説明

磁気記録再生装置

【課題】パスワードが一致しても、一般的なDDSフォーマット対応の磁気記録再生装置では、ユーザーデータを読み出せない磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】磁気テープに記録されたデータを再生する際に、パスワードを入力し、そのパスワードに対比される擬似EODの個数だけスキップしてユーザーデータ15の再生を実行するので、スキップ数が磁気テープに記録された擬似EOD24の数に一致した場合に限って、磁気テープに記録されたデータを再生できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データのバックアップなどに使用されている磁気記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムに何らかの障害が発生した場合であってもデータ復旧ができるように、磁気テープにデータのバックアップを実行し、これをリストアすることが行われている。
【0003】
データを磁気テープにバックアップする磁気記録再生装置(DDSテープストレージドライブ)は、図5に示すように構成されている。
ワークステーションのサーバー用のデータバックをバックアップするための磁気記録再生装置本体1は、ワークステーション2にSCSIなどの通信ライン3を介して接続されている。
【0004】
磁気記録再生装置本体1は制御手段4と回転形磁気ヘッド5を介して磁気テープ6にアクセスする再生手段7,記録手段8などを内蔵している。具体的には、図7に示すように、制御手段4と再生手段7,記録手段8の他にオートローダ9などを内蔵した磁気記録再生装置本体1には、図8に示すように複数のカートリッジ10がセットされるマガジン11とで構成されている。マガジン11は磁気記録再生装置本体1の着脱口12から挿入されて前記オートローダ9にセットされる。回転形磁気ヘッド5がアクセスする磁気テープ6は、ワークステーション2のバックアップアプリケーション13から、または磁気記録再生装置本体1の前面パネルに設けられた入力手段14から指定された特定のカートリッジ10が回転形磁気ヘッド5によってアクセスできるように前記オートローダ9が運転されている。
【0005】
前記入力手段14は、図9に示す液晶表示パネルDPと、イジェクトスイッチSW1,選択ボタンスイッチSW2,入力ボタンスイッチSW3で構成されている。
ワークステーション2から通信ライン3を介して記録動作の指示を受けた磁気記録再生装置本体1は、制御手段4がこれを検出して図10(a)を実行する。ステップS1では、記録手段8と回転形磁気ヘッド5を介して該当するカートリッジ10の磁気テープ6に、図6に示したDDSフォーマットで書き込む。つまり、磁気テープ6のユーザーデータエリア15にデータを書き込むに際しては、ユーザーデータエリア15の位置に対して磁気テープ6の走行方向の手前位置にデバイスデータ16,リファレンスデータ17,システムデータ18,ベンダーグループデータ19を順に記録し、その次にユーザーデータが書き込まれ、ユーザーデータの次には、データの終端を意味するEOD(End Of Data)20を書き込むように構成されている。
【0006】
ワークステーション2から通信ライン3を介して再生動作の指示を受けた磁気記録再生装置本体1は、制御手段4がこれを検出して図10(b)を実行する。
ステップS1では、該当するカートリッジ10の磁気テープ6に回転形磁気ヘッド5がアクセスして再生手段7を介して図6のDDSフォーマットで書き込まれた各種のデータを読み出し、通信ライン3を介してワークステーション2に返信する。ステップS2で前記EOD20を検出すると、ステップS3でユーザーデータの再生を終了する。
【0007】
このようにワークステーション2からの記録指示や再生指示だけでは、記録済みのユーザーデータを保護できないため、(特許文献1)などでは入力されたパスワードと再生されたパスワードが一致した場合に限って、ユーザーデータの再生を本格的に実行するように構成されている。
【特許文献1】特開平11−16227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように一般的なパスワードの照合と一致をキーにしてユーザーデータの再生を保護した場合には、DDSフォーマットのファームウェアを搭載した一般的な磁気記録再生装置を使用して、パスワードを変更しながら度々のパスワード入力を繰り返す不正行為の実行によって、ついには正規のパスワードと一致して、ユーザーデータが再生される危険性が高い。
【0009】
本発明はパスワードを変更しながら度々のパスワード入力を繰り返す不正行為の実行によっても一般的なDDSフォーマット対応の磁気記録再生装置では、ユーザーデータを読み出せない磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載の磁気記録再生装置は、磁気テープのユ−ザーデータ記録エリアにデータを読み書きし、磁気テープの走行方向に対して前記ユ−ザーデータ記録エリアに書き込まれたデータの後ろにEOD(End Of Data)を書き込むデータフォーマットを実行する磁気記録再生装置であって、前記磁気テープの走行方向に対してユ−ザーデータ記録エリアの手前に擬似EODを記録しユーザーデータを記録した後に真のEODする記録系と、磁気テープの再生信号から前記擬似EDOを選択的にスキップしてユ−ザーデータ記録エリアのユーザーデータを再生出力する再生系とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2記載の磁気記録再生装置は、請求項1において、前記記録系は、単数または複数の擬似EODを記録するよう構成されたことを特徴とする。
本発明の請求項3記載の磁気記録再生装置は、請求項2において、前記再生系は、入力パスワードに応じた数の擬似EODをスキップするよう構成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4記載の磁気記録再生装置は、請求項1において、前記記録系は、入力パスワードに応じた数の擬似EODを記録するよう構成されたことを特徴とする。
本発明の請求項5記載の磁気記録再生装置は、請求項3または請求項4において、ユーザーデータを外部機器との間でやり取りする通信ラインを介して前記外部機器から入力された前記入力パスワードを読み取って運転するよう構成したことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6記載の磁気記録再生装置は、請求項3または請求項4において、磁気記録再生装置本体に設けられている入力手段から入力された前記入力パスワードを読み取って運転するよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この構成によれば、磁気テープに記録されたデータを再生する際にパスワードを入力し、そのパスワードに対比される擬似EODの個数と磁気テープに記録された擬似EODの数が一致した場合に、磁気テープに記録されたデータを再生することができるので、高い機密保持性をもった磁気記録再生装置が提供できる。
【0015】
従来のDDSフォーマットに対して、実際のユ−ザーデータ記録エリアの前に、擬似EODを複数個記録し(個数は、先に選択したパスワードによって決まる)、続いてユーザーデータを記録した後に真のEODを記録する。
【0016】
従来のDDSフォーマット対応の磁気記録再生装置では、擬似EODがあるためにユーザーデータは再生できない。また、対応済みのファムウェアで同記録テープをリードする場合も、パスワードが一致しない場合には擬似EODを認識して、ユーザーデータをリードできない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
なお、従来例を示す図5〜図9と同様の作用をなすものには同一の符号を付けて説明する。
【0018】
図1は、本発明による磁気記録再生装置を示す。
ワークステーションのサーバー用のデータバックをバックアップするための磁気記録再生装置本体1は、ワークステーション2にSCSIなどの通信ライン3を介して接続されている。
【0019】
磁気記録再生装置本体1は制御手段4と回転形磁気ヘッド5を介して磁気テープ6にアクセスする再生手段7,記録手段8などを内蔵している。具体的には、図7に示すように、制御手段4と再生手段7,記録手段8の他にオートローダ9などを内蔵した磁気記録再生装置本体1と、図8に示すように複数のカートリッジ10がセットされるマガジン11とで構成されている。マガジン11は磁気記録再生装置本体1の着脱口12から挿入されて前記オートローダ9にセットされる。回転形磁気ヘッド5がアクセスする磁気テープ6は、ワークステーション2のバックアップアプリケーション13からまたは磁気記録再生装置本体1の前面パネルに設けられた入力手段14から指定された特定カートリッジ10が回転形磁気ヘッド5によってアクセスできるように前記オートローダ9が運転される。
【0020】
前記入力手段14は、図9に示す液晶表示パネルDPと、イジェクトスイッチSW1,選択ボタンスイッチSW2,入力ボタンスイッチSW3で構成されている。
ワークステーション2から通信ライン3を介して記録動作の指示を受けた磁気記録再生装置本体1は、制御手段4がこれを検出して図2を実行する。なお、制御手段4には入力パスワードに対応したパラメータが書き込まれた対比テーブル22が設けられている。さらに、磁気記録再生装置本体1には、パスワード入力手段23が設けられている。この実施の形態においてパスワード入力手段23は、例えば、入力ボタンスイッチSW3を操作してファンクションがどの状態に切り替わっているのかを液晶表示パネルDPの表示内容から読み取って、パスワード入力モードに切り替えられた状態において、選択ボタンスイッチSW2を操作して目的のパスワードを入力できるように構成されている。
【0021】
図2のステップS1では、前記パスワード入力手段23によってパスワードを入力する。ステップS2ではステップS1で読み取った入力パスワードをキーに対比テーブル22を検索して擬似EODの個数を読み出す。
【0022】
ステップS3では、ステップS1で読み取った入力パスワードが前記対比テーブル22に登録されているかどうかをチェックする。このステップS3において、「入力パスワードが登録されていない」と判定した場合には、ステップS4を飛び越してステップS5では図6に示した一般的なDDSフォーマットでの記録を実行する。
【0023】
ステップS3において、「入力パスワードが登録されている」と判定した場合には、ステップS4を実行してからステップS5を実行して、結果的には図3に示すフォーマットでの記録を実行する。具体的には、ユーザーデータエリア15の位置に対して磁気テープ6の走行方向の手前位置にデバイスデータ16,リファレンスデータ17,システムデータ18,ベンダーグループデータ19を順に記録し、ユーザーデータの記録エリアの手前位置に、ステップS4で前記対比テーブル22から読み出した回数だけEOD(End Of Data)を書き込む。ここでは、EOD1,EOD2,・・・・,EODXのX個のEODが書き込まれている。EODXに続いてステップS5ではユーザーデータ15とEOD20が書き込まれる。ここでは、EOD1,EOD2,・・・・,EODXを擬似EODと呼び、ユーザーデータ15に続いたEOD20を真のEODと呼ぶ。
【0024】
ワークステーション2から通信ライン3を介して再生動作の指示を受けた磁気記録再生装置本体1は、制御手段4がこれを検出して図4を実行する。
ステップS1では、前記パスワード入力手段23によってパスワードを入力する。ステップS2ではステップS1で読み取った入力パスワードをキーに対比テーブル22を検索して擬似EODの個数を読み出す。ステップS3では、ステップS1で読み取った入力パスワードが前記対比テーブル22に登録されているかどうかをチェックする。このステップS3において、「入力パスワードが登録されていない」と判定した場合には、ステップS4を飛び越してステップS5,S6では図6に示した一般的なDDSフォーマットでの再生のステップS1,ステップS2を実行する。
【0025】
ステップS3において、「入力パスワードが登録されている」と判定した場合には、ステップS4を実行してからステップS5を実行する。
このように構成したため、図3のフォーマットで記録されたユーザーデータを再生しようとする場合に、正規のパスワードを入力して再生を実施した場合には、図4のステップS4でX個の擬似EOD20をスキップするようにセットされて、擬似EOD24を検出してもこれを真のEOD20と誤って認識しない。したがって、X個の擬似EODをスキップしてユーザーデータを再生して通信ライン3を介してワークステーション2へバックアップデータを送り、真のEOD20を検出して再生を終了する。
【0026】
正規のパスワードを入力せずに再生を実施した場合には、最初の擬似EOD24を検出すると、これを真のEOD20と誤認識して直ちに再生終了を実行するので、ワークステーション2へバックアップデータを送らない。
【0027】
したがって、図3のフォーマットで記録した磁気テープ6については、図4に示したようにステップS4を実行するファームウェアを有した特定の磁気記録再生装置を使用し、なおかつ、パスワードの一致を検出しない限り再生することができないので、パスワードの一致だけで読み出せる従来の装置よりも高い機密保持性を得ることができる。
【0028】
なお、前記磁気テープの走行方向に対してユ−ザーデータ記録エリアの手前に擬似EODを記録しユーザーデータを記録した後に真のEODする記録系は、制御手段4と記録手段8とで構成されている。また、磁気テープの再生信号から前記擬似EDOを選択的にスキップしてユ−ザーデータ記録エリアのユーザーデータを再生出力する再生系は、制御手段4と再生手段7とで構成されている。
【0029】
なお、上記の構成では磁気記録再生装置本体1に設けたパスワード入力手段23からのパスワード入力に応答して動作するように構成したが、前記通信ラインから、外部機器としてのワークステーション2のバックアップアプリケーション13から入力されたパスワードを読み取って運転するよう構成することもできる。
【0030】
上記の各実施の形態では、磁気テープ6に書き込まれる擬似EODの数は、EOD1,EOD2,・・・・,EODXの複数個であったが、パスワードに対応して対比テーブル22に登録される擬似EODの数は、単数でもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
DDSテープストレージドライブによって磁気テープにバックアップされるユーザーデータのデータ保護の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の磁気記録再生装置の構成図
【図2】同実施の形態の制御手段の記録時のフローチャート図
【図3】同実施の形態の記録フォーマット図
【図4】同実施の形態の制御手段の再生時のフローチャート図
【図5】従来の磁気記録再生装置の構成図
【図6】一般的なDDSフォーマットの記録フォーマット図
【図7】従来の磁気記録再生装置の外観斜視図
【図8】従来の磁気記録再生装置のマガジンとカートリッジの外観斜視図
【図9】従来の磁気記録再生装置の正面図
【図10】従来の記録時のフローチャート図と再生時のフローチャート図
【符号の説明】
【0033】
1 磁気記録再生装置本体
2 ワークステーション
3 通信ライン
4 制御手段
5 回転形磁気ヘッド
6 磁気テープ
7 再生手段
8 記録手段
9 オートローダ
10 カートリッジ
11 マガジン
13 バックアップアプリケーション
14 入力手段
15 ユーザーデータエリア
16 デバイスデータ
17 リファレンスデータ
18 システムデータ
19 ベンダーグループデータ
DP 液晶表示パネル
SW1 イジェクトスイッチ
SW2 選択ボタンスイッチ
SW3 入力ボタンスイッチ
20 真のEOD
22 対比テーブル
23 パスワード入力手段
24 擬似EOD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープのユ−ザーデータ記録エリアにデータを読み書きし、磁気テープの走行方向に対して前記ユ−ザーデータ記録エリアに書き込まれたデータの後ろにEOD(End Of Data)を書き込むデータフォーマットを実行する磁気記録再生装置であって、
前記磁気テープの走行方向に対してユ−ザーデータ記録エリアの手前に擬似EODを記録しユーザーデータを記録した後に真のEODする記録系と、
磁気テープの再生信号から前記擬似EDOを選択的にスキップしてユ−ザーデータ記録エリアのユーザーデータを再生出力する再生系と
を備えた磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記記録系は、単数または複数の擬似EODを記録するよう構成された
請求項1記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記再生系は、入力パスワードに応じた数の擬似EODをスキップするよう構成された
請求項2記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記記録系は、入力パスワードに応じた数の擬似EODを記録するよう構成された
請求項1記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
ユーザーデータを外部機器との間でやり取りする通信ラインを介して前記外部機器から入力された前記入力パスワードを読み取って運転するよう構成した
請求項3または請求項4記載の磁気記録再生装置。
【請求項6】
磁気記録再生装置本体に設けられている入力手段から入力された前記入力パスワードを読み取って運転するよう構成した
請求項3または請求項4記載の磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−26490(P2007−26490A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203742(P2005−203742)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】