説明

磁気印刷用版及びその版を用いた印刷方法

【課題】磁気印刷にかかる製造コストの低減を図る。
【解決手段】磁性体顔料を含有する磁性層を台紙上に積層してなる専用紙20を対向させて、専用紙20に磁力を加え、磁性体顔料を配向させることによって専用紙20に画像を形成させる磁気印刷用版1において、均一な磁界の磁性面を有するシート状磁石10に対し、磁性面に磁力を印加して、部分的に磁力を変えることによって、磁性面に潜像を形成し、専用紙20にシート状磁石10の磁力を加えて、専用紙20に、潜像に基づく画像を顕現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体を含有する印刷用塗料を塗布した用紙に磁力を加え、磁性体を磁界方向に配向させることによって立体視効果を与えるために用いる磁気印刷用版及びその版を用いた印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、まず、フィルム状乃至はシート状の被印刷物の被印刷面に対して、偏光性を有する磁性体顔料を含むインキを用いて印刷する。次に、この被印刷物に対して磁石を配置して、かかる磁石の作用にて印刷層中の磁性体顔料を配向させることにより、印刷層に所望の表示部を立体的に形成する。この際、磁石として、一方の面側がN極、他方の面側がS極となるように着磁されてなる両面2極型のシート状磁石を用い、それから切り出されてなる形態の文字、図形、記号等の表示パターンを、被印刷物に対向位置するように配置する。そして、表示パターンに対応した表示部が印刷層に現出される、という磁気印刷方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−90624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術においては、表示パターンを作成するためにシート状磁石をカッティングする工程が必要になる。また、カッティングするための機械が必要となる。このため、その分の製造コストが高くなっていた。また、カッティングによって複雑な模様の表示パターンを作成するためには、それだけコストがかかるようになる。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決し、磁気印刷にかかる製造コストの低減を実現した磁気印刷用版及びその版を用いた印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0007】
(1)磁性体顔料を含有する磁性層を台紙上に積層してなる専用紙を対向させて、当該専用紙に磁力を加え、前記磁性体顔料を配向させることによって専用紙に画像を形成させる磁気印刷用版において、シート状磁石の磁性面に対して当該シート状磁石より強い磁力を有する磁石をこするように移動させることによって、前記磁性面の磁界を均一にする処理を施し、当該均一な磁界の磁性面を有するシート状磁石に対し、前記磁性面に磁力を印加して、部分的に磁力を変えることによって、前記磁性面に潜像を形成し、前記専用紙に前記シート状磁石の磁力を加えて、前記専用紙に、前記潜像に基づく画像を顕現させることを特徴とする磁気印刷用版。
【0008】
(2)用紙を平板上に載置し、当該用紙にスクリーン印刷用版を対向させ、当該スクリーン印刷用版上にインキを供給し、スキージによってインキを移動させることによって用紙にスクリーン印刷を行う印刷方法において、シート状磁性体の磁性面の磁界を均一にする均一処理工程と、当該均一な磁界の磁性面に磁力を印加して、部分的に磁力を変えることによって、前記シート状磁性体の前記磁性面に潜像を形成する潜像形成工程と、前記シート状磁性体を平面板に設置する工程と、前記シート状磁性体における潜像形成領域上に、前記用紙を載置する用紙セット工程と、前記用紙に、磁性体顔料を含有するインキを用いて画像をスクリーン印刷するスクリーン印刷工程と、を有することを特徴とする印刷方法。
【0009】
(3)スクリーン印刷用版に対向するシリンダ体に用紙を供給し、前記スクリーン印刷用版上にインキを供給し、回転する前記シリンダ体と同じ線速で前記スクリーン印刷用版を平行移動させて、前記スクリーン印刷用版上においてスキージを相対移動させることにより、用紙を搬送しながら用紙にスクリーン印刷を行う印刷方法において、シート状磁性体の磁性面の磁界を均一にする均一処理工程と、当該均一な磁界の磁性面に磁力を印加して、部分的に磁力を変えることによって、前記シート状磁性体の前記磁性面に潜像を形成する潜像形成工程と、前記シート状磁性体を前記シリンダ体に設置する工程と、前記シート状磁性体における潜像形成領域上に、前記用紙が位置するようにタイミングをとりながら、用紙を前記シリンダ体に送り出す用紙供給工程と、前記用紙に、磁性体顔料を含有するインキを用いて画像をスクリーン印刷するスクリーン印刷工程と、を有することを特徴とする印刷方法。
【0010】
(1)によれば、シート状磁性体に積層(印刷)された磁性層に対して、シート状磁性体に形成した潜像に磁界が印加されることによって、潜像に基づく画像を用紙上に顕現させる。このため、磁気印刷用版の作成コストが低減され、しかもシート状磁石の再利用が可能となり、磁気印刷にかかる製造コストを低減することが可能になる。
【0011】
(2)、(3)によれば、用紙に対する画像のスクリーン印刷と同時に、シート状磁性体に形成した潜像に磁界が印加されることによって、潜像に基づく画像を用紙上に顕現させることが可能になる。その結果、用紙に画像をスクリーン印刷する工程と、用紙にシート状磁性体に形成した潜像の磁界を印加する工程とを分けることなく、同時に行うことが可能になる。これにより、工数削減によるコスト低減を図ることが可能になる。特に、(3)によれば、連続印刷が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁気印刷にかかる製造コストの低減を実現した磁気印刷用版及び磁気印刷方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の磁気印刷用版の作成工程を示す説明図である。
【図2】専用紙の構造を示す断面図である。
【図3】専用紙にシート状磁石の磁力を印加した際の専用紙の状態を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の磁気印刷用版を用いて印刷した印刷物を示す説明図である。
【図5】本発明の磁気印刷方法によって磁気印刷を行う磁気印刷装置の概略構成を示す説明図である。
【図6】図5における磁気印刷用版と台紙と潜像との大きさの比較を示す説明図である。
【図7】本発明の他の磁気印刷方法によって磁気印刷を行う磁気印刷装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
[磁気印刷用版の作成工程]
図1は、本発明の一実施形態の磁気印刷用版の作成工程を示す説明図である。磁気印刷用版1は、シート状磁性体に相当するシート状磁石10の磁性を有する表面に、磁気潜像を形成することによって作成される。
【0016】
ここで、磁気潜像とは、シート状磁石10の表面における、局所的な磁界の強さの違い、あるいは磁界の方向の違いによって形成された視認不可能な画像のことである。例えば、一方の面がN極で他方の面がS極のシート状磁石10の場合において、一方の面に部分的なS極を形成すると、N極から隣り合うS極に向かう磁力線が形成される。この磁力線によって形成される像が磁気潜像となる。また、表面に、細かいピッチでN極とS極が配置されているタイプのシート状磁石10であれば、例えば、S極を部分的にN極に変えたり、あるいはS極の磁力を低下させたりすることにより、隣り合うN極とS極との間の磁力線が部分的に変化する領域が形成される。この磁力線が部分的に変化する領域よって形成される像が磁気潜像となる。
【0017】
シート状磁石10は、ゴム材に、例えば磁石粉末を混合して成形した可撓性を有する磁石である。また、シート状磁石10の表面は、隣り合う磁極が互いに異なるように帯状に着磁されている。本実施形態においては、はがきサイズの用紙への印刷を例として説明する。このため、シート状磁石10の大きさは、はがきサイズ、もしくはそれよりも若干大きなサイズとする。
【0018】
まず、図1(a)に示すように、シート状磁石10の表面上に、シート状磁石10よりも強い磁力を有する強力磁石12を密着させながらこするように同一方向に移動させる。これにより、シート状磁石10上の磁界の強さや方向を均一化させる。強力磁石12としては、ネオジム磁石が適用可能である。なお、シート状磁石10上の磁界を均一化させる方法としては、シート状磁石10と同じ、もしくはそれより大きい強力磁石12を利用して、1回の作業で磁界を均一化させてもよく、あるいはシート状磁石10より小さい強力磁石12を複数回同一方向に移動させることによって磁界を均一化させてもよい。
【0019】
次に、図1(b)に示すように、磁界が均一化されたシート状磁石10の表面上に、書込用磁石14を密着させながら、図柄を描くように移動させる。これにより、均一化されたシート状磁石10の表面上において、書込用磁石14によってなぞられた軌跡に沿って磁界が変化することによって、磁気潜像が書き込まれ、磁気印刷用版1が作成される。
【0020】
具体的には、書込用磁石14は、強力磁石12と同じネオジム磁石を、鉛筆状に加工したものとする。そして、作業者は、シート状磁石10の表面上に下書き図面を載置し、その上から書込用磁石14をなぞるように移動させる。これによって、下書き図面に対応する磁気潜像が、シート状磁石10の表面上に形成される。シート状磁石10に書き込まれた磁気潜像を確かめたい場合には、磁気印刷に用いる専用紙20を対向させるか、あるいは、シート状磁石10の表面に白紙を載せ、その上に鉄粉を振りかけることにより、磁気潜像を可視化することが可能になる。確認の結果、書き直したい場合には、再度、シート状磁石10の表面上に、強力磁石12を密着させながら移動させる。これにより、シート状磁石10上の磁界が均一化される。言い換えれば、シート状磁石10表面の磁気潜像が消去される。
【0021】
図1(c)に示すように、磁気潜像が書き込まれている磁気印刷用版1を用いて印刷を行う際には、磁気印刷用版1に、磁気印刷に用いる専用紙20を対向させる。これにより、専用紙20における磁気潜像に対向する領域において、磁気潜像に基づく画像が顕現する。そして、専用紙20に顕現された画像が乱れないように、磁気印刷用版1から専用紙20を離した後、専用紙20を乾燥させることにより、磁気潜像に基づく画像が専用紙20に印刷される。
【0022】
図2は、専用紙20の構造を示す断面図である。専用紙20は、台紙22上に磁性層24を積層した構造である。この磁性層24は、磁性体顔料26を含有しており、未乾燥あるいは未硬化状態において、磁性層24中において動き得る状態となっている。
【0023】
図3に示すように、未乾燥あるいは未硬化状態の磁性層24に対して、磁気印刷用版1の磁力を作用させると、磁性層24中の磁性体顔料26が、磁気潜像から生じる磁力線の方向に配向される。これにより、磁性層24において磁気潜像が顕現し、立体的な態様の画像が視認されるようになる。そして磁気潜像が顕現した専用紙20は、乾燥装置(図示せず)に搬送され、磁気印刷用版1上には新たな専用紙20が載置される。
【0024】
磁気潜像が顕現した専用紙20は、乾燥装置(図示せず)において乾燥されることによって、磁性層24において磁性体顔料26が、配向された状態を維持しながら台紙22に固定される。これにより、磁気潜像に対応した立体的な態様の画像が、専用紙20に印刷される。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態の磁気印刷用版を用いて印刷した印刷物を示す説明図である。図4に示すように、背景として印刷されている波紋の画像が、磁気印刷用版1に形成された磁気潜像に該当する。すなわち、図4において、台紙22に磁性体顔料26を含有するインキ(3Dインキ)を用いて、文字、金魚及び水草の画像を含め、台紙22全体にインキが載るように印刷することにより、専用紙20が作成される。なお、この時印刷されたインキの層が図2、3に示す磁性層24に相当する。印刷方法としては、シルク印刷が適用可能である。また、磁性層24が印刷された時点では、波紋の画像は顕現されておらず、仮に、この状態で乾燥した場合には、無背景になる。
【0026】
次に、作成された専用紙20を、磁気印刷用版1上に載せることにより、専用紙20に、波紋が顕現する。そして、磁性層24を乾燥させることにより、図4に示すはがきが作成される。
【0027】
実験として、市販されているシート状磁石10およびネオジム磁石を用いて、手作業で磁気印刷用版を作成してみた。まず、シート状磁石10の表面である磁性面に、小型のネオジム磁石をこするように移動させて、シート状磁石10の表面の磁界を均一化させた。さらに、同じ小型のネオジム磁石を用いてシート状磁石10の表面をなぞり、文字を書き込んでみた。このようにした作成された磁気印刷用版1の上に、磁性層を有する専用紙を載置したところ、専用紙の磁性層に、シート状磁石10に書き込まれた文字が顕現された。
【0028】
このように、本発明によれば、磁気印刷用版1を作成するために、専用の機械を導入することなく、全て手作業で作成することも可能である。また、シート状磁石10をカットすることでは表現できない細かいパターンの印刷が、本発明の磁気印刷用版1を用いることにより、実現可能となる。
【0029】
以上、説明したように、本実施形態によれば、シート状磁石10に形成した磁気潜像に基づく画像を専用紙20に顕現させるため、磁気印刷用版1の作成コストが低減され、しかもシート状磁石10の再利用が可能となる。これにより、磁気印刷にかかる製造コストを低減することが可能になる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、シート状磁石10の表面の磁界の均一化や磁気潜像の書き込みにネオジム磁石を用いているが、ネオジム磁石と同等の磁力が得られるものであれば、磁石の種類は問わない。例えば、電磁石を用いてもよい。また、本実施形態によれば、はがきサイズの専用紙への印刷例を説明したが、他のサイズであってもよいことは言うまでもない。
【0031】
また、磁気印刷用版1として、シート状磁石10を用いたが、磁気潜像を書き込むことが可能な部材であれば、他の部材を用いてもかまわない。例えば、磁性体を塗布したプラスチックシートに対し、磁界を加えて局所的に着磁させて磁性潜像を形成したものを磁気印刷用版1として用いてもよい。また、図1に示す磁気印刷用版1においては、手書きで磁性潜像の書き込みを行っているが、機械による書き込みを行うことも可能である。例えば、シート部材に刃を押し当てながらなぞるように移動させることによって、シート部材を所定の形状にカッティングするカッティングマシンを用い、刃を磁石に替えることによって、磁性潜像の書き込みを行ってもよい。
【0032】
[印刷装置の構成]
図5は、図2(c)に示す磁気印刷用版1を用いた印刷装置の概略構成を示す説明図である。
印刷装置50は、印刷スクリーン枠52、スクリーン版54、ドクター56、スキージ58、及び平面板70によって構成されている。スクリーン版54は、印刷スクリーン枠52に張って固定される。このスクリーン版54の一方の面に、ドクター56及びスキージ58が対向配置されている。また、スクリーン版54の他方の面には平面板70が対向する。平面板70には、複数の孔が形成されており、図示しない吸引装置によって、孔に流入する方向の空気流が形成される。
【0033】
ドクター56及びスキージ58は、図示しない駆動装置によって、往復移動可能であり、往動の際にはスキージ58がスクリーン版54に当接し、所定の圧力を加えてスクリーン版54を撓ませながら移動する。復動の際にはドクター56がスクリーン版54に当接しながら移動する。
【0034】
図6は、磁気印刷用版1と台紙22と磁気潜像の領域とを比較した図である。磁気印刷用版1は、台紙22よりも小さく形成されており、台紙22における磁気印刷用版1の外側の部位は、平面板70に吸着されるようになる。また、磁気印刷用版1に形成されている磁気潜像の形成領域1aは、台紙22に対する図柄印刷領域22aに対向する。
【0035】
[印刷工程の説明]
次に、印刷工程について説明する。まず、予め、磁気潜像を担持している磁気印刷用版1を作成しておく。磁気印刷用版1は、図1を用いて説明したように、シート状磁石10の磁性面をネオジム磁石によってなぞることによって、磁性面に磁気潜像を形成したものである。
【0036】
次に、平面板70上に磁気印刷用版1を載せ、さらに磁気印刷用版1上に台紙22を載置する。次に、スクリーン版54の孔版領域が台紙22に対向するように、スクリーン版54を平面板70に対向させる。次に、スクリーン版54上に磁性体顔料26を有するインキを載せて、スクリーン版54上でスキージ58を摺動させる。この時、インキは、孔版領域を通過して、台紙22に転写され、用紙に画像がスクリーン印刷される。この画像を形成する印刷層が磁性層24となる。スクリーン版54上をスキージ58が移動した後、次に、ドクター56がスクリーン版54を移動し、スクリーン版54上のインキを元の位置に戻す。
【0037】
次に、磁性層24が形成された台紙22を取り出して、次の台紙22を載置するが、磁性層24が形成された台紙22には磁気印刷用版1の磁界が既に印加されている。このため、磁性層24に、磁気印刷用版1に書き込まれた磁性潜像が顕現したものを取り出して、次の乾燥工程に送ることになる。これにより、台紙22の図柄印刷領域22aに、立体感を有する画像が形成される。
【0038】
ところで、スクリーン印刷においては、平面板70にキズがついたりゴミが付着したりすると、キズやゴミの凹凸が被印刷紙面に痕跡が残るおそれがあるため、平面板70には印刷対象となる用紙以外には何も置かない、というのが一般的である。
【0039】
それに対して、本実施形態の磁気印刷用版1は、図7に示すように、台紙22に対する図柄形成領域よりも大きい平面を有している。このため、少なくとも、台紙22の図柄形成領域は平面性が保たれている。このため、スクリーン印刷後において、台紙22に磁気印刷用版1の痕跡が残らないようになる。
【0040】
このように、上述した印刷方法により、台紙22に対する印刷と同時に、磁性層24に磁気印刷用版1に書き込まれた磁性潜像を顕現させることが可能になる。その結果、台紙22に磁性層24を印刷する工程と、磁性層24に磁気印刷用版1の磁界を印加する工程とを分けることなく、同時に行うことが可能になる。これにより、工数削減によるコスト低減を図ることが可能になる。
【0041】
[他の印刷装置の構成]
図7は、他の印刷装置の概略構成を示す説明図である。なお、図5に示す印刷装置50と同一の部材あるいは同一機能の部材については、同一の符号を付して、詳細な説明は省略した。図5に示す印刷装置50においては、スクリーン版54の他方の面に平面板70が対向しているが、図7に示す印刷装置60においては、平面板70の代わりに円筒体のシリンダ80を対向させている。シリンダ80は、図7において、時計方向に回転する。
【0042】
スクリーン版54とシリンダ80との対向部位に対して、シリンダ80の回転方向上流側には、台紙22を搬送する搬送装置81が設けられている。この搬送装置81は、台紙22をスクリーン版54とシリンダ80との対向部位に向けて搬送するものである。
【0043】
また、図5に示す印刷装置50においては、スクリーン版54に対してドクター56及びスキージ58を移動させている。それに対し、図7に示す印刷装置60においては、ドクター56及びスキージ58の位置は変わらず、スクリーン版54を、シリンダ80の線速と同じ速度で平行移動させている。これにより、スクリーン版54に対して、ドクター56及びスキージ58が相対移動するようになる。シリンダ80には、複数の孔が形成されており、図示しない吸引装置によって、孔に流入する方向の空気流が形成される。
【0044】
また、シリンダ80には、磁気印刷用版1が貼着される。なお、磁気印刷用版1と台紙22と磁気潜像の領域との関係は、図7を用いて説明した通りであり、磁気印刷用版1は、台紙22よりも小さく形成されており、台紙22における磁気印刷用版1の外側の部位は、シリンダ80に吸着されるようになる。また、磁気印刷用版1に形成されている磁気潜像の形成領域1aは、台紙22に対する図柄印刷領域22aに対向する。
【0045】
[印刷工程の説明]
次に、印刷工程について説明する。まず、予め、磁気潜像を担持している磁気印刷用版1を作成しておく。次に、シリンダ80上に磁気印刷用版1を載せる。次に、磁気印刷用版1の初期位置の調整を行う。次に、スクリーン版54上に磁性体顔料26を有するインキを載せて、スクリーン版54上でスキージ58を摺動させるとともに、シリンダ80の回転を開始する。この時、スクリーン版54及び磁気印刷用版1の移動に同期させ、磁性潜像の形成領域上に台紙22が位置するように、タイミングを取って搬送装置81からシリンダ80に台紙22を供給する。これにより、台紙22が磁気印刷用版1上を通過している間に、スクリーン版54上のインキが、孔版領域を通過して、台紙22に転写され、磁性層24が形成される。スクリーン版54上をスキージ58が移動した後、次に、スクリーン版54を反対方向に移動させ、ドクター56がスクリーン版54を摺動することにより、スクリーン版54上のインキを元の位置に戻す。そして、磁性層24が形成された台紙22は、シリンダ80を通過した後、次の乾燥工程に送ることになる。
【0046】
このように、上述した印刷方法により、台紙22がスクリーン版54とシリンダ80との対向部位を通過する際に、台紙22に対する印刷と同時に、磁性層24に磁気印刷用版1に書き込まれた磁性潜像を顕現させることが可能になる。その結果、台紙22に磁性層24を印刷する工程と、磁性層24に磁気印刷用版1の磁界を印加する工程とを分けることなく、同時に行うことが可能になる。これにより、工数削減によるコスト低減を図ることが可能になる。また、搬送装置81による連続給紙により、連続印刷が可能になる。
【符号の説明】
【0047】
1 磁気印刷用版
10 シート状磁石
12 強力磁石
14 書込用磁石
20 専用紙
22 台紙
24 磁性層
26 磁性体顔料
50、60 印刷装置
52 印刷スクリーン枠
54 スクリーン版
56 ドクター
58 スキージ
70 平面板
80 シリンダ
81 搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体顔料を含有する磁性層を積層した用紙を対向させて、当該用紙に磁力を加え、前記磁性体顔料を配向させることによって用紙に画像を形成させる磁気印刷用版において、
シート状磁性体の磁性面に対して当該シート状磁性体より強い磁力を有する磁石をこするように移動させることによって、前記磁性面の磁界を均一にする処理を施し、当該均一な磁界の磁性面を有するシート状磁性体に対し、前記磁性面に磁力を印加して、部分的に磁力を変えることによって、前記磁性面に潜像を形成し、前記用紙に前記シート状磁性体の磁力を加えて、前記用紙に、前記潜像に基づく画像を顕現させることを特徴とする磁気印刷用版。
【請求項2】
用紙を平板上に載置し、当該用紙にスクリーン印刷用版を対向させ、当該スクリーン印刷用版上にインキを供給し、スキージによってインキを移動させることによって用紙にスクリーン印刷を行う印刷方法において、
シート状磁性体の磁性面の磁界を均一にする均一処理工程と、
当該均一な磁界の磁性面に磁力を印加して、部分的に磁力を変えることによって、前記シート状磁性体の前記磁性面に潜像を形成する潜像形成工程と、
前記シート状磁性体を平面板に設置する工程と、
前記シート状磁性体における潜像形成領域上に、前記用紙を載置する用紙セット工程と、
前記用紙に、磁性体顔料を含有するインキを用いて画像をスクリーン印刷するスクリーン印刷工程と、を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
スクリーン印刷用版に対向するシリンダ体に用紙を供給し、前記スクリーン印刷用版上にインキを供給し、回転する前記シリンダ体と同じ線速で前記スクリーン印刷用版を平行移動させて、前記スクリーン印刷用版上においてスキージを相対移動させることにより、用紙を搬送しながら用紙にスクリーン印刷を行う印刷方法において、
シート状磁性体の磁性面の磁界を均一にする均一処理工程と、
当該均一な磁界の磁性面に磁力を印加して、部分的に磁力を変えることによって、前記シート状磁性体の前記磁性面に潜像を形成する潜像形成工程と、
前記シート状磁性体を前記シリンダ体に設置する工程と、
前記シート状磁性体における潜像形成領域上に、前記用紙が位置するようにタイミングをとりながら、用紙を前記シリンダ体に送り出す用紙供給工程と、
前記用紙に、磁性体顔料を含有するインキを用いて画像をスクリーン印刷するスクリーン印刷工程と、を有することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−126074(P2011−126074A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285027(P2009−285027)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(509051886)株式会社プロセス文華堂 (1)
【Fターム(参考)】