マーカー孔
20 連通孔板
21 連通孔
30 マーカー流体
41,42 封止板
41a,42a 栓
50 密閉容器
60 スペーサ
100,200 磁気共鳴装置用ファントム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の断面積Aのマーカー孔を所定の配列で穿設したB(≧3)枚のマーカー孔板と、断面積C(≦A/2)の連通孔を前記配列と同じ配列で穿設した連通孔板とが、交互に積層され、前記マーカー孔および前記連通孔にマーカー流体が充填されていることを特徴とする磁気共鳴装置用ファントム。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴装置用ファントムにおいて、前記マーカー孔板および前記連通孔板が樹脂製であり、前記マーカー流体が塩化ニッケル水溶液または硫酸銅水溶液に電解質を加えた液体であることを特徴とする磁気共鳴装置用ファントム(100)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴装置用ファントムにおいて、前記マーカー孔の配列が縦ピッチ=横ピッチ=Eの格子点状の配列であり、前記マーカー孔板の厚さ=前記連通孔板の厚さ=E/2であることを特徴とする磁気共鳴装置用ファントム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気共鳴装置用ファントムにおいて、前記マーカー孔板と前記連通孔板の積層体の両側に、マーカー流体の流出を防止する封止板を積層したことを特徴とする磁気共鳴装置用ファントム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気共鳴装置用ファントムにおいて、前記マーカー孔板と前記連通孔板の積層体を、前記マーカー流体を満たした樹脂製容器に入れたことを特徴とする磁気共鳴装置用ファントム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−12131(P2008−12131A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187428(P2006−187428)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】