説明

磁気記録媒体用基板、及び磁気記録媒体用基板の製造方法

【課題】樹脂製基板の水に対する濡れ性を向上させることで、樹脂製基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能な磁気記録媒体用基板を提供する。
【解決手段】この実施形態に係る磁気記録媒体用基板は、円板状の形状を有し、樹脂を母材としている。基板の表面においては、水の接触角が0°より大きく、30°未満となっている。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性を向上させることができる。その結果、純水を用いて磁気記録媒体用基板を洗浄することができるため、洗浄性を向上させ、さらに、環境面での安全性が担保される。また、水を含む研磨剤を用いて磁気記録媒体用基板を研磨した場合に、均質に基板表面を研磨することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気ディスク記録装置の基板に用いられる磁気記録媒体用基板及びその製造方法に関し、特に、樹脂製の基板を用いた磁気記録媒体用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどに用いられる磁気ディスク記録装置には、従来からアルミニウム基板又はガラス基板が用いられている。そして、この基板上に金属磁気薄膜が形成され、金属磁気薄膜を磁気ヘッドで磁化することにより情報が記録される(例えば特許文献1、特許文献2、及び特許文献3など)。
【0003】
例えばアルミニウム基板を用いる場合、アルミニウム板をプレス成形して円板状にした後、表面に対して高精度の研削・研磨加工及び洗浄工程を施すことにより、表面を平滑化し、続いて、めっき処理を施すことによりニッケル−リン(Ni−P)合金を基板の表面に形成する。その後、研磨加工、テクスチャー加工を施し、さらにスパッタリングによりCo系合金の磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0004】
また、ガラス基板を用いる場合、ガラス素材を溶融し、溶融したガラスをプレス成形し、円板状のガラス基板を作製する。そして、ガラス基板の表面に対して高精度の研削・研磨加工及び洗浄工程を施すことにより、表面を平滑化した後、アルカリの溶融塩によるイオン交換によって表面を化学強化処理し、精密洗浄工程を経た後、テクスチャー加工を施し、さらにスパッタリングによりCo系合金の磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0005】
ところで、磁気記録媒体用基板としてプラスチック基板などの樹脂製基板を採用する試みがなされている。この場合、樹脂製基板上に磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0006】
【特許文献1】特開2003−54965号公報
【特許文献2】特開2003−55001号公報
【特許文献3】特開2000−163740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、樹脂製基板を用いて磁気記録媒体を製造する場合、樹脂製基板の濡れ性に関して、樹脂製基板の洗浄工程や研磨工程において問題があった。
【0008】
洗浄工程においては、ドライエッチングやスプレー洗浄などの物理的洗浄法や、樹脂との濡れ性が良好で溶剤効果の無いフロン系有機洗浄剤を用いた湿式洗浄法によって、樹脂製基板を洗浄している。しかしながら、洗浄工程が煩雑であったり、十分な洗浄効果が得られなかったり、有機溶剤を用いることで、環境に対して悪影響を与える問題があった(環境面の問題)。さらに、樹脂製基板に有機溶剤が残留することで、磁気記録媒体の品質面でも問題があった(洗浄性の問題)。
【0009】
また、研磨工程では、水を含む研磨剤を用いて樹脂製基板の表面を研磨している。しかしながら、水に対する濡れ性が悪い樹脂製基板では研磨剤をはじいてしまうため、研磨を均質に行うことが困難であり、その結果、樹脂製基板に研磨むら等が発生する問題があった(加工性の問題)。
【0010】
以上のように、従来においては、洗浄工程において、環境面と洗浄性について問題があり、研磨工程において加工性の問題があった。
【0011】
この発明は上記の問題を解決するものであり、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性を向上させることで、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能な磁気記録媒体用基板、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の第1の形態は、円板状の形状を有する樹脂製の母材を基板とし、前記基板の表面において、水の接触角が0°より大きく、30°未満であることを特徴とする磁気記録媒体用基板である。
また、この発明の第2の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板に、親水性材料が含まれていることを特徴とする。
また、この発明の第3の形態は、第2の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記親水性材は、無機材料であることを特徴とする。
また、この発明の第4の形態は、第2の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記親水性材は、酸化物であることを特徴とする。
また、この発明の第5の形態は、第2から第4のいずれかの形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記親水性材料が前記基板の全体に占める体積の割合が、0.05〜30[%]であることを特徴とする。
また、この発明の第6の形態は、第2から第5のいずれかの形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板の表面において、前記親水性材料の表面占有率が0.5〜99.5[%]であることを特徴とする。
また、この発明の第7の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板は、アルカリ性水溶液に浸漬されたことを特徴とする。
また、この発明の第8の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板は、酸性水溶液に浸漬されたことを特徴とする。
また、この発明の第9の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板は、中性洗剤水溶液に浸漬されたことを特徴とする。
また、この発明の第10の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板は、紫外線が照射されたことを特徴とする。
また、この発明の第11の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板は、プラズマが照射されたことを特徴とする。
また、この発明の第12の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、放電処理が施されたことを特徴とする。
また、この発明の第13の形態は、円板状の形状を有する樹脂製の基板をアルカリ性水溶液に浸漬する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法である。
また、この発明の第14の形態は、第13の形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法であって、前記アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア水の中から選択される水溶液であることを特徴とする。
また、この発明の第15の形態は、円板状の形状を有する樹脂製の基板を酸性水溶液に浸漬する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法である。
また、この発明の第16の形態は、第15の形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法であって、前記酸性水溶液は、塩酸、次亜塩素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、炭酸、王水、クロム酸、臭化水素酸、フッ化珪酸、フッ化水素酸、ほう酸、酢酸、シュウ酸、りん酸、蟻酸、クエン酸、シュウ酸、オレイン酸、マレイン酸の中から選択される水溶液であることを特徴とする。
また、この発明の第17の形態は、円板状の形状を有する樹脂製の基板を中性洗剤水溶液に浸漬する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法である。
また、この発明の第18の形態は、第17の形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法であって、前記中性洗剤は、イオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤であることを特徴とする。
また、この発明の第19の形態は、円板状の形状を有する樹脂製の基板に対して、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法である。
また、この発明の第20の形態は、第19の形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法であって、前記紫外線は、150〜350nmの波長を有する紫外光線であることを特徴とする。
また、この発明の第21の形態は、円板状の形状を有する樹脂製の基板に対して、プラズマを照射する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法である。
また、この発明の第22の形態は、第21の形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法であって、前記プラズマは、1hPa以上の気圧下で発生する低真空プラズマ若しくは大気圧プラズマであることを特徴とする。
また、この発明の第23の形態は、円板状の形状を有する樹脂製の基板に対して、放電処理を施すことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法である。
また、この発明の第24の形態は、第23の形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法であって、前記放電は、コロナ放電であることを特徴とする。
また、この発明の第25の形態は、第13から第24のいずれかの形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法であって、前記基板の表面を、水を含む研磨剤で研磨する工程を含むことを特徴とする。
また、この発明の第26の形態は、第13から第24のいずれかの形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法であって、前記基板を純水で洗浄する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、基板表面における水の接触角が、0°より大きく30°未満であるため、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になる。
【0014】
磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になることにより、洗浄工程では、有機溶剤系の洗浄剤を用いず、純水を用いて磁気記録媒体用基板を洗浄することが可能となる。純水は安価で安全(環境への影響も少ない)で、かつ洗浄能力が高いため、従来における環境面と洗浄性の問題を解決することができる。
【0015】
また、水を含む研磨剤に対して磁気記録媒体用基板の濡れ性が良くなるため、研磨工程では、研磨を均質に行うことが可能となる。これにより、従来における加工性の問題を解決し、研磨むらの発生を抑えた磁気記録媒体用基板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(構成)
この発明の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の構成について説明する。この実施形態に係る磁気記録媒体用基板は円板状の形状を有し、円板の中央に貫通孔が形成されている。また、この磁気記録媒体用基板は樹脂により構成されている。そして、この磁気記録媒体用基板は、ハードディスクなどの磁気記録媒体の基板として用いられる。
【0017】
この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の表面における水の接触角は、0°より大きく30°未満となっている。また、基板表面における水の接触角は、0°より大きく20°未満となっていることが好ましく、さらに、10°未満、又は5°未満となっていることがより好ましい。水の接触角が小さいほど、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になるため、水の接触角が小さいほど好ましい。
【0018】
基板表面における水の接触角を、0°より大きく30°未満とすることで、磁気記録媒体用基板の水に対する撥水性を抑えて、水に対する濡れ性が良好になる。これにより、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。以下において、(1)洗浄性及び(2)加工性について説明する。
【0019】
(1)洗浄工程
まず、洗浄工程における作用及び効果について説明する。磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が向上するため、洗浄工程において、純水を用いて磁気記録媒体用基板を洗浄することが可能となる。
【0020】
従来技術に係る磁気記録媒体用基板は、水の接触角が30°以上であり、水に対する濡れ性が悪かったため、純水を用いて磁気記録媒体用基板を洗浄することが困難であった。つまり、純水を用いて磁気記録媒体用基板を洗浄しても、基板が純水をはじいてしまうため、良好に洗浄することが困難であった。そのため、磁気記録媒体用基板に対する濡れ性が良い有機溶剤系の洗浄剤を用いていたが、環境面と洗浄性について問題があった。
【0021】
これに対して、この実施形態によると、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になるため、純水を用いて磁気記録媒体用基板を洗浄することができ、従来における環境面と洗浄性の問題を解決することができる。つまり、純水は、安価で安全(環境への影響が少ない)で、かつ洗浄能力が高いため、環境面と洗浄性の問題を解決することが可能となる。さらに、純水は、有機溶剤系の洗浄剤に比べて管理が容易であるという効果もある。
【0022】
また、撥水性がある磁気記録媒体用基板は表面張力が高いため、純水の洗浄水に浸漬させることは困難である。そのため、従来技術に係る磁気記録媒体用基板を純水で良好に洗浄することは困難であった。これに対して、この実施形態によると、磁気記録媒体用基板の撥水性を抑えることが可能となるため、磁気記録媒体用基板を純水の洗浄水に容易に浸漬させることが可能となる。そのことにより、磁気記録媒体用基板を純水で良好に洗浄することが可能となる。
【0023】
(2)研磨工程
次に、研磨工程における作用及び効果について説明する。研磨工程では、水を含む研磨剤が用いられる。研磨工程では、従来技術に係る研磨技術を用いることができる。基板の研磨は例えば、対向配置した2つの回転可能な定盤の対向する面にパッドを貼り付け、2つのパッド間に基板を配置し、磁気記録媒体用基板表面にパッドを接触させながら回転させると同時に、基板表面に研磨剤を供給する方法で行われる。研磨剤としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、二酸化珪素、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、タングステンカーバイトなどを水や研削水溶液に1%〜数十%の濃度で分散させた研磨スラリーなどが用いられる。磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になるため、研磨工程において、基板表面を均質に研磨することができ、研磨むらの発生を抑えることが可能となる。
【0024】
従来技術に係る磁気記録媒体用基板は、水の接触角が30°以上であり、水に対する濡れ性が悪かったため、基板表面が研磨剤をはじいてしまい、基板表面を均質に研磨することは困難であった。これにより、研磨むら等が発生してしまっていた。
【0025】
これに対して、この実施形態によると、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になるため、基板表面が研磨剤をはじかず、基板表面を均質に研磨することが可能となる。
【0026】
次に、この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の材料について説明する。磁気記録媒体用基板には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は活性線硬化性樹脂の他、様々な樹脂を用いることができる。
【0027】
熱可塑性樹脂として、磁気記録媒体用基板には、例えば、ポリカーボネイト、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリルスチレン樹脂(MS樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ABS樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂など)、ポリオレフィン樹脂(PE樹脂、PP樹脂など)、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、又は、アクリル樹脂などを用いることができる。また、熱硬化性樹脂として、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(BMC樹脂など)、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又は、ポリベンゾイミダゾール樹脂などを用いることができる。その他、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)などを用いることができる。
【0028】
活性線硬化性樹脂として、例えば、紫外線硬化性樹脂が用いられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂、紫外線硬化性エポキシ樹脂、紫外線硬化シリコン系樹脂、又は、紫外線硬化アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0029】
また、塗設された硬化前の層に活性線を照射することによって硬化するときに、光開始剤を用いて硬化反応を促進させることが好ましい。このとき光増感剤を併用しても良い。
【0030】
また、空気中の酸素が上記硬化反応を抑制する場合は、酸素濃度を低下させる、または除去するために、例えば不活性ガス雰囲気下で活性線を照射することもできる。活性線としては、赤外線、可視光、紫外線などを適宜選択することができるが、硬化速度などの生産性の面で紫外線を選択することが好ましいが、特に限定されるものではない。また、活性線の照射中、または前後に加熱によって硬化反応を強化させても良い。
【0031】
さらに、磁気記録媒体用基板には、液晶ポリマー、有機/無機ハイブリッド樹脂(例えば、高分子成分にシリコンを骨格として取り込んだもの)などを用いても良い。なお、上記に挙げた樹脂は磁気記録媒体用基板に用いられる樹脂の一例であり、この発明に係る基板がこれらの樹脂に限定されることはない。2種以上の樹脂を混合して樹脂製の基板としても良く、また、別々の層として異なる成分を隣接させた基板としても良い。
【0032】
また、母材としての樹脂は、極力、耐熱温度又はガラス転移温度Tgが高い方が望ましい。樹脂製の磁気記録媒体用基板にはスパッタリングにより磁性層が形成されるため、耐熱温度又はガラス転移温度Tgは、そのスパッタリングにおける温度以上であることが望ましい。例えば、耐熱温度又はガラス転移温度Tgが150℃以上である樹脂を用いることが望ましく、より好ましくは200℃以上である樹脂を用いることが望ましい。
【0033】
耐熱温度又はガラス転移温度Tgが150℃以上の代表的な樹脂として、耐熱性ポリカーボネイト、シリコン樹脂、テフロン樹脂、無機フィラーを充填したフェノール、メラニン、エポキシ、ポリフェニレンスルファイド、不飽和ポリエステルなどの樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、BMC樹脂、又は、液晶ポリマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)として、ユーデル(ソルベイアデバンストポリマーズ)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)として、ウルテム(日本GEプラスチック)、ポリアミドイミド樹脂として、トーロン(ソルベイアデバンストポリマーズ)、ポリイミド樹脂(熱可塑性)として、オーラム(三井化学)、ポリイミド(熱硬化性)として、ユーピレックス(宇部興産)、又は、ポリベンゾイミダゾール樹脂として、PBI/Celazole(クラリアントジャパン)が挙げられる。また、液晶ポリマーとして、スミカスーパーLCP(住友化学)、ポリエーテルエーテルケトンとして、ビクトレックス(ビクトレックスMC)が挙げられる。
【0034】
(製造方法)
次に、この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の製造方法について説明する。ここでは、水の接触角を0°より大きく30°未満にするための方法として、3つの形態について説明する。
【0035】
(第1の形態)
まず、第1の形態について説明する。この第1の形態では、薬品を用いることで磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性を改善する。薬品としては、例えば、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、中性洗剤液、オゾン水、イオン水などを用いる。
【0036】
そして、磁気記録媒体用基板をアルカリ性水溶液などの薬品に浸漬する。これにより、磁気記録媒体用基板の表面に存在する撥水性の膜を除去することができる。その結果、水に対する接触角を0°より大きく30°未満にすることができ、基板表面の親水性を高めることができる。
【0037】
(アルカリ性水溶液)
アルカリ性水溶液には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア水などを用いる。
【0038】
(酸性水溶液)
また、酸性水溶液には、例えば、塩酸、次亜塩素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、炭酸、王水、クロム酸、臭化水素酸、フッ化珪酸、フッ化水素酸、ほう酸、酢酸、シュウ酸、りん酸、蟻酸、クエン酸、シュウ酸、オレイン酸、マレイン酸、の中から選択される水溶液などを用いる。
【0039】
(中性洗剤液)
また、中性洗剤液には、例えば、イオン性界面活性剤、若しくは非イオン性界面活性剤などを用いる。より具体的には、イオン性界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム 、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、高級アルコール硫酸エステル塩などがあり、非イオン性界面活性剤としては、しょ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪族アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどがある。
【0040】
また、樹脂材料によって薬品を適宜選択して使用することが好ましい。例えば、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ABS樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂など)、ポリオレフィン樹脂(PE樹脂、PP樹脂など)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂などには、アルカリ性水溶液を用いて処理を行うことが好ましい。
【0041】
また、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂など)、ポリオレフィン樹脂(PE樹脂、PP樹脂など)、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などには、酸性水溶液を用いて処理を行うことが好ましい。
【0042】
(浸漬の条件)
例えば、水酸化ナトリウム水溶液に磁気記録媒体用基板を浸漬する場合について説明する。例えば、濃度が0.001重量%〜30重量%の水酸化ナトリウム水溶液に磁気記録媒体用基板を浸漬することで、基板に対する水の接触角を0°より大きく30°未満とすることができる。また、水酸化ナトリウム水溶液の温度を、5[℃]〜50[℃]にすることが好ましい。また、水酸化ナトリウム水溶液に磁気記録媒体用基板を浸漬する時間を、10秒〜1000秒にすることが好ましい。なお、水酸化ナトリウム水溶液の濃度、温度、又は浸漬する時間を適宜変えることにより、磁気記録媒体用基板の水に対する接触角を変えることができる。
【0043】
以上のように、アルカリ性水溶液などに磁気記録媒体用基板を浸漬することで、樹脂製基板の表面に存在する撥水性の膜を除去することができる。これにより、水に対する接触角を0°より大きく30°未満とすることができ、基板表面の親水性を高めることが可能となる。その結果、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0044】
(第2の形態)
次に、第2の形態について説明する。この第2の形態では、樹脂製の基板に紫外線を照射したり、プラズマを照射したり、放電による処理を施したりして、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性を改善する。
【0045】
紫外線を樹脂製の基板に照射する場合、200〜350nmの波長を有する紫外光線を処理する部分に5秒〜300秒間照射することが好ましい。なお照射する波長や時間を適宜変えることにより、磁気記録媒体用基板の水に対する接触角を変えることができる。
【0046】
また、プラズマを樹脂製の基板に照射する場合、1hPa以上の気圧下で発生する低真空プラズマ若しくは大気圧プラズマを0.05秒〜100秒間照射することが好ましい。なお照射するプラズマの気圧や照射時間を適宜変えることにより、磁気記録媒体用基板の水に対する接触角を変えることができる。
【0047】
また、放電処理を樹脂製の基板に施す場合、処理に使用する放電状態が高周波高電圧の気中で発生するコロナ放電であることが好ましく、そのコロナ放電を用いて10秒未満の短時間で処理することが好ましい。なおコロナ放電の周波数や電圧、ギャップ長、処理時間を適宜変えることにより、磁気記録媒体用基板の水に対する接触角を変えることができる。
【0048】
以上のように、紫外線照射、プラズマ照射、又はコロナ放電処理を実行することで、樹脂製基板の表面に存在する撥水性の膜を除去することができる。これにより、水に対する接触角を0°より大きく30°未満とすることができ、基板表面の親水性を高めることが可能となる。その結果、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0049】
(第3の形態)
次に、第3の形態について説明する。この第3の形態では、樹脂材料に親水性材料を含ませることで、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性を改善する。
【0050】
(親水性材料)
親水性材料として、例えば、酸化物、炭化物、窒化物、炭酸化合物、硫酸化合物、りん酸化合物、フッ化物、塩化物、硫化物、水酸化物、金属などの無機材料を用いることが出来る。その中でも改善効果、生産性、基板特性の維持の観点から酸化物を用いることが好ましい。
【0051】
(酸化物)
酸化物として、具体的には、SiO、Al、TiO、ZrO、MgO、ZnO、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、GeO、Ga、In、Y、La、CeO、SnO、Nb、Taなどを用いる。
【0052】
また、親水性材料には、フィラー状の材料を用いることができる。フィラー材の材料としては、金属、酸化物、硫化物、炭酸化合物、りん酸化合物、フッ化物、ガラス、又はガラスファイバーなどが用いられる。具体的には、フィラー材の材料として、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)、In(インジウム)、Mg(マグネシウム)、Pd(パラジウム)、Ba(バリウム)、La(ランタン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、V(バナジウム)、又はSr(ストロンチウム)などを用いることができる。さらに、これらを主成分とする化合物、例えば、酸化物、硫化物、炭酸化合物、りん酸化合物、フッ化物などであっても良い。具体的には、SiO、Al、TiO、SrCO、AlPO、CaCO、MgCl、ZnS、MgFなどがフィラー材として用いられる。
【0053】
なお、上述したフィラー材の材料の例は無機物質の例であるが、有機無機の複合物質をフィラー材の材料に用いても良く、さらに粒子状、繊維状、円柱状のものを組み合わせて使用しても良い。
【0054】
さらに、樹脂製基板の全体に占める親水性材料の体積の割合が、0.05〜30[%]であることが好ましく、さらに、0.2〜25[%]であることがより好ましい。また、樹脂製基板の表面における、親水性材料の表面占有率が、0.5〜99.5[%]であることが好ましく、さらに、2.0〜75[%]であることがより好ましい。体積の割合、及び表面占有率をこの範囲で調整することで、水に対する接触角を0°より大きく30°未満とすることができ、基板表面の親水性を高めることが可能となる。
【0055】
以上のように、親水性材料を樹脂製基板に含ませることで、水に対する接触角を0°より大きく30°未満とすることができ、基板表面の親水性を高めることが可能となる。その結果、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0056】
また、樹脂製の基板は、基板に対応した形状を有する金型を用いて、射出成形法、注型成形法、シート成形法、射出圧縮成形法、又は圧縮成形法などの成形法によって製造することができる。さらに、必要に応じて、成形した基板をカッティングし、打ち抜き、又はプレス成形を行ってこの実施形態に係る磁気記録媒体用基板を製造しても良い。
【0057】
また、上記射出成形法などによりこの実施形態に係る磁気記録媒体用基板を成形することで、基板の内径の寸法、外径の寸法、内周端部の形状、又は外周端部の形状の少なくとも1つを同時に形成することができる。つまり、基板の内径の寸法や外径の寸法に合わせて、射出成形法などに用いられる金型を作製し、その金型を用いることで、内径寸法や外径寸法が樹脂成形時に完成されることになる。また、基板の内周端部の形状や外周端部の形状に合わせて、金型を作製し、その金型を用いることで、内周端部の形状や外周端部の形状が樹脂成形時に形成されることになる。
【0058】
また、以上の説明は、基板が単一の樹脂により構成されているものを例として行ったが、基板は単一の樹脂で構成されているものに限らず、金属やガラスなどの非磁性材料の表面を樹脂層で被覆することにより構成されるものでも良い。この場合、樹脂で被覆される非磁性材料としては、樹脂、金属、セラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、又は、有機無機複合材など、基板として適用できる様々な素材を用いることができる。なお、基板は単一の樹脂で構成されている方が、製造工程をより簡略化できるという効果があるため、好ましい。
【0059】
また、磁気記録媒体用基板として、吸湿による基板の寸法変化による磁気ヘッドとの位置ずれを防ぐために、吸湿性が少ない樹脂を用いることが望ましい。吸湿性の少ない樹脂の代表としては、ポリカーボネイトや環状ポリオレフィン樹脂がある。
【0060】
[実施例]
次に、この発明の具体的な実施例について説明する。
【0061】
(実施例1)
実施例1では、上記第1の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、アルカリ性水溶液に樹脂製の磁気記録媒体用基板を浸漬して、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。
【0062】
(樹脂製基板)
基板の材料としてポリイミドを用い、射出成形により磁気記録媒体用基板を作製した。ポリイミドとして、オーラム(三井化学社製)を用いた。この磁気記録媒体用基板の寸法を以下に示す。
外径:1インチ(25.4[mm])
基板の厚さ:0.4[mm]
【0063】
(浸漬の工程)
実施例1では、アルカリ性水溶液に上記の磁気記録媒体用基板を浸漬した。アルカリ性水溶液及び浸漬の条件を以下に示す。
アルカリ性水溶液:水酸化ナトリウム水溶液
濃度:3重量%
温度:30℃
浸漬の時間:150秒
【0064】
(水の接触角の測定)
上記の浸漬工程が施された磁気記録媒体用基板の水に対する接触角を測定した。この測定には、AST社製接触角測定装置(VCA−3000)を用いた。上記の浸漬工程を樹脂製の磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を5°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0065】
(評価)
実施例1に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0066】
(洗浄性の評価)
実施例1で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。この洗浄の条件を以下に示す。
洗浄の時間:300秒
純水:RO水
【0067】
(洗浄の評価方法)
洗浄後の基板をランプ光源下で基板全面にわたり目視検査を行い、清浄度の確認を実施した。基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0068】
(加工性の評価)
実施例1で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件を以下に示す。
研磨剤:酸化ジルコニウム
研磨機:浜井産業社製 両面ポリッシュ盤 9BF
【0069】
(研磨の評価方法)
研磨後の基板を原子間力顕微鏡(DI社製 D3100)で表面粗さを計測し、基板全面の任意の10箇所の表面粗さの分布状態を確認した。研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0070】
(実施例2)
実施例2では、上記第1の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、実施例1と同様に、アルカリ性水溶液に樹脂製の磁気記録媒体用基板を浸漬して、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例2に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0071】
(浸漬の工程)
実施例2では、実施例1と異なるアルカリ性水溶液に磁気記録媒体用基板を浸漬した。アルカリ性水溶液及び浸漬の条件を以下に示す。
アルカリ性水溶液:水酸化カリウム水溶液
濃度:1重量%
温度:50℃
浸漬の時間:90秒
【0072】
(水の接触角の測定)
上記の浸漬工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を10°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0073】
(評価)
実施例2に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0074】
(洗浄性の評価)
実施例2で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0075】
(加工性の評価)
実施例2で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0076】
(実施例3)
実施例3では、上記第1の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、実施例1と同様に、アルカリ性水溶液に樹脂製の磁気記録媒体用基板を浸漬して、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例3に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0077】
(浸漬の工程)
実施例3では、実施例1及び実施例2とは異なるアルカリ性水溶液に磁気記録媒体用基板を浸漬した。アルカリ性水溶液及び浸漬の条件を以下に示す。
アルカリ性水溶液:アンモニア水溶液
濃度:25重量%
温度:25℃
浸漬の時間:300秒
【0078】
(水の接触角の測定)
上記の浸漬工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を12°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0079】
(評価)
実施例3に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0080】
(洗浄性の評価)
実施例3で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0081】
(加工性の評価)
実施例3で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0082】
以上のように、実施例1から実施例3によると、基板表面の親水性を高めることができ、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になる。これにより、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0083】
また、アルカリ性水溶液の種類、濃度や浸漬の時間を変えることにより、磁気記録媒体用基板における水の接触角を変えることができ、水の接触角を0°より大きく30°未満にすることができる。
【0084】
(実施例4)
実施例4では、上記第1の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。実施例4では、酸性水溶液に樹脂製の磁気記録媒体用基板を浸漬した。なお、この実施例4に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0085】
(浸漬の工程)
実施例4では、実施例1から実施例3のアルカリ水溶液とは異なり、酸性水溶液に樹脂製基板を浸漬した。酸性水溶液及び浸漬の条件を以下に示す。
酸性水溶液:硝酸
濃度:0.3重量%
温度:20℃
浸漬の時間:90秒
【0086】
(水の接触角の測定)
上記の浸漬工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を5°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0087】
(評価)
実施例4に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0088】
(洗浄性の評価)
実施例4で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0089】
(加工性の評価)
実施例4で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0090】
以上のように、実施例4によると、水酸化ナトリウム水溶液に代えて酸性水溶液を用いても、基板表面の親水性を高めることができ、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になる。これにより、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0091】
また、酸性水溶液の種類、濃度や浸漬の時間を変えることにより、磁気記録媒体用基板における水の接触角を変えることができ、水の接触角を0°より大きく30°未満にすることができる。
【0092】
(実施例5)
実施例5では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板に紫外線を照射して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例5に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0093】
(紫外線照射の条件)
紫外線照射の条件を以下に示す。
波長:254nm
強度:80W
時間:10分
【0094】
(水の接触角の測定)
上記の紫外線照射の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を16°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0095】
(評価)
実施例5に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0096】
(洗浄性の評価)
実施例5で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0097】
(加工性の評価)
実施例5で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0098】
(実施例6)
実施例6では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板に紫外線を照射して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例6に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0099】
(紫外線照射の条件)
紫外線照射の条件を以下に示す。
波長:254nm
強度:200W
時間:15分
【0100】
(水の接触角の測定)
上記の紫外線照射の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を6°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0101】
(評価)
実施例6に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0102】
(洗浄性の評価)
実施例6で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0103】
(加工性の評価)
実施例6で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0104】
(実施例7)
実施例7では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板に紫外線を照射して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例7に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0105】
(紫外線照射の条件)
紫外線照射の条件を以下に示す。
波長:185nm
強度:50W
時間:5分
【0106】
(水の接触角の測定)
上記の紫外線照射の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を3°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0107】
(評価)
実施例7に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0108】
(洗浄性の評価)
実施例7で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0109】
(加工性の評価)
実施例7で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0110】
以上のように、実施例5から実施例7によると、基板表面の親水性を高めることができ、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になる。これにより、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0111】
また、紫外線照射の条件を変えることにより、磁気記録媒体用基板における水の接触角を変えることができ、水の接触角を0°より大きく30°未満にすることができる。
【0112】
(実施例8)
実施例8では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板にプラズマを照射して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例8に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0113】
(プラズマ照射の条件)
プラズマ照射の条件を以下に示す。
気圧:大気圧
プラズマガス種:アルゴン
照射時間:5秒/基板で表面走査
【0114】
(水の接触角の測定)
上記のプラズマ照射の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を10°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0115】
(評価)
実施例8に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0116】
(洗浄性の評価)
実施例8で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0117】
(加工性の評価)
実施例8で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0118】
(実施例9)
実施例9では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板にプラズマを照射して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例9に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0119】
(プラズマ照射の条件)
プラズマ照射の条件を以下に示す。
気圧:大気圧
プラズマガス種:酸素
照射時間:5秒/基板で表面走査
【0120】
(水の接触角の測定)
上記のプラズマ照射の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を4°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0121】
(評価)
実施例9に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0122】
(洗浄性の評価)
実施例9で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0123】
(加工性の評価)
実施例9で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0124】
(実施例10)
実施例10では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板にプラズマを照射して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例10に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0125】
(プラズマ照射の条件)
プラズマ照射の条件を以下に示す。
気圧:10hPa
プラズマガス種:アルゴン
照射時間:2秒/基板で表面走査
【0126】
(水の接触角の測定)
上記のプラズマ照射の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を8°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0127】
(評価)
実施例10に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0128】
(洗浄性の評価)
実施例10で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0129】
(加工性の評価)
実施例10で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0130】
以上のように、実施例8から実施例10によると、基板表面の親水性を高めることができ、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になる。これにより、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0131】
また、プラズマ照射の条件を変えることにより、磁気記録媒体用基板における水の接触角を変えることができ、水の接触角を0°より大きく30°未満にすることができる。
【0132】
(実施例11)
実施例11では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板にコロナ放電処理を施して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例11に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0133】
(コロナ放電の条件)
コロナ放電改質装置:信光電気計装社製 コロナスキャナーASA−4
コロナ放電の条件を以下に示す。
電圧:10kV
処理時間:0.2秒
【0134】
(水の接触角の測定)
上記のコロナ放電の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を5°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0135】
(評価)
実施例11に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0136】
(洗浄性の評価)
実施例11で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0137】
(加工性の評価)
実施例11で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0138】
(実施例12)
実施例12では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板にコロナ放電処理を施して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例12に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0139】
(コロナ放電の条件)
コロナ放電の条件を以下に示す。
電圧:8kV
処理時間:2.0秒
【0140】
(水の接触角の測定)
上記のコロナ放電の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を4°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0141】
(評価)
実施例12に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0142】
(洗浄性の評価)
実施例12で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0143】
(加工性の評価)
実施例12で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0144】
(実施例13)
実施例13では、上記第2の形態による方法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、磁気記録媒体用基板にコロナ放電処理を施して磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例13に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0145】
(コロナ放電の条件)
コロナ放電の条件を以下に示す。
電圧:12kV
処理時間:0.1秒
【0146】
(水の接触角の測定)
上記のコロナ放電の工程を磁気記録媒体用基板に施すことにより、基板表面における水の接触角を8°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0147】
(評価)
実施例13に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0148】
(洗浄性の評価)
実施例13で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0149】
(加工性の評価)
実施例13で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが10Å程度で均質であった。
【0150】
以上のように、実施例11から実施例13によると、基板表面の親水性を高めることができ、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になる。これにより、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0151】
また、コロナ放電の条件を変えることにより、磁気記録媒体用基板における水の接触角を変えることができ、水の接触角を0°より大きく30°未満にすることができる。
【0152】
(実施例14)
実施例14では、上記第3の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、樹脂に親水性材料を含ませて磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例14に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0153】
(親水性材料)
実施例14で用いた親水性材料について説明する。
親水性材料:シリカ(二酸化珪素)
体積の割合:5%
表面:5%
【0154】
(水の接触角の測定)
実施例14に係る磁気記録媒体用基板によると、基板表面における水の接触角を15°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0155】
(評価)
実施例14に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0156】
(洗浄性の評価)
実施例14で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0157】
(加工性の評価)
実施例14で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが30Å程度で均質であった。
【0158】
(実施例15)
実施例15では、上記第3の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、樹脂に親水性材料を含ませて磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例15に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0159】
(親水性材料)
実施例15で用いた親水性材料について説明する。
親水性材料:酸化チタン
体積の割合:10%
表面:25%
【0160】
(水の接触角の測定)
実施例15に係る磁気記録媒体用基板によると、基板表面における水の接触角を6°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0161】
(評価)
実施例15に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0162】
(洗浄性の評価)
実施例15で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0163】
(加工性の評価)
実施例15で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが45Å程度で均質であった。
【0164】
(実施例16)
実施例16では、上記第3の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。具体的には、樹脂に親水性材料を含ませて磁気記録媒体用基板の濡れ性を改善した。なお、この実施例16に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0165】
(親水性材料)
実施例16で用いた親水性材料について説明する。
親水性材料:塩化マグネシウム
体積の割合:15%
表面:15%
【0166】
(水の接触角の測定)
実施例16に係る磁気記録媒体用基板によると、基板表面における水の接触角を6°にすることができた。これにより、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になり、洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0167】
(評価)
実施例16に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0168】
(洗浄性の評価)
実施例16で製造した磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面が清浄に保たれており、シミ等の洗浄ムラはなくきれいであった。
【0169】
(加工性の評価)
実施例16で製造した磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は全面に渡って表面粗さRaが60Å程度で均質であった。
【0170】
以上のように、実施例14から実施例16によると、基板表面の親水性を高めることができ、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になる。これにより、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。
【0171】
また、親水性材料の条件を変えることにより、磁気記録媒体用基板における水の接触角を変えることができ、水の接触角を0°より大きく30°未満にすることができる。
【0172】
なお、上記実施例では樹脂製基板の材料としてポリイミドを用いたが、上記実施形態で挙げた他の樹脂を用いても同様の効果を奏することができる。
【0173】
(比較例)
次に、上記実施例に対する比較例について説明する。この比較例に係る樹脂製基板では、実施例1と同じ樹脂(ポリイミド)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0174】
(水の接触角の測定)
この比較例では、射出成形により製造された磁気記録媒体用基板における水の接触角を測定した。この比較例では、水の接触角は、40°になった。このように、比較例に係る磁気記録媒体用基板では、水の接触角が40°になり、水に対する濡れ性が悪化するため、洗浄性及び加工性が悪化する。つまり、純水を用いた洗浄工程では、磁気記録媒体用基板が純水をはじいてしまうため、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することが困難となる。また、純水を用いた研磨工程でも、磁気記録媒体用基板が純水をはじいてしまうため、基板表面を均質に研磨することは困難となる。
【0175】
(評価)
比較例に係る磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性について評価を行った。
【0176】
(洗浄性の評価)
比較例に係る磁気記録媒体用基板を純水で洗浄した。洗浄の条件は、実施例1の洗浄の条件と同じである。そして、実施例1と同じ目視検査を行った結果、基板全面に付着物が残存しており、洗浄性が不十分であった。また部分的に洗浄起因と思われるシミ模様が確認され、清浄性も不十分であった。
【0177】
(加工性の評価)
比較例に係る磁気記録媒体用基板の表面を研磨した。この研磨の条件は、実施例1の研磨の条件と同じである。そして、実施例1と同様に表面粗さを計測した結果、研磨後の基板は部分的に粗さが異なっており、研磨面にむらが発生しており、表面粗さRaは10Å〜70Åの間で分布していた。
【0178】
以上のように、この発明の実施例によると、磁気記録媒体用基板における水の接触角を0°より大きく30°未満とすることができるため、磁気記録媒体用基板の水に対する濡れ性が良好になる。これにより、磁気記録媒体用基板の洗浄性及び加工性を向上させることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の形状を有する樹脂製の母材を基板とし、前記基板の表面において、水の接触角が0°より大きく、30°未満であることを特徴とする磁気記録媒体用基板。
【請求項2】
前記基板に、親水性材料が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項3】
前記親水性材料は、無機材料であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項4】
前記親水性材料は、酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項5】
前記親水性材料が前記基板の全体に占める体積の割合が、0.05〜30[%]であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項6】
前記基板の表面において、前記親水性材料の表面占有率が0.5〜99.5[%]であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項7】
前記基板は、アルカリ性水溶液に浸漬されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項8】
前記基板は、酸性水溶液に浸漬されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項9】
前記基板は、中性洗剤水溶液に浸漬されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項10】
前記基板は、紫外線が照射されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項11】
前記基板は、プラズマが照射されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項12】
前記基板は、放電処理が施されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項13】
円板状の形状を有する樹脂製の基板をアルカリ性水溶液に浸漬する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア水の中から選択される水溶液であることを特徴とする請求項13に記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項15】
円板状の形状を有する樹脂製の基板を酸性水溶液に浸漬する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項16】
前記酸性水溶液は、塩酸、次亜塩素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、炭酸、王水、クロム酸、臭化水素酸、フッ化珪酸、フッ化水素酸、ほう酸、酢酸、シュウ酸、りん酸、蟻酸、クエン酸、シュウ酸、オレイン酸、マレイン酸の中から選択される水溶液であることを特徴とする請求項15に記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項17】
円板状の形状を有する樹脂製の基板を中性洗剤水溶液に浸漬する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項18】
前記中性洗剤は、イオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項17に記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項19】
円板状の形状を有する樹脂製の基板に対して、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項20】
前記紫外線は、150〜350nmの波長を有する紫外光線であることを特徴とする請求項19に記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項21】
円板状の形状を有する樹脂製の基板に対して、プラズマを照射する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項22】
前記プラズマは、1hPa以上の気圧下で発生する低真空プラズマ若しくは大気圧プラズマであることを特徴とする請求項21に記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項23】
円板状の形状を有する樹脂製の基板に対して、放電処理を施すことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項24】
前記放電は、コロナ放電であることを特徴とする請求項23に記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項25】
前記基板の表面を、水を含む研磨剤で研磨する工程を含むことを特徴とする請求項13から請求項24のいずれかに記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項26】
前記基板を純水で洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項13から請求項24のいずれかに記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。

【公開番号】特開2008−176843(P2008−176843A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7813(P2007−7813)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】