磁気破砕方法及び磁気破砕装置とそれに用いる破砕媒体
【課題】 試料を収容した円筒容器を静止状態にして磁気駆動により試料を破砕処理する磁気破砕方法及び磁気破砕装置とそれに用いる破砕媒体を提供する。
【解決手段】 試料Uを収容した円筒容器Pに強磁性体を主体として形成された破砕媒体Aを投入し、円筒容器Pを磁気破砕装置1に挿入することにより、磁気破砕装置1から印加される可変磁界によって強磁性体を主体として構成された破砕媒体Aを回転運動を含む三次元方向に運動させて試料Uを破砕する。破砕媒体Aは試料Uの種類や状態に対応する寸法、形状、構造、質量に構成することにより、効率よく高品質に試料Uを破砕処理することができる。
【解決手段】 試料Uを収容した円筒容器Pに強磁性体を主体として形成された破砕媒体Aを投入し、円筒容器Pを磁気破砕装置1に挿入することにより、磁気破砕装置1から印加される可変磁界によって強磁性体を主体として構成された破砕媒体Aを回転運動を含む三次元方向に運動させて試料Uを破砕する。破砕媒体Aは試料Uの種類や状態に対応する寸法、形状、構造、質量に構成することにより、効率よく高品質に試料Uを破砕処理することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA解析するための前処理として生体試料を細胞破砕する場合や試料を粉砕処理する場合など、円筒容器中に試料と共に収容した破砕媒体を磁気的に運動させて試料を破砕する磁気破砕方法及び磁気破砕装置とそれに用いる破砕媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、生体試料をDNA解析するためには、前処理として試料中の細胞を破砕する細胞破砕処理が必要となる。細胞破砕は古くから在る乳鉢−乳棒によっても可能であるが、長時間にわたる労力が必要であり、開放空間での作業であるため異物が混入する恐れが多分にある。この乳鉢−乳棒の破砕作業を機械的に行う装置として振動破砕装置が知られている。図13は振動破砕装置の構造例を示すもので、モータにより回転軸102を回転駆動することにより、破砕容器100を保持した環状保持体103をその円周方向に高速に往復振動させると共に上下方向に高速に往復振動させる。この破砕容器100の振動により、破砕容器100中に収容した破砕媒体101が回転しながら容器内壁に激しく衝突し、摺接するので、破砕容器100が乳鉢、破砕媒体101が乳棒のように作用して破砕容器100中に収容した試料が摩砕あるいは圧砕される。
【0003】
このような振動破砕に適用される破砕媒体は、一般的にはガラス、ジルコニア、ステンレス等による直径0.1〜5.0mmのビーズが用いられるが、破砕効果をより向上させるべく破砕容器100中に単一の破砕媒体101を収容する試料破砕具が知られている(特許文献1参照)。また、破砕容器100の内径より僅かに小さい直径の単一の破砕媒体101を用いて細胞破砕する装置及び方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
これらの破砕媒体101は、図14に示すように、有底円筒形の破砕容器100に試料120と共に収容され、振動破砕装置によって破砕容器100に往復振動が加えられることにより破砕媒体101は三次元運動して試料120を破砕する。破砕媒体101の形状寸法及び質量が規定されており、図示破砕媒体101の場合では、円筒形の破砕容器100の軸心にほぼ沿った姿勢を維持してほぼ軸心方向に相対移動できる円柱形で、一方の端部が破砕容器100の底面形状に対応する形状としている。
【0005】
しかし、振動破砕装置においては、破砕容器100の中で破砕媒体101を激しく運動させるためには破砕容器100を激しく振り回す必要があり、破砕容器100が激しい往復運動によっても脱落しないように装置に強固に固定しなければならない。そのため、破砕容器100を装置に固定し、破砕処理後には固定状態を解除して取り出す作業工数が多くなり、試料を破砕処理する作業に大きな手間を要する。
【0006】
また、摩擦熱や装置の温度上昇により試料が温度上昇し、試料の種類によっては熱による変質が生じ、DNA解析等の作業に支障を来たす問題があり、温度上昇を抑えるために破砕容器100を冷却することが要求される。しかし、激しく往復運動する破砕容器100を冷却することは容易でない。
【0007】
望ましくは、破砕容器100は一定位置に静止状態とし、破砕媒体101だけを破砕容器100内で運動させた方が好適であり、破砕容器100を乳鉢、破砕媒体101を乳棒として作用させることができる。破砕媒体101だけを運動させるには、破砕媒体101を強磁性体あるいは着磁体で形成することにより、破砕容器100の外部から印加する磁界により破砕媒体101を回転させたり任意方向に移動させたりすることができる。
【0008】
このような容器中に収容した強磁性体や着磁体を磁力によって容器内で運動させる構造は、ビーカや試験管に入れた液体を攪拌する小型の攪拌装置から反応促進のための攪拌や溶融金属の攪拌など工業的な大型攪拌装置まで多くの提案がなされている。しかし、このような攪拌装置は液体や粉体、溶融体などを攪拌するのに好適なものであるが、試料を磨り潰す摩砕作用や試料を圧縮破砕する圧砕作用は得られず、試料を破砕する用に供することはできない。
【0009】
容器内に収容した破砕媒体を磁気駆動して試料を破砕処理する技術としては、試料に微細な磁気球や金属球を混合して容器中に収容し、容器の外部から印加される磁界により試料を破砕する破砕方法が提案されている(特許文献3参照)。この破砕方法は、図15に示すように、微細な磁気球や金属球を混合した試料110を収容した円筒形容器111の直径方向に対向させて2方向あるいは4方向に電磁石112,113を配し、複数の電磁石112,113にランダムなタイミングで通電し、必要に応じて通電方向を切り換えて磁極を反転させることにより、磁気球や金属球に不規則な移動や回転を生じさせ、試料110を破砕するとしている。
【0010】
また、円筒形容器の外部から印加される磁界により容器内に収容した磁性体を円筒形容器の軸心方向に往復直動させて試料を破砕する加振機構が知られている(特許文献4参照)。この装置では、図16に示すように、上下に配設された第1及び第2の各ソレノイド141,142の内側に取り付けた容器148に投入した磁性体143を第1及び第2の各ソレノイド141,142をオン・オフ制御することにより往復直動させて試料とする検体144を破砕する。容器148の底部には予め質量体145が収容され、その上に検体144を置き、容器148内に磁性体143を投入して第1及び第2の各ソレノイド141,142を交互に励磁すると、磁性体143は往復直動して質量体145に衝突するので、検体144は質量体145と磁性体143との間で圧砕される。
【特許文献1】特開2006−051505号公報
【特許文献2】特開2005−237381号公報
【特許文献3】特開2003−000226号公報
【特許文献4】特開2005−111358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術である振動破砕における破砕媒体の挙動は、破砕容器が往復振動する挙動に係っており、振動破砕装置により破砕容器を往復振動させる振動周期と振動振幅に左右される。従って、特許文献1,2に示した従来技術に係る破砕媒体は、振動破砕装置の構造、動作に対応する破砕媒体の形状や寸法を決定する必要がある。一方、磁気的に破砕媒体だけを静止状態にある容器の中で運動させる磁気破砕装置においては、磁界の印加位置、磁界強度、磁界の種類などによって破砕媒体の運動を自在制御することができるので、破砕媒体の形状や寸法、容器中に投入する数は破砕対象とする試料の種類や状態に合わせて任意に設定することができる。
【0012】
しかし、特許文献3として示した従来技術の磁気破砕方式における破砕媒体は、微細な磁気球や金属球であって、それを磁界方向の切り換えによって円筒容器内で移動させるだけなので、質量が小さい破砕媒体によって植物など繊維質の試料や骨や歯など硬質の試料の破砕に対応させることができない。また、試料中に破砕媒体を混入して破砕処理するとしているので、開示されているように白血球、細菌、ウイルス等のような液状の試料や軟質の試料、微粉状の試料に限定される。また、破砕媒体は円筒形容器の中で電磁石の側に移動する往復移動や周回移動を行うだけなので、破砕媒体が試料を破砕するまでに時間を要するものと考えられる。
【0013】
また、特許文献4に示した従来技術では、電磁駆動により磁性体を直動させて質量体に衝突させ、その間に収容した試料を圧縮破砕するもので、凍結した試料や硬質の試料を叩き潰す圧砕作用は得られるものの、試料を磨り潰す摩砕作用は得られない。従って、試料の種類が限定され、従来から知られている凍結試料を金属容器内に収容して外部から打撃を加えて圧砕する凍結破砕装置を電動駆動に代えたもとしか考えられない。
【0014】
本発明は目的とするところは、容器中に収容した破砕媒体を磁気的に運動させて試料に摩砕及び圧砕の作用を加えて破砕するのに適した磁気破砕方法及び磁気破砕装置とそれに用いる破砕媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本願第1発明は、破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された破砕媒体を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する磁気破砕方法であって、前記破砕媒体の運動は、円筒容器の内周に沿って回転する公転運動、自らの回転軸を中心に回転する自転運動、円筒容器の径方向に振れ動く振れ運動、円筒容器の軸方向に往復移動する杵搗き運動、上昇位置から加速度落下する叩き運動、微細に振動する微細動運動のうち任意の運動を選択組み合わせることを特徴とする。
【0016】
上記磁気破砕方法によれば、可変磁界によって円筒容器内で破砕媒体を運動させて試料を破砕処理するとき、試料の種類や状態に応じて破砕媒体を最適の状態に運動させることができる。破砕対象とする試料は硬質のものから軟質のもの、繊維質のもの、液体中での破砕が要求されるものなど多様であるため、破砕媒体の運動を試料の種類や状態に応じて選択組み合わせることにより、より効率的な破砕処理が可能である。また、円筒容器は一定位置に静止させて破砕媒体だけを試料に適応する挙動に運動させることができるので、円筒容器を冷却して温度上昇により試料が変質することを防止する冷却構造の構築が容易であり、破砕処理途中で円筒容器を取り出して破砕状態を確認することも容易に行い得る。
【0017】
また、本願第2発明は、破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された破砕媒体を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する磁気破砕装置であって、前記可変磁界は、破砕媒体を回転運動させる回転磁界発生手段、破砕媒体を円筒容器の軸方向に移動させる直動磁界発生手段、破砕媒体を円筒容器の任意方向に吸引する吸引磁界発生手段、破砕媒体を微細振動させる交番磁界発生手段のうち任意の磁界発生手段を選択組み合わせて構成されてなることを特徴とする。
【0018】
上記破砕装置によれば、可変磁界を発生させるための磁界発生手段を試料の種類や状態に応じて破砕媒体を最も効果的に運動させることができるものに構成することができる。可変磁界による破砕媒体の運動は、機械的な駆動構造がない破砕装置に構成することが可能であり、装置としての耐久性や小型化、低騒音化などを実現することができる。また、円筒容器は静止状態にして破砕処理できるので、円筒容器の装置への着脱が極めて容易である。
【0019】
上記構成において、磁界発生手段は、少なくとも円筒容器の底部側外周を囲むように複数の磁極を配して構成することにより、破砕媒体を回転運動を中心として円筒容器の底部側にある試料を摩砕することができ、磁界発生手段を円筒容器の軸方向に移動させると、試料を叩き潰す圧砕作用も得ることができる。
【0020】
また、磁界発生手段は、円筒容器の周囲に配した複数の磁極からの磁界印加を切り換える用に構成することにより、破砕媒体を回転運動を含む三次元方向に運動させることができる。
【0021】
また、本願第3発明は、破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された単一又は複数の部材を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する破砕媒体であって、前記部材は強磁性体を主体として形成され、運動により円筒容器内壁に摺接あるいは衝突し、複数部材同士が摺接あるいは衝突することができる寸法、形状、構造と、摺接あるいは衝突により試料を摩砕、圧砕することができる質量に形成されてなることを特徴とする。
【0022】
上記破砕媒体は強磁性体を主体として形成されているので、可変磁界により円筒容器内で自在に運動させ、その運動により円筒容器内に収容した試料を破砕処理することができる。破砕媒体の回転運動により円筒容器の内壁に摺接することによって試料が磨り潰される摩砕作用が得られ、破砕媒体が円筒容器の内壁に衝突する運動により試料が叩き潰される圧砕作用が得られる。破砕媒体を複数部材により構成すれば、複数部材が摺接あるいは衝突することによる摩砕及び圧砕の作用が加味される。この摩砕や圧砕の作用は破砕媒体の形状寸法や構造によって試料の種類や状態に適応させることができ、質量が充分に大きいものであることが摩砕や圧砕の作用を増大させる。
【0023】
上記破砕媒体は、円柱状の軸方向又は径方向に着磁することにより、回転運動を与えることが容易になり、磁気反発による運動を与えることも可能となる。
【0024】
また、円柱状の径方向に複数の突出部を形成することにより、回転運動を与えることが容易となるばかりでなく、突出部により試料を剪断する作用が得られ、繊維質の試料の破砕に有効となる。
【0025】
また、少なくとも円筒容器の底部側に向く端部は円筒容器の内底面形状に対応する形状に形成することが好適で、破砕媒体と円筒容器の内底面との接触面積が増すため、円筒容器を縦位置にして破砕処理するとき、円筒容器の内底面にある試料を効果的に摩砕あるいは圧砕することができる。
【0026】
また、任意周面に溝を形成することにより、試料を剪断する作用が増大するので、繊維質の試料の破砕に効果的である。
【0027】
また、強磁性体の外側を樹脂、セラミクス、ガラス質、非磁性体金属のいずれか又はそれら任意の組み合わせにより被覆することにより、主には鉄素材である強磁性体と接触することが好ましくない試料の場合や、試料と共に円筒容器中に注入された緩衝液等の液体と鉄素材との反応などを防止したい場合などに有効である。また、試料を破砕するのに適した表面材質を選択することが可能である。
【0028】
また、中空構造の内部に蓄冷剤を封入して構成することにより、予め破砕媒体を冷却して蓄冷材を冷却あるいは冷凍しておくと、試料を直接的に冷却しながら破砕処理することができ、温度上昇により変質する恐れがある試料の破砕に有効である。
【0029】
また、円柱状に形成した中心部材の外周上にリング状に形成した円筒部材を遊嵌して構成することにより、中心部材と円筒部材との間で試料が破砕される効果を加味することができる。このとき、中心部材と円筒部材とは、強磁性体と非磁性体との組み合わせとすることにより、両部材の挙動差が大きくなるので、試料の種類や状態によって破砕効果を向上させることができる。また、円筒部材に複数のスリットを形成することにより、中心部材の回転により試料がスリットから外方に噴出する作用が得られ、液状試料や液体中での破砕に有効である。
【0030】
また、円筒容器の軸方向又は径方向に複数に分割した複数部材によって構成することにより、部材間での摩砕作用や圧砕作用を増加させることができる。このとき、複数分割された各部材の材質又は形状を異なるものとすることにより、各部材の挙動差が大きくなるので破砕効果を増加させることができる。
【0031】
また、強磁性体を主体として中空の容器に形成され、容器の運動に伴って運動する媒体を試料と共に容器内に収容して構成することにより、試料とそれを破砕するための媒体とを収容した容器を円筒容器内に投入して可変磁界により回転運動を含む三次元方向に運動させると、機械的な振動破砕と同様の破砕効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る破砕方法によれば、試料の種類や状態に応じて最適の破砕媒体の運動を選択することができ、円筒容器を一定位置に静止させた状態でも破砕媒体の運動により試料を効果的に破砕処理することができる。
【0033】
また、本発明に係る破砕装置によれば、試料の種類や状態に応じて最適の破砕媒体の運動を発生させる磁界発生手段を選択し、円筒容器を一定位置に静止させた状態で破砕処理できるので、円筒容器の装置からの出し入れが容易で、試料の温度上昇を抑制する円筒容器の冷却も容易に構成することができる。
【0034】
また、本発明に係る破砕媒体によれば、試料を破砕する円筒容器内壁との摺接や衝突あるいは複数部材間の摺接や衝突を効果的に発生させる形状寸法や、質量、構造により試料の破砕処理を効率よく実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は、実施形態に係る磁気破砕装置1の構成例を示すもので、円筒容器Pに試料Uと破砕媒体Aとを投入し、この円筒容器Pを磁気破砕装置1に挿入することにより、磁気破砕装置1から印加される可変磁界により破砕媒体Aは円筒容器P内で三次元方向に運動し、破砕媒体Aの運動により試料Uは破砕処理される。この磁気破砕装置1を用いた試料Uの破砕処理においては、円筒容器Pは静止状態にして破砕媒体Aのみを運動させることができるので、試料Uの温度上昇を抑えるための冷却構造の構築が容易で、破砕に伴う温度上昇によって変質が生じやすい試料Uにも対応させることができる。また、円筒容器Pの装置への着脱が極めて簡単で、破砕途中であっても破砕状態を確認することができる。
【0036】
図2に示すように、円筒容器Pは、遠心チューブやサンプルチューブ等と称される樹脂製(ポリプロピレン等)の汎用チューブを用いることができ、有底円筒形の開口部を蓋Qで密閉できるものが試料Uの飛散や異物の侵入がなく好ましいものとなる。また、破砕媒体Aは円筒容器Pの寸法、形状や破砕対象とする試料Uの種類や状態に応じて、その寸法、形状、質量、構造が選択されるが、強磁性体を主体として構成することにより、磁気破砕装置1から印加される可変磁界によって所望の運動を生じさせることができる。
【0037】
可変磁界による破砕媒体Aの運動は、円筒容器Pの内周面に沿って回転する公転運動、自らの回転軸を中心に回転する自転運動、円筒容器Pの径方向に振れ動く振れ運動、円筒容器Pの軸方向に往復移動する杵搗き運動、上昇位置から円筒容器Pの内底面に加速度落下する叩き運動、微細に振動する微細動運動を試料Uの種類や状態、あるいは選択した破砕媒体Aの種類に応じて任意の運動を選択組み合わせることができる。破砕媒体Aの運動により、破砕媒体Aが円筒容器Pの内壁と摺接あるいは衝突し、複数部材で構成した破砕媒体Aの部材が摺接あるいは衝突することから、試料Uに摩砕作用あるいは圧砕作用、更には剪断作用を加えて破砕する。
【0038】
前記摩砕作用は、破砕媒体Aが自転運動することにより破砕媒体Aと円筒容器Pとの間で試料Uを磨り潰したり、定まった回転軸がない破砕媒体Aが円筒容器Pの内周壁に沿って公転運動したり、破砕媒体Aが円筒容器Pの径方向に振れ運動したりすることなどにより破砕媒体Aと円筒容器Pとの間で試料Uを磨り潰すことから得られる。また、前記圧砕作用は、破砕媒体Aを円筒容器Pの軸方向に往復移動させることにより円筒容器Pの底部にある試料Uに繰り返し圧縮力を加える杵搗き運動や、上昇位置にある破砕媒体Aを円筒容器Pの底部側に吸引することなどにより試料Uに大きな圧縮圧力を加えることなどから得られる。
【0039】
これらの摩砕作用や圧砕作用は、必ずしも単独の運動から得られるものでもなく、破砕媒体Aの回転運動を含む三次元方向の運動により両作用が併せて得られるものである。また、破砕媒体Aの形状、構造によって試料Uを切り刻む剪断作用を加えることも可能である。また、図1、図2に示す態様においては、破砕媒体Aは単一部材で構成しているが、後述するように複数部材によって構成することもでき、複数部材が互いに衝突、摺接することに伴う摩砕作用や圧砕作用、剪断作用を加味することが可能である。
【0040】
次に、上記磁気破砕方法に示したように破砕媒体Aを運動させるための磁気破砕装置1の可変磁界発生構造について説明する。図3(a)(b)は、実施形態に係る磁気破砕装置1の要部構成を示すもので、リング状に形成された下部及び上部の各回転磁界発生器11、12を備え、リング内に挿入された円筒容器Pに収容された破砕媒体Aに回転磁界を印加できるように構成されている。
【0041】
下部及び上部の各回転磁界発生器11,12は、図3(b)に示すように、円周上に複数(ここでは、6極)の電磁極22を配し、各電磁極22にはそれぞれ励磁巻線23が設けられている。制御部10によって制御される励磁電源24から励磁巻線23に励磁電流が供給されることによって各電磁極22から印加される磁界により、強磁性体(例えば、軟鉄)によって形成された破砕媒体Aを回転運動を含む三次元方向に運動させることができる。
【0042】
制御部10の制御により励磁電源24から下部回転磁界発生器12に回転磁界が発生するように交流励磁電流を供給すると、回転磁界により破砕媒体Aに渦電流が流れることによる回転駆動力が発生し、破砕媒体Aは回転する。上部及び下部の各回転磁界発生器11,12に印加する交流励磁電流は、インバータ制御による三相交流とするのが好適で、破砕媒体Aを自在に回転制御することができる。
【0043】
この交流磁界による破砕媒体Aの回転駆動は、トルクモータにおける塊状鉄心ロータをステータからの回転磁界によって回転させる原理と類似であるが、破砕媒体Aはモータのロータと異なり回転軸によって支持されていないため、振れ運動しながら回転する挙動を呈する。即ち、破砕媒体Aの回転は、円筒容器Pの内部で径方向に振れ運動しながら内周壁に沿って公転運動すると共に自転運動する。従って、破砕媒体Aの下端形状が円筒容器Pの底部形状に対応していることと相まって試料Uを磨り潰す乳棒のような摩砕作用が得られる。
【0044】
制御部10によって励磁電流の供給を下部回転磁界発生器11から上部回転磁界発生器12に切り換えると、破砕媒体Aは上昇移動して上部回転磁界発生器12のリング内に入り、円筒容器Pの径方向に振れ運動しながら内周壁に沿って公転運動すると共に自転運動する。励磁電流の供給が再び下部回転磁界発生器11に切り換えられると、破砕媒体Aは落下して試料Uに衝突し、試料Uを圧縮破砕する圧砕作用が得られる。この破砕媒体Aの上下移動を繰り返すことにより、試料Uが植物の葉のような嵩高いものであっても満遍なく摩砕することができ、摩砕作用に加えて破砕媒体Aの落下による圧砕作用を併用して破砕効果を増加させることができる。また、試料Uに緩衝液等を加えた液体中での破砕を行う場合でも液面高さ位置まで破砕媒体Aを上下移動させて破砕することができるので、液体中の試料Uを満遍なく破砕することができる。
【0045】
更に、図3に示すように、円筒容器Pの底部に対応する位置に吸引磁界発生器15を配し、上部回転磁界発生器12に対する励磁電流の供給を遮断すると同時に吸引磁界発生器15に励磁電流を供給すると、落下してくる破砕媒体Aを円筒容器Pの底部に吸引して試料Uを叩き潰す作用が増大するので、破砕媒体Aによる圧砕作用を大きく増加させることができる。
【0046】
また、下部回転磁界発生器11により回転磁界を印加している状態で吸引磁界発生器15から小さい吸引磁界を印加するようにすると、破砕媒体Aは円筒容器Pの底部側に吸引された状態で回転するので、摩砕作用を増加させることができる。また、吸引磁界発生器15に交番励磁電流を印加すると、破砕媒体Aを交番磁界の周波数で微振動させて破砕する効果を得ることもできる。
【0047】
上記構成になる磁気破砕装置においては、上部及び下部の各回転磁界発生器11,12に印加する励磁電流は交流としているが、励磁電流を直流として各電磁極22を励磁制御することによっても破砕媒体Aを円筒容器P内で回転運動を含む三次元方向に運動させることができる。
【0048】
制御部10の制御により励磁巻線23に直流励磁電流が流されて特定の電磁極22が励磁されると、強磁性体で形成された破砕媒体Aは励磁された電磁極22に吸引される。複数の電磁極22が円周回りの順に励磁されると、破砕媒体Aは円筒容器Pの内周面に沿って回転する公転運動が生じる。また、励磁されている1つの電磁極22に対する励磁を停止すると同時に、他の電磁極22を励磁する制御を任意の順に繰り返すと、破砕媒体Aは円筒容器Pの径方向に移動する。この破砕媒体Aの運動は、あたかも乳棒を乳鉢内で動かして試料3を磨り潰す動作に近似である。この動作を下部回転磁界発生器11と上部回転磁界発生器12との間で切り換えると、破砕媒体Aの位置を上下に移動させることができる。
【0049】
上記直流励磁制御だけでは破砕媒体Aに自転運動は生じ難く、摩砕作用は先の交流励磁制御に比して劣るので、破砕媒体Aに自転運動を生じさせることが望ましい。そのためには、破砕媒体Aは、図4(a)に示すような直径方向に複数の突出部21を設けた構成、あるいは図4(b)(c)に示すような直径方向に着磁した構成,あるいは突出部21を設けると共に着磁した構成にすると、破砕媒体Aは複数の電磁極22の励磁を制御することにより自転運動を発生させることができる。
【0050】
破砕媒体Aを運動させる磁界印加は、上述した交流又は直流による電磁界によらず永久磁石からの磁界によって破砕媒体Aを運動させることもできる。図5(a)に示すように、永久磁石17をその磁極が反転するように自転させながら円筒容器Pの外周に沿って公転させると、径方向に着磁した破砕媒体Aは自転しながら円筒容器Pの内周壁に沿って公転する。永久磁石17を円筒容器Pの軸方向に往復移動させると破砕媒体Aも上下に往復移動し、破砕媒体Aに杵搗き運動を生じさせることができる。また、図5(b)に示すように、円筒容器Pの底部に破砕媒体Aを吸引するための永久磁石18をその磁極が反転するように回転、あるいは永久磁石18を出し入れすると、磁気反発や磁気吸引により破砕媒体Aを上下移動させ、あるいは上昇移動した破砕媒体Aを円筒容器Pの内底面に吸引して試料Uを圧砕する効果を向上させることができる。
【0051】
上記のように構成される磁気破砕装置によって破砕処理する試料Uは、硬質のものから軟質のものまで多様であり、植物のように繊維質のものもある。また、緩衝液などの液中で試料Uを破砕処理する場合や試料Uそのものが液状である場合もある。従って、破砕媒体Aは、試料Uの種類や処理条件、円筒容器の形状などに応じて、その形状、サイズ、構造、数を最適に選択することが好ましいものとなる。
【0052】
破砕媒体Aの下端形状は、図2に示したように、基本的に円筒容器Pの内底面の形状に対応していることが好適で、図示するように円筒容器Pの内底面形状が球面である場合には、破砕媒体Aの下端形状は球面とすることが内底面にある試料Uに摩砕作用や圧砕作用を加える上で有効である。汎用の円筒容器Pは、図6に示すように、底部形状が円錐形や平底のものがあり、円錐形状の角度が異なるものがあるので、破砕媒体Aの下端形状は図示するように内底面形状に対応させることが望ましい。
【0053】
また、破砕媒体Aの直径は、円筒容器2の内径の1/2〜4/5とするのが好適であるが、円筒容器Pの内底面にある試料Uを摩砕することを重点的に行う場合には、破砕媒体Aの直径は円筒容器Pより僅かに小さいものが好適である。しかし、液体中で試料Uの破砕を行う場合、破砕媒体Aの直径と円筒容器Pの内径との差が小さいと、破砕媒体Aを上下移動させるときに液体が破砕媒体Aの上下移動の抵抗となるので、液体中での破砕を行う場合には、破砕媒体Aの直径は円筒容器Pの内径より充分に小さいものを適用するか、複数個の破砕媒体Aを適用するのが好適である。
【0054】
円筒容器P中に投入する破砕媒体Aの数は、必ずしも単一部材のものが最適ではなく、破砕対象とする試料Uの種類に応じて変化させることができる。図7(a)(b)に示すように、円柱形や球形などの複数の破砕媒体Aを円筒容器P中に投入して運動させると、複数の破砕媒体Aが互いに摺接あるいは衝突することによる破砕効果を加味することができる。
【0055】
複数の破砕媒体Aは、図8に示すように、異なった形状の組み合せにすることも効果的である。図8(a)に示す構成では、先端形状を円筒容器Pの内底面形状に対応させた中心部材31に円環状の円筒部材32を遊嵌させている。中心部材31及び円筒部材32の両方を強磁性体によって形成すると、磁気駆動力を受ける度合いが異なるため、運動に差が生じて両部材間に挟まれた試料Uを摩砕する効果が得られる。また、円筒部材32を非磁性体で形成すると、円筒部材32は中心部材31の運動に追従したり、停止状態になったりする。また、図8(b)に示すように、複数個の円柱形部材33〜35を積み重ねた構成では、上下移動させたときに各部材間に存在する試料Uを圧砕する効果や、各円柱形部材33〜35が個別に回転することによる摩砕効果を向上させることができ、いずれかの部材を非磁性体で構成することによる挙動の変化を得ることもできる。
【0056】
また、図9に一例を示すように、径方向に複数に分割して構成することもできる。強磁性体によって形成された回転部材43の円形凹部に非磁性体によって形成された複数の円柱部材44を配した構造に構成することにより、可変磁界による回転部材43の回転運動を含む三次元方向への運動に伴って回転部材43と円柱部材44とは衝突あるいは摺接し、それぞれが円筒容器Pの内周壁に衝突あるいは摺接するので、試料Uを効率的に破砕することができる。
【0057】
また、図10(a)(b)に示すように、1又は複数の球状部材36の上に円柱状部材37を配した構成により、両部材36,37による相乗効果を得ることができ、円筒容器Pの形状に適した破砕媒体Aを得ることができる。この構成は液体中で試料Uを破砕するのに好適で、円柱状部材37の直径を円筒容器Pの内径より僅かに小さいものに形成することにより、軽い試料Uが液体中で浮き上るのを押えて破砕処理することができる。
【0058】
また、破砕媒体Aの表面に溝又は突起を形成することにより試料Uを剪断する効果が加味されるので、繊維状の試料を破砕するのに効果的である。また、二重のリング状部材で形成した外側リングにスリットを形成しておくと、内側リング状部材の回転に伴ってスリットから液体又は液状の試料Uが外方に噴出することから対流が生じ、試料Uを攪拌しながら剪断する作用を与えることができる。
【0059】
破砕媒体Aによる破砕は摩擦を伴うので、摩擦熱による温度上昇が避けられない。また、磁気印加に伴って破砕媒体Aに電流が発生する状態になると、電流に伴う温度上昇もある。更に、装置運転に伴う温度上昇も見過ごせない。試料Uが熱による変質の恐れがあるものでは、温度上昇を抑えるために円筒容器Pの周囲に冷媒を循環させて冷却する冷却構造を設ける必要がある。冷却構造は装置のコストアップをまねくので、破砕媒体Aを中空構造として、内部に蓄冷材を封入したものを用いると、簡易に試料Uの温度上昇を抑えることができる。予め破砕媒体Aを冷却して蓄冷材を凍結させておくと、試料Uを直接冷却することができ、比較的大型の破砕媒体Aであれば、破砕時間が長くなっても冷却効果を持続させることが可能である。
【0060】
破砕媒体Aを構成する強磁性体は主には鉄素材となるが、鉄に直接触れることを避けたい試料Uに対応させたい場合や、試料Uと共に円筒容器P中に投入される液体によって鉄素材が溶解、腐食するような場合には、鉄素材の表面全体をガラス質、セラミックス、樹脂、非磁性体金属等によって被覆した破砕媒体Aとすることができる。
【0061】
また、破砕に伴って円筒容器Pの内表面は破砕媒体Aや試料Uによって削られ、その微粉末が破砕処理した試料Uに混入する。また、試料Uが土砂など鉱物質を含むものである場合には、硬質試料によって円筒容器Pが削られる量は大きくなる。このような円筒容器Pの微粉末の混入が好ましくない場合、図11に示すような構成が有効である。
【0062】
図11において、強磁性体により形成した破砕容器40に破砕媒体Aと試料Uとを投入し、破砕容器40の開口部を蓋41で閉じ、この破砕容器40を円筒容器Pに収容する。円筒容器Pの外部から可変磁界を印加して破砕容器40を回転運動を含む三次元方向に運動させると、破砕容器40の中に投入された破砕媒体Aも三次元方向に運動するので、破砕容器40中の試料Uは破砕される。
【0063】
以上説明した構成においては、基本的に円筒容器Pをその円筒軸方向が鉛直方向になるようにして破砕処理することとしているが、円筒容器Pの円筒軸が水平方向、即ち横位置になるように磁気破砕装置を設置することもできる。円筒容器Pを横位置にして破砕処理するときには、円筒容器Pはその開口部を蓋Qで密閉できる構造のものを用いる必要があることは言うまでもない。
【0064】
円筒容器Pを横位置とした場合には、試料U及び破砕媒体Aに加わる重力方向は容器の内周面となり、多くは摩砕作用によって試料Uを破砕することになるので、図12に示すように、破砕媒体Aは縦位置の場合より円筒容器Pの円筒軸方向に長いものが好適である。また、破砕媒体Aの断面形状は必ずしも円形である必要はなく、楕円形、三角形、十字形など下部に溜まる試料Uを回転によって掻き揚げるような作用を伴うものが好適な場合もある。先に図9に断面形状として示した破砕媒体Aは、これを円筒容器Pの軸方向寸法に対応する長さに構成すると、円筒容器Pを横位置にして破砕処理するのに好適なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上の説明の通り本発明によれば、円筒容器の外部から印加される可変磁界によって円筒容器内に収容した破砕媒体を自在に運動させることができ、破砕媒体の形状、寸法、質量、構造と共に試料の種類や状態に対応させることにより、試料を効率よく破砕処理することができる。また、可変磁界により破砕媒体のみを運動させ、円筒容器は一定位置に静止させておくことができ、機械的な作動構造がないので破砕に伴う摩擦熱等により試料が温度上昇することを抑える冷却を容易に実施することができ、破砕媒体及び試料を投入した円筒容器を破砕装置に着脱する作業を迅速且つ容易に実施できる。従って、DNA解析する生体試料などを高品質に効率よく破砕処理する用途などに好適であり、小型化できるので手術中の組織検査などにも対応できる破砕方法、装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態に係る磁気破砕装置の構成例を示す斜視図。
【図2】磁気破砕方法に用いる円筒容器と破砕媒体の構成を示す1/2断面図。
【図3】実施形態に係る破砕装置の構成を示す(a)は要部構成図、(b)は回転磁界発生器の平面図。
【図4】直流励磁に適した破砕媒体の構成例を示す平面図。
【図5】永久磁石による破砕装置の概略構成を示す(a)は平面図、(b)は側面図。
【図6】円筒容器と破砕媒体との対応を示す断面図。
【図7】複数部材による破砕媒体の構成例を示す側面図。
【図8】同上
【図9】同上
【図10】同上
【図11】試料を収容する中空構造とした破砕媒体の断面図。
【図12】円筒容器を横位置にして破砕する磁気破砕装置の構成を示す断面図。
【図13】機械的振動破砕装置の構成を示す断面図。
【図14】同上装置に適用する破砕媒体の従来構成を断面図。
【図15】電磁破砕装置の従来構成を示す概略図。
【図16】ソレノイドによる圧縮破砕の従来構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0067】
A 破砕媒体
P 円筒容器
U 試料
1 磁気破砕装置
11 下部回転磁界発生器(回転磁界発生手段/直動磁界発生手段)
12 上部回転磁界発生器(回転磁界発生手段/直動磁界発生手段)
15 吸引磁界発生器(吸引磁界発生手段)
21 突出部
22 電磁極
23 励磁巻線
25 制御部
31 中心部材
32 円筒部材
33,34,35 円柱形部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA解析するための前処理として生体試料を細胞破砕する場合や試料を粉砕処理する場合など、円筒容器中に試料と共に収容した破砕媒体を磁気的に運動させて試料を破砕する磁気破砕方法及び磁気破砕装置とそれに用いる破砕媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、生体試料をDNA解析するためには、前処理として試料中の細胞を破砕する細胞破砕処理が必要となる。細胞破砕は古くから在る乳鉢−乳棒によっても可能であるが、長時間にわたる労力が必要であり、開放空間での作業であるため異物が混入する恐れが多分にある。この乳鉢−乳棒の破砕作業を機械的に行う装置として振動破砕装置が知られている。図13は振動破砕装置の構造例を示すもので、モータにより回転軸102を回転駆動することにより、破砕容器100を保持した環状保持体103をその円周方向に高速に往復振動させると共に上下方向に高速に往復振動させる。この破砕容器100の振動により、破砕容器100中に収容した破砕媒体101が回転しながら容器内壁に激しく衝突し、摺接するので、破砕容器100が乳鉢、破砕媒体101が乳棒のように作用して破砕容器100中に収容した試料が摩砕あるいは圧砕される。
【0003】
このような振動破砕に適用される破砕媒体は、一般的にはガラス、ジルコニア、ステンレス等による直径0.1〜5.0mmのビーズが用いられるが、破砕効果をより向上させるべく破砕容器100中に単一の破砕媒体101を収容する試料破砕具が知られている(特許文献1参照)。また、破砕容器100の内径より僅かに小さい直径の単一の破砕媒体101を用いて細胞破砕する装置及び方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
これらの破砕媒体101は、図14に示すように、有底円筒形の破砕容器100に試料120と共に収容され、振動破砕装置によって破砕容器100に往復振動が加えられることにより破砕媒体101は三次元運動して試料120を破砕する。破砕媒体101の形状寸法及び質量が規定されており、図示破砕媒体101の場合では、円筒形の破砕容器100の軸心にほぼ沿った姿勢を維持してほぼ軸心方向に相対移動できる円柱形で、一方の端部が破砕容器100の底面形状に対応する形状としている。
【0005】
しかし、振動破砕装置においては、破砕容器100の中で破砕媒体101を激しく運動させるためには破砕容器100を激しく振り回す必要があり、破砕容器100が激しい往復運動によっても脱落しないように装置に強固に固定しなければならない。そのため、破砕容器100を装置に固定し、破砕処理後には固定状態を解除して取り出す作業工数が多くなり、試料を破砕処理する作業に大きな手間を要する。
【0006】
また、摩擦熱や装置の温度上昇により試料が温度上昇し、試料の種類によっては熱による変質が生じ、DNA解析等の作業に支障を来たす問題があり、温度上昇を抑えるために破砕容器100を冷却することが要求される。しかし、激しく往復運動する破砕容器100を冷却することは容易でない。
【0007】
望ましくは、破砕容器100は一定位置に静止状態とし、破砕媒体101だけを破砕容器100内で運動させた方が好適であり、破砕容器100を乳鉢、破砕媒体101を乳棒として作用させることができる。破砕媒体101だけを運動させるには、破砕媒体101を強磁性体あるいは着磁体で形成することにより、破砕容器100の外部から印加する磁界により破砕媒体101を回転させたり任意方向に移動させたりすることができる。
【0008】
このような容器中に収容した強磁性体や着磁体を磁力によって容器内で運動させる構造は、ビーカや試験管に入れた液体を攪拌する小型の攪拌装置から反応促進のための攪拌や溶融金属の攪拌など工業的な大型攪拌装置まで多くの提案がなされている。しかし、このような攪拌装置は液体や粉体、溶融体などを攪拌するのに好適なものであるが、試料を磨り潰す摩砕作用や試料を圧縮破砕する圧砕作用は得られず、試料を破砕する用に供することはできない。
【0009】
容器内に収容した破砕媒体を磁気駆動して試料を破砕処理する技術としては、試料に微細な磁気球や金属球を混合して容器中に収容し、容器の外部から印加される磁界により試料を破砕する破砕方法が提案されている(特許文献3参照)。この破砕方法は、図15に示すように、微細な磁気球や金属球を混合した試料110を収容した円筒形容器111の直径方向に対向させて2方向あるいは4方向に電磁石112,113を配し、複数の電磁石112,113にランダムなタイミングで通電し、必要に応じて通電方向を切り換えて磁極を反転させることにより、磁気球や金属球に不規則な移動や回転を生じさせ、試料110を破砕するとしている。
【0010】
また、円筒形容器の外部から印加される磁界により容器内に収容した磁性体を円筒形容器の軸心方向に往復直動させて試料を破砕する加振機構が知られている(特許文献4参照)。この装置では、図16に示すように、上下に配設された第1及び第2の各ソレノイド141,142の内側に取り付けた容器148に投入した磁性体143を第1及び第2の各ソレノイド141,142をオン・オフ制御することにより往復直動させて試料とする検体144を破砕する。容器148の底部には予め質量体145が収容され、その上に検体144を置き、容器148内に磁性体143を投入して第1及び第2の各ソレノイド141,142を交互に励磁すると、磁性体143は往復直動して質量体145に衝突するので、検体144は質量体145と磁性体143との間で圧砕される。
【特許文献1】特開2006−051505号公報
【特許文献2】特開2005−237381号公報
【特許文献3】特開2003−000226号公報
【特許文献4】特開2005−111358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術である振動破砕における破砕媒体の挙動は、破砕容器が往復振動する挙動に係っており、振動破砕装置により破砕容器を往復振動させる振動周期と振動振幅に左右される。従って、特許文献1,2に示した従来技術に係る破砕媒体は、振動破砕装置の構造、動作に対応する破砕媒体の形状や寸法を決定する必要がある。一方、磁気的に破砕媒体だけを静止状態にある容器の中で運動させる磁気破砕装置においては、磁界の印加位置、磁界強度、磁界の種類などによって破砕媒体の運動を自在制御することができるので、破砕媒体の形状や寸法、容器中に投入する数は破砕対象とする試料の種類や状態に合わせて任意に設定することができる。
【0012】
しかし、特許文献3として示した従来技術の磁気破砕方式における破砕媒体は、微細な磁気球や金属球であって、それを磁界方向の切り換えによって円筒容器内で移動させるだけなので、質量が小さい破砕媒体によって植物など繊維質の試料や骨や歯など硬質の試料の破砕に対応させることができない。また、試料中に破砕媒体を混入して破砕処理するとしているので、開示されているように白血球、細菌、ウイルス等のような液状の試料や軟質の試料、微粉状の試料に限定される。また、破砕媒体は円筒形容器の中で電磁石の側に移動する往復移動や周回移動を行うだけなので、破砕媒体が試料を破砕するまでに時間を要するものと考えられる。
【0013】
また、特許文献4に示した従来技術では、電磁駆動により磁性体を直動させて質量体に衝突させ、その間に収容した試料を圧縮破砕するもので、凍結した試料や硬質の試料を叩き潰す圧砕作用は得られるものの、試料を磨り潰す摩砕作用は得られない。従って、試料の種類が限定され、従来から知られている凍結試料を金属容器内に収容して外部から打撃を加えて圧砕する凍結破砕装置を電動駆動に代えたもとしか考えられない。
【0014】
本発明は目的とするところは、容器中に収容した破砕媒体を磁気的に運動させて試料に摩砕及び圧砕の作用を加えて破砕するのに適した磁気破砕方法及び磁気破砕装置とそれに用いる破砕媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本願第1発明は、破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された破砕媒体を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する磁気破砕方法であって、前記破砕媒体の運動は、円筒容器の内周に沿って回転する公転運動、自らの回転軸を中心に回転する自転運動、円筒容器の径方向に振れ動く振れ運動、円筒容器の軸方向に往復移動する杵搗き運動、上昇位置から加速度落下する叩き運動、微細に振動する微細動運動のうち任意の運動を選択組み合わせることを特徴とする。
【0016】
上記磁気破砕方法によれば、可変磁界によって円筒容器内で破砕媒体を運動させて試料を破砕処理するとき、試料の種類や状態に応じて破砕媒体を最適の状態に運動させることができる。破砕対象とする試料は硬質のものから軟質のもの、繊維質のもの、液体中での破砕が要求されるものなど多様であるため、破砕媒体の運動を試料の種類や状態に応じて選択組み合わせることにより、より効率的な破砕処理が可能である。また、円筒容器は一定位置に静止させて破砕媒体だけを試料に適応する挙動に運動させることができるので、円筒容器を冷却して温度上昇により試料が変質することを防止する冷却構造の構築が容易であり、破砕処理途中で円筒容器を取り出して破砕状態を確認することも容易に行い得る。
【0017】
また、本願第2発明は、破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された破砕媒体を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する磁気破砕装置であって、前記可変磁界は、破砕媒体を回転運動させる回転磁界発生手段、破砕媒体を円筒容器の軸方向に移動させる直動磁界発生手段、破砕媒体を円筒容器の任意方向に吸引する吸引磁界発生手段、破砕媒体を微細振動させる交番磁界発生手段のうち任意の磁界発生手段を選択組み合わせて構成されてなることを特徴とする。
【0018】
上記破砕装置によれば、可変磁界を発生させるための磁界発生手段を試料の種類や状態に応じて破砕媒体を最も効果的に運動させることができるものに構成することができる。可変磁界による破砕媒体の運動は、機械的な駆動構造がない破砕装置に構成することが可能であり、装置としての耐久性や小型化、低騒音化などを実現することができる。また、円筒容器は静止状態にして破砕処理できるので、円筒容器の装置への着脱が極めて容易である。
【0019】
上記構成において、磁界発生手段は、少なくとも円筒容器の底部側外周を囲むように複数の磁極を配して構成することにより、破砕媒体を回転運動を中心として円筒容器の底部側にある試料を摩砕することができ、磁界発生手段を円筒容器の軸方向に移動させると、試料を叩き潰す圧砕作用も得ることができる。
【0020】
また、磁界発生手段は、円筒容器の周囲に配した複数の磁極からの磁界印加を切り換える用に構成することにより、破砕媒体を回転運動を含む三次元方向に運動させることができる。
【0021】
また、本願第3発明は、破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された単一又は複数の部材を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する破砕媒体であって、前記部材は強磁性体を主体として形成され、運動により円筒容器内壁に摺接あるいは衝突し、複数部材同士が摺接あるいは衝突することができる寸法、形状、構造と、摺接あるいは衝突により試料を摩砕、圧砕することができる質量に形成されてなることを特徴とする。
【0022】
上記破砕媒体は強磁性体を主体として形成されているので、可変磁界により円筒容器内で自在に運動させ、その運動により円筒容器内に収容した試料を破砕処理することができる。破砕媒体の回転運動により円筒容器の内壁に摺接することによって試料が磨り潰される摩砕作用が得られ、破砕媒体が円筒容器の内壁に衝突する運動により試料が叩き潰される圧砕作用が得られる。破砕媒体を複数部材により構成すれば、複数部材が摺接あるいは衝突することによる摩砕及び圧砕の作用が加味される。この摩砕や圧砕の作用は破砕媒体の形状寸法や構造によって試料の種類や状態に適応させることができ、質量が充分に大きいものであることが摩砕や圧砕の作用を増大させる。
【0023】
上記破砕媒体は、円柱状の軸方向又は径方向に着磁することにより、回転運動を与えることが容易になり、磁気反発による運動を与えることも可能となる。
【0024】
また、円柱状の径方向に複数の突出部を形成することにより、回転運動を与えることが容易となるばかりでなく、突出部により試料を剪断する作用が得られ、繊維質の試料の破砕に有効となる。
【0025】
また、少なくとも円筒容器の底部側に向く端部は円筒容器の内底面形状に対応する形状に形成することが好適で、破砕媒体と円筒容器の内底面との接触面積が増すため、円筒容器を縦位置にして破砕処理するとき、円筒容器の内底面にある試料を効果的に摩砕あるいは圧砕することができる。
【0026】
また、任意周面に溝を形成することにより、試料を剪断する作用が増大するので、繊維質の試料の破砕に効果的である。
【0027】
また、強磁性体の外側を樹脂、セラミクス、ガラス質、非磁性体金属のいずれか又はそれら任意の組み合わせにより被覆することにより、主には鉄素材である強磁性体と接触することが好ましくない試料の場合や、試料と共に円筒容器中に注入された緩衝液等の液体と鉄素材との反応などを防止したい場合などに有効である。また、試料を破砕するのに適した表面材質を選択することが可能である。
【0028】
また、中空構造の内部に蓄冷剤を封入して構成することにより、予め破砕媒体を冷却して蓄冷材を冷却あるいは冷凍しておくと、試料を直接的に冷却しながら破砕処理することができ、温度上昇により変質する恐れがある試料の破砕に有効である。
【0029】
また、円柱状に形成した中心部材の外周上にリング状に形成した円筒部材を遊嵌して構成することにより、中心部材と円筒部材との間で試料が破砕される効果を加味することができる。このとき、中心部材と円筒部材とは、強磁性体と非磁性体との組み合わせとすることにより、両部材の挙動差が大きくなるので、試料の種類や状態によって破砕効果を向上させることができる。また、円筒部材に複数のスリットを形成することにより、中心部材の回転により試料がスリットから外方に噴出する作用が得られ、液状試料や液体中での破砕に有効である。
【0030】
また、円筒容器の軸方向又は径方向に複数に分割した複数部材によって構成することにより、部材間での摩砕作用や圧砕作用を増加させることができる。このとき、複数分割された各部材の材質又は形状を異なるものとすることにより、各部材の挙動差が大きくなるので破砕効果を増加させることができる。
【0031】
また、強磁性体を主体として中空の容器に形成され、容器の運動に伴って運動する媒体を試料と共に容器内に収容して構成することにより、試料とそれを破砕するための媒体とを収容した容器を円筒容器内に投入して可変磁界により回転運動を含む三次元方向に運動させると、機械的な振動破砕と同様の破砕効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る破砕方法によれば、試料の種類や状態に応じて最適の破砕媒体の運動を選択することができ、円筒容器を一定位置に静止させた状態でも破砕媒体の運動により試料を効果的に破砕処理することができる。
【0033】
また、本発明に係る破砕装置によれば、試料の種類や状態に応じて最適の破砕媒体の運動を発生させる磁界発生手段を選択し、円筒容器を一定位置に静止させた状態で破砕処理できるので、円筒容器の装置からの出し入れが容易で、試料の温度上昇を抑制する円筒容器の冷却も容易に構成することができる。
【0034】
また、本発明に係る破砕媒体によれば、試料を破砕する円筒容器内壁との摺接や衝突あるいは複数部材間の摺接や衝突を効果的に発生させる形状寸法や、質量、構造により試料の破砕処理を効率よく実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は、実施形態に係る磁気破砕装置1の構成例を示すもので、円筒容器Pに試料Uと破砕媒体Aとを投入し、この円筒容器Pを磁気破砕装置1に挿入することにより、磁気破砕装置1から印加される可変磁界により破砕媒体Aは円筒容器P内で三次元方向に運動し、破砕媒体Aの運動により試料Uは破砕処理される。この磁気破砕装置1を用いた試料Uの破砕処理においては、円筒容器Pは静止状態にして破砕媒体Aのみを運動させることができるので、試料Uの温度上昇を抑えるための冷却構造の構築が容易で、破砕に伴う温度上昇によって変質が生じやすい試料Uにも対応させることができる。また、円筒容器Pの装置への着脱が極めて簡単で、破砕途中であっても破砕状態を確認することができる。
【0036】
図2に示すように、円筒容器Pは、遠心チューブやサンプルチューブ等と称される樹脂製(ポリプロピレン等)の汎用チューブを用いることができ、有底円筒形の開口部を蓋Qで密閉できるものが試料Uの飛散や異物の侵入がなく好ましいものとなる。また、破砕媒体Aは円筒容器Pの寸法、形状や破砕対象とする試料Uの種類や状態に応じて、その寸法、形状、質量、構造が選択されるが、強磁性体を主体として構成することにより、磁気破砕装置1から印加される可変磁界によって所望の運動を生じさせることができる。
【0037】
可変磁界による破砕媒体Aの運動は、円筒容器Pの内周面に沿って回転する公転運動、自らの回転軸を中心に回転する自転運動、円筒容器Pの径方向に振れ動く振れ運動、円筒容器Pの軸方向に往復移動する杵搗き運動、上昇位置から円筒容器Pの内底面に加速度落下する叩き運動、微細に振動する微細動運動を試料Uの種類や状態、あるいは選択した破砕媒体Aの種類に応じて任意の運動を選択組み合わせることができる。破砕媒体Aの運動により、破砕媒体Aが円筒容器Pの内壁と摺接あるいは衝突し、複数部材で構成した破砕媒体Aの部材が摺接あるいは衝突することから、試料Uに摩砕作用あるいは圧砕作用、更には剪断作用を加えて破砕する。
【0038】
前記摩砕作用は、破砕媒体Aが自転運動することにより破砕媒体Aと円筒容器Pとの間で試料Uを磨り潰したり、定まった回転軸がない破砕媒体Aが円筒容器Pの内周壁に沿って公転運動したり、破砕媒体Aが円筒容器Pの径方向に振れ運動したりすることなどにより破砕媒体Aと円筒容器Pとの間で試料Uを磨り潰すことから得られる。また、前記圧砕作用は、破砕媒体Aを円筒容器Pの軸方向に往復移動させることにより円筒容器Pの底部にある試料Uに繰り返し圧縮力を加える杵搗き運動や、上昇位置にある破砕媒体Aを円筒容器Pの底部側に吸引することなどにより試料Uに大きな圧縮圧力を加えることなどから得られる。
【0039】
これらの摩砕作用や圧砕作用は、必ずしも単独の運動から得られるものでもなく、破砕媒体Aの回転運動を含む三次元方向の運動により両作用が併せて得られるものである。また、破砕媒体Aの形状、構造によって試料Uを切り刻む剪断作用を加えることも可能である。また、図1、図2に示す態様においては、破砕媒体Aは単一部材で構成しているが、後述するように複数部材によって構成することもでき、複数部材が互いに衝突、摺接することに伴う摩砕作用や圧砕作用、剪断作用を加味することが可能である。
【0040】
次に、上記磁気破砕方法に示したように破砕媒体Aを運動させるための磁気破砕装置1の可変磁界発生構造について説明する。図3(a)(b)は、実施形態に係る磁気破砕装置1の要部構成を示すもので、リング状に形成された下部及び上部の各回転磁界発生器11、12を備え、リング内に挿入された円筒容器Pに収容された破砕媒体Aに回転磁界を印加できるように構成されている。
【0041】
下部及び上部の各回転磁界発生器11,12は、図3(b)に示すように、円周上に複数(ここでは、6極)の電磁極22を配し、各電磁極22にはそれぞれ励磁巻線23が設けられている。制御部10によって制御される励磁電源24から励磁巻線23に励磁電流が供給されることによって各電磁極22から印加される磁界により、強磁性体(例えば、軟鉄)によって形成された破砕媒体Aを回転運動を含む三次元方向に運動させることができる。
【0042】
制御部10の制御により励磁電源24から下部回転磁界発生器12に回転磁界が発生するように交流励磁電流を供給すると、回転磁界により破砕媒体Aに渦電流が流れることによる回転駆動力が発生し、破砕媒体Aは回転する。上部及び下部の各回転磁界発生器11,12に印加する交流励磁電流は、インバータ制御による三相交流とするのが好適で、破砕媒体Aを自在に回転制御することができる。
【0043】
この交流磁界による破砕媒体Aの回転駆動は、トルクモータにおける塊状鉄心ロータをステータからの回転磁界によって回転させる原理と類似であるが、破砕媒体Aはモータのロータと異なり回転軸によって支持されていないため、振れ運動しながら回転する挙動を呈する。即ち、破砕媒体Aの回転は、円筒容器Pの内部で径方向に振れ運動しながら内周壁に沿って公転運動すると共に自転運動する。従って、破砕媒体Aの下端形状が円筒容器Pの底部形状に対応していることと相まって試料Uを磨り潰す乳棒のような摩砕作用が得られる。
【0044】
制御部10によって励磁電流の供給を下部回転磁界発生器11から上部回転磁界発生器12に切り換えると、破砕媒体Aは上昇移動して上部回転磁界発生器12のリング内に入り、円筒容器Pの径方向に振れ運動しながら内周壁に沿って公転運動すると共に自転運動する。励磁電流の供給が再び下部回転磁界発生器11に切り換えられると、破砕媒体Aは落下して試料Uに衝突し、試料Uを圧縮破砕する圧砕作用が得られる。この破砕媒体Aの上下移動を繰り返すことにより、試料Uが植物の葉のような嵩高いものであっても満遍なく摩砕することができ、摩砕作用に加えて破砕媒体Aの落下による圧砕作用を併用して破砕効果を増加させることができる。また、試料Uに緩衝液等を加えた液体中での破砕を行う場合でも液面高さ位置まで破砕媒体Aを上下移動させて破砕することができるので、液体中の試料Uを満遍なく破砕することができる。
【0045】
更に、図3に示すように、円筒容器Pの底部に対応する位置に吸引磁界発生器15を配し、上部回転磁界発生器12に対する励磁電流の供給を遮断すると同時に吸引磁界発生器15に励磁電流を供給すると、落下してくる破砕媒体Aを円筒容器Pの底部に吸引して試料Uを叩き潰す作用が増大するので、破砕媒体Aによる圧砕作用を大きく増加させることができる。
【0046】
また、下部回転磁界発生器11により回転磁界を印加している状態で吸引磁界発生器15から小さい吸引磁界を印加するようにすると、破砕媒体Aは円筒容器Pの底部側に吸引された状態で回転するので、摩砕作用を増加させることができる。また、吸引磁界発生器15に交番励磁電流を印加すると、破砕媒体Aを交番磁界の周波数で微振動させて破砕する効果を得ることもできる。
【0047】
上記構成になる磁気破砕装置においては、上部及び下部の各回転磁界発生器11,12に印加する励磁電流は交流としているが、励磁電流を直流として各電磁極22を励磁制御することによっても破砕媒体Aを円筒容器P内で回転運動を含む三次元方向に運動させることができる。
【0048】
制御部10の制御により励磁巻線23に直流励磁電流が流されて特定の電磁極22が励磁されると、強磁性体で形成された破砕媒体Aは励磁された電磁極22に吸引される。複数の電磁極22が円周回りの順に励磁されると、破砕媒体Aは円筒容器Pの内周面に沿って回転する公転運動が生じる。また、励磁されている1つの電磁極22に対する励磁を停止すると同時に、他の電磁極22を励磁する制御を任意の順に繰り返すと、破砕媒体Aは円筒容器Pの径方向に移動する。この破砕媒体Aの運動は、あたかも乳棒を乳鉢内で動かして試料3を磨り潰す動作に近似である。この動作を下部回転磁界発生器11と上部回転磁界発生器12との間で切り換えると、破砕媒体Aの位置を上下に移動させることができる。
【0049】
上記直流励磁制御だけでは破砕媒体Aに自転運動は生じ難く、摩砕作用は先の交流励磁制御に比して劣るので、破砕媒体Aに自転運動を生じさせることが望ましい。そのためには、破砕媒体Aは、図4(a)に示すような直径方向に複数の突出部21を設けた構成、あるいは図4(b)(c)に示すような直径方向に着磁した構成,あるいは突出部21を設けると共に着磁した構成にすると、破砕媒体Aは複数の電磁極22の励磁を制御することにより自転運動を発生させることができる。
【0050】
破砕媒体Aを運動させる磁界印加は、上述した交流又は直流による電磁界によらず永久磁石からの磁界によって破砕媒体Aを運動させることもできる。図5(a)に示すように、永久磁石17をその磁極が反転するように自転させながら円筒容器Pの外周に沿って公転させると、径方向に着磁した破砕媒体Aは自転しながら円筒容器Pの内周壁に沿って公転する。永久磁石17を円筒容器Pの軸方向に往復移動させると破砕媒体Aも上下に往復移動し、破砕媒体Aに杵搗き運動を生じさせることができる。また、図5(b)に示すように、円筒容器Pの底部に破砕媒体Aを吸引するための永久磁石18をその磁極が反転するように回転、あるいは永久磁石18を出し入れすると、磁気反発や磁気吸引により破砕媒体Aを上下移動させ、あるいは上昇移動した破砕媒体Aを円筒容器Pの内底面に吸引して試料Uを圧砕する効果を向上させることができる。
【0051】
上記のように構成される磁気破砕装置によって破砕処理する試料Uは、硬質のものから軟質のものまで多様であり、植物のように繊維質のものもある。また、緩衝液などの液中で試料Uを破砕処理する場合や試料Uそのものが液状である場合もある。従って、破砕媒体Aは、試料Uの種類や処理条件、円筒容器の形状などに応じて、その形状、サイズ、構造、数を最適に選択することが好ましいものとなる。
【0052】
破砕媒体Aの下端形状は、図2に示したように、基本的に円筒容器Pの内底面の形状に対応していることが好適で、図示するように円筒容器Pの内底面形状が球面である場合には、破砕媒体Aの下端形状は球面とすることが内底面にある試料Uに摩砕作用や圧砕作用を加える上で有効である。汎用の円筒容器Pは、図6に示すように、底部形状が円錐形や平底のものがあり、円錐形状の角度が異なるものがあるので、破砕媒体Aの下端形状は図示するように内底面形状に対応させることが望ましい。
【0053】
また、破砕媒体Aの直径は、円筒容器2の内径の1/2〜4/5とするのが好適であるが、円筒容器Pの内底面にある試料Uを摩砕することを重点的に行う場合には、破砕媒体Aの直径は円筒容器Pより僅かに小さいものが好適である。しかし、液体中で試料Uの破砕を行う場合、破砕媒体Aの直径と円筒容器Pの内径との差が小さいと、破砕媒体Aを上下移動させるときに液体が破砕媒体Aの上下移動の抵抗となるので、液体中での破砕を行う場合には、破砕媒体Aの直径は円筒容器Pの内径より充分に小さいものを適用するか、複数個の破砕媒体Aを適用するのが好適である。
【0054】
円筒容器P中に投入する破砕媒体Aの数は、必ずしも単一部材のものが最適ではなく、破砕対象とする試料Uの種類に応じて変化させることができる。図7(a)(b)に示すように、円柱形や球形などの複数の破砕媒体Aを円筒容器P中に投入して運動させると、複数の破砕媒体Aが互いに摺接あるいは衝突することによる破砕効果を加味することができる。
【0055】
複数の破砕媒体Aは、図8に示すように、異なった形状の組み合せにすることも効果的である。図8(a)に示す構成では、先端形状を円筒容器Pの内底面形状に対応させた中心部材31に円環状の円筒部材32を遊嵌させている。中心部材31及び円筒部材32の両方を強磁性体によって形成すると、磁気駆動力を受ける度合いが異なるため、運動に差が生じて両部材間に挟まれた試料Uを摩砕する効果が得られる。また、円筒部材32を非磁性体で形成すると、円筒部材32は中心部材31の運動に追従したり、停止状態になったりする。また、図8(b)に示すように、複数個の円柱形部材33〜35を積み重ねた構成では、上下移動させたときに各部材間に存在する試料Uを圧砕する効果や、各円柱形部材33〜35が個別に回転することによる摩砕効果を向上させることができ、いずれかの部材を非磁性体で構成することによる挙動の変化を得ることもできる。
【0056】
また、図9に一例を示すように、径方向に複数に分割して構成することもできる。強磁性体によって形成された回転部材43の円形凹部に非磁性体によって形成された複数の円柱部材44を配した構造に構成することにより、可変磁界による回転部材43の回転運動を含む三次元方向への運動に伴って回転部材43と円柱部材44とは衝突あるいは摺接し、それぞれが円筒容器Pの内周壁に衝突あるいは摺接するので、試料Uを効率的に破砕することができる。
【0057】
また、図10(a)(b)に示すように、1又は複数の球状部材36の上に円柱状部材37を配した構成により、両部材36,37による相乗効果を得ることができ、円筒容器Pの形状に適した破砕媒体Aを得ることができる。この構成は液体中で試料Uを破砕するのに好適で、円柱状部材37の直径を円筒容器Pの内径より僅かに小さいものに形成することにより、軽い試料Uが液体中で浮き上るのを押えて破砕処理することができる。
【0058】
また、破砕媒体Aの表面に溝又は突起を形成することにより試料Uを剪断する効果が加味されるので、繊維状の試料を破砕するのに効果的である。また、二重のリング状部材で形成した外側リングにスリットを形成しておくと、内側リング状部材の回転に伴ってスリットから液体又は液状の試料Uが外方に噴出することから対流が生じ、試料Uを攪拌しながら剪断する作用を与えることができる。
【0059】
破砕媒体Aによる破砕は摩擦を伴うので、摩擦熱による温度上昇が避けられない。また、磁気印加に伴って破砕媒体Aに電流が発生する状態になると、電流に伴う温度上昇もある。更に、装置運転に伴う温度上昇も見過ごせない。試料Uが熱による変質の恐れがあるものでは、温度上昇を抑えるために円筒容器Pの周囲に冷媒を循環させて冷却する冷却構造を設ける必要がある。冷却構造は装置のコストアップをまねくので、破砕媒体Aを中空構造として、内部に蓄冷材を封入したものを用いると、簡易に試料Uの温度上昇を抑えることができる。予め破砕媒体Aを冷却して蓄冷材を凍結させておくと、試料Uを直接冷却することができ、比較的大型の破砕媒体Aであれば、破砕時間が長くなっても冷却効果を持続させることが可能である。
【0060】
破砕媒体Aを構成する強磁性体は主には鉄素材となるが、鉄に直接触れることを避けたい試料Uに対応させたい場合や、試料Uと共に円筒容器P中に投入される液体によって鉄素材が溶解、腐食するような場合には、鉄素材の表面全体をガラス質、セラミックス、樹脂、非磁性体金属等によって被覆した破砕媒体Aとすることができる。
【0061】
また、破砕に伴って円筒容器Pの内表面は破砕媒体Aや試料Uによって削られ、その微粉末が破砕処理した試料Uに混入する。また、試料Uが土砂など鉱物質を含むものである場合には、硬質試料によって円筒容器Pが削られる量は大きくなる。このような円筒容器Pの微粉末の混入が好ましくない場合、図11に示すような構成が有効である。
【0062】
図11において、強磁性体により形成した破砕容器40に破砕媒体Aと試料Uとを投入し、破砕容器40の開口部を蓋41で閉じ、この破砕容器40を円筒容器Pに収容する。円筒容器Pの外部から可変磁界を印加して破砕容器40を回転運動を含む三次元方向に運動させると、破砕容器40の中に投入された破砕媒体Aも三次元方向に運動するので、破砕容器40中の試料Uは破砕される。
【0063】
以上説明した構成においては、基本的に円筒容器Pをその円筒軸方向が鉛直方向になるようにして破砕処理することとしているが、円筒容器Pの円筒軸が水平方向、即ち横位置になるように磁気破砕装置を設置することもできる。円筒容器Pを横位置にして破砕処理するときには、円筒容器Pはその開口部を蓋Qで密閉できる構造のものを用いる必要があることは言うまでもない。
【0064】
円筒容器Pを横位置とした場合には、試料U及び破砕媒体Aに加わる重力方向は容器の内周面となり、多くは摩砕作用によって試料Uを破砕することになるので、図12に示すように、破砕媒体Aは縦位置の場合より円筒容器Pの円筒軸方向に長いものが好適である。また、破砕媒体Aの断面形状は必ずしも円形である必要はなく、楕円形、三角形、十字形など下部に溜まる試料Uを回転によって掻き揚げるような作用を伴うものが好適な場合もある。先に図9に断面形状として示した破砕媒体Aは、これを円筒容器Pの軸方向寸法に対応する長さに構成すると、円筒容器Pを横位置にして破砕処理するのに好適なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上の説明の通り本発明によれば、円筒容器の外部から印加される可変磁界によって円筒容器内に収容した破砕媒体を自在に運動させることができ、破砕媒体の形状、寸法、質量、構造と共に試料の種類や状態に対応させることにより、試料を効率よく破砕処理することができる。また、可変磁界により破砕媒体のみを運動させ、円筒容器は一定位置に静止させておくことができ、機械的な作動構造がないので破砕に伴う摩擦熱等により試料が温度上昇することを抑える冷却を容易に実施することができ、破砕媒体及び試料を投入した円筒容器を破砕装置に着脱する作業を迅速且つ容易に実施できる。従って、DNA解析する生体試料などを高品質に効率よく破砕処理する用途などに好適であり、小型化できるので手術中の組織検査などにも対応できる破砕方法、装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態に係る磁気破砕装置の構成例を示す斜視図。
【図2】磁気破砕方法に用いる円筒容器と破砕媒体の構成を示す1/2断面図。
【図3】実施形態に係る破砕装置の構成を示す(a)は要部構成図、(b)は回転磁界発生器の平面図。
【図4】直流励磁に適した破砕媒体の構成例を示す平面図。
【図5】永久磁石による破砕装置の概略構成を示す(a)は平面図、(b)は側面図。
【図6】円筒容器と破砕媒体との対応を示す断面図。
【図7】複数部材による破砕媒体の構成例を示す側面図。
【図8】同上
【図9】同上
【図10】同上
【図11】試料を収容する中空構造とした破砕媒体の断面図。
【図12】円筒容器を横位置にして破砕する磁気破砕装置の構成を示す断面図。
【図13】機械的振動破砕装置の構成を示す断面図。
【図14】同上装置に適用する破砕媒体の従来構成を断面図。
【図15】電磁破砕装置の従来構成を示す概略図。
【図16】ソレノイドによる圧縮破砕の従来構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0067】
A 破砕媒体
P 円筒容器
U 試料
1 磁気破砕装置
11 下部回転磁界発生器(回転磁界発生手段/直動磁界発生手段)
12 上部回転磁界発生器(回転磁界発生手段/直動磁界発生手段)
15 吸引磁界発生器(吸引磁界発生手段)
21 突出部
22 電磁極
23 励磁巻線
25 制御部
31 中心部材
32 円筒部材
33,34,35 円柱形部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された破砕媒体を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する磁気破砕方法であって、前記破砕媒体の運動は、円筒容器の内周に沿って回転する公転運動、自らの回転軸を中心に回転する自転運動、円筒容器の径方向に振れ動く振れ運動、円筒容器の軸方向に往復移動する杵搗き運動、上昇位置から加速度落下する叩き運動、微細に振動する微細動運動のうち任意の運動を選択組み合わせることを特徴とする磁気破砕方法。
【請求項2】
破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された破砕媒体を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する磁気破砕装置であって、前記可変磁界は、破砕媒体を回転運動させる回転磁界発生手段、破砕媒体を円筒容器の軸方向に移動させる直動磁界発生手段、破砕媒体を円筒容器の任意方向に吸引する吸引磁界発生手段、破砕媒体を微細振動させる交番磁界発生手段のうち任意の磁界発生手段を選択組み合わせて構成されてなることを特徴とする磁気破砕装置。
【請求項3】
磁界発生手段は、少なくとも円筒容器の底部側外周を囲むように複数の磁極を配してなる請求項2に記載の磁気破砕装置。
【請求項4】
磁界発生手段は、円筒容器の周囲に配した複数の磁極からの磁界印加を切り換える請求項2又は3に記載の磁気破砕装置。
【請求項5】
破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された単一又は複数の部材を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する破砕媒体であって、前記部材は強磁性体を主体として形成され、運動により円筒容器内壁に摺接あるいは衝突し、複数部材同士が摺接あるいは衝突することができる寸法、形状、構造と、摺接あるいは衝突により試料を摩砕、圧砕することができる質量に形成されてなることを特徴とする破砕媒体。
【請求項6】
円柱状の軸方向又は径方向に着磁されてなる請求項5に記載の破砕媒体。
【請求項7】
円柱状の径方向に複数の突出部が形成されてなる請求項5又は6に記載の破砕媒体。
【請求項8】
少なくとも円筒容器の底部側に向く端部は円筒容器の内底面形状に対応する形状に形成されてなる請求項5〜7いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項9】
任意周面に溝が形成されてなる請求項5〜8いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項10】
強磁性体の外側を樹脂、セラミクス、ガラス質、非磁性体金属のいずれか又はそれら任意の組み合わせにより被覆してなる請求項5〜9いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項11】
中空構造の内部に蓄冷剤が封入されてなる請求項5〜10いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項12】
円柱状に形成した中心部材の外周上にリング状に形成した円筒部材が遊嵌されてなる請求項5〜11いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項13】
中心部材と円筒部材とは、強磁性体と非磁性体との組み合わせである請求項12に記載の破砕媒体。
【請求項14】
円筒部材に複数のスリットが形成されてなる請求項12又は13に記載の破砕媒体。
【請求項15】
円筒容器の軸方向又は径方向に複数に分割されてなる請求項5〜11いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項16】
複数分割された各部材の材質又は形状が異なる請求項15に記載の破砕媒体。
【請求項17】
強磁性体を主体として中空の容器に形成され、容器の運動に伴って運動する媒体を試料と共に容器内に収容してなる請求項5に記載の破砕媒体。
【請求項1】
破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された破砕媒体を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する磁気破砕方法であって、前記破砕媒体の運動は、円筒容器の内周に沿って回転する公転運動、自らの回転軸を中心に回転する自転運動、円筒容器の径方向に振れ動く振れ運動、円筒容器の軸方向に往復移動する杵搗き運動、上昇位置から加速度落下する叩き運動、微細に振動する微細動運動のうち任意の運動を選択組み合わせることを特徴とする磁気破砕方法。
【請求項2】
破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された破砕媒体を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する磁気破砕装置であって、前記可変磁界は、破砕媒体を回転運動させる回転磁界発生手段、破砕媒体を円筒容器の軸方向に移動させる直動磁界発生手段、破砕媒体を円筒容器の任意方向に吸引する吸引磁界発生手段、破砕媒体を微細振動させる交番磁界発生手段のうち任意の磁界発生手段を選択組み合わせて構成されてなることを特徴とする磁気破砕装置。
【請求項3】
磁界発生手段は、少なくとも円筒容器の底部側外周を囲むように複数の磁極を配してなる請求項2に記載の磁気破砕装置。
【請求項4】
磁界発生手段は、円筒容器の周囲に配した複数の磁極からの磁界印加を切り換える請求項2又は3に記載の磁気破砕装置。
【請求項5】
破砕対象とする試料と共に円筒容器内に収容された単一又は複数の部材を円筒容器の外部から印加する可変磁界により運動させて試料を破砕する破砕媒体であって、前記部材は強磁性体を主体として形成され、運動により円筒容器内壁に摺接あるいは衝突し、複数部材同士が摺接あるいは衝突することができる寸法、形状、構造と、摺接あるいは衝突により試料を摩砕、圧砕することができる質量に形成されてなることを特徴とする破砕媒体。
【請求項6】
円柱状の軸方向又は径方向に着磁されてなる請求項5に記載の破砕媒体。
【請求項7】
円柱状の径方向に複数の突出部が形成されてなる請求項5又は6に記載の破砕媒体。
【請求項8】
少なくとも円筒容器の底部側に向く端部は円筒容器の内底面形状に対応する形状に形成されてなる請求項5〜7いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項9】
任意周面に溝が形成されてなる請求項5〜8いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項10】
強磁性体の外側を樹脂、セラミクス、ガラス質、非磁性体金属のいずれか又はそれら任意の組み合わせにより被覆してなる請求項5〜9いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項11】
中空構造の内部に蓄冷剤が封入されてなる請求項5〜10いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項12】
円柱状に形成した中心部材の外周上にリング状に形成した円筒部材が遊嵌されてなる請求項5〜11いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項13】
中心部材と円筒部材とは、強磁性体と非磁性体との組み合わせである請求項12に記載の破砕媒体。
【請求項14】
円筒部材に複数のスリットが形成されてなる請求項12又は13に記載の破砕媒体。
【請求項15】
円筒容器の軸方向又は径方向に複数に分割されてなる請求項5〜11いずれか一項に記載の破砕媒体。
【請求項16】
複数分割された各部材の材質又は形状が異なる請求項15に記載の破砕媒体。
【請求項17】
強磁性体を主体として中空の容器に形成され、容器の運動に伴って運動する媒体を試料と共に容器内に収容してなる請求項5に記載の破砕媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−23504(P2008−23504A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202317(P2006−202317)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(504073919)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(504073919)
【Fターム(参考)】
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