磁気記録装置、及びヘッド位置決め制御方法
【課題】磁気記録装置のヘッド位置決め方式において、磁気ヘッド幅、感度ばらつきにより磁気ヘッドの位置算出に誤差が発生する。
【解決手段】磁気記録装置のヘッド位置決め制御部が、前記磁気ヘッドから読み込まれるサーボ信号に含まれるサーボバーストの値を読み取るバースト読み取り部と、
このサーボバーストの値から正弦値、余弦値を算出する正弦値余弦値算出部と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する正接値算出部と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する位相値算出部と、
この位相値から、磁気ヘッドの基本位置を算出するヘッド基本位置算出部と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する補正値算出部と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出するヘッド位置算出部を備えることで磁気ヘッドの位置算出の精度を向上できる。
【解決手段】磁気記録装置のヘッド位置決め制御部が、前記磁気ヘッドから読み込まれるサーボ信号に含まれるサーボバーストの値を読み取るバースト読み取り部と、
このサーボバーストの値から正弦値、余弦値を算出する正弦値余弦値算出部と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する正接値算出部と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する位相値算出部と、
この位相値から、磁気ヘッドの基本位置を算出するヘッド基本位置算出部と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する補正値算出部と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出するヘッド位置算出部を備えることで磁気ヘッドの位置算出の精度を向上できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録装置のヘッド位置決め制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基本的な磁気記録装置の構成を説明する。
【0003】
磁気ディスクがモーター制御ユニットにより回転し、ある一点をピポットセンターとして回動するアクチュエーターの先にヘッドスライダーが存在し、そのヘッドスライダーに書き込み用ヘッドと読み取り用ヘッドが取り付けられている。ヘッドから読み取ったサーボ情報はプリアンプをとおりリード/ライトチャンネルにてトラックナンバー、各バースト信号の値をデジタル変換しCPUに送られる。CPUではその値を基に計算しヘッドの位置やヘッドの移動速度をもとめ、その値からVCMに流す電流を割り出し、その値をVCM制御ユニットに送り、VCM制御ユニットその値分の電流をVCMに流す。
【0004】
円盤状の磁気ディスクには数万個のサーボトラックと数百個のセクタを持ち、書き込み、読み出しをしている。またヘッドを位置決め制御するためのサーボ信号が図15のように放射線状に書き込まれている。図15のSB部を拡大するとサーボ信号は図6のようなパターンとして表される。デジタル信号部600とアナログ信号部601に分かれており、アナログ信号部は Aバースト604、Bバースト605、Cバースト606、Dバースト607と呼ばれる部分に分かれている。デジタル信号部は プリアンブル602と呼ばれるオートゲインコントロール用の信号とトラックナンバー603 等をデジタル信号にてかかれている部分である。
【0005】
アナログ信号部601はヘッドの位置決めを詳細におこなうための信号である。それぞれのバースト信号の電圧を読み取り、その値により詳細な位置を知るための信号である。ある幅を持つリードヘッドがバースト信号を横切った場合、各バースト信号の電圧が現れる。その値は一般的にリードヘッドがバースト信号上を通過したときの軌跡とバースト信号の重なりあった部分の面積に比例する。したがって そのバースト信号の電圧を知ることによりそのリードヘッドの位置を知ることが可能となる。
【0006】
通常磁気記録装置に使用されている磁気ヘッドは信号書き込み用のライトヘッドと信号読み出し用のリードヘッドがあり、その二つは磁気ディスクの半径方向にずれている(オフセットが存在する)。このずれる理由は2つ存在し、1つはヘッド自体の製造上からくる特性又はばらつきによるものであり、もう1つの理由は図16のようにヘッドスライダー163はアクチュエータ162のピポットセンター161を中心に磁気ディスク160半径方向に移動することによりその移動軌跡は円弧を描き内周、外周ではトラックに対してスキュー角が生じる。なおかつライトヘッドとリードヘッドは図17のように磁気ディスクの円周方向(トラックの前後)に離れた位置にある。内周トラックに位置決めしたり、外周トラックに位置決めしたりすると図18のようにヘッドスライダーとトラックにスキュー角が生じ、その角度によりライトヘッドとリードヘッドの磁気ディスク半径方向のオフセットが生じる。したがってライトとリードをおこなうためにそのヘッドの位置決めは ライト用の位置決めとリード用の位置決めと2つが必要となる。またライト用の位置とリード用の位置のオフセットはスキュー角、ヘッドの寸法のばらつき、アクチュエータの取り付け寸法ばらつきにより変化するのでサーボ制御はヘッドがトラックセンターに位置するときだけでなくどの位置の場合でも正確に制御されることが望ましい。
【0007】
先に述べたようにそれぞれのトラックごとにリードヘッドとライトヘッドのオフセットが異なるため同一トラックにおいて書き込み時のヘッドの位置と読み取り時のヘッドの位置をそのオフセットの量だけ変化させる必要がある。
【0008】
ヘッドの位置決めはサーボ信号内のバースト信号の値を基に制御される。通常バースト信号は図6のようにAバースト604,Bバースト605,Cバースト606,Dバースト607からなり、それぞれの信号の電圧を基に制御される。
【0009】
従来のヘッド位置決め方式にはヘッドを移動したときのバースト信号の変化を正弦波、余弦波とみなし計算する方式がある。(特開2006−309843 「ディスクドライブ及びサーボ制御方法」を参照)
fa(x)=(A−B)/(A+B)とfb(x)=(C−D)/(C+D)の値をもとめ(xはリードヘッドの磁気ディスクの半径方向の位置とし、A,B,C,Dはヘッドがxに位置決めされたときのバースト信号の電圧値とする)、fa(x)を余弦カーブと判断し、fb(x)を正弦カーブと判断し、Tan(θ)=fb(x)/fa(x)からAtan(fb(x)/fa(x))の位相値θを求めそのθの値とトラックナンバーの値からヘッドの値を算出している。このときデルタxとデルタθは比例関係にあると判断し算出している。
【0010】
実際にはθの値が90度、−90度(270度)近辺では測定誤差、または計算誤差が多くなる事から、Atan(fb(x)/fa(x))とAtan(−fb(x)/fa(x))の2つの値から算出している。
【0011】
従来の磁気ヘッド位置の算出方法のフローチャートを図19に示す。
【0012】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−309843号公報(ディスクドライブ及びサーボ制御方法)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながらこのような従来の磁気記録装置では、サーボ信号から得られたfa(x)とfb(x)のカーブは正確なサインまたはコサインカーブではないため、計算された磁気ヘッドの位置に誤差が生じる。またこの誤差は読み取りヘッド幅、その特性などによって違いが生じる。
【0014】
図7はリードヘッド幅がサーボトラック幅に対して比較的狭い時60%程度の場合のfa(x)とfb(x)のカーブを表し、図8はリードヘッド幅がサーボトラック幅に対して比較的広い時120%程度の場合のfa(x)とfb(x)のカーブを表している。ヘッドの幅の違いによりそれぞれのカーブはサインまたはコサインカーブとから誤差が生じていることが理解できる。
【0015】
また図9はリードヘッド幅がサーボトラック幅に対して比較的狭い時60%程度の場合の横軸をx、縦軸を誤差としたグラフであり、図10はリードヘッド幅がサーボトラック幅に対して比較的広い時120%程度の場合の誤差を表したグラフである。
【0016】
磁気記録装置ではリードヘッドの幅はライトヘッドの幅に対し狭くしている。これはライトした信号のセンターにリードヘッドをずれが生じることなく位置決めすることは不可能であり、ずれた場合、電圧の降下、またはノイズ成分の増加が起こり、正常な読み取りが行えなくなるための対策である。
【0017】
通常ライトヘッドとリードヘッド幅の差はデータトラック幅の20%程度以上である。したがってその余裕度は最低片側に10%程度の存在することになる。
【0018】
誤差の要素はライト時のPES(Position Error Signal)、リード時のPES、ヘッド位置の計算誤差、リードライトオフセット値の測定誤差、サーボ信号のトラックピッチの精度などが上げられる。
これらをすべて考慮し、先に述べたトラック幅に対して10%以内となるよう設計することが望ましい。
先に述べたヘッド位置の計算誤差は数%も発生していることから、全体の誤差に占める割合として大きな値である。
【0019】
磁気ヘッドの位置決め精度を向上させ、磁気記録装置のより高い記録密度を達成するためには、この磁気ヘッド位置の計算誤差を低減させることが必要になってくる。
【0020】
本発明は、この問題を解決するもので、磁気ヘッド位置の計算誤差を低減させ、高い位置決め精度が実現できる磁気記録装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的を達成するために本発明の磁気記録装置は、
磁気ディスクと、
この磁気ディスク上に記録された信号を読み出す磁気ヘッドと、
この磁気ヘッドを、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータと、このアクチュエータを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御するヘッド位置決め制御部からなり、
このヘッド位置決め制御部は、前記磁気ヘッドから読み込まれるサーボ信号に含まれるサーボバーストの値を読み取り、
このサーボバーストの値から正弦値、余弦値を算出し、
この正弦値と余弦値から正接値を算出し、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出し、
この位相値から、磁気ヘッドの基本位置を求めて更に、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出して、この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えることで、計算誤算を低減した磁気ヘッドの位置を算出するものである。
【0022】
これにより、所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、
磁気記録装置のヘッド位置決め方式において、磁気ヘッド幅、感度ばらつきによる位置算出の誤差の補正を行うことで、より正確なヘッド位置を算出でき、位置決め精度を向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施の形態1)
図1に本発明の機能ブロック図を示す。
【0025】
本発明を達成するための、基本的な機能ブロックとしては、
スピンドルモータ105で回転する磁気ディスク104と、
この磁気ディスク104上に記録された信号を読み出す磁気ヘッド103と、
この磁気ヘッド103を、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータ101と、このアクチュエータ101を前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記磁気ヘッド103を前記磁気ディスク104上の目標トラック102に位置決め制御するヘッド位置決め制御部から構成されている。
【0026】
図2にこのヘッド位置決め制御部の内部の機能ブロック図を示す。
【0027】
このヘッド位置決め制御部の内部構成としては、磁気ヘッドからの読み取り信号から、サーボ信号を読み取るサーボ信号読み取り部200と、サーボ信号から、磁気ヘッドの位置を算出するのに必要なトラックナンバー情報と、4つのサーボバーストの値を読み取るバースト読み取り部201と、
このサーボバーストの値から正弦値、余弦値を算出する正弦値余弦値算出部202と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する正接値算出部203と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する位相値算出部204と、
この位相値から、磁気ヘッドの基本位置を算出するヘッド基本位置算出部205と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する補正値算出部206と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出するヘッド位置算出部207と、
このヘッド位置から目標のトラック位置との差を求め、アクチュエータの制御量を算出する制御量算出部208により構成されている。
【0028】
図3に本発明のヘッド位置制御方法のフローチャートを示す。
磁気ディスク上に記録された信号を磁気ヘッドで読み出す第1工程と、
この磁気ヘッドから読み込まれた信号から位置情報を算出する第2工程と、
この位置情報を基に、磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御する第3工程からなるヘッド位置決め制御方法であり、
図4に第2工程の詳細なフローチャートを示す。
【0029】
前記第2の工程が、
前記磁気ヘッドからの読み取り信号からサーボ信号を取り出す工程S1と、
このサーボ信号から正弦値、余弦値を算出する工程S2と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する工程S3と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する工程S4と、
この位相値から磁気ヘッドの基本位置を算出する工程S5と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する工程S6と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出する工程S7より構成される。
【0030】
基本的な磁気記録装置のヘッド位置決めについてのブロック図5を基に説明する。
磁気記録装置の磁気ディスク500はモーター制御ユニット507からの信号により回転し、その磁気ディスク500上にはサーボ信号が1周に数100個程度かかれている。磁気ヘッド501から読み取ったサーボ情報はプリアンプ502をとおりリード/ライトチャンネル503にてトラックナンバー、各バースト信号の値をデジタル変換しCPU504に送られる。CPU504ではその値を基に計算し磁気ヘッド501の位置や磁気ヘッド501の移動速度をもとめ、その値からVCMに流す電流を割り出し、その値をVCM制御ユニット505に送り、VCM制御ユニット505がその値分の電流をVCMに流すことにより、磁気ヘッドを目的のトラック507に移動したり、保持したりする。
【0031】
前記本発明が解決しようとする課題にて記述したようにリードヘッドの幅が狭い、または広い時、磁気記録装置ではそのヘッド位置決めには誤差が生じる。またその誤差は図9、や図10をみて理解できるように2つのバースト信号の差が0になるようなヘッド位置ではその誤差はなく、そこから離れるにしたがって誤差は大きくなり、次のバースト信号の差が0になる位置に近づくとまた誤差は小さくなる。その周期はサーボトラック幅の1/2であり、従来方式の説明で述べたfa、fbの周期の1/4で繰り返す正弦波に近似している。
【0032】
本発明は上記のうちCPU内部で計算しているヘッドの位置の計算についての発明であり、従来の方式で求めたヘッドの位置の値に補正値を加えることを特徴にしている。
【0033】
これらの事実に基づき誤差の補正値を求めるためにはサーボトラックの1/2の周期で変化する正弦波関数をもとめ、その値にヘッドの幅におうじて変化する値を掛けてやればよい。
【0034】
通常サーボ信号は図6に表すようにデジタル信号部600とアナログ信号部601からなり、デジタル信号部600はプリアンブル部602、トラックナンバー部603に分かれ、アナログ信号部は通常Aバースト604、Bバースト605、Cバースト606、Dバースト607からなる。
【0035】
リードヘッドの幅は通常サーボトラック幅の50%から120%程度で構成されており、リードヘッドが磁気ディスクの半径方向に移動した場合(磁気ディスクが回転した場合)、A、B、C、Dバースト部を横切ることになる。その時の読み取り信号の大きさとトラックナンバーの情報によりヘッドの位置を計算により求めている。
【0036】
磁気ディスクの半径方向の位置においてサーボトラックのセンターからの実際のずれ量をxとしたときバースト信号の値から計算されるずれ量はfb(x)=(C−D)/(C+D)に比例すると考えられる。またトラックとトラックの境目からの計算されるずれ量はfa(x)=(A−B)/(A+B)に比例すると考えられる。それぞれの比例定数は同じと考えられる。
【0037】
図7、または図8よりfb(x)は正弦カーブ、fa(x)は余弦カーブに近似しており、そうすると計算されるずれ量は
fb(x)=Sin(θ)*a・・・・(aは定数)
fa(x)=Cos(θ)*a・・・・(aは定数)
この2つの式から定数aを消すと
fb(x)/fa(x)=Sin(θ)/Cos(θ)=Tan(θ)
となり これからθを求めると
θ=Atan(fb(x)/fa(x)) となる。
このときθがpaiラジアン(180度)変化すると1サーボトラック変化したことになる。
【0038】
したがって計算で求めるずれ量x0は
x0=Atan(fb(x)/fa(x))/paiとなり、
サーボトラックセンター近辺でのヘッドの位置は
トラックナンバー+Atan(fb(x)/fa(x))/paiでもとめられる。
またトラックとトラックの境目近辺では
トラックナンバー+Atan(−fa(x)/fb(x))/paiとし求められる。(このときトラックナンバーは境界近辺なので前後のトラックナンバーの平均値となる。)
このような従来の計算ではfa(x)、fb(x)が真の正弦カーブ、余弦カーブではないために先に述べたように誤差が生じる。
【0039】
本発明は上記計算値に補正値を加える事により精度高いヘッドの位置計算をするものである。
【0040】
図14のフローチャートを用いて本発明の説明をする。
リード/ライトチャネルからトラックナンバーと4つのバースト信号の値を得る。fa(x)=(A−B)/(A+B)とfb(x)=(C−D)/(C+D)を計算する。fa(x)の絶対値がfb(x)の絶対値よりも大きい場合はヘッド位置を
トラックナンバー+Atan(fb(x)/fa(x))/pai
+((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)*t とし、
fa(x)の絶対値がfb(x)の絶対値以下でかつfa(x)*fb(x)が正の数の場合はヘッド位置を
トラックナンバー+Atan(fb(x)/fa(x))/pai+0.5
+((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)*t とし
fa(x)の絶対値がfb(x)の絶対値以下でかつfa(x)*fb(x)が正の数でない場合はヘッド位置を
トラックナンバー+Atan(fb(x)/fa(x))/pai−0.5
+((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)*t
としている。
【0041】
補正値は、磁気ヘッドの幅を変数とした関数から算出した値をtとして次式によって算出される。
((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)*t
である。
【0042】
このときtはリードヘッド幅(WRH)の値を変数とする関数である。またtは誤差の大きさを決定するパラメーターとなる数値でもある。リードヘッドの幅と誤差の関係は正確な比例の関係にないため、tは高次関数での近似式となるが、計算時間の問題、または近似したときの精度などを考慮すると2次関数程度が適度だと判断する。
t=a2*WRH^2+a1*WRH+a0
リードヘッド幅は磁気記録装置を製造し工場出荷時の試験において測定した値を磁気記録装置内のメモリに記録しておき、磁気記録装置が電源投入後メモリからリードヘッド幅を得、計算してtを求める。または計算終了したtの値をメモリに記録しておいても良い。
【0043】
またtはWRHの代わりに(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5を変数とする2次関数を用いてもよい。(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5をfsとすると t=a2*fs^2+a1*fs+a0となる。fsの値はバースト信号の値から求められるので前もってリードヘッド幅の測定をする必要がない。本発明の実施形態の説明ではfsを使用しての説明とする。
【0044】
a2,a1,a0の値はいくつかのリードヘッド幅の異なるヘッドで組み立てられた磁気記録装置のデータをもとに算出するかもしくはシミュレーションによりデータを作成し、そのデータから近似2次曲線を作成し求める。
(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5がヘッド幅の値WRHに変換できるのは(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5がリードヘッド幅WRHと相関があるためである。相関があることに関しては後に述べる。
【0045】
また、前記関数tは、さらに磁気ヘッドの感度分布を考慮した関数であっても良い。
【0046】
まず 式((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)の説明とtを求める詳細について説明する。
【0047】
図9と図10はヘッド幅の違いによる、ヘッド位置による従来の計算式での誤差を表している。
【0048】
それぞれの図からfa(x)とfb(x)がゼロクロスしているところとfa(x)とfb(x)のそれぞれの絶対値の差が0となるところでは誤差は0であり、そこから遠くなるにしたがってその誤差は大きくなる。誤差のカーブは近似正弦波カーブであり、その周期はfb(x)の1/4(周波数は4倍)である。
【0049】
三角関数の定理により2倍の周波数は、
Sin(2*a)=2*Sin(a)*Cos(a)
Cos(2*a)=Cos(a)^2−Sin(a)^2
となり、この式より、Sin(a)の4倍の周波数である正弦波カーブは
Sin(4*a)=
4*(Cos(a)^2−Sin(a)^2)*Sin(a)*Cos(a) 式1
となる。
【0050】
この式1が図9または図10の誤差を表すカーブと同じ周波数、同じ位相となる。したがって、この式にある数をかけた値を補正値として従来のヘッド位置計算式に加えれば精度よいヘッド位置計算式となる。
補正はこの式にtを乗算して補正値とするわけであるから式1の定数4はtに含むと考えれば必要ない。 また(Cos(a)^2−Sin(a)^2)の項もあくまでSinカーブの近似でよいわけであるから、
(ABS(Cos(a))−ABS(Sin(a)))でもよいし
(ABS(Sin(a))−ABS(Cos(a)))でもよい。
つぎにSin(a)をfb(x)、Cos(a)をfa(x)と置き換えると近似式は
fb(4*x)=4*(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)でもよいし、
fb(4*x)=(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)でもよいし
fb(4*x)=(ABS(fa(x))−ABS(fb(x)))*fb(x)*fa(x)でもよい。
【0051】
本発明の実施形態の説明はfb(4*x)=(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)として説明する。
【0052】
上記基本となる波形 fb(4*x)が求まればこの値にヘッドの幅に応じ変化する関数を乗算すればよい。その乗算する関数がt=a2*fs^2+a1*fs+a0 である。
【0053】
次にt=a2*fs^2+a1*fs+a0の式の定数a2,a1,a0の値を求める。
【0054】
まず(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5はリードヘッド幅の値に相関することに関して述べる。
(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5はfa(x)が余弦波カーブ、fb(x)が正弦波カーブとすると
(Cos(s)^2+Sin(s)^2)^0.5 となり sがどんな値、言い換えればヘッドがどの位置にあろうが1となる。横軸をCos、縦軸をSinとしグラフ化すると半径1の円になる。
【0055】
しかしfa(x)とfb(x)で計算し、角度座標と長さに変換しグラフ化するとリードヘッドの幅の違いによりにより円にはならない。
【0056】
図11はリードヘッドの幅の違いによる(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5を表している。横軸をfa(x)、縦軸をfb(x)としたときのグラフであり、リードヘッド幅がサーボトラックに対し50%、65%、85%、100%、115%の場合について表している。fa(x)とfb(x)が完全な正弦波、余弦波カーブの場合、先に述べたようにグラフは円となる。
このグラフを回転軸と原点からの長さ(以降Rとよぶ)のグラフとして考えるとグラフの45度(右上)、135度(左上)、225度(左下)、315度(右下)部ではヘッド幅が変化すると でっぱり、四角に近い形状になる。これらの45度、135度、225度、315度のRの値がヘッドの幅に概略反比例することが想像できる。
【0057】
したがって45度、135度、225度、315度のRの値の場所いいかえれば図6においてバーストAとCが同じ場所、BCが同じ場所、BDが同じ場所、ADが同じ場所にヘッドを移動させてその場所で(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5を求めればその値がヘッドの幅に関係する値といえる。
【0058】
次にa2,a1,a0を求める方法に関して説明する。
ヘッド幅の違ういくつかのヘッドにて上記の条件の場所どこかで(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5=yを求め、
従来の計算で求められるヘッド位置−真のヘッド位置+(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)*t0
の値がx(ヘッドの位置)を変化させたときの個々の値の絶対値の平均値が0に近くなるt0の値を求める。xを変化させる範囲はfa(x)の値の1周期分またはその整数倍にすればよい。この求める方法は実験で求めることが可能だがいくつものサンプル(リードヘッド幅の違うもの)を入手することと、真のヘッド位置を実験で求めるのは難しく、誤差の最小となるt0を求めるのは容易ではない。したがっていくつかの実測値を基にしたシミュレーションを利用し求めることが望ましい。
【0059】
そのシミュレーションとは、実際のヘッド位置と、サーボ信号より算出したヘッド位置との誤差を求めるものである。この誤差要因は、ヘッド幅のばらつきであり、さらにはヘッド感度分布によるものである。このヘッド幅のばらつき、および、ヘッドの感度分布をこのシミュレーションに入力して、この誤差要因によって算出したヘッド位置と実際のヘッド位置との誤差を求め、この誤差を前記fa(x)、fb(x)で近似して求めることが可能になる。この近似した値が、補正値となる。
【0060】
いくつかの実験またはシミュレーションの値によりt0を求め、そのt0とyから散布図を作成し、近似式t0=f(y)の関係式がみちびかれる。このf(y)を2次関数に近似し(何次関数でもよいが計算時間と精度を考慮すると2次関数近似が妥当と判断する。)、t=a2*y^2+a1*y+a0 をもとめる。(a2,a1,a0は定数)
したがって補正後のヘッドの位置を真のヘッド位置とすると
真のヘッド位置=
従来の計算で求められるヘッド位置+
(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)
*(a2*y^2+a1*y+a0)
となる。
【0061】
しかしながらこの方式の補正だと前もってバーストAとCが同じ場所、BCが同じ場所、BDが同じ場所、ADが同じ場所にヘッドを移動させてyであるヘッド幅を測定しなければならない。
【0062】
(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5、または、
(fa(x)^2+fb(x)^2)はfb(x)をSin(θ)としたとき45度、135度、225度、315度の部分の近辺においてリードヘッドの幅と関係のある数値である。
【0063】
したがってyの代わりに(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5、または、
(fa(x)^2+fb(x)^2)を用いることが可能であり、先に述べたようなシミュレーションをおこなえば、
t=a2*fs^2+a1*fs+a0
(fs=((fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5)となり、
真のヘッド位置=従来の計算で求められるヘッド位置+(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)*(a2*fs^2+a1*fs+a0)
(fs=((fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5)
となり、あらかじめヘッド幅を測定する必要がなく、バースト信号の値だけで補正が可能となる。
【0064】
図11において0度、90度、180度、270度の部分ではリードヘッド幅の変化によるR(原点からの距離)の値の変化がほとんどないので(fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5をリードヘッド幅におき換えして計算すると誤差が多きくなることが危惧されるがこの場所ではヘッドの位置誤差は0であり、上記式の補正式の(fa(x)^2−fb(x)^2)が0となるためにこの場所近辺での(fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5の誤差の大きさは大きな問題とはならない。
また計算を簡略化するために(fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5を
(fa(x))^2+(fb(x))^2としても同等の結果がえられる。
【0065】
図12はヘッド幅の違ういくつかのヘッドにおける、補正をしない場合の誤差(補正なし)とヘッドの幅をあらかじめ測定して補正する方式の誤差(補正あり、ヘッド幅測定)とあらかじめヘッドの幅の測定をしないで補正をする方式の誤差(補正あり)を表す表である。
【0066】
このようにヘッド幅を測定する方式だと誤差は大きく改善される。ヘッド幅を測定しない方式においても大きな改善は認められるがやはりヘッド幅を測定したほうが改善度合いは大きい。
【0067】
このように本方式を用いれば従来の方式においてヘッドの幅によるヘッドの位置計算誤差を特別な測定なしに、サーボバースト信号の値のみで補正することが可能となる。
【0068】
fa(x)を(A−B)/(A+B)、fb(x)を(C−D)/(C+D)として実施例を説明したが、
fa(x)を((A−B)−(C−D))/(A+B+C+D)、fb(x)を((A−B)+(C−D))/(A+B+C+D)として前記実施例と同じように実施しても良い。
【0069】
図13は本発明の位置算出方法のフローチャートである。
【0070】
このように本発明によれば、磁気ヘッド幅、感度ばらつきによる位置算出の誤差の補正を行うことで、より正確なヘッド位置を算出でき、位置決め精度を向上する効果がある。
【0071】
また、磁気ヘッドの幅のばらつきに対して、その許容範囲を大きくできるので、磁気ヘッドの歩留まりが上がり、結果、部品コストの低減が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明にかかる、磁気記録装置、及びヘッド位置決め制御方法は、磁気記録装置のサーボ信号より算出される磁気ヘッドの位置を正確に算出する効果を有し、磁気記録装置の位置決め制御分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の機能ブロック図
【図2】ヘッド位置決め制御部の機能ブロック図
【図3】本発明のヘッド位置決め制御方法のフローチャート
【図4】第2工程のフローチャート
【図5】磁気記録装置のブロック図
【図6】サーボ信号を表した図
【図7】リードヘッド幅がサーボトラック幅に対して60%のときのバースト信号に対する fa(x)とfb(x)を示した図
【図8】リードヘッド幅がサーボトラック幅に対して120%のときのバースト信号に対する fa(x)とfb(x)を示した図
【図9】リードヘッド幅がサーボトラック幅に対して60%程度の場合の横軸をヘッドの位置x、縦軸を誤差としたグラフ
【図10】リードヘッド幅がサーボトラック幅に対して120%程度の場合の横軸をヘッドの位置x縦軸を誤差としたグラフ
【図11】リードヘッド幅の違いによる横軸fb(x)縦軸fa(x)としたときのグラフ
【図12】リードヘッドの幅とヘッドの位置誤差を示した図
【図13】本考案の方法2のフローチャート
【図14】本考案の方法1のフローチャート
【図15】磁気ディスク上のサーボ信号を示した図
【図16】ヘッドスライダーの移動軌跡を示した図
【図17】リードヘッドとライトヘッドの位置を示した図
【図18】スキュー角とヘッドのオフセットを示した図
【図19】従来の方法のフローチャート
【符号の説明】
【0074】
100 ヘッド位置決め制御部
101 アクチュエータ
102 トラック
103 磁気ヘッド
104 磁気ディスク
105 スピンドルモータ
200 サーボ信号読み取り部
201 バースト読み取り部
202 正弦値/余弦値算出部
203 正接値算出部
204 位相値算出部
205 ヘッド基本位置算出部
206 補正値算出部
207 ヘッド位置算出部
208 制御量算出部
500 磁気ディスク
501 磁気ヘッド
502 プリアンプ
503 リード/ライトチャネル
504 CPU
505 VCM制御ユニット
506 モーター制御ユニット
507 トラック
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録装置のヘッド位置決め制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基本的な磁気記録装置の構成を説明する。
【0003】
磁気ディスクがモーター制御ユニットにより回転し、ある一点をピポットセンターとして回動するアクチュエーターの先にヘッドスライダーが存在し、そのヘッドスライダーに書き込み用ヘッドと読み取り用ヘッドが取り付けられている。ヘッドから読み取ったサーボ情報はプリアンプをとおりリード/ライトチャンネルにてトラックナンバー、各バースト信号の値をデジタル変換しCPUに送られる。CPUではその値を基に計算しヘッドの位置やヘッドの移動速度をもとめ、その値からVCMに流す電流を割り出し、その値をVCM制御ユニットに送り、VCM制御ユニットその値分の電流をVCMに流す。
【0004】
円盤状の磁気ディスクには数万個のサーボトラックと数百個のセクタを持ち、書き込み、読み出しをしている。またヘッドを位置決め制御するためのサーボ信号が図15のように放射線状に書き込まれている。図15のSB部を拡大するとサーボ信号は図6のようなパターンとして表される。デジタル信号部600とアナログ信号部601に分かれており、アナログ信号部は Aバースト604、Bバースト605、Cバースト606、Dバースト607と呼ばれる部分に分かれている。デジタル信号部は プリアンブル602と呼ばれるオートゲインコントロール用の信号とトラックナンバー603 等をデジタル信号にてかかれている部分である。
【0005】
アナログ信号部601はヘッドの位置決めを詳細におこなうための信号である。それぞれのバースト信号の電圧を読み取り、その値により詳細な位置を知るための信号である。ある幅を持つリードヘッドがバースト信号を横切った場合、各バースト信号の電圧が現れる。その値は一般的にリードヘッドがバースト信号上を通過したときの軌跡とバースト信号の重なりあった部分の面積に比例する。したがって そのバースト信号の電圧を知ることによりそのリードヘッドの位置を知ることが可能となる。
【0006】
通常磁気記録装置に使用されている磁気ヘッドは信号書き込み用のライトヘッドと信号読み出し用のリードヘッドがあり、その二つは磁気ディスクの半径方向にずれている(オフセットが存在する)。このずれる理由は2つ存在し、1つはヘッド自体の製造上からくる特性又はばらつきによるものであり、もう1つの理由は図16のようにヘッドスライダー163はアクチュエータ162のピポットセンター161を中心に磁気ディスク160半径方向に移動することによりその移動軌跡は円弧を描き内周、外周ではトラックに対してスキュー角が生じる。なおかつライトヘッドとリードヘッドは図17のように磁気ディスクの円周方向(トラックの前後)に離れた位置にある。内周トラックに位置決めしたり、外周トラックに位置決めしたりすると図18のようにヘッドスライダーとトラックにスキュー角が生じ、その角度によりライトヘッドとリードヘッドの磁気ディスク半径方向のオフセットが生じる。したがってライトとリードをおこなうためにそのヘッドの位置決めは ライト用の位置決めとリード用の位置決めと2つが必要となる。またライト用の位置とリード用の位置のオフセットはスキュー角、ヘッドの寸法のばらつき、アクチュエータの取り付け寸法ばらつきにより変化するのでサーボ制御はヘッドがトラックセンターに位置するときだけでなくどの位置の場合でも正確に制御されることが望ましい。
【0007】
先に述べたようにそれぞれのトラックごとにリードヘッドとライトヘッドのオフセットが異なるため同一トラックにおいて書き込み時のヘッドの位置と読み取り時のヘッドの位置をそのオフセットの量だけ変化させる必要がある。
【0008】
ヘッドの位置決めはサーボ信号内のバースト信号の値を基に制御される。通常バースト信号は図6のようにAバースト604,Bバースト605,Cバースト606,Dバースト607からなり、それぞれの信号の電圧を基に制御される。
【0009】
従来のヘッド位置決め方式にはヘッドを移動したときのバースト信号の変化を正弦波、余弦波とみなし計算する方式がある。(特開2006−309843 「ディスクドライブ及びサーボ制御方法」を参照)
fa(x)=(A−B)/(A+B)とfb(x)=(C−D)/(C+D)の値をもとめ(xはリードヘッドの磁気ディスクの半径方向の位置とし、A,B,C,Dはヘッドがxに位置決めされたときのバースト信号の電圧値とする)、fa(x)を余弦カーブと判断し、fb(x)を正弦カーブと判断し、Tan(θ)=fb(x)/fa(x)からAtan(fb(x)/fa(x))の位相値θを求めそのθの値とトラックナンバーの値からヘッドの値を算出している。このときデルタxとデルタθは比例関係にあると判断し算出している。
【0010】
実際にはθの値が90度、−90度(270度)近辺では測定誤差、または計算誤差が多くなる事から、Atan(fb(x)/fa(x))とAtan(−fb(x)/fa(x))の2つの値から算出している。
【0011】
従来の磁気ヘッド位置の算出方法のフローチャートを図19に示す。
【0012】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−309843号公報(ディスクドライブ及びサーボ制御方法)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながらこのような従来の磁気記録装置では、サーボ信号から得られたfa(x)とfb(x)のカーブは正確なサインまたはコサインカーブではないため、計算された磁気ヘッドの位置に誤差が生じる。またこの誤差は読み取りヘッド幅、その特性などによって違いが生じる。
【0014】
図7はリードヘッド幅がサーボトラック幅に対して比較的狭い時60%程度の場合のfa(x)とfb(x)のカーブを表し、図8はリードヘッド幅がサーボトラック幅に対して比較的広い時120%程度の場合のfa(x)とfb(x)のカーブを表している。ヘッドの幅の違いによりそれぞれのカーブはサインまたはコサインカーブとから誤差が生じていることが理解できる。
【0015】
また図9はリードヘッド幅がサーボトラック幅に対して比較的狭い時60%程度の場合の横軸をx、縦軸を誤差としたグラフであり、図10はリードヘッド幅がサーボトラック幅に対して比較的広い時120%程度の場合の誤差を表したグラフである。
【0016】
磁気記録装置ではリードヘッドの幅はライトヘッドの幅に対し狭くしている。これはライトした信号のセンターにリードヘッドをずれが生じることなく位置決めすることは不可能であり、ずれた場合、電圧の降下、またはノイズ成分の増加が起こり、正常な読み取りが行えなくなるための対策である。
【0017】
通常ライトヘッドとリードヘッド幅の差はデータトラック幅の20%程度以上である。したがってその余裕度は最低片側に10%程度の存在することになる。
【0018】
誤差の要素はライト時のPES(Position Error Signal)、リード時のPES、ヘッド位置の計算誤差、リードライトオフセット値の測定誤差、サーボ信号のトラックピッチの精度などが上げられる。
これらをすべて考慮し、先に述べたトラック幅に対して10%以内となるよう設計することが望ましい。
先に述べたヘッド位置の計算誤差は数%も発生していることから、全体の誤差に占める割合として大きな値である。
【0019】
磁気ヘッドの位置決め精度を向上させ、磁気記録装置のより高い記録密度を達成するためには、この磁気ヘッド位置の計算誤差を低減させることが必要になってくる。
【0020】
本発明は、この問題を解決するもので、磁気ヘッド位置の計算誤差を低減させ、高い位置決め精度が実現できる磁気記録装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的を達成するために本発明の磁気記録装置は、
磁気ディスクと、
この磁気ディスク上に記録された信号を読み出す磁気ヘッドと、
この磁気ヘッドを、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータと、このアクチュエータを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御するヘッド位置決め制御部からなり、
このヘッド位置決め制御部は、前記磁気ヘッドから読み込まれるサーボ信号に含まれるサーボバーストの値を読み取り、
このサーボバーストの値から正弦値、余弦値を算出し、
この正弦値と余弦値から正接値を算出し、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出し、
この位相値から、磁気ヘッドの基本位置を求めて更に、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出して、この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えることで、計算誤算を低減した磁気ヘッドの位置を算出するものである。
【0022】
これにより、所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、
磁気記録装置のヘッド位置決め方式において、磁気ヘッド幅、感度ばらつきによる位置算出の誤差の補正を行うことで、より正確なヘッド位置を算出でき、位置決め精度を向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施の形態1)
図1に本発明の機能ブロック図を示す。
【0025】
本発明を達成するための、基本的な機能ブロックとしては、
スピンドルモータ105で回転する磁気ディスク104と、
この磁気ディスク104上に記録された信号を読み出す磁気ヘッド103と、
この磁気ヘッド103を、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータ101と、このアクチュエータ101を前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記磁気ヘッド103を前記磁気ディスク104上の目標トラック102に位置決め制御するヘッド位置決め制御部から構成されている。
【0026】
図2にこのヘッド位置決め制御部の内部の機能ブロック図を示す。
【0027】
このヘッド位置決め制御部の内部構成としては、磁気ヘッドからの読み取り信号から、サーボ信号を読み取るサーボ信号読み取り部200と、サーボ信号から、磁気ヘッドの位置を算出するのに必要なトラックナンバー情報と、4つのサーボバーストの値を読み取るバースト読み取り部201と、
このサーボバーストの値から正弦値、余弦値を算出する正弦値余弦値算出部202と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する正接値算出部203と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する位相値算出部204と、
この位相値から、磁気ヘッドの基本位置を算出するヘッド基本位置算出部205と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する補正値算出部206と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出するヘッド位置算出部207と、
このヘッド位置から目標のトラック位置との差を求め、アクチュエータの制御量を算出する制御量算出部208により構成されている。
【0028】
図3に本発明のヘッド位置制御方法のフローチャートを示す。
磁気ディスク上に記録された信号を磁気ヘッドで読み出す第1工程と、
この磁気ヘッドから読み込まれた信号から位置情報を算出する第2工程と、
この位置情報を基に、磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御する第3工程からなるヘッド位置決め制御方法であり、
図4に第2工程の詳細なフローチャートを示す。
【0029】
前記第2の工程が、
前記磁気ヘッドからの読み取り信号からサーボ信号を取り出す工程S1と、
このサーボ信号から正弦値、余弦値を算出する工程S2と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する工程S3と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する工程S4と、
この位相値から磁気ヘッドの基本位置を算出する工程S5と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する工程S6と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出する工程S7より構成される。
【0030】
基本的な磁気記録装置のヘッド位置決めについてのブロック図5を基に説明する。
磁気記録装置の磁気ディスク500はモーター制御ユニット507からの信号により回転し、その磁気ディスク500上にはサーボ信号が1周に数100個程度かかれている。磁気ヘッド501から読み取ったサーボ情報はプリアンプ502をとおりリード/ライトチャンネル503にてトラックナンバー、各バースト信号の値をデジタル変換しCPU504に送られる。CPU504ではその値を基に計算し磁気ヘッド501の位置や磁気ヘッド501の移動速度をもとめ、その値からVCMに流す電流を割り出し、その値をVCM制御ユニット505に送り、VCM制御ユニット505がその値分の電流をVCMに流すことにより、磁気ヘッドを目的のトラック507に移動したり、保持したりする。
【0031】
前記本発明が解決しようとする課題にて記述したようにリードヘッドの幅が狭い、または広い時、磁気記録装置ではそのヘッド位置決めには誤差が生じる。またその誤差は図9、や図10をみて理解できるように2つのバースト信号の差が0になるようなヘッド位置ではその誤差はなく、そこから離れるにしたがって誤差は大きくなり、次のバースト信号の差が0になる位置に近づくとまた誤差は小さくなる。その周期はサーボトラック幅の1/2であり、従来方式の説明で述べたfa、fbの周期の1/4で繰り返す正弦波に近似している。
【0032】
本発明は上記のうちCPU内部で計算しているヘッドの位置の計算についての発明であり、従来の方式で求めたヘッドの位置の値に補正値を加えることを特徴にしている。
【0033】
これらの事実に基づき誤差の補正値を求めるためにはサーボトラックの1/2の周期で変化する正弦波関数をもとめ、その値にヘッドの幅におうじて変化する値を掛けてやればよい。
【0034】
通常サーボ信号は図6に表すようにデジタル信号部600とアナログ信号部601からなり、デジタル信号部600はプリアンブル部602、トラックナンバー部603に分かれ、アナログ信号部は通常Aバースト604、Bバースト605、Cバースト606、Dバースト607からなる。
【0035】
リードヘッドの幅は通常サーボトラック幅の50%から120%程度で構成されており、リードヘッドが磁気ディスクの半径方向に移動した場合(磁気ディスクが回転した場合)、A、B、C、Dバースト部を横切ることになる。その時の読み取り信号の大きさとトラックナンバーの情報によりヘッドの位置を計算により求めている。
【0036】
磁気ディスクの半径方向の位置においてサーボトラックのセンターからの実際のずれ量をxとしたときバースト信号の値から計算されるずれ量はfb(x)=(C−D)/(C+D)に比例すると考えられる。またトラックとトラックの境目からの計算されるずれ量はfa(x)=(A−B)/(A+B)に比例すると考えられる。それぞれの比例定数は同じと考えられる。
【0037】
図7、または図8よりfb(x)は正弦カーブ、fa(x)は余弦カーブに近似しており、そうすると計算されるずれ量は
fb(x)=Sin(θ)*a・・・・(aは定数)
fa(x)=Cos(θ)*a・・・・(aは定数)
この2つの式から定数aを消すと
fb(x)/fa(x)=Sin(θ)/Cos(θ)=Tan(θ)
となり これからθを求めると
θ=Atan(fb(x)/fa(x)) となる。
このときθがpaiラジアン(180度)変化すると1サーボトラック変化したことになる。
【0038】
したがって計算で求めるずれ量x0は
x0=Atan(fb(x)/fa(x))/paiとなり、
サーボトラックセンター近辺でのヘッドの位置は
トラックナンバー+Atan(fb(x)/fa(x))/paiでもとめられる。
またトラックとトラックの境目近辺では
トラックナンバー+Atan(−fa(x)/fb(x))/paiとし求められる。(このときトラックナンバーは境界近辺なので前後のトラックナンバーの平均値となる。)
このような従来の計算ではfa(x)、fb(x)が真の正弦カーブ、余弦カーブではないために先に述べたように誤差が生じる。
【0039】
本発明は上記計算値に補正値を加える事により精度高いヘッドの位置計算をするものである。
【0040】
図14のフローチャートを用いて本発明の説明をする。
リード/ライトチャネルからトラックナンバーと4つのバースト信号の値を得る。fa(x)=(A−B)/(A+B)とfb(x)=(C−D)/(C+D)を計算する。fa(x)の絶対値がfb(x)の絶対値よりも大きい場合はヘッド位置を
トラックナンバー+Atan(fb(x)/fa(x))/pai
+((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)*t とし、
fa(x)の絶対値がfb(x)の絶対値以下でかつfa(x)*fb(x)が正の数の場合はヘッド位置を
トラックナンバー+Atan(fb(x)/fa(x))/pai+0.5
+((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)*t とし
fa(x)の絶対値がfb(x)の絶対値以下でかつfa(x)*fb(x)が正の数でない場合はヘッド位置を
トラックナンバー+Atan(fb(x)/fa(x))/pai−0.5
+((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)*t
としている。
【0041】
補正値は、磁気ヘッドの幅を変数とした関数から算出した値をtとして次式によって算出される。
((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)*t
である。
【0042】
このときtはリードヘッド幅(WRH)の値を変数とする関数である。またtは誤差の大きさを決定するパラメーターとなる数値でもある。リードヘッドの幅と誤差の関係は正確な比例の関係にないため、tは高次関数での近似式となるが、計算時間の問題、または近似したときの精度などを考慮すると2次関数程度が適度だと判断する。
t=a2*WRH^2+a1*WRH+a0
リードヘッド幅は磁気記録装置を製造し工場出荷時の試験において測定した値を磁気記録装置内のメモリに記録しておき、磁気記録装置が電源投入後メモリからリードヘッド幅を得、計算してtを求める。または計算終了したtの値をメモリに記録しておいても良い。
【0043】
またtはWRHの代わりに(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5を変数とする2次関数を用いてもよい。(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5をfsとすると t=a2*fs^2+a1*fs+a0となる。fsの値はバースト信号の値から求められるので前もってリードヘッド幅の測定をする必要がない。本発明の実施形態の説明ではfsを使用しての説明とする。
【0044】
a2,a1,a0の値はいくつかのリードヘッド幅の異なるヘッドで組み立てられた磁気記録装置のデータをもとに算出するかもしくはシミュレーションによりデータを作成し、そのデータから近似2次曲線を作成し求める。
(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5がヘッド幅の値WRHに変換できるのは(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5がリードヘッド幅WRHと相関があるためである。相関があることに関しては後に述べる。
【0045】
また、前記関数tは、さらに磁気ヘッドの感度分布を考慮した関数であっても良い。
【0046】
まず 式((fa(x)^2)−(fb(x)^2))*fb(x)*fa(x)の説明とtを求める詳細について説明する。
【0047】
図9と図10はヘッド幅の違いによる、ヘッド位置による従来の計算式での誤差を表している。
【0048】
それぞれの図からfa(x)とfb(x)がゼロクロスしているところとfa(x)とfb(x)のそれぞれの絶対値の差が0となるところでは誤差は0であり、そこから遠くなるにしたがってその誤差は大きくなる。誤差のカーブは近似正弦波カーブであり、その周期はfb(x)の1/4(周波数は4倍)である。
【0049】
三角関数の定理により2倍の周波数は、
Sin(2*a)=2*Sin(a)*Cos(a)
Cos(2*a)=Cos(a)^2−Sin(a)^2
となり、この式より、Sin(a)の4倍の周波数である正弦波カーブは
Sin(4*a)=
4*(Cos(a)^2−Sin(a)^2)*Sin(a)*Cos(a) 式1
となる。
【0050】
この式1が図9または図10の誤差を表すカーブと同じ周波数、同じ位相となる。したがって、この式にある数をかけた値を補正値として従来のヘッド位置計算式に加えれば精度よいヘッド位置計算式となる。
補正はこの式にtを乗算して補正値とするわけであるから式1の定数4はtに含むと考えれば必要ない。 また(Cos(a)^2−Sin(a)^2)の項もあくまでSinカーブの近似でよいわけであるから、
(ABS(Cos(a))−ABS(Sin(a)))でもよいし
(ABS(Sin(a))−ABS(Cos(a)))でもよい。
つぎにSin(a)をfb(x)、Cos(a)をfa(x)と置き換えると近似式は
fb(4*x)=4*(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)でもよいし、
fb(4*x)=(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)でもよいし
fb(4*x)=(ABS(fa(x))−ABS(fb(x)))*fb(x)*fa(x)でもよい。
【0051】
本発明の実施形態の説明はfb(4*x)=(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)として説明する。
【0052】
上記基本となる波形 fb(4*x)が求まればこの値にヘッドの幅に応じ変化する関数を乗算すればよい。その乗算する関数がt=a2*fs^2+a1*fs+a0 である。
【0053】
次にt=a2*fs^2+a1*fs+a0の式の定数a2,a1,a0の値を求める。
【0054】
まず(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5はリードヘッド幅の値に相関することに関して述べる。
(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5はfa(x)が余弦波カーブ、fb(x)が正弦波カーブとすると
(Cos(s)^2+Sin(s)^2)^0.5 となり sがどんな値、言い換えればヘッドがどの位置にあろうが1となる。横軸をCos、縦軸をSinとしグラフ化すると半径1の円になる。
【0055】
しかしfa(x)とfb(x)で計算し、角度座標と長さに変換しグラフ化するとリードヘッドの幅の違いによりにより円にはならない。
【0056】
図11はリードヘッドの幅の違いによる(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5を表している。横軸をfa(x)、縦軸をfb(x)としたときのグラフであり、リードヘッド幅がサーボトラックに対し50%、65%、85%、100%、115%の場合について表している。fa(x)とfb(x)が完全な正弦波、余弦波カーブの場合、先に述べたようにグラフは円となる。
このグラフを回転軸と原点からの長さ(以降Rとよぶ)のグラフとして考えるとグラフの45度(右上)、135度(左上)、225度(左下)、315度(右下)部ではヘッド幅が変化すると でっぱり、四角に近い形状になる。これらの45度、135度、225度、315度のRの値がヘッドの幅に概略反比例することが想像できる。
【0057】
したがって45度、135度、225度、315度のRの値の場所いいかえれば図6においてバーストAとCが同じ場所、BCが同じ場所、BDが同じ場所、ADが同じ場所にヘッドを移動させてその場所で(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5を求めればその値がヘッドの幅に関係する値といえる。
【0058】
次にa2,a1,a0を求める方法に関して説明する。
ヘッド幅の違ういくつかのヘッドにて上記の条件の場所どこかで(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5=yを求め、
従来の計算で求められるヘッド位置−真のヘッド位置+(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)*t0
の値がx(ヘッドの位置)を変化させたときの個々の値の絶対値の平均値が0に近くなるt0の値を求める。xを変化させる範囲はfa(x)の値の1周期分またはその整数倍にすればよい。この求める方法は実験で求めることが可能だがいくつものサンプル(リードヘッド幅の違うもの)を入手することと、真のヘッド位置を実験で求めるのは難しく、誤差の最小となるt0を求めるのは容易ではない。したがっていくつかの実測値を基にしたシミュレーションを利用し求めることが望ましい。
【0059】
そのシミュレーションとは、実際のヘッド位置と、サーボ信号より算出したヘッド位置との誤差を求めるものである。この誤差要因は、ヘッド幅のばらつきであり、さらにはヘッド感度分布によるものである。このヘッド幅のばらつき、および、ヘッドの感度分布をこのシミュレーションに入力して、この誤差要因によって算出したヘッド位置と実際のヘッド位置との誤差を求め、この誤差を前記fa(x)、fb(x)で近似して求めることが可能になる。この近似した値が、補正値となる。
【0060】
いくつかの実験またはシミュレーションの値によりt0を求め、そのt0とyから散布図を作成し、近似式t0=f(y)の関係式がみちびかれる。このf(y)を2次関数に近似し(何次関数でもよいが計算時間と精度を考慮すると2次関数近似が妥当と判断する。)、t=a2*y^2+a1*y+a0 をもとめる。(a2,a1,a0は定数)
したがって補正後のヘッドの位置を真のヘッド位置とすると
真のヘッド位置=
従来の計算で求められるヘッド位置+
(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)
*(a2*y^2+a1*y+a0)
となる。
【0061】
しかしながらこの方式の補正だと前もってバーストAとCが同じ場所、BCが同じ場所、BDが同じ場所、ADが同じ場所にヘッドを移動させてyであるヘッド幅を測定しなければならない。
【0062】
(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5、または、
(fa(x)^2+fb(x)^2)はfb(x)をSin(θ)としたとき45度、135度、225度、315度の部分の近辺においてリードヘッドの幅と関係のある数値である。
【0063】
したがってyの代わりに(fa(x)^2+fb(x)^2)^0.5、または、
(fa(x)^2+fb(x)^2)を用いることが可能であり、先に述べたようなシミュレーションをおこなえば、
t=a2*fs^2+a1*fs+a0
(fs=((fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5)となり、
真のヘッド位置=従来の計算で求められるヘッド位置+(fa(x)^2−fb(x)^2)*fb(x)*fa(x)*(a2*fs^2+a1*fs+a0)
(fs=((fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5)
となり、あらかじめヘッド幅を測定する必要がなく、バースト信号の値だけで補正が可能となる。
【0064】
図11において0度、90度、180度、270度の部分ではリードヘッド幅の変化によるR(原点からの距離)の値の変化がほとんどないので(fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5をリードヘッド幅におき換えして計算すると誤差が多きくなることが危惧されるがこの場所ではヘッドの位置誤差は0であり、上記式の補正式の(fa(x)^2−fb(x)^2)が0となるためにこの場所近辺での(fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5の誤差の大きさは大きな問題とはならない。
また計算を簡略化するために(fa(x))^2+(fb(x))^2)^0.5を
(fa(x))^2+(fb(x))^2としても同等の結果がえられる。
【0065】
図12はヘッド幅の違ういくつかのヘッドにおける、補正をしない場合の誤差(補正なし)とヘッドの幅をあらかじめ測定して補正する方式の誤差(補正あり、ヘッド幅測定)とあらかじめヘッドの幅の測定をしないで補正をする方式の誤差(補正あり)を表す表である。
【0066】
このようにヘッド幅を測定する方式だと誤差は大きく改善される。ヘッド幅を測定しない方式においても大きな改善は認められるがやはりヘッド幅を測定したほうが改善度合いは大きい。
【0067】
このように本方式を用いれば従来の方式においてヘッドの幅によるヘッドの位置計算誤差を特別な測定なしに、サーボバースト信号の値のみで補正することが可能となる。
【0068】
fa(x)を(A−B)/(A+B)、fb(x)を(C−D)/(C+D)として実施例を説明したが、
fa(x)を((A−B)−(C−D))/(A+B+C+D)、fb(x)を((A−B)+(C−D))/(A+B+C+D)として前記実施例と同じように実施しても良い。
【0069】
図13は本発明の位置算出方法のフローチャートである。
【0070】
このように本発明によれば、磁気ヘッド幅、感度ばらつきによる位置算出の誤差の補正を行うことで、より正確なヘッド位置を算出でき、位置決め精度を向上する効果がある。
【0071】
また、磁気ヘッドの幅のばらつきに対して、その許容範囲を大きくできるので、磁気ヘッドの歩留まりが上がり、結果、部品コストの低減が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明にかかる、磁気記録装置、及びヘッド位置決め制御方法は、磁気記録装置のサーボ信号より算出される磁気ヘッドの位置を正確に算出する効果を有し、磁気記録装置の位置決め制御分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の機能ブロック図
【図2】ヘッド位置決め制御部の機能ブロック図
【図3】本発明のヘッド位置決め制御方法のフローチャート
【図4】第2工程のフローチャート
【図5】磁気記録装置のブロック図
【図6】サーボ信号を表した図
【図7】リードヘッド幅がサーボトラック幅に対して60%のときのバースト信号に対する fa(x)とfb(x)を示した図
【図8】リードヘッド幅がサーボトラック幅に対して120%のときのバースト信号に対する fa(x)とfb(x)を示した図
【図9】リードヘッド幅がサーボトラック幅に対して60%程度の場合の横軸をヘッドの位置x、縦軸を誤差としたグラフ
【図10】リードヘッド幅がサーボトラック幅に対して120%程度の場合の横軸をヘッドの位置x縦軸を誤差としたグラフ
【図11】リードヘッド幅の違いによる横軸fb(x)縦軸fa(x)としたときのグラフ
【図12】リードヘッドの幅とヘッドの位置誤差を示した図
【図13】本考案の方法2のフローチャート
【図14】本考案の方法1のフローチャート
【図15】磁気ディスク上のサーボ信号を示した図
【図16】ヘッドスライダーの移動軌跡を示した図
【図17】リードヘッドとライトヘッドの位置を示した図
【図18】スキュー角とヘッドのオフセットを示した図
【図19】従来の方法のフローチャート
【符号の説明】
【0074】
100 ヘッド位置決め制御部
101 アクチュエータ
102 トラック
103 磁気ヘッド
104 磁気ディスク
105 スピンドルモータ
200 サーボ信号読み取り部
201 バースト読み取り部
202 正弦値/余弦値算出部
203 正接値算出部
204 位相値算出部
205 ヘッド基本位置算出部
206 補正値算出部
207 ヘッド位置算出部
208 制御量算出部
500 磁気ディスク
501 磁気ヘッド
502 プリアンプ
503 リード/ライトチャネル
504 CPU
505 VCM制御ユニット
506 モーター制御ユニット
507 トラック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルモータによって回転する磁気ディスクと、
この磁気ディスク上に記録された信号を読み出す磁気ヘッドと、
この磁気ヘッドを、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータと、このアクチュエータを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御するヘッド位置決め制御部を備え、
このヘッド位置決め制御部は、前記磁気ヘッドから読み込まれるサーボ信号に含まれるサーボバーストの値を読み取るバースト読み取り部と、
このサーボバーストの値から正弦値、余弦値を算出する正弦値余弦値算出部と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する正接値算出部と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する位相値算出部と、
この位相値から、磁気ヘッドの基本位置を算出するヘッド基本位置算出部と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する補正値算出部と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出するヘッド位置算出部を備えたことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項2】
前記補正値は、前記磁気ヘッドの基本位置xを変数とした関数から算出した値と、磁気ヘッドの幅を変数とした関数から算出した値を乗算した値であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項3】
前記磁気ヘッドの基本位置xを変数とした関数は、前記余弦値をfa(x)とし、前記正弦値をfb(x)とすると、前記補正値が((fa(x)の2乗)−(fb(x)の2乗))*fb(x)*fa(x)であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録装置。
【請求項4】
前記磁気ヘッドの基本位置をxとし、前記余弦値をfa(x)とし、前記正弦値をfb(x)とすると、前記補正値が((fa(x)の2乗)−(fb(x)の2乗))*fb(x)*fa(x)の値に(fa(x)の2乗+fb(x)の2乗)または((fa(x)の2乗+fb(x)の2乗)の0.5乗)の値を変数とした関数から算出した値を乗算した値となっていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項5】
前記磁気ヘッドの幅を予め求め、磁気記録装置の磁気ディスク上または制御基板のメモリ上に記録しておき、磁気記録装置が立ち上がるとき、記録された前記磁気ヘッドの幅から前記補正値を計算しヘッドの位置決めをおこなうことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録装置。
【請求項6】
前記磁気ヘッドの基本位置をxとし、前記余弦値をfa(x)とし、前記正弦値をfb(x)、前記サーボバーストにおいて、読み込まれた4種類のバーストの値をそれぞれA、B、C、Dとすると、fa(x)の値が((A−B)−(C−D))/(A+B+C+D)、fb(x)の値が((A−B)+(C−D))/(A+B+C+D)で算出される事を特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項7】
前記磁気ヘッドの基本位置をxとし、前記余弦値をfa(x)とし、前記正弦値をfb(x)、前記サーボバーストにおいて、読み込まれた4種類のバーストの値をそれぞれA、B、C、Dとすると、fa(x)の値が(A−B)/(A+B)、fb(x)の値が(C−D)/(C+D)で算出される事を特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項8】
磁気ディスク上に記録された信号を磁気ヘッドで読み出す第1工程と、
この磁気ヘッドから読み込まれた信号から位置情報を算出する第2工程と、
この位置情報を基に、磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御する第3工程を備えたヘッド位置決め制御方法を備え、
前記第2の工程が、
前記磁気ヘッドからの読み取り信号からサーボ信号を取り出す工程S1と、
このサーボ信号から正弦値、余弦値を算出する工程S2と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する工程S3と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する工程S4と、
この位相値から磁気ヘッドの基本位置を算出する工程S5と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する工程S6と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出する工程S7を備えたことを特徴とするヘッド位置決め制御方法。
【請求項1】
スピンドルモータによって回転する磁気ディスクと、
この磁気ディスク上に記録された信号を読み出す磁気ヘッドと、
この磁気ヘッドを、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータと、このアクチュエータを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御するヘッド位置決め制御部を備え、
このヘッド位置決め制御部は、前記磁気ヘッドから読み込まれるサーボ信号に含まれるサーボバーストの値を読み取るバースト読み取り部と、
このサーボバーストの値から正弦値、余弦値を算出する正弦値余弦値算出部と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する正接値算出部と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する位相値算出部と、
この位相値から、磁気ヘッドの基本位置を算出するヘッド基本位置算出部と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する補正値算出部と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出するヘッド位置算出部を備えたことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項2】
前記補正値は、前記磁気ヘッドの基本位置xを変数とした関数から算出した値と、磁気ヘッドの幅を変数とした関数から算出した値を乗算した値であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項3】
前記磁気ヘッドの基本位置xを変数とした関数は、前記余弦値をfa(x)とし、前記正弦値をfb(x)とすると、前記補正値が((fa(x)の2乗)−(fb(x)の2乗))*fb(x)*fa(x)であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録装置。
【請求項4】
前記磁気ヘッドの基本位置をxとし、前記余弦値をfa(x)とし、前記正弦値をfb(x)とすると、前記補正値が((fa(x)の2乗)−(fb(x)の2乗))*fb(x)*fa(x)の値に(fa(x)の2乗+fb(x)の2乗)または((fa(x)の2乗+fb(x)の2乗)の0.5乗)の値を変数とした関数から算出した値を乗算した値となっていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項5】
前記磁気ヘッドの幅を予め求め、磁気記録装置の磁気ディスク上または制御基板のメモリ上に記録しておき、磁気記録装置が立ち上がるとき、記録された前記磁気ヘッドの幅から前記補正値を計算しヘッドの位置決めをおこなうことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録装置。
【請求項6】
前記磁気ヘッドの基本位置をxとし、前記余弦値をfa(x)とし、前記正弦値をfb(x)、前記サーボバーストにおいて、読み込まれた4種類のバーストの値をそれぞれA、B、C、Dとすると、fa(x)の値が((A−B)−(C−D))/(A+B+C+D)、fb(x)の値が((A−B)+(C−D))/(A+B+C+D)で算出される事を特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項7】
前記磁気ヘッドの基本位置をxとし、前記余弦値をfa(x)とし、前記正弦値をfb(x)、前記サーボバーストにおいて、読み込まれた4種類のバーストの値をそれぞれA、B、C、Dとすると、fa(x)の値が(A−B)/(A+B)、fb(x)の値が(C−D)/(C+D)で算出される事を特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項8】
磁気ディスク上に記録された信号を磁気ヘッドで読み出す第1工程と、
この磁気ヘッドから読み込まれた信号から位置情報を算出する第2工程と、
この位置情報を基に、磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御する第3工程を備えたヘッド位置決め制御方法を備え、
前記第2の工程が、
前記磁気ヘッドからの読み取り信号からサーボ信号を取り出す工程S1と、
このサーボ信号から正弦値、余弦値を算出する工程S2と、
この正弦値と余弦値から正接値を算出する工程S3と、
この正接値から逆正接関数より位相値を算出する工程S4と、
この位相値から磁気ヘッドの基本位置を算出する工程S5と、
この磁気ヘッドの基本位置と実際の磁気ヘッドの位置との誤差を補正する補正値を算出する工程S6と、
この補正値を前記磁気ヘッドの基本位置に加えて磁気ヘッドの真の位置を算出する工程S7を備えたことを特徴とするヘッド位置決め制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−277315(P2009−277315A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129397(P2008−129397)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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