磁界プローブ
【課題】 反射波の影響を軽減して所望の周波数帯域の感度を向上させることができる磁界プローブを提供する。
【解決手段】 磁界プローブ1は、検出部9と接続部10との間を接続する伝送線路部12を備える。この伝送線路部12はストリップ導体13を有する。このストリップ導体13は、狭い幅寸法W1をもった狭幅部13Aと、広い幅寸法W2をもった広幅部13Bと、狭幅部13Aと広幅部13Bとの間に設けられたテーパ部13Cとを備える。これにより、伝送線路部12の両端側に加えて、テーパ部13Cの周囲で反射が生じるから、テーパ部13Cを備えない場合に比べて、反射波が影響する周波数をシフトさせることができる。
【解決手段】 磁界プローブ1は、検出部9と接続部10との間を接続する伝送線路部12を備える。この伝送線路部12はストリップ導体13を有する。このストリップ導体13は、狭い幅寸法W1をもった狭幅部13Aと、広い幅寸法W2をもった広幅部13Bと、狭幅部13Aと広幅部13Bとの間に設けられたテーパ部13Cとを備える。これにより、伝送線路部12の両端側に加えて、テーパ部13Cの周囲で反射が生じるから、テーパ部13Cを備えない場合に比べて、反射波が影響する周波数をシフトさせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界の検出に用いて好適な磁界プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による磁界プローブとして、基板の一端側にループコイルからなる検出部を設け、該検出部にストリップ線路からなる伝送線路部の一端側を接続すると共に、該伝送線路部の他端側にコネクタ等を介して外部に接続するための接続部を設けたものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術として、ストリップ線路と同軸線路等とを接続する高周波接続部には、テーパ状の電極パターンを設け、ストリップ線路と同軸線路との間のインピーダンス整合を取る構成が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】International Electrotechnical Commission,“IEC 61967-6 First Edition”, International Electrotechnical Commission,2002年6月,p.11-31
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−69337号公報
【特許文献2】特開2007−123741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非特許文献1による磁界プローブでは、伝送線路部や接続部に取り付けられる同軸線路は例えば50Ωの特性インピーダンスを有する。一方、磁界プローブは、例えば数十Hz〜数GHzのように広帯域に亘って磁界を検出するのに加え、ループコイルからなる検出部は測定する磁界の周波数に応じてインピーダンスが変化する。また、コネクタ等が取り付けられる接続部のインピーダンスも、異なる形式の線路(例えばストリップ線路と同軸線路)間を接続するため、特性インピーダンスからずれる傾向がある。従って、検出部および接続部のインピーダンスを、全ての帯域で特性インピーダンスに一致させることはできず、両者のインピーダンスには差異が生じる。
【0007】
このため、検出部によって検出した磁界の検出信号は、接続部から直接的に外部に伝送される直接波に加えて、接続部や検出部で反射した反射波が生じ、これら直接波と反射波との相互干渉によって一部の周波数の検出信号では検出感度が低下する傾向がある。
【0008】
これに対し、特許文献2,3では、例えば伝送線路の端部にテーパ状の電極パターンを設け、外部の同軸線路との整合性を高めた構成が開示されている。しかし、前述したように、磁界プローブは測定する磁界の周波数帯域が非常に広く、検出部のインピーダンスも測定する磁界の周波数に応じて変化する。このため、全ての周波数の検出信号に対して、検出部、伝送線路および接続部のインピーダンスを整合させることは非常に難しいという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、反射波の影響を軽減して所望の周波数帯域の感度を向上させることができる磁界プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、絶縁材料からなる基板と、磁界を検出するために該基板に設けられた導電性ループからなる検出部と、前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部と、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループと該接続部との間を接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブに適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記伝送線路部の導体パターンは、前記導電性ループに接続された幅寸法の狭い狭幅部と、前記接続部に接続された幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ幅寸法を変更する線路幅変更部とによって構成したことにある。
【0012】
請求項2の発明では、前記線路幅変更部は、前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部によって構成している。
【0013】
請求項3の発明では、前記線路幅変更部は、1段または複数段の中間幅部を介して前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が大きくなる中間連結部によって構成している。
【0014】
請求項4の発明では、前記線路幅変更部は、前記狭幅部と広幅部との間で幅寸法が段差状に大きくなる段差部によって構成している。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、伝送線路部の導体パターンは、狭幅部と広幅部との間に位置して幅寸法を変更する線路幅変更部を設ける構成とした。このため、伝送線路部の両端側に加えて、テーパ部の周囲でも検出信号の反射が生じる。この結果、従来技術のように、伝送線路部の両端側だけで反射が生じる場合に比べて、伝送線路部の途中位置でも反射が生じるから、検出信号に対して反射波が影響する周波数をシフトさせることができる。これにより、伝送線路部の長さ方向に対してテーパ部の位置を適宜設定することによって、所望の周波数帯域の検出信号に対して、その感度を向上させることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、線路幅変更部は、狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部によって構成したから、長さ方向に対するテーパ部のインピーダンス変化を小さくすることができる。このため、テーパ部で生じる反射波の強度を小さくすることができ、反射波の影響を低下させることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、線路幅変更部は、1段または複数段の中間幅部を介して狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が大きくなる中間連結部によって構成したから、例えば幅寸法が変化する中間幅部の両端側で反射波が生じる。このため、中間幅部の長さ寸法や段数を適宜調整することによって、所望の周波数帯域の検出信号を高感度に検出することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、線路幅変更部は、狭幅部と広幅部との間で幅寸法が段差状に大きくなる段差部によって構成したから、段差部で集中的に反射波を発生させることができる。このため、段差部の位置に応じて感度が低下する検出信号の周波数を確実に把握することができるから、例えば所望の周波数に対して検出部と段差部との間の長さ寸法や段差部と接続部との間の長さ寸法を1/4波長と異なる値に設定することによって、所望の周波数の検出信号に対する反射波の影響を抑制することができる。これにより、所望の周波数帯域の検出信号を高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による磁界プローブを示す斜視図である。
【図2】図1中の検出部を多層基板を透視した状態で示す斜視図である。
【図3】検出部を図2中の矢示III−III方向からみた断面図である。
【図4】図1中の磁界プローブを表面側の絶縁層を省いた状態で示す正面図である。
【図5】接続部を図4中の矢示V−V方向からみた断面図である。
【図6】図4中のテーパ部を拡大して示す正面図である。
【図7】比較例による磁界プローブを表面側の絶縁層を省いた状態で示す図4と同様な正面図である。
【図8】第1の実施の形態および比較例において、磁界プローブの利得の周波数特性を示す特性線図である。
【図9】第2の実施の形態による磁界プローブを表面側の絶縁層を省いた状態で示す正面図である。
【図10】図9中の中間連結部を拡大して示す正面図である。
【図11】第1の変形例による中間連結部を示す図10と同様な正面図である。
【図12】第3の実施の形態による磁界プローブを表面側の絶縁層を省いた状態で示す正面図である。
【図13】図12中の段差部を拡大して示す正面図である。
【図14】第2の変形例による磁界プローブを基板を透視した状態で示す図2と同様な位置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による磁界プローブを添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図1ないし図6は第1の実施の形態による磁界プローブ1を示している。この磁界プローブ1は、例えば非磁性の絶縁材料からなる筒状のケース2に収容されると共に、同軸ケーブル3(同軸線路)を通じて信号処理回路(図示せず)に電気的に接続されている。この信号処理回路は、磁界プローブ1の検出部9に発生する電圧、電流等の検出信号に基づいて、検出部9の近傍に発生する磁界の検出を行う。また、磁界プローブ1は、後述する多層基板4および該多層基板4に設けられた検出部9、接続部10、伝送線路部12によって構成されている。
【0022】
多層基板4は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のうち例えばX軸方向およびZ軸方向に対して平行に広がる平板状に形成されている。この多層基板4は、例えば2層の絶縁層5,6を厚さ方向となるY軸方向に積層することによって構成されている。このとき、多層基板4は、幅方向となるX軸方向に対して例えば数mm程度の幅寸法を有すると共に、長さ方向となるZ軸方向に沿って延び、その長さ寸法は例えば数cm程度になっている。
【0023】
また、各絶縁層5,6は、例えば絶縁性の樹脂材料を用いて層状に形成されている。そして、多層基板4の先端部4Aは、Z軸方向の一端側(図1中の下端側)に位置して後述の検出部9が設けられている。一方、多層基板4の基端部4Bは、先端部4Aに比べて幅寸法が大きく形成され、Z軸方向の他端側(図1中の上端側)に配置されている。
【0024】
多層基板4のうちY軸方向の両端側に位置する表面および裏面には、例えば導電性の金属薄膜からなるグランド電極7,8がそれぞれ設けられている。このグランド電極7,8は、例えば外部のグランドに接続されてグランド電位に保持されると共に、多層基板4の先端部4Aを除いて多層基板4の略全面を覆っている。また、グランド電極7,8の先端側には、先端部4A内に向けて延びる細長い接続電極部7A,8Aが設けられている。
【0025】
検出部9は、図1ないし図3に示すように、多層基板4の先端部4Aに配置され、略C字状に形成された導電性ループ9Aを有している。この導電性ループ9Aは、例えば1回巻のループコイルによって形成されている。具体的には、導電性ループ9Aは、例えば幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて略四角形の枠状に形成され、多層基板4の厚さ方向の中間位置として、絶縁層5,6間に配置されている。この導電性ループ9Aの一端側は、多層基板4を貫通したビア9Bを介して接続電極部7A,8Aに電気的に接続されている。一方、導電性ループ9Aの他端側は、後述する伝送線路部12のストリップ導体13に電気的に接続されている。
【0026】
そして、検出部9は、導電性ループ9Aの内部を通過する磁界(磁束変化)に応じて、導電性ループ9Aに電圧が発生する。これにより、検出部9は、例えば数十Hz〜数GHzまでの広帯域にわたる磁束変化を検出するものである。
【0027】
接続部10は、図1、図4および図5に示すように、多層基板4の基端部4Bに配置されている。この接続部10は、多層基板4を貫通して設けられたスルーホール10Aを備え、該スルーホール10Aはメッキ処理等によってその内壁面に導電性の金属膜が形成されている。ここで、基端部4Bに位置するグランド電極7,8には、このスルーホール10Aの周囲を取囲む略円形の開口部10B,10Cが形成され、該開口部10B,10Cによってスルーホール10Aとグランド電極7,8との間が絶縁されている。
【0028】
また、スルーホール10Aは、後述する伝送線路部12のストリップ導体13に電気的に接続されている。そして、接続部10には例えばSMAコネクタ等のコネクタ11が取り付けられ、該コネクタ11には同軸ケーブル3が取り付けられている。これにより、接続部10は、コネクタ11、同軸ケーブル3を介して外部の信号処理回路に接続され、検出部9による磁界の検出信号を信号処理回路に向けて出力する。
【0029】
伝送線路部12は、図1、図4および図6に示すように、多層基板4に設けられ、検出部9の導電性ループ9Aと接続部10のスルーホール10Aとの間を接続している。この伝送線路部12は、細長い導体パターンとしてのストリップ導体13(信号電極)を有している。伝送線路部12は、ストリップ導体13と多層基板4の両面に設けられたグランド電極7,8とからなるストリップ線路によって構成されている。
【0030】
また、ストリップ導体13は、Z軸に沿って直線状に延びている。このストリップ導体13は、検出部9の導電性ループ9Aに接続された狭い幅寸法W1の狭幅部13Aと、接続部10のスルーホール10Aに接続された広い幅寸法W2の広幅部13Bと、狭幅部13Aと広幅部13Bとの間に設けられた線路幅変更部としてのテーパ部13Cとを備えている。
【0031】
ここで、狭幅部13Aの幅寸法W1は、例えば検出部9の導電性ループ9Aの幅寸法W0と同程度の値に設定されている。一方、広幅部13Bの幅寸法W2は、その周囲でストリップ線路の特性インピーダンスが例えば50Ωとなるような値に設定されている。
【0032】
テーパ部13Cは、狭幅部13Aから広幅部13Bに向けて幅寸法が漸次大きくなっている。即ち、テーパ部13Cの幅寸法は、狭幅部13Aから広幅部13Bに向かうに従って連続的に増加している。そして、テーパ部13Cのうち幅方向両側の縁部分は、Z軸方向に対して斜めに傾斜して延びている。これにより、テーパ部13Cは、狭幅部13Aから広幅部13Bに向かうに従って、そのインピーダンスが徐々に変化している。
【0033】
本実施の形態による磁界プローブ1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0034】
まず、磁界プローブ1の先端部分を、測定対象(例えば被測定基板)の表面に近接した状態で配置する。そして、磁界プローブ1を測定対象の表面上で移動させる。ここで、磁界プローブ1の近傍に位置して測定対象の表面にY軸方向の磁界が発生すると、この磁界は検出部9の導電性ループ9Aの内部を通過する。これにより、例えば導電性ループ9Aに電圧が生じるため、この電圧を検出することによって、測定対象の表面に生じる磁界を検出することができる。
【0035】
然るに、検出部9と接続部10との間は伝送線路部12を用いて接続すると共に、伝送線路部12のストリップ導体13は、狭幅部13Aと広幅部13Bとの間にテーパ部13Cを設ける構成とした。このため、狭幅部13Aの両端側や広幅部13Bの両端側で反射が生じ、幅寸法が一定なストリップ導体を用いた場合に比べて、検出感度が低下する周波数がシフトする。
【0036】
そこで、本実施の形態による磁界プローブ1と図7に示す比較例による磁界プローブ21とについて、それぞれの利得の周波数特性を測定した。その結果を図8に示す。
【0037】
なお、図7に示す比較例による磁界プローブ21では、伝送線路部22のストリップ導体23は、例えば特性インピーダンスが50Ωとなる一定の幅寸法を有するものとした。
【0038】
図8中に破線で示すように、比較例の場合は、例えば2GHz付近で検出信号の利得が低下している。この理由は、伝送線路部22の両端側で反射が生じるから、この反射波Srと直接波Stとが干渉して、検出信号の強度が低下するためと考えられる。
【0039】
一方、図8中に実線で示すように、本実施の形態の場合は、例えば3.2GHz付近で検出信号の利得が低下している。この理由は、本実施の形態では、図4に示すように、狭幅部13Aの両端側や広幅部13Bの両端側で反射が生じ、これらの反射波Sr1,Sr2が直接波Stと干渉するためと考えられる。なお、図8の結果によれば、本実施の形態では、例えばストリップ導体13中での位相変化や多重反射等の影響によって、1GHz付近でも利得の低下が生じているが、2.5GHz付近の利得は比較例に比べて向上している。このため、例えば2〜3GHz付近の周波数帯域の検出信号は、比較例に比べて高感度に検出することができる。
【0040】
かくして、本実施の形態では、伝送線路部12のストリップ導体13は、狭幅部13Aと広幅部13Bとの間には幅寸法を変更するテーパ部13Cを設ける構成とした。このため、伝送線路部12の両端側に加えて、インピーダンスが変化するテーパ部13Cの周囲でも検出信号の反射が生じる。この結果、従来技術のように、伝送線路部12の両端側だけで反射が生じる場合に比べて、伝送線路部12の途中位置でも反射が生じるから、検出信号に対して反射波が影響する周波数をシフトさせることができる。これにより、伝送線路部12の長さ方向(Z軸方向)に対してテーパ部13Cの位置を適宜設定することによって、所望の周波数帯域の検出信号に対して、その感度を向上させることができる。
【0041】
また、テーパ部13Cは、狭幅部13Aから広幅部13Bに向けて幅寸法が漸次大きくなる構成としたから、長さ方向に対するテーパ部13Cのインピーダンス変化を小さくすることができる。このため、テーパ部13Cで生じる反射波の強度を小さくすることができ、反射波の影響を低下させることができる。
【0042】
次に、図9および図10は本発明の第2の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、線路幅変更部は、1段の中間幅部を介して狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が大きくなる中間連結部によって構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0043】
磁界プローブ31は、第1の実施の形態による磁界プローブ1とほぼ同様に、多層基板4に設けられた検出部9、接続部10および伝送線路部32を有している。
【0044】
伝送線路部32は、多層基板4に設けられ検出部9の導電性ループ9Aと接続部10のスルーホール10Aとの間を接続する細長い導体パターンとしてのストリップ導体33を有している。この伝送線路部32は、ストリップ導体33と多層基板4の両面に設けられたグランド電極7,8とからなるストリップ線路によって構成されている。
【0045】
また、ストリップ導体33は、Z軸に沿って直線状に延びている。このストリップ導体33は、導電性ループ9Aに接続された狭い幅寸法W1の狭幅部33Aと、接続部10のスルーホール10Aに接続された広い幅寸法W2の広幅部33Bと、狭幅部33Aと広幅部33Bとの間に設けられた線路幅変更部としての中間連結部33Cとを備えている。
【0046】
中間連結部33Cは、幅寸法W3をもった中間幅部33Dと、中間幅部33Dの長さ方向両端側に設けられ狭幅部33A、広幅部33Bにそれぞれ接続されたテーパ状連結部33Eとによって構成されている。ここで、中間幅部33Dは、一定の幅寸法W3をもって、長さ方向(Z軸方向)に延びている。この中間幅部33Dの幅寸法W3は、狭幅部33Aの幅寸法W1よりも大きく、広幅部33Bの幅寸法W2よりも小さい値(W1<W3<W2)に設定されている。そして、中間連結部33Cの幅寸法は、1段の中間幅部33Dを介して、狭幅部33Aから広幅部33Bに向かうに従って増加している。また、テーパ状連結部33Eは、第1の実施の形態によるテーパ部13Cとほぼ同様に、狭幅部33Aから広幅部33Bに向かうに従って幅寸法が漸次大きくなる構成としている。
【0047】
かくして、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、中間連結部33Cは1段の中間幅部33Dを介して狭幅部33Aから広幅部33Bに向けて幅寸法が大きくなる構成としたから、例えば中間幅部33Dの両端側に位置して幅寸法が変化するテーパ状連結部33Eで反射波が生じる。このため、中間幅部33Dの長さ寸法や段数を適宜調整することによって、反射波が影響する周波数をシフトさせることができ、所望の周波数帯域の検出信号を高感度に検出することができる。
【0048】
なお、前記第2の実施の形態では、ストリップ導体33の中間連結部33Cは、1段の中間幅部33Dを有する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す第1の変形例による伝送線路部41のように、ストリップ導体42の中間連結部42Cは、2段の中間幅部42D,42Eを有する構成としてもよい。この場合、中間幅部42D,42Eの幅寸法は、いずれも狭幅部42Aの幅寸法W1と広幅部42Bの幅寸法W2との間の範囲に設定されている。また、広幅部42Bに近い中間幅部42Eの幅寸法は、狭幅部42Aに近い中間幅部42Dの幅寸法よりも大きな値となっている。さらに、狭幅部42Aと中間幅部42Dとの間、中間幅部42D,42E間、中間幅部42Eと広幅部33Bとの間にそれぞれテーパ状連結部42Fを設けるものである。
【0049】
さらに、中間連結部は、1段、2段に限らず3段以上の中間幅部を有する構成としてもよい。また、隣合う中間幅部の間や中間幅部と狭幅部、広幅部との間は、テーパ状連結部を用いて連結する構成としたが、不連続な段差をもった段差連結部を用いて連結する構成としてもよい。
【0050】
次に、図12および図13は本発明の第3の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、線路幅変更部は、狭幅部と広幅部との間で幅寸法が段差状に大きくなる段差部によって構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0051】
磁界プローブ51は、第1の実施の形態による磁界プローブ1とほぼ同様に、多層基板4に設けられた検出部9、接続部10および伝送線路部52を有している。
【0052】
伝送線路部52は、多層基板4に設けられ検出部9の導電性ループ9Aと接続部10のスルーホール10Aとの間を接続する細長い導体パターンとしてのストリップ導体53を有している。この伝送線路部52は、ストリップ導体53と多層基板4の両面に設けられたグランド電極7,8とからなるストリップ線路によって構成されている。
【0053】
また、ストリップ導体53は、Z軸に沿って直線状に延びている。このストリップ導体53は、導電性ループ9Aに接続された狭い幅寸法W1の狭幅部53Aと、接続部10のスルーホール10Aに接続された広い幅寸法W2の広幅部53Bと、狭幅部33Aと広幅部33Bとの間に設けられた線路幅変更部としての段差部53Cとを備えている。この段差部53Cは、幅寸法が不連続な段差状に大きくなっている。
【0054】
かくして、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、段差部53Cは、狭幅部53Aと広幅部53Bとの間で幅寸法が段差状に大きくなる構成としたから、段差部53Cで集中的に反射波を発生させることができる。このため、段差部53Cの位置に応じて感度が低下する検出信号の周波数を確実に把握することができるから、例えば所望の周波数に対して検出部9と段差部53Cとの間の長さ寸法や段差部53Cと接続部10との間の長さ寸法を1/4波長と異なる値に設定することによって、所望の周波数帯域の検出信号に対する反射波の影響を抑制することができる。これにより、所望の周波数の検出信号を高感度に検出することができる。
【0055】
なお、前記各実施の形態では、伝送線路部12,32,41,52は、2枚のグランド電極7,8間にストリップ導体13,33,42,53が設けられたストリップ線路によって構成した。しかし、本発明はこれに限らず、図14に示す第2の変形例のように、伝送線路部12′は、1枚のグランド電極7とストリップ導体13′とからなるマイクロストリップ線路によって構成してもよい。この場合、多層基板を用いる必要はなく、単層の絶縁材料からなる基板4′を用いる構成としてもよい。
【0056】
また、前記各実施の形態では、導電性ループ9Aは略四角形に形成したが、例えば三角形、五角形等の他の多角形状としてもよく、円形、半円形、楕円形等に形成してもよい。さらに、導電性ループ9Aは、1回巻のループコイルによって形成したが、2回以上巻いたループコイルによって形成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,31,51 磁界プローブ
4 多層基板(基板)
4′ 基板
9 検出部
9A 導電性ループ
10 接続部
12,12′,32,41,52 伝送線路部
13,13′,33,42,53 ストリップ導体(導体パターン)
13A,33A,42A,53A 狭幅部
13B,33B,42B,53B 広幅部
13C テーパ部
33C,42C 中間連結部
53C 段差部
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界の検出に用いて好適な磁界プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による磁界プローブとして、基板の一端側にループコイルからなる検出部を設け、該検出部にストリップ線路からなる伝送線路部の一端側を接続すると共に、該伝送線路部の他端側にコネクタ等を介して外部に接続するための接続部を設けたものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術として、ストリップ線路と同軸線路等とを接続する高周波接続部には、テーパ状の電極パターンを設け、ストリップ線路と同軸線路との間のインピーダンス整合を取る構成が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】International Electrotechnical Commission,“IEC 61967-6 First Edition”, International Electrotechnical Commission,2002年6月,p.11-31
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−69337号公報
【特許文献2】特開2007−123741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非特許文献1による磁界プローブでは、伝送線路部や接続部に取り付けられる同軸線路は例えば50Ωの特性インピーダンスを有する。一方、磁界プローブは、例えば数十Hz〜数GHzのように広帯域に亘って磁界を検出するのに加え、ループコイルからなる検出部は測定する磁界の周波数に応じてインピーダンスが変化する。また、コネクタ等が取り付けられる接続部のインピーダンスも、異なる形式の線路(例えばストリップ線路と同軸線路)間を接続するため、特性インピーダンスからずれる傾向がある。従って、検出部および接続部のインピーダンスを、全ての帯域で特性インピーダンスに一致させることはできず、両者のインピーダンスには差異が生じる。
【0007】
このため、検出部によって検出した磁界の検出信号は、接続部から直接的に外部に伝送される直接波に加えて、接続部や検出部で反射した反射波が生じ、これら直接波と反射波との相互干渉によって一部の周波数の検出信号では検出感度が低下する傾向がある。
【0008】
これに対し、特許文献2,3では、例えば伝送線路の端部にテーパ状の電極パターンを設け、外部の同軸線路との整合性を高めた構成が開示されている。しかし、前述したように、磁界プローブは測定する磁界の周波数帯域が非常に広く、検出部のインピーダンスも測定する磁界の周波数に応じて変化する。このため、全ての周波数の検出信号に対して、検出部、伝送線路および接続部のインピーダンスを整合させることは非常に難しいという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、反射波の影響を軽減して所望の周波数帯域の感度を向上させることができる磁界プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、絶縁材料からなる基板と、磁界を検出するために該基板に設けられた導電性ループからなる検出部と、前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部と、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループと該接続部との間を接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブに適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記伝送線路部の導体パターンは、前記導電性ループに接続された幅寸法の狭い狭幅部と、前記接続部に接続された幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ幅寸法を変更する線路幅変更部とによって構成したことにある。
【0012】
請求項2の発明では、前記線路幅変更部は、前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部によって構成している。
【0013】
請求項3の発明では、前記線路幅変更部は、1段または複数段の中間幅部を介して前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が大きくなる中間連結部によって構成している。
【0014】
請求項4の発明では、前記線路幅変更部は、前記狭幅部と広幅部との間で幅寸法が段差状に大きくなる段差部によって構成している。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、伝送線路部の導体パターンは、狭幅部と広幅部との間に位置して幅寸法を変更する線路幅変更部を設ける構成とした。このため、伝送線路部の両端側に加えて、テーパ部の周囲でも検出信号の反射が生じる。この結果、従来技術のように、伝送線路部の両端側だけで反射が生じる場合に比べて、伝送線路部の途中位置でも反射が生じるから、検出信号に対して反射波が影響する周波数をシフトさせることができる。これにより、伝送線路部の長さ方向に対してテーパ部の位置を適宜設定することによって、所望の周波数帯域の検出信号に対して、その感度を向上させることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、線路幅変更部は、狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部によって構成したから、長さ方向に対するテーパ部のインピーダンス変化を小さくすることができる。このため、テーパ部で生じる反射波の強度を小さくすることができ、反射波の影響を低下させることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、線路幅変更部は、1段または複数段の中間幅部を介して狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が大きくなる中間連結部によって構成したから、例えば幅寸法が変化する中間幅部の両端側で反射波が生じる。このため、中間幅部の長さ寸法や段数を適宜調整することによって、所望の周波数帯域の検出信号を高感度に検出することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、線路幅変更部は、狭幅部と広幅部との間で幅寸法が段差状に大きくなる段差部によって構成したから、段差部で集中的に反射波を発生させることができる。このため、段差部の位置に応じて感度が低下する検出信号の周波数を確実に把握することができるから、例えば所望の周波数に対して検出部と段差部との間の長さ寸法や段差部と接続部との間の長さ寸法を1/4波長と異なる値に設定することによって、所望の周波数の検出信号に対する反射波の影響を抑制することができる。これにより、所望の周波数帯域の検出信号を高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による磁界プローブを示す斜視図である。
【図2】図1中の検出部を多層基板を透視した状態で示す斜視図である。
【図3】検出部を図2中の矢示III−III方向からみた断面図である。
【図4】図1中の磁界プローブを表面側の絶縁層を省いた状態で示す正面図である。
【図5】接続部を図4中の矢示V−V方向からみた断面図である。
【図6】図4中のテーパ部を拡大して示す正面図である。
【図7】比較例による磁界プローブを表面側の絶縁層を省いた状態で示す図4と同様な正面図である。
【図8】第1の実施の形態および比較例において、磁界プローブの利得の周波数特性を示す特性線図である。
【図9】第2の実施の形態による磁界プローブを表面側の絶縁層を省いた状態で示す正面図である。
【図10】図9中の中間連結部を拡大して示す正面図である。
【図11】第1の変形例による中間連結部を示す図10と同様な正面図である。
【図12】第3の実施の形態による磁界プローブを表面側の絶縁層を省いた状態で示す正面図である。
【図13】図12中の段差部を拡大して示す正面図である。
【図14】第2の変形例による磁界プローブを基板を透視した状態で示す図2と同様な位置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による磁界プローブを添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図1ないし図6は第1の実施の形態による磁界プローブ1を示している。この磁界プローブ1は、例えば非磁性の絶縁材料からなる筒状のケース2に収容されると共に、同軸ケーブル3(同軸線路)を通じて信号処理回路(図示せず)に電気的に接続されている。この信号処理回路は、磁界プローブ1の検出部9に発生する電圧、電流等の検出信号に基づいて、検出部9の近傍に発生する磁界の検出を行う。また、磁界プローブ1は、後述する多層基板4および該多層基板4に設けられた検出部9、接続部10、伝送線路部12によって構成されている。
【0022】
多層基板4は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のうち例えばX軸方向およびZ軸方向に対して平行に広がる平板状に形成されている。この多層基板4は、例えば2層の絶縁層5,6を厚さ方向となるY軸方向に積層することによって構成されている。このとき、多層基板4は、幅方向となるX軸方向に対して例えば数mm程度の幅寸法を有すると共に、長さ方向となるZ軸方向に沿って延び、その長さ寸法は例えば数cm程度になっている。
【0023】
また、各絶縁層5,6は、例えば絶縁性の樹脂材料を用いて層状に形成されている。そして、多層基板4の先端部4Aは、Z軸方向の一端側(図1中の下端側)に位置して後述の検出部9が設けられている。一方、多層基板4の基端部4Bは、先端部4Aに比べて幅寸法が大きく形成され、Z軸方向の他端側(図1中の上端側)に配置されている。
【0024】
多層基板4のうちY軸方向の両端側に位置する表面および裏面には、例えば導電性の金属薄膜からなるグランド電極7,8がそれぞれ設けられている。このグランド電極7,8は、例えば外部のグランドに接続されてグランド電位に保持されると共に、多層基板4の先端部4Aを除いて多層基板4の略全面を覆っている。また、グランド電極7,8の先端側には、先端部4A内に向けて延びる細長い接続電極部7A,8Aが設けられている。
【0025】
検出部9は、図1ないし図3に示すように、多層基板4の先端部4Aに配置され、略C字状に形成された導電性ループ9Aを有している。この導電性ループ9Aは、例えば1回巻のループコイルによって形成されている。具体的には、導電性ループ9Aは、例えば幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて略四角形の枠状に形成され、多層基板4の厚さ方向の中間位置として、絶縁層5,6間に配置されている。この導電性ループ9Aの一端側は、多層基板4を貫通したビア9Bを介して接続電極部7A,8Aに電気的に接続されている。一方、導電性ループ9Aの他端側は、後述する伝送線路部12のストリップ導体13に電気的に接続されている。
【0026】
そして、検出部9は、導電性ループ9Aの内部を通過する磁界(磁束変化)に応じて、導電性ループ9Aに電圧が発生する。これにより、検出部9は、例えば数十Hz〜数GHzまでの広帯域にわたる磁束変化を検出するものである。
【0027】
接続部10は、図1、図4および図5に示すように、多層基板4の基端部4Bに配置されている。この接続部10は、多層基板4を貫通して設けられたスルーホール10Aを備え、該スルーホール10Aはメッキ処理等によってその内壁面に導電性の金属膜が形成されている。ここで、基端部4Bに位置するグランド電極7,8には、このスルーホール10Aの周囲を取囲む略円形の開口部10B,10Cが形成され、該開口部10B,10Cによってスルーホール10Aとグランド電極7,8との間が絶縁されている。
【0028】
また、スルーホール10Aは、後述する伝送線路部12のストリップ導体13に電気的に接続されている。そして、接続部10には例えばSMAコネクタ等のコネクタ11が取り付けられ、該コネクタ11には同軸ケーブル3が取り付けられている。これにより、接続部10は、コネクタ11、同軸ケーブル3を介して外部の信号処理回路に接続され、検出部9による磁界の検出信号を信号処理回路に向けて出力する。
【0029】
伝送線路部12は、図1、図4および図6に示すように、多層基板4に設けられ、検出部9の導電性ループ9Aと接続部10のスルーホール10Aとの間を接続している。この伝送線路部12は、細長い導体パターンとしてのストリップ導体13(信号電極)を有している。伝送線路部12は、ストリップ導体13と多層基板4の両面に設けられたグランド電極7,8とからなるストリップ線路によって構成されている。
【0030】
また、ストリップ導体13は、Z軸に沿って直線状に延びている。このストリップ導体13は、検出部9の導電性ループ9Aに接続された狭い幅寸法W1の狭幅部13Aと、接続部10のスルーホール10Aに接続された広い幅寸法W2の広幅部13Bと、狭幅部13Aと広幅部13Bとの間に設けられた線路幅変更部としてのテーパ部13Cとを備えている。
【0031】
ここで、狭幅部13Aの幅寸法W1は、例えば検出部9の導電性ループ9Aの幅寸法W0と同程度の値に設定されている。一方、広幅部13Bの幅寸法W2は、その周囲でストリップ線路の特性インピーダンスが例えば50Ωとなるような値に設定されている。
【0032】
テーパ部13Cは、狭幅部13Aから広幅部13Bに向けて幅寸法が漸次大きくなっている。即ち、テーパ部13Cの幅寸法は、狭幅部13Aから広幅部13Bに向かうに従って連続的に増加している。そして、テーパ部13Cのうち幅方向両側の縁部分は、Z軸方向に対して斜めに傾斜して延びている。これにより、テーパ部13Cは、狭幅部13Aから広幅部13Bに向かうに従って、そのインピーダンスが徐々に変化している。
【0033】
本実施の形態による磁界プローブ1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0034】
まず、磁界プローブ1の先端部分を、測定対象(例えば被測定基板)の表面に近接した状態で配置する。そして、磁界プローブ1を測定対象の表面上で移動させる。ここで、磁界プローブ1の近傍に位置して測定対象の表面にY軸方向の磁界が発生すると、この磁界は検出部9の導電性ループ9Aの内部を通過する。これにより、例えば導電性ループ9Aに電圧が生じるため、この電圧を検出することによって、測定対象の表面に生じる磁界を検出することができる。
【0035】
然るに、検出部9と接続部10との間は伝送線路部12を用いて接続すると共に、伝送線路部12のストリップ導体13は、狭幅部13Aと広幅部13Bとの間にテーパ部13Cを設ける構成とした。このため、狭幅部13Aの両端側や広幅部13Bの両端側で反射が生じ、幅寸法が一定なストリップ導体を用いた場合に比べて、検出感度が低下する周波数がシフトする。
【0036】
そこで、本実施の形態による磁界プローブ1と図7に示す比較例による磁界プローブ21とについて、それぞれの利得の周波数特性を測定した。その結果を図8に示す。
【0037】
なお、図7に示す比較例による磁界プローブ21では、伝送線路部22のストリップ導体23は、例えば特性インピーダンスが50Ωとなる一定の幅寸法を有するものとした。
【0038】
図8中に破線で示すように、比較例の場合は、例えば2GHz付近で検出信号の利得が低下している。この理由は、伝送線路部22の両端側で反射が生じるから、この反射波Srと直接波Stとが干渉して、検出信号の強度が低下するためと考えられる。
【0039】
一方、図8中に実線で示すように、本実施の形態の場合は、例えば3.2GHz付近で検出信号の利得が低下している。この理由は、本実施の形態では、図4に示すように、狭幅部13Aの両端側や広幅部13Bの両端側で反射が生じ、これらの反射波Sr1,Sr2が直接波Stと干渉するためと考えられる。なお、図8の結果によれば、本実施の形態では、例えばストリップ導体13中での位相変化や多重反射等の影響によって、1GHz付近でも利得の低下が生じているが、2.5GHz付近の利得は比較例に比べて向上している。このため、例えば2〜3GHz付近の周波数帯域の検出信号は、比較例に比べて高感度に検出することができる。
【0040】
かくして、本実施の形態では、伝送線路部12のストリップ導体13は、狭幅部13Aと広幅部13Bとの間には幅寸法を変更するテーパ部13Cを設ける構成とした。このため、伝送線路部12の両端側に加えて、インピーダンスが変化するテーパ部13Cの周囲でも検出信号の反射が生じる。この結果、従来技術のように、伝送線路部12の両端側だけで反射が生じる場合に比べて、伝送線路部12の途中位置でも反射が生じるから、検出信号に対して反射波が影響する周波数をシフトさせることができる。これにより、伝送線路部12の長さ方向(Z軸方向)に対してテーパ部13Cの位置を適宜設定することによって、所望の周波数帯域の検出信号に対して、その感度を向上させることができる。
【0041】
また、テーパ部13Cは、狭幅部13Aから広幅部13Bに向けて幅寸法が漸次大きくなる構成としたから、長さ方向に対するテーパ部13Cのインピーダンス変化を小さくすることができる。このため、テーパ部13Cで生じる反射波の強度を小さくすることができ、反射波の影響を低下させることができる。
【0042】
次に、図9および図10は本発明の第2の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、線路幅変更部は、1段の中間幅部を介して狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が大きくなる中間連結部によって構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0043】
磁界プローブ31は、第1の実施の形態による磁界プローブ1とほぼ同様に、多層基板4に設けられた検出部9、接続部10および伝送線路部32を有している。
【0044】
伝送線路部32は、多層基板4に設けられ検出部9の導電性ループ9Aと接続部10のスルーホール10Aとの間を接続する細長い導体パターンとしてのストリップ導体33を有している。この伝送線路部32は、ストリップ導体33と多層基板4の両面に設けられたグランド電極7,8とからなるストリップ線路によって構成されている。
【0045】
また、ストリップ導体33は、Z軸に沿って直線状に延びている。このストリップ導体33は、導電性ループ9Aに接続された狭い幅寸法W1の狭幅部33Aと、接続部10のスルーホール10Aに接続された広い幅寸法W2の広幅部33Bと、狭幅部33Aと広幅部33Bとの間に設けられた線路幅変更部としての中間連結部33Cとを備えている。
【0046】
中間連結部33Cは、幅寸法W3をもった中間幅部33Dと、中間幅部33Dの長さ方向両端側に設けられ狭幅部33A、広幅部33Bにそれぞれ接続されたテーパ状連結部33Eとによって構成されている。ここで、中間幅部33Dは、一定の幅寸法W3をもって、長さ方向(Z軸方向)に延びている。この中間幅部33Dの幅寸法W3は、狭幅部33Aの幅寸法W1よりも大きく、広幅部33Bの幅寸法W2よりも小さい値(W1<W3<W2)に設定されている。そして、中間連結部33Cの幅寸法は、1段の中間幅部33Dを介して、狭幅部33Aから広幅部33Bに向かうに従って増加している。また、テーパ状連結部33Eは、第1の実施の形態によるテーパ部13Cとほぼ同様に、狭幅部33Aから広幅部33Bに向かうに従って幅寸法が漸次大きくなる構成としている。
【0047】
かくして、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、中間連結部33Cは1段の中間幅部33Dを介して狭幅部33Aから広幅部33Bに向けて幅寸法が大きくなる構成としたから、例えば中間幅部33Dの両端側に位置して幅寸法が変化するテーパ状連結部33Eで反射波が生じる。このため、中間幅部33Dの長さ寸法や段数を適宜調整することによって、反射波が影響する周波数をシフトさせることができ、所望の周波数帯域の検出信号を高感度に検出することができる。
【0048】
なお、前記第2の実施の形態では、ストリップ導体33の中間連結部33Cは、1段の中間幅部33Dを有する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す第1の変形例による伝送線路部41のように、ストリップ導体42の中間連結部42Cは、2段の中間幅部42D,42Eを有する構成としてもよい。この場合、中間幅部42D,42Eの幅寸法は、いずれも狭幅部42Aの幅寸法W1と広幅部42Bの幅寸法W2との間の範囲に設定されている。また、広幅部42Bに近い中間幅部42Eの幅寸法は、狭幅部42Aに近い中間幅部42Dの幅寸法よりも大きな値となっている。さらに、狭幅部42Aと中間幅部42Dとの間、中間幅部42D,42E間、中間幅部42Eと広幅部33Bとの間にそれぞれテーパ状連結部42Fを設けるものである。
【0049】
さらに、中間連結部は、1段、2段に限らず3段以上の中間幅部を有する構成としてもよい。また、隣合う中間幅部の間や中間幅部と狭幅部、広幅部との間は、テーパ状連結部を用いて連結する構成としたが、不連続な段差をもった段差連結部を用いて連結する構成としてもよい。
【0050】
次に、図12および図13は本発明の第3の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、線路幅変更部は、狭幅部と広幅部との間で幅寸法が段差状に大きくなる段差部によって構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0051】
磁界プローブ51は、第1の実施の形態による磁界プローブ1とほぼ同様に、多層基板4に設けられた検出部9、接続部10および伝送線路部52を有している。
【0052】
伝送線路部52は、多層基板4に設けられ検出部9の導電性ループ9Aと接続部10のスルーホール10Aとの間を接続する細長い導体パターンとしてのストリップ導体53を有している。この伝送線路部52は、ストリップ導体53と多層基板4の両面に設けられたグランド電極7,8とからなるストリップ線路によって構成されている。
【0053】
また、ストリップ導体53は、Z軸に沿って直線状に延びている。このストリップ導体53は、導電性ループ9Aに接続された狭い幅寸法W1の狭幅部53Aと、接続部10のスルーホール10Aに接続された広い幅寸法W2の広幅部53Bと、狭幅部33Aと広幅部33Bとの間に設けられた線路幅変更部としての段差部53Cとを備えている。この段差部53Cは、幅寸法が不連続な段差状に大きくなっている。
【0054】
かくして、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、段差部53Cは、狭幅部53Aと広幅部53Bとの間で幅寸法が段差状に大きくなる構成としたから、段差部53Cで集中的に反射波を発生させることができる。このため、段差部53Cの位置に応じて感度が低下する検出信号の周波数を確実に把握することができるから、例えば所望の周波数に対して検出部9と段差部53Cとの間の長さ寸法や段差部53Cと接続部10との間の長さ寸法を1/4波長と異なる値に設定することによって、所望の周波数帯域の検出信号に対する反射波の影響を抑制することができる。これにより、所望の周波数の検出信号を高感度に検出することができる。
【0055】
なお、前記各実施の形態では、伝送線路部12,32,41,52は、2枚のグランド電極7,8間にストリップ導体13,33,42,53が設けられたストリップ線路によって構成した。しかし、本発明はこれに限らず、図14に示す第2の変形例のように、伝送線路部12′は、1枚のグランド電極7とストリップ導体13′とからなるマイクロストリップ線路によって構成してもよい。この場合、多層基板を用いる必要はなく、単層の絶縁材料からなる基板4′を用いる構成としてもよい。
【0056】
また、前記各実施の形態では、導電性ループ9Aは略四角形に形成したが、例えば三角形、五角形等の他の多角形状としてもよく、円形、半円形、楕円形等に形成してもよい。さらに、導電性ループ9Aは、1回巻のループコイルによって形成したが、2回以上巻いたループコイルによって形成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,31,51 磁界プローブ
4 多層基板(基板)
4′ 基板
9 検出部
9A 導電性ループ
10 接続部
12,12′,32,41,52 伝送線路部
13,13′,33,42,53 ストリップ導体(導体パターン)
13A,33A,42A,53A 狭幅部
13B,33B,42B,53B 広幅部
13C テーパ部
33C,42C 中間連結部
53C 段差部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなる基板と、磁界を検出するために該基板に設けられた導電性ループからなる検出部と、前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部と、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループと該接続部との間を接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブにおいて、
前記伝送線路部の導体パターンは、前記導電性ループに接続された幅寸法の狭い狭幅部と、前記接続部に接続された幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ幅寸法を変更する線路幅変更部とによって構成したことを特徴とする磁界プローブ。
【請求項2】
前記線路幅変更部は、前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部によって構成してなる請求項1に記載の磁界プローブ。
【請求項3】
前記線路幅変更部は、1段または複数段の中間幅部を介して前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が大きくなる中間連結部によって構成してなる請求項1に記載の磁界プローブ。
【請求項4】
前記線路幅変更部は、前記狭幅部と広幅部との間で幅寸法が段差状に大きくなる段差部によって構成してなる請求項1に記載の磁界プローブ。
【請求項1】
絶縁材料からなる基板と、磁界を検出するために該基板に設けられた導電性ループからなる検出部と、前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部と、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループと該接続部との間を接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブにおいて、
前記伝送線路部の導体パターンは、前記導電性ループに接続された幅寸法の狭い狭幅部と、前記接続部に接続された幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ幅寸法を変更する線路幅変更部とによって構成したことを特徴とする磁界プローブ。
【請求項2】
前記線路幅変更部は、前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部によって構成してなる請求項1に記載の磁界プローブ。
【請求項3】
前記線路幅変更部は、1段または複数段の中間幅部を介して前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が大きくなる中間連結部によって構成してなる請求項1に記載の磁界プローブ。
【請求項4】
前記線路幅変更部は、前記狭幅部と広幅部との間で幅寸法が段差状に大きくなる段差部によって構成してなる請求項1に記載の磁界プローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−169793(P2011−169793A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34686(P2010−34686)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]