説明

磁気記録媒体の製造方法

【課題】複数の磁性体記録要素を有する磁気記録層を有する磁気記録媒体の製造方法に関する。
【解決手段】(i)中間層の上に設けたアルミニウム層を陽極酸化することによりアルミニウム層をアルミナ層に変換させると同時にホールを形成し、中間層を露出させること、および(ii)アルミナ層と中間層との性質の違いにより、超臨界流体に溶解した磁性体金属の有機金属化合物を選択的に還元し、ホール底面の中間層表面に選択的かつ均一に磁性体金属を堆積させること、により磁気的かつ熱的に分離された複数の磁性体記録要素を有する磁気記録媒体を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の磁性体記録要素を有する磁気記録層を有する磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクドライブは、使用用途の拡大や小型化の流れにあり、ドライブに搭載される磁気記録媒体においてはますますの高記録密度化が求められている。そこで、近年の磁気ディスクの高記録密度化に伴い、磁気記録方式は従来の面内記録方式から垂直記録方式に移行している。
【0003】
記録密度を上げるためにはビットサイズをより小さくしなくてはならないが、ビットサイズを小さくしていくと熱揺らぎによる記録された信号の劣化、つまり磁化のランダムな反転が生じやすくなるという問題が顕在化してきた。一方、熱揺らぎを防止するため、磁気記録媒体に結晶磁気異方性エネルギー定数の大きい材料を用いると、保磁力が大きくなり、このため磁化の反転に要する磁界も大きくなり、情報の書き込みが困難となる。
【0004】
そこで、このような熱揺らぎによる記録された信号の劣化を回避するために熱アシスト記録方式が提案されている(特許文献1、特許文献2、および非特許文献1など参照)。熱アシスト記録方式は、レーザ光照射などにより記録媒体をキュリー温度付近まで加熱して、その保磁力を小さくしたところで記録を行い、その後急冷却して保磁力を大きくし、情報の保存を行うものである。このような方式を用いることで、低い磁場でも書き込みができ、かつ熱揺らぎによる長期安定性も確保することができる。
【0005】
しかし、上記熱アシスト記録方式を用いた場合、従来の連続的な磁気記録媒体では、昇温時に隣接する磁性体記録要素も昇温してしまうという問題がある。
【0006】
さらに、磁気記録媒体の高記録密度化に伴い、磁気ヘッドの記録磁界の広がりに起因する記録対象トラック以外(隣接トラック)への書き込み(クロスライト)、および/または対象トラック以外の信号の読み出し(クロスリード)などの問題が生じている。
【0007】
このような課題は、磁性体記録要素を磁気的に分離するのと同時に、熱的にも磁性体記録要素毎に分離ができれば解決できる。そこで、全ての磁性体記録要素を磁気的、及び熱的に分離することを目的としたビット・パターンド・メディア(BPM)と呼ばれる考えが提案されている(非特許文献2など参照)。
【0008】
現在、BPM方式についてはいくつかの方式が提案されているが、その中の一つにアルミニウムの陽極酸化により形成したアルミナナノホール(以下ANHと呼ぶ)を利用したBPMがある。
【0009】
ANHは、アルミニウム層に形成された微小くぼみが起点となって陽極酸化中に自己組織的に形成されるため、上述したくぼみの配列を三角配列や正方配列に形成しておくと、得られるANHを三角配列や正方配列に制御することができることが知られている(特許文献3、非特許文献3など)。また、ANHを形成しているアルミナは非磁性材料であり、熱伝導率も非常に小さな材料である。
【0010】
そこで、配列制御されたANHに、電気メッキ法などで磁性体を埋め込むことにより、各磁性体記録要素が、磁気的にも、熱的にも分離され、ホール一つが1ビットに相当する磁気記録媒体が形成できる(特許文献4および非特許文献2、3など)。
【0011】
しかし、上述したような優れた特徴を持つANHを用いたBPM方式の磁気記録媒体においても、高記録密度化の検討が進むにつれていくつかの問題が出てきた。
【0012】
その一つは、微細なANHに電気メッキ法で磁性体を重点する場合には、充填量が不均一になりやすい点である。この現象は、半径25nm以下のANHにおいて、特に顕著である。これには下記の理由があると推測される。
【0013】
ANHの半径をr、メッキ液とANH間の表面張力をγ、ANHにメッキ液を浸入させるのに必要な力をΔPとすると、これらの関係はラプラスの式と呼ばれる(1)式で与えられる。
【0014】
【数1】

【0015】
すなわち、ANH半径rが小さくなると、これに逆比例してメッキ液をANHに浸入させるのに必要な力は増大する。その結果、半径が25nm以下になるとメッキ液がANHに浸入するのが困難となり、メッキによりANH中に磁性体を均一に充填することが難しくなると考えられる。
【0016】
【特許文献1】特開2006-12249号公報
【特許文献2】特開2003-45004号公報
【特許文献3】特公昭51-21562号公報
【特許文献4】特開2005-120421号公報
【非特許文献1】FUJITSU, Vol. 58, No.1,p.85-89(2007)
【非特許文献2】FUJITSU, Vol. 58, No.1,p.90-98(2007)
【非特許文献3】益田秀樹 他、表面化学、Vol.25, No.5, pp.260-264(2004)
【非特許文献4】近藤英一、表面技術、Vol.57,No.10, pp.13-18(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、ANHを用いたBPM方式の磁気記録媒体の製造方法において、磁性体金属材料を、微細なANHに均一かつ選択的に充填する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ANH半径を25nm以下にしても磁性体金属含有溶液がANH内部に容易に浸入し、その結果ANHに磁性体金属を均一かつ選択的に重点することが可能なANHを用いた磁気記録媒体の作製方法を提供するものである。
【0019】
詳細には、本発明は、(i)中間層の上に設けたアルミニウム層に陽極酸化により前記アルミニウム層をアルミナ層に変換すると同時にホールを形成し、中間層を露出すること、および(ii)アルミナ層と中間層との性質の違いにより、超臨界流体に溶解した磁性体金属の有機金属化合物を選択的に還元し、ホール底面の中間層表面に選択的かつ均一に磁性体金属を堆積させること、により磁気的かつ熱的に分離された複数の磁性体記録要素を有する磁気記録媒体を製造する方法を提供する。
【0020】
さらに、本発明は上記製造方法における超臨界流体が水素ガスを溶解した超臨界COであることを含む。また、本発明は、上記製造方法における磁性体金属がコバルト、鉄、ニッケル、あるいは鉄/白金、コバルト/白金、鉄/パラジウム、コバルト/パラジウムからなる合金からなる群から選択されることを含む。本発明は、上記製造方法における有機金属化合物が、金属アセチルアセトナート、金属アセテート、金属アセチルアセテート、シクロオクタジエンジメチル金属、金属ヘキサフルオロアセチルアセトナート、金属ジイソブチリルメタナートであることを含む。
【0021】
さらに、本発明は、上記いずれかの製造方法により製造された磁性体記録媒体も含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の作製方法を用いることにより、ANHを用いたBPM方式の磁気記録媒体において、微細なANHに磁性体金属を選択的かつ均一に充填し、微細な磁性体記録要素を形成することができる。これにより、高記録密度を達成しながら、安価で、安定供給が可能なBPM方式の磁気記録媒体の製造ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の単なる一例であって、当業者であれば、適宜設計変更可能である。
【0024】
図1は、本発明の製造方法により、磁気的かつ熱的に分離された複数の磁性体記録要素を有する磁気記録媒体を製造する工程を示したものである。本発明により製造された磁気記録媒体5000は、基板102上に、下地層106、SUL層105、中間層104、中間層104上に設けられたアルミナ層113、アルミナ層113に形成されたホール116、およびホール116の底面に露出した中間層104上に堆積した磁性体金属層117を有する(図1E参照)。以下、工程ごとに説明する。
【0025】
(中間層形成工程)
まず、下地層106、SUL層105、中間層104を基板102上に形成する(図示せず)。中間層104は、その後に設けられるアルミナ層113および磁性体金属層117の下地層となる。
【0026】
本発明において用いる基板102は、非磁性体であり、かつ、後述するアルミニウム層103の形成およびその陽極酸化に用いられる条件(溶媒、温度など)に耐えるものが用いられる。さらに寸法安定性に優れていることが好ましい。更に詳しくは、非磁性基板102はガラス、またはシリコン単結晶基板などが用いられる。
【0027】
中間層104は導電性であればよい。しかし、中間層104は、陽極酸化処理による中間層104やSUL層105の酸化を抑制するために、Au、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Osなどの貴金属を用いることが好ましい。また、これらの貴金属を用いることにより、中間層104は、磁性体金属層117と中間層104の下に設けられるSUL層105との磁気交換相互作用を調整することもできる。
【0028】
非磁性下地層106は、Ti、またはCrTi合金のようなCrを含む非磁性材料を用いて形成することができる。
【0029】
SUL層105は、磁気記録層に垂直方向磁界を集中させるための層である。SUL層105に用いることのできる軟磁性材料は、FeTaC、センダスト(FeSiAl)合金などの結晶性材料;FeTaC、CoFeNi、CoNiPなどの微結晶性材料;またはCoZrNd、CoZrNb、CoTaZrなどのCo合金を含む非晶質材料を含む。SUL層105の膜厚は、記録に使用する磁気ヘッドの構造や特性によって最適値が変化するが、おおむね10nm以上500nm以下程度であることが、生産性の観点から望ましい。
【0030】
下地層106、SUL層105、中間層104の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。下地層106、SUL層105、中間層104は、通常0.1nm以上20nm以下の膜厚を有する。このような範囲内の膜厚とすることによって、磁気記録層の磁気特性や電磁変換特性を劣化させることなしに、高密度記録に必要な特性を磁気記録層に付与することが可能となる。
【0031】
また、本発明では、任意選択的に中間層104とSUL層105との間にシード層(図示せず)を設けてもよい。シード層は磁気記録層の結晶構造を制御するための層である。シード層の形成に用いることのできる材料は、NiFeAl、NiFeSi、NiFeNb、NiFeB、NiFeNbB、NiFeMo、NiFeCrなどのようなパーマロイ系材料;CoNiFe、CoNiFeSi、CoNiFeB、CoNiFeNbなどのようなパーマロイ系材料にCoをさらに添加した材料;Co;あるいはCoB,CoSi,CoNi,CoFeなどのCo基合金を含む。シード層は磁気記録層の結晶構造を制御するのに充分な膜厚を有することが望ましく、通常の場合、3nm以上50nm以下の膜厚を有することが望ましい。シード層の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0032】
(アルミニウム層形成工程)
次いで、前記中間層104の上に、アルミニウム層103を形成する。アルミニウム層103は後述する方法により陽極酸化され、ホール116を有するアルミナ層113を形成する。アルミナ層113は、BPMにおいて磁性体記録要素を磁気的および熱的に分離する分離層となる。
【0033】
アルミニウム層103の膜厚(すなわちアルミナ層113の膜厚)は、特に限定されるものではない。しかしながら、生産性および記録密度向上の観点から、アルミニウム層103は、好ましくは50nm以下の膜厚を有する。アルミニウム層103の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0034】
(ホール形成工程)
次に、アルミニウム層103を陽極酸化することにより、アルミニウム層103にホール116を形成し、中間層104を露出させる。また、アルミニウム層103は当該工程中に酸化され、非導電性のアルミナ層113へと変換される。以下、図1B〜Dを参照にして、さらに具体的に述べる。
【0035】
(1)第1に、アルミニウム層103の、陽極酸化によりホール116を形成させる起点となる位置に微小くぼみ115を形成させる(図1B)。微小くぼみ115を形成させる方法は、ドライエッチング法など、当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。また、微小くぼみ115を所定のパターンに沿って形成させることにより、後に形成されるホール116を所望のパターンに形成することができる。微小くぼみ115を所定のパターンに形成する方法は、例えば、上記アルミニウム層103の上に任意にマスク層(図示せず)を設け、該マスク層にフォトリソグラフ法および/またはナノインプリント法などの当該技術において知られている任意の方法により所望のパターンを転写後、ドライエッチング法によりアルミニウム層103の一部を除去することにより行ってもよい。例えば、本発明では、直径1〜50nm、間隔3〜100nmのドットパターンで微小くぼみ115を形成することができる。
【0036】
(2)次いで、陽極酸化処理を行い、アルミニウム層103にホール116を形成する(図1C)。当該処理によりアルミニウム層103はアルミナに変換され、非導電性のアルミナ層113が形成される。当該処理は、少なくともホール116の底面に中間層104が露出するまで行う。陽極酸化処理によりアルミナホールを形成する方法は、当該技術において知られている方法を用いることができる。
【0037】
(3)また、上記陽極酸化処理により形成されたホール116に対し、リン酸などによりさらにエッチング処理を行い、ホール116の径を拡大する工程を任意選択的に設けてもよい(図1D)。
【0038】
以上の工程により、底面に中間層104が露出したホール116が所望のパターンで形成されたアルミナ層113を有する加工媒体4000を形成することができる。
【0039】
(磁性体金属の充填工程)
次いで、前記アルミナ層113に形成されたホール116の底面に露出する中間層104の上で超臨界流体に溶解した有機金属化合物を選択的に還元させて、磁性体金属層117を形成する(図1E)。
【0040】
還元されて磁性体金属層117を形成する有機金属化合物は、鉄、コバルト、ニッケルなどを中心金属とする有機金属化合物を含む。好ましくは、該有機金属化合物は、前述の金属を含む金属アセチルアセトナート、金属アセテート、金属アセチルアセテート、シクロオクタジエンジメチル金属、金属ヘキサフルオロアセチルアセトナート、金属ジイソブチリルメタナートを含む。また、鉄、コバルト、ニッケルと合金を作り高い磁性を示す白金、パラジウムなどの貴金属を中心金属とする有機金属化合物も同時に添加してもよい。
【0041】
本発明に用いることができる超臨界流体は、前記有機金属化合物を溶解し、かつその中で該有機金属化合物の還元反応が進行するものであれば特に限定されるものではなく、二酸化炭素(CO)、水、エタン、プロパン、ブタン、ヘプタン、ジメチルエーテル、エタノールなどの既知の超臨界流体を用いることができる。操作性、超臨界流体としての溶媒能、および/または経済性などの観点から、COが好ましい。
【0042】
さらに、有機金属化合物の還元反応を促進させるため、水素などの還元剤を前記超臨界流体に添加してもよい。還元剤は水素が好ましい。添加する還元剤の量は超臨界流体に対して10ppm〜2,000ppmが好ましい。
【0043】
図2は、本実施形態に用いられる超臨界流体による磁性体金属の充填装置の概要である。以下、超臨界流体を用いた磁性体金属の選択的堆積工程の好ましい実施形態を、図2を参照に、さらに具体的に述べる。
【0044】
(1)サイホン式の高圧容器201に入れられた液体COを高圧容器201から取り出し、高圧ポンプ204で反応チャンバー207に供給する。ここで、取り出したCOの一部が取り出しの際に減圧されて気化している場合には、取り出したCOを冷却ユニット203で完全に液化させてもよい。有機金属化合物の還元反応を促進させるために、超臨界流体に少量の水素(還元剤)を添加する場合には、混合装置205を通して、水素(還元剤)を液体COに混合してもよい。
【0045】
(2)反応チャンバー207に、上記工程により形成した、底面に中間層104が露出したホール116が所望のパターンで形成されたアルミナ層113を有する加工媒体4000および適量の有機金属化合物を設置する。
【0046】
(3)前記反応チャンバー207を液体COで満たし、バルブ206aと206bを閉じた後、ヒータ208にて加熱し、超臨界CO流体を生成する。加熱温度は150〜300℃、反応チャンバー内の圧力は10〜15MPaが好ましい。圧力は、反応チャンバーに設けられた圧力計(図示せず)の値を基準に、COの加熱により内部の圧力が目的の圧力より高くなった場合には、バルブ206bを開け、圧力調整器209にて所望の圧力に調整してもよい。
【0047】
(4)反応チャンバー207内の有機金属化合物は、超臨界CO流体に徐々に溶解し、加工媒体4000と接触する。超臨界流体は表面張力がゼロであるため(非特許文献4)、加工媒体4000表面に微細なパターンで形成されたホール116であっても均一に浸入することができる。そして、超臨界CO流体に溶解している有機金属化合物が導電性の中間層104と接触し、有機金属化合物の還元反応が中間層104上で優先的に開始される。一方、非導電性のアルミナ層113上では、有機金属化合物の還元反応が進行しないため、磁性体金属は堆積しない。その結果、アルミナ層113に形成されたホール116の底面に露出する中間層104上のみに、選択的に磁性体金属層117を形成させることができる。ホール116に堆積した磁性体金属層117は、結晶性の改善、配向性の改善のために真空中あるいは中性雰囲気中で熱処理を施してもよい。
【0048】
また、超臨界CO流体を利用した金属充填装置は、図2に示すバッチ式の構成に限らず、例えば超臨界CO流体をフローするタイプ(図示せず)でも良い。
【0049】
さらに、任意選択的に、このようにして得られた磁気記録媒体5000の表面を、ポリッシュして、基板表面形状を整えてもよい。
【0050】
最後に、任意選択的に、アルミナ層113および磁性体金属層117を覆うように、保護層、および/または潤滑剤層を形成してもよい。保護層は、その下にある磁気記録層以下の各構成層を保護するための層である。保護層は、カーボン(アモルファスカーボンなど)、あるいは磁気記録媒体保護膜用の材料として知られている種々の薄膜材料を用いて形成することができる。保護層は、一般的にスパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法、CVD法などを用いて形成することができる。
【0051】
また、潤滑剤層は、記録/読み出し用ヘッドが磁気記録媒体に接触している際の潤滑を付与するための層であり、たとえば、パーフルオロポリエーテル系の液体潤滑剤、または当該技術において知られている種々の液体潤滑剤材料を使用して形成することができる。液体潤滑剤層は、ディップコート法、スピンコート法などの当該技術において知られている任意の塗布方法を用いて形成することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において当業者により種々変更可能である。
【0053】
(実施例1)
φ65mmで、厚さ0.635mmの公称寸法2.5インチのシリコン基板102を、洗浄・乾燥後、主平面上に、スパッタ法を用いて、膜厚2nmのCrTiからなる下地層106、膜厚40nmのCoZrNdからなるSUL層105、膜厚16nmのCoNiFeSiからなるシード層、膜厚12nmのRuからなる中間層104を形成した。その後、膜厚25nmのアルミニウム層103を形成して被加工出発媒体1000とした。
【0054】
この被加工出発媒体1000表面に、ナノプリント法を用いてパターン状のレジスト層を形成した。最初に、被加工出発媒体1000表面に、スピンオングラス(SOG)と呼ばれるレジストを約50nmの膜厚でスピンコートした。次いで、ピッチ間隔25nmで高さ25nmの正方配列を設けたナノインプリント用金型を用い、得られた塗膜に対して、120秒間にわたって、該金型を圧力15kN/cm(150MPa)で押圧し、凹凸パターンを有するレジスト層を形成した。続いて、レジスト層のパターン凹部に残存するSOG残膜を、RIE装置を用いた酸素アッシングにより除去して、アルミニウム層113を露出させた。その後、同じくRIE装置を用い、CFガスを使ってエッチングを行い、アルミニウム層103表面に深さ約30nmの微小くぼみ115を形成した。その後、残ったSOGレジストを全面除去するために、再度、酸素アッシング処理を行った。
【0055】
このようにして得られた微小くぼみ115が形成されたアルミニウム層103を有する加工媒体2000に対し陽極酸化処理を行うことで、微小くぼみ115の位置から主平面に垂直にホール116が形成できた。陽極酸化処理の処理条件は、3℃に冷却した3.5%シュウ酸水溶液中、印加電圧は9.5Vで、印加時間は300秒であった。得られたホール116の直径は6nmであった。ホール116が形成され、中間層104が露出すると流れる電流量が急激に増加するため、電流値を測定して、陽極酸化の終点を決定した。
【0056】
さらに、5%リン酸水溶液に、ホール116が形成された加工媒体3000を300秒浸漬し、ホール116の直径を20〜22nmに拡げた。
【0057】
次いで、図2に示した超臨界流体による非磁性体金属の充填装置を用いて、上記で得られた加工媒体4000の露出した中間層104上に磁性体金属を堆積させた。詳細には、2.5Lの容積を持つ反応チャンバー207中のテフロン(登録商標)製の支持冶具に加工媒体4000を10枚設置し、同時に、コバルト(III)アセチルアセトナート10gを含むテフロン(登録商標)製ビーカーも反応チャンバー207内に設置した。コバルト(III)アセチルアセトナートの量は10gに限らず、アルミナ層113に形成されたホール116を還元された金属コバルトが十分に充填できる量であれば良い。反応チャンバー207を密閉後、バルブ206aを開き、40℃、7.4MPaの水素ガスを溶解させた液体COで反応チャンバー207を満たした。その後、加熱用ヒータ208によりチャンバー内温度を230℃まで上昇させて、超臨界CO流体を生成した。このときの圧力は12MPaであった。当該温度および圧力を60秒間にわたって保持し、加工媒体4000のホール116に金属コバルトを充填した。
【0058】
その後、反応チャンバー207を150℃まで降温し、バルブ206bおよび圧力調整器209を通してCOを排気した。さらに、取り出されたコバルト充填加工媒体5000のコバルトの磁性特性を改善するために、300℃で30分間真空アニール処理を行った。
【0059】
次いで、表面を平坦化するためにCMPを行い、表面の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)を0.2nm以下にするように調整した。さらに、この上にアモルファスカーボン(a−C)からなる膜厚3nmの保護層を形成した。最後に、ディップ法を用いて、潤滑剤からなる膜厚2nmの潤滑剤層を形成し、磁気記録媒体を得た。
【0060】
現時点では、直径25nmの単独ビットサイズを読み書き可能な磁気ヘッドが存在しないため、真空対応磁気力顕微鏡(MFM)を用いて、得られた磁気記録媒体に形成された直径25nmの磁性体記録要素が均一で、しかもそれぞれ単独で磁気分離がされているかを調べた。その結果、各磁性体記録要素は均一な磁性を示しており、また磁気分離も十分になされ、当初の目的であるBPM構造になっていることを確認できた。
【0061】
(実施例2)
実施例1で用いたコバルト(III)アセチルアセトナートの代わりに、有機金属化合物として鉄(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナートを用い、ホール116に金属鉄や金属ニッケルを充填した。他の条件は実施例1と同じである。この場合にも、MFMで調べた結果、各磁性体記録要素とも均一な磁気特性を示した。
【0062】
(実施例3)
実施例1で用いたRuの代わりにOs、Pt、Pd、Ir、Rh、Auを中間層104として設け、また有機金属化合物として、コバルト(III)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナートを用いて、ホール116に金属コバルト、金属鉄、金属ニッケルを充填した。この場合も、他の条件は実施例1と同じである。これらにより得られた磁気記録媒体も、MFMで磁気特性を評価したところ、各磁性体記録要素が均一な磁気特性を示すことが確認された。
【0063】
(実施例4)
実施例1で用いたコバルト(III)アセチルアセトナートの代わりに、有機金属化合物として鉄(III)アセチルアセトナートと白金(II)アセチルアセトナートの混合物を用い、ホール116にFePt合金を充填した。また真空アニールは500℃で行った。他の条件は実施例1と同じである。これにより得られた磁気記録媒体も、MFMで磁気特性を評価したところ、各磁性体記録要素が均一な磁気特性を示すことが確認された。
【0064】
(実施例5)
実施例1で用いたコバルト(III)アセチルアセトナートの代わりに、有機金属化合物としてコバルト(III)アセチルアセトナートと白金(II)アセチルアセトナートの混合物を用い、ホール116にCoPt合金を充填した。また真空アニールは500℃で行った。他の条件は実施例1と同じである。これにより得られた磁気記録媒体も、MFMで磁気特性を評価したところ、各磁性体記録要素が均一な磁気特性を示すことが確認された。
【0065】
(実施例6)
中間層104として、Ruの代わりにOs、Pt、Pd、Ir、Rh、Auを用い、実施例4および5と同様に、ホール116にFePt合金およびCoPt合金をそれぞれ充填した。得られた磁性体記録媒体をMFMで磁気特性を評価したところ、いずれも、各磁性体記録要素が均一な磁気特性を示すことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の磁気記録媒体の製造方法を示した図である。
【図2】本実施形態に用いられる超臨界流体による磁性体金属の充填装置の概要を示した図である。
【符号の説明】
【0067】
102 基板
103 アルミニウム層
104 中間層
105 SUL層
106 下地層
113 アルミナ層
115 微小くぼみ
116 ホール
117 磁性体金属層
1000 被加工出発媒体
2000 加工媒体
3000 加工媒体
4000 加工媒体
5000 磁気記録媒体
201 高圧容器
203 冷却ユニット
204 高圧ポンプ
205 混合装置
206a バルブ
206b バルブ
207 反応チャンバー
208 ヒータ
209 圧力調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体基板上に中間層を形成する工程と、
中間層の上にアルミニウム層を形成する工程と、
前記アルミニウム層を陽極酸化することによりアルミニウム層をアルミナ層に変換させると同時にホールを形成し、中間層を露出させる工程と、
磁性体金属の有機金属化合物を溶解した超臨界流体を用い、前記有機金属化合物を金属に還元することで、露出した中間層の上に磁性体金属を選択的に堆積し、複数の磁性体記録要素を有する磁気記録層を形成する工程と
を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記超臨界流体が水素ガスを溶解した超臨界CO流体であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記磁性体金属がコバルト、鉄、ニッケル、あるいは鉄/白金、コバルト/白金、鉄/パラジウム、コバルト/パラジウムからなる合金からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記有機金属化合物が金属アセチルアセトナート、金属アセテート、金属アセチルアセテート、シクロオクタジエンジメチル金属、金属ヘキサフルオロアセチルアセトナート、金属ジイソブチリルメタナートのいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記中間層がRu、Os、Pt、Pd、Ir、Rh、Auおよびこれらの合金からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法で製造された磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−289357(P2009−289357A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142638(P2008−142638)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】