磁気記録再生装置およびその製造方法
【課題】トラックピッチが0.25μmを下回るような高密度領域においても十分な磁気ヘッドの位置検出精度が得られ、トラッキング精度の向上が可能な磁気記録再生装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンを有するマスター情報担体の表面に磁気ディスクを接触させることにより情報信号に対応する磁化ビットパターンを予め磁気ディスクに記録する工程を備え、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号7を含有し、そのトラッキング用サーボ信号7に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域が、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成されている。
【解決手段】情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンを有するマスター情報担体の表面に磁気ディスクを接触させることにより情報信号に対応する磁化ビットパターンを予め磁気ディスクに記録する工程を備え、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号7を含有し、そのトラッキング用サーボ信号7に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域が、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスター情報担体を用いて予め所定の情報信号を記録した磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録再生装置は、小型でかつ大容量を実現するために、高記録密度化の傾向にある。代表的な磁気記憶装置であるハードディスクドライブの分野においては、既に面記録密度100Gbit/in2(155Mbit/mm2)を超える装置が商品化されており、数年後には、面記録密度が200Gbit/in2(310Mbit/mm2)の実用化が議論されるほどの急激な技術進歩が認められる。
【0003】
このような高記録密度化を可能とした技術的背景としては、媒体性能、ヘッド・ディスクインターフェース性能の向上やパーシャルレスポンス等の新規な信号処理方式の出現による線記録密度の向上も大きな要因である。しかしながら昨今では、トラック密度の増加傾向が線記録密度の増加傾向を大きく上回り、面記録密度向上のための主たる要因となっている。これは、従来の誘導型磁気ヘッドに比べてはるかに再生出力性能に優れた巨大磁気抵抗効果型ヘッド(GMRヘッド)の実用化による寄与に基づく。現在、GMRヘッドの実用化により、0.5μm以下のトラック幅信号のS/N比を良好に再生することが可能となっている。今後さらなるヘッド性能の向上にともない、トラックピッチはさらに小さくなるものと予想されている。
【0004】
さて、ヘッドがこのような狭トラックを正確に走査し、信号のS/N比を良好に再生するためには、ヘッドのサーボトラッキング技術が重要な役割を果たしている。サーボトラッキングを行うため、現在のハードディスクドライブでは、ディスクの1周、すなわち角度にして360度中において、一定の角度間隔でトラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等が記録された領域(以下、「サーボトラック領域」という)を設け、磁気ヘッドは、一定間隔でこれらサーボトラック領域の信号を再生することにより、ヘッドの位置を確認、修正しながら正確にトラック上を走査することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
上記のトラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等は、ヘッドが正確にトラック上を走査するための基準信号となるものであるため、その記録時には、正確な位置決め精度が要求される。それで、現在のハードディスクドライブでは、ディスクをドライブに組み込んだ後、専用のサーボ記録装置を用いて厳密に位置制御された磁気ヘッドにより上記トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等の信号記録が行われている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
ここで、専用のサーボ記録装置を用いた磁気ヘッドによる記録方法においては、磁気ヘッドによる記録は、ヘッドと媒体との相対移動に基づく線記録である。このため、専用のサーボ記録装置を用いて磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら磁気ディスクの全面に亘って信号記録を行う方法では、非常に多くの時間を要するのに加えて、ハードディスクドライブの生産台数に応じて、非常に高価な設備である専用のサーボ記録装置を必要台数準備しなければならない。さらにサーボ記録装置を用いた信号記録はドライブ筐体を開放してクリーンルーム内で行う必要があり、多くのサーボ記録装置を設置するためには、クリーンルーム設置の設備投資も大きくなり、大幅なコスト高になる原因となっていた。このような大幅な製造コストの上昇を避けるために、マスター情報担体を用いた方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1においては、マスター情報担体は、基体の表面に、情報信号に対応するパターン形状で強磁性材料からなる磁性部を形成したものである。特許文献1に提案されている方法は、このマスター情報担体の表面を、強磁性薄膜、または強磁性粉塗布層が形成されたシート状またはディスク状磁気記録媒体の表面に接触させる。そして、所定の外部磁界を印加することにより、マスター情報担体に形成した情報信号に対応するパターン形状の磁化パターンを磁気記録媒体に磁気転写記録している。
【0008】
この方法においては、一方向に磁化されたマスター情報担体表面の強磁性薄膜から発生する記録磁界により、磁気記録媒体にはマスター情報担体の強磁性薄膜パターンに対応した磁化パターンが磁気転写記録されることになる。すなわち、マスター情報担体表面に、トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等に対応する強磁性薄膜パターンをフォトリソグラフィ技術などによって形成することにより、磁気記録媒体上にはこれらサーボトラック領域における信号を磁化情報として記録することができる。
【0009】
これまでの専用のサーボ記録装置を用いて、磁気ヘッドにより記録する方法は、ヘッドと媒体との相対移動に基づく動的線記録であるのに対し、特許文献1に記載された方法による記録はマスター情報担体と媒体との相対移動を伴わない静的な面記録である。したがって、一括面記録であるため、サーボトラック領域の信号記録に要する時間は、従来の磁気ヘッドによる記録方法に比べて、非常に短い。また、磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら記録を行うための高価なサーボ記録装置が不要であり、これを設置するための広大なクリーンルームも不要である。このため、信号記録における生産性が大幅に向上するとともに、生産コストも低減するという極めて有効な効果を発揮することができる。
【0010】
また、特許文献1の方法は、形状情報を磁化情報として磁気転写記録する方法であるので、磁気ヘッドでは記録し得ない様々なパターンを記録することができる。すなわち磁気ヘッドを用いては、その磁気ヘッド固有の記録トラック幅とは異なるトラック幅を有する信号を記録することはできず、またその磁気ヘッドの記録ギャップや再生ギャップに対して傾斜した方向に磁化遷移領域を有するような磁化パターンを記録することもできない。他方、特許文献1の方法では、強磁性材料からなる形状パターンを自由に設計できるので、磁気ヘッドでは記録し得ない磁化パターンであっても、容易に記録することができる。
【0011】
一方、これまでの方法、例えば非特許文献2に記載されているような方法においては、専用のサーボ記録装置を用いて磁気ヘッドにより記録されるトラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅(一般的には、磁気ヘッドの磁極幅で決定される記録トラック幅)を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴ってトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化を検出してトラッキング制御を行うものであるのに対して、特許文献2の方法によれば、特許文献1の方法を用いることにより、磁気ディスクに記録される種々の信号の用途に応じて磁気ヘッドでは記録し得ない磁化パターンを記録し、各信号の目的性能を向上させることが可能である。例えば、磁気ヘッドの再生ギャップに対して傾斜した方向に磁化遷移領域を有するトラッキング用サーボ信号パターンを用いることにより、磁気ディスクの半径方向変位に伴う信号の位相変化を検出してトラッキングを行うことが可能となる。上記の位相検出による方法は、従来の振幅検出を用いた方法に比べて外乱ノイズの影響を受け難く、よりトラッキング性能を向上することが可能である。
【特許文献1】特開平10−40544号公報
【特許文献2】特開平11−144218号公報
【非特許文献1】山口:磁気ディスク装置の高精度サーボ技術、日本応用磁気学会誌、Vol.20、No.3、pp771(1996)
【非特許文献2】植松、他:メカ・サーボ、HDI技術の現状と展望、日本応用磁気学会第93回研究会資料、93−5、pp35(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、近年、トラックピッチが0.25μmを下回る高密度領域に至っては、非特許文献2に記載された従来方法や特許文献1に提案された磁気転写方法により記録した振幅検出によるトラッキング用サーボ信号、さらには特許文献2に提案された磁気転写記録方法により記録した位相検出によるトラッキング用サーボ信号の性能をもってしても、磁気ヘッドの位置検出精度が限界に達しつつあり、十分なトラッキング性能が得られない場合があることが判かった。このことはすなわち、アクセス時間などハードディスクドライブの速度に関して、記憶容量の増加に見合った性能が得られない可能性があることを示唆している。
【0013】
上記の課題を解決するためには、トラッキング用サーボ信号の品質をさらに向上することが不可欠である。このため、非特許文献2に記載された従来のトラッキング用サーボ信号の記録方法や、特許文献1あるいは特許文献2に提案された磁気転写方法には開示されない、新規なトラッキング用サーボ信号およびその記録技術が要望されている。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、トラックピッチが0.25μmを下回るような高密度領域においても十分な磁気ヘッドの位置検出精度を得ることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる磁気記録再生装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本発明の磁気記録再生装置は、情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域は、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成されており、かつ磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴うトラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えた構成を有している。また、トラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁気ヘッドによるトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅の変化、およびトラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失の変化によるトラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えた構成を有していてもよい。
【0016】
これらの構成により、トラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴ってトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化と、トラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失による再生信号振幅の変化を生じ、これら両方の作用を利用して振幅検出によるトラッキング制御を行うことが可能となり、トラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化のみを検出してトラッキング制御を行う従来の方法を適用した磁気記録再生装置に比べて、トラッキング用サーボ信号のダイナミックレンジを大きくすることが可能となり、より信号品質に優れたトラッキング用サーボ信号が得られる磁気記録再生装置を実現することが可能になる。
【0017】
さらに、上述した目的を達成するために、本発明の磁気記録再生装置は、情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部は、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成され、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁化遷移領域間の位相変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えた構成を有している。また、本発明の磁気記録再生装置は、情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部は、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成され、トラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁気ヘッドによるトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅の変化、およびトラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失の変化によるトラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段と磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁化遷移領域間の位相変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えた構成を有している。また、トラッキング用サーボ信号の磁気ディスクの径方向における記録トラック幅は、ユーザデータトラックピッチの1/4以上、4倍以下である構成、また、磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域は、磁気ヘッドの再生ギャップに対して円弧状に湾曲しており、その曲率半径は、ユーザデータトラックピッチの1/8以上、4倍以下である構成、また、磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域は、磁気ヘッドの再生ギャップに対して再生ギャップの幅方向を長径または短径とする楕円弧状に湾曲しており、楕円の再生ギャップの幅方向における径は、ユーザデータトラックピッチの1/4以上、8倍以下であり、かつ楕円の再生ギャップの幅方向と垂直方向における径は、0.025μm以上、2.5μm以下である構成に加えて、磁気ディスクは、磁気記録再生装置本体に着脱可能な可換ディスクである構成を有することも可能である。
【0018】
これらの構成により、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁化遷移領域間の位相変化を検出してトラッキング制御を行う手段をさらに備えることができる。すなわち既述の再生信号振幅検出によるトラッキング制御と、位相検出によるトラッキング制御とを適宜併用または選択使用することにより、従来の方法を適用した磁気記録再生装置と比較しても、トラッキング性能をさらに向上させた磁気記録再生装置を実現することが可能になる。
【0019】
また、上述した目的を達成するために、本発明の磁気記録再生装置の製造方法は、情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンを有するマスター情報担体の表面に磁気ディスクを接触させることにより、情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置の製造方法であって、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域が、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成している。また、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部は、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成してもよい。
【0020】
これらの製造方法により、トラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴ってトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化と、トラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失による再生信号振幅の変化を生じ、これら両方の作用を利用して振幅検出によるトラッキング制御を行うことが可能となる。このため、トラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化のみを検出してトラッキング制御を行う従来の方法に比べて、トラッキング用サーボ信号のダイナミックレンジを大きくすることが可能となり、より信号品質に優れたトラッキング用サーボ信号を得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の構成によれば、トラックピッチが0.25μmを下回るような高密度領域においても十分な磁気ヘッドの位置検出精度を得ることができ、トラッキング性能に優れた磁気記録再生装置とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る情報信号の磁気転写記録方法について説明する。図1は、本発明の実施の形態における情報信号の磁気転写記録方法を実施するための記録装置の概要を示す断面図である。図1において、磁気ディスクであるハードディスク1は、中心孔1aを有するドーナツ円盤状のディスクである。ハードディスク1は、非磁性基板の表面にCo等を主成分とする強磁性薄膜をスパッタリング法によって成膜することにより構成されている。
【0024】
ハードディスク1の強磁性薄膜表面に接触するように、円盤状のマスター情報担体2が重ね合わされて配置されている。マスター情報担体2は、一般的にはハードディスク1より径が大きく、ハードディスク1に接触する側の表面に信号領域2aが設けられている。信号領域2aは、ハードディスク1に磁気転写記録すべき情報信号に対応した微細な配列パターン形状の強磁性薄膜で形成されている。
【0025】
ハードディスク1は、ディスク保持体3で保持されている。ディスク保持体3の先端部にはハードディスク1を位置決め保持するチャック部3aが設けられている。また、ディスク保持体3の内部には吸引孔3bが設けられており、吸引孔3bはハードディスク1の中心孔1aに連通し、かつ一端が排気ダクト4に接続されている。
【0026】
排気ダクト4の端部には排気装置5が装着されており、この排気装置5を始動させることにより、排気ダクト4、ディスク保持体3の吸引孔3bを通して、ハードディスク1とマスター情報担体2との間の空間が負圧状態となる。このことにより、マスター情報担体2がハードディスク1側に吸引され、マスター情報担体2にハードディスク1が位置決めされた状態で重ね合わされることになる。
【0027】
なお、このとき、マスター情報担体2の表面には信号領域2aを除く領域において若干の隙間溝を形成し、その隙間溝を通して、ハードディスク1とマスター情報担体2の間の空気を吸引することもできる。
【0028】
着磁用ヘッド6は、マスター情報担体2からハードディスク1に転写記録する際に必要な外部磁界を印加するためのものである。着磁用ヘッド6から印加される磁界により、マスター情報担体2に形成された情報信号に対応した強磁性薄膜パターンが磁化され、これらから発生する漏れ磁束によってハードディスク1に強磁性薄膜パターン形状に対応した情報信号が記録される。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態における着磁用ヘッドの構成の例を示す斜視図である。図2に示した着磁用ヘッド6は、巻線6aを具備した強磁性材料で形成された磁気コア半体6bと、同じく強磁性材料で形成された磁気コア半体6cとを対向させて、ギャップ6dを備えた環状の磁気回路を形成したものである。
【0030】
巻線6aに励磁電流を流すことによって、ギャップ6dには、矢印Aで示すように磁気コア半体6cから磁気コア半体6bに向かう漏れ磁束が発生する。また、印加する電流の向きを変えることにより、ギャップ6dに発生する漏れ磁束の向きを変えることができる。矢印Bは、図2に示す向きの漏れ磁束が発生しているときに、磁気コア半体6b、6cに発生する内部磁束の向きを示している。
【0031】
なお、着磁用ヘッドとしては図2に示した電磁石型の他に、例えば永久磁石の両側に強磁性材料で形成された磁気コア半体を対向配置させて、ギャップを備えた環状の磁気回路を形成した構成のものを用いることもできる。
【0032】
図3は、図2に示した着磁用ヘッド6のギャップ6dの形状を示す平面図である。ギャップ6dは、マスター情報担体2に対向する面において、ハードディスクドライブに搭載される記録再生用磁気ヘッドが磁気ディスク表面をトラッキング走査する際の軌道と同じ円弧状になっている。
【0033】
したがって、ギャップ6dに発生する磁界の方向は、トラッキング走査軌道と常に垂直となり、マスター情報担体2の強磁性薄膜は、全てのトラックにおいて、記録再生用磁気ヘッドのトラッキング走査方向と垂直な方向に磁化される。すなわち、記録再生用磁気ヘッドのヘッドギャップ長方向と同じ方向に磁化されるのである。
【0034】
次に、マスター情報担体2の構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態におけるマスター情報担体の構成の例を模式的に示す平面図である。図4に示すように、マスター情報担体2の一主面、すなわちハードディスク1の強磁性薄膜表面に接触する側の表面には、略放射状に信号領域2aが形成されている。図5に示したのは、一般的なマスター情報担体2に形成される情報信号の配列パターンの構成例を模式的示す平面図であり、図4における信号領域2aのC部の拡大図になっている。図5において、図の横方向がハードディスクの径方向、縦方向がハードディスクの周方向に対応している。
【0035】
一般的にマスター情報担体2の表面には、情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンが形成されており、図5においてハッチングで示した部分が、強磁性材料よりなる磁性部2bである。マスター情報担体上の磁性部2bで構成された形状パターンの形状は、ハードディスク1に記録される情報信号に対応しており、ハードディスクと重なり合った状態において、形状パターンの位置は、ハードディスク上の情報信号が記録される位置に対応している。図5の構成例では、情報信号に対応する形状パターンは、トラッキング用サーボ信号7、アドレス情報信号8、クロック信号9等の各信号領域を、磁気ヘッドの相対移動方向すなわちトラック長さ方向に順次配列したものである。なお参考のため、ユーザデータが記録されるデータ領域10のトラックを破線で示している。
【0036】
図6は本発明の実施の形態におけるマスター情報担体の構成の例を示す断面図であり、図4に示したマスター情報担体2の強磁性薄膜の形成領域のヘッド移動方向すなわち情報信号のトラック長さ方向における一部を切断して示している。図6において、マスター情報担体2は、基体11の主面11bに形成された複数の凹部11aに、磁性部2bを形成する強磁性薄膜12が埋め込まれている。基体11は、Si基板、ガラス基板、プラスチック基板などの非磁性材料で形成された円盤状の基体である。主面11bは、ハードディスク1の表面が接触する側の表面である。また、凹部11aは、情報信号に対応する微細な配列パターン形状で形成されている。
【0037】
ここで、図1に示した記録装置を用いてハードディスク1とマスター情報担体2とを均一に密着させ良好な記録特性を得るためには、強磁性薄膜12の表面12aができる限り平坦で、かつ基体11の主面11bに対して、少し突出した構成とすることが好ましい。例えば、強磁性薄膜12の基体11の主面11bに対する突出量は、マスター情報担体2の耐久性の観点から、5nmから100nmの範囲とすることが好ましい。
【0038】
強磁性薄膜12としては、硬質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料のみならず、多くの種類の磁性材料を用いることができる。この場合、より良好な信号品質を得るには、比較的透磁率が大きい軟質磁性薄膜または半硬質磁性薄膜を用い、磁気転写記録時には外部磁界によってこれを励磁して一様に磁化することが好ましい。例えば、Fe、Co、Ni−Fe合金、Fe−Co合金などを用いることができる。
【0039】
なお、マスター情報信号が記録される磁気ディスクの種類によらずに十分な記録磁界を発生させるためには、強磁性薄膜12を構成する磁性材料の飽和磁束密度が大きいほどよい。特に、2000エルステッド(159kA/m)を超える高保磁力の磁気ディスクや磁性層の厚みの大きいフレキシブルディスクに対しては、飽和磁束密度が0.8テスラ以下になると十分な記録を行うことができない場合がある。このため、一般的には、0.8テスラ以上、好ましくは1.0テスラ以上の飽和磁束密度を有する磁性材料が用いられる。
【0040】
また、強磁性薄膜12の厚さは、記録される情報信号の磁化反転長や磁気ディスク磁性層の飽和磁化、保磁力、膜厚によるが、例えば磁化反転長約1μm、磁気ディスク磁性層の飽和磁化が500emu/cc(500kA/m)、保磁力が3000エルステッド(239kA/m)、厚さが20nm程度の場合では、50nm〜500nm程度であればよい。
【0041】
さらに、このような磁気転写記録方法において、良好な記録信号品質を得るためには、マスター情報担体を用いた磁気転写記録に先立って、ハードディスクなどの磁気ディスクを周方向に一様に直流消去しておくことが望ましい。
【0042】
ここで、ハードディスクに記録する手順の説明に先立ち直流消去について説明する。図7は、本発明の実施の形態におけるハードディスクの直流消去の工程の原理を模式的に示す斜視図である。図8は、図7の工程で直流消去されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図である。図7に示した工程においては、着磁用ヘッド6をハードディスク1に近づけた状態で、ハードディスク1の中心軸を回転軸としてハードディスクと平行に回転させる。このことにより、図8中に矢印で示したように、ハードディスクは予め一方向に磁化(すなわち、直流消去)されることになる。
【0043】
次に、マスター情報担体2に形成した形状パターンに対応した情報信号をハードディスクに記録する手順について説明する。図1に示したように、ハードディスク1にマスター情報担体2を位置決めして重ね合わせた状態で、排気装置5を始動させる。このことにより、ハードディスク1の中心孔1aを通してマスター情報担体2が吸引され、マスター情報担体2の強磁性薄膜12が形成されている面とハードディスク1とが均一に密着するように重ね合わされる。
【0044】
図9は、本発明の実施の形態におけるハードディスクに情報信号を磁気転写記録している状態を示す斜視図である。着磁用ヘッド6により印加される磁界は、初期磁化とは逆極性となるようにしている。この状態で着磁用ヘッド6を、ディスク保持体3に保持されているハードディスク1の中心を回転中心として、マスター情報担体2と平行に回転させる。この回転を続けながら、マスター情報担体2に直流励磁磁界を印加する。このことにより、マスター情報担体2の強磁性薄膜12が磁化され、マスター情報担体2に重ね合わせたハードディスク1の所定の情報信号記録領域1bに、強磁性薄膜12による磁性部のパターン形状に対応した情報信号が記録される。図10は、図9に示した工程により情報信号が記録されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図である。図10に示した矢印は、ハードディスク1の情報信号記録領域1bの外において残留する磁化の方向を示している。
【0045】
図11は、図9に示す工程によりハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化の状態の詳細を模式的に説明するための断面図である。図11に示したように、マスター情報担体2をハードディスク1に密着させた状態で、マスター情報担体2に外部から磁界を印加して強磁性薄膜12を磁化する。このことにより、ハードディスク1の強磁性薄膜からなる磁気記録層1cに情報信号が記録されることになる。
【0046】
すなわち、非磁性の基体11に所定のパターン形状で強磁性薄膜12を形成して構成したマスター情報担体2を用いることにより、ディジタル情報信号を磁気記録媒体であるハードディスク1に磁気的に転写記録することができる。
【0047】
図12は本発明の実施の形態においてハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化状態の変化を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図7から図10に示した磁気転写記録の一連の過程について、図11と同様の模式的な断面図を用いて、再度、詳しく説明している。図12(a)はハードディスク1の直流消去過程を示し、図12(b)はマスター情報担体2を用いた情報信号の磁気転写記録過程を示し、図12(c)は情報信号の磁気転写記録後のハードディスク1の残留磁化状態を示している。各過程を示す図はそれぞれ、ヘッド移動方向すなわち情報信号のトラック長さ方向における断面が示されている。磁気記録媒体がハードディスクである場合、情報信号のトラック長さ方向は、ディスク円周方向に一致する。
【0048】
図12(a)に示したように、ハードディスク上の磁気記録層1cはマスター情報担体を用いた情報信号の磁気転写記録に先立って直流消去磁界13により、一定方向の直流消去磁化14を有するよう一様に直流消去される。次に、図12(b)に示したように、情報信号に対応する配列パターン形状で強磁性薄膜12が形成されたマスター情報担体2の表面をハードディスク上の磁気記録層1cの表面に密着させ、直流励磁磁界15によって強磁性薄膜12を励磁する。この際、直流励磁磁界15の極性は、直流消去磁界13とは逆極性とする。これにより、隣接する強磁性薄膜12間の部分においてのみ、漏れ磁束16によりハードディスク1上の磁化14が反転される。この結果、マスター情報担体2を取り除いた後、ハードディスク1上には、マスター情報担体2上に形成された強磁性薄膜12の配列パターン形状に対応する磁化14のパターンを記録することができる。
【0049】
さて、以上のような手順によってサーボトラック領域に信号が記録されたハードディスク1は、ハードディスクドライブの筐体内に搭載され、予めトラッキング制御可能な信号を備えた磁気記録媒体として、そのまま使用される。上述した構成に加えて、必要に応じて磁気ヘッドを用いて新たにサーボ信号などの情報信号を追記する構成としてももちろんよい。
【0050】
引き続き、記録されたトラッキング用サーボ信号を用いて、ハードディスクドライブ内において磁気ヘッドのトラッキング制御を行う方法について、図5に示した一般的なマスター情報担体に形成される情報信号の配列パターンの例を今一度参照して、以下に説明する。
【0051】
図5は、マスター情報担体の表面に形成される磁性部2bの形状パターンの構成例を示した平面図であるが、既述の手順によって磁化情報としてハードディスクに記録される情報信号パターンは、磁性部2bの形状パターンに対応するものである。したがって図5は、マスター情報担体の表面の形状パターンを示すものであると同時に、ハードディスクに情報信号として記録される磁化ビットパターンを示すものと理解して差し支えない。図5は、図の横方向がハードディスクの径方向、縦方向がハードディスクの周方向に対応しているが、ハッチング部分とその他の部分とで周方向において逆極性の磁化が残留するよう信号が記録されており、その境界が磁化遷移領域である。ハードディスクドライブに搭載され、情報信号を再生する磁気ヘッドの再生ギャップは、磁化ビットパターンの磁化遷移領域に平行となるように構成される。すなわち図5に示す領域では、再生ギャップの幅方向は、記録トラック幅方向(図5の横方向)に一致する。
【0052】
図5に示す情報信号パターンのうち、トラッキング用サーボ信号7は、記録トラック幅Twを有し、ハードディスクの径方向に互いにシフトして位置する4種類のバースト信号7a、7b、7c、7dにより構成されている。バースト信号7a、7bは、1データトラックピッチTpおきにデータトラックの延長上に配置されており、7a、7bは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。またバースト信号7c、7dは、1データトラックピッチおきにデータトラックの延長上から半データトラックピッチずつずれて隣接データトラック間に配置されており、7c、7dは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。
【0053】
上記のような情報信号パターンを磁気ヘッドを用いて再生すると、磁気ヘッドのディスク半径方向変位に応じた再生トラック幅損失Lwを生じ、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの再生出力振幅が各々異なってくる。つまり磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う7a、7b、7c、7dの再生出力振幅変化を検出することによって、あるデータトラック中心からの磁気ヘッドの変位、すなわち位置ずれを検出することができるのである。
【0054】
簡単のため、磁気ヘッドの再生エレメントの幅がトラッキング用サーボ信号の記録トラック幅Twと同じであるとすると、データトラック中心を移動する磁気ヘッドはトラッキング用サーボ信号7aまたは7bのいずれかをフルトラック幅Twで再生することができる。一方、磁気ヘッドの位置が記録トラック幅中心からずれて再生トラック幅がWとなった場合、下記の(式1)で表される再生トラック幅損失Lwを生じ、Lw分だけ再生出力振幅が低下する。このとき、磁気ヘッドの位置は、記録トラック幅中心から(Tw−W)だけ変位していることになる。
【0055】
【数1】
【0056】
例えば、あるデータトラック中心を移動する磁気ヘッドはトラッキング用サーボ信号7aをフルトラック幅の1Tw再生した後、7bを0Tw、7cを0.5Tw、7dを0.5Twの再生トラック幅で再生し、7a、7b、7c、7dの再生出力振幅比は、1:0:0.5:0.5となる。一方、磁気ヘッドの位置が記録トラック幅中心からずれると、(式1)で表される再生トラック幅損失Lwを生じ、7a、7b、7c、7dの再生出力振幅比が変化する。具体的には、7aと7bの再生出力振幅、および7cと7dの再生出力振幅を比較することで、(式1)からデータトラック中心からの磁気ヘッドの変位(Tw−W)を求めることができるのである。図5を参照して以上に述べたような再生トラック幅損失を利用した再生出力振幅検出によるトラッキング制御は、背景技術の説明で述べた特許文献1に示された方法に限らず、非特許文献1および非特許文献2として例を挙げたこれまでの方法においても一般的に用いられている方法である。
【0057】
しかしながら既に解決すべき課題において述べたように、近年では、トラックピッチが0.25μmを下回る高密度領域に至り、このような再生出力振幅検出によるトラッキング用サーボ信号の性能をもってしては、磁気ヘッドの位置検出精度が限界に達しつつあり、十分なトラッキング性能が得られない場合があることが判かってきた。
【0058】
このために、本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体は、一構成例として、情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンが図13に示すような構成で形成されている。
【0059】
図13は、本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体表面に形成される情報信号の配列パターンの構成の例を模式的に示す平面図であるが、既述の手順によって磁化情報としてハードディスクに記録される情報信号パターンは、磁性部2bの形状パターンに対応するものである。したがって図13は、マスター情報担体の表面の形状パターンを示すものであると同時に、ハードディスクに情報信号として記録される磁化ビットパターンを示すものと理解して差し支えない。図13は、図の横方向がハードディスクの径方向、縦方向がハードディスクの周方向に対応しているが、ハッチング部分とその他の部分とで周方向において逆極性の磁化が残留するよう信号が記録されており、その境界が磁化遷移領域である。ハードディスクドライブに搭載され、情報信号を再生する磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向は、図13に示す領域では、記録トラック幅方向、すなわち図13の横方向に一致するよう構成される。
【0060】
図13に示す情報信号パターンおいて、図5と同様に、トラッキング用サーボ信号7は、記録トラック幅Twを有し、ハードディスクの径方向に互いにシフトして位置する4種類のバースト信号7a、7b、7c、7dにより構成されている。バースト信号7a、7bは、1データトラックピッチTpおきにデータトラックの延長上に配置されており、7a、7bは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。またバースト信号7c、7dは、1データトラックピッチおきにデータトラックの延長上から半データトラックピッチずつずれて隣接データトラック間に配置されており、7c、7dは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。
【0061】
一方、一般的なマスター情報担体に形成される情報信号の配列パターンの例を示す図5の構成と異なる点は、バースト信号7a、7b、7c、7dにおけるビット間の磁化遷移領域が、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成されている点である。すなわち、各バースト信号のトラック幅方向中心においては、磁化遷移領域は再生ギャップに平行であって、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θは0度である。一方、トラック幅方向中心からの変位に伴って、磁化遷移領域が湾曲し、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θが大きくなるよう構成されている。
【0062】
上記のような情報信号パターンを磁気ヘッドを用いて再生すると、先に述べた再生トラック幅損失Lwとともに、磁気ヘッドのディスク半径方向変位に応じた再生アジマス損失Lθを生じ、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの再生出力振幅が各々異なってくる。つまり磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う7a、7b、7c、7dの再生出力振幅変化を検出することによって、あるデータトラック中心からの磁気ヘッドの変位、すなわち位置ずれを検出することができるのである。
【0063】
磁気ヘッドによる再生トラック幅をW、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θ、再生信号波長をλとすると、再生アジマス損失Lθは、下記の(式2)で表される。図13の構成では磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θがトラック幅方向中心からの変位に伴って大きくなるよう構成されているので、実際のLθは、微小トラック幅領域ΔWにおける再生アジマス損失をトラック幅Wに渡って積分することにより得られることになる。
【0064】
【数2】
【0065】
この際、磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う再生出力振幅変化は、再生トラック幅損失Lwおよび再生アジマス損失Lθの両方に起因して生じるので、図5に示した再生トラック幅損失Lwにのみ起因する構成に比べて、トラッキング用サーボ信号のダイナミックレンジを大きくすることが可能となり、より信号品質に優れたトラッキング用サーボ信号を得ることができる。その結果、トラックピッチが0.25μmを下回る高密度領域においても、必要な磁気ヘッドの位置検出精度を実現することが可能となり、十分なトラッキング性能を得ることができる。
【0066】
ところで、一般にハードディスク装置に搭載される磁気ヘッドは、その磁気ヘッド固有の記録トラック幅に渡って平行記録ギャップを有しているので、このような湾曲した磁化遷移領域を有するサーボ信号パターンを記録することができない。すなわち、図13の構成は、マスター情報担体を用いた磁気転写記録であるからこそ、実現可能なものである。また図13においては、このような磁気ヘッドでは記録できない信号パターンをも記録可能であるという磁気転写記録の特徴を活かして、クロック信号9およびアドレス情報信号8部分において記録トラック間にガードバンドを設けず、磁化遷移領域がハードディスクの径方向に複数の記録トラックを連続的に横断する構成を採用している。このように、ガードバンドを設けず磁化遷移領域が複数の記録トラックを連続的に横断する信号も、有限長の記録トラック幅を有する磁気ヘッドでは記録することができないものである。
【0067】
なお、図13に示す情報信号パターンは一例を示したものであり、磁気ディスクに記録される情報信号の構成、目的、用途に応じて、マスターディスク上の形状情報パターンの構成や配置等を適宜変更することが可能である。
【0068】
例えば、図13の構成では、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの記録トラック幅TwをほぼデータトラックピッチTpと等しく構成し、各々1データトラックピッチおきに配する構成としたが、本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置におけるマスター情報担体の構成は上記に限られるものではない。本発明者らの実験検討によれば、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの記録トラック幅TwをユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、4倍以下の範囲に設定した場合にも、上述したような効果が十分に得られる。この場合、記録トラック幅Twに対応して、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dをユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、4倍以下の間隔で配置してもよい。
【0069】
また磁化遷移領域の湾曲形状は、円弧形状でも楕円弧形状でもよいし、その他類似の曲線形状でもよい。本発明者らの実験検討によれば、磁化遷移領域が円弧形状の場合には、その曲率がユーザデータトラックピッチの1/8以上、4倍以下の範囲で上述したような効果が十分に得られた。一方、磁化遷移領域が、磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向を長径または短径とする楕円弧状に湾曲している場合には、楕円の再生ギャップの幅方向における径がユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、8倍以下の範囲、かつ楕円の再生ギャップの幅方向と垂直方向における径が0.025μm以上、2.5μm以下の範囲で効果が十分に得られた。
【0070】
(実施の形態2)
続いて、本発明の別の実施の形態2の磁気記録再生装置におけるマスター情報担体について説明する。本発明の実施の形態2において、図1〜図4、および図6〜図12に関わる構成は、実施の形態1の例と同じであるので、重複を避けるため、ここでは説明を省略し、マスター情報担体上の情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンに関わる特徴について述べる。本発明の実施の形態2におけるマスター情報担体は、一構成例として、情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンが図14に示すような構成で形成されている。
【0071】
図14は、本発明の実施の形態2におけるマスター情報担体の表面に形成される情報信号の配列パターンの構成の例を模式的に示す平面図であるが、既述の手順によって磁化情報としてハードディスクに記録される情報信号パターンは、磁性部2bの形状パターンに対応するものである。したがって図14は、マスター情報担体表面の形状パターンを示すものであると同時に、ハードディスクに情報信号として記録される磁化ビットパターンを示すものと理解して差し支えない。図14は、図の横方向がハードディスクの径方向、縦方向がハードディスクの周方向に対応しているが、ハッチング部分とその他の部分とで周方向において逆極性の磁化が残留するよう信号が記録されており、その境界が磁化遷移領域である。ハードディスクドライブに搭載され、情報信号を再生する磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向は、図14に示す領域では、記録トラック幅方向、すなわち図14の横方向に一致するよう構成される。
【0072】
図14に示す情報信号パターンおいて、図5および図13と同様に、トラッキング用サーボ信号7は、記録トラック幅Twを有し、ハードディスクの径方向に互いにシフトして位置する4種類のバースト信号7a、7b、7c、7dにより構成されている。バースト信号7a、7bは、1データトラックピッチTpおきにデータトラックの延長上に配置されており、7a、7bは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。またバースト信号7c、7dは、1データトラックピッチおきにデータトラックの延長上から半データトラックピッチずつずれて隣接データトラック間に配置されており、7c、7dは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。
【0073】
図14の構成が図5の構成と異なる点は、バースト信号7a、7b、7c、7dにおけるビット間の磁化遷移領域が、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成されているという点である。すなわち、各バースト信号のトラック幅方向中心においては、磁化遷移領域は、再生ギャップに平行であって、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θは0度である。一方、トラック幅方向中心からの変位に伴って、磁化遷移領域が湾曲し、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θが大きくなるよう構成されている。
【0074】
上記のような情報信号パターンを磁気ヘッドにより再生すると、図13の構成と同様に、再生トラック幅損失Lwとともに磁気ヘッドのディスク半径方向変位に応じた再生アジマス損失Lθを生じ、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの再生出力振幅が各々異なってくる。つまり磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う7a、7b、7c、7dの再生出力振幅変化を検出することによって、あるデータトラック中心からの磁気ヘッドの変位、すなわち位置ずれを検出することができるのである。
【0075】
したがって図14の構成においても、図13の構成と同様に、磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う再生出力振幅変化は、再生トラック幅損失Lwおよび再生アジマス損失Lθの両方に起因して生じるので、図5に示した再生トラック幅損失Lwにのみ起因する構成に比べて、トラッキング用サーボ信号のダイナミックレンジを大きくすることが可能となり、より信号品質に優れたトラッキング用サーボ信号を得ることができる。
【0076】
さらに、図14の構成は図13の構成とも異なる構成を有している。それは図14の構成では、バースト信号7a、7b、7c、7dにおける磁化ビットパターンを、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成しているという点である。このような構成を採用することにより、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位するのに伴って、再生ギャップに対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域間の位相、あるいは複数配置された磁化遷移領域に対して相互間の位相が変化する。このため図14の構成においては、磁気ディスク径方向変位に伴う磁化遷移領域間の位相変化を検出してトラッキング制御を行う手段をさらに備えることができる。すなわち図13の構成と同様にダイナミックレンジの大きな再生信号振幅検出によるトラッキング制御と、上記した磁化遷移領域間の位相検出によるトラッキング制御とを適宜併用または選択使用することにより、図13の構成や特許文献2の方法と比較しても、トラッキング性能をさらに向上することが可能となる。したがって図14の構成においても、トラックピッチが0.25μmを下回る高密度領域において必要な磁気ヘッドの位置検出精度を実現することが可能となり、十分なトラッキング性能を得ることができる。
【0077】
図14の構成も、図13の構成と同様に、一般にハードディスク装置に搭載される磁気ヘッドを用いては記録することができず、マスター情報担体を用いた磁気転写記録であるからこそ、実現可能なものである。また図14においても図13の構成と同様に、このような磁気ヘッドでは記録できない信号パターンをも記録可能であるという磁気転写記録の特徴を活かして、クロック信号9およびアドレス情報信号8部分において記録トラック間にガードバンドを設けず、磁化遷移領域がハードディスクの径方向に複数の記録トラックを連続的に横断する構成を採用している。このように、ガードバンドを設けず磁化遷移領域が複数の記録トラックを連続的に横断する信号も、有限長の記録トラック幅を有する磁気ヘッドでは記録することができないものである。
【0078】
なお、図14に示す情報信号パターンは一例を示したものであり、磁気ディスクに記録される情報信号の構成、目的、用途に応じて、マスターディスク上の形状情報パターンの構成や配置等を適宜変更することが可能である。
【0079】
例えば、図14の構成では、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの記録トラック幅TwをほぼデータトラックピッチTpと等しく構成し、各々1データトラックピッチおきに配する構成としたが、本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置におけるマスター情報担体の構成は上記に限られるものではない。本発明者らの実験検討によれば、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの記録トラック幅TwをユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、4倍以下の範囲に設定した場合にも、上述したような効果が十分に得られる。この場合、記録トラック幅Twに対応して、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dをユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、4倍以下の間隔で配置してもよい。
【0080】
また磁化遷移領域の湾曲形状は、円弧形状でも楕円弧形状でもよいし、その他類似の曲線形状でもよい。本発明者らの実験検討によれば、磁化遷移領域が円弧形状の場合には、その曲率がユーザデータトラックピッチの1/8以上、4倍以下の範囲で上述したような効果が十分に得られた。一方、磁化遷移領域が、磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向を長径または短径とする楕円弧状に湾曲している場合には、楕円の再生ギャップの幅方向における径がユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、8倍以下の範囲、かつ楕円の再生ギャップの幅方向と垂直方向における径が0.025μm以上、2.5μm以下の範囲で効果が十分に得られた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、磁気ヘッドの位置検出精度を向上し、高トラック密度領域においても十分なトラッキング性能を得ることができるので、ハードディスクドライブの高密度化、小型大容量化に有用である。また、ハードディスクドライブに限らず、大容量フロッピー(登録商標)ディスクドライブ等、磁気ディスクが磁気記録再生装置本体に着脱可能な可換性磁気ディスクドライブの用途にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態における情報信号の磁気転写記録方法を実施するための記録装置の概要を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態における着磁用ヘッドの構成の例を示す斜視図
【図3】図2に示した着磁用ヘッドのギャップの形状を示す平面図
【図4】本発明の実施の形態におけるマスター情報担体の構成の例を模式的に示す平面図
【図5】一般的なマスター情報担体に形成される情報信号の配列パターンの構成例を模式的に示す平面図
【図6】本発明の実施の形態におけるマスター情報担体の構成の例を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態におけるハードディスクの直流消去の工程の原理を模式的に示す斜視図
【図8】図7の工程で直流消去されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図
【図9】本発明の実施の形態におけるハードディスクに情報信号を磁気転写記録している状態を示す斜視図
【図10】図9に示す工程により情報信号が記録されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図
【図11】図9に示す工程によりハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化の状態の詳細を模式的に説明するための断面図
【図12】本発明の実施の形態においてハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化状態の変化を模式的に説明するための断面図
【図13】本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体の表面に形成される情報信号の配列パターンの構成の例を模式的に示す平面図
【図14】本発明の実施の形態2におけるマスター情報担体の表面に形成される情報信号の配列パターンの構成の例を模式的に示す平面図
【符号の説明】
【0083】
1 ハードディスク
1a 中心孔
1b 情報信号記録領域
1c 磁気記録層
2 マスター情報担体
2a 信号領域
2b 磁性部
7 トラッキング用サーボ信号
7a,7b,7c,7d バースト信号
8 アドレス情報信号
9 クロック信号
10 データ領域
11 基体
11a 基体の凹部
11b 基体の主面
12 強磁性薄膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスター情報担体を用いて予め所定の情報信号を記録した磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録再生装置は、小型でかつ大容量を実現するために、高記録密度化の傾向にある。代表的な磁気記憶装置であるハードディスクドライブの分野においては、既に面記録密度100Gbit/in2(155Mbit/mm2)を超える装置が商品化されており、数年後には、面記録密度が200Gbit/in2(310Mbit/mm2)の実用化が議論されるほどの急激な技術進歩が認められる。
【0003】
このような高記録密度化を可能とした技術的背景としては、媒体性能、ヘッド・ディスクインターフェース性能の向上やパーシャルレスポンス等の新規な信号処理方式の出現による線記録密度の向上も大きな要因である。しかしながら昨今では、トラック密度の増加傾向が線記録密度の増加傾向を大きく上回り、面記録密度向上のための主たる要因となっている。これは、従来の誘導型磁気ヘッドに比べてはるかに再生出力性能に優れた巨大磁気抵抗効果型ヘッド(GMRヘッド)の実用化による寄与に基づく。現在、GMRヘッドの実用化により、0.5μm以下のトラック幅信号のS/N比を良好に再生することが可能となっている。今後さらなるヘッド性能の向上にともない、トラックピッチはさらに小さくなるものと予想されている。
【0004】
さて、ヘッドがこのような狭トラックを正確に走査し、信号のS/N比を良好に再生するためには、ヘッドのサーボトラッキング技術が重要な役割を果たしている。サーボトラッキングを行うため、現在のハードディスクドライブでは、ディスクの1周、すなわち角度にして360度中において、一定の角度間隔でトラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等が記録された領域(以下、「サーボトラック領域」という)を設け、磁気ヘッドは、一定間隔でこれらサーボトラック領域の信号を再生することにより、ヘッドの位置を確認、修正しながら正確にトラック上を走査することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
上記のトラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等は、ヘッドが正確にトラック上を走査するための基準信号となるものであるため、その記録時には、正確な位置決め精度が要求される。それで、現在のハードディスクドライブでは、ディスクをドライブに組み込んだ後、専用のサーボ記録装置を用いて厳密に位置制御された磁気ヘッドにより上記トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等の信号記録が行われている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
ここで、専用のサーボ記録装置を用いた磁気ヘッドによる記録方法においては、磁気ヘッドによる記録は、ヘッドと媒体との相対移動に基づく線記録である。このため、専用のサーボ記録装置を用いて磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら磁気ディスクの全面に亘って信号記録を行う方法では、非常に多くの時間を要するのに加えて、ハードディスクドライブの生産台数に応じて、非常に高価な設備である専用のサーボ記録装置を必要台数準備しなければならない。さらにサーボ記録装置を用いた信号記録はドライブ筐体を開放してクリーンルーム内で行う必要があり、多くのサーボ記録装置を設置するためには、クリーンルーム設置の設備投資も大きくなり、大幅なコスト高になる原因となっていた。このような大幅な製造コストの上昇を避けるために、マスター情報担体を用いた方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1においては、マスター情報担体は、基体の表面に、情報信号に対応するパターン形状で強磁性材料からなる磁性部を形成したものである。特許文献1に提案されている方法は、このマスター情報担体の表面を、強磁性薄膜、または強磁性粉塗布層が形成されたシート状またはディスク状磁気記録媒体の表面に接触させる。そして、所定の外部磁界を印加することにより、マスター情報担体に形成した情報信号に対応するパターン形状の磁化パターンを磁気記録媒体に磁気転写記録している。
【0008】
この方法においては、一方向に磁化されたマスター情報担体表面の強磁性薄膜から発生する記録磁界により、磁気記録媒体にはマスター情報担体の強磁性薄膜パターンに対応した磁化パターンが磁気転写記録されることになる。すなわち、マスター情報担体表面に、トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等に対応する強磁性薄膜パターンをフォトリソグラフィ技術などによって形成することにより、磁気記録媒体上にはこれらサーボトラック領域における信号を磁化情報として記録することができる。
【0009】
これまでの専用のサーボ記録装置を用いて、磁気ヘッドにより記録する方法は、ヘッドと媒体との相対移動に基づく動的線記録であるのに対し、特許文献1に記載された方法による記録はマスター情報担体と媒体との相対移動を伴わない静的な面記録である。したがって、一括面記録であるため、サーボトラック領域の信号記録に要する時間は、従来の磁気ヘッドによる記録方法に比べて、非常に短い。また、磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら記録を行うための高価なサーボ記録装置が不要であり、これを設置するための広大なクリーンルームも不要である。このため、信号記録における生産性が大幅に向上するとともに、生産コストも低減するという極めて有効な効果を発揮することができる。
【0010】
また、特許文献1の方法は、形状情報を磁化情報として磁気転写記録する方法であるので、磁気ヘッドでは記録し得ない様々なパターンを記録することができる。すなわち磁気ヘッドを用いては、その磁気ヘッド固有の記録トラック幅とは異なるトラック幅を有する信号を記録することはできず、またその磁気ヘッドの記録ギャップや再生ギャップに対して傾斜した方向に磁化遷移領域を有するような磁化パターンを記録することもできない。他方、特許文献1の方法では、強磁性材料からなる形状パターンを自由に設計できるので、磁気ヘッドでは記録し得ない磁化パターンであっても、容易に記録することができる。
【0011】
一方、これまでの方法、例えば非特許文献2に記載されているような方法においては、専用のサーボ記録装置を用いて磁気ヘッドにより記録されるトラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅(一般的には、磁気ヘッドの磁極幅で決定される記録トラック幅)を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴ってトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化を検出してトラッキング制御を行うものであるのに対して、特許文献2の方法によれば、特許文献1の方法を用いることにより、磁気ディスクに記録される種々の信号の用途に応じて磁気ヘッドでは記録し得ない磁化パターンを記録し、各信号の目的性能を向上させることが可能である。例えば、磁気ヘッドの再生ギャップに対して傾斜した方向に磁化遷移領域を有するトラッキング用サーボ信号パターンを用いることにより、磁気ディスクの半径方向変位に伴う信号の位相変化を検出してトラッキングを行うことが可能となる。上記の位相検出による方法は、従来の振幅検出を用いた方法に比べて外乱ノイズの影響を受け難く、よりトラッキング性能を向上することが可能である。
【特許文献1】特開平10−40544号公報
【特許文献2】特開平11−144218号公報
【非特許文献1】山口:磁気ディスク装置の高精度サーボ技術、日本応用磁気学会誌、Vol.20、No.3、pp771(1996)
【非特許文献2】植松、他:メカ・サーボ、HDI技術の現状と展望、日本応用磁気学会第93回研究会資料、93−5、pp35(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、近年、トラックピッチが0.25μmを下回る高密度領域に至っては、非特許文献2に記載された従来方法や特許文献1に提案された磁気転写方法により記録した振幅検出によるトラッキング用サーボ信号、さらには特許文献2に提案された磁気転写記録方法により記録した位相検出によるトラッキング用サーボ信号の性能をもってしても、磁気ヘッドの位置検出精度が限界に達しつつあり、十分なトラッキング性能が得られない場合があることが判かった。このことはすなわち、アクセス時間などハードディスクドライブの速度に関して、記憶容量の増加に見合った性能が得られない可能性があることを示唆している。
【0013】
上記の課題を解決するためには、トラッキング用サーボ信号の品質をさらに向上することが不可欠である。このため、非特許文献2に記載された従来のトラッキング用サーボ信号の記録方法や、特許文献1あるいは特許文献2に提案された磁気転写方法には開示されない、新規なトラッキング用サーボ信号およびその記録技術が要望されている。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、トラックピッチが0.25μmを下回るような高密度領域においても十分な磁気ヘッドの位置検出精度を得ることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる磁気記録再生装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本発明の磁気記録再生装置は、情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域は、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成されており、かつ磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴うトラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えた構成を有している。また、トラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁気ヘッドによるトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅の変化、およびトラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失の変化によるトラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えた構成を有していてもよい。
【0016】
これらの構成により、トラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴ってトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化と、トラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失による再生信号振幅の変化を生じ、これら両方の作用を利用して振幅検出によるトラッキング制御を行うことが可能となり、トラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化のみを検出してトラッキング制御を行う従来の方法を適用した磁気記録再生装置に比べて、トラッキング用サーボ信号のダイナミックレンジを大きくすることが可能となり、より信号品質に優れたトラッキング用サーボ信号が得られる磁気記録再生装置を実現することが可能になる。
【0017】
さらに、上述した目的を達成するために、本発明の磁気記録再生装置は、情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部は、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成され、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁化遷移領域間の位相変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えた構成を有している。また、本発明の磁気記録再生装置は、情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部は、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成され、トラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁気ヘッドによるトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅の変化、およびトラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失の変化によるトラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段と磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁化遷移領域間の位相変化を検出して、磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えた構成を有している。また、トラッキング用サーボ信号の磁気ディスクの径方向における記録トラック幅は、ユーザデータトラックピッチの1/4以上、4倍以下である構成、また、磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域は、磁気ヘッドの再生ギャップに対して円弧状に湾曲しており、その曲率半径は、ユーザデータトラックピッチの1/8以上、4倍以下である構成、また、磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域は、磁気ヘッドの再生ギャップに対して再生ギャップの幅方向を長径または短径とする楕円弧状に湾曲しており、楕円の再生ギャップの幅方向における径は、ユーザデータトラックピッチの1/4以上、8倍以下であり、かつ楕円の再生ギャップの幅方向と垂直方向における径は、0.025μm以上、2.5μm以下である構成に加えて、磁気ディスクは、磁気記録再生装置本体に着脱可能な可換ディスクである構成を有することも可能である。
【0018】
これらの構成により、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴う磁化遷移領域間の位相変化を検出してトラッキング制御を行う手段をさらに備えることができる。すなわち既述の再生信号振幅検出によるトラッキング制御と、位相検出によるトラッキング制御とを適宜併用または選択使用することにより、従来の方法を適用した磁気記録再生装置と比較しても、トラッキング性能をさらに向上させた磁気記録再生装置を実現することが可能になる。
【0019】
また、上述した目的を達成するために、本発明の磁気記録再生装置の製造方法は、情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンを有するマスター情報担体の表面に磁気ディスクを接触させることにより、情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置の製造方法であって、予め記録された情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域が、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成している。また、トラッキング用サーボ信号に対応する磁化ビットパターンの少なくとも一部は、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成してもよい。
【0020】
これらの製造方法により、トラッキング用サーボ信号は、磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位することに伴ってトラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化と、トラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失による再生信号振幅の変化を生じ、これら両方の作用を利用して振幅検出によるトラッキング制御を行うことが可能となる。このため、トラッキング用サーボ信号の再生トラック幅が減少することによる再生信号振幅の変化のみを検出してトラッキング制御を行う従来の方法に比べて、トラッキング用サーボ信号のダイナミックレンジを大きくすることが可能となり、より信号品質に優れたトラッキング用サーボ信号を得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の構成によれば、トラックピッチが0.25μmを下回るような高密度領域においても十分な磁気ヘッドの位置検出精度を得ることができ、トラッキング性能に優れた磁気記録再生装置とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る情報信号の磁気転写記録方法について説明する。図1は、本発明の実施の形態における情報信号の磁気転写記録方法を実施するための記録装置の概要を示す断面図である。図1において、磁気ディスクであるハードディスク1は、中心孔1aを有するドーナツ円盤状のディスクである。ハードディスク1は、非磁性基板の表面にCo等を主成分とする強磁性薄膜をスパッタリング法によって成膜することにより構成されている。
【0024】
ハードディスク1の強磁性薄膜表面に接触するように、円盤状のマスター情報担体2が重ね合わされて配置されている。マスター情報担体2は、一般的にはハードディスク1より径が大きく、ハードディスク1に接触する側の表面に信号領域2aが設けられている。信号領域2aは、ハードディスク1に磁気転写記録すべき情報信号に対応した微細な配列パターン形状の強磁性薄膜で形成されている。
【0025】
ハードディスク1は、ディスク保持体3で保持されている。ディスク保持体3の先端部にはハードディスク1を位置決め保持するチャック部3aが設けられている。また、ディスク保持体3の内部には吸引孔3bが設けられており、吸引孔3bはハードディスク1の中心孔1aに連通し、かつ一端が排気ダクト4に接続されている。
【0026】
排気ダクト4の端部には排気装置5が装着されており、この排気装置5を始動させることにより、排気ダクト4、ディスク保持体3の吸引孔3bを通して、ハードディスク1とマスター情報担体2との間の空間が負圧状態となる。このことにより、マスター情報担体2がハードディスク1側に吸引され、マスター情報担体2にハードディスク1が位置決めされた状態で重ね合わされることになる。
【0027】
なお、このとき、マスター情報担体2の表面には信号領域2aを除く領域において若干の隙間溝を形成し、その隙間溝を通して、ハードディスク1とマスター情報担体2の間の空気を吸引することもできる。
【0028】
着磁用ヘッド6は、マスター情報担体2からハードディスク1に転写記録する際に必要な外部磁界を印加するためのものである。着磁用ヘッド6から印加される磁界により、マスター情報担体2に形成された情報信号に対応した強磁性薄膜パターンが磁化され、これらから発生する漏れ磁束によってハードディスク1に強磁性薄膜パターン形状に対応した情報信号が記録される。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態における着磁用ヘッドの構成の例を示す斜視図である。図2に示した着磁用ヘッド6は、巻線6aを具備した強磁性材料で形成された磁気コア半体6bと、同じく強磁性材料で形成された磁気コア半体6cとを対向させて、ギャップ6dを備えた環状の磁気回路を形成したものである。
【0030】
巻線6aに励磁電流を流すことによって、ギャップ6dには、矢印Aで示すように磁気コア半体6cから磁気コア半体6bに向かう漏れ磁束が発生する。また、印加する電流の向きを変えることにより、ギャップ6dに発生する漏れ磁束の向きを変えることができる。矢印Bは、図2に示す向きの漏れ磁束が発生しているときに、磁気コア半体6b、6cに発生する内部磁束の向きを示している。
【0031】
なお、着磁用ヘッドとしては図2に示した電磁石型の他に、例えば永久磁石の両側に強磁性材料で形成された磁気コア半体を対向配置させて、ギャップを備えた環状の磁気回路を形成した構成のものを用いることもできる。
【0032】
図3は、図2に示した着磁用ヘッド6のギャップ6dの形状を示す平面図である。ギャップ6dは、マスター情報担体2に対向する面において、ハードディスクドライブに搭載される記録再生用磁気ヘッドが磁気ディスク表面をトラッキング走査する際の軌道と同じ円弧状になっている。
【0033】
したがって、ギャップ6dに発生する磁界の方向は、トラッキング走査軌道と常に垂直となり、マスター情報担体2の強磁性薄膜は、全てのトラックにおいて、記録再生用磁気ヘッドのトラッキング走査方向と垂直な方向に磁化される。すなわち、記録再生用磁気ヘッドのヘッドギャップ長方向と同じ方向に磁化されるのである。
【0034】
次に、マスター情報担体2の構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態におけるマスター情報担体の構成の例を模式的に示す平面図である。図4に示すように、マスター情報担体2の一主面、すなわちハードディスク1の強磁性薄膜表面に接触する側の表面には、略放射状に信号領域2aが形成されている。図5に示したのは、一般的なマスター情報担体2に形成される情報信号の配列パターンの構成例を模式的示す平面図であり、図4における信号領域2aのC部の拡大図になっている。図5において、図の横方向がハードディスクの径方向、縦方向がハードディスクの周方向に対応している。
【0035】
一般的にマスター情報担体2の表面には、情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンが形成されており、図5においてハッチングで示した部分が、強磁性材料よりなる磁性部2bである。マスター情報担体上の磁性部2bで構成された形状パターンの形状は、ハードディスク1に記録される情報信号に対応しており、ハードディスクと重なり合った状態において、形状パターンの位置は、ハードディスク上の情報信号が記録される位置に対応している。図5の構成例では、情報信号に対応する形状パターンは、トラッキング用サーボ信号7、アドレス情報信号8、クロック信号9等の各信号領域を、磁気ヘッドの相対移動方向すなわちトラック長さ方向に順次配列したものである。なお参考のため、ユーザデータが記録されるデータ領域10のトラックを破線で示している。
【0036】
図6は本発明の実施の形態におけるマスター情報担体の構成の例を示す断面図であり、図4に示したマスター情報担体2の強磁性薄膜の形成領域のヘッド移動方向すなわち情報信号のトラック長さ方向における一部を切断して示している。図6において、マスター情報担体2は、基体11の主面11bに形成された複数の凹部11aに、磁性部2bを形成する強磁性薄膜12が埋め込まれている。基体11は、Si基板、ガラス基板、プラスチック基板などの非磁性材料で形成された円盤状の基体である。主面11bは、ハードディスク1の表面が接触する側の表面である。また、凹部11aは、情報信号に対応する微細な配列パターン形状で形成されている。
【0037】
ここで、図1に示した記録装置を用いてハードディスク1とマスター情報担体2とを均一に密着させ良好な記録特性を得るためには、強磁性薄膜12の表面12aができる限り平坦で、かつ基体11の主面11bに対して、少し突出した構成とすることが好ましい。例えば、強磁性薄膜12の基体11の主面11bに対する突出量は、マスター情報担体2の耐久性の観点から、5nmから100nmの範囲とすることが好ましい。
【0038】
強磁性薄膜12としては、硬質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料のみならず、多くの種類の磁性材料を用いることができる。この場合、より良好な信号品質を得るには、比較的透磁率が大きい軟質磁性薄膜または半硬質磁性薄膜を用い、磁気転写記録時には外部磁界によってこれを励磁して一様に磁化することが好ましい。例えば、Fe、Co、Ni−Fe合金、Fe−Co合金などを用いることができる。
【0039】
なお、マスター情報信号が記録される磁気ディスクの種類によらずに十分な記録磁界を発生させるためには、強磁性薄膜12を構成する磁性材料の飽和磁束密度が大きいほどよい。特に、2000エルステッド(159kA/m)を超える高保磁力の磁気ディスクや磁性層の厚みの大きいフレキシブルディスクに対しては、飽和磁束密度が0.8テスラ以下になると十分な記録を行うことができない場合がある。このため、一般的には、0.8テスラ以上、好ましくは1.0テスラ以上の飽和磁束密度を有する磁性材料が用いられる。
【0040】
また、強磁性薄膜12の厚さは、記録される情報信号の磁化反転長や磁気ディスク磁性層の飽和磁化、保磁力、膜厚によるが、例えば磁化反転長約1μm、磁気ディスク磁性層の飽和磁化が500emu/cc(500kA/m)、保磁力が3000エルステッド(239kA/m)、厚さが20nm程度の場合では、50nm〜500nm程度であればよい。
【0041】
さらに、このような磁気転写記録方法において、良好な記録信号品質を得るためには、マスター情報担体を用いた磁気転写記録に先立って、ハードディスクなどの磁気ディスクを周方向に一様に直流消去しておくことが望ましい。
【0042】
ここで、ハードディスクに記録する手順の説明に先立ち直流消去について説明する。図7は、本発明の実施の形態におけるハードディスクの直流消去の工程の原理を模式的に示す斜視図である。図8は、図7の工程で直流消去されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図である。図7に示した工程においては、着磁用ヘッド6をハードディスク1に近づけた状態で、ハードディスク1の中心軸を回転軸としてハードディスクと平行に回転させる。このことにより、図8中に矢印で示したように、ハードディスクは予め一方向に磁化(すなわち、直流消去)されることになる。
【0043】
次に、マスター情報担体2に形成した形状パターンに対応した情報信号をハードディスクに記録する手順について説明する。図1に示したように、ハードディスク1にマスター情報担体2を位置決めして重ね合わせた状態で、排気装置5を始動させる。このことにより、ハードディスク1の中心孔1aを通してマスター情報担体2が吸引され、マスター情報担体2の強磁性薄膜12が形成されている面とハードディスク1とが均一に密着するように重ね合わされる。
【0044】
図9は、本発明の実施の形態におけるハードディスクに情報信号を磁気転写記録している状態を示す斜視図である。着磁用ヘッド6により印加される磁界は、初期磁化とは逆極性となるようにしている。この状態で着磁用ヘッド6を、ディスク保持体3に保持されているハードディスク1の中心を回転中心として、マスター情報担体2と平行に回転させる。この回転を続けながら、マスター情報担体2に直流励磁磁界を印加する。このことにより、マスター情報担体2の強磁性薄膜12が磁化され、マスター情報担体2に重ね合わせたハードディスク1の所定の情報信号記録領域1bに、強磁性薄膜12による磁性部のパターン形状に対応した情報信号が記録される。図10は、図9に示した工程により情報信号が記録されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図である。図10に示した矢印は、ハードディスク1の情報信号記録領域1bの外において残留する磁化の方向を示している。
【0045】
図11は、図9に示す工程によりハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化の状態の詳細を模式的に説明するための断面図である。図11に示したように、マスター情報担体2をハードディスク1に密着させた状態で、マスター情報担体2に外部から磁界を印加して強磁性薄膜12を磁化する。このことにより、ハードディスク1の強磁性薄膜からなる磁気記録層1cに情報信号が記録されることになる。
【0046】
すなわち、非磁性の基体11に所定のパターン形状で強磁性薄膜12を形成して構成したマスター情報担体2を用いることにより、ディジタル情報信号を磁気記録媒体であるハードディスク1に磁気的に転写記録することができる。
【0047】
図12は本発明の実施の形態においてハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化状態の変化を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図7から図10に示した磁気転写記録の一連の過程について、図11と同様の模式的な断面図を用いて、再度、詳しく説明している。図12(a)はハードディスク1の直流消去過程を示し、図12(b)はマスター情報担体2を用いた情報信号の磁気転写記録過程を示し、図12(c)は情報信号の磁気転写記録後のハードディスク1の残留磁化状態を示している。各過程を示す図はそれぞれ、ヘッド移動方向すなわち情報信号のトラック長さ方向における断面が示されている。磁気記録媒体がハードディスクである場合、情報信号のトラック長さ方向は、ディスク円周方向に一致する。
【0048】
図12(a)に示したように、ハードディスク上の磁気記録層1cはマスター情報担体を用いた情報信号の磁気転写記録に先立って直流消去磁界13により、一定方向の直流消去磁化14を有するよう一様に直流消去される。次に、図12(b)に示したように、情報信号に対応する配列パターン形状で強磁性薄膜12が形成されたマスター情報担体2の表面をハードディスク上の磁気記録層1cの表面に密着させ、直流励磁磁界15によって強磁性薄膜12を励磁する。この際、直流励磁磁界15の極性は、直流消去磁界13とは逆極性とする。これにより、隣接する強磁性薄膜12間の部分においてのみ、漏れ磁束16によりハードディスク1上の磁化14が反転される。この結果、マスター情報担体2を取り除いた後、ハードディスク1上には、マスター情報担体2上に形成された強磁性薄膜12の配列パターン形状に対応する磁化14のパターンを記録することができる。
【0049】
さて、以上のような手順によってサーボトラック領域に信号が記録されたハードディスク1は、ハードディスクドライブの筐体内に搭載され、予めトラッキング制御可能な信号を備えた磁気記録媒体として、そのまま使用される。上述した構成に加えて、必要に応じて磁気ヘッドを用いて新たにサーボ信号などの情報信号を追記する構成としてももちろんよい。
【0050】
引き続き、記録されたトラッキング用サーボ信号を用いて、ハードディスクドライブ内において磁気ヘッドのトラッキング制御を行う方法について、図5に示した一般的なマスター情報担体に形成される情報信号の配列パターンの例を今一度参照して、以下に説明する。
【0051】
図5は、マスター情報担体の表面に形成される磁性部2bの形状パターンの構成例を示した平面図であるが、既述の手順によって磁化情報としてハードディスクに記録される情報信号パターンは、磁性部2bの形状パターンに対応するものである。したがって図5は、マスター情報担体の表面の形状パターンを示すものであると同時に、ハードディスクに情報信号として記録される磁化ビットパターンを示すものと理解して差し支えない。図5は、図の横方向がハードディスクの径方向、縦方向がハードディスクの周方向に対応しているが、ハッチング部分とその他の部分とで周方向において逆極性の磁化が残留するよう信号が記録されており、その境界が磁化遷移領域である。ハードディスクドライブに搭載され、情報信号を再生する磁気ヘッドの再生ギャップは、磁化ビットパターンの磁化遷移領域に平行となるように構成される。すなわち図5に示す領域では、再生ギャップの幅方向は、記録トラック幅方向(図5の横方向)に一致する。
【0052】
図5に示す情報信号パターンのうち、トラッキング用サーボ信号7は、記録トラック幅Twを有し、ハードディスクの径方向に互いにシフトして位置する4種類のバースト信号7a、7b、7c、7dにより構成されている。バースト信号7a、7bは、1データトラックピッチTpおきにデータトラックの延長上に配置されており、7a、7bは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。またバースト信号7c、7dは、1データトラックピッチおきにデータトラックの延長上から半データトラックピッチずつずれて隣接データトラック間に配置されており、7c、7dは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。
【0053】
上記のような情報信号パターンを磁気ヘッドを用いて再生すると、磁気ヘッドのディスク半径方向変位に応じた再生トラック幅損失Lwを生じ、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの再生出力振幅が各々異なってくる。つまり磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う7a、7b、7c、7dの再生出力振幅変化を検出することによって、あるデータトラック中心からの磁気ヘッドの変位、すなわち位置ずれを検出することができるのである。
【0054】
簡単のため、磁気ヘッドの再生エレメントの幅がトラッキング用サーボ信号の記録トラック幅Twと同じであるとすると、データトラック中心を移動する磁気ヘッドはトラッキング用サーボ信号7aまたは7bのいずれかをフルトラック幅Twで再生することができる。一方、磁気ヘッドの位置が記録トラック幅中心からずれて再生トラック幅がWとなった場合、下記の(式1)で表される再生トラック幅損失Lwを生じ、Lw分だけ再生出力振幅が低下する。このとき、磁気ヘッドの位置は、記録トラック幅中心から(Tw−W)だけ変位していることになる。
【0055】
【数1】
【0056】
例えば、あるデータトラック中心を移動する磁気ヘッドはトラッキング用サーボ信号7aをフルトラック幅の1Tw再生した後、7bを0Tw、7cを0.5Tw、7dを0.5Twの再生トラック幅で再生し、7a、7b、7c、7dの再生出力振幅比は、1:0:0.5:0.5となる。一方、磁気ヘッドの位置が記録トラック幅中心からずれると、(式1)で表される再生トラック幅損失Lwを生じ、7a、7b、7c、7dの再生出力振幅比が変化する。具体的には、7aと7bの再生出力振幅、および7cと7dの再生出力振幅を比較することで、(式1)からデータトラック中心からの磁気ヘッドの変位(Tw−W)を求めることができるのである。図5を参照して以上に述べたような再生トラック幅損失を利用した再生出力振幅検出によるトラッキング制御は、背景技術の説明で述べた特許文献1に示された方法に限らず、非特許文献1および非特許文献2として例を挙げたこれまでの方法においても一般的に用いられている方法である。
【0057】
しかしながら既に解決すべき課題において述べたように、近年では、トラックピッチが0.25μmを下回る高密度領域に至り、このような再生出力振幅検出によるトラッキング用サーボ信号の性能をもってしては、磁気ヘッドの位置検出精度が限界に達しつつあり、十分なトラッキング性能が得られない場合があることが判かってきた。
【0058】
このために、本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体は、一構成例として、情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンが図13に示すような構成で形成されている。
【0059】
図13は、本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体表面に形成される情報信号の配列パターンの構成の例を模式的に示す平面図であるが、既述の手順によって磁化情報としてハードディスクに記録される情報信号パターンは、磁性部2bの形状パターンに対応するものである。したがって図13は、マスター情報担体の表面の形状パターンを示すものであると同時に、ハードディスクに情報信号として記録される磁化ビットパターンを示すものと理解して差し支えない。図13は、図の横方向がハードディスクの径方向、縦方向がハードディスクの周方向に対応しているが、ハッチング部分とその他の部分とで周方向において逆極性の磁化が残留するよう信号が記録されており、その境界が磁化遷移領域である。ハードディスクドライブに搭載され、情報信号を再生する磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向は、図13に示す領域では、記録トラック幅方向、すなわち図13の横方向に一致するよう構成される。
【0060】
図13に示す情報信号パターンおいて、図5と同様に、トラッキング用サーボ信号7は、記録トラック幅Twを有し、ハードディスクの径方向に互いにシフトして位置する4種類のバースト信号7a、7b、7c、7dにより構成されている。バースト信号7a、7bは、1データトラックピッチTpおきにデータトラックの延長上に配置されており、7a、7bは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。またバースト信号7c、7dは、1データトラックピッチおきにデータトラックの延長上から半データトラックピッチずつずれて隣接データトラック間に配置されており、7c、7dは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。
【0061】
一方、一般的なマスター情報担体に形成される情報信号の配列パターンの例を示す図5の構成と異なる点は、バースト信号7a、7b、7c、7dにおけるビット間の磁化遷移領域が、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成されている点である。すなわち、各バースト信号のトラック幅方向中心においては、磁化遷移領域は再生ギャップに平行であって、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θは0度である。一方、トラック幅方向中心からの変位に伴って、磁化遷移領域が湾曲し、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θが大きくなるよう構成されている。
【0062】
上記のような情報信号パターンを磁気ヘッドを用いて再生すると、先に述べた再生トラック幅損失Lwとともに、磁気ヘッドのディスク半径方向変位に応じた再生アジマス損失Lθを生じ、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの再生出力振幅が各々異なってくる。つまり磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う7a、7b、7c、7dの再生出力振幅変化を検出することによって、あるデータトラック中心からの磁気ヘッドの変位、すなわち位置ずれを検出することができるのである。
【0063】
磁気ヘッドによる再生トラック幅をW、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θ、再生信号波長をλとすると、再生アジマス損失Lθは、下記の(式2)で表される。図13の構成では磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θがトラック幅方向中心からの変位に伴って大きくなるよう構成されているので、実際のLθは、微小トラック幅領域ΔWにおける再生アジマス損失をトラック幅Wに渡って積分することにより得られることになる。
【0064】
【数2】
【0065】
この際、磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う再生出力振幅変化は、再生トラック幅損失Lwおよび再生アジマス損失Lθの両方に起因して生じるので、図5に示した再生トラック幅損失Lwにのみ起因する構成に比べて、トラッキング用サーボ信号のダイナミックレンジを大きくすることが可能となり、より信号品質に優れたトラッキング用サーボ信号を得ることができる。その結果、トラックピッチが0.25μmを下回る高密度領域においても、必要な磁気ヘッドの位置検出精度を実現することが可能となり、十分なトラッキング性能を得ることができる。
【0066】
ところで、一般にハードディスク装置に搭載される磁気ヘッドは、その磁気ヘッド固有の記録トラック幅に渡って平行記録ギャップを有しているので、このような湾曲した磁化遷移領域を有するサーボ信号パターンを記録することができない。すなわち、図13の構成は、マスター情報担体を用いた磁気転写記録であるからこそ、実現可能なものである。また図13においては、このような磁気ヘッドでは記録できない信号パターンをも記録可能であるという磁気転写記録の特徴を活かして、クロック信号9およびアドレス情報信号8部分において記録トラック間にガードバンドを設けず、磁化遷移領域がハードディスクの径方向に複数の記録トラックを連続的に横断する構成を採用している。このように、ガードバンドを設けず磁化遷移領域が複数の記録トラックを連続的に横断する信号も、有限長の記録トラック幅を有する磁気ヘッドでは記録することができないものである。
【0067】
なお、図13に示す情報信号パターンは一例を示したものであり、磁気ディスクに記録される情報信号の構成、目的、用途に応じて、マスターディスク上の形状情報パターンの構成や配置等を適宜変更することが可能である。
【0068】
例えば、図13の構成では、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの記録トラック幅TwをほぼデータトラックピッチTpと等しく構成し、各々1データトラックピッチおきに配する構成としたが、本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置におけるマスター情報担体の構成は上記に限られるものではない。本発明者らの実験検討によれば、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの記録トラック幅TwをユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、4倍以下の範囲に設定した場合にも、上述したような効果が十分に得られる。この場合、記録トラック幅Twに対応して、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dをユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、4倍以下の間隔で配置してもよい。
【0069】
また磁化遷移領域の湾曲形状は、円弧形状でも楕円弧形状でもよいし、その他類似の曲線形状でもよい。本発明者らの実験検討によれば、磁化遷移領域が円弧形状の場合には、その曲率がユーザデータトラックピッチの1/8以上、4倍以下の範囲で上述したような効果が十分に得られた。一方、磁化遷移領域が、磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向を長径または短径とする楕円弧状に湾曲している場合には、楕円の再生ギャップの幅方向における径がユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、8倍以下の範囲、かつ楕円の再生ギャップの幅方向と垂直方向における径が0.025μm以上、2.5μm以下の範囲で効果が十分に得られた。
【0070】
(実施の形態2)
続いて、本発明の別の実施の形態2の磁気記録再生装置におけるマスター情報担体について説明する。本発明の実施の形態2において、図1〜図4、および図6〜図12に関わる構成は、実施の形態1の例と同じであるので、重複を避けるため、ここでは説明を省略し、マスター情報担体上の情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンに関わる特徴について述べる。本発明の実施の形態2におけるマスター情報担体は、一構成例として、情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンが図14に示すような構成で形成されている。
【0071】
図14は、本発明の実施の形態2におけるマスター情報担体の表面に形成される情報信号の配列パターンの構成の例を模式的に示す平面図であるが、既述の手順によって磁化情報としてハードディスクに記録される情報信号パターンは、磁性部2bの形状パターンに対応するものである。したがって図14は、マスター情報担体表面の形状パターンを示すものであると同時に、ハードディスクに情報信号として記録される磁化ビットパターンを示すものと理解して差し支えない。図14は、図の横方向がハードディスクの径方向、縦方向がハードディスクの周方向に対応しているが、ハッチング部分とその他の部分とで周方向において逆極性の磁化が残留するよう信号が記録されており、その境界が磁化遷移領域である。ハードディスクドライブに搭載され、情報信号を再生する磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向は、図14に示す領域では、記録トラック幅方向、すなわち図14の横方向に一致するよう構成される。
【0072】
図14に示す情報信号パターンおいて、図5および図13と同様に、トラッキング用サーボ信号7は、記録トラック幅Twを有し、ハードディスクの径方向に互いにシフトして位置する4種類のバースト信号7a、7b、7c、7dにより構成されている。バースト信号7a、7bは、1データトラックピッチTpおきにデータトラックの延長上に配置されており、7a、7bは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。またバースト信号7c、7dは、1データトラックピッチおきにデータトラックの延長上から半データトラックピッチずつずれて隣接データトラック間に配置されており、7c、7dは互いに1データトラックピッチずつ位置がシフトしている。
【0073】
図14の構成が図5の構成と異なる点は、バースト信号7a、7b、7c、7dにおけるビット間の磁化遷移領域が、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成されているという点である。すなわち、各バースト信号のトラック幅方向中心においては、磁化遷移領域は、再生ギャップに平行であって、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θは0度である。一方、トラック幅方向中心からの変位に伴って、磁化遷移領域が湾曲し、磁化遷移領域と再生ギャップのなす角θが大きくなるよう構成されている。
【0074】
上記のような情報信号パターンを磁気ヘッドにより再生すると、図13の構成と同様に、再生トラック幅損失Lwとともに磁気ヘッドのディスク半径方向変位に応じた再生アジマス損失Lθを生じ、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの再生出力振幅が各々異なってくる。つまり磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う7a、7b、7c、7dの再生出力振幅変化を検出することによって、あるデータトラック中心からの磁気ヘッドの変位、すなわち位置ずれを検出することができるのである。
【0075】
したがって図14の構成においても、図13の構成と同様に、磁気ヘッドのディスク半径方向変位に伴う再生出力振幅変化は、再生トラック幅損失Lwおよび再生アジマス損失Lθの両方に起因して生じるので、図5に示した再生トラック幅損失Lwにのみ起因する構成に比べて、トラッキング用サーボ信号のダイナミックレンジを大きくすることが可能となり、より信号品質に優れたトラッキング用サーボ信号を得ることができる。
【0076】
さらに、図14の構成は図13の構成とも異なる構成を有している。それは図14の構成では、バースト信号7a、7b、7c、7dにおける磁化ビットパターンを、磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成しているという点である。このような構成を採用することにより、磁気ヘッドが磁気ディスクの径方向に変位するのに伴って、再生ギャップに対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域間の位相、あるいは複数配置された磁化遷移領域に対して相互間の位相が変化する。このため図14の構成においては、磁気ディスク径方向変位に伴う磁化遷移領域間の位相変化を検出してトラッキング制御を行う手段をさらに備えることができる。すなわち図13の構成と同様にダイナミックレンジの大きな再生信号振幅検出によるトラッキング制御と、上記した磁化遷移領域間の位相検出によるトラッキング制御とを適宜併用または選択使用することにより、図13の構成や特許文献2の方法と比較しても、トラッキング性能をさらに向上することが可能となる。したがって図14の構成においても、トラックピッチが0.25μmを下回る高密度領域において必要な磁気ヘッドの位置検出精度を実現することが可能となり、十分なトラッキング性能を得ることができる。
【0077】
図14の構成も、図13の構成と同様に、一般にハードディスク装置に搭載される磁気ヘッドを用いては記録することができず、マスター情報担体を用いた磁気転写記録であるからこそ、実現可能なものである。また図14においても図13の構成と同様に、このような磁気ヘッドでは記録できない信号パターンをも記録可能であるという磁気転写記録の特徴を活かして、クロック信号9およびアドレス情報信号8部分において記録トラック間にガードバンドを設けず、磁化遷移領域がハードディスクの径方向に複数の記録トラックを連続的に横断する構成を採用している。このように、ガードバンドを設けず磁化遷移領域が複数の記録トラックを連続的に横断する信号も、有限長の記録トラック幅を有する磁気ヘッドでは記録することができないものである。
【0078】
なお、図14に示す情報信号パターンは一例を示したものであり、磁気ディスクに記録される情報信号の構成、目的、用途に応じて、マスターディスク上の形状情報パターンの構成や配置等を適宜変更することが可能である。
【0079】
例えば、図14の構成では、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの記録トラック幅TwをほぼデータトラックピッチTpと等しく構成し、各々1データトラックピッチおきに配する構成としたが、本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置におけるマスター情報担体の構成は上記に限られるものではない。本発明者らの実験検討によれば、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dの記録トラック幅TwをユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、4倍以下の範囲に設定した場合にも、上述したような効果が十分に得られる。この場合、記録トラック幅Twに対応して、トラッキング用サーボ信号7a、7b、7c、7dをユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、4倍以下の間隔で配置してもよい。
【0080】
また磁化遷移領域の湾曲形状は、円弧形状でも楕円弧形状でもよいし、その他類似の曲線形状でもよい。本発明者らの実験検討によれば、磁化遷移領域が円弧形状の場合には、その曲率がユーザデータトラックピッチの1/8以上、4倍以下の範囲で上述したような効果が十分に得られた。一方、磁化遷移領域が、磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向を長径または短径とする楕円弧状に湾曲している場合には、楕円の再生ギャップの幅方向における径がユーザデータトラックピッチTpの1/4以上、8倍以下の範囲、かつ楕円の再生ギャップの幅方向と垂直方向における径が0.025μm以上、2.5μm以下の範囲で効果が十分に得られた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、磁気ヘッドの位置検出精度を向上し、高トラック密度領域においても十分なトラッキング性能を得ることができるので、ハードディスクドライブの高密度化、小型大容量化に有用である。また、ハードディスクドライブに限らず、大容量フロッピー(登録商標)ディスクドライブ等、磁気ディスクが磁気記録再生装置本体に着脱可能な可換性磁気ディスクドライブの用途にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態における情報信号の磁気転写記録方法を実施するための記録装置の概要を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態における着磁用ヘッドの構成の例を示す斜視図
【図3】図2に示した着磁用ヘッドのギャップの形状を示す平面図
【図4】本発明の実施の形態におけるマスター情報担体の構成の例を模式的に示す平面図
【図5】一般的なマスター情報担体に形成される情報信号の配列パターンの構成例を模式的に示す平面図
【図6】本発明の実施の形態におけるマスター情報担体の構成の例を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態におけるハードディスクの直流消去の工程の原理を模式的に示す斜視図
【図8】図7の工程で直流消去されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図
【図9】本発明の実施の形態におけるハードディスクに情報信号を磁気転写記録している状態を示す斜視図
【図10】図9に示す工程により情報信号が記録されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図
【図11】図9に示す工程によりハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化の状態の詳細を模式的に説明するための断面図
【図12】本発明の実施の形態においてハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化状態の変化を模式的に説明するための断面図
【図13】本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体の表面に形成される情報信号の配列パターンの構成の例を模式的に示す平面図
【図14】本発明の実施の形態2におけるマスター情報担体の表面に形成される情報信号の配列パターンの構成の例を模式的に示す平面図
【符号の説明】
【0083】
1 ハードディスク
1a 中心孔
1b 情報信号記録領域
1c 磁気記録層
2 マスター情報担体
2a 信号領域
2b 磁性部
7 トラッキング用サーボ信号
7a,7b,7c,7d バースト信号
8 アドレス情報信号
9 クロック信号
10 データ領域
11 基体
11a 基体の凹部
11b 基体の主面
12 強磁性薄膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、
予め記録された前記情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域は、前記磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成され、
かつ前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記トラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、
前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記磁気ヘッドによる前記トラッキング用サーボ信号の再生トラック幅の変化、および前記トラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失の変化による前記トラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、
予め記録された前記情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部は、前記磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が前記磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成され、
前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記磁化遷移領域間の位相変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項4】
情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、
予め記録された前記情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部は、前記磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が前記磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成され、
前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、
前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記磁気ヘッドによる前記トラッキング用サーボ信号の再生トラック幅の変化、および前記トラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失の変化による前記トラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段と
前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記磁化遷移領域間の位相変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段
を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項5】
前記トラッキング用サーボ信号の前記磁気ディスクの径方向における記録トラック幅は、ユーザデータトラックピッチの1/4以上、4倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項6】
前記磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の前記磁化遷移領域は、前記磁気ヘッドの前記再生ギャップに対して円弧状に湾曲しており、その曲率半径は、ユーザデータトラックピッチの1/8以上、4倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項7】
前記磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の前記磁化遷移領域は、前記磁気ヘッドの前記再生ギャップに対して前記再生ギャップの幅方向を長径または短径とする楕円弧状に湾曲しており、前記楕円の前記再生ギャップの幅方向における径は、ユーザデータトラックピッチの1/4以上、8倍以下であり、かつ前記楕円の前記再生ギャップの幅方向と垂直方向における径は、0.025μm以上、2.5μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
前記磁気ディスクは、前記磁気記録再生装置本体に着脱可能な可換ディスクである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項9】
情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンを有するマスター情報担体の表面に磁気ディスクを接触させることにより、前記情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された前記磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置の製造方法であって、
予め記録された前記情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域が前記磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成することを特徴とする磁気記録再生装置の製造方法。
【請求項10】
前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部は、前記磁気記録再生装置に搭載される前記磁気ヘッドの前記再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の前記磁化遷移領域が前記磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成することを特徴とする請求項9に記載の磁気記録再生装置の製造方法。
【請求項1】
情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、
予め記録された前記情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域は、前記磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成され、
かつ前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記トラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、
前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記磁気ヘッドによる前記トラッキング用サーボ信号の再生トラック幅の変化、および前記トラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失の変化による前記トラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、
予め記録された前記情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部は、前記磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が前記磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成され、
前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記磁化遷移領域間の位相変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項4】
情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置であって、
予め記録された前記情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部は、前記磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の磁化遷移領域が前記磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成され、
前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの径方向において有限の記録トラック幅を有しており、
前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記磁気ヘッドによる前記トラッキング用サーボ信号の再生トラック幅の変化、および前記トラッキング用サーボ信号の再生アジマス損失の変化による前記トラッキング用サーボ信号の再生信号振幅の変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段と
前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの径方向に変位することに伴う前記磁化遷移領域間の位相変化を検出して、前記磁気ヘッドのトラッキング制御を行う手段
を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項5】
前記トラッキング用サーボ信号の前記磁気ディスクの径方向における記録トラック幅は、ユーザデータトラックピッチの1/4以上、4倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項6】
前記磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の前記磁化遷移領域は、前記磁気ヘッドの前記再生ギャップに対して円弧状に湾曲しており、その曲率半径は、ユーザデータトラックピッチの1/8以上、4倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項7】
前記磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の前記磁化遷移領域は、前記磁気ヘッドの前記再生ギャップに対して前記再生ギャップの幅方向を長径または短径とする楕円弧状に湾曲しており、前記楕円の前記再生ギャップの幅方向における径は、ユーザデータトラックピッチの1/4以上、8倍以下であり、かつ前記楕円の前記再生ギャップの幅方向と垂直方向における径は、0.025μm以上、2.5μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
前記磁気ディスクは、前記磁気記録再生装置本体に着脱可能な可換ディスクである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項9】
情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンを有するマスター情報担体の表面に磁気ディスクを接触させることにより、前記情報信号に対応する磁化ビットパターンが予め記録された前記磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置の製造方法であって、
予め記録された前記情報信号はトラッキング用サーボ信号を含有し、前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部におけるビット間の磁化遷移領域が前記磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッドの再生ギャップに対して湾曲するように構成することを特徴とする磁気記録再生装置の製造方法。
【請求項10】
前記トラッキング用サーボ信号に対応する前記磁化ビットパターンの少なくとも一部は、前記磁気記録再生装置に搭載される前記磁気ヘッドの前記再生ギャップの幅方向に対して互いに逆方向に湾曲する一対の前記磁化遷移領域が前記磁気ディスクの周方向に複数配置されるよう構成することを特徴とする請求項9に記載の磁気記録再生装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−244602(P2006−244602A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58540(P2005−58540)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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