磁気応答性試薬を使用する磁気補助結合アッセイ
【課題】磁場の作用に対する磁気応答性試薬の応答を利用して特異的結合対メンバー間の結合を定性的又は定量的に測定するアッセイ方法。
【解決手段】本発明によると、磁気応答性試薬が移動固相試薬に結合するか否かにより分析物の存在を判定する。磁場の作用に対する磁気応答性試薬又は移動固相試薬又はその両者の応答は結合の程度により変化する。従って、磁気応答性試薬の磁場応答又は移動固相試薬の磁場応答を測定することにより、試料に含まれる分析物の存在又は量を正確に測定することができる。本発明は前記アッセイ方法を実施するために種々の装置を利用する。
【解決手段】本発明によると、磁気応答性試薬が移動固相試薬に結合するか否かにより分析物の存在を判定する。磁場の作用に対する磁気応答性試薬又は移動固相試薬又はその両者の応答は結合の程度により変化する。従って、磁気応答性試薬の磁場応答又は移動固相試薬の磁場応答を測定することにより、試料に含まれる分析物の存在又は量を正確に測定することができる。本発明は前記アッセイ方法を実施するために種々の装置を利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気応答性材料を使用して試料中の分析物の存在又は量を測定するための方法に関する。より詳細には、本発明は結合アッセイで成分の性質を変えるための磁気応答性材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
診断アッセイは分析物と分析物に特異的な結合メンバーの相互反応(例えば抗原と該抗原に結合する抗体の免疫反応)を使用することにより試料中の分析物を検出するために不可欠の手段となっている。一般に、このような診断アッセイでは着目分析物に結合する抗体に結合した検出可能なタグ又はラベルを利用し、得られた標識抗体−分析物複合体の検出又は分析物と結合して複合体を形成しない標識抗体の検出を使用して試料中の分析物の存在又は量を指示する。
【0003】
特異的結合メンバーを利用する診断アッセイ技術としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)と酵素イムノアッセイ(EIA)の2種が広く使用されており、いずれも標識した特異的結合メンバーを利用している。RIAは特異的結合メンバーに結合した検出可能なタグ又はラベルとして放射性同位体を使用している。放射性同位体は非常に少量で検出することができるので、少量の分析物を検出又は定量するために使用することができる。しかし、RIAには放射性物質の取り扱いに特殊な設備と細心の注意が必要であり、このような試薬はコストが高く、特殊な廃棄要件を満たさなければならないという実質的な欠点がある。
【0004】
EIAは特異的結合メンバーに結合した検出可能なタグ又はラベルとして酵素を使用し、酵素の酵素活性を使用して免疫反応を検出している。EIAにはRIAの欠点の一部は付随しないが、EIA技術は一般に検出可能な酵素反応を誘導するために基質材料を加える必要がある。更に、酵素基質は不安定なことが多く、使用直前に調製したり、冷凍保存する必要がある。更に、酵素ラベルは精製や結合メンバーとの結合が困難であったり、室温保存中又は冷凍条件下でも不安定な場合がある。酵素イムノアッセイは複雑なインキュベーション、多数の液体添加及び多数の洗浄段階が方法に一般に必要であるという点でも不十分である。
【0005】
より最近では、金属ゾル粒子を可視ラベルとして使用するアッセイ技術が開発されている。これらの技術では、金属(例えば金、銀、白金)、金属化合物又は金属もしくは金属化合物を被覆した非金属物質を使用して粒子の水性分散液を形成している。一般に、標識しようとする特異的結合メンバーを金属ゾル粒子に吸着させ、分析物の存在下に粒子を捕獲又は凝集させる。金属ゾル粒子は計器により視覚的に検出可能且つ測定可能なシグナルを発生するという利点があるが、定量的に測定しにくい。金属ゾル粒子は更に色強度が制限され、従って、アッセイによっては感度が制限される。更に、金等の無機金属ゾル粒子の表面は特異的結合メンバーと容易に共有結合できない。従って、結合アッセイで使用する際には、吸着した特異的結合メンバーが他のタンパク質又は界面活性剤による置換と非特異的に結合した材料を除去するために使用する洗浄段階に伴う剪断力の作用により無機粒子から離れないように注意する必要がある。金属ゾル粒子は凝集を誘導せずには被覆しにくく、保存すると凝集したり、緩衝液や塩類を加えると凝集したりする。更に、このような粒状ラベルは濃縮しにくく、分散しにくいことがある。
【0006】
他のラベル材料としては、化学発光物質と蛍光物質がある。しかし、これらの物質は不安定であり、蛍光材料は消光することがある。染色又は着色ラテックス粒子やセレン粒子等の非金属粒子も可視ラベルとして使用されている。
【0007】
自動イムノアッセイ装置は診断分野で非常に有利であることがわかっている。自動イムノアッセイ装置は免疫試薬を収容するキットであり、まず患者又は実験室技術者が生物試料を加えた後、複雑な実験室器具を必要とせずに診断アッセイを実施することができる。Abbott Laboratoriesから商標名「TESTPACK PLUS」で市販されているストリップアッセイ装置等の市販自動イムノアッセイ装置は迅速且つ確実にイムノアッセイを実施することができる。
【0008】
一般に、自動イムノアッセイ装置はクロマトグラフィー試験ストリップを使用している。例えば、米国特許第4,960,691号は連続反応により試料中の分析物を分析するための試験ストリップを開示している。試験ストリップは選択したクロマトグラフィー溶剤により非固定化試薬と試料の反応性成分をクロマトグラフィー溶剤輸送する能力と毛管力をもつ一定長さのクロマトグラフィー材料を含む。試験ストリップは(1)クロマトグラフィー溶剤輸送が開始する第1の端部と、(2)クロマトグラフィー溶剤輸送が終了する第2の端部と、(3)第1の端部と第2の端部の間に配置された複数のゾーンを含む。これらのゾーンは(1)溶剤中で移動可能であり且つ分析物との特異的結合反応が可能な第1の試薬を含浸させた第1のゾーンと、(2)試料を受容するための第2のゾーンと、(3)第2のゾーンの下流に配置されており、溶剤輸送できないように固定されており、分析物との特異的結合反応により第3のゾーンに分析物を固定することが可能な第2の試薬を含浸させた第3のゾーンを含む。試験ストリップは第1の試薬を第3のゾーンで分析物の尺度として検出できるように設計されている。
【0009】
クロマトグラフィー試験ストリップの共通特徴の1つは、液体又は液体の混合物と粒子を多孔質マトリックスに流すことである。試験ストリップは一般に結合反応が生じることが可能な反応ゾーンを含む。クロマトグラフィー試験ストリップで適正な結合反応が生じるためには、液体又は混合物が反応ゾーンを実質的に均一に流れなければならない。
【0010】
この種のアッセイ装置に伴う問題の1つは、多孔質マトリックスを形成する材料の固有の変動である。この変動(例えば多孔度)はマトリックスを通る液体の流れに直接影響し、アッセイ装置の精度を悪化させることがある。更に、マトリックスは所期反応ゾーンの複数部位又は他の場所で粒子又は試薬と非特異的に結合することが多く、固定化試薬の添加後に複雑な動態化手順の使用が必要になる。従って、多孔質マトリックスに液体を流す必要がなく、迅速で簡単な自動アッセイ装置を開発することが所望されている。
【0011】
自動イムノアッセイ装置に伴う別の問題は、アッセイで使用する試薬を反応ゾーンで捕獲できるように特異的結合試薬を試験ストリップに固定化する必要があるという点である。特異的結合試薬を試験ストリップに固定化する方法は調節しにくいため、反応ゾーンの結合能のロット間変動を生じる。更に、固定化結合試薬は不安定であるため、輸送又は保存後に反応ゾーンの結合能が変化する恐れがある。固定化した特異的反応試薬は特定分析物のアッセイに特異的であるため、試験ストリップを特定アッセイに専用にしなければならない。自動イムノアッセイ装置には、製法に起因するロット間変動、特に結合分子等の生物学的試薬の活性の変動という問題もある。例えば、試験ストリップの捕獲ゾーンで結合試薬の結合能がロット間で変動すると、アッセイ結果に影響し得る。他の試薬の活性や濃度を調節して補うことはできるが、このような調節を行うと製法が非常に複雑になり、試験ストリップの各ロットを試薬の特定ロットに合わせなければならなくなる。数種の異なる分析物のアッセイで完全に安定で均一な試験ストリップを使用できるならば、ストリップを利用する自動アッセイの実施及び制御は著しく簡単になるであろう。あるいは、製造中に1組の試薬の要件を満たすように試験ストリップを容易に適応させることができるならば有利であろう。
【0012】
数種の用途では、非常に狭い遷移濃度範囲で所定分析物濃度を上回る陽性結果と該濃度を下回る陰性結果を与える自動アッセイを使用することが望ましい。慣用試験ストリップでこうした結果を得ることは困難であった。
【0013】
超常磁性微粒子もイムノアッセイの実施に広く使用されている。超常磁性微粒子は、適用磁場が磁場発生器の方向にこれらの微粒子に作用する力を生じるという点で磁気応答性である。しかし、適用磁場を除去した後には残留磁気を保持しない。一般に、着目分析物に結合することが可能な特異的結合メンバーに粒子を結合して結合体を形成する。特異的結合メンバー−粒子結合体を液体に分散させた後、試料と混合して試験混合物を形成し、分析物が存在する場合には、特異的結合メンバー−粒子結合体を分析物と結合させる。その後、米国特許第4,745,077号、4,070,246号及び3,985,649号に記載されているように、磁場を加えて結合体−分析物複合体を固体表面に吸引させ、結合体に結合していない材料を除去する(一般に結合/遊離分離として知られる)。付加洗浄段階後、測定可能なシグナルを発生する前に試薬添加と結合/遊離分離が通常必要である。この種の分析法は一般に発光(化学発光又は蛍光)、酵素による発色団生産後の光吸収、又は着目分析物の量を表すシグナルとしての放射能放出を使用している。一般に、超常磁性粒子の磁気応答性は結合/遊離分離段階で補助的にしか使用されておらず、残りのアッセイ手順は慣用試薬及びプロトコールを使用している。従って、超常磁性粒子を使用する慣用分析は複雑な自動装置(例えばCiba Corning Diagnostics製品ACS180)又は手動アッセイ段階の拡張系列に制限されている。
【0014】
超常磁性粒子の寸法及び組成と、適用磁場の強度及び勾配は粒子に加えられる磁力の大きさを決定する。このような粒子の液体懸濁液に磁場を加えると、各粒子に加えられる磁力の大きさと各粒子の流体力学的抗力は粒子が磁場発生器に向かって液体中を移動する速度を決定する。類似組成の磁気応答性粒子では、適用磁場により個々の粒子に加えられる力、従って液体中のその移動速度はその体積に依存し、抗力はその横断面積により決定される。磁気応答性粒子が小さいほどその横断面積に対して各粒子に加えられる力が小さくなるので適用磁場内をゆっくりと移動し、フェロフルイド等の非常に小さい超常磁性粒子はその周囲の分子のランダム力と同等の力が加えられるので非常にゆっくりと移動する。これらのランダム力は熱(ブラウン)運動に起因する。粒子の寸法が大きくなるにつれてその体積は横断面積よりも迅速に増加し、その結果、磁力は抗力よりも迅速に増加する。ゆっくりと移動する数個の小さい粒子が集合してアグリゲートになると、個々の粒子に作用する力の和がアグリゲートに加えられ、その結果、アグリゲートは個々の粒子よりも迅速に磁場源に向かって液体中を移動する。特定型又は形態の磁気応答性試薬の移動又は捕獲を助長するように適用磁場の強度と勾配を選択することもできる。
【0015】
米国特許第5,108,933号は、そのコロイド性を操作することにより標的物質を含むマイクロアグロメレートに粒子を変換して着目物質を含有する疑いのある試験媒体から種々の標的物質の任意の1種を分離するためにコロイド状磁気応答性粒子を使用可能な方法を開示している。粒子は形成されたアグロメレートを媒体から除去するために十分な実験的閾値を上回る磁性材料から構成されているので、その後、通常の実験室磁石を使用してアグロメレートを媒体から除去することができる。この方法は試験媒体に安定に懸濁することが可能な凝集可能且つ再懸濁可能なコロイド粒子を試験媒体に加え、コロイド粒子と試験媒体中に存在する任意標的物質を含む磁性アグロメレートを形成し、得られた磁性アグロメレートを媒体から分離することにより実施される。しかし、この分析方法は単一種の粒子しか使用しないため、検出しにくい。磁石の近傍の凝集磁性粒子の有無は視覚的手段により簡単にも正確にも測定されない。簡単且つ正確に視覚的に検出可能なインジケーター粒子を使用できるならば望ましい。
【0016】
非磁性インジケーター粒子の使用は米国特許第5,374,531号に記載されており、該特許は白血球表現型又は他の粒状分析物の定量における磁性粒子と非磁性蛍光粒子の同時使用を開示している。磁性粒子と非磁性蛍光粒子はいずれも磁性粒子と非磁性蛍光粒子と所望細胞から構成されるロゼットの形成をもたらす結合物質を含んでいる。ロゼットは磁場を加えることにより試料の非磁性成分から分離され、非磁性蛍光粒子により放出される蛍光量により細胞数を測定することができる。ロゼット形成は標的細胞の周囲に磁性粒子とインジケーター粒子を結合するので標的細胞は磁性粒子及びインジケーター粒子と同等以上の寸法でなければならず、粒状分析物(例えば細胞)の検出にしか適用できない。分子規模の分析物は磁性粒子及びインジケーター粒子よりも著しく小さいので、この特許に記載されているロゼットは分子規模の分析物では形成することができない。
【0017】
分子規模の分析物の存在に相関する磁性粒子と非磁性指示粒子の凝集は米国特許第5,145,784号に記載されている。この特許では、抗原及び/又は抗体をその表面に結合した磁性粒子及び検出可能な非磁性粒子を被分析試料、必要に応じて遊離抗体並びに必要な任意緩衝液、塩及び他の試薬と組み合わせている。抗原と特異的抗体が結合するために十分な条件下で特定時間インキュベーション後に、磁性粒子を磁石で吸引して除去する。その後、検出可能な非磁性粒子の有無及び/又は量を測定し、試料中の着目抗原又は抗体の有無及び/又は量を測定する。この方法は、磁石の位置の近くで分離した磁性/非磁性粒子複合体を直接観察することにより分析物の存在を検出するものではない。
【0018】
米国特許第5,445,970号及び5,445,971号は結合アッセイにおける検出可能なラベルとしての磁気吸引性材料の使用を記載している。磁気ラベルを磁場に暴露すると、ラベルは磁場を加えた結果として合成力又は移動を示す。力又は移動の程度は試料中に存在し得る分析物により変化する。試料中の分析物の存在又は量は生じる力の大きさ又は磁気吸引性材料により示される移動量の原因であるので、磁気吸引性ラベルに及ぼす磁場の効果を試料中の分析物の存在又は量の尺度として使用することができる。このアプローチは、結合した磁気吸引性材料が適用磁場内を移動しないように、分析物の存在により磁気吸引性材料の固相結合度を変化させる必要がある。その後、磁場を加えると、遊離磁気吸引性材料と固相に結合した磁気吸引性材料が分離する。その後、固相に結合した磁気吸引性材料又は遊離磁気吸引性材料に加えられる力を測定すると、試験混合物中に存在する分析物の量が分かる。このアプローチを使用する自動アッセイフォーマットは可能であるが、何らかの形態の非移動性固相に特異的に捕獲する必要がある。
【0019】
用途によっては、分析物濃度を測定するために磁力の測定を必要としないフォーマットのように、微粒子等の移動固相のみを使用するアッセイフォーマットが非常に有利であると思われる。懸濁液から沈殿しない試薬を使用することも有利であると思われる。安定な懸濁液を形成するラテックス粒子を製造することはできるが、安定な懸濁液を形成するために十分小さい超常磁性粒子(フェロフルイドと言う)は磁場源に弱くしか吸引されないので、容易に磁気的に捕獲することができない。また、フェロフルイドは通常、水溶液に不相溶性である。クロマトグラフィー材料を必要としない自動イムノアッセイフォーマットを開発できるならば有利であろう。更に、多数のイムノアッセイに使用でき、製法に起因する試薬変動に容易に適応できる自動イムノアッセイ用媒体を開発できるならば有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,960,691号
【特許文献2】米国特許第4,745,077号
【特許文献3】米国特許第4,070,246号
【特許文献4】米国特許第3,985,649号
【特許文献5】米国特許第5,108,933号
【特許文献6】米国特許第5,374,531号
【特許文献7】米国特許第5,145,784号
【特許文献8】米国特許第5,445,970号
【特許文献9】米国特許第5,445,971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
発明の要約
本発明は試料中の分析物の存在又は量の測定方法に関する。1態様では、本方法は、
(1)前記分析物が移動固相試薬及び磁気応答性試薬と結合して複合体を形成するように、前記試料を前記移動固相試薬及び前記磁気応答性試薬の両者と接触させて反応混合物を形成する段階と、
(2)前記複合体に磁力を加えるように前記反応混合物を磁場に暴露し、前記磁気応答性試薬単独又は前記移動固相試薬単独とは異なる速度での前記複合体の移動又は捕獲により前記磁力の作用を発現させる段階と、
(3)発現の程度を測定し、前記試料中の前記分析物の存在又は量の尺度とする段階を含む。
【0022】
第2の態様では、本方法は、
(1)前記分析物が磁気応答性試薬と結合して前記磁気応答性試薬と前記分析物を含む第1の複合体を形成し且つ前記磁気応答性試薬が移動固相試薬と結合して前記磁気応答性試薬と前記固相試薬を含む第2の複合体を形成するように、前記試料を前記磁気応答性試薬及び前記移動固相試薬と接触させて反応混合物を形成する段階と、
(2)前記複合体に磁力を加えるように前記反応混合物を磁場に暴露し、前記磁気応答性試薬単独又は前記移動固相試薬単独又は前記第1の複合体とは異なる速度での前記第2の複合体の移動又は捕獲により前記磁力の作用を発現させる段階と、
(3)発現の程度を測定し、前記試料中の前記分析物の存在又は量の尺度とする段階を含む。
【0023】
第2の態様の代用では、本方法は、
(1)前記分析物が移動固相試薬と結合して前記移動固相試薬と前記分析物を含む第1の複合体を形成し且つ磁気応答性試薬が前記移動固相試薬と結合して前記磁気応答性試薬と前記固相試薬を含む第2の複合体を形成するように、前記試料を前記磁気応答性試薬及び前記移動固相試薬と接触させて反応混合物を形成する段階と、
(2)前記複合体に磁力を加えるように前記反応混合物を磁場に暴露し、前記磁気応答性試薬単独又は前記移動固相試薬単独又は前記第1の複合体とは異なる速度での前記第2の複合体の移動又は捕獲により前記磁力の作用を発現させる段階と、
(3)発現の程度を測定し、前記試料中の前記分析物の存在又は量の尺度とする段階を含む。
【0024】
磁気応答性試薬は磁気応答性材料に結合した特異的結合メンバーを含む。磁気応答性試薬は超常磁性微粒子又はフェロフルイドに結合した第1の特異的結合メンバーを含むことが好ましい。移動固相試薬は移動固相材料に結合した特異的結合メンバーを含む。移動固相試薬はポリマー微粒子又はラテックス等の移動固相粒子に結合した第2の特異的結合メンバーを含むことが好ましい。
【0025】
一般にサンドイッチフォーマットとして知られる第1の態様では、両方の特異的結合メンバーが分析物に同時に結合できるように、第1の特異的結合メンバーは分析物と特異的に結合するように選択し、第2の特異的結合メンバーも同様に分析物と特異的に結合するように選択する。分析物の存在下又は分析物の濃度が特定閾値を上回る場合には、第1及び第2の特異的結合メンバーはいずれも分析物と特異的に結合し、分析物と、第1及び第2の特異的結合メンバーと、夫々第1及び第2の特異的結合メンバーが結合した磁気応答性試薬及び固相試薬を含む検出可能な量の複合体を形成する。分析物の不在下又は分析物の濃度が特定閾値を下回る場合には、形成される両者結合メンバーを含む複合体の量はアッセイの閾値を下回る。
【0026】
この第1の態様の変形例では、移動固相試薬を磁気応答性試薬に置き換えることができる。この変形例では、分析物の存在下又は分析物の濃度が特定閾値を上回る場合には、第1及び第2の特異的結合メンバーはいずれも分析物と特異的に結合し、分析物と、第1及び第2の特異的結合メンバーと、夫々第1及び第2の特異的結合メンバーが結合した磁気応答性試薬を含む検出可能な量の複合体を形成する。分析物の不在下又は分析物の濃度が特定閾値を下回る場合には、形成される両者結合メンバーを含む複合体の量はアッセイの閾値を下回る。
【0027】
一般に競合フォーマットとして知られる第2の態様では、特異的結合メンバーの一方は分析物により示されるエピトープを示す。特異的結合メンバーの一方はこのエピトープと結合するように選択され、このエピトープは他方の特異的結合メンバーによっても示される。分析物の不在下又は分析物の濃度が特定閾値を下回る場合には、特異的結合メンバーは相互に結合し、特異的結合メンバーと、特異的結合メンバーが結合した磁気応答性試薬及び固相試薬を含む複合体を形成する。分析物の存在下又は分析物の濃度が特定閾値を上回る場合には、特異的結合メンバーの一方は分析物と結合し、分析物が他方の特異的結合メンバーと結合して磁気応答性試薬と移動固相試薬を含む複合体を形成するのを阻止する。
【0028】
本発明の方法は、磁気応答性試薬の粒子が移動固相試薬の粒子と結合して複合体を形成するのを調節するために分析物の存在を使用するという点で有利である。適用磁場において、複合体は磁気応答性試薬の個々の粒子の磁気応答及び移動固相試薬の個々の粒子の磁気応答とは異なる磁気応答を示す。このような分析物により調節される複合体形成は、例えば超常磁性粒子と反磁性粒子のように非常に異なる磁気応答性の程度を示す粒子間で得られる。得られる複合体は超常磁性粒子の存在により、磁場源に吸引される。複合体形成により得られる複数の常磁性、超常磁性又はフェロフルイド粒子を含む複合体の応答は、試料中に存在する分析物の存在又は量の尺度として利用することができる。磁気応答性試薬の粒子と移動固相試薬の粒子を含む複合体の形成に起因するこれらの粒子の磁気応答の変化は、適用磁場内のいずれかの型の粒子の移動速度の変化、又は適用磁場源に近い位置におけるいずれかの型の粒子の蓄積速度の変化、又は適用磁場源に近い位置における粒子含有複合体の検出可能な蓄積として発現させることができる。
【0029】
本発明は更に試料中の分析物の存在又は量の測定装置も提供する。このような装置の1例は、(i)未結合磁気応答性試薬と複合体形態で移動固相試薬に結合した磁気応答性試薬を試料中の分析物の量に関連して生成する反応容器と、(ii)試験混合物に磁場を加えるための磁場発生器と、(iii)試料中の分析物の存在又は量の尺度として磁気応答性試薬又は移動固相試薬又はその両者の応答性の変化を評価するための測定手段を含む。本発明に利用可能な磁場発生器としては、永久磁石と電磁石が挙げられる。本発明の装置に好ましい測定手段は以下のエレメントの1種以上を含む。
(1)複合体の磁気分離中又は後に適用磁場により試薬に加えられる力の変動又は試薬により磁場源に加えられる力の変動を測定することにより複合体形成の程度を測定するための天秤手段。
(2)複合体中の試薬から未結合試薬を磁気分離することにより複合体形成の程度を測定するための視覚装置。
(3)(a)移動固相試薬に結合した磁気応答性試薬の磁気捕獲による複合体形成の程度と未結合磁気応答性試薬もしくは移動固相試薬の分離を測定するか又は(b)毛管チャネル内の移動により両者試薬を測定するための視覚装置又は光学装置。
(4)複合体の磁気分離中又は後に複合体の分布変化により生じる磁場の撹乱を測定することにより複合体形成の程度を測定するためのホール効果トランスデューサー又は他の装置。
(5)複合体の磁気分離中又は後に反応混合物の光学濃度の変動を測定することにより複合体形成の程度を測定するための光学装置。
(6)複合体の磁気分離中又は後に磁気的に捕獲された複合体に加えられる力による光反射面の反射率の変化を測定することにより複合体形成の程度を測定するための光学装置。
【0030】
イムノアッセイを実施するための慣用ストリップ装置に代用可能な自動イムノアッセイ装置の1態様では、慣用自動イムノアッセイ装置の多孔質マトリックスに固定されるものと同様の特異的結合メンバーを磁気応答性材料の粒子(例えば超常磁性粒子)に固定し、得られた磁気応答性試薬を試薬混合物に加える。試料を試薬混合物と接触させて試験混合物を形成し、多孔質マトリックスでなくチャネルに流す。慣用装置の反応ゾーンでは多孔質マトリックスに非拡散的に結合した特異的結合メンバーと可視インジケーター粒子の間に一般に結合が生じていたが、このような結合を磁気応答性試薬と可視反磁性インジケーター試薬の間に生じることができる。チャネルに沿う特定位置に磁石を配置し、反磁性インジケーター試薬に結合した磁気応答性試薬を吸引する。磁石に吸引された結合反磁性インジケーター試薬の存在は視覚的又は光学装置により検出することができ、試料中の分析物の存在又は量を表す。本発明の原理を使用するアッセイは例えばキュベット、ウェル、チューブ等の慣用反応容器でも簡便に実施できることにも留意すべきである。磁気応答性試薬を可視性にし、反磁性試薬を透明即ち非可視性にし、蓄積した磁気応答性試薬のみを観察することにより視覚的又は光学装置により分析物の存在又は量を検出してもよいことにも留意すべきである。更に、磁気応答性試薬と反磁性試薬の両方を可視性にし、蓄積した磁気応答性試薬と可視反磁性試薬を観察することにより視覚的又は光学装置により分析物の存在又は量を検出してもよい。
【0031】
本発明の特有の利点は、手で握れる大きさの自給式装置によりイムノアッセイを簡単に実施できることである。磁気応答性試薬を含む複合体を反磁性移動固相試薬から分離するには、通常の磁気記録テープ又はクレジットカード磁気ストリップの磁場で十分である。これらの複合体の存在は、複合体内の反磁性固相材料の存在により視覚的に簡単且つ確実に観察することができる。本発明の別の特有の利点は、利用する磁気応答性試薬と移動固相試薬に適合する磁気捕獲ゾーンを形成できることである。磁場とその勾配は磁気応答性試薬の最適吸引を提供するように規定することができる。磁気捕獲部位を使用すると、自動アッセイで視覚手段により半定量的読み値を提供することができる。磁気捕獲部位は、アッセイ試薬におけるロット間の変動を補償するための手段を提供するように調節することができる。上述のように、慣用結合アッセイで使用されている試薬は通常、複雑な生物学的混合物であり、製法によりロット間で変動する傾向がある。サンドイッチアッセイフォーマットでは、磁気応答性試薬の粒子を移動固相試薬の粒子に対して非常に小さくできるので、磁場の強度及び勾配を調節することにより磁気応答性試薬の磁気挙動を調節することが可能である。移動固相試薬の粒子が磁気応答性試薬の粒子に対して大きい場合でも移動固相試薬の粒子の捕獲を調節することも可能である。磁気応答性試薬の未結合粒子を捕獲せずに移動固相試薬の粒子と磁気応答性試薬の粒子を含む複合体を最も効率的に捕獲するために、移動固相試薬の粒子の寸法と同等の距離で変化する磁場勾配を提供することができる。このような磁場は製造中に磁化性材料にコード化することができる。
発明の詳細な説明
本発明には以下の定義を適用することができる。
【0032】
本明細書で使用する「試料」なる用語は分析物を含む疑いのある材料を意味する。試料は供給源から得られたまま直接使用してもよいし、試料の特性を変えるように前処理後に使用してもよい。試料は任意生物源から得ることができ、非限定的な例として例えば血液、唾液、水晶体液、脳髄液、汗、尿、乳汁、腹水、粘液、滑液、腹膜液、羊膜液等の体液;発酵ブロス;細胞培養液;化学反応混合物等が挙げられる。試料は使用前に前処理してもよく、例えば血液から血漿を調製したり、粘液を希釈したりすることができる。処理方法としては、濾過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活化及び試薬の添加が挙げられる。生物学的液体又は体液に加え、水、食品等の他の液体試料を使用して環境又は食品製造アッセイを実施することもできる。更に、分析物を含む疑いのある固体材料を試料として使用してもよい。場合によっては、液体媒体を形成したり分析物を放出するように固体試料を処理すると有益であると思われる。
【0033】
本明細書で使用する「特異的結合メンバー」なり用語は、結合対即ち化学又は物理的手段により一方が他方に特異的に結合する2個の異なる分子の一員を意味する。周知抗原抗体結合対メンバーに加え、他の結合対の非限定的な例としては、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、相補的ペプチド配列、エフェクター分子とレセプター分子、酵素補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素、ペプチド配列と該配列又は完全タンパク質に特異的な抗体、ポリマー酸とポリマー塩基、色素とタンパク質結合剤、ペプチドと特異的タンパク質結合剤(例えばリボヌクレアーゼSペプチドとリボヌクレアーゼSタンパク質)、糖と硼酸、及び結合アッセイでそれらの結合を可能にするアフィニティーをもつ類似分子が挙げられる。更に、結合対は元の結合メンバーの類似体であるメンバー(例えば組換え技術や分子操作により作製される分析物類似体又は結合メンバー)を含む場合もある。結合メンバーが免疫反応体である場合には、例えば抗体、抗原、ハプテン又はその複合体とすることができ、抗体を使用する場合にはモノクローナル又はポリクローナル抗体、組換えタンパク質又は抗体、キメラ抗体、その混合物又はフラグメント、及び抗体と他の結合メンバーの混合物とすることができる。このような抗体、ペプチド及びヌクレオチドの製造と、結合アッセイにおける結合メンバーとしてのそれらの使用適性の詳細は当業者に周知である。
【0034】
本明細書で使用する「分析物」又は「着目分析物」なる用語は、検出又は測定しようとする化合物又は組成物を意味し、少なくとも1個のエピトープ又は結合部位をもつ。分析物は天然結合メンバーが存在するか又は結合メンバーを製造できるものであれば任意物質とすることができる。分析物の非限定的な例としては、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、アミノ酸、炭水化物、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬剤(治療目的に投与されるものと誘発目的に投与されるものを含む)、ウイルス粒子及び上記物質の任意のものの代謝物又は抗体が挙げられる。例えば、このような分析物の非限定的な例としては、フェリチン;クレアチニンキナーゼMIB(CK−MB);ジゴキシン;フェニトイン;フェノバルビトール;カルバマゼピン;バンコマイシン;ゲンタマイシン;テオフェリン;バルプロン酸;キニジン;黄体形成ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);エストラジオール、プロゲステロン;IgE抗体;ビタミンB2ミクログロブリン;グリコヘモグロビン(Gly.Hb);コルチゾール;ジギトキシン;N−アセチルプロカインアミド(NAPA);プロカインアミド;風疹IgG及び風疹IgM等の風疹抗体;トキソプラズマ症IgG(Toxo−IgG)及びトキソプラズマ症IgM(Toxo−IgM)等のトキソプラズマ症抗体;テストステロン;サリチル酸塩;アセトアミノフェン;B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg);抗B型肝炎コア抗原IgG及びIgM(抗HBC)等のB型肝炎コア抗原に対する抗体;ヒト免疫不全ウイルス1及び2(HTLV);Be型肝炎抗原(HBeAg);Be型肝炎抗原に対する抗体(抗HBe);甲状腺刺激ホルモン(TSH);チロキシン(T4);全トリヨードチロニン(全T3);遊離トリヨードチロニン(遊離T3);胎児性癌抗原(CEA);α胎児タンパク質(AFP);並びに中毒及び規制物質の薬物(非限定的な例としてアンフェタミン;メタンフェタミン;例えばアモバルビタール、セコバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール及びバルビタール等のバルビツール酸塩;例えばリブリウム及びバリウム等のベンゾジアゼピン;例えばハシシュ及びマリファナ等の大麻類;コカイン;フェンタニル;LSD;メタカロン;例えばヘロイン、モルヒネ、ゴデイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、メタドン、オキシコドン、オキシモルホン及び阿片等の阿片剤;フェンシクリジン及びプロポキシフェン)が挙げられる。「分析物」なる用語は任意抗原性物質、ハプテン、抗体、巨大分子及びその組み合わせも含む。
【0035】
本明細書で使用する「分析物類似体」なる用語は分析物特異的結合メンバーと交差反応する物質を意味し、反応の程度は分析物自体よりも高度であるか低度であるかは問わない。分析物類似体は分析物類似体が着目分析物と共通の少なくとも1個のエピトープ部位をもつ限り、改変分析物でもよいし、分析物分子の断片化部分又は合成部分でもよい。分析物類似体の1例は、分析物類似体が分析物特異的結合メンバーと結合できるように完全分子分析物の少なくとも1個のエピトープを複製した合成ペプチド配列である。
【0036】
本明細書で使用する「磁性」なる用語は磁場にあるときに磁化することが可能な物質を意味する。
【0037】
本明細書で使用する「常磁性」なる用語は、誘導磁場が磁化磁場と同一方向であるが、強磁性材料よりも著しく弱い物質を意味する。鉄、ニッケル又はコバルト等の強磁性材料は高い透磁率と、比較的弱い磁場で高い磁化を獲得する能力と、特徴的飽和点と、磁気ヒステリシスを示す。「常磁性」なる用語は磁化率が正である物質を意味する。
【0038】
本明細書で使用する「反磁性」なる用語は、誘導磁場が磁化磁場と逆方向である物質を意味する。「反磁性」なる用語は磁化率が負である物質を意味する。
【0039】
ある材料の磁性はこの材料を構成する原子の固有電子スピンにより生じる。鉄等の元素中の不対電子のスピンは完全原子にスピンを与える。このような材料に磁場を加えると、個々の原子のスピンは磁場と整列してそれらのエネルギーを最小にし、純磁気モーメントを生じる傾向がある。強磁性材料のように応答原子が密に充填されている場合には、相互に作用して長距離磁気秩序を形成する。適用磁場の強度が増すにつれて強磁性材料の磁化は増すが、応答原子のほぼ全部が整列すると、磁化のそれ以上の増加は観察されず、材料は飽和したと言える。その後、適用磁場の強度が低下する間に強磁性材料は顕著なヒステリシスを示し、適用磁場の完全な除去後に材料はその長距離磁気秩序を部分的に保存し、永久磁化する。
【0040】
常磁性と呼ぶ材料のうちには、高い磁気応答を示す個々の原子が低い磁気応答を示す他の元素の原子に囲まれているものもある。適用磁場に暴露すると、高い磁気応答を示す原子は磁場と整列するが、相互作用せず、長距離磁気秩序を形成することができない。顕著な飽和は観察されず、磁場を除去してもヒステリシスは示されず、個々の原子のスピンはランダム方向に戻り、全残留磁気モーメントは失われる。
【0041】
超常磁性材料は常磁性と強磁性の特徴を示す。強磁性材料の小粒子が低い磁気応答を示すマトリックス中に分散されている場合には、単一粒子内の原子は磁場におかれると整列して相互作用する。しかし、隣接粒子の原子には作用せず、その結果、長距離磁気秩序は形成されない。超常磁性材料は磁場に暴露すると常磁性材料よりも高度に磁化することができるが、超常磁性粒子は磁場を除去した後に残留磁性をほとんど示さない。
【0042】
磁性、強磁性、常磁性、超常磁性及び反磁性に関する更に詳細については、参考資料として本明細書の一部とするJiles,Introduction to Magnetism and Magnetic Materials,Chapman & Hall(London:1991)に記載されている。
【0043】
本明細書で使用する「磁気応答性試薬」なる用語は、特異的結合メンバーに結合した磁気応答性材料を含む物質を意味する。結合は共有又は非共有結合手段、結合手等により得られる。しかし、結合方法は本発明に重要ではない。本明細書で使用する「磁気応答性材料」なる用語は、磁場を加えると、試料中の分析物の量に直接又は間接的に関連する検出可能な応答を磁気応答性試薬に発生させることが可能な物質である。試薬の特異的結合メンバーは、分析物に直接結合するか又は追って詳述する補助特異的結合メンバーにより分析物に間接的に結合するように選択することができる。磁気応答性試薬は磁気応答性試薬を試料及び/又は他のアッセイ試薬に接触させる前、接触中、接触後のいずれに補助特異的結合メンバーに結合してもよい。「磁気応答性粒子に結合した特異的結合メンバー」、「磁気応答性材料に結合した特異的結合メンバー」、「磁気応答性試薬に結合した特異的結合メンバー」等の用語は、本発明の磁気応答性試薬の主特徴を表すために使用し、即ち試薬は磁場に暴露されると検出可能な応答を発生する。
【0044】
本明細書で使用する「固相」なる用語は、分析物、分析物複合体又はアッセイ試薬が結合し、未反応アッセイ試薬、試料又は試験溶液を分離できない任意材料を意味する。固相は一般にその表面に結合して「固相試薬」を形成する特異的結合メンバーをもち、分析物、磁気応答性試薬又は別のアッセイ試薬を結合することができる。固相に結合される特異的結合メンバーは分析物に直接結合するか又は補助特異的結合メンバーを介して分析物に間接的に結合するように選択することができ、前記補助メンバーは固相試薬を試料及び/又は他のアッセイ試薬と接触する前、接触中又は接触後のいずれに固相試薬に結合してもよい。
【0045】
当然のことながら、固相は複数成分を含んでいてもよく、固定化特異的結合メンバーを固相の任意又は全成分に直接結合してもよい。例えば、多重成分固相としては、物理、化学又は生化学的手段により固相の第2又は補助成分の内側に物理的に閉じ込められるか又は保持されて固定化された固相試薬を挙げることができる。別の例として、分析物特異的結合メンバーを不溶性微粒子に結合した後、多孔質材料に保持してもよい。「保持」とは、微粒子が一旦多孔質材料に配置されると、多孔質材料の内側の別の位置に実質的に移動できないことを意味する。それ自体固相試薬であり得る第1の固相成分を固相試薬の補助成分に保持するのは、第1の固相成分を試料及び/又は他のアッセイ試薬と接触する前、接触中又は接触後のいずれに行ってもよい。しかし、殆どの態様では、特異的結合メンバーを単一固相成分に結合した後に、こうして形成された移動固相試薬を試料又は他のアッセイ試薬と接触させる。本発明の固相試薬は非実質的レベルの磁気応答性を示す。
【0046】
本明細書で使用する「複合体」なる用語は、1種以上の特異的結合反応により1種以上の材料を別の材料と結合することにより形成される物質を意味する。複合体の非限定的な代表例としては、(a)磁気応答性試薬と移動固相試薬の特異的結合反応により形成される複合体、(b)分析物と磁気応答性試薬及び移動固相試薬の特異的結合反応により形成される複合体、(c)分析物と磁気応答性試薬の特異的結合反応により形成される複合体、並びに(c)分析物と移動固相試薬の特異的結合反応により形成される複合体が挙げられる。
【0047】
本明細書で使用する「補助結合メンバー」なる用語は、磁気応答性試薬又は移動固相試薬の特異的結合メンバー以外にアッセイで使用される結合対の任意メンバーを意味する。例えば、分析物自体が磁気応答性試薬に直接結合できない場合に、補助結合メンバーは磁気応答性試薬を着目分析物に結合することができない。当然のことながら、同一アッセイで1種以上の補助結合メンバーを使用してもよく、このような補助結合メンバーは磁気応答性試薬又は移動固相試薬を試料又は他のアッセイ試薬と接触させる前、接触中又は接触後のいずれに磁気応答性試薬又は移動固相試薬に結合してもよい。補助結合メンバーはアッセイ装置に組み込んでもよいし、別の試薬溶液として装置に加えてもよい。
【0048】
発明の説明
ある材料を磁場の作用下に置くと、磁場源に向かう力又は磁場源から遠ざかる力が材料に作用する。例えば、磁鉄鉱のように磁気応答性の強い強磁性材料に作用する力は磁場源に向かう。同一磁場で、ポリスチレン等の反磁性材料に作用する著しく弱い力は磁場源から遠ざかる。磁気応答性材料の応答の程度は、磁気応答性材料の存在量の尺度として使用することができる。本発明は、磁気応答性材料を結合アッセイで磁気応答性試薬の成分として使用すると、磁気応答性試薬と適用磁場の相互作用に起因する応答の程度を測定することにより、遊離磁気応答性材料又は複合体に取り込まれた磁気応答性材料の一方又は両方の存在又は量を検出できるという予想外の驚くべき発見に基づく。磁場に対する磁気応答性試薬の応答は、例えば磁気応答性材料の検出可能な移動又は磁気応答性材料が加えるかもしくは磁気応答性材料に加えられる検出可能な合成力等の方法で発現できる。更に、力の強度又は移動の程度は固相材料に結合した磁気応答性材料の量と一定の関係があるので、試料中の分析物の存在又は量を測定することができる。例えば、流体(例えばフェロフルイド)に懸濁した強磁性材料の個々の粒子に磁場が加える力は比較的小さいので、検出しにくい。しかし、これらの個々の強磁性粒子が集まって例えば特異的結合メンバーにより直接又は特異的結合メンバーにより分析物に同時に特異的に結合することにより間接的に反磁性固相材料に結合すると、流体に懸濁した個々の複合体に磁場が加える力は比較的高くなるので、著しく容易に検出可能になる。複合体からの個々の粒子の分離と磁場内の複合体の移動は、本発明の方法及び装置の基礎である。
【0049】
アッセイ試薬
磁気応答性材料の特定組成の選択は本発明に重要ではない。別のアッセイ試薬又は試料中に存在する成分に結合する特異的結合メンバーに磁気応答性材料を結合するか、又は結合できるように修飾することが好ましい。磁場に暴露すると、結合した磁気応答性試薬と未結合磁気応答性試薬を分離し、検出可能な応答を発生できるような程度まで磁気応答性材料が磁気応答性であることも好ましい。本発明の目的では、磁場適用により影響を受ける場合、例えば磁場源に吸引されるか又は検出可能な磁化率をもつ場合に材料は磁気応答性である。試薬の磁気応答成分又は特異的結合メンバー成分のいずれかを変化させることにより、種々の磁気応答性試薬を形成することができる。当然のことながら、検出しようとする分析物とアッセイ技術の所望の最適化を考慮して選択しなければならない。
【0050】
磁気応答性試薬で使用するのに適した磁気応答性材料は多種多様のものが市販されており、又はその製造方法が当該技術分野で周知である。磁気応答性材料の好ましい特性は、多種多様の磁性材料により達成できる。本発明で使用するのに適した磁気応答性材料の非限定的な例としては強磁性材料、フェリ磁性材料、常磁性材料、超常磁性材料等が挙げられる。「強磁性」なる用語は、磁石に吸引され、一般に磁場に暴露されると永久磁化する材料を表すために一般に使用される。強磁性材料は粒子の各々が単一磁区となるような粒度に細分することもできる。これらの粒子をマトリックスに分散すると、微粒子又はフェロフルイド粒子を形成することができる。この細分状態では、材料は「超常磁性」であると言うことができ、測定可能な有意永久磁化の存在を特徴とする。本発明でマトリックスとして使用するのに適した材料の非限定的な例としては例えばポリスチレン等の有機ポリマーが挙げられる。
【0051】
利用可能な強磁性、フェリ磁性、常磁性及び超常磁性材料の非限定的な例としては、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン等の金属;ネオジム、エルビウム等のランタニド系元素;アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅等の磁性合金等の合金;酸化第2鉄(Fe3O4)、g−酸化第2鉄(g−Fe3O4)、酸化クロム(CrO2)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO2)、酸化マンガン(Mn2O3)等の酸化物;フェライト等の複合材料;及び磁鉄鉱と酸化鉄等の固溶体が挙げられる。本発明で使用するのに好ましい磁気応答性材料は磁鉄鉱、酸化第2鉄(Fe3O4)及び酸化第1鉄(Fe2O3)である。
【0052】
固体粒子は鉄、酸化鉄、金属酸化物を被覆した磁気応答性材料のコア、又は磁鉄鉱もしくは赤鉄鉱を含むコロイド状磁性粒子から作製することができる。固体粒子は一般に8までの比重と、800nmまでの平均寸法(例えば直径)をもつ。
【0053】
積層粒子は非磁気応答コーティングをもつ磁気応答性材料のコアから構成することができる。例えば、積層粒子は一般にポリマーシランコートに包まれた磁性金属酸化物のコアから構成することができ、また、積層粒子は生物親和性をもつ化合物に結合するのに適したアミノ安息香酸とアルデヒドの縮合産物を被覆した非水溶性金属支持体から構成することができる。積層粒子はその表面に反応性基をもつ非水溶性架橋ポリマー材料のコーティングをもつ磁気応答性材料の単一粒子から形成されるコアから構成することができる。積層粒子は磁気応答性材料のコーティングをもつ非磁気応答性材料のコアから構成することができる。積層粒子はフェライトコーティングをもつ有機ポリマー粒子から構成することができ、積層粒子は(コアの表面の少なくとも一部に)磁気応答性材料のコーティングをもつ熱可塑性材料のコアから構成することができ、積層粒子は金属を被覆したポリアルデヒドマイクロスフェアから構成することができ、積層粒子はコアを均一に覆う磁気応答金属酸化物/ポリマーコーティングをもつポリマー粒子(例えばポリスチレン)のコアから構成することができる。積層粒子は磁気応答性材料と非磁気応答コーティングの層をもつ非磁気応答性材料のコアから構成することができる。例えば、積層粒子はアガロースに封入した金属被覆ポリアルデヒドマイクロスフェアと、ビーズの表面に結合した磁気応答粉末1〜25重量%をもつ熱可塑性樹脂ビーズ(例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ナイロン等)と、これを被覆し、生物活性成分と結合するための官能基をもつポリマーを含むことができる。
【0054】
複合粒子は非磁気応答性材料に埋封した磁気応答性材料から構成することができる。複合粒子の代表例としては、(a)ガラス及び/又は結晶構造の内側に組み込まれた鉄含有磁性結晶(<1000Å)、(b)金属錯体と配位しない少なくとも1種のモノエチレン性モノマー(30〜99重量%)と、金属錯体と配位しない少なくとも1種の架橋性ポリエチレン性モノマー(0.5〜50重量%)と、金属錯体と配位可能な少なくとも1種の求核性モノマー(0.5〜30重量%)と、金属の封入クリスタリットから形成されるコポリマーマトリックス、(c)オルガノポリシロキサンマトリックスに封入された300Å未満の平均寸法(例えば直径)をもつ磁化可能粒子、(d)利用可能な配位部位(遷移金属原子との配位結合に利用可能な自由電子対)をもつ水溶性ポリマーと水溶性形態の鉄の粒状反応生成物、(e)磁気応答性材料を含む有機、無機又は合成ポリマーマトリックス、(f)磁気応答性材料と(木炭、タルク、イオン交換樹脂、フラー土、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、多孔質ガラス、ゼオライト、天然又は合成ポリマー、重合一次もしくは二次抗体又は重合酵素、粒状形態の細胞表面抗原又はレセプター、細胞以下の粒子及び細菌細胞から選択される)粒状吸着剤を分散(埋封)させた非水溶性ポリマーマトリックスの連続相、(g)磁気応答固体の存在下に1種以上のモノマーを重合し、固体を均一に埋封した合成非水溶性ポリマーマトリックスを形成することにより製造される粒子、(h)高分子量ポリマー(例えばポリスチレン)の有機溶剤溶液と、粒状磁気応答性材料と、多官能性架橋剤(例えばポリアルデヒド)を配合することにより製造される架橋タンパク質又はポリペプチドと磁気応答性材料の粒子、(i)0.03〜5μmの平均直径をもつ疎水性ビニル芳香族ポリマー粒子と、ポリマー粒子の内側に分散され、粒子のポリマー部分に対して0.5〜50重量%の量の磁気応答性材料、(j)金属、金属合金、金属酸化物、金属塩、金属硫化物、顔料及び金属キレート化合物から構成される群から選択される充填剤と、充填剤の上に配置された親油性表面層と、充填剤を覆う親油性表面層の上に配置されたポリマー材料の層が挙げられる。
【0055】
マトリックス又は複合粒子として形成される磁気応答性試薬は、場合により磁気応答性材料、非磁気応答性材料又はその混合物の付加コーティング又は層を含んでいてもよい。マトリックス組成物は、非限定的な例として、(1)磁気応答性材料を選択モノマーと重合させたり、(2)磁気応答性材料をマトリックス内の細孔に導入してマトリックス材料を膨潤させる等の種々の方法の任意のものにより製造することができる。マトリックスしては例えばガラス、セルロース、合成ポリマー材料、アガロース等の有機及び無機材料を挙げることができる。本発明に利用可能なポリマー材料の非限定的な例としては、スチレンのポリマー、置換ポリスチレン、ポリナフタレン誘導体、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリメタクリルアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリピロール、ポリアミノ芳香族酸、ポリアルデヒド、タンパク性材料(例えばゼラチン、アルブミン等)、多糖類(例えば澱粉、デキストラン等)、並びにポリマー材料のコポリマーが挙げられる。ポリマーを不活性充填剤と混合使用してもよいし、吸着剤を加えてもよい。
【0056】
本発明で使用するのに適した磁気応答性材料の粒子は実質的に球形であることが好ましいが、他の形状も利用でき、場合によっては有利である。他の可能な形状の非限定的な例としては、プレート、ロッド、バー及び異形が挙げられる。磁気応答性材料の粒子の直径は好ましくは約0.01ミクロン(μm)〜約1,000μm、より好ましくは約0.01μm〜約100μm、最も好ましくは約0.01μm〜約10μmである。当業者に自明の通り、磁気応答性材料の組成、形状、寸法及び密度は広い範囲をとることができ、磁気応答性材料は着目分析物や所望アッセイプロトコール等の因子に基づいて選択することができる。
【0057】
本発明の1態様によると、磁気応答性材料の粒子は反応混合物の内側に懸濁し続けて特異的結合メンバーの反応性を増すような比重をもつように選択することができる。一般に、約0.03μm(300Å)未満の平均直径をもつ小さい磁気応答性粒子は自然沈殿せずに熱撹拌により溶液に懸濁し続けることができる。代替態様では、磁気応答性材料の粒子は反応混合物中に沈殿して固相上の固定化試薬に対する特異的結合メンバーの反応性を増すような比重をもつように選択することができる。一般に、例えば約10μmを上回る平均直径をもつ磁気応答性材料の大きい粒子は弱い磁場に応答することができる。磁気応答性材料の大きい粒子即ち粗粒子を使用してもよいが、このような粒子はインキュベーション段階中に粒子が沈殿しないように反応混合物を撹拌又は震盪する必要がある。別の態様では、磁気応答性材料の粒子は撹拌又は混合の必要なしに必要な結合反応を可能にするために十分な時間にわたって反応混合物に分散し続けるように選択することができる。
【0058】
磁気反応試薬を形成する際には、非限定的な例として吸着、共有結合、(化学的又は結合メンバーを介する)架橋、このような結合メカニズムの組み合わせ等の任意の適切な結合メカニズムにより磁気反応材料の結合メンバーの結合を達成することができる。一般に、結合基と結合剤は、磁気応答性材料に結合した場合に特異的結合メンバーの結合活性が実質的に変化又は損なわれないように選択される。磁気応答性材料に結合可能な結合メンバーの量はその濃度、使用する条件及び磁気応答性材料又は結合剤上の利用可能な官能基の量と種類に主に依存する。
【0059】
特異的結合メンバーは磁気応答性材料に共有結合することが好ましく、共有結合は一方の成分と他方の成分の化学活性形態の間で形成することができる。例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド等の活性エステルを一方の成分に導入して他方の成分上の遊離アミンと反応させ、両者の共有結合を形成することができる。他の非限定的な例としては、一方の成分にマレイミドを導入した後、他方の成分上に内在するか又は導入したスルフヒドリル部分と反応させてもよいし、一方の成分上に内在するか又は導入した炭水化物基を酸化してアルデヒドを形成し、他方の成分上の遊離アミン又はヒドラジドと反応させてもよい。磁気吸引性ラベルがポリマーコーティング又はマトリックスを含む場合には、ポリマーは特異的結合メンバーの結合を助長するために例えばアジド、ブロモアセチル、アミノ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、エポキシド、カルボン酸又は他の基等の適切な反応性基を含むか又はこのような基を付加できるように選択することができる。利用可能な試薬と、磁気応答性試薬を合成するための結合技術は当業者に周知である。当然のことながら、磁気応答性試薬の合成方法は本発明を限定するものではない。
【0060】
固相材料及び移動固相試薬は、一般に非限定的な例としてポリマー(例えばスチレンのポリマー)、置換ポリスチレン、ポリナフタレン誘導体、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリメタクリルアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリピロール、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ガラス又は他のガラス状材料、ポリアミノ芳香族酸、ポリアルデヒド、タンパク性材料(例えばゼラチン、アルブミン等)、多糖類(例えば澱粉、デキストラン等)、並びにポリマー材料のコポリマー等の材料から構成することができる。
【0061】
別の例としては、天然材料、合成材料又は人工的に処理した天然材料も固相材料として使用できる。このような材料の非限定的な例としては、多糖類(例えば紙等のセルロース材料と、酢酸セルロースやニトロセルロース等のセルロース誘導体)、シリカ、シリコン粒子、無機材料(例えば不活性アルミナ又は多孔質ポリマーマトリックスに均一に分散した他の無機微粉材料)が挙げられる。ポリマーマトリックスはポリマー(例えば塩化ビニルのポリマー、塩化ビニルとプロピレンのコポリマー、及び塩化ビニルポリマーと酢酸ビニルのコポリマー)、天然及び合成繊維(例えば綿、ナイロン等)、多孔質ゲル(例えばシリカゲル、アガロース、デキストラン、ゼラチン等)、ポリマーフィルム(例えばポリアクリレート等)、タンパク結合膜等から構成することができる。固相は更に、非限定的な例としてはポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ガラス等の任意の適切な型の材料から選択可能な微粒子から構成することができる。
【0062】
固相材料は妥当な強度をもつか、又は支持体によりこのような強度を与えることが好ましいが、固相材料は検出可能なシグナルの発生を妨げないことが好ましい。当然のことながら、固相材料は一般に磁気応答性材料よりも比較的低い磁気応答性を示し、例えば実質的に磁場に左右されないようにこのような材料を配置することにより、アッセイに与えるその磁気寄与を修正することができる。あるいは、固相材料の効果を磁気応答性材料の効果から区別してもよい。別の代替例として、このような材料を脱磁化してもよい。
【0063】
特異的結合メンバーを固相に結合して移動固相試薬を形成する手段は、磁気応答性試薬の合成に関して上記に要約した共有結合と非共有結合の両者を含む。共有結合により特異的結合メンバーを固相に結合することが一般に好ましい。
アッセイ方法及び装置
本発明の方法及び装置は、非限定的な例として上記結合対メンバー等の特異的結合対メンバーを利用する任意の適切なアッセイフォーマットに適用することができる。本発明のアッセイ方法は磁場の作用に対する磁気応答性試薬の応答を利用して特異的結合対メンバー間の結合を定性的又は定量的に測定する。本発明によると、磁気応答性試薬が移動固相試薬に結合する程度により分析物の存在を測定する。磁場の作用に対する磁気応答性試薬、移動固相試薬又はその両者の応答は結合の程度により変化する。従って、磁場に対する磁気応答性試薬、移動固相試薬又はその両者の応答を測定することにより、試料に含まれる分析物の存在又は量を正確に測定することができる。
【0064】
本発明の磁気応答性試薬及び装置は種々のイムノアッセイフォーマットで使用することができる。しかし、本発明はイムノアッセイに限定されない。一般に、特異的結合対メンバーと例えば本発明で使用される超常磁性微粒子等の磁気応答性試薬を使用する任意アッセイ構成を実施することができる。イムノアッセイフォーマットは当業者に周知であり、例えばその全開示内容を参考資料として本明細書の一部とする米国特許第5,252,459号に記載されている。イムノアッセイフォーマットは特に米国特許第5,252,459号の第5欄、55行〜第9欄、62行に詳細に記載されている。
【0065】
本発明は当該技術分野で周知の種々の競合アッセイフォーマット及びサンドイッチアッセイフォーマットに適用可能である。試料中の分析物の存在に関して標識試薬を液相と固相に分離する多数の競合、阻害及びサンドイッチアッセイフォーマットが記載されている。
【0066】
競合アッセイフォーマットによると、磁気応答性試薬は磁気応答性試薬を形成するように磁気応答性材料に結合した第1の結合メンバー(例えば分析物類似体)から構成することができる。移動相試薬は磁気応答性試薬に結合した第1の結合メンバーと分析物に特異的に結合する第2の結合メンバーを結合したポリマーラテックス又は微粒子等の移動固相材料から構成することができる。アッセイ中に、試料中の分析物と磁気応答性試薬は移動固相試薬上の結合部位について競合する。あるいは、磁気応答性試薬に結合した特異的結合対メンバーとの結合に関して分析物と競合するように選択した分析物類似体を固相に結合する特異的結合メンバーとしてもよい。従って、固相に結合する磁気応答性試薬の量は試料中の分析物の量に反比例する。
【0067】
サンドイッチアッセイフォーマットによると、第1の特異的結合メンバーを磁気応答性材料に結合して磁気応答性試薬を形成し、第2の特異的結合メンバーを移動固相に結合して移動固相試薬を形成する。特異的結合メンバーは着目分析物に直接又は間接的に結合するように選択する。アッセイ中に、磁気応答性試薬と移動固相試薬は分析物に結合して複合体を形成する。従って、分析物に結合することにより移動固相試薬と複合体を形成する磁気応答性試薬の量は試料中の分析物の量に比例する。
【0068】
本発明によると、場合により補助結合メンバーを使用して分析物又は分析物類似体を磁気応答性試薬又は移動固相試薬に間接的に結合するようにアッセイプロトコールを設定してもよい。補助結合メンバーは移動固相試薬又は磁気応答性試薬を試料又は他のアッセイ試薬と接触させる前、接触中又は接触後のいずれに移動固相試薬又は磁気応答性試薬に結合してもよい。
【0069】
更に、例えばアッセイ試薬と試料を同時に接触させて反応混合物を形成するようにアッセイプロトコールを設定してもよいし、結合に適した時間にわたってアッセイ試薬と試料を順次接触させて多重反応混合物を形成してもよい。このようなアッセイプロトコールによると、特異的結合反応により複合体を形成していない磁気応答性試薬(即ち未結合磁気応答性試薬)と、特異的結合反応により複合体を形成している磁気応答性試薬(即ち結合磁気応答性試薬)は適用磁場内の挙動が異なるため、複合体を形成するための結合に適した時間後に両者を分離することができる。当然のことながら、結合磁気応答性試薬と未結合磁気応答性試薬を分離するには、未結合磁気応答性試薬を反応混合物及び/又は結合磁気応答性試薬から完全に分離することが必要であると思われる。
【0070】
結合磁気応答性試薬と未結合磁気応答性試薬を分離するには、結合磁気応答性試薬が磁場の付近にあるときに未結合磁気応答性試薬が反応混合物中に止まり、検出可能な応答に悪影響を与えないように、未結合磁気応答性試薬を結合磁気応答性試薬から分離してもよい。あるいは、未結合磁気応答性試薬、結合磁気応答性試薬又は移動固相試薬の磁場に対する応答を観察してもよい。更に、未結合磁気応答性試薬、結合磁気応答性試薬又は移動固相試薬の磁場に対する応答を観察し、分配比を観察してもよい。
【0071】
一般に、本発明の装置は本明細書に教示するような磁気補助結合アッセイを実施するためのコンボーネントを含む。従って、このような装置は、(i)反応容器と、(ii)磁気応答性試薬に磁場を加えるための磁場発生器と、(iii)磁場発生器により発生された磁場が試料中の分析物の存在又は量の尺度として磁気応答性試薬又は移動固相試薬又はその両者に及ぼす効果を評価するための測定手段を含むことが好ましい。
【0072】
反応容器は本明細書に開示するアッセイ試薬を収容することができ、試料中の分析物の量に応じて未結合磁気応答性試薬と結合磁気応答性試薬を生成することが可能な任意装置とすることができる。
【0073】
結合磁気応答性試薬を未結合磁気応答性試薬から分離するには、未結合磁気応答性試薬と結合磁気応答性試薬を分離するのに適した任意手段(例えば磁場の適用)により実施することができる。
【0074】
磁場発生器は磁気応答性試薬から応答を誘導する磁場を発生するための任意手段とすることができる。本発明の好ましい磁場発生器としては永久磁石と電磁石が挙げられる。当然のことながら、磁場発生器は結合又は複合体化した磁気応答性試薬から未結合又は遊離磁気応答性試薬を分離するためにも使用することができる。
【0075】
磁場に対する磁気応答性試薬の応答は、試薬の合成力又は移動(例えば反応容器内の試薬に作用する力の見掛変化、試薬の変位等)等の多数の測定可能な形態で発現させることができる。当然のことながら、これらの発現は磁気応答性試薬の発現を検出及び測定することにより直接測定してもよいし、あるいは、例えば移動固相試薬又は磁場発生器に及ぼす磁気応答性試薬の効果を検出及び測定することにより間接的に測定してもよい。磁気応答性試薬に及ぼす磁場の作用は磁場に対する磁気応答性試薬の応答を直接又は間接的に測定するのに適した任意手段により観察又は検出及び測定することができる。例えば、(a)見掛重量変化を天秤により検出及び測定してもよいし、(b)見掛質量変化を天秤により検出及び測定するか、又はそれに伴う石英結晶等のオシレーターの周波数変化を検出及び測定してもよいし、(c)光センサーにより変位を検出及び測定し、磁気応答性試薬、移動固相試薬、又は移動固相試薬と磁気応答性試薬を含む複合体がとる初期位置から後期位置までの変化の大きさを評価してもよいし、(d)例えば圧電フィルムや、磁性材料の存在及び/又は移動により測定可能な撹乱を生じる場を形成することが可能なコイル(例えば磁化計)等の運動検出器により移動を検出及び測定して移動を評価してもよいし、(e)磁場を加えると応力の変化を検出できるように応力感受性材料を容器又は固相材料に加えることにより応力量の変化を検出してもよい。当然のことながら、特定アッセイに応じて磁場に対する未結合磁気応答性試薬の応答、結合磁気応答性試薬の応答、又は結合磁気応答性試薬と未結合磁気応答性試薬の応答の両者を直接又は間接的に検出することが好ましい。同様に当然のことながら、多種多様の計器を使用していずれも磁場と磁気応答性試薬の相互作用に起因する質量変化、位置変化、移動、重量変化、力変化、磁化率、誘導、光学変化等を検出することができる。
【0076】
本発明は磁気応答性試薬を同様の試薬又は他の非磁気応答性粒子と結合させた後、磁場を加え、その結果として磁気応答性試薬に加えられる磁力を測定し、定性又は定量アッセイ結果を提供することにより、従来の不均一凝集アッセイの問題を解決する。非限定的な例として電子天秤、光センサー、圧電感圧装置(例えばマイクロメカニカルシリコンデバイス又は電子チップ)、振動繊維装置、磁気応答性試薬の存在により撹乱する場を発生するコイル(例えば誘導コイル等)、及びカンチレバービーム装置(非限定的な例として原子間力顕微鏡で力の変化を感知するために使用されているようなもの)等の検出器を使用して小レベルの力を容易に測定することができる。これらの検出器は非常に高感度のアッセイの実施を可能にし、多数の慣用アッセイで必要とされているようなラベルの増幅が不要になる。
【0077】
慣用不均一結合アッセイは結合標識試薬と未結合標識試薬を分離し、材料の非特異的な固相結合を抑制するために固相を激しく洗浄する必要がある。このような洗浄段階はアッセイプロトコールを複雑にし、高いアフィニティー即ちこのような物理的操作に耐える結合強度をもつ特異的結合対メンバーの使用にアッセイを限定している。慣用粒子凝集アッセイでは、各メンバー上の数個の結合部位が協働して高いアビディティーを与えることができるので、低アフィニティーの結合メンバーを使用することができ、洗浄段階を省いても弱い結合を維持することができ、アッセイフォーマットが簡単になる。少数の結合部位の相互作用により元の結合メンバーよりも寸法及び質量が数桁大きい複合体の凝集が生じるため、肉眼的変化が生じ、視覚的に分析できるので、シグナル増幅が得られる。しかし、粒子凝集アッセイは分析しにくいことが多く、定量結果が得られず、自動化しにくい。
【0078】
本発明によると、例えば電磁石や可動永久磁石を使用したり、磁気応答性材料に特定強度又は勾配又はその両者の磁場をコードすることにより、磁場の強度を精密に操作することができる。特定アッセイ及び特定結合試薬に最適な磁場強度又は勾配又はその両者を選択できるので、他の試薬又は試薬もしくは複合体の所定のサブセットの選択的結合におけるロット間変動を補正することができ、更に高精度のアッセイ結果が得られる。上記利点により、アッセイをコンピューター制御に容易に適応できることが理解されよう。
【0079】
種々の装置及びアッセイプロトコールが本発明により予想されるが、以下のプロトコールは磁気応答性試薬の磁気補助検出を使用するサンドイッチアッセイフォーマット及び間接/競合アッセイフォーマットの例であるが、これらに限定するものではない。この点では、以下のプロトコール及び本発明により予想されるプロトコールは任意順序で段階を実施してもよいし、同時に実施してもよい。
【0080】
プロトコールA
1)着目分析物上の第1の結合部位に結合することが可能な結合部位をもつ第1の特異的結合メンバーを磁気応答性材料に結合して磁気応答性試薬を形成する。
【0081】
2)着目分析物上の第2の結合部位に結合することが可能な結合部位をもつ第2の特異的結合メンバーを移動固相に結合して移動固相試薬を形成する。
【0082】
3)着目分析物を移動固相試薬と結合するように、試料を移動固相試薬と接触させて第1の反応混合物を形成する。
【0083】
4)磁気応答性試薬が結合分析物と結合することにより移動固相試薬及び分析物と複合体を形成する(移動固相試薬及び分析物と複合体を形成する磁気応答性試薬の割合は試料中の分析物の量に直接相関する)ように、第1の反応混合物を磁気応答性試薬と接触させて第2の反応混合物を形成する。
【0084】
5)第2の反応混合物を検出器に暴露する。
【0085】
6)磁気応答性試薬と移動固相試薬と分析物の複合体に磁力を加えるように第2の反応混合物を磁場に暴露し、磁気応答性試薬−分析物−移動固相試薬複合体が未複合磁気応答性試薬又は未複合移動固相試薬とは異なる速度で移動又は捕獲されることにより磁力の作用を発現し、発現の程度を検出器により測定する。
【0086】
7)発現の測定可能な程度が複合体に取り込まれた磁気応答性試薬の量の尺度となる。
プロトコールB
1)着目分析物上の結合部位(第2の結合部位)に結合することが可能な結合部位(第1の結合部位)をもつ第1の特異的結合メンバーを磁気応答性材料に結合して磁気応答性試薬を形成する。
【0087】
2)第1の結合部位に結合することが可能な結合部位(第3の結合部位)をもつ第2の特異的結合メンバーを移動固相材料に結合して移動固相試薬を形成する。
【0088】
3)分析物が磁気応答性試薬と結合するように、試料を磁気応答性試薬と接触させて第1の反応混合物を形成する。
【0089】
4)磁気応答性試薬が第2の特異的結合メンバーと結合することにより移動固相試薬と結合する(移動固相試薬に結合する磁気応答性試薬の割合は試料中の分析物の量に逆相関する)ように、第1の反応混合物を移動固相試薬と接触させて第2の反応混合物を形成する。
【0090】
5)第2の反応混合物を検出器に暴露する。
【0091】
6)移動固相に結合した磁気応答性試薬の複合体に磁力を加えるように第2の反応混合物を磁場に暴露し、磁気応答性試薬と移動固相試薬を含む複合体が未複合磁気応答性試薬又は未複合固相試薬とは異なる速度で移動又は捕獲されることにより磁力の影響を発現し、発現の程度を検出器により測定する。
【0092】
7)発現の程度が複合体に取り込まれた磁気応答性試薬の量の尺度となる。
【0093】
図1はプロトコールBの結合反応を示す。図1は磁気応答性試薬2(例えばフェロフルイド)を移動固相試薬4(例えばポリピロールラテックス)に結合し、異なる磁性をもつ複合体6を生成するプロセスを示す。複合体にフェロフルイド粒子が存在しないと、多数のフェロフルイド粒子を含む複合体ほど迅速に適用磁場に応答しない。
【0094】
プロトコールA又はプロトコールBのいずれでもステップ5及び6の順序を逆にしてもよい。
【0095】
以下の態様は本発明の方法を使用してイムノアッセイを実施する方法を説明する。
【0096】
態様1
図2及び3は反応混合物を検出器に暴露した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の磁気補助測定を概略的に示す。
【0097】
図2に示すように、反応容器10は分析物14と、移動固相試薬16の粒子の懸濁液と、磁気応答性試薬18の粒子を含む反応混合物12を収容している。反応混合物12は反応容器10をサポート22に載置又は固定することにより検出器20に暴露される。サポート22は検出器20に載置されている。検出器20はサポート22を受容する皿26をもつ典型的上部負荷式微量天秤とすることができる。皿26にサポート22を載せ、サポート22に反応容器10を載せると、検出器20を校正即ち平衡に設定(ゼロ設定)することができる。
【0098】
図3に示すように、磁石28を反応容器10の底に近づけると、磁場は反応混合物12中の磁気応答性試薬に力を加える。一般に、磁石28はアーム30に固定されているので、反応容器10に対する磁石28の移動を精密に調節することができる。磁場は永久磁石や電磁石により提供することができ、断続的に加えてもよいし、連続的に加えてもよい。電磁石を使用すると、磁石28又は反応容器10を移動しなくてもオンオフにより磁場を変えることができる。また、電磁石はコンピューターにより制御できるので、磁場の強度を微調整できる。更に、電磁石を使用すると交番磁場を発生できるので、所望により反応混合物12中の磁気応答性試薬を混合できるという利点もある。
【0099】
反応容器10中の磁気応答性試薬に加えられる力は、反応容器の重量の見掛変化として発現され、検出器20のディスプレイ32に記録される。(分析物を介して)磁気応答性試薬の粒子が2個以上結合している移動固相試薬の粒子に加えられる磁力は、移動固相試薬単独の粒子又は磁気応答性試薬単独の粒子に加えられる力よりも大きい。従って、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬を含む複合体34は磁気応答性試薬の個々の粒子よりも迅速に磁場内を移動する。複合体34と磁石28の間の吸引力は重力による方向と同一方向に反応容器10、従ってサポート22に力を加え、見掛重量の増加として検出器20のディスプレイ32に記録される。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体34が反応容器10の底に向かって移動し、従って磁石28に接近するにつれて、複合体34と磁石28の間の力は増加し、複合体34の移動を更に加速する。複合体34は磁石に接近しているため、反応容器10の底に達して蓄積するにつれて反応容器10とそのサポート22に最大の力を加える。この現象はディスプレイの読みが示すように反応容器10の見掛重量を更に増加する。複合体34が反応容器10の底に到達する速度、従って検出器20により記録される見掛重量変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度である。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として慣用記録装置で記録することができる。見掛重量の変化は試験混合物中の分析物の量の尺度である。
【0100】
態様2
図4及び5は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の代替測定手段の概略図である。
【0101】
図4に示すように、反応容器100は分析物104と、移動固相試薬106の粒子の懸濁液と、磁気応答性試薬108の粒子を含む反応混合物102を収容している。図4では、反応混合物は反応容器100をサポート112に載置又は固定することにより検出器110に暴露される。サポート112は反応容器100を検出器110の上に配置する。重量感知皿116をもつ典型的上部負荷式微量天秤を検出器110として使用することができる。反応容器110の位置の下で皿116に磁石118を配置する。反応容器100をサポート112に配置する前、又は反応混合物を反応容器100に入れる前もしくは直後に、検出器110を校正即ち平衡に設定(ゼロ設定)することができる。
【0102】
図4は反応容器100をサポート112に配置した直後の手順を示す。磁石118により発生された磁場は磁石の方向の力を反応混合物102中の磁気応答性試薬に加え、磁気応答性試薬の方向の対応する力が磁石に加えられる。磁石に加えられる力は重力により加えられる力に対抗する傾向があるので、検出器110の応答が変化する。この初期検出器応答は初期位置における磁石と磁気応答性試薬の間の力に起因する。この時点で天秤をゼロ設定するならば、この初期応答は天秤の風袋重量に加わり、検出器110はゼロの読みを表示する。検出器110の応答はディスプレイ120上で観察することができる。
【0103】
磁石118により発生された磁場は反応混合物102中の磁気応答性試薬に力を加える。(分析物を介して)磁気応答性試薬の粒子が2個以上結合している移動固相試薬の粒子に加えられる磁力は、移動固相試薬単独の粒子又は磁気応答性試薬単独の粒子に加えられる力よりも大きい。従って、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬を含む複合体122は磁気応答性試薬の個々の粒子よりも迅速に磁場内を移動する。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体122が反応容器100の底に向かって移動し、従って磁石118に接近するにつれて、複合体122と磁石118の間の力は増加し、複合体の移動を更に加速する。図5に示すように、複合体122は反応容器100の底に達して蓄積するにつれて磁石118に最大の力を加え、検出器の読みの変化により示されるように磁石118の見掛重量を更に減らす。複合体122が反応容器100の底に到達する速度、従って検出器110により記録される見掛重量変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度である。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として記録装置で記録することができる。全複合体が反応容器100の底まで移動した後の検出器応答の最終変化又は複合体の移動中の検出器応答の変化の速度を使用すると、反応混合物中、従って元の試験混合物中に存在する分析物の量を測定することができる。図5中、図面内の矢印は複合体と磁石の間の力を表す。
【0104】
態様3
図6及び7は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の代替測定手段の概略図である。
【0105】
図6に示すように、反応容器200は分析物204と、移動固相試薬206の粒子の懸濁液と、磁気応答性試薬208の粒子を含む反応混合物202を収容している。反応混合物は反応容器200をサポート212に載置又は固定することにより検出器210に暴露される。サポート212は磁石218を固定した軟質材料のダイヤフラム216を含むセンサー214の上に反応容器200を配置する。軟質材料のダイヤフラム216は台220に支持されている。検出器210は軟質材料のダイヤフラム216の下に配置されたホール効果トランスデューサー222を含む。検出はホール効果トランスデューサー222に接続した電子回路の出力をモニターすることにより行われる。ダイヤフラム216が軟質であるため、磁石218に加えられる力が変化すると、ホール効果トランスデューサー222に対するその位置が変化する。その結果、磁場の変化がホール効果トランスデューサー222により感知され、電子回路の出力が変化する。図6は反応容器200をサポート212に配置し、検出器をゼロ設定した直後の手順を示す。
【0106】
ダイヤフラム216に固定された磁石218は反応容器200に近接して配置されているので、磁場はその中の磁気応答性試薬に力を加える。その結果、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体224は磁気応答性試薬の個々の粒子よりも迅速に磁場内を移動する。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体224が反応容器200の底に向かって移動し、従って磁石218に接近するにつれて、複合体224と磁石218の間の力は増加し、複合体224の移動を更に加速する。図7に示すように、複合体224は反応容器200の底に達して蓄積するにつれて磁石218に最大の力を加える。この力はダイヤフラム216に加えられ、ダイヤフラムが撓み、磁石218はトランスデューサー222から離れる。磁石218の初期位置からの変位度は(分析物を介して)移動固相試薬に結合した磁気応答性試薬の量に依存し、電子回路により発生される信号の変化として発現される。複合体224が反応容器200の底に到達する速度、従ってトランスデューサー回路により記録される信号変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度である。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として記録装置で記録することができる。信号変化の速度はディスプレイ226で観察することができる。全複合体が反応容器200の底まで移動した後の検出器応答の最終変化又は複合体の移動中の検出器応答の変化の速度を使用すると、反応混合物中、従って元の試験混合物中に存在する分析物の量を測定することができる。この態様の装置は任意空間配置で機能するように作製することができる。
【0107】
ホール効果トランスデューサー222以外の近接測定装置も使用できる。このような装置の代表例としては、光ビームをダイヤフラム216の底から検出器に反射させる光学装置や、ダイヤフラムを変位させて検出器に入射する光の強度を変化させる手段などが挙げられる。位置距離又は歪みの関数としてダイヤフラムから反射される光の干渉パターンの変化を測定する光学装置も使用できる。近接検出器として一般に使用されているキャパシタンスセンサーのように、ダイヤフラムの位置又は形状の変化を測定する非光学的方法も使用できる。ダイヤフラムの代わりに、ストリップ、ばね、カンチレバーアーム等の他の弾性エレメントも使用できる。図7中、図面内の矢印は複合体と磁石の間の力を表す。
【0108】
態様4
図8及び9は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の代替測定手段の概略図である。
【0109】
図8に示すように、反応容器300は分析物304と、移動固相試薬306の粒子の懸濁液と、磁気応答性試薬308の粒子を含む反応混合物302を収容している。図8では、反応混合物302は反応容器300をセンサー312に載置又は固定することにより検出器310に暴露される。センサー312は軟質材料のダイヤフラム314を含む。軟質材料のダイヤフラム314は台316に支持されている。検出は光源318と光センサー320により行われる。光源318からの光はダイヤフラム314上の反射部位321から光センサー320に反射される。ダイヤフラム314の位置がずれると、光センサー320に入射する反射光が位置シフト即ち屈折し、光センサー320の出力が変化する。ダイヤフラム314自体が位置感知手段として機能することができ、光はダイヤフラム314の下面から直接反射されることが理解されよう。
【0110】
図9に示すように、磁石322がダイヤフラム314に近接して配置されているので、磁場は反応混合物中の磁気応答性試薬に力を加える。その結果、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体326は磁気応答性試薬の個々の粒子よりも迅速に磁場内を移動する。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体326が反応容器300の底に向かって移動し、従って磁石322に接近するにつれて、複合体326と磁石322の間の力は増加し、複合体326の移動を更に加速する。複合体326は反応容器300の底に達して蓄積するにつれて磁石322に最大の力を加える。この力はダイヤフラム314に加えられ、ダイヤフラムが撓む。ダイヤフラム314の初期位置からの変位又は歪み度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度、従って、反応混合物中に存在する分析物の量に主に依存する。この結合度は検出器310により測定することができる。反応容器300を軟質ダイヤフラム314に永久的に固定し、反応混合物320を取り出して交換することにより再使用できることが理解されよう。反応容器300又は軟質ダイヤフラム314を使い捨てにしてもよいことも理解されよう。軟質サポートをダイヤフラムの形態にしなくてもよいことも理解されよう。例えばカンチレバーアーム、弾性サスペンター、ばね又は浮揚装置等の任意弾性又は変位可能サポートを使用することができる。
【0111】
軟質材料自体を反応容器として利用し、反応混合物をこれに直接加えてもよいことが理解されよう。軟質材料は反応混合物を収容できる部位を形成するような形状にすればよいことも理解されよう。軟質材料はセンサーを横切って移動可能なウェブでもよいことも理解されよう。図9中、図面内の矢印は複合体と磁石の間の力を表す。
【0112】
態様5
図10及び11は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の別の測定手段の概略図である。
【0113】
図10に示すように、反応容器400は蓋404をもつウェル402を含む。ウェル402は反応混合物406を収容している。分析物408が存在する場合には、磁気応答性試薬410の一部は(分析物を介して)移動固相試薬412と結合して複合体414を形成する。ウェル402はウェル402を受容する皿418をもつ天秤416等の力感知装置に載置又は固定されている。天秤416にウェル402を載せると、天秤416をゼロに設定することができる。
【0114】
図11に示すように、磁石420を蓋404に接近させると、磁場はウェル402の内側の磁気応答性試薬に力を加える。この力の作用下で、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体414は蓋404の下面に向かって移動するが、そこでは磁石420により近接しているため、磁気吸引力はより強力である。未結合磁気応答性試薬410はこのレベルの磁場強度下で複合体414よりもゆっくりと移動し、蓋404の下面に到達するのに時間がかかる。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体414は蓋404の下面に蓄積するにつれて重力に対抗して蓋に抗する上向きの力を生じ、天秤416のディスプレイ422に記録されるウェル402の見掛重量が減る。複合体414が蓋404の下面に到達する速度、従って天秤416により記録される見掛重量変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度でもある。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として記録手段で記録することができる。この方法は蓋なし反応容器を使用しても適用することができ、反応混合物表面の表面張力が蓋と同一目的を果たす。ウェル402の重量の変化の見掛速度は最初は迅速であるが、全複合体が捕獲されるにつれて低下する。この終点における重量の総変化を使用すると、反応混合物中の分析物の量を測定することができる。図11中、図面内の矢印は複合体と磁石の間の力を表す。あるいは、磁石420を天秤に固定し、複合体により磁石に加えられる力の変化を測定してもよい。
【0115】
態様6
図12及び13は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の測定用代替検出器の概略図である。
【0116】
図12、より詳細には図13に示すように、反応容器500は磁気応答性試薬504の粒子と、移動固相試薬506の粒子106と、存在する場合には分析物508を含む反応混合物503を収容したウェル502を含む。磁気応答性試薬504の少なくとも一部は(分析物508により)移動固相試薬506の粒子と結合している。反応混合物503は反応容器500を第1のサポート512に載置又は固定することにより検出器510に暴露される。サポート512は第2のサポート516に固定した磁石514の近傍に応容器500を配置するように機能する。第2のサポート516は固体表面520に当接するナイフエッジ518と、天秤526の皿524の上方に配置されたサイドアーム522をもつ。第2のサポート516はナイフエッジ518を中心に自由に回転し且つ調節ねじ527により天秤526の皿524にサイドアーム522を支持することによりその鉛直位置のみを固定するように配置されている。サポート512,516を配置すると、天秤526を校正即ち平衡に設定(ゼロ設定)することができる。
【0117】
次にウェル502を第1のサポート512に配置又は固定して磁石514に接近させると、磁場はウェル502の内側の磁気応答性試薬に力を加える。この力の作用下で、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体528は、磁石514に近接しているために磁気吸引力が強いほうのウェル502の側に向かって移動する。未結合磁気応答性試薬504はこのレベルの磁場強度下でゆっくりと移動し、ウェル502の側に到達するのに時間がかかる。
【0118】
移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体528は側面をウェル502に向けて配置した磁石514にかかる力を生じる。この力は天秤526の皿524に支持された第2のサポート516のサイドアーム522の力に対抗し、その結果、天秤526により報告されるサイドアーム522の見掛重量が減少する。磁石に加えられる力は第2のサポート516を実質的に移動させるには不十分であり、天秤の皿524にかかる重量を減らすためにしか十分でない。皿にかかる重量に関係なく皿の位置を維持する天秤装置も利用できる。この態様の概念は天秤の使用に限定されないことが理解されよう。上述の装置即ち弾性サポートや光又は他の位置決めセンサー等の任意力測定装置を使用することができる。複合体528がウェル502の側面に到達する速度、従って天秤526により記録される見掛重量変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度である。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として記録手段で記録することができる。
【0119】
態様7
本発明の別の態様として、図14A及び14Bは分析試験を実施するための自動イムノアッセイ装置を示す。装置600は1個以上の磁気部位604をもつ毛管チャネル602を含む。反応混合物606は毛管作用によりチャネル602内を押し流される。反応混合物は磁気応答性試薬610と分析物612と移動固相試薬614を含む。反応混合物606はチャネル602内を流れるにつれて磁気部位604を通り、移動固相試薬614と分析物612と磁気応答性試薬610の複合体616はこの位置でチャネル602の壁に優先的に蓄積する。用途によっては、磁気応答性試薬が未結合であるか又は移動固相試薬と複合体を形成しているかに関係なく蓄積するように磁気部位の磁場の強度もしくは勾配又は磁気応答性試薬の寸法と組成を選択すると有利な場合がある。移動固相試薬のこの蓄積の存在又は程度は種々の方法で測定することができる。
【0120】
本発明の好ましい態様では、移動固相試薬614と分析物612と磁気応答性試薬610の複合体616が磁気部位604に蓄積すると可視結果を生じるように移動固相試薬614の粒子又は磁気応答性試薬610の粒子を製造する。他方、蛍光発光、反射率、濃度測定、酵素活性もしくは本明細書に記載する他の態様の方法の任意のもの又は他の手段により複合体616の蓄積を検出又は測定できることが理解されよう。
【0121】
特に好ましい態様では、磁気部位604は磁気記録テープ又は慣用クレジットカードに見られるものと同様の磁気ストリップとすることができる。磁気部位604を毛管チャネル602の内面として用いてもよい。磁気部位604は単一でも複数でもよく、種々の移動固相試薬と磁気応答性試薬の比をもつ移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体が試料中の分析物の濃度の指標として種々の部位604で捕獲されるように、種々の形状と種々の磁場強度又は勾配にすることができる。
【0122】
磁気部位の磁場強度、勾配、寸法及び形状と、磁気応答性試薬の寸法、形状及び組成は、定性(例えば陽性/陰性)結果又は定量(例えば半定量)結果を最適にするように選択することができる。例えば、図14A及び14Bに示す毛管チャネルの底に沿って一連の等しい磁気捕獲部位をコード化することができる。磁気応答性試薬と移動固相試薬を含む複合体を結合する能力を制限するように各部位をコード化してもよい。反応混合物がチャネルに沿って下流に進行するにつれて、複合体はまず最上流の磁気捕獲部位を通り、ここに蓄積する。複合体を殆ど含まない反応混合物では、最上流の磁気捕獲部位しか複合体の蓄積を示さない。他方、最上流の磁気捕獲部位を飽和するに十分な複合体が存在するならば、更に複合体がこの部位を通過し、最上流から2番目の磁気捕獲部位に蓄積し、以下同様となる。この場合には、複合体の蓄積を示す磁気捕獲部位の数が反応混合物中の複合体形成の程度の尺度、従って試料中の分析物の濃度の尺度となる。
【0123】
あるいは、アッセイフォーマットによっては、複合体形成の程度でなく移動固相試薬の各粒子に結合した磁気応答性試薬の粒子の数により反応混合物中の分析物の濃度を発現することができる。これらの場合には、磁場強度又は勾配又はその両者が異なる複数の磁気捕獲部位を毛管チャネルの底にコード化することができる。各磁場強度/勾配組み合わせは、特定の磁気応答性試薬対移動固相試薬比をもつ複合体を吸引する傾向を示す。例えば、反応混合物がチャネルに沿って下流に進行するにつれて、複合体はまず最も弱い磁場強度をもつ磁気捕獲部位を通ることができた。この部位は高い磁気応答性試薬対移動固相試薬比をもつ複合体しか捕獲することができなかった。その後、磁気捕獲部位は磁場強度が漸増するので、次第に低い磁気応答性試薬対移動固相試薬比をもつ複合体を捕獲できるようになった。この場合には、どの磁気捕獲部位が複合体の蓄積を示すかにより、磁気応答性試薬の蓄積の程度、従って試料中に存在する分析物の量が判断される。複合体の蓄積は視覚的又は蛍光発光、反射率、濃度測定、酵素活性もしくは本明細書に記載する他の態様の方法の任意のもの又は他の手段により検出又は測定できることが理解されよう。本態様は、電力を必要としない小型で携帯可能で潜在的に使い捨て可能な分析装置を提供する。
【0124】
図14A及び14Bに示すような装置を使用する本発明の別の態様では、毛管チャネルの床を光吸収材から製造する。移動固相試薬は移動固相試薬の蓄積の程度に比例して光吸収性毛管チャネルにコントラストを提供する光学的性質(反射率、色、蛍光、化学発光等)を示す。こうして、磁気応答性試薬を常に磁気捕獲部位で捕獲するフォーマットで特に有用な性質である磁気応答性試薬の光学的性質をマスクすることができる。
【0125】
態様8
本発明の別の態様として、図15A及び15Bは分析試験を実施するための自動イムノアッセイ装置を示す。装置700は1個以上の磁気部位706を含む平坦表面704をもつエレメント702を含む。表面704又は表面704を覆う材料層と反応混合物708を接触させる。反応混合物708は磁気応答性試薬710と、分析物712と、移動固相試薬714を含む。移動固相試薬714と分析物712と磁気応答性試薬710の複合体716は磁気部位706に優先的に移動して蓄積する。用途によっては、磁気応答性試薬が未結合であるか又は移動固相試薬と複合体を形成するかに関係なく蓄積するように、磁気捕獲部位の磁場の強度もしくは勾配又は磁気応答性試薬の寸法と組成を選択すると有利な場合がある。移動固相試薬のこの蓄積の存在又は程度は種々の方法で測定することができる。
【0126】
本発明の好ましい態様では、移動固相試薬714と分析物712と磁気応答性試薬710の複合体716が磁気部位706に蓄積すると可視結果が形成されるように移動固相試薬714の粒子又は磁気応答性試薬710の粒子を製造する。形状、色、密度、程度、位置等を試験混合物中の分析物の存在又は量の尺度として利用できる。磁気部位706は単一でも複数でもよく、種々の移動固相試薬対磁気応答性試薬比をもつ移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体が試料中の分析物の濃度の指標として種々の部位706で捕獲されるように、種々の形状と種々の磁場強度又は勾配にすることができる。複合体の蓄積は、蛍光発光、反射率、濃度測定、酵素活性もしくは本明細書に記載する他の態様の方法の任意のもの又は他の手段により検出又は測定できることが理解されよう。
【0127】
特に好ましい態様では、磁気部位706は磁気記録テープ又は慣用クレジットカードに見られるものと同様の磁気ストリップとすることができる。本態様は、電力を必要としない小型で携帯可能で潜在的に使い捨て可能な分析装置を提供する。
【0128】
態様9
本発明の別の態様では、本明細書に記載する手順を使用して磁気応答性試薬の性質を測定することかできる。寸法、形状、磁鉄鉱濃度、凝集状態及び他の因子は磁気応答性材料の粒子が適用磁場に応答して流体中を移動する速度に影響する。本発明の方法を磁気応答性材料の試料に適用すると、これらの材料の品質を管理し、未知試料又は未知濃度の試料中のこれらの材料の量を測定する手段として利用することができる。
【0129】
態様10
本発明の別の態様として、図16A及び16Bは分析試験を実施するための自動イムノアッセイ装置を示す。装置800は磁石804の上方に支持された反応容器802を含む。反応容器802は磁気応答性試薬810の粒子と、存在する場合には分析物812と、移動固相試薬814の粒子を含む反応混合物808を収容している。分析物が存在する場合には、磁気応答性試薬810の一部は(分析物を介して)移動固相試薬814と結合して複合体816を形成する。(分析物を介して)磁気応答性試薬の2個以上の粒子が結合している移動固相試薬の粒子に加えられる磁力は磁気応答性試薬単独の粒子に加えられる力よりも大きいので、移動固相試薬814と分析物812と磁気応答性試薬810の複合体816は磁気応答性試薬単独の粒子よりも迅速に磁場内を移動し、懸濁液から除去される。
【0130】
本発明の好ましい態様では、懸濁時に一方又は両方を検出できるように移動固相試薬の粒子又は磁気応答性試薬の粒子を製造する。懸濁液からの複合体の除去は視覚的に検出してもよいし、図16に示すような光学装置を使用して測定してもよい。光源820からの光ビームは反応容器802と反応混合物808を通り、光検出器822に達する。光学濃度測定の結果はディスプレイ824上で観察することができる。移動固相試薬814又は磁気応答性試薬810又はその両者の量は、光学濃度、蛍光発光、光散乱の変化を記録するか、本明細書に記載する他の態様の方法の任意のもの又は他の手段により測定する。
【0131】
本発明は移動固相試薬と磁気応答性試薬の複合体により発現される力、移動又は蓄積の評価を利用するので、本明細書に記載する種々の検出方法及び試薬は自動操作又はシステムに容易に適応可能であることが理解されよう。他方、このような自動操作又はシステムは自動システムの一部のアッセイ操作を手動で実施する可能性を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は本発明で使用する特異的結合反応の概略図である。
【図2】図2は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に天秤を使用する装置の概略図である。
【図3】図3は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図2の装置の概略図である。
【図4】図4は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に天秤を使用する装置の概略図である。
【図5】図5は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図4の装置の概略図である。
【図6】図6は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出にホール効果トランスデューサーを使用する装置の概略図である。
【図7】図7は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図6の装置の概略図である。
【図8】図8は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に光センサーを使用する装置の概略図である。
【図9】図9は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図8の装置の概略図である。
【図10】図10は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に天秤を使用する装置の概略図である。
【図11】図11は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図10の装置の概略図である。
【図12】図12は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に微量天秤を使用する装置の概略図である。
【図13】図13は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図12の装置の一部の概略図である。
【図14A】図14Aは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の1種の自動イムノアッセイ装置の概略図である。図面は複合体を捕獲する前のイムノアッセイを示す。
【図14B】図14Bは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図14Aの自動イムノアッセイ装置の概略図である。図面は複合体を捕獲した後のイムノアッセイを示す。
【図15A】図15Aは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の別種の自動イムノアッセイ装置の概略図である。図面は複合体を捕獲する前のイムノアッセイを示す。
【図15B】図15Bは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図15Aの自動イムノアッセイ装置の概略図である。図面は複合体を捕獲した後のイムノアッセイを示す。
【図16A】図16Aは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の光学濃度検出装置の概略図であり、多数の複合体が反応容器の底に蓄積する前の状態を示す。
【図16B】図16Bは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図16Aの装置の概略図であり、多数の複合体が反応容器の底に蓄積した後の状態を示す。
【図17】図17は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に微量天秤と試験混合物位置決め装置を使用する装置の概略図である。
【図18】図18は超常時性微粒子の3種の試料の分析中に図17に示した装置により発生されるシグナルを示すグラフである。
【図19】図19は時間の関数として未結合又は遊離磁気応答性粒子の吸引力の測定値を示すグラフである。
【図20A】図20Aは“SEPHACRYL S−500”ゲル濾過媒体のカラムによるフェロフルイドの分離を示すグラフである。
【図20B】図20Bは“SEPHACRYL S−1000”ゲル濾過媒体のカラムによるフェロフルイドの分離を示すグラフである。
【図21】図21はビオチン−ウシ血清アルブミンを被覆した種々の量のフェロフルイドと共に抗ビオチンを被覆したポリピロールをインキュベートした後の図4、5及び17に示した装置により検出される磁気分離の結果を示すグラフである。
【図22A】図22Aは磁場でラテックス粒子に結合するフェロフルイドの観察可能な様相を示す概略図である。
【図22B】図22Bは磁場でラテックス粒子に結合するフェロフルイドの観察可能な様相を示す概略図である。
【図22C】図22Cは磁場でラテックス粒子に結合するフェロフルイドの観察可能な様相を示す概略図である。
【図22D】図22Dは磁場でラテックス粒子に結合するフェロフルイドの観察可能な様相を示す概略図である。
【図23】図23はビオチン化BSAを被覆したフェロフルイドの希釈溶液の濃度を変える効果を測定するために図17の装置を操作した結果として得られた磁石の見掛重量変化の速度及び程度を示すグラフである。
【図24】図24は遊離ビオチン化ウシ血清アルブミンのアッセイ中にポリピロールと磁気応答性試薬の複合体が捕獲された結果としての磁石の見掛重量変化を示すグラフである。
【図25A】図25Aは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出用自動イムノアッセイ装置の斜視図である。
【図25B】図25Bは図25Aの自動イムノアッセイ装置の分解斜視図である。
【図25C】図25Cは図25Aの自動イムノアッセイ装置の側面図である。
【図26】図26は図25A、25B及び25Cに示した型の装置を使用して反射率リーダーにより得られた結果を示すグラフである。
【図27】図27は可溶性フィブリンに自動イムノアッセイ装置を使用して光学濃度リーダーにより得られた結果を示すグラフである。
【0133】
以下、非限定的な実施例により本発明を説明する。
実施例
【実施例1】
【0134】
磁力測定用改造電子微量天秤
適用磁場により磁気応答性材料に加えられる力を測定し、自動的に記録するように装置を設計及び作製した。Mettler−Toledo Inc.,Hightstown,N.J.からモデルUMT−2電子微量天秤900を入手した。図17を参照すると、この天秤900はその標準範囲を越える重量に適応するように工場で改造した。標準天秤皿の代わりにアルミニウムストーク902を製造した。Cookston Magnetsから入手した直径0.25インチのネオジム−鉄−ホウ素円筒形磁石906を受容するようにストーク902の頂部に円形凹部904を加工した。生成磁場の形状を変えるために、長さ0.25インチの円筒形磁石の一端を稍ドーム状に丸みをつけ、磁気応答性粒子上の最大力の領域が磁石の面の中心にくるようにした。微量天秤の計量チャンバーに標準装備されているガラス蓋の代わりにアルミニウム蓋908を製造した。蓋908は大きい中心孔をもつアルミニウム外側リング910から構成し、計量チャンバーの直径よりも小さい直径をもつアルミニウムディスク912を支持させた。ディスク912には縁部の近傍に2個のねじなし穴914,196をあけ、中心に大きいねじ穴920をあけた。止めねじ924,926が各ねじなし穴914,916を通って支持リング910のねじ穴928,929にねじ込まれるようにディスク912を支持リング910に配置した。穴932の床934を形成するように薄いアルミニウム「部分」を残して底から0.001インチ以内まで頂部から中心平底穴932をあけたねじ切り円筒形アルミニウムインサート930をディスク912の中心ねじ切り穴920に挿入した。種々の形状及び寸法の試験容器938を収容するようにその中心937に穴をあけた円筒形アルミニウムアダプター936をインサート930の中心穴932に挿入した。天秤から皿を除去し、アルミニウムストーク902に置き換えることにより、力測定装置を組み立てた。丸みをつけた端部を最上部にもつストーク902の頂部の凹部904に異形磁石906を配置した。微量天秤の計量チャンバーのガラス頂部をアルミニウム外側リング910に置き換え、その中心にアルミニウムディスクを配置した。ねじ切りアルミニウムインサート930をディスク912の中心ねじ穴920にねじ込み、試験容器アダプター936をこれに挿入した。天秤本体と全付加部品を接地し、静電荷が蓄積しないようにした。
【0135】
自動データ収集用微量天秤−コンピューターインターフェース
Macintosh siコンピューターに搭載したNational Instruments,Inc.,Austin TX製LabVIEW(登録商標)データ獲得プログラムに改造微量天秤装置をMettler−Toledo Inc.製ケーブルによりインターフェースした。プログラムを始動し、0.3秒毎に読み値1個の速度で微量天秤から送信される重量読み値を連続的に獲得、記録及び表示した。
【0136】
整列及び試験
微量天秤装置900をゼロ設定し、付設したコンピューターでデータ収集を開始した。Nippon Paintから入手した超常磁性微粒子の希釈懸濁液の20μlアリコートをピペットによりポリプロピレンマイクロチューブに移した後、微量天秤の頂部のアルミニウム試験容器ホルダーに入れ、チューブの底をねじ切りアルミニウムインサート930の平底に支承させた。次にインサート930を時計回りの方向に回転させ、インサート930の底を磁石906の頂部に接近させた。天秤900により報告される磁石906の見掛重量をモニターした処、インサート930が磁石906に接近するにつれて減少することが判明した。重量のこの見掛変化は磁石906にかかる重力に対抗して磁石906によりマイクロチューブ内の超常磁性微粒子に加えられる力に起因するものであった。インサート930を回転し続けると、インサート930の底が磁石906の頂部と接触する位置に達した。この時点で磁石906の見掛重量はインサート930が下向きの力を加えるにつれて著しく増加した。次に、磁石906の見掛重量が接触直前に観察されるような重量になるまでインサート930の回転方向を逆転した。次にインサート930の底と磁石906の頂部の間に非常に小さい隙間を残してインサート930を反時計回りの方向に更に10°回転させた。ねじ切りインサート930を収容するアルミニウムディスク912をアルミニウムリング910に保持する止めねじ924,926を緩め、天秤900により最小見掛重量が報告されるまでディスク912を水平に調整した後、止めねじ924,926を再び締めた。次に、上記ねじ切りインサート930の鉛直調節を繰り返し、ゴムセメント1滴をねじに塗布することによりその位置を固定した。これらの調節の結果、天秤900により計量されている磁石906から最大鉛直吸引力の領域に超常磁性微粒子を配置した。
【0137】
直径0.8μmをもち、粒子重量当たり30%の磁鉄鉱を含有する超常磁性微粒子の0.01%懸濁液(重量/体積)を使用して天秤装置の感度と再現性を試験した。各20μlのアリコートを0.5cm×3cmポリプロピレンマイクロ遠心チューブ(Robbins Scientific)にに移した。天秤装置をゼロ設定し、データ収集を開始した。10秒後に最初のチューブを装置に挿入した。チューブの挿入直後に磁石の見掛重量報告値は迅速に低下し始めた(図18)。挿入から約10秒後に重量変化速度は低下し始め、変化は約30秒後にほぼ停止し、最終重量変化は2.4mgであった。マイクロ遠心チューブを取り出すと、見掛重量は迅速にゼロに戻った。他の2種の試料で手順を繰り返した処、実質的に同一の結果が得られた(図18参照)。
【実施例2】
【0138】
水分散性フェロフルイドと特異的結合メンバーからの磁気応答性試薬の調製
フェロフルイドの性質
安定な水性分散液を形成することが可能なフェロフルイドをXerox Specialty Materials,Pittsford,NYから入手した。この材料は参考資料として本明細書の一部とする米国特許第5,322,756号及び5,358,659号に記載されている。フェロフルイドは60%(重量/体積)水性懸濁液として提供されるものを用いた。フェロフルイドの粒子は超常磁性であり、粒子の重量の27%までを占めるFe2O3のモノドメインナノ結晶を埋封したポリマーマトリックスから構成されていた。粒度は粒子毎に相違していた。粒子の平均直径は約20nmであった。粒子の磁化は6キロガウスで12.2EMU/gと報告された。
【0139】
濃厚フェロフルイドを水で100倍に希釈し、透明な茶色い懸濁液を得た。希釈フェロフルイドの5μlアリコートをポリプロピレンマイクロチューブに移し、実施例1に記載した天秤装置に入れた。未希釈フェロフルイドでは104mg/μlに相当する5.2mgの迅速な重量変化が観察された。希釈フェロフルイドを水で更に16倍(全体として1600倍)に希釈し、100μlアリコートを実施例1に記載した天秤装置で分析した。即座に0.5mgの重量変化が観察された後、20時間かかって合計8mgの非常にゆっくりした重量変化が観察された(図19参照)。この結果、適用磁場によりフェロフルドの各粒子に加えられる力は非常に弱いことが分かった。磁場内の全粒子の凝集吸引力は天秤によりすぐに感知されるが、その後の重量変化が非常に遅いことから明らかなように、最大磁場及び勾配の領域まで粒子が移動するには非常に時間がかかった。
【0140】
0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で濃厚フェロフルイドを100倍に希釈し、PBS中0.1%BSAで予め平衡化しておいた“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体(Pharmacia Bioteck,排除限界1×106ダルトン)を充填した1cm×40cmクロマトグラフィーカラムに加え、同一緩衝液で溶離した。フェロフルイドはカラムの排除体積中に茶色いバンドとして溶出した。“SEPHACRYL S−500”ゲル濾過媒体(排除限界2×107ダルトン)のカラムで分離すると、フェロフルイドは一部しか含まれていなかったが(図20A参照)、“SEPHACRYL S−1000”ゲル濾過媒体(排除限界>108ダルトン)のカラムで分離すると、粒子の殆どが含まれており、基準30μm微粒子よりも後期に幅広いバンドとして溶出した(図20B参照)。図20B中、曲線Aは磁気応答性試薬を表し、曲線Bは移動固相試薬を表す。フェロフルイドはこのように粒度に基づいて細分別することができた。
【0141】
ビオチン化BSAによるフェロフルイドの被覆
結合アッセイにおけるフェロフルイドの有用性を評価するために、フェロフルイドをビオチン化BSA(アルブミン、ウシ−ビオチンアミドカプロイル標識、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)で被覆した。ビオチン化BSAの10mg/mlPBS溶液の100μlアリコートを1%重炭酸塩緩衝液(pH9.0)850μl及び濃厚フェロフルイド50μlと混合した。混合物を37℃の温度で1時間インキュベートした後、PBS中1%BSA200μlを加え、更に45分間インキュベーションを続けた。次に、PBS中0.1%BSAで予め平衡化しておいた“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体を充填した1cm×40cmクロマトグラフィーカラムに混合物を加え、同一緩衝液で溶離した。その茶色い色から判断されるようにフェロフルイドを含むフラクションがカラム空隙体積で溶出した。プールしたフラクションの5μlアリコートは天秤装置で5mgの読み値を与えた。プールした材料を結合アッセイ(下記実施例3、4、5、6、7及び8参照)で使用するためにPBSで50倍に希釈した。
【0142】
抗hCGによるフェロフルイドの被覆
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットに対する結合活性をもつ抗体をAbbott Laboratoriesから入手し、過ヨウ素酸酸化によりトリチウム標識後、NaCNBH3(3H)で還元した。“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体(Pharmacia Bioteck)の1cm×40cmカラムに加えた後、ラベルは排除体積、部分的包含体積及び完全包含体積で夫々標識抗体凝集体、遊離標識抗体及び遊離ラベルに相当する3つのピークに溶出した。未分離標識抗体(340,000dpm)の10μlアリコートを1%炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)220μl中のフェロフルイドの20μlアリコートと混合した。2時間37℃の温度でインキュベーション後、PBS中0.1%BSA800μlを加え、45分間37℃の温度でインキュベーションを続けた。次に、混合物を上記のような“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体のカラムに加えた。ラベルは排除体積でフェロフルイドと共に溶出するピークと、完全包含体積で溶出するピークの2つのピークとして溶出した。未標識抗hCG抗体を用いて被覆手順を繰り返した。排除体積で溶出する材料を集め、イムノアッセイで使用するためにPBSで50倍に希釈した。
【0143】
抗体を被覆したポリ(ピロール)ラテックス粒子の調製
参考資料として本明細書の一部とする米国特許第5,252,459号に記載されているように、ビオチンに対する結合アフィニティーをもつ抗体を被覆したポリピロールラテックスの試料を調製した。これらの粒子は直径0.3〜0.7μmであり、その懸濁液は濃い黒色であった。
【実施例3】
【0144】
ラテックス粒子に結合するフェロフルイドが磁場内挙動に及ぼす効果
“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体(実施例2参照)を充填したカラムから50倍希釈ビオチン化BSAを被覆したフェロフルイドの5個のアリコート(各1ml)を容量4mlのガラスバイアルに移した。ビオチン化BSAを被覆したフェロフルイドを入れた各バイアルに、抗ビオチンを被覆したポリピロールラテックスの0.1%懸濁液の0、2、5、10及び20μlのアリコートを移し、各バイアルの内容物を37℃の温度で30分間インキュベートした。次に各バイアルからのアリコート(100μl)をポリプロピレンマイクロチューブに移し、マイクロチューブを実施例1に記載した微量天秤装置に入れ、磁石の見掛重量を時間の関数として記録した。
【0145】
装置応答の速度と程度は存在する抗ビオチン被覆ポリプロピレンラテックスの量を反映した(図21参照)。天秤をゼロ設定し、0秒でデータ収集を開始した(図21参照)。抗ビオチン被覆ポリプロピロールラテックスを加えずにインキュベートした混合物からのアリコートを入れたポリプロピレンマイクロチューブ(0μl試料)を45秒後に装置に挿入した。磁石の報告重量はマイクロチューブの底までのフェロフルイドの移動速度を反映して0mgから−0.06mgまで迅速に減少した後、3分間で更に−0.10mgまで一定速度で減少した(図21、曲線セグメントA参照)。次に、マイクロチューブを装置から取り出すと、磁石の報告重量は迅速にゼロに戻った。
【0146】
抗ビオチン被覆ポリプロピロールラテックス2μlを加えてインキュベートした混合物からのアリコートを入れたポリプロピレンマイクロチューブを更に30秒後に装置に挿入した。磁石の報告重量は0mgから−0.06mgまで迅速に減少した後、3分間で−0.12mgまで一定速度で更に減少し(図21、曲線セグメントB参照)、その後、装置から取り出した。抗ビオチン被覆ポリプロピロールラテックス5、10及び20μlを加えてインキュベートした混合物からのアリコートを入れたマイクロチューブ(図21、曲線セグメントC、D及びE参照)を分析した処、磁石の報告重量はますます速度を高めて減少し、フェロフルイド単独よりもフェロフルイド−ポリピロールラテックス複合体としたときのほうがフェロフルイドの移動速度は高いことが判明した(表1参照)。
【0147】
【表1】
【0148】
重量変化の直線速度を3分間観察した処、この間に複合体の捕獲は完了しないことが判明した。更に長時間観察すると、高濃度のポリピロールラテックスを含む試料の迅速な重量変化はゼロ試料の重量変化まで低下し、全複合体がマイクロチューブの底まで移動したことを示した。ゼロ試料に見られる遅い重量変化速度は、ビオチン化ウシ血清アルブミンの被覆手順の間にフェロフルイド粒子が凝集したためであり、予備音波処理により緩和することができる。
【0149】
試料からのポリピロールラテックスの除去速度及び程度を調べることにより効果を観察することもできる(図22A、22B、22C及び22D参照)。ポリピロールラテックスを含む全試料では、全ラテックスは試料から除去され、全試料中に過剰のフェロフルイドが存在することを示した。図22A、22B、22C及び22D中、図22Aは図22Bよりも前、図22Bは図22Cよりも前、図22Cは図22Dよりも前の状態を示す。
【0150】
ポリピロールラテックスに磁気応答性を付与するために必要なフェロフルイドの最適濃度を決定するために、“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体を入れたカラムからのビオチン化BSA被覆フェロフルイドをPBSで50倍、100倍、200倍、400倍及び800倍に希釈した。全希釈溶液は透明であり、50倍希釈液は麦わら色、100倍希釈液は薄黄色、200倍希釈液は非常に薄い黄色、400倍と800倍の希釈液は無色であった。各希釈溶液について、アリコート(1ml)を4mlバイアルに移した後、抗ビオチン被覆ポリピロール懸濁液20μlを各バイアルに加えた。37℃の温度で30分間インキュベーション後、各試験混合物の100μlアリコートをマイクロチューブに移し、マイクロチューブを実施例1に記載した微量天秤装置に挿入した。フェロフルイドを含む全試料で、全ポリピロールラテックスは最終的にマイクロチューブの底まで移動することが目視により判明した。装置により報告される磁石の見掛重量変化の速度と程度はフェロフルイドの濃度により異なっていた(図23参照)。これらの結果から明らかなように、希釈度の高いフェロフルイド懸濁液は複合体を磁気的に捕獲するために十分な数のフェロフルイド粒子をポリピロールラテックス粒子に結合することができたが、濃度の高いフェロフルイド懸濁液を使用すると、ポリピロールラテックスへのフェロフルイドの負荷が高くなった。
【実施例4】
【0151】
遊離ビオチン化BSAの阻害アッセイ
Abbott Laboratoriesから入手したアッセイ希釈剤を使用し、0μg/ml、2μg/ml、10μg/ml及び40μg/mlの濃度の遊離ビオチン化BSAの希釈溶液を調製した。各希釈溶液についてアリコート(20μl)をマイクロチューブに入れ、抗ビオチン被覆ポリピロールラテックス20μlと混合した。各溶液を37℃の温度で1時間インキュベートした後、ビオチン化BSAを被覆したフェロフルイド40μlを各溶液に加え、インキュベーションを更に30分間続けた後、各チューブを実施例1に記載した微量天秤装置に入れて分析した。フェロフルイドの代わりに希釈剤40μlを加えたマイクロチューブを入れたときの磁石の見掛重量に対して観察される各チューブによる磁石の見掛重量変化を調べた。図24に示すように、遊離ビオチン化ウシ血清アルブミンの濃度が増すと、ポリピロールラテックスによるフェロフルイドの捕獲を阻害し、その結果、複合体が形成されにくくなり、磁石にその最大吸引力を加えることができる場所であるマイクロチューブの底に蓄積するフェロフルイドが減る。40μg/ml試料(インキュベートした混合物中10μg/ml)は0.2mgの重量変化を示し、これらの条件下の最大阻害はインキュベートした混合物中4〜5μg/mlのビオチン化ウシ血清アルブミン濃度で得られたことを示した。
【0152】
これらの結果から明らかなように、フェロフルイドとポリピロールラテックスは特異的結合メンバーで被覆されているので、相互に結合している。結合の程度は試験混合物に及ぼす適用磁場の効果に予想可能な変化を生じる。
【実施例5】
【0153】
毛管チャネルをもつ自動イムノアッセイ用装置の作製
図25A、25B及び25Cに示すように、ポリマーフィルムの3枚のシート1000、1002及び1004を積層して毛管チャネルラミネート1006を作製した。頂部シート1000に1個以上の開口1008をあけて試料添加部位とし、中間シート1002に切り開いたチャネル1012の近端1010に到達できるようにした。後述する磁気ベースプレート1016に接着するように、底部シート1004の底部1014に接着剤を塗布した。試料を毛管作用によりチャネル1012に流し、チャネル1012の端部1018に到達したら液体のチャネル移動を停止した。場合によっては、チャネルの端部に到達した後も試料をチャネルに流し続けるようにチャネル1012の端部1018に多孔質吸上材(図示せず)を配置した。
【0154】
本実施例の装置は3層のポリマー材料を接着することにより作製しているが、1層、2層又は4層以上のポリマー又は等価材料(例えばガラス又は金属箔)を用いて毛管チャネルをもつ装置を作製することも本発明の範囲内である。2層以上のポリマー又は等価材料を接着する手段は当業者に周知であり、例えば接着剤、ヒートシール、ファスナー等を利用できる。
【0155】
毛管チャネルを支持するための磁気ベースプレートの作製
1/2インチアルミニウムプレート1016から20cm×20cmベースプレートを成形した。プレートの面にチャネル1020(幅1/2インチ及び深さ1/4インチ)を加工し、チャネルに“DELRIN”インサート1022を充填した。インサート1022の中心に深さ1/8インチ×幅1/32インチのチャネルを縦にあけ、軟質磁性材料の1/8インチ×1/32インチ×6インチストリップ1024を充填した。
【実施例6】
【0156】
フェロフルイドとの複合体形成の結果として捕獲チャネルの磁気部位におけるポリピロールラテックスの捕獲
毛管チャネルをもつ装置を使用するアッセイフォーマットで使用するためにポリピロールラテックスに磁気応答性を付与するために必要なフェロフルイドの最適濃度を決定するために、“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体を入れたカラムからのビオチン化BSA被覆フェロフルイドをPBSで50倍、100倍、200倍、400倍及び800倍に希釈した。各希釈溶液について、アリコート(1ml)を4mlバイアルに移した後、抗ビオチン被覆ポリピロール懸濁液20μlを各バイアルに加えた。37℃の温度で30分間インキュベーション後、磁気ストリップの長軸がチャネルの長軸から90°に配置されると共に近位チャネル開口まで0.5cmの距離を隔ててチャネルの下に配置されるように磁気ベースプレートに付着しておいた毛管チャネルラミネートの添加部位に各バイアルからの7μlアリコートを加えた(図25A及び25B参照)。フェロフルイドの希釈溶液を含む試料に対応する全チャネルは磁気ストリップの位置に捕獲されたポリピロールラテックスの黒いバンドを示し、試料中のフェロフルイドの濃度が増すにつれてバンドの強度は増加した。フェロフルイドを含まない試料はポリピロールラテックスのバンドを示さなかった。
【実施例7】
【0157】
毛管チャネルをもつ装置を使用して実施した遊離ビオチン化BSAの定性阻害アッセイ
PBS1ml中に実施例4に記載したビオチン化BSA0μg、5μg、20μg及び80μgを含む4種の別個の溶液を調製した。実施例2に記載した抗ビオチン被覆ポリピロールラテックスのアリコート(20μl)を各混合物に加えた後、37℃の温度で1時間インキュベートした後、実施例2からのビオチン化BSAを被覆したフェロフルイドの20μlアリコートを加えた。37℃の温度で5分間又は25分間インキュベーション後、実施例5に記載した毛管チャネル装置にアリコートを加えた。5μg/ml以上の濃度で遊離ビオチン化BSAが存在すると、チャネルの磁気部位におけるポリピロールラテックスの捕獲を阻害した。
【実施例8】
【0158】
毛管チャネルをもつ装置を使用して実施した遊離ビオチンの定量阻害アッセイ
実施例4に記載したビオチン化BSAをアッセイ希釈剤で希釈し、0μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml及び80μg/mlの濃度の希釈液を調製した。各希釈ビオチン化BSA溶液の20μlアリコートを、希釈剤60μl及び実施例2に記載した抗ビオチン被覆ポリピロールラテックス10μlと更に混合した。混合物を15分間室温で放置した後、実施例2からのビオチン化BSA被覆フェロフルイドの10μlアリコートを加えた。20℃の温度で15分間インキュベーション後、得られた混合物のアリコート(7μl)を実施例5に記載した毛管チャネル装置に加えた。5μg/ml以上の濃度で遊離ビオチン化BSAが存在すると、チャネルの磁気部位におけるポリピロールラテックスの捕獲を阻害した。
【0159】
捕獲されたポリピロールラテックスの存在による磁気捕獲部位の反射率の変化を測定することにより、この種のアッセイで定量的結果を得ることができた。0.125μg/ml、1.0μg/ml、5.0μg/ml及び80μg/mlのビオチン化BSA濃度を使用した以外は上記と同様にアッセイを繰り返した。反応混合物のアリコート(7μl)を毛管チャネルに加えた後、Abbott Laboratories製走査反射率リーダーを使用してチャネルを走査した。磁気捕獲部位の反射率を磁気捕獲部位の両側の部位の反射率と比較し、磁気捕獲部位の反射率と2つの隣接部位の平均値の差として純反射率を計算した。遊離ビオチン化BSAはポリピロールラテックスとフェロフルイドの結合を阻害したので、磁気捕獲部位と隣接する非磁気部位の反射率の差は、遊離ビオチン化BSA濃度が増加するにつれて減少した(図26参照)。アッセイ応答は、+/−アッセイフォーマットに望ましい狭い範囲を示す。
【実施例9】
【0160】
ヒト絨毛性性腺刺激ポルモンの自動スポットイムノアッセイ
抗体によるフェロフルイドの被覆
HClでpH7.0に調整したおいた20mM 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)でフェロフルイドを1%固形分の濃度まで希釈した。最終アッセイまでのフェロフルイドを用いる他の全段階はこの緩衝液中で実施した。15ml容遠心チューブで20%スクロース10mlに1%懸濁液3.3mlを重層することにより、可溶分と鉄が結合していない粒子をフェロフルイド調製物から除去した。調製物を4℃の温度で170,000×gでスインギングバケットローターで2時間遠心した。得られたペレットを緩衝液10mlで2回洗浄した後、ペレットを170,000×gで1時間遠心した。最終ペレットをMOPS緩衝液に懸濁して1%固形分の濃度とした後、4℃の温度で保存した。
【0161】
βhCGのαサブユニットに結合したマウスモノクローナル抗体を濃度4mg/mlに調整し、この溶液5mlを洗浄後の超常磁性粒子の等量の懸濁液に加えた。この懸濁液を周囲温度で160RPMのプラットフォームシェーカーで1時間震盪した。被覆粒子を4℃の温度で170,000×gで30分間遠心することにより2回洗浄し、懸濁して1%固形分を含む懸濁液を形成し、氷/水浴中で15秒間音波処理した。ナトリウムアジドを加えて最終濃度0.01%とし、粒子を4℃の温度で保存した。一部の実験で対照として使用するために、超常磁性粒子を同様にウシ血清アルブミン(BSA)で被覆した。
【0162】
抗体によるラテックス粒子の被覆
直径3μmのブルーラテックス粒子をPolysciences,Inc.,Warrington,Paから入手した。0.1M NaClを加えた20mM MOPS緩衝液(MOPS−NaCl)で粒子を0.1%固形分まで希釈した。粒子を4℃の温度で170,000×gで30分間遠心することにより1回洗浄し、緩衝液に懸濁して0.4%固形分の濃度とした。hCGのβサブユニットに対して反応性のアフィニティ精製ヤギIgGをMOPS−NaCl緩衝液中250μg/mlの濃度に調整した。等容量のラテックス粒子と抗体溶液を混合し、周囲温度で160RPMのプラットフォームシェーカーで1時間震盪した。被覆ラテックス粒子を2回洗浄し、ナトリウムアジドを含むMOPS−NaCl緩衝液中0.4%固形分の濃度まで緩衝液に懸濁した。対照として使用するためにラテックス粒子を同一手順によりBSAで被覆した。全被覆粒子を4℃の温度で保存した。
【0163】
臨床試料によるアッセイ
妊娠中の女子からの尿試料10個と妊娠していない女子からの尿試料10個を用いてアッセイを実施した。被覆試料をブラインド実験で試験した。64ng/mlの濃度でβhCGを含む陽性対照と陰性対照も臨床試料と共に試験した。それとは別に、全試料をAbbott Test−Pack Plusアッセイで評価し、妊娠に一致する量のβhCGの有無を確認した。
【0164】
アッセイは、(a)ウシ血清アルブミン1.0mg/mlを含むMOPS−NaCl緩衝液(MOPS−NaCl−BSA)で0.2%固形分まで希釈しておいたIgG被覆ブルー3μmラテックス粒子30μlと、(b)MOPS−NaCl−BSA中0.0066%固形分のモノクローナル抗体被覆磁性粒子10μlと、(c)未希釈尿試料40μlを混合することにより実施した。混合物を周囲温度で15分間放置した後、実施例5に記載し、図25に示した磁気ベースプレートの磁気ストリップにTeflonテープを重ね、15μlをスポットした。Teflonテープの両側に厚さ0.5mmの2個のサポート配置してガラスカバースリップを載せ、光学的に平坦な目視表面をもつ反応チャンバーを作製した(図15A及び15B参照)。5分及び10分後に結果を記録した。10個の陽性試料と陽性対照でアッセイを実施した場合には、磁場に形状が一致するブルー粒子の集合が観察された。他方、陰性試料と陰性対照を試験した場合には、ブルー粒子は均一に分散したままであった。Test−Pack Plusアッセイで得られた結果は本発明のアッセイの結果に一致した。
【実施例10】
【0165】
光学濃度測定を使用する可溶性フィブリンの自動アッセイ
ヒト血漿中の可溶性フィブリンの自動アッセイを開発した。このアッセイは、特異的結合メンバーを被覆したポリピロールラテックスと特異的結合メンバーを被覆したフェロフルイドの懸濁液が適用磁場の作用下で示す光学濃度変化の速度に基づいて実施した。ポリピロールラテックス(直径0.2μm、2%固形分)はAbbott Laboratoriesで製造した(実施例2参照)。ヒト可溶性フィブリン上のエピトープに対して結合アフィニティーをもつ第1の抗体と、ヒト可溶性フィブリン上の別のエピトープに対して結合アフィニティーをもつ第2の抗体をAmerican Biogenetic Sciences(Boston,MA)から入手した。第1の抗体のアリコート(125μl、5.58mg/ml)を0.1M硼酸緩衝液(187μl、pH10.0)、1%“BRIJ 35”界面活性剤(375μl)、ポリピロールラテックス(1.87ml)及び水(1.2ml)と混合した。混合物を室温で2時間震盪下にインキュベートした後、0.25M Bis Tris緩衝液中4%ウシ血清アルブミン1.25mlと0.5Mトリエタノールアミン中0.3M過ヨウ素酸555μlを加え、得られた混合物を室温で更に2時間インキュベートした。次に混合物を“MICROGON”透析濾過装置に流し、0.5%ウシ血清アルブミンと0.1%“BRIJ 35”界面活性剤を含む25mM MOPS−エタノールアミン緩衝液(pH7.2)に混合物の液体部分を交換した。抗体を被覆したポリピロールラテックスをこの溶液中で保存した。リン酸緩衝塩類溶液中に0.5%ウシ血清アルブミン、5%スクロース、0.1%“TWEEN 20”界面活性剤及び0.05%“PROCLIN”防腐剤を含む希釈剤溶液を使用して可溶性フィブリン標準及びストックポリピロール溶液を希釈した。ストックポリピロール懸濁液はアッセイで使用するために希釈剤で12倍に希釈した。
【0166】
実施例2に記載したフェロフルイドのアリコート(250μl)を0.05M炭酸ナトリウム(pH9.1)で3%固形分の濃度まで希釈し、第2の抗体の溶液(2μl、14.7μg/ml)と混合した。混合物を37℃で1時間インキュベートした後、1%ウシ血清アルブミン(110μl)を加え、得られた混合物を37℃で更に45分間インキュベートした。次に“SEPHACRYL S−300”ゲル濾過媒体を充填して0.1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝塩類溶液で平衡化しておいた1cm×40cmカラムに混合物を加えた。カラムを同一緩衝液で溶離し、排除された材料を3mlで回収した。
【0167】
アッセイ試薬混合物は希釈抗体を被覆したポリピロール懸濁液1mlを、抗体を被覆したフェロフルイド懸濁液100μlと混合することにより調製した。
【0168】
アッセイ標準は希釈剤溶液で種々の濃度まで希釈したヒト可溶性フィブリン(American Biogenetic Sciencesから入手)から調製した。
【0169】
Cary 3スペクトロフォトメーターを使用してアッセイ混合物の光学濃度を測定した。内径5mm×30mm蛍光計キュベットをWilmad Glass Inc.から入手した。六角頭キャップねじをスペクトロフォトメーターのキュベットホルダーの底のねじ穴にねじ込み、0.25インチ×0.25インチネオジム−鉄−ホウ素磁石をその頂部に置いた。次に、(計器により報告される見掛光学濃度の減少により判断されるように)磁石がキュベットホルダーを通る光ビームの底部を遮断し始めるまでキャップねじを回すことにより、キュベットホルダー内の磁石の位置を調節した。3mmの鉛直ギャップが残るまで光ビームの頂部と底部をフリクションテープの水平ストリップにより遮断し、磁石の頂部に支承されるまで蛍光計セルをキュベットホルダーに挿入すると、光ビームの底部は蛍光計セルの内側床に整列した。アッセイを開始する前に計器をゼロ設定した。
【0170】
まずアッセイ試薬混合物50μlを試験混合物50μlと混合した後、得られた混合物をキュベットに移すことによりアッセイを実施した。次に、その底部が磁石の頂部に支承されるまでキュベットをキュベットホルダーに挿入すると、スペクトロフォトメーターによる光学濃度の連続収集がすぐに開始した。磁気捕獲による溶液からのポリピロールラテックスの除去速度は、懸濁液の光学濃度の変化速度に反映した。試料中の可溶性フィブリン濃度の関数としてのアッセイ混合物中の光学濃度変化速度のプロットは直線関係を示す(図27参照)。
【0171】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明の種々の変形及び変更が当業者に自明であり、本発明は本明細書に記載する具体的態様に不当に限定されないと理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気応答性材料を使用して試料中の分析物の存在又は量を測定するための方法に関する。より詳細には、本発明は結合アッセイで成分の性質を変えるための磁気応答性材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
診断アッセイは分析物と分析物に特異的な結合メンバーの相互反応(例えば抗原と該抗原に結合する抗体の免疫反応)を使用することにより試料中の分析物を検出するために不可欠の手段となっている。一般に、このような診断アッセイでは着目分析物に結合する抗体に結合した検出可能なタグ又はラベルを利用し、得られた標識抗体−分析物複合体の検出又は分析物と結合して複合体を形成しない標識抗体の検出を使用して試料中の分析物の存在又は量を指示する。
【0003】
特異的結合メンバーを利用する診断アッセイ技術としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)と酵素イムノアッセイ(EIA)の2種が広く使用されており、いずれも標識した特異的結合メンバーを利用している。RIAは特異的結合メンバーに結合した検出可能なタグ又はラベルとして放射性同位体を使用している。放射性同位体は非常に少量で検出することができるので、少量の分析物を検出又は定量するために使用することができる。しかし、RIAには放射性物質の取り扱いに特殊な設備と細心の注意が必要であり、このような試薬はコストが高く、特殊な廃棄要件を満たさなければならないという実質的な欠点がある。
【0004】
EIAは特異的結合メンバーに結合した検出可能なタグ又はラベルとして酵素を使用し、酵素の酵素活性を使用して免疫反応を検出している。EIAにはRIAの欠点の一部は付随しないが、EIA技術は一般に検出可能な酵素反応を誘導するために基質材料を加える必要がある。更に、酵素基質は不安定なことが多く、使用直前に調製したり、冷凍保存する必要がある。更に、酵素ラベルは精製や結合メンバーとの結合が困難であったり、室温保存中又は冷凍条件下でも不安定な場合がある。酵素イムノアッセイは複雑なインキュベーション、多数の液体添加及び多数の洗浄段階が方法に一般に必要であるという点でも不十分である。
【0005】
より最近では、金属ゾル粒子を可視ラベルとして使用するアッセイ技術が開発されている。これらの技術では、金属(例えば金、銀、白金)、金属化合物又は金属もしくは金属化合物を被覆した非金属物質を使用して粒子の水性分散液を形成している。一般に、標識しようとする特異的結合メンバーを金属ゾル粒子に吸着させ、分析物の存在下に粒子を捕獲又は凝集させる。金属ゾル粒子は計器により視覚的に検出可能且つ測定可能なシグナルを発生するという利点があるが、定量的に測定しにくい。金属ゾル粒子は更に色強度が制限され、従って、アッセイによっては感度が制限される。更に、金等の無機金属ゾル粒子の表面は特異的結合メンバーと容易に共有結合できない。従って、結合アッセイで使用する際には、吸着した特異的結合メンバーが他のタンパク質又は界面活性剤による置換と非特異的に結合した材料を除去するために使用する洗浄段階に伴う剪断力の作用により無機粒子から離れないように注意する必要がある。金属ゾル粒子は凝集を誘導せずには被覆しにくく、保存すると凝集したり、緩衝液や塩類を加えると凝集したりする。更に、このような粒状ラベルは濃縮しにくく、分散しにくいことがある。
【0006】
他のラベル材料としては、化学発光物質と蛍光物質がある。しかし、これらの物質は不安定であり、蛍光材料は消光することがある。染色又は着色ラテックス粒子やセレン粒子等の非金属粒子も可視ラベルとして使用されている。
【0007】
自動イムノアッセイ装置は診断分野で非常に有利であることがわかっている。自動イムノアッセイ装置は免疫試薬を収容するキットであり、まず患者又は実験室技術者が生物試料を加えた後、複雑な実験室器具を必要とせずに診断アッセイを実施することができる。Abbott Laboratoriesから商標名「TESTPACK PLUS」で市販されているストリップアッセイ装置等の市販自動イムノアッセイ装置は迅速且つ確実にイムノアッセイを実施することができる。
【0008】
一般に、自動イムノアッセイ装置はクロマトグラフィー試験ストリップを使用している。例えば、米国特許第4,960,691号は連続反応により試料中の分析物を分析するための試験ストリップを開示している。試験ストリップは選択したクロマトグラフィー溶剤により非固定化試薬と試料の反応性成分をクロマトグラフィー溶剤輸送する能力と毛管力をもつ一定長さのクロマトグラフィー材料を含む。試験ストリップは(1)クロマトグラフィー溶剤輸送が開始する第1の端部と、(2)クロマトグラフィー溶剤輸送が終了する第2の端部と、(3)第1の端部と第2の端部の間に配置された複数のゾーンを含む。これらのゾーンは(1)溶剤中で移動可能であり且つ分析物との特異的結合反応が可能な第1の試薬を含浸させた第1のゾーンと、(2)試料を受容するための第2のゾーンと、(3)第2のゾーンの下流に配置されており、溶剤輸送できないように固定されており、分析物との特異的結合反応により第3のゾーンに分析物を固定することが可能な第2の試薬を含浸させた第3のゾーンを含む。試験ストリップは第1の試薬を第3のゾーンで分析物の尺度として検出できるように設計されている。
【0009】
クロマトグラフィー試験ストリップの共通特徴の1つは、液体又は液体の混合物と粒子を多孔質マトリックスに流すことである。試験ストリップは一般に結合反応が生じることが可能な反応ゾーンを含む。クロマトグラフィー試験ストリップで適正な結合反応が生じるためには、液体又は混合物が反応ゾーンを実質的に均一に流れなければならない。
【0010】
この種のアッセイ装置に伴う問題の1つは、多孔質マトリックスを形成する材料の固有の変動である。この変動(例えば多孔度)はマトリックスを通る液体の流れに直接影響し、アッセイ装置の精度を悪化させることがある。更に、マトリックスは所期反応ゾーンの複数部位又は他の場所で粒子又は試薬と非特異的に結合することが多く、固定化試薬の添加後に複雑な動態化手順の使用が必要になる。従って、多孔質マトリックスに液体を流す必要がなく、迅速で簡単な自動アッセイ装置を開発することが所望されている。
【0011】
自動イムノアッセイ装置に伴う別の問題は、アッセイで使用する試薬を反応ゾーンで捕獲できるように特異的結合試薬を試験ストリップに固定化する必要があるという点である。特異的結合試薬を試験ストリップに固定化する方法は調節しにくいため、反応ゾーンの結合能のロット間変動を生じる。更に、固定化結合試薬は不安定であるため、輸送又は保存後に反応ゾーンの結合能が変化する恐れがある。固定化した特異的反応試薬は特定分析物のアッセイに特異的であるため、試験ストリップを特定アッセイに専用にしなければならない。自動イムノアッセイ装置には、製法に起因するロット間変動、特に結合分子等の生物学的試薬の活性の変動という問題もある。例えば、試験ストリップの捕獲ゾーンで結合試薬の結合能がロット間で変動すると、アッセイ結果に影響し得る。他の試薬の活性や濃度を調節して補うことはできるが、このような調節を行うと製法が非常に複雑になり、試験ストリップの各ロットを試薬の特定ロットに合わせなければならなくなる。数種の異なる分析物のアッセイで完全に安定で均一な試験ストリップを使用できるならば、ストリップを利用する自動アッセイの実施及び制御は著しく簡単になるであろう。あるいは、製造中に1組の試薬の要件を満たすように試験ストリップを容易に適応させることができるならば有利であろう。
【0012】
数種の用途では、非常に狭い遷移濃度範囲で所定分析物濃度を上回る陽性結果と該濃度を下回る陰性結果を与える自動アッセイを使用することが望ましい。慣用試験ストリップでこうした結果を得ることは困難であった。
【0013】
超常磁性微粒子もイムノアッセイの実施に広く使用されている。超常磁性微粒子は、適用磁場が磁場発生器の方向にこれらの微粒子に作用する力を生じるという点で磁気応答性である。しかし、適用磁場を除去した後には残留磁気を保持しない。一般に、着目分析物に結合することが可能な特異的結合メンバーに粒子を結合して結合体を形成する。特異的結合メンバー−粒子結合体を液体に分散させた後、試料と混合して試験混合物を形成し、分析物が存在する場合には、特異的結合メンバー−粒子結合体を分析物と結合させる。その後、米国特許第4,745,077号、4,070,246号及び3,985,649号に記載されているように、磁場を加えて結合体−分析物複合体を固体表面に吸引させ、結合体に結合していない材料を除去する(一般に結合/遊離分離として知られる)。付加洗浄段階後、測定可能なシグナルを発生する前に試薬添加と結合/遊離分離が通常必要である。この種の分析法は一般に発光(化学発光又は蛍光)、酵素による発色団生産後の光吸収、又は着目分析物の量を表すシグナルとしての放射能放出を使用している。一般に、超常磁性粒子の磁気応答性は結合/遊離分離段階で補助的にしか使用されておらず、残りのアッセイ手順は慣用試薬及びプロトコールを使用している。従って、超常磁性粒子を使用する慣用分析は複雑な自動装置(例えばCiba Corning Diagnostics製品ACS180)又は手動アッセイ段階の拡張系列に制限されている。
【0014】
超常磁性粒子の寸法及び組成と、適用磁場の強度及び勾配は粒子に加えられる磁力の大きさを決定する。このような粒子の液体懸濁液に磁場を加えると、各粒子に加えられる磁力の大きさと各粒子の流体力学的抗力は粒子が磁場発生器に向かって液体中を移動する速度を決定する。類似組成の磁気応答性粒子では、適用磁場により個々の粒子に加えられる力、従って液体中のその移動速度はその体積に依存し、抗力はその横断面積により決定される。磁気応答性粒子が小さいほどその横断面積に対して各粒子に加えられる力が小さくなるので適用磁場内をゆっくりと移動し、フェロフルイド等の非常に小さい超常磁性粒子はその周囲の分子のランダム力と同等の力が加えられるので非常にゆっくりと移動する。これらのランダム力は熱(ブラウン)運動に起因する。粒子の寸法が大きくなるにつれてその体積は横断面積よりも迅速に増加し、その結果、磁力は抗力よりも迅速に増加する。ゆっくりと移動する数個の小さい粒子が集合してアグリゲートになると、個々の粒子に作用する力の和がアグリゲートに加えられ、その結果、アグリゲートは個々の粒子よりも迅速に磁場源に向かって液体中を移動する。特定型又は形態の磁気応答性試薬の移動又は捕獲を助長するように適用磁場の強度と勾配を選択することもできる。
【0015】
米国特許第5,108,933号は、そのコロイド性を操作することにより標的物質を含むマイクロアグロメレートに粒子を変換して着目物質を含有する疑いのある試験媒体から種々の標的物質の任意の1種を分離するためにコロイド状磁気応答性粒子を使用可能な方法を開示している。粒子は形成されたアグロメレートを媒体から除去するために十分な実験的閾値を上回る磁性材料から構成されているので、その後、通常の実験室磁石を使用してアグロメレートを媒体から除去することができる。この方法は試験媒体に安定に懸濁することが可能な凝集可能且つ再懸濁可能なコロイド粒子を試験媒体に加え、コロイド粒子と試験媒体中に存在する任意標的物質を含む磁性アグロメレートを形成し、得られた磁性アグロメレートを媒体から分離することにより実施される。しかし、この分析方法は単一種の粒子しか使用しないため、検出しにくい。磁石の近傍の凝集磁性粒子の有無は視覚的手段により簡単にも正確にも測定されない。簡単且つ正確に視覚的に検出可能なインジケーター粒子を使用できるならば望ましい。
【0016】
非磁性インジケーター粒子の使用は米国特許第5,374,531号に記載されており、該特許は白血球表現型又は他の粒状分析物の定量における磁性粒子と非磁性蛍光粒子の同時使用を開示している。磁性粒子と非磁性蛍光粒子はいずれも磁性粒子と非磁性蛍光粒子と所望細胞から構成されるロゼットの形成をもたらす結合物質を含んでいる。ロゼットは磁場を加えることにより試料の非磁性成分から分離され、非磁性蛍光粒子により放出される蛍光量により細胞数を測定することができる。ロゼット形成は標的細胞の周囲に磁性粒子とインジケーター粒子を結合するので標的細胞は磁性粒子及びインジケーター粒子と同等以上の寸法でなければならず、粒状分析物(例えば細胞)の検出にしか適用できない。分子規模の分析物は磁性粒子及びインジケーター粒子よりも著しく小さいので、この特許に記載されているロゼットは分子規模の分析物では形成することができない。
【0017】
分子規模の分析物の存在に相関する磁性粒子と非磁性指示粒子の凝集は米国特許第5,145,784号に記載されている。この特許では、抗原及び/又は抗体をその表面に結合した磁性粒子及び検出可能な非磁性粒子を被分析試料、必要に応じて遊離抗体並びに必要な任意緩衝液、塩及び他の試薬と組み合わせている。抗原と特異的抗体が結合するために十分な条件下で特定時間インキュベーション後に、磁性粒子を磁石で吸引して除去する。その後、検出可能な非磁性粒子の有無及び/又は量を測定し、試料中の着目抗原又は抗体の有無及び/又は量を測定する。この方法は、磁石の位置の近くで分離した磁性/非磁性粒子複合体を直接観察することにより分析物の存在を検出するものではない。
【0018】
米国特許第5,445,970号及び5,445,971号は結合アッセイにおける検出可能なラベルとしての磁気吸引性材料の使用を記載している。磁気ラベルを磁場に暴露すると、ラベルは磁場を加えた結果として合成力又は移動を示す。力又は移動の程度は試料中に存在し得る分析物により変化する。試料中の分析物の存在又は量は生じる力の大きさ又は磁気吸引性材料により示される移動量の原因であるので、磁気吸引性ラベルに及ぼす磁場の効果を試料中の分析物の存在又は量の尺度として使用することができる。このアプローチは、結合した磁気吸引性材料が適用磁場内を移動しないように、分析物の存在により磁気吸引性材料の固相結合度を変化させる必要がある。その後、磁場を加えると、遊離磁気吸引性材料と固相に結合した磁気吸引性材料が分離する。その後、固相に結合した磁気吸引性材料又は遊離磁気吸引性材料に加えられる力を測定すると、試験混合物中に存在する分析物の量が分かる。このアプローチを使用する自動アッセイフォーマットは可能であるが、何らかの形態の非移動性固相に特異的に捕獲する必要がある。
【0019】
用途によっては、分析物濃度を測定するために磁力の測定を必要としないフォーマットのように、微粒子等の移動固相のみを使用するアッセイフォーマットが非常に有利であると思われる。懸濁液から沈殿しない試薬を使用することも有利であると思われる。安定な懸濁液を形成するラテックス粒子を製造することはできるが、安定な懸濁液を形成するために十分小さい超常磁性粒子(フェロフルイドと言う)は磁場源に弱くしか吸引されないので、容易に磁気的に捕獲することができない。また、フェロフルイドは通常、水溶液に不相溶性である。クロマトグラフィー材料を必要としない自動イムノアッセイフォーマットを開発できるならば有利であろう。更に、多数のイムノアッセイに使用でき、製法に起因する試薬変動に容易に適応できる自動イムノアッセイ用媒体を開発できるならば有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,960,691号
【特許文献2】米国特許第4,745,077号
【特許文献3】米国特許第4,070,246号
【特許文献4】米国特許第3,985,649号
【特許文献5】米国特許第5,108,933号
【特許文献6】米国特許第5,374,531号
【特許文献7】米国特許第5,145,784号
【特許文献8】米国特許第5,445,970号
【特許文献9】米国特許第5,445,971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
発明の要約
本発明は試料中の分析物の存在又は量の測定方法に関する。1態様では、本方法は、
(1)前記分析物が移動固相試薬及び磁気応答性試薬と結合して複合体を形成するように、前記試料を前記移動固相試薬及び前記磁気応答性試薬の両者と接触させて反応混合物を形成する段階と、
(2)前記複合体に磁力を加えるように前記反応混合物を磁場に暴露し、前記磁気応答性試薬単独又は前記移動固相試薬単独とは異なる速度での前記複合体の移動又は捕獲により前記磁力の作用を発現させる段階と、
(3)発現の程度を測定し、前記試料中の前記分析物の存在又は量の尺度とする段階を含む。
【0022】
第2の態様では、本方法は、
(1)前記分析物が磁気応答性試薬と結合して前記磁気応答性試薬と前記分析物を含む第1の複合体を形成し且つ前記磁気応答性試薬が移動固相試薬と結合して前記磁気応答性試薬と前記固相試薬を含む第2の複合体を形成するように、前記試料を前記磁気応答性試薬及び前記移動固相試薬と接触させて反応混合物を形成する段階と、
(2)前記複合体に磁力を加えるように前記反応混合物を磁場に暴露し、前記磁気応答性試薬単独又は前記移動固相試薬単独又は前記第1の複合体とは異なる速度での前記第2の複合体の移動又は捕獲により前記磁力の作用を発現させる段階と、
(3)発現の程度を測定し、前記試料中の前記分析物の存在又は量の尺度とする段階を含む。
【0023】
第2の態様の代用では、本方法は、
(1)前記分析物が移動固相試薬と結合して前記移動固相試薬と前記分析物を含む第1の複合体を形成し且つ磁気応答性試薬が前記移動固相試薬と結合して前記磁気応答性試薬と前記固相試薬を含む第2の複合体を形成するように、前記試料を前記磁気応答性試薬及び前記移動固相試薬と接触させて反応混合物を形成する段階と、
(2)前記複合体に磁力を加えるように前記反応混合物を磁場に暴露し、前記磁気応答性試薬単独又は前記移動固相試薬単独又は前記第1の複合体とは異なる速度での前記第2の複合体の移動又は捕獲により前記磁力の作用を発現させる段階と、
(3)発現の程度を測定し、前記試料中の前記分析物の存在又は量の尺度とする段階を含む。
【0024】
磁気応答性試薬は磁気応答性材料に結合した特異的結合メンバーを含む。磁気応答性試薬は超常磁性微粒子又はフェロフルイドに結合した第1の特異的結合メンバーを含むことが好ましい。移動固相試薬は移動固相材料に結合した特異的結合メンバーを含む。移動固相試薬はポリマー微粒子又はラテックス等の移動固相粒子に結合した第2の特異的結合メンバーを含むことが好ましい。
【0025】
一般にサンドイッチフォーマットとして知られる第1の態様では、両方の特異的結合メンバーが分析物に同時に結合できるように、第1の特異的結合メンバーは分析物と特異的に結合するように選択し、第2の特異的結合メンバーも同様に分析物と特異的に結合するように選択する。分析物の存在下又は分析物の濃度が特定閾値を上回る場合には、第1及び第2の特異的結合メンバーはいずれも分析物と特異的に結合し、分析物と、第1及び第2の特異的結合メンバーと、夫々第1及び第2の特異的結合メンバーが結合した磁気応答性試薬及び固相試薬を含む検出可能な量の複合体を形成する。分析物の不在下又は分析物の濃度が特定閾値を下回る場合には、形成される両者結合メンバーを含む複合体の量はアッセイの閾値を下回る。
【0026】
この第1の態様の変形例では、移動固相試薬を磁気応答性試薬に置き換えることができる。この変形例では、分析物の存在下又は分析物の濃度が特定閾値を上回る場合には、第1及び第2の特異的結合メンバーはいずれも分析物と特異的に結合し、分析物と、第1及び第2の特異的結合メンバーと、夫々第1及び第2の特異的結合メンバーが結合した磁気応答性試薬を含む検出可能な量の複合体を形成する。分析物の不在下又は分析物の濃度が特定閾値を下回る場合には、形成される両者結合メンバーを含む複合体の量はアッセイの閾値を下回る。
【0027】
一般に競合フォーマットとして知られる第2の態様では、特異的結合メンバーの一方は分析物により示されるエピトープを示す。特異的結合メンバーの一方はこのエピトープと結合するように選択され、このエピトープは他方の特異的結合メンバーによっても示される。分析物の不在下又は分析物の濃度が特定閾値を下回る場合には、特異的結合メンバーは相互に結合し、特異的結合メンバーと、特異的結合メンバーが結合した磁気応答性試薬及び固相試薬を含む複合体を形成する。分析物の存在下又は分析物の濃度が特定閾値を上回る場合には、特異的結合メンバーの一方は分析物と結合し、分析物が他方の特異的結合メンバーと結合して磁気応答性試薬と移動固相試薬を含む複合体を形成するのを阻止する。
【0028】
本発明の方法は、磁気応答性試薬の粒子が移動固相試薬の粒子と結合して複合体を形成するのを調節するために分析物の存在を使用するという点で有利である。適用磁場において、複合体は磁気応答性試薬の個々の粒子の磁気応答及び移動固相試薬の個々の粒子の磁気応答とは異なる磁気応答を示す。このような分析物により調節される複合体形成は、例えば超常磁性粒子と反磁性粒子のように非常に異なる磁気応答性の程度を示す粒子間で得られる。得られる複合体は超常磁性粒子の存在により、磁場源に吸引される。複合体形成により得られる複数の常磁性、超常磁性又はフェロフルイド粒子を含む複合体の応答は、試料中に存在する分析物の存在又は量の尺度として利用することができる。磁気応答性試薬の粒子と移動固相試薬の粒子を含む複合体の形成に起因するこれらの粒子の磁気応答の変化は、適用磁場内のいずれかの型の粒子の移動速度の変化、又は適用磁場源に近い位置におけるいずれかの型の粒子の蓄積速度の変化、又は適用磁場源に近い位置における粒子含有複合体の検出可能な蓄積として発現させることができる。
【0029】
本発明は更に試料中の分析物の存在又は量の測定装置も提供する。このような装置の1例は、(i)未結合磁気応答性試薬と複合体形態で移動固相試薬に結合した磁気応答性試薬を試料中の分析物の量に関連して生成する反応容器と、(ii)試験混合物に磁場を加えるための磁場発生器と、(iii)試料中の分析物の存在又は量の尺度として磁気応答性試薬又は移動固相試薬又はその両者の応答性の変化を評価するための測定手段を含む。本発明に利用可能な磁場発生器としては、永久磁石と電磁石が挙げられる。本発明の装置に好ましい測定手段は以下のエレメントの1種以上を含む。
(1)複合体の磁気分離中又は後に適用磁場により試薬に加えられる力の変動又は試薬により磁場源に加えられる力の変動を測定することにより複合体形成の程度を測定するための天秤手段。
(2)複合体中の試薬から未結合試薬を磁気分離することにより複合体形成の程度を測定するための視覚装置。
(3)(a)移動固相試薬に結合した磁気応答性試薬の磁気捕獲による複合体形成の程度と未結合磁気応答性試薬もしくは移動固相試薬の分離を測定するか又は(b)毛管チャネル内の移動により両者試薬を測定するための視覚装置又は光学装置。
(4)複合体の磁気分離中又は後に複合体の分布変化により生じる磁場の撹乱を測定することにより複合体形成の程度を測定するためのホール効果トランスデューサー又は他の装置。
(5)複合体の磁気分離中又は後に反応混合物の光学濃度の変動を測定することにより複合体形成の程度を測定するための光学装置。
(6)複合体の磁気分離中又は後に磁気的に捕獲された複合体に加えられる力による光反射面の反射率の変化を測定することにより複合体形成の程度を測定するための光学装置。
【0030】
イムノアッセイを実施するための慣用ストリップ装置に代用可能な自動イムノアッセイ装置の1態様では、慣用自動イムノアッセイ装置の多孔質マトリックスに固定されるものと同様の特異的結合メンバーを磁気応答性材料の粒子(例えば超常磁性粒子)に固定し、得られた磁気応答性試薬を試薬混合物に加える。試料を試薬混合物と接触させて試験混合物を形成し、多孔質マトリックスでなくチャネルに流す。慣用装置の反応ゾーンでは多孔質マトリックスに非拡散的に結合した特異的結合メンバーと可視インジケーター粒子の間に一般に結合が生じていたが、このような結合を磁気応答性試薬と可視反磁性インジケーター試薬の間に生じることができる。チャネルに沿う特定位置に磁石を配置し、反磁性インジケーター試薬に結合した磁気応答性試薬を吸引する。磁石に吸引された結合反磁性インジケーター試薬の存在は視覚的又は光学装置により検出することができ、試料中の分析物の存在又は量を表す。本発明の原理を使用するアッセイは例えばキュベット、ウェル、チューブ等の慣用反応容器でも簡便に実施できることにも留意すべきである。磁気応答性試薬を可視性にし、反磁性試薬を透明即ち非可視性にし、蓄積した磁気応答性試薬のみを観察することにより視覚的又は光学装置により分析物の存在又は量を検出してもよいことにも留意すべきである。更に、磁気応答性試薬と反磁性試薬の両方を可視性にし、蓄積した磁気応答性試薬と可視反磁性試薬を観察することにより視覚的又は光学装置により分析物の存在又は量を検出してもよい。
【0031】
本発明の特有の利点は、手で握れる大きさの自給式装置によりイムノアッセイを簡単に実施できることである。磁気応答性試薬を含む複合体を反磁性移動固相試薬から分離するには、通常の磁気記録テープ又はクレジットカード磁気ストリップの磁場で十分である。これらの複合体の存在は、複合体内の反磁性固相材料の存在により視覚的に簡単且つ確実に観察することができる。本発明の別の特有の利点は、利用する磁気応答性試薬と移動固相試薬に適合する磁気捕獲ゾーンを形成できることである。磁場とその勾配は磁気応答性試薬の最適吸引を提供するように規定することができる。磁気捕獲部位を使用すると、自動アッセイで視覚手段により半定量的読み値を提供することができる。磁気捕獲部位は、アッセイ試薬におけるロット間の変動を補償するための手段を提供するように調節することができる。上述のように、慣用結合アッセイで使用されている試薬は通常、複雑な生物学的混合物であり、製法によりロット間で変動する傾向がある。サンドイッチアッセイフォーマットでは、磁気応答性試薬の粒子を移動固相試薬の粒子に対して非常に小さくできるので、磁場の強度及び勾配を調節することにより磁気応答性試薬の磁気挙動を調節することが可能である。移動固相試薬の粒子が磁気応答性試薬の粒子に対して大きい場合でも移動固相試薬の粒子の捕獲を調節することも可能である。磁気応答性試薬の未結合粒子を捕獲せずに移動固相試薬の粒子と磁気応答性試薬の粒子を含む複合体を最も効率的に捕獲するために、移動固相試薬の粒子の寸法と同等の距離で変化する磁場勾配を提供することができる。このような磁場は製造中に磁化性材料にコード化することができる。
発明の詳細な説明
本発明には以下の定義を適用することができる。
【0032】
本明細書で使用する「試料」なる用語は分析物を含む疑いのある材料を意味する。試料は供給源から得られたまま直接使用してもよいし、試料の特性を変えるように前処理後に使用してもよい。試料は任意生物源から得ることができ、非限定的な例として例えば血液、唾液、水晶体液、脳髄液、汗、尿、乳汁、腹水、粘液、滑液、腹膜液、羊膜液等の体液;発酵ブロス;細胞培養液;化学反応混合物等が挙げられる。試料は使用前に前処理してもよく、例えば血液から血漿を調製したり、粘液を希釈したりすることができる。処理方法としては、濾過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活化及び試薬の添加が挙げられる。生物学的液体又は体液に加え、水、食品等の他の液体試料を使用して環境又は食品製造アッセイを実施することもできる。更に、分析物を含む疑いのある固体材料を試料として使用してもよい。場合によっては、液体媒体を形成したり分析物を放出するように固体試料を処理すると有益であると思われる。
【0033】
本明細書で使用する「特異的結合メンバー」なり用語は、結合対即ち化学又は物理的手段により一方が他方に特異的に結合する2個の異なる分子の一員を意味する。周知抗原抗体結合対メンバーに加え、他の結合対の非限定的な例としては、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、相補的ペプチド配列、エフェクター分子とレセプター分子、酵素補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素、ペプチド配列と該配列又は完全タンパク質に特異的な抗体、ポリマー酸とポリマー塩基、色素とタンパク質結合剤、ペプチドと特異的タンパク質結合剤(例えばリボヌクレアーゼSペプチドとリボヌクレアーゼSタンパク質)、糖と硼酸、及び結合アッセイでそれらの結合を可能にするアフィニティーをもつ類似分子が挙げられる。更に、結合対は元の結合メンバーの類似体であるメンバー(例えば組換え技術や分子操作により作製される分析物類似体又は結合メンバー)を含む場合もある。結合メンバーが免疫反応体である場合には、例えば抗体、抗原、ハプテン又はその複合体とすることができ、抗体を使用する場合にはモノクローナル又はポリクローナル抗体、組換えタンパク質又は抗体、キメラ抗体、その混合物又はフラグメント、及び抗体と他の結合メンバーの混合物とすることができる。このような抗体、ペプチド及びヌクレオチドの製造と、結合アッセイにおける結合メンバーとしてのそれらの使用適性の詳細は当業者に周知である。
【0034】
本明細書で使用する「分析物」又は「着目分析物」なる用語は、検出又は測定しようとする化合物又は組成物を意味し、少なくとも1個のエピトープ又は結合部位をもつ。分析物は天然結合メンバーが存在するか又は結合メンバーを製造できるものであれば任意物質とすることができる。分析物の非限定的な例としては、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、アミノ酸、炭水化物、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬剤(治療目的に投与されるものと誘発目的に投与されるものを含む)、ウイルス粒子及び上記物質の任意のものの代謝物又は抗体が挙げられる。例えば、このような分析物の非限定的な例としては、フェリチン;クレアチニンキナーゼMIB(CK−MB);ジゴキシン;フェニトイン;フェノバルビトール;カルバマゼピン;バンコマイシン;ゲンタマイシン;テオフェリン;バルプロン酸;キニジン;黄体形成ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);エストラジオール、プロゲステロン;IgE抗体;ビタミンB2ミクログロブリン;グリコヘモグロビン(Gly.Hb);コルチゾール;ジギトキシン;N−アセチルプロカインアミド(NAPA);プロカインアミド;風疹IgG及び風疹IgM等の風疹抗体;トキソプラズマ症IgG(Toxo−IgG)及びトキソプラズマ症IgM(Toxo−IgM)等のトキソプラズマ症抗体;テストステロン;サリチル酸塩;アセトアミノフェン;B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg);抗B型肝炎コア抗原IgG及びIgM(抗HBC)等のB型肝炎コア抗原に対する抗体;ヒト免疫不全ウイルス1及び2(HTLV);Be型肝炎抗原(HBeAg);Be型肝炎抗原に対する抗体(抗HBe);甲状腺刺激ホルモン(TSH);チロキシン(T4);全トリヨードチロニン(全T3);遊離トリヨードチロニン(遊離T3);胎児性癌抗原(CEA);α胎児タンパク質(AFP);並びに中毒及び規制物質の薬物(非限定的な例としてアンフェタミン;メタンフェタミン;例えばアモバルビタール、セコバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール及びバルビタール等のバルビツール酸塩;例えばリブリウム及びバリウム等のベンゾジアゼピン;例えばハシシュ及びマリファナ等の大麻類;コカイン;フェンタニル;LSD;メタカロン;例えばヘロイン、モルヒネ、ゴデイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、メタドン、オキシコドン、オキシモルホン及び阿片等の阿片剤;フェンシクリジン及びプロポキシフェン)が挙げられる。「分析物」なる用語は任意抗原性物質、ハプテン、抗体、巨大分子及びその組み合わせも含む。
【0035】
本明細書で使用する「分析物類似体」なる用語は分析物特異的結合メンバーと交差反応する物質を意味し、反応の程度は分析物自体よりも高度であるか低度であるかは問わない。分析物類似体は分析物類似体が着目分析物と共通の少なくとも1個のエピトープ部位をもつ限り、改変分析物でもよいし、分析物分子の断片化部分又は合成部分でもよい。分析物類似体の1例は、分析物類似体が分析物特異的結合メンバーと結合できるように完全分子分析物の少なくとも1個のエピトープを複製した合成ペプチド配列である。
【0036】
本明細書で使用する「磁性」なる用語は磁場にあるときに磁化することが可能な物質を意味する。
【0037】
本明細書で使用する「常磁性」なる用語は、誘導磁場が磁化磁場と同一方向であるが、強磁性材料よりも著しく弱い物質を意味する。鉄、ニッケル又はコバルト等の強磁性材料は高い透磁率と、比較的弱い磁場で高い磁化を獲得する能力と、特徴的飽和点と、磁気ヒステリシスを示す。「常磁性」なる用語は磁化率が正である物質を意味する。
【0038】
本明細書で使用する「反磁性」なる用語は、誘導磁場が磁化磁場と逆方向である物質を意味する。「反磁性」なる用語は磁化率が負である物質を意味する。
【0039】
ある材料の磁性はこの材料を構成する原子の固有電子スピンにより生じる。鉄等の元素中の不対電子のスピンは完全原子にスピンを与える。このような材料に磁場を加えると、個々の原子のスピンは磁場と整列してそれらのエネルギーを最小にし、純磁気モーメントを生じる傾向がある。強磁性材料のように応答原子が密に充填されている場合には、相互に作用して長距離磁気秩序を形成する。適用磁場の強度が増すにつれて強磁性材料の磁化は増すが、応答原子のほぼ全部が整列すると、磁化のそれ以上の増加は観察されず、材料は飽和したと言える。その後、適用磁場の強度が低下する間に強磁性材料は顕著なヒステリシスを示し、適用磁場の完全な除去後に材料はその長距離磁気秩序を部分的に保存し、永久磁化する。
【0040】
常磁性と呼ぶ材料のうちには、高い磁気応答を示す個々の原子が低い磁気応答を示す他の元素の原子に囲まれているものもある。適用磁場に暴露すると、高い磁気応答を示す原子は磁場と整列するが、相互作用せず、長距離磁気秩序を形成することができない。顕著な飽和は観察されず、磁場を除去してもヒステリシスは示されず、個々の原子のスピンはランダム方向に戻り、全残留磁気モーメントは失われる。
【0041】
超常磁性材料は常磁性と強磁性の特徴を示す。強磁性材料の小粒子が低い磁気応答を示すマトリックス中に分散されている場合には、単一粒子内の原子は磁場におかれると整列して相互作用する。しかし、隣接粒子の原子には作用せず、その結果、長距離磁気秩序は形成されない。超常磁性材料は磁場に暴露すると常磁性材料よりも高度に磁化することができるが、超常磁性粒子は磁場を除去した後に残留磁性をほとんど示さない。
【0042】
磁性、強磁性、常磁性、超常磁性及び反磁性に関する更に詳細については、参考資料として本明細書の一部とするJiles,Introduction to Magnetism and Magnetic Materials,Chapman & Hall(London:1991)に記載されている。
【0043】
本明細書で使用する「磁気応答性試薬」なる用語は、特異的結合メンバーに結合した磁気応答性材料を含む物質を意味する。結合は共有又は非共有結合手段、結合手等により得られる。しかし、結合方法は本発明に重要ではない。本明細書で使用する「磁気応答性材料」なる用語は、磁場を加えると、試料中の分析物の量に直接又は間接的に関連する検出可能な応答を磁気応答性試薬に発生させることが可能な物質である。試薬の特異的結合メンバーは、分析物に直接結合するか又は追って詳述する補助特異的結合メンバーにより分析物に間接的に結合するように選択することができる。磁気応答性試薬は磁気応答性試薬を試料及び/又は他のアッセイ試薬に接触させる前、接触中、接触後のいずれに補助特異的結合メンバーに結合してもよい。「磁気応答性粒子に結合した特異的結合メンバー」、「磁気応答性材料に結合した特異的結合メンバー」、「磁気応答性試薬に結合した特異的結合メンバー」等の用語は、本発明の磁気応答性試薬の主特徴を表すために使用し、即ち試薬は磁場に暴露されると検出可能な応答を発生する。
【0044】
本明細書で使用する「固相」なる用語は、分析物、分析物複合体又はアッセイ試薬が結合し、未反応アッセイ試薬、試料又は試験溶液を分離できない任意材料を意味する。固相は一般にその表面に結合して「固相試薬」を形成する特異的結合メンバーをもち、分析物、磁気応答性試薬又は別のアッセイ試薬を結合することができる。固相に結合される特異的結合メンバーは分析物に直接結合するか又は補助特異的結合メンバーを介して分析物に間接的に結合するように選択することができ、前記補助メンバーは固相試薬を試料及び/又は他のアッセイ試薬と接触する前、接触中又は接触後のいずれに固相試薬に結合してもよい。
【0045】
当然のことながら、固相は複数成分を含んでいてもよく、固定化特異的結合メンバーを固相の任意又は全成分に直接結合してもよい。例えば、多重成分固相としては、物理、化学又は生化学的手段により固相の第2又は補助成分の内側に物理的に閉じ込められるか又は保持されて固定化された固相試薬を挙げることができる。別の例として、分析物特異的結合メンバーを不溶性微粒子に結合した後、多孔質材料に保持してもよい。「保持」とは、微粒子が一旦多孔質材料に配置されると、多孔質材料の内側の別の位置に実質的に移動できないことを意味する。それ自体固相試薬であり得る第1の固相成分を固相試薬の補助成分に保持するのは、第1の固相成分を試料及び/又は他のアッセイ試薬と接触する前、接触中又は接触後のいずれに行ってもよい。しかし、殆どの態様では、特異的結合メンバーを単一固相成分に結合した後に、こうして形成された移動固相試薬を試料又は他のアッセイ試薬と接触させる。本発明の固相試薬は非実質的レベルの磁気応答性を示す。
【0046】
本明細書で使用する「複合体」なる用語は、1種以上の特異的結合反応により1種以上の材料を別の材料と結合することにより形成される物質を意味する。複合体の非限定的な代表例としては、(a)磁気応答性試薬と移動固相試薬の特異的結合反応により形成される複合体、(b)分析物と磁気応答性試薬及び移動固相試薬の特異的結合反応により形成される複合体、(c)分析物と磁気応答性試薬の特異的結合反応により形成される複合体、並びに(c)分析物と移動固相試薬の特異的結合反応により形成される複合体が挙げられる。
【0047】
本明細書で使用する「補助結合メンバー」なる用語は、磁気応答性試薬又は移動固相試薬の特異的結合メンバー以外にアッセイで使用される結合対の任意メンバーを意味する。例えば、分析物自体が磁気応答性試薬に直接結合できない場合に、補助結合メンバーは磁気応答性試薬を着目分析物に結合することができない。当然のことながら、同一アッセイで1種以上の補助結合メンバーを使用してもよく、このような補助結合メンバーは磁気応答性試薬又は移動固相試薬を試料又は他のアッセイ試薬と接触させる前、接触中又は接触後のいずれに磁気応答性試薬又は移動固相試薬に結合してもよい。補助結合メンバーはアッセイ装置に組み込んでもよいし、別の試薬溶液として装置に加えてもよい。
【0048】
発明の説明
ある材料を磁場の作用下に置くと、磁場源に向かう力又は磁場源から遠ざかる力が材料に作用する。例えば、磁鉄鉱のように磁気応答性の強い強磁性材料に作用する力は磁場源に向かう。同一磁場で、ポリスチレン等の反磁性材料に作用する著しく弱い力は磁場源から遠ざかる。磁気応答性材料の応答の程度は、磁気応答性材料の存在量の尺度として使用することができる。本発明は、磁気応答性材料を結合アッセイで磁気応答性試薬の成分として使用すると、磁気応答性試薬と適用磁場の相互作用に起因する応答の程度を測定することにより、遊離磁気応答性材料又は複合体に取り込まれた磁気応答性材料の一方又は両方の存在又は量を検出できるという予想外の驚くべき発見に基づく。磁場に対する磁気応答性試薬の応答は、例えば磁気応答性材料の検出可能な移動又は磁気応答性材料が加えるかもしくは磁気応答性材料に加えられる検出可能な合成力等の方法で発現できる。更に、力の強度又は移動の程度は固相材料に結合した磁気応答性材料の量と一定の関係があるので、試料中の分析物の存在又は量を測定することができる。例えば、流体(例えばフェロフルイド)に懸濁した強磁性材料の個々の粒子に磁場が加える力は比較的小さいので、検出しにくい。しかし、これらの個々の強磁性粒子が集まって例えば特異的結合メンバーにより直接又は特異的結合メンバーにより分析物に同時に特異的に結合することにより間接的に反磁性固相材料に結合すると、流体に懸濁した個々の複合体に磁場が加える力は比較的高くなるので、著しく容易に検出可能になる。複合体からの個々の粒子の分離と磁場内の複合体の移動は、本発明の方法及び装置の基礎である。
【0049】
アッセイ試薬
磁気応答性材料の特定組成の選択は本発明に重要ではない。別のアッセイ試薬又は試料中に存在する成分に結合する特異的結合メンバーに磁気応答性材料を結合するか、又は結合できるように修飾することが好ましい。磁場に暴露すると、結合した磁気応答性試薬と未結合磁気応答性試薬を分離し、検出可能な応答を発生できるような程度まで磁気応答性材料が磁気応答性であることも好ましい。本発明の目的では、磁場適用により影響を受ける場合、例えば磁場源に吸引されるか又は検出可能な磁化率をもつ場合に材料は磁気応答性である。試薬の磁気応答成分又は特異的結合メンバー成分のいずれかを変化させることにより、種々の磁気応答性試薬を形成することができる。当然のことながら、検出しようとする分析物とアッセイ技術の所望の最適化を考慮して選択しなければならない。
【0050】
磁気応答性試薬で使用するのに適した磁気応答性材料は多種多様のものが市販されており、又はその製造方法が当該技術分野で周知である。磁気応答性材料の好ましい特性は、多種多様の磁性材料により達成できる。本発明で使用するのに適した磁気応答性材料の非限定的な例としては強磁性材料、フェリ磁性材料、常磁性材料、超常磁性材料等が挙げられる。「強磁性」なる用語は、磁石に吸引され、一般に磁場に暴露されると永久磁化する材料を表すために一般に使用される。強磁性材料は粒子の各々が単一磁区となるような粒度に細分することもできる。これらの粒子をマトリックスに分散すると、微粒子又はフェロフルイド粒子を形成することができる。この細分状態では、材料は「超常磁性」であると言うことができ、測定可能な有意永久磁化の存在を特徴とする。本発明でマトリックスとして使用するのに適した材料の非限定的な例としては例えばポリスチレン等の有機ポリマーが挙げられる。
【0051】
利用可能な強磁性、フェリ磁性、常磁性及び超常磁性材料の非限定的な例としては、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン等の金属;ネオジム、エルビウム等のランタニド系元素;アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅等の磁性合金等の合金;酸化第2鉄(Fe3O4)、g−酸化第2鉄(g−Fe3O4)、酸化クロム(CrO2)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO2)、酸化マンガン(Mn2O3)等の酸化物;フェライト等の複合材料;及び磁鉄鉱と酸化鉄等の固溶体が挙げられる。本発明で使用するのに好ましい磁気応答性材料は磁鉄鉱、酸化第2鉄(Fe3O4)及び酸化第1鉄(Fe2O3)である。
【0052】
固体粒子は鉄、酸化鉄、金属酸化物を被覆した磁気応答性材料のコア、又は磁鉄鉱もしくは赤鉄鉱を含むコロイド状磁性粒子から作製することができる。固体粒子は一般に8までの比重と、800nmまでの平均寸法(例えば直径)をもつ。
【0053】
積層粒子は非磁気応答コーティングをもつ磁気応答性材料のコアから構成することができる。例えば、積層粒子は一般にポリマーシランコートに包まれた磁性金属酸化物のコアから構成することができ、また、積層粒子は生物親和性をもつ化合物に結合するのに適したアミノ安息香酸とアルデヒドの縮合産物を被覆した非水溶性金属支持体から構成することができる。積層粒子はその表面に反応性基をもつ非水溶性架橋ポリマー材料のコーティングをもつ磁気応答性材料の単一粒子から形成されるコアから構成することができる。積層粒子は磁気応答性材料のコーティングをもつ非磁気応答性材料のコアから構成することができる。積層粒子はフェライトコーティングをもつ有機ポリマー粒子から構成することができ、積層粒子は(コアの表面の少なくとも一部に)磁気応答性材料のコーティングをもつ熱可塑性材料のコアから構成することができ、積層粒子は金属を被覆したポリアルデヒドマイクロスフェアから構成することができ、積層粒子はコアを均一に覆う磁気応答金属酸化物/ポリマーコーティングをもつポリマー粒子(例えばポリスチレン)のコアから構成することができる。積層粒子は磁気応答性材料と非磁気応答コーティングの層をもつ非磁気応答性材料のコアから構成することができる。例えば、積層粒子はアガロースに封入した金属被覆ポリアルデヒドマイクロスフェアと、ビーズの表面に結合した磁気応答粉末1〜25重量%をもつ熱可塑性樹脂ビーズ(例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ナイロン等)と、これを被覆し、生物活性成分と結合するための官能基をもつポリマーを含むことができる。
【0054】
複合粒子は非磁気応答性材料に埋封した磁気応答性材料から構成することができる。複合粒子の代表例としては、(a)ガラス及び/又は結晶構造の内側に組み込まれた鉄含有磁性結晶(<1000Å)、(b)金属錯体と配位しない少なくとも1種のモノエチレン性モノマー(30〜99重量%)と、金属錯体と配位しない少なくとも1種の架橋性ポリエチレン性モノマー(0.5〜50重量%)と、金属錯体と配位可能な少なくとも1種の求核性モノマー(0.5〜30重量%)と、金属の封入クリスタリットから形成されるコポリマーマトリックス、(c)オルガノポリシロキサンマトリックスに封入された300Å未満の平均寸法(例えば直径)をもつ磁化可能粒子、(d)利用可能な配位部位(遷移金属原子との配位結合に利用可能な自由電子対)をもつ水溶性ポリマーと水溶性形態の鉄の粒状反応生成物、(e)磁気応答性材料を含む有機、無機又は合成ポリマーマトリックス、(f)磁気応答性材料と(木炭、タルク、イオン交換樹脂、フラー土、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、多孔質ガラス、ゼオライト、天然又は合成ポリマー、重合一次もしくは二次抗体又は重合酵素、粒状形態の細胞表面抗原又はレセプター、細胞以下の粒子及び細菌細胞から選択される)粒状吸着剤を分散(埋封)させた非水溶性ポリマーマトリックスの連続相、(g)磁気応答固体の存在下に1種以上のモノマーを重合し、固体を均一に埋封した合成非水溶性ポリマーマトリックスを形成することにより製造される粒子、(h)高分子量ポリマー(例えばポリスチレン)の有機溶剤溶液と、粒状磁気応答性材料と、多官能性架橋剤(例えばポリアルデヒド)を配合することにより製造される架橋タンパク質又はポリペプチドと磁気応答性材料の粒子、(i)0.03〜5μmの平均直径をもつ疎水性ビニル芳香族ポリマー粒子と、ポリマー粒子の内側に分散され、粒子のポリマー部分に対して0.5〜50重量%の量の磁気応答性材料、(j)金属、金属合金、金属酸化物、金属塩、金属硫化物、顔料及び金属キレート化合物から構成される群から選択される充填剤と、充填剤の上に配置された親油性表面層と、充填剤を覆う親油性表面層の上に配置されたポリマー材料の層が挙げられる。
【0055】
マトリックス又は複合粒子として形成される磁気応答性試薬は、場合により磁気応答性材料、非磁気応答性材料又はその混合物の付加コーティング又は層を含んでいてもよい。マトリックス組成物は、非限定的な例として、(1)磁気応答性材料を選択モノマーと重合させたり、(2)磁気応答性材料をマトリックス内の細孔に導入してマトリックス材料を膨潤させる等の種々の方法の任意のものにより製造することができる。マトリックスしては例えばガラス、セルロース、合成ポリマー材料、アガロース等の有機及び無機材料を挙げることができる。本発明に利用可能なポリマー材料の非限定的な例としては、スチレンのポリマー、置換ポリスチレン、ポリナフタレン誘導体、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリメタクリルアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリピロール、ポリアミノ芳香族酸、ポリアルデヒド、タンパク性材料(例えばゼラチン、アルブミン等)、多糖類(例えば澱粉、デキストラン等)、並びにポリマー材料のコポリマーが挙げられる。ポリマーを不活性充填剤と混合使用してもよいし、吸着剤を加えてもよい。
【0056】
本発明で使用するのに適した磁気応答性材料の粒子は実質的に球形であることが好ましいが、他の形状も利用でき、場合によっては有利である。他の可能な形状の非限定的な例としては、プレート、ロッド、バー及び異形が挙げられる。磁気応答性材料の粒子の直径は好ましくは約0.01ミクロン(μm)〜約1,000μm、より好ましくは約0.01μm〜約100μm、最も好ましくは約0.01μm〜約10μmである。当業者に自明の通り、磁気応答性材料の組成、形状、寸法及び密度は広い範囲をとることができ、磁気応答性材料は着目分析物や所望アッセイプロトコール等の因子に基づいて選択することができる。
【0057】
本発明の1態様によると、磁気応答性材料の粒子は反応混合物の内側に懸濁し続けて特異的結合メンバーの反応性を増すような比重をもつように選択することができる。一般に、約0.03μm(300Å)未満の平均直径をもつ小さい磁気応答性粒子は自然沈殿せずに熱撹拌により溶液に懸濁し続けることができる。代替態様では、磁気応答性材料の粒子は反応混合物中に沈殿して固相上の固定化試薬に対する特異的結合メンバーの反応性を増すような比重をもつように選択することができる。一般に、例えば約10μmを上回る平均直径をもつ磁気応答性材料の大きい粒子は弱い磁場に応答することができる。磁気応答性材料の大きい粒子即ち粗粒子を使用してもよいが、このような粒子はインキュベーション段階中に粒子が沈殿しないように反応混合物を撹拌又は震盪する必要がある。別の態様では、磁気応答性材料の粒子は撹拌又は混合の必要なしに必要な結合反応を可能にするために十分な時間にわたって反応混合物に分散し続けるように選択することができる。
【0058】
磁気反応試薬を形成する際には、非限定的な例として吸着、共有結合、(化学的又は結合メンバーを介する)架橋、このような結合メカニズムの組み合わせ等の任意の適切な結合メカニズムにより磁気反応材料の結合メンバーの結合を達成することができる。一般に、結合基と結合剤は、磁気応答性材料に結合した場合に特異的結合メンバーの結合活性が実質的に変化又は損なわれないように選択される。磁気応答性材料に結合可能な結合メンバーの量はその濃度、使用する条件及び磁気応答性材料又は結合剤上の利用可能な官能基の量と種類に主に依存する。
【0059】
特異的結合メンバーは磁気応答性材料に共有結合することが好ましく、共有結合は一方の成分と他方の成分の化学活性形態の間で形成することができる。例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド等の活性エステルを一方の成分に導入して他方の成分上の遊離アミンと反応させ、両者の共有結合を形成することができる。他の非限定的な例としては、一方の成分にマレイミドを導入した後、他方の成分上に内在するか又は導入したスルフヒドリル部分と反応させてもよいし、一方の成分上に内在するか又は導入した炭水化物基を酸化してアルデヒドを形成し、他方の成分上の遊離アミン又はヒドラジドと反応させてもよい。磁気吸引性ラベルがポリマーコーティング又はマトリックスを含む場合には、ポリマーは特異的結合メンバーの結合を助長するために例えばアジド、ブロモアセチル、アミノ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、エポキシド、カルボン酸又は他の基等の適切な反応性基を含むか又はこのような基を付加できるように選択することができる。利用可能な試薬と、磁気応答性試薬を合成するための結合技術は当業者に周知である。当然のことながら、磁気応答性試薬の合成方法は本発明を限定するものではない。
【0060】
固相材料及び移動固相試薬は、一般に非限定的な例としてポリマー(例えばスチレンのポリマー)、置換ポリスチレン、ポリナフタレン誘導体、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリメタクリルアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリピロール、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ガラス又は他のガラス状材料、ポリアミノ芳香族酸、ポリアルデヒド、タンパク性材料(例えばゼラチン、アルブミン等)、多糖類(例えば澱粉、デキストラン等)、並びにポリマー材料のコポリマー等の材料から構成することができる。
【0061】
別の例としては、天然材料、合成材料又は人工的に処理した天然材料も固相材料として使用できる。このような材料の非限定的な例としては、多糖類(例えば紙等のセルロース材料と、酢酸セルロースやニトロセルロース等のセルロース誘導体)、シリカ、シリコン粒子、無機材料(例えば不活性アルミナ又は多孔質ポリマーマトリックスに均一に分散した他の無機微粉材料)が挙げられる。ポリマーマトリックスはポリマー(例えば塩化ビニルのポリマー、塩化ビニルとプロピレンのコポリマー、及び塩化ビニルポリマーと酢酸ビニルのコポリマー)、天然及び合成繊維(例えば綿、ナイロン等)、多孔質ゲル(例えばシリカゲル、アガロース、デキストラン、ゼラチン等)、ポリマーフィルム(例えばポリアクリレート等)、タンパク結合膜等から構成することができる。固相は更に、非限定的な例としてはポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ガラス等の任意の適切な型の材料から選択可能な微粒子から構成することができる。
【0062】
固相材料は妥当な強度をもつか、又は支持体によりこのような強度を与えることが好ましいが、固相材料は検出可能なシグナルの発生を妨げないことが好ましい。当然のことながら、固相材料は一般に磁気応答性材料よりも比較的低い磁気応答性を示し、例えば実質的に磁場に左右されないようにこのような材料を配置することにより、アッセイに与えるその磁気寄与を修正することができる。あるいは、固相材料の効果を磁気応答性材料の効果から区別してもよい。別の代替例として、このような材料を脱磁化してもよい。
【0063】
特異的結合メンバーを固相に結合して移動固相試薬を形成する手段は、磁気応答性試薬の合成に関して上記に要約した共有結合と非共有結合の両者を含む。共有結合により特異的結合メンバーを固相に結合することが一般に好ましい。
アッセイ方法及び装置
本発明の方法及び装置は、非限定的な例として上記結合対メンバー等の特異的結合対メンバーを利用する任意の適切なアッセイフォーマットに適用することができる。本発明のアッセイ方法は磁場の作用に対する磁気応答性試薬の応答を利用して特異的結合対メンバー間の結合を定性的又は定量的に測定する。本発明によると、磁気応答性試薬が移動固相試薬に結合する程度により分析物の存在を測定する。磁場の作用に対する磁気応答性試薬、移動固相試薬又はその両者の応答は結合の程度により変化する。従って、磁場に対する磁気応答性試薬、移動固相試薬又はその両者の応答を測定することにより、試料に含まれる分析物の存在又は量を正確に測定することができる。
【0064】
本発明の磁気応答性試薬及び装置は種々のイムノアッセイフォーマットで使用することができる。しかし、本発明はイムノアッセイに限定されない。一般に、特異的結合対メンバーと例えば本発明で使用される超常磁性微粒子等の磁気応答性試薬を使用する任意アッセイ構成を実施することができる。イムノアッセイフォーマットは当業者に周知であり、例えばその全開示内容を参考資料として本明細書の一部とする米国特許第5,252,459号に記載されている。イムノアッセイフォーマットは特に米国特許第5,252,459号の第5欄、55行〜第9欄、62行に詳細に記載されている。
【0065】
本発明は当該技術分野で周知の種々の競合アッセイフォーマット及びサンドイッチアッセイフォーマットに適用可能である。試料中の分析物の存在に関して標識試薬を液相と固相に分離する多数の競合、阻害及びサンドイッチアッセイフォーマットが記載されている。
【0066】
競合アッセイフォーマットによると、磁気応答性試薬は磁気応答性試薬を形成するように磁気応答性材料に結合した第1の結合メンバー(例えば分析物類似体)から構成することができる。移動相試薬は磁気応答性試薬に結合した第1の結合メンバーと分析物に特異的に結合する第2の結合メンバーを結合したポリマーラテックス又は微粒子等の移動固相材料から構成することができる。アッセイ中に、試料中の分析物と磁気応答性試薬は移動固相試薬上の結合部位について競合する。あるいは、磁気応答性試薬に結合した特異的結合対メンバーとの結合に関して分析物と競合するように選択した分析物類似体を固相に結合する特異的結合メンバーとしてもよい。従って、固相に結合する磁気応答性試薬の量は試料中の分析物の量に反比例する。
【0067】
サンドイッチアッセイフォーマットによると、第1の特異的結合メンバーを磁気応答性材料に結合して磁気応答性試薬を形成し、第2の特異的結合メンバーを移動固相に結合して移動固相試薬を形成する。特異的結合メンバーは着目分析物に直接又は間接的に結合するように選択する。アッセイ中に、磁気応答性試薬と移動固相試薬は分析物に結合して複合体を形成する。従って、分析物に結合することにより移動固相試薬と複合体を形成する磁気応答性試薬の量は試料中の分析物の量に比例する。
【0068】
本発明によると、場合により補助結合メンバーを使用して分析物又は分析物類似体を磁気応答性試薬又は移動固相試薬に間接的に結合するようにアッセイプロトコールを設定してもよい。補助結合メンバーは移動固相試薬又は磁気応答性試薬を試料又は他のアッセイ試薬と接触させる前、接触中又は接触後のいずれに移動固相試薬又は磁気応答性試薬に結合してもよい。
【0069】
更に、例えばアッセイ試薬と試料を同時に接触させて反応混合物を形成するようにアッセイプロトコールを設定してもよいし、結合に適した時間にわたってアッセイ試薬と試料を順次接触させて多重反応混合物を形成してもよい。このようなアッセイプロトコールによると、特異的結合反応により複合体を形成していない磁気応答性試薬(即ち未結合磁気応答性試薬)と、特異的結合反応により複合体を形成している磁気応答性試薬(即ち結合磁気応答性試薬)は適用磁場内の挙動が異なるため、複合体を形成するための結合に適した時間後に両者を分離することができる。当然のことながら、結合磁気応答性試薬と未結合磁気応答性試薬を分離するには、未結合磁気応答性試薬を反応混合物及び/又は結合磁気応答性試薬から完全に分離することが必要であると思われる。
【0070】
結合磁気応答性試薬と未結合磁気応答性試薬を分離するには、結合磁気応答性試薬が磁場の付近にあるときに未結合磁気応答性試薬が反応混合物中に止まり、検出可能な応答に悪影響を与えないように、未結合磁気応答性試薬を結合磁気応答性試薬から分離してもよい。あるいは、未結合磁気応答性試薬、結合磁気応答性試薬又は移動固相試薬の磁場に対する応答を観察してもよい。更に、未結合磁気応答性試薬、結合磁気応答性試薬又は移動固相試薬の磁場に対する応答を観察し、分配比を観察してもよい。
【0071】
一般に、本発明の装置は本明細書に教示するような磁気補助結合アッセイを実施するためのコンボーネントを含む。従って、このような装置は、(i)反応容器と、(ii)磁気応答性試薬に磁場を加えるための磁場発生器と、(iii)磁場発生器により発生された磁場が試料中の分析物の存在又は量の尺度として磁気応答性試薬又は移動固相試薬又はその両者に及ぼす効果を評価するための測定手段を含むことが好ましい。
【0072】
反応容器は本明細書に開示するアッセイ試薬を収容することができ、試料中の分析物の量に応じて未結合磁気応答性試薬と結合磁気応答性試薬を生成することが可能な任意装置とすることができる。
【0073】
結合磁気応答性試薬を未結合磁気応答性試薬から分離するには、未結合磁気応答性試薬と結合磁気応答性試薬を分離するのに適した任意手段(例えば磁場の適用)により実施することができる。
【0074】
磁場発生器は磁気応答性試薬から応答を誘導する磁場を発生するための任意手段とすることができる。本発明の好ましい磁場発生器としては永久磁石と電磁石が挙げられる。当然のことながら、磁場発生器は結合又は複合体化した磁気応答性試薬から未結合又は遊離磁気応答性試薬を分離するためにも使用することができる。
【0075】
磁場に対する磁気応答性試薬の応答は、試薬の合成力又は移動(例えば反応容器内の試薬に作用する力の見掛変化、試薬の変位等)等の多数の測定可能な形態で発現させることができる。当然のことながら、これらの発現は磁気応答性試薬の発現を検出及び測定することにより直接測定してもよいし、あるいは、例えば移動固相試薬又は磁場発生器に及ぼす磁気応答性試薬の効果を検出及び測定することにより間接的に測定してもよい。磁気応答性試薬に及ぼす磁場の作用は磁場に対する磁気応答性試薬の応答を直接又は間接的に測定するのに適した任意手段により観察又は検出及び測定することができる。例えば、(a)見掛重量変化を天秤により検出及び測定してもよいし、(b)見掛質量変化を天秤により検出及び測定するか、又はそれに伴う石英結晶等のオシレーターの周波数変化を検出及び測定してもよいし、(c)光センサーにより変位を検出及び測定し、磁気応答性試薬、移動固相試薬、又は移動固相試薬と磁気応答性試薬を含む複合体がとる初期位置から後期位置までの変化の大きさを評価してもよいし、(d)例えば圧電フィルムや、磁性材料の存在及び/又は移動により測定可能な撹乱を生じる場を形成することが可能なコイル(例えば磁化計)等の運動検出器により移動を検出及び測定して移動を評価してもよいし、(e)磁場を加えると応力の変化を検出できるように応力感受性材料を容器又は固相材料に加えることにより応力量の変化を検出してもよい。当然のことながら、特定アッセイに応じて磁場に対する未結合磁気応答性試薬の応答、結合磁気応答性試薬の応答、又は結合磁気応答性試薬と未結合磁気応答性試薬の応答の両者を直接又は間接的に検出することが好ましい。同様に当然のことながら、多種多様の計器を使用していずれも磁場と磁気応答性試薬の相互作用に起因する質量変化、位置変化、移動、重量変化、力変化、磁化率、誘導、光学変化等を検出することができる。
【0076】
本発明は磁気応答性試薬を同様の試薬又は他の非磁気応答性粒子と結合させた後、磁場を加え、その結果として磁気応答性試薬に加えられる磁力を測定し、定性又は定量アッセイ結果を提供することにより、従来の不均一凝集アッセイの問題を解決する。非限定的な例として電子天秤、光センサー、圧電感圧装置(例えばマイクロメカニカルシリコンデバイス又は電子チップ)、振動繊維装置、磁気応答性試薬の存在により撹乱する場を発生するコイル(例えば誘導コイル等)、及びカンチレバービーム装置(非限定的な例として原子間力顕微鏡で力の変化を感知するために使用されているようなもの)等の検出器を使用して小レベルの力を容易に測定することができる。これらの検出器は非常に高感度のアッセイの実施を可能にし、多数の慣用アッセイで必要とされているようなラベルの増幅が不要になる。
【0077】
慣用不均一結合アッセイは結合標識試薬と未結合標識試薬を分離し、材料の非特異的な固相結合を抑制するために固相を激しく洗浄する必要がある。このような洗浄段階はアッセイプロトコールを複雑にし、高いアフィニティー即ちこのような物理的操作に耐える結合強度をもつ特異的結合対メンバーの使用にアッセイを限定している。慣用粒子凝集アッセイでは、各メンバー上の数個の結合部位が協働して高いアビディティーを与えることができるので、低アフィニティーの結合メンバーを使用することができ、洗浄段階を省いても弱い結合を維持することができ、アッセイフォーマットが簡単になる。少数の結合部位の相互作用により元の結合メンバーよりも寸法及び質量が数桁大きい複合体の凝集が生じるため、肉眼的変化が生じ、視覚的に分析できるので、シグナル増幅が得られる。しかし、粒子凝集アッセイは分析しにくいことが多く、定量結果が得られず、自動化しにくい。
【0078】
本発明によると、例えば電磁石や可動永久磁石を使用したり、磁気応答性材料に特定強度又は勾配又はその両者の磁場をコードすることにより、磁場の強度を精密に操作することができる。特定アッセイ及び特定結合試薬に最適な磁場強度又は勾配又はその両者を選択できるので、他の試薬又は試薬もしくは複合体の所定のサブセットの選択的結合におけるロット間変動を補正することができ、更に高精度のアッセイ結果が得られる。上記利点により、アッセイをコンピューター制御に容易に適応できることが理解されよう。
【0079】
種々の装置及びアッセイプロトコールが本発明により予想されるが、以下のプロトコールは磁気応答性試薬の磁気補助検出を使用するサンドイッチアッセイフォーマット及び間接/競合アッセイフォーマットの例であるが、これらに限定するものではない。この点では、以下のプロトコール及び本発明により予想されるプロトコールは任意順序で段階を実施してもよいし、同時に実施してもよい。
【0080】
プロトコールA
1)着目分析物上の第1の結合部位に結合することが可能な結合部位をもつ第1の特異的結合メンバーを磁気応答性材料に結合して磁気応答性試薬を形成する。
【0081】
2)着目分析物上の第2の結合部位に結合することが可能な結合部位をもつ第2の特異的結合メンバーを移動固相に結合して移動固相試薬を形成する。
【0082】
3)着目分析物を移動固相試薬と結合するように、試料を移動固相試薬と接触させて第1の反応混合物を形成する。
【0083】
4)磁気応答性試薬が結合分析物と結合することにより移動固相試薬及び分析物と複合体を形成する(移動固相試薬及び分析物と複合体を形成する磁気応答性試薬の割合は試料中の分析物の量に直接相関する)ように、第1の反応混合物を磁気応答性試薬と接触させて第2の反応混合物を形成する。
【0084】
5)第2の反応混合物を検出器に暴露する。
【0085】
6)磁気応答性試薬と移動固相試薬と分析物の複合体に磁力を加えるように第2の反応混合物を磁場に暴露し、磁気応答性試薬−分析物−移動固相試薬複合体が未複合磁気応答性試薬又は未複合移動固相試薬とは異なる速度で移動又は捕獲されることにより磁力の作用を発現し、発現の程度を検出器により測定する。
【0086】
7)発現の測定可能な程度が複合体に取り込まれた磁気応答性試薬の量の尺度となる。
プロトコールB
1)着目分析物上の結合部位(第2の結合部位)に結合することが可能な結合部位(第1の結合部位)をもつ第1の特異的結合メンバーを磁気応答性材料に結合して磁気応答性試薬を形成する。
【0087】
2)第1の結合部位に結合することが可能な結合部位(第3の結合部位)をもつ第2の特異的結合メンバーを移動固相材料に結合して移動固相試薬を形成する。
【0088】
3)分析物が磁気応答性試薬と結合するように、試料を磁気応答性試薬と接触させて第1の反応混合物を形成する。
【0089】
4)磁気応答性試薬が第2の特異的結合メンバーと結合することにより移動固相試薬と結合する(移動固相試薬に結合する磁気応答性試薬の割合は試料中の分析物の量に逆相関する)ように、第1の反応混合物を移動固相試薬と接触させて第2の反応混合物を形成する。
【0090】
5)第2の反応混合物を検出器に暴露する。
【0091】
6)移動固相に結合した磁気応答性試薬の複合体に磁力を加えるように第2の反応混合物を磁場に暴露し、磁気応答性試薬と移動固相試薬を含む複合体が未複合磁気応答性試薬又は未複合固相試薬とは異なる速度で移動又は捕獲されることにより磁力の影響を発現し、発現の程度を検出器により測定する。
【0092】
7)発現の程度が複合体に取り込まれた磁気応答性試薬の量の尺度となる。
【0093】
図1はプロトコールBの結合反応を示す。図1は磁気応答性試薬2(例えばフェロフルイド)を移動固相試薬4(例えばポリピロールラテックス)に結合し、異なる磁性をもつ複合体6を生成するプロセスを示す。複合体にフェロフルイド粒子が存在しないと、多数のフェロフルイド粒子を含む複合体ほど迅速に適用磁場に応答しない。
【0094】
プロトコールA又はプロトコールBのいずれでもステップ5及び6の順序を逆にしてもよい。
【0095】
以下の態様は本発明の方法を使用してイムノアッセイを実施する方法を説明する。
【0096】
態様1
図2及び3は反応混合物を検出器に暴露した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の磁気補助測定を概略的に示す。
【0097】
図2に示すように、反応容器10は分析物14と、移動固相試薬16の粒子の懸濁液と、磁気応答性試薬18の粒子を含む反応混合物12を収容している。反応混合物12は反応容器10をサポート22に載置又は固定することにより検出器20に暴露される。サポート22は検出器20に載置されている。検出器20はサポート22を受容する皿26をもつ典型的上部負荷式微量天秤とすることができる。皿26にサポート22を載せ、サポート22に反応容器10を載せると、検出器20を校正即ち平衡に設定(ゼロ設定)することができる。
【0098】
図3に示すように、磁石28を反応容器10の底に近づけると、磁場は反応混合物12中の磁気応答性試薬に力を加える。一般に、磁石28はアーム30に固定されているので、反応容器10に対する磁石28の移動を精密に調節することができる。磁場は永久磁石や電磁石により提供することができ、断続的に加えてもよいし、連続的に加えてもよい。電磁石を使用すると、磁石28又は反応容器10を移動しなくてもオンオフにより磁場を変えることができる。また、電磁石はコンピューターにより制御できるので、磁場の強度を微調整できる。更に、電磁石を使用すると交番磁場を発生できるので、所望により反応混合物12中の磁気応答性試薬を混合できるという利点もある。
【0099】
反応容器10中の磁気応答性試薬に加えられる力は、反応容器の重量の見掛変化として発現され、検出器20のディスプレイ32に記録される。(分析物を介して)磁気応答性試薬の粒子が2個以上結合している移動固相試薬の粒子に加えられる磁力は、移動固相試薬単独の粒子又は磁気応答性試薬単独の粒子に加えられる力よりも大きい。従って、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬を含む複合体34は磁気応答性試薬の個々の粒子よりも迅速に磁場内を移動する。複合体34と磁石28の間の吸引力は重力による方向と同一方向に反応容器10、従ってサポート22に力を加え、見掛重量の増加として検出器20のディスプレイ32に記録される。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体34が反応容器10の底に向かって移動し、従って磁石28に接近するにつれて、複合体34と磁石28の間の力は増加し、複合体34の移動を更に加速する。複合体34は磁石に接近しているため、反応容器10の底に達して蓄積するにつれて反応容器10とそのサポート22に最大の力を加える。この現象はディスプレイの読みが示すように反応容器10の見掛重量を更に増加する。複合体34が反応容器10の底に到達する速度、従って検出器20により記録される見掛重量変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度である。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として慣用記録装置で記録することができる。見掛重量の変化は試験混合物中の分析物の量の尺度である。
【0100】
態様2
図4及び5は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の代替測定手段の概略図である。
【0101】
図4に示すように、反応容器100は分析物104と、移動固相試薬106の粒子の懸濁液と、磁気応答性試薬108の粒子を含む反応混合物102を収容している。図4では、反応混合物は反応容器100をサポート112に載置又は固定することにより検出器110に暴露される。サポート112は反応容器100を検出器110の上に配置する。重量感知皿116をもつ典型的上部負荷式微量天秤を検出器110として使用することができる。反応容器110の位置の下で皿116に磁石118を配置する。反応容器100をサポート112に配置する前、又は反応混合物を反応容器100に入れる前もしくは直後に、検出器110を校正即ち平衡に設定(ゼロ設定)することができる。
【0102】
図4は反応容器100をサポート112に配置した直後の手順を示す。磁石118により発生された磁場は磁石の方向の力を反応混合物102中の磁気応答性試薬に加え、磁気応答性試薬の方向の対応する力が磁石に加えられる。磁石に加えられる力は重力により加えられる力に対抗する傾向があるので、検出器110の応答が変化する。この初期検出器応答は初期位置における磁石と磁気応答性試薬の間の力に起因する。この時点で天秤をゼロ設定するならば、この初期応答は天秤の風袋重量に加わり、検出器110はゼロの読みを表示する。検出器110の応答はディスプレイ120上で観察することができる。
【0103】
磁石118により発生された磁場は反応混合物102中の磁気応答性試薬に力を加える。(分析物を介して)磁気応答性試薬の粒子が2個以上結合している移動固相試薬の粒子に加えられる磁力は、移動固相試薬単独の粒子又は磁気応答性試薬単独の粒子に加えられる力よりも大きい。従って、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬を含む複合体122は磁気応答性試薬の個々の粒子よりも迅速に磁場内を移動する。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体122が反応容器100の底に向かって移動し、従って磁石118に接近するにつれて、複合体122と磁石118の間の力は増加し、複合体の移動を更に加速する。図5に示すように、複合体122は反応容器100の底に達して蓄積するにつれて磁石118に最大の力を加え、検出器の読みの変化により示されるように磁石118の見掛重量を更に減らす。複合体122が反応容器100の底に到達する速度、従って検出器110により記録される見掛重量変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度である。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として記録装置で記録することができる。全複合体が反応容器100の底まで移動した後の検出器応答の最終変化又は複合体の移動中の検出器応答の変化の速度を使用すると、反応混合物中、従って元の試験混合物中に存在する分析物の量を測定することができる。図5中、図面内の矢印は複合体と磁石の間の力を表す。
【0104】
態様3
図6及び7は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の代替測定手段の概略図である。
【0105】
図6に示すように、反応容器200は分析物204と、移動固相試薬206の粒子の懸濁液と、磁気応答性試薬208の粒子を含む反応混合物202を収容している。反応混合物は反応容器200をサポート212に載置又は固定することにより検出器210に暴露される。サポート212は磁石218を固定した軟質材料のダイヤフラム216を含むセンサー214の上に反応容器200を配置する。軟質材料のダイヤフラム216は台220に支持されている。検出器210は軟質材料のダイヤフラム216の下に配置されたホール効果トランスデューサー222を含む。検出はホール効果トランスデューサー222に接続した電子回路の出力をモニターすることにより行われる。ダイヤフラム216が軟質であるため、磁石218に加えられる力が変化すると、ホール効果トランスデューサー222に対するその位置が変化する。その結果、磁場の変化がホール効果トランスデューサー222により感知され、電子回路の出力が変化する。図6は反応容器200をサポート212に配置し、検出器をゼロ設定した直後の手順を示す。
【0106】
ダイヤフラム216に固定された磁石218は反応容器200に近接して配置されているので、磁場はその中の磁気応答性試薬に力を加える。その結果、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体224は磁気応答性試薬の個々の粒子よりも迅速に磁場内を移動する。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体224が反応容器200の底に向かって移動し、従って磁石218に接近するにつれて、複合体224と磁石218の間の力は増加し、複合体224の移動を更に加速する。図7に示すように、複合体224は反応容器200の底に達して蓄積するにつれて磁石218に最大の力を加える。この力はダイヤフラム216に加えられ、ダイヤフラムが撓み、磁石218はトランスデューサー222から離れる。磁石218の初期位置からの変位度は(分析物を介して)移動固相試薬に結合した磁気応答性試薬の量に依存し、電子回路により発生される信号の変化として発現される。複合体224が反応容器200の底に到達する速度、従ってトランスデューサー回路により記録される信号変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度である。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として記録装置で記録することができる。信号変化の速度はディスプレイ226で観察することができる。全複合体が反応容器200の底まで移動した後の検出器応答の最終変化又は複合体の移動中の検出器応答の変化の速度を使用すると、反応混合物中、従って元の試験混合物中に存在する分析物の量を測定することができる。この態様の装置は任意空間配置で機能するように作製することができる。
【0107】
ホール効果トランスデューサー222以外の近接測定装置も使用できる。このような装置の代表例としては、光ビームをダイヤフラム216の底から検出器に反射させる光学装置や、ダイヤフラムを変位させて検出器に入射する光の強度を変化させる手段などが挙げられる。位置距離又は歪みの関数としてダイヤフラムから反射される光の干渉パターンの変化を測定する光学装置も使用できる。近接検出器として一般に使用されているキャパシタンスセンサーのように、ダイヤフラムの位置又は形状の変化を測定する非光学的方法も使用できる。ダイヤフラムの代わりに、ストリップ、ばね、カンチレバーアーム等の他の弾性エレメントも使用できる。図7中、図面内の矢印は複合体と磁石の間の力を表す。
【0108】
態様4
図8及び9は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の代替測定手段の概略図である。
【0109】
図8に示すように、反応容器300は分析物304と、移動固相試薬306の粒子の懸濁液と、磁気応答性試薬308の粒子を含む反応混合物302を収容している。図8では、反応混合物302は反応容器300をセンサー312に載置又は固定することにより検出器310に暴露される。センサー312は軟質材料のダイヤフラム314を含む。軟質材料のダイヤフラム314は台316に支持されている。検出は光源318と光センサー320により行われる。光源318からの光はダイヤフラム314上の反射部位321から光センサー320に反射される。ダイヤフラム314の位置がずれると、光センサー320に入射する反射光が位置シフト即ち屈折し、光センサー320の出力が変化する。ダイヤフラム314自体が位置感知手段として機能することができ、光はダイヤフラム314の下面から直接反射されることが理解されよう。
【0110】
図9に示すように、磁石322がダイヤフラム314に近接して配置されているので、磁場は反応混合物中の磁気応答性試薬に力を加える。その結果、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体326は磁気応答性試薬の個々の粒子よりも迅速に磁場内を移動する。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体326が反応容器300の底に向かって移動し、従って磁石322に接近するにつれて、複合体326と磁石322の間の力は増加し、複合体326の移動を更に加速する。複合体326は反応容器300の底に達して蓄積するにつれて磁石322に最大の力を加える。この力はダイヤフラム314に加えられ、ダイヤフラムが撓む。ダイヤフラム314の初期位置からの変位又は歪み度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度、従って、反応混合物中に存在する分析物の量に主に依存する。この結合度は検出器310により測定することができる。反応容器300を軟質ダイヤフラム314に永久的に固定し、反応混合物320を取り出して交換することにより再使用できることが理解されよう。反応容器300又は軟質ダイヤフラム314を使い捨てにしてもよいことも理解されよう。軟質サポートをダイヤフラムの形態にしなくてもよいことも理解されよう。例えばカンチレバーアーム、弾性サスペンター、ばね又は浮揚装置等の任意弾性又は変位可能サポートを使用することができる。
【0111】
軟質材料自体を反応容器として利用し、反応混合物をこれに直接加えてもよいことが理解されよう。軟質材料は反応混合物を収容できる部位を形成するような形状にすればよいことも理解されよう。軟質材料はセンサーを横切って移動可能なウェブでもよいことも理解されよう。図9中、図面内の矢印は複合体と磁石の間の力を表す。
【0112】
態様5
図10及び11は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の別の測定手段の概略図である。
【0113】
図10に示すように、反応容器400は蓋404をもつウェル402を含む。ウェル402は反応混合物406を収容している。分析物408が存在する場合には、磁気応答性試薬410の一部は(分析物を介して)移動固相試薬412と結合して複合体414を形成する。ウェル402はウェル402を受容する皿418をもつ天秤416等の力感知装置に載置又は固定されている。天秤416にウェル402を載せると、天秤416をゼロに設定することができる。
【0114】
図11に示すように、磁石420を蓋404に接近させると、磁場はウェル402の内側の磁気応答性試薬に力を加える。この力の作用下で、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体414は蓋404の下面に向かって移動するが、そこでは磁石420により近接しているため、磁気吸引力はより強力である。未結合磁気応答性試薬410はこのレベルの磁場強度下で複合体414よりもゆっくりと移動し、蓋404の下面に到達するのに時間がかかる。移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体414は蓋404の下面に蓄積するにつれて重力に対抗して蓋に抗する上向きの力を生じ、天秤416のディスプレイ422に記録されるウェル402の見掛重量が減る。複合体414が蓋404の下面に到達する速度、従って天秤416により記録される見掛重量変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度でもある。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として記録手段で記録することができる。この方法は蓋なし反応容器を使用しても適用することができ、反応混合物表面の表面張力が蓋と同一目的を果たす。ウェル402の重量の変化の見掛速度は最初は迅速であるが、全複合体が捕獲されるにつれて低下する。この終点における重量の総変化を使用すると、反応混合物中の分析物の量を測定することができる。図11中、図面内の矢印は複合体と磁石の間の力を表す。あるいは、磁石420を天秤に固定し、複合体により磁石に加えられる力の変化を測定してもよい。
【0115】
態様6
図12及び13は反応混合物を検出器に配置した後のプロトコールA(プロトコールAのステップ6)に実質的に従う(分析物を介する)移動固相試薬への磁気応答性試薬の結合の測定用代替検出器の概略図である。
【0116】
図12、より詳細には図13に示すように、反応容器500は磁気応答性試薬504の粒子と、移動固相試薬506の粒子106と、存在する場合には分析物508を含む反応混合物503を収容したウェル502を含む。磁気応答性試薬504の少なくとも一部は(分析物508により)移動固相試薬506の粒子と結合している。反応混合物503は反応容器500を第1のサポート512に載置又は固定することにより検出器510に暴露される。サポート512は第2のサポート516に固定した磁石514の近傍に応容器500を配置するように機能する。第2のサポート516は固体表面520に当接するナイフエッジ518と、天秤526の皿524の上方に配置されたサイドアーム522をもつ。第2のサポート516はナイフエッジ518を中心に自由に回転し且つ調節ねじ527により天秤526の皿524にサイドアーム522を支持することによりその鉛直位置のみを固定するように配置されている。サポート512,516を配置すると、天秤526を校正即ち平衡に設定(ゼロ設定)することができる。
【0117】
次にウェル502を第1のサポート512に配置又は固定して磁石514に接近させると、磁場はウェル502の内側の磁気応答性試薬に力を加える。この力の作用下で、移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体528は、磁石514に近接しているために磁気吸引力が強いほうのウェル502の側に向かって移動する。未結合磁気応答性試薬504はこのレベルの磁場強度下でゆっくりと移動し、ウェル502の側に到達するのに時間がかかる。
【0118】
移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体528は側面をウェル502に向けて配置した磁石514にかかる力を生じる。この力は天秤526の皿524に支持された第2のサポート516のサイドアーム522の力に対抗し、その結果、天秤526により報告されるサイドアーム522の見掛重量が減少する。磁石に加えられる力は第2のサポート516を実質的に移動させるには不十分であり、天秤の皿524にかかる重量を減らすためにしか十分でない。皿にかかる重量に関係なく皿の位置を維持する天秤装置も利用できる。この態様の概念は天秤の使用に限定されないことが理解されよう。上述の装置即ち弾性サポートや光又は他の位置決めセンサー等の任意力測定装置を使用することができる。複合体528がウェル502の側面に到達する速度、従って天秤526により記録される見掛重量変化の速度は移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の間の結合度の尺度であり、従って、反応混合物中に存在する分析物の量の尺度である。この速度は時間の関数としての見掛重量の変化として記録手段で記録することができる。
【0119】
態様7
本発明の別の態様として、図14A及び14Bは分析試験を実施するための自動イムノアッセイ装置を示す。装置600は1個以上の磁気部位604をもつ毛管チャネル602を含む。反応混合物606は毛管作用によりチャネル602内を押し流される。反応混合物は磁気応答性試薬610と分析物612と移動固相試薬614を含む。反応混合物606はチャネル602内を流れるにつれて磁気部位604を通り、移動固相試薬614と分析物612と磁気応答性試薬610の複合体616はこの位置でチャネル602の壁に優先的に蓄積する。用途によっては、磁気応答性試薬が未結合であるか又は移動固相試薬と複合体を形成しているかに関係なく蓄積するように磁気部位の磁場の強度もしくは勾配又は磁気応答性試薬の寸法と組成を選択すると有利な場合がある。移動固相試薬のこの蓄積の存在又は程度は種々の方法で測定することができる。
【0120】
本発明の好ましい態様では、移動固相試薬614と分析物612と磁気応答性試薬610の複合体616が磁気部位604に蓄積すると可視結果を生じるように移動固相試薬614の粒子又は磁気応答性試薬610の粒子を製造する。他方、蛍光発光、反射率、濃度測定、酵素活性もしくは本明細書に記載する他の態様の方法の任意のもの又は他の手段により複合体616の蓄積を検出又は測定できることが理解されよう。
【0121】
特に好ましい態様では、磁気部位604は磁気記録テープ又は慣用クレジットカードに見られるものと同様の磁気ストリップとすることができる。磁気部位604を毛管チャネル602の内面として用いてもよい。磁気部位604は単一でも複数でもよく、種々の移動固相試薬と磁気応答性試薬の比をもつ移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体が試料中の分析物の濃度の指標として種々の部位604で捕獲されるように、種々の形状と種々の磁場強度又は勾配にすることができる。
【0122】
磁気部位の磁場強度、勾配、寸法及び形状と、磁気応答性試薬の寸法、形状及び組成は、定性(例えば陽性/陰性)結果又は定量(例えば半定量)結果を最適にするように選択することができる。例えば、図14A及び14Bに示す毛管チャネルの底に沿って一連の等しい磁気捕獲部位をコード化することができる。磁気応答性試薬と移動固相試薬を含む複合体を結合する能力を制限するように各部位をコード化してもよい。反応混合物がチャネルに沿って下流に進行するにつれて、複合体はまず最上流の磁気捕獲部位を通り、ここに蓄積する。複合体を殆ど含まない反応混合物では、最上流の磁気捕獲部位しか複合体の蓄積を示さない。他方、最上流の磁気捕獲部位を飽和するに十分な複合体が存在するならば、更に複合体がこの部位を通過し、最上流から2番目の磁気捕獲部位に蓄積し、以下同様となる。この場合には、複合体の蓄積を示す磁気捕獲部位の数が反応混合物中の複合体形成の程度の尺度、従って試料中の分析物の濃度の尺度となる。
【0123】
あるいは、アッセイフォーマットによっては、複合体形成の程度でなく移動固相試薬の各粒子に結合した磁気応答性試薬の粒子の数により反応混合物中の分析物の濃度を発現することができる。これらの場合には、磁場強度又は勾配又はその両者が異なる複数の磁気捕獲部位を毛管チャネルの底にコード化することができる。各磁場強度/勾配組み合わせは、特定の磁気応答性試薬対移動固相試薬比をもつ複合体を吸引する傾向を示す。例えば、反応混合物がチャネルに沿って下流に進行するにつれて、複合体はまず最も弱い磁場強度をもつ磁気捕獲部位を通ることができた。この部位は高い磁気応答性試薬対移動固相試薬比をもつ複合体しか捕獲することができなかった。その後、磁気捕獲部位は磁場強度が漸増するので、次第に低い磁気応答性試薬対移動固相試薬比をもつ複合体を捕獲できるようになった。この場合には、どの磁気捕獲部位が複合体の蓄積を示すかにより、磁気応答性試薬の蓄積の程度、従って試料中に存在する分析物の量が判断される。複合体の蓄積は視覚的又は蛍光発光、反射率、濃度測定、酵素活性もしくは本明細書に記載する他の態様の方法の任意のもの又は他の手段により検出又は測定できることが理解されよう。本態様は、電力を必要としない小型で携帯可能で潜在的に使い捨て可能な分析装置を提供する。
【0124】
図14A及び14Bに示すような装置を使用する本発明の別の態様では、毛管チャネルの床を光吸収材から製造する。移動固相試薬は移動固相試薬の蓄積の程度に比例して光吸収性毛管チャネルにコントラストを提供する光学的性質(反射率、色、蛍光、化学発光等)を示す。こうして、磁気応答性試薬を常に磁気捕獲部位で捕獲するフォーマットで特に有用な性質である磁気応答性試薬の光学的性質をマスクすることができる。
【0125】
態様8
本発明の別の態様として、図15A及び15Bは分析試験を実施するための自動イムノアッセイ装置を示す。装置700は1個以上の磁気部位706を含む平坦表面704をもつエレメント702を含む。表面704又は表面704を覆う材料層と反応混合物708を接触させる。反応混合物708は磁気応答性試薬710と、分析物712と、移動固相試薬714を含む。移動固相試薬714と分析物712と磁気応答性試薬710の複合体716は磁気部位706に優先的に移動して蓄積する。用途によっては、磁気応答性試薬が未結合であるか又は移動固相試薬と複合体を形成するかに関係なく蓄積するように、磁気捕獲部位の磁場の強度もしくは勾配又は磁気応答性試薬の寸法と組成を選択すると有利な場合がある。移動固相試薬のこの蓄積の存在又は程度は種々の方法で測定することができる。
【0126】
本発明の好ましい態様では、移動固相試薬714と分析物712と磁気応答性試薬710の複合体716が磁気部位706に蓄積すると可視結果が形成されるように移動固相試薬714の粒子又は磁気応答性試薬710の粒子を製造する。形状、色、密度、程度、位置等を試験混合物中の分析物の存在又は量の尺度として利用できる。磁気部位706は単一でも複数でもよく、種々の移動固相試薬対磁気応答性試薬比をもつ移動固相試薬と分析物と磁気応答性試薬の複合体が試料中の分析物の濃度の指標として種々の部位706で捕獲されるように、種々の形状と種々の磁場強度又は勾配にすることができる。複合体の蓄積は、蛍光発光、反射率、濃度測定、酵素活性もしくは本明細書に記載する他の態様の方法の任意のもの又は他の手段により検出又は測定できることが理解されよう。
【0127】
特に好ましい態様では、磁気部位706は磁気記録テープ又は慣用クレジットカードに見られるものと同様の磁気ストリップとすることができる。本態様は、電力を必要としない小型で携帯可能で潜在的に使い捨て可能な分析装置を提供する。
【0128】
態様9
本発明の別の態様では、本明細書に記載する手順を使用して磁気応答性試薬の性質を測定することかできる。寸法、形状、磁鉄鉱濃度、凝集状態及び他の因子は磁気応答性材料の粒子が適用磁場に応答して流体中を移動する速度に影響する。本発明の方法を磁気応答性材料の試料に適用すると、これらの材料の品質を管理し、未知試料又は未知濃度の試料中のこれらの材料の量を測定する手段として利用することができる。
【0129】
態様10
本発明の別の態様として、図16A及び16Bは分析試験を実施するための自動イムノアッセイ装置を示す。装置800は磁石804の上方に支持された反応容器802を含む。反応容器802は磁気応答性試薬810の粒子と、存在する場合には分析物812と、移動固相試薬814の粒子を含む反応混合物808を収容している。分析物が存在する場合には、磁気応答性試薬810の一部は(分析物を介して)移動固相試薬814と結合して複合体816を形成する。(分析物を介して)磁気応答性試薬の2個以上の粒子が結合している移動固相試薬の粒子に加えられる磁力は磁気応答性試薬単独の粒子に加えられる力よりも大きいので、移動固相試薬814と分析物812と磁気応答性試薬810の複合体816は磁気応答性試薬単独の粒子よりも迅速に磁場内を移動し、懸濁液から除去される。
【0130】
本発明の好ましい態様では、懸濁時に一方又は両方を検出できるように移動固相試薬の粒子又は磁気応答性試薬の粒子を製造する。懸濁液からの複合体の除去は視覚的に検出してもよいし、図16に示すような光学装置を使用して測定してもよい。光源820からの光ビームは反応容器802と反応混合物808を通り、光検出器822に達する。光学濃度測定の結果はディスプレイ824上で観察することができる。移動固相試薬814又は磁気応答性試薬810又はその両者の量は、光学濃度、蛍光発光、光散乱の変化を記録するか、本明細書に記載する他の態様の方法の任意のもの又は他の手段により測定する。
【0131】
本発明は移動固相試薬と磁気応答性試薬の複合体により発現される力、移動又は蓄積の評価を利用するので、本明細書に記載する種々の検出方法及び試薬は自動操作又はシステムに容易に適応可能であることが理解されよう。他方、このような自動操作又はシステムは自動システムの一部のアッセイ操作を手動で実施する可能性を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は本発明で使用する特異的結合反応の概略図である。
【図2】図2は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に天秤を使用する装置の概略図である。
【図3】図3は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図2の装置の概略図である。
【図4】図4は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に天秤を使用する装置の概略図である。
【図5】図5は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図4の装置の概略図である。
【図6】図6は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出にホール効果トランスデューサーを使用する装置の概略図である。
【図7】図7は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図6の装置の概略図である。
【図8】図8は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に光センサーを使用する装置の概略図である。
【図9】図9は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図8の装置の概略図である。
【図10】図10は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に天秤を使用する装置の概略図である。
【図11】図11は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図10の装置の概略図である。
【図12】図12は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に微量天秤を使用する装置の概略図である。
【図13】図13は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図12の装置の一部の概略図である。
【図14A】図14Aは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の1種の自動イムノアッセイ装置の概略図である。図面は複合体を捕獲する前のイムノアッセイを示す。
【図14B】図14Bは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図14Aの自動イムノアッセイ装置の概略図である。図面は複合体を捕獲した後のイムノアッセイを示す。
【図15A】図15Aは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の別種の自動イムノアッセイ装置の概略図である。図面は複合体を捕獲する前のイムノアッセイを示す。
【図15B】図15Bは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図15Aの自動イムノアッセイ装置の概略図である。図面は複合体を捕獲した後のイムノアッセイを示す。
【図16A】図16Aは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の光学濃度検出装置の概略図であり、多数の複合体が反応容器の底に蓄積する前の状態を示す。
【図16B】図16Bは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出動作中の図16Aの装置の概略図であり、多数の複合体が反応容器の底に蓄積した後の状態を示す。
【図17】図17は磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出に微量天秤と試験混合物位置決め装置を使用する装置の概略図である。
【図18】図18は超常時性微粒子の3種の試料の分析中に図17に示した装置により発生されるシグナルを示すグラフである。
【図19】図19は時間の関数として未結合又は遊離磁気応答性粒子の吸引力の測定値を示すグラフである。
【図20A】図20Aは“SEPHACRYL S−500”ゲル濾過媒体のカラムによるフェロフルイドの分離を示すグラフである。
【図20B】図20Bは“SEPHACRYL S−1000”ゲル濾過媒体のカラムによるフェロフルイドの分離を示すグラフである。
【図21】図21はビオチン−ウシ血清アルブミンを被覆した種々の量のフェロフルイドと共に抗ビオチンを被覆したポリピロールをインキュベートした後の図4、5及び17に示した装置により検出される磁気分離の結果を示すグラフである。
【図22A】図22Aは磁場でラテックス粒子に結合するフェロフルイドの観察可能な様相を示す概略図である。
【図22B】図22Bは磁場でラテックス粒子に結合するフェロフルイドの観察可能な様相を示す概略図である。
【図22C】図22Cは磁場でラテックス粒子に結合するフェロフルイドの観察可能な様相を示す概略図である。
【図22D】図22Dは磁場でラテックス粒子に結合するフェロフルイドの観察可能な様相を示す概略図である。
【図23】図23はビオチン化BSAを被覆したフェロフルイドの希釈溶液の濃度を変える効果を測定するために図17の装置を操作した結果として得られた磁石の見掛重量変化の速度及び程度を示すグラフである。
【図24】図24は遊離ビオチン化ウシ血清アルブミンのアッセイ中にポリピロールと磁気応答性試薬の複合体が捕獲された結果としての磁石の見掛重量変化を示すグラフである。
【図25A】図25Aは磁気応答性試薬を含む複合体の磁気補助検出用自動イムノアッセイ装置の斜視図である。
【図25B】図25Bは図25Aの自動イムノアッセイ装置の分解斜視図である。
【図25C】図25Cは図25Aの自動イムノアッセイ装置の側面図である。
【図26】図26は図25A、25B及び25Cに示した型の装置を使用して反射率リーダーにより得られた結果を示すグラフである。
【図27】図27は可溶性フィブリンに自動イムノアッセイ装置を使用して光学濃度リーダーにより得られた結果を示すグラフである。
【0133】
以下、非限定的な実施例により本発明を説明する。
実施例
【実施例1】
【0134】
磁力測定用改造電子微量天秤
適用磁場により磁気応答性材料に加えられる力を測定し、自動的に記録するように装置を設計及び作製した。Mettler−Toledo Inc.,Hightstown,N.J.からモデルUMT−2電子微量天秤900を入手した。図17を参照すると、この天秤900はその標準範囲を越える重量に適応するように工場で改造した。標準天秤皿の代わりにアルミニウムストーク902を製造した。Cookston Magnetsから入手した直径0.25インチのネオジム−鉄−ホウ素円筒形磁石906を受容するようにストーク902の頂部に円形凹部904を加工した。生成磁場の形状を変えるために、長さ0.25インチの円筒形磁石の一端を稍ドーム状に丸みをつけ、磁気応答性粒子上の最大力の領域が磁石の面の中心にくるようにした。微量天秤の計量チャンバーに標準装備されているガラス蓋の代わりにアルミニウム蓋908を製造した。蓋908は大きい中心孔をもつアルミニウム外側リング910から構成し、計量チャンバーの直径よりも小さい直径をもつアルミニウムディスク912を支持させた。ディスク912には縁部の近傍に2個のねじなし穴914,196をあけ、中心に大きいねじ穴920をあけた。止めねじ924,926が各ねじなし穴914,916を通って支持リング910のねじ穴928,929にねじ込まれるようにディスク912を支持リング910に配置した。穴932の床934を形成するように薄いアルミニウム「部分」を残して底から0.001インチ以内まで頂部から中心平底穴932をあけたねじ切り円筒形アルミニウムインサート930をディスク912の中心ねじ切り穴920に挿入した。種々の形状及び寸法の試験容器938を収容するようにその中心937に穴をあけた円筒形アルミニウムアダプター936をインサート930の中心穴932に挿入した。天秤から皿を除去し、アルミニウムストーク902に置き換えることにより、力測定装置を組み立てた。丸みをつけた端部を最上部にもつストーク902の頂部の凹部904に異形磁石906を配置した。微量天秤の計量チャンバーのガラス頂部をアルミニウム外側リング910に置き換え、その中心にアルミニウムディスクを配置した。ねじ切りアルミニウムインサート930をディスク912の中心ねじ穴920にねじ込み、試験容器アダプター936をこれに挿入した。天秤本体と全付加部品を接地し、静電荷が蓄積しないようにした。
【0135】
自動データ収集用微量天秤−コンピューターインターフェース
Macintosh siコンピューターに搭載したNational Instruments,Inc.,Austin TX製LabVIEW(登録商標)データ獲得プログラムに改造微量天秤装置をMettler−Toledo Inc.製ケーブルによりインターフェースした。プログラムを始動し、0.3秒毎に読み値1個の速度で微量天秤から送信される重量読み値を連続的に獲得、記録及び表示した。
【0136】
整列及び試験
微量天秤装置900をゼロ設定し、付設したコンピューターでデータ収集を開始した。Nippon Paintから入手した超常磁性微粒子の希釈懸濁液の20μlアリコートをピペットによりポリプロピレンマイクロチューブに移した後、微量天秤の頂部のアルミニウム試験容器ホルダーに入れ、チューブの底をねじ切りアルミニウムインサート930の平底に支承させた。次にインサート930を時計回りの方向に回転させ、インサート930の底を磁石906の頂部に接近させた。天秤900により報告される磁石906の見掛重量をモニターした処、インサート930が磁石906に接近するにつれて減少することが判明した。重量のこの見掛変化は磁石906にかかる重力に対抗して磁石906によりマイクロチューブ内の超常磁性微粒子に加えられる力に起因するものであった。インサート930を回転し続けると、インサート930の底が磁石906の頂部と接触する位置に達した。この時点で磁石906の見掛重量はインサート930が下向きの力を加えるにつれて著しく増加した。次に、磁石906の見掛重量が接触直前に観察されるような重量になるまでインサート930の回転方向を逆転した。次にインサート930の底と磁石906の頂部の間に非常に小さい隙間を残してインサート930を反時計回りの方向に更に10°回転させた。ねじ切りインサート930を収容するアルミニウムディスク912をアルミニウムリング910に保持する止めねじ924,926を緩め、天秤900により最小見掛重量が報告されるまでディスク912を水平に調整した後、止めねじ924,926を再び締めた。次に、上記ねじ切りインサート930の鉛直調節を繰り返し、ゴムセメント1滴をねじに塗布することによりその位置を固定した。これらの調節の結果、天秤900により計量されている磁石906から最大鉛直吸引力の領域に超常磁性微粒子を配置した。
【0137】
直径0.8μmをもち、粒子重量当たり30%の磁鉄鉱を含有する超常磁性微粒子の0.01%懸濁液(重量/体積)を使用して天秤装置の感度と再現性を試験した。各20μlのアリコートを0.5cm×3cmポリプロピレンマイクロ遠心チューブ(Robbins Scientific)にに移した。天秤装置をゼロ設定し、データ収集を開始した。10秒後に最初のチューブを装置に挿入した。チューブの挿入直後に磁石の見掛重量報告値は迅速に低下し始めた(図18)。挿入から約10秒後に重量変化速度は低下し始め、変化は約30秒後にほぼ停止し、最終重量変化は2.4mgであった。マイクロ遠心チューブを取り出すと、見掛重量は迅速にゼロに戻った。他の2種の試料で手順を繰り返した処、実質的に同一の結果が得られた(図18参照)。
【実施例2】
【0138】
水分散性フェロフルイドと特異的結合メンバーからの磁気応答性試薬の調製
フェロフルイドの性質
安定な水性分散液を形成することが可能なフェロフルイドをXerox Specialty Materials,Pittsford,NYから入手した。この材料は参考資料として本明細書の一部とする米国特許第5,322,756号及び5,358,659号に記載されている。フェロフルイドは60%(重量/体積)水性懸濁液として提供されるものを用いた。フェロフルイドの粒子は超常磁性であり、粒子の重量の27%までを占めるFe2O3のモノドメインナノ結晶を埋封したポリマーマトリックスから構成されていた。粒度は粒子毎に相違していた。粒子の平均直径は約20nmであった。粒子の磁化は6キロガウスで12.2EMU/gと報告された。
【0139】
濃厚フェロフルイドを水で100倍に希釈し、透明な茶色い懸濁液を得た。希釈フェロフルイドの5μlアリコートをポリプロピレンマイクロチューブに移し、実施例1に記載した天秤装置に入れた。未希釈フェロフルイドでは104mg/μlに相当する5.2mgの迅速な重量変化が観察された。希釈フェロフルイドを水で更に16倍(全体として1600倍)に希釈し、100μlアリコートを実施例1に記載した天秤装置で分析した。即座に0.5mgの重量変化が観察された後、20時間かかって合計8mgの非常にゆっくりした重量変化が観察された(図19参照)。この結果、適用磁場によりフェロフルドの各粒子に加えられる力は非常に弱いことが分かった。磁場内の全粒子の凝集吸引力は天秤によりすぐに感知されるが、その後の重量変化が非常に遅いことから明らかなように、最大磁場及び勾配の領域まで粒子が移動するには非常に時間がかかった。
【0140】
0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で濃厚フェロフルイドを100倍に希釈し、PBS中0.1%BSAで予め平衡化しておいた“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体(Pharmacia Bioteck,排除限界1×106ダルトン)を充填した1cm×40cmクロマトグラフィーカラムに加え、同一緩衝液で溶離した。フェロフルイドはカラムの排除体積中に茶色いバンドとして溶出した。“SEPHACRYL S−500”ゲル濾過媒体(排除限界2×107ダルトン)のカラムで分離すると、フェロフルイドは一部しか含まれていなかったが(図20A参照)、“SEPHACRYL S−1000”ゲル濾過媒体(排除限界>108ダルトン)のカラムで分離すると、粒子の殆どが含まれており、基準30μm微粒子よりも後期に幅広いバンドとして溶出した(図20B参照)。図20B中、曲線Aは磁気応答性試薬を表し、曲線Bは移動固相試薬を表す。フェロフルイドはこのように粒度に基づいて細分別することができた。
【0141】
ビオチン化BSAによるフェロフルイドの被覆
結合アッセイにおけるフェロフルイドの有用性を評価するために、フェロフルイドをビオチン化BSA(アルブミン、ウシ−ビオチンアミドカプロイル標識、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)で被覆した。ビオチン化BSAの10mg/mlPBS溶液の100μlアリコートを1%重炭酸塩緩衝液(pH9.0)850μl及び濃厚フェロフルイド50μlと混合した。混合物を37℃の温度で1時間インキュベートした後、PBS中1%BSA200μlを加え、更に45分間インキュベーションを続けた。次に、PBS中0.1%BSAで予め平衡化しておいた“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体を充填した1cm×40cmクロマトグラフィーカラムに混合物を加え、同一緩衝液で溶離した。その茶色い色から判断されるようにフェロフルイドを含むフラクションがカラム空隙体積で溶出した。プールしたフラクションの5μlアリコートは天秤装置で5mgの読み値を与えた。プールした材料を結合アッセイ(下記実施例3、4、5、6、7及び8参照)で使用するためにPBSで50倍に希釈した。
【0142】
抗hCGによるフェロフルイドの被覆
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットに対する結合活性をもつ抗体をAbbott Laboratoriesから入手し、過ヨウ素酸酸化によりトリチウム標識後、NaCNBH3(3H)で還元した。“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体(Pharmacia Bioteck)の1cm×40cmカラムに加えた後、ラベルは排除体積、部分的包含体積及び完全包含体積で夫々標識抗体凝集体、遊離標識抗体及び遊離ラベルに相当する3つのピークに溶出した。未分離標識抗体(340,000dpm)の10μlアリコートを1%炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)220μl中のフェロフルイドの20μlアリコートと混合した。2時間37℃の温度でインキュベーション後、PBS中0.1%BSA800μlを加え、45分間37℃の温度でインキュベーションを続けた。次に、混合物を上記のような“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体のカラムに加えた。ラベルは排除体積でフェロフルイドと共に溶出するピークと、完全包含体積で溶出するピークの2つのピークとして溶出した。未標識抗hCG抗体を用いて被覆手順を繰り返した。排除体積で溶出する材料を集め、イムノアッセイで使用するためにPBSで50倍に希釈した。
【0143】
抗体を被覆したポリ(ピロール)ラテックス粒子の調製
参考資料として本明細書の一部とする米国特許第5,252,459号に記載されているように、ビオチンに対する結合アフィニティーをもつ抗体を被覆したポリピロールラテックスの試料を調製した。これらの粒子は直径0.3〜0.7μmであり、その懸濁液は濃い黒色であった。
【実施例3】
【0144】
ラテックス粒子に結合するフェロフルイドが磁場内挙動に及ぼす効果
“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体(実施例2参照)を充填したカラムから50倍希釈ビオチン化BSAを被覆したフェロフルイドの5個のアリコート(各1ml)を容量4mlのガラスバイアルに移した。ビオチン化BSAを被覆したフェロフルイドを入れた各バイアルに、抗ビオチンを被覆したポリピロールラテックスの0.1%懸濁液の0、2、5、10及び20μlのアリコートを移し、各バイアルの内容物を37℃の温度で30分間インキュベートした。次に各バイアルからのアリコート(100μl)をポリプロピレンマイクロチューブに移し、マイクロチューブを実施例1に記載した微量天秤装置に入れ、磁石の見掛重量を時間の関数として記録した。
【0145】
装置応答の速度と程度は存在する抗ビオチン被覆ポリプロピレンラテックスの量を反映した(図21参照)。天秤をゼロ設定し、0秒でデータ収集を開始した(図21参照)。抗ビオチン被覆ポリプロピロールラテックスを加えずにインキュベートした混合物からのアリコートを入れたポリプロピレンマイクロチューブ(0μl試料)を45秒後に装置に挿入した。磁石の報告重量はマイクロチューブの底までのフェロフルイドの移動速度を反映して0mgから−0.06mgまで迅速に減少した後、3分間で更に−0.10mgまで一定速度で減少した(図21、曲線セグメントA参照)。次に、マイクロチューブを装置から取り出すと、磁石の報告重量は迅速にゼロに戻った。
【0146】
抗ビオチン被覆ポリプロピロールラテックス2μlを加えてインキュベートした混合物からのアリコートを入れたポリプロピレンマイクロチューブを更に30秒後に装置に挿入した。磁石の報告重量は0mgから−0.06mgまで迅速に減少した後、3分間で−0.12mgまで一定速度で更に減少し(図21、曲線セグメントB参照)、その後、装置から取り出した。抗ビオチン被覆ポリプロピロールラテックス5、10及び20μlを加えてインキュベートした混合物からのアリコートを入れたマイクロチューブ(図21、曲線セグメントC、D及びE参照)を分析した処、磁石の報告重量はますます速度を高めて減少し、フェロフルイド単独よりもフェロフルイド−ポリピロールラテックス複合体としたときのほうがフェロフルイドの移動速度は高いことが判明した(表1参照)。
【0147】
【表1】
【0148】
重量変化の直線速度を3分間観察した処、この間に複合体の捕獲は完了しないことが判明した。更に長時間観察すると、高濃度のポリピロールラテックスを含む試料の迅速な重量変化はゼロ試料の重量変化まで低下し、全複合体がマイクロチューブの底まで移動したことを示した。ゼロ試料に見られる遅い重量変化速度は、ビオチン化ウシ血清アルブミンの被覆手順の間にフェロフルイド粒子が凝集したためであり、予備音波処理により緩和することができる。
【0149】
試料からのポリピロールラテックスの除去速度及び程度を調べることにより効果を観察することもできる(図22A、22B、22C及び22D参照)。ポリピロールラテックスを含む全試料では、全ラテックスは試料から除去され、全試料中に過剰のフェロフルイドが存在することを示した。図22A、22B、22C及び22D中、図22Aは図22Bよりも前、図22Bは図22Cよりも前、図22Cは図22Dよりも前の状態を示す。
【0150】
ポリピロールラテックスに磁気応答性を付与するために必要なフェロフルイドの最適濃度を決定するために、“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体を入れたカラムからのビオチン化BSA被覆フェロフルイドをPBSで50倍、100倍、200倍、400倍及び800倍に希釈した。全希釈溶液は透明であり、50倍希釈液は麦わら色、100倍希釈液は薄黄色、200倍希釈液は非常に薄い黄色、400倍と800倍の希釈液は無色であった。各希釈溶液について、アリコート(1ml)を4mlバイアルに移した後、抗ビオチン被覆ポリピロール懸濁液20μlを各バイアルに加えた。37℃の温度で30分間インキュベーション後、各試験混合物の100μlアリコートをマイクロチューブに移し、マイクロチューブを実施例1に記載した微量天秤装置に挿入した。フェロフルイドを含む全試料で、全ポリピロールラテックスは最終的にマイクロチューブの底まで移動することが目視により判明した。装置により報告される磁石の見掛重量変化の速度と程度はフェロフルイドの濃度により異なっていた(図23参照)。これらの結果から明らかなように、希釈度の高いフェロフルイド懸濁液は複合体を磁気的に捕獲するために十分な数のフェロフルイド粒子をポリピロールラテックス粒子に結合することができたが、濃度の高いフェロフルイド懸濁液を使用すると、ポリピロールラテックスへのフェロフルイドの負荷が高くなった。
【実施例4】
【0151】
遊離ビオチン化BSAの阻害アッセイ
Abbott Laboratoriesから入手したアッセイ希釈剤を使用し、0μg/ml、2μg/ml、10μg/ml及び40μg/mlの濃度の遊離ビオチン化BSAの希釈溶液を調製した。各希釈溶液についてアリコート(20μl)をマイクロチューブに入れ、抗ビオチン被覆ポリピロールラテックス20μlと混合した。各溶液を37℃の温度で1時間インキュベートした後、ビオチン化BSAを被覆したフェロフルイド40μlを各溶液に加え、インキュベーションを更に30分間続けた後、各チューブを実施例1に記載した微量天秤装置に入れて分析した。フェロフルイドの代わりに希釈剤40μlを加えたマイクロチューブを入れたときの磁石の見掛重量に対して観察される各チューブによる磁石の見掛重量変化を調べた。図24に示すように、遊離ビオチン化ウシ血清アルブミンの濃度が増すと、ポリピロールラテックスによるフェロフルイドの捕獲を阻害し、その結果、複合体が形成されにくくなり、磁石にその最大吸引力を加えることができる場所であるマイクロチューブの底に蓄積するフェロフルイドが減る。40μg/ml試料(インキュベートした混合物中10μg/ml)は0.2mgの重量変化を示し、これらの条件下の最大阻害はインキュベートした混合物中4〜5μg/mlのビオチン化ウシ血清アルブミン濃度で得られたことを示した。
【0152】
これらの結果から明らかなように、フェロフルイドとポリピロールラテックスは特異的結合メンバーで被覆されているので、相互に結合している。結合の程度は試験混合物に及ぼす適用磁場の効果に予想可能な変化を生じる。
【実施例5】
【0153】
毛管チャネルをもつ自動イムノアッセイ用装置の作製
図25A、25B及び25Cに示すように、ポリマーフィルムの3枚のシート1000、1002及び1004を積層して毛管チャネルラミネート1006を作製した。頂部シート1000に1個以上の開口1008をあけて試料添加部位とし、中間シート1002に切り開いたチャネル1012の近端1010に到達できるようにした。後述する磁気ベースプレート1016に接着するように、底部シート1004の底部1014に接着剤を塗布した。試料を毛管作用によりチャネル1012に流し、チャネル1012の端部1018に到達したら液体のチャネル移動を停止した。場合によっては、チャネルの端部に到達した後も試料をチャネルに流し続けるようにチャネル1012の端部1018に多孔質吸上材(図示せず)を配置した。
【0154】
本実施例の装置は3層のポリマー材料を接着することにより作製しているが、1層、2層又は4層以上のポリマー又は等価材料(例えばガラス又は金属箔)を用いて毛管チャネルをもつ装置を作製することも本発明の範囲内である。2層以上のポリマー又は等価材料を接着する手段は当業者に周知であり、例えば接着剤、ヒートシール、ファスナー等を利用できる。
【0155】
毛管チャネルを支持するための磁気ベースプレートの作製
1/2インチアルミニウムプレート1016から20cm×20cmベースプレートを成形した。プレートの面にチャネル1020(幅1/2インチ及び深さ1/4インチ)を加工し、チャネルに“DELRIN”インサート1022を充填した。インサート1022の中心に深さ1/8インチ×幅1/32インチのチャネルを縦にあけ、軟質磁性材料の1/8インチ×1/32インチ×6インチストリップ1024を充填した。
【実施例6】
【0156】
フェロフルイドとの複合体形成の結果として捕獲チャネルの磁気部位におけるポリピロールラテックスの捕獲
毛管チャネルをもつ装置を使用するアッセイフォーマットで使用するためにポリピロールラテックスに磁気応答性を付与するために必要なフェロフルイドの最適濃度を決定するために、“SEPHAROSE S−300”ゲル濾過媒体を入れたカラムからのビオチン化BSA被覆フェロフルイドをPBSで50倍、100倍、200倍、400倍及び800倍に希釈した。各希釈溶液について、アリコート(1ml)を4mlバイアルに移した後、抗ビオチン被覆ポリピロール懸濁液20μlを各バイアルに加えた。37℃の温度で30分間インキュベーション後、磁気ストリップの長軸がチャネルの長軸から90°に配置されると共に近位チャネル開口まで0.5cmの距離を隔ててチャネルの下に配置されるように磁気ベースプレートに付着しておいた毛管チャネルラミネートの添加部位に各バイアルからの7μlアリコートを加えた(図25A及び25B参照)。フェロフルイドの希釈溶液を含む試料に対応する全チャネルは磁気ストリップの位置に捕獲されたポリピロールラテックスの黒いバンドを示し、試料中のフェロフルイドの濃度が増すにつれてバンドの強度は増加した。フェロフルイドを含まない試料はポリピロールラテックスのバンドを示さなかった。
【実施例7】
【0157】
毛管チャネルをもつ装置を使用して実施した遊離ビオチン化BSAの定性阻害アッセイ
PBS1ml中に実施例4に記載したビオチン化BSA0μg、5μg、20μg及び80μgを含む4種の別個の溶液を調製した。実施例2に記載した抗ビオチン被覆ポリピロールラテックスのアリコート(20μl)を各混合物に加えた後、37℃の温度で1時間インキュベートした後、実施例2からのビオチン化BSAを被覆したフェロフルイドの20μlアリコートを加えた。37℃の温度で5分間又は25分間インキュベーション後、実施例5に記載した毛管チャネル装置にアリコートを加えた。5μg/ml以上の濃度で遊離ビオチン化BSAが存在すると、チャネルの磁気部位におけるポリピロールラテックスの捕獲を阻害した。
【実施例8】
【0158】
毛管チャネルをもつ装置を使用して実施した遊離ビオチンの定量阻害アッセイ
実施例4に記載したビオチン化BSAをアッセイ希釈剤で希釈し、0μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml及び80μg/mlの濃度の希釈液を調製した。各希釈ビオチン化BSA溶液の20μlアリコートを、希釈剤60μl及び実施例2に記載した抗ビオチン被覆ポリピロールラテックス10μlと更に混合した。混合物を15分間室温で放置した後、実施例2からのビオチン化BSA被覆フェロフルイドの10μlアリコートを加えた。20℃の温度で15分間インキュベーション後、得られた混合物のアリコート(7μl)を実施例5に記載した毛管チャネル装置に加えた。5μg/ml以上の濃度で遊離ビオチン化BSAが存在すると、チャネルの磁気部位におけるポリピロールラテックスの捕獲を阻害した。
【0159】
捕獲されたポリピロールラテックスの存在による磁気捕獲部位の反射率の変化を測定することにより、この種のアッセイで定量的結果を得ることができた。0.125μg/ml、1.0μg/ml、5.0μg/ml及び80μg/mlのビオチン化BSA濃度を使用した以外は上記と同様にアッセイを繰り返した。反応混合物のアリコート(7μl)を毛管チャネルに加えた後、Abbott Laboratories製走査反射率リーダーを使用してチャネルを走査した。磁気捕獲部位の反射率を磁気捕獲部位の両側の部位の反射率と比較し、磁気捕獲部位の反射率と2つの隣接部位の平均値の差として純反射率を計算した。遊離ビオチン化BSAはポリピロールラテックスとフェロフルイドの結合を阻害したので、磁気捕獲部位と隣接する非磁気部位の反射率の差は、遊離ビオチン化BSA濃度が増加するにつれて減少した(図26参照)。アッセイ応答は、+/−アッセイフォーマットに望ましい狭い範囲を示す。
【実施例9】
【0160】
ヒト絨毛性性腺刺激ポルモンの自動スポットイムノアッセイ
抗体によるフェロフルイドの被覆
HClでpH7.0に調整したおいた20mM 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)でフェロフルイドを1%固形分の濃度まで希釈した。最終アッセイまでのフェロフルイドを用いる他の全段階はこの緩衝液中で実施した。15ml容遠心チューブで20%スクロース10mlに1%懸濁液3.3mlを重層することにより、可溶分と鉄が結合していない粒子をフェロフルイド調製物から除去した。調製物を4℃の温度で170,000×gでスインギングバケットローターで2時間遠心した。得られたペレットを緩衝液10mlで2回洗浄した後、ペレットを170,000×gで1時間遠心した。最終ペレットをMOPS緩衝液に懸濁して1%固形分の濃度とした後、4℃の温度で保存した。
【0161】
βhCGのαサブユニットに結合したマウスモノクローナル抗体を濃度4mg/mlに調整し、この溶液5mlを洗浄後の超常磁性粒子の等量の懸濁液に加えた。この懸濁液を周囲温度で160RPMのプラットフォームシェーカーで1時間震盪した。被覆粒子を4℃の温度で170,000×gで30分間遠心することにより2回洗浄し、懸濁して1%固形分を含む懸濁液を形成し、氷/水浴中で15秒間音波処理した。ナトリウムアジドを加えて最終濃度0.01%とし、粒子を4℃の温度で保存した。一部の実験で対照として使用するために、超常磁性粒子を同様にウシ血清アルブミン(BSA)で被覆した。
【0162】
抗体によるラテックス粒子の被覆
直径3μmのブルーラテックス粒子をPolysciences,Inc.,Warrington,Paから入手した。0.1M NaClを加えた20mM MOPS緩衝液(MOPS−NaCl)で粒子を0.1%固形分まで希釈した。粒子を4℃の温度で170,000×gで30分間遠心することにより1回洗浄し、緩衝液に懸濁して0.4%固形分の濃度とした。hCGのβサブユニットに対して反応性のアフィニティ精製ヤギIgGをMOPS−NaCl緩衝液中250μg/mlの濃度に調整した。等容量のラテックス粒子と抗体溶液を混合し、周囲温度で160RPMのプラットフォームシェーカーで1時間震盪した。被覆ラテックス粒子を2回洗浄し、ナトリウムアジドを含むMOPS−NaCl緩衝液中0.4%固形分の濃度まで緩衝液に懸濁した。対照として使用するためにラテックス粒子を同一手順によりBSAで被覆した。全被覆粒子を4℃の温度で保存した。
【0163】
臨床試料によるアッセイ
妊娠中の女子からの尿試料10個と妊娠していない女子からの尿試料10個を用いてアッセイを実施した。被覆試料をブラインド実験で試験した。64ng/mlの濃度でβhCGを含む陽性対照と陰性対照も臨床試料と共に試験した。それとは別に、全試料をAbbott Test−Pack Plusアッセイで評価し、妊娠に一致する量のβhCGの有無を確認した。
【0164】
アッセイは、(a)ウシ血清アルブミン1.0mg/mlを含むMOPS−NaCl緩衝液(MOPS−NaCl−BSA)で0.2%固形分まで希釈しておいたIgG被覆ブルー3μmラテックス粒子30μlと、(b)MOPS−NaCl−BSA中0.0066%固形分のモノクローナル抗体被覆磁性粒子10μlと、(c)未希釈尿試料40μlを混合することにより実施した。混合物を周囲温度で15分間放置した後、実施例5に記載し、図25に示した磁気ベースプレートの磁気ストリップにTeflonテープを重ね、15μlをスポットした。Teflonテープの両側に厚さ0.5mmの2個のサポート配置してガラスカバースリップを載せ、光学的に平坦な目視表面をもつ反応チャンバーを作製した(図15A及び15B参照)。5分及び10分後に結果を記録した。10個の陽性試料と陽性対照でアッセイを実施した場合には、磁場に形状が一致するブルー粒子の集合が観察された。他方、陰性試料と陰性対照を試験した場合には、ブルー粒子は均一に分散したままであった。Test−Pack Plusアッセイで得られた結果は本発明のアッセイの結果に一致した。
【実施例10】
【0165】
光学濃度測定を使用する可溶性フィブリンの自動アッセイ
ヒト血漿中の可溶性フィブリンの自動アッセイを開発した。このアッセイは、特異的結合メンバーを被覆したポリピロールラテックスと特異的結合メンバーを被覆したフェロフルイドの懸濁液が適用磁場の作用下で示す光学濃度変化の速度に基づいて実施した。ポリピロールラテックス(直径0.2μm、2%固形分)はAbbott Laboratoriesで製造した(実施例2参照)。ヒト可溶性フィブリン上のエピトープに対して結合アフィニティーをもつ第1の抗体と、ヒト可溶性フィブリン上の別のエピトープに対して結合アフィニティーをもつ第2の抗体をAmerican Biogenetic Sciences(Boston,MA)から入手した。第1の抗体のアリコート(125μl、5.58mg/ml)を0.1M硼酸緩衝液(187μl、pH10.0)、1%“BRIJ 35”界面活性剤(375μl)、ポリピロールラテックス(1.87ml)及び水(1.2ml)と混合した。混合物を室温で2時間震盪下にインキュベートした後、0.25M Bis Tris緩衝液中4%ウシ血清アルブミン1.25mlと0.5Mトリエタノールアミン中0.3M過ヨウ素酸555μlを加え、得られた混合物を室温で更に2時間インキュベートした。次に混合物を“MICROGON”透析濾過装置に流し、0.5%ウシ血清アルブミンと0.1%“BRIJ 35”界面活性剤を含む25mM MOPS−エタノールアミン緩衝液(pH7.2)に混合物の液体部分を交換した。抗体を被覆したポリピロールラテックスをこの溶液中で保存した。リン酸緩衝塩類溶液中に0.5%ウシ血清アルブミン、5%スクロース、0.1%“TWEEN 20”界面活性剤及び0.05%“PROCLIN”防腐剤を含む希釈剤溶液を使用して可溶性フィブリン標準及びストックポリピロール溶液を希釈した。ストックポリピロール懸濁液はアッセイで使用するために希釈剤で12倍に希釈した。
【0166】
実施例2に記載したフェロフルイドのアリコート(250μl)を0.05M炭酸ナトリウム(pH9.1)で3%固形分の濃度まで希釈し、第2の抗体の溶液(2μl、14.7μg/ml)と混合した。混合物を37℃で1時間インキュベートした後、1%ウシ血清アルブミン(110μl)を加え、得られた混合物を37℃で更に45分間インキュベートした。次に“SEPHACRYL S−300”ゲル濾過媒体を充填して0.1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝塩類溶液で平衡化しておいた1cm×40cmカラムに混合物を加えた。カラムを同一緩衝液で溶離し、排除された材料を3mlで回収した。
【0167】
アッセイ試薬混合物は希釈抗体を被覆したポリピロール懸濁液1mlを、抗体を被覆したフェロフルイド懸濁液100μlと混合することにより調製した。
【0168】
アッセイ標準は希釈剤溶液で種々の濃度まで希釈したヒト可溶性フィブリン(American Biogenetic Sciencesから入手)から調製した。
【0169】
Cary 3スペクトロフォトメーターを使用してアッセイ混合物の光学濃度を測定した。内径5mm×30mm蛍光計キュベットをWilmad Glass Inc.から入手した。六角頭キャップねじをスペクトロフォトメーターのキュベットホルダーの底のねじ穴にねじ込み、0.25インチ×0.25インチネオジム−鉄−ホウ素磁石をその頂部に置いた。次に、(計器により報告される見掛光学濃度の減少により判断されるように)磁石がキュベットホルダーを通る光ビームの底部を遮断し始めるまでキャップねじを回すことにより、キュベットホルダー内の磁石の位置を調節した。3mmの鉛直ギャップが残るまで光ビームの頂部と底部をフリクションテープの水平ストリップにより遮断し、磁石の頂部に支承されるまで蛍光計セルをキュベットホルダーに挿入すると、光ビームの底部は蛍光計セルの内側床に整列した。アッセイを開始する前に計器をゼロ設定した。
【0170】
まずアッセイ試薬混合物50μlを試験混合物50μlと混合した後、得られた混合物をキュベットに移すことによりアッセイを実施した。次に、その底部が磁石の頂部に支承されるまでキュベットをキュベットホルダーに挿入すると、スペクトロフォトメーターによる光学濃度の連続収集がすぐに開始した。磁気捕獲による溶液からのポリピロールラテックスの除去速度は、懸濁液の光学濃度の変化速度に反映した。試料中の可溶性フィブリン濃度の関数としてのアッセイ混合物中の光学濃度変化速度のプロットは直線関係を示す(図27参照)。
【0171】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明の種々の変形及び変更が当業者に自明であり、本発明は本明細書に記載する具体的態様に不当に限定されないと理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物の存在又は量の測定装置であって、
(a)固定固相試薬を有しない反応容器と、
(b)未結合磁気応答性試薬、および、試料中の分析物の存在又は量の尺度として反応容器中に生成される複合体の形態で移動固相試薬に結合した磁気応答性試薬に磁場を加えるための磁場発生器と、
(c)試料中の分析物の存在又は量の尺度として、磁場発生器により発生される磁場が反応容器中の前記未結合磁気応答性試薬および前記複合体に及ぼす効果を評価するための測定手段を含み、前記磁気応答性試薬を構成する磁気応答性材料がフェロフルイド粒子である、前記装置。
【請求項2】
前記測定手段が天秤である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記測定手段が複合体中の試薬から未結合試薬を磁気分離することにより複合体形成の程度を測定するための光センサーである請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記測定手段がホール効果トランスデューサーである請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記測定手段が位置センサーである請求項1に記載の装置。
【請求項6】
試料中の分析物の存在又は量の測定装置であって、
(a)磁気応答性試薬、分析物および移動固相試薬を含む反応混合物を流すことが可能な少なくとも1個のチャネルと、
(b)前記反応混合物中の成分に磁場を加えるための磁場発生器と、
(c)試料中の分析物の存在又は量の尺度として、磁場発生器により発生される磁場が反応混合物の成分に及ぼす効果を評価するための測定手段を含み、前記磁気応答性試薬を構成する磁気応答性材料がフェロフルイド粒子である、前記装置。
【請求項7】
前記測定手段が磁気応答性試薬と移動固相試薬の特異的結合による複合体形成の程度と未結合磁気応答性試薬の分離を測定するための光センサーである請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1個のチャネルが壁を含み、前記壁が磁気テープを含む請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記磁気テープの磁場が磁気応答性試薬の蓄積を優先的に生じるように特定勾配及び強度である請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記チャネルが少なくとも2層のフィルムを接着することにより形成されている請求項6に記載の装置。
【請求項11】
最上層に1個以上の開口を設けて試料の添加部位とした請求項10に記載の装置。
【請求項12】
最下層に磁気ベースプレートを接着した請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記チャネルが光吸収性材料から製造した床をもつ請求項6に記載の装置。
【請求項1】
試料中の分析物の存在又は量の測定装置であって、
(a)固定固相試薬を有しない反応容器と、
(b)未結合磁気応答性試薬、および、試料中の分析物の存在又は量の尺度として反応容器中に生成される複合体の形態で移動固相試薬に結合した磁気応答性試薬に磁場を加えるための磁場発生器と、
(c)試料中の分析物の存在又は量の尺度として、磁場発生器により発生される磁場が反応容器中の前記未結合磁気応答性試薬および前記複合体に及ぼす効果を評価するための測定手段を含み、前記磁気応答性試薬を構成する磁気応答性材料がフェロフルイド粒子である、前記装置。
【請求項2】
前記測定手段が天秤である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記測定手段が複合体中の試薬から未結合試薬を磁気分離することにより複合体形成の程度を測定するための光センサーである請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記測定手段がホール効果トランスデューサーである請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記測定手段が位置センサーである請求項1に記載の装置。
【請求項6】
試料中の分析物の存在又は量の測定装置であって、
(a)磁気応答性試薬、分析物および移動固相試薬を含む反応混合物を流すことが可能な少なくとも1個のチャネルと、
(b)前記反応混合物中の成分に磁場を加えるための磁場発生器と、
(c)試料中の分析物の存在又は量の尺度として、磁場発生器により発生される磁場が反応混合物の成分に及ぼす効果を評価するための測定手段を含み、前記磁気応答性試薬を構成する磁気応答性材料がフェロフルイド粒子である、前記装置。
【請求項7】
前記測定手段が磁気応答性試薬と移動固相試薬の特異的結合による複合体形成の程度と未結合磁気応答性試薬の分離を測定するための光センサーである請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1個のチャネルが壁を含み、前記壁が磁気テープを含む請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記磁気テープの磁場が磁気応答性試薬の蓄積を優先的に生じるように特定勾配及び強度である請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記チャネルが少なくとも2層のフィルムを接着することにより形成されている請求項6に記載の装置。
【請求項11】
最上層に1個以上の開口を設けて試料の添加部位とした請求項10に記載の装置。
【請求項12】
最下層に磁気ベースプレートを接着した請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記チャネルが光吸収性材料から製造した床をもつ請求項6に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2009−204617(P2009−204617A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107323(P2009−107323)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【分割の表示】特願2007−148109(P2007−148109)の分割
【原出願日】平成10年5月15日(1998.5.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【分割の表示】特願2007−148109(P2007−148109)の分割
【原出願日】平成10年5月15日(1998.5.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
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