磁界プローブ
【課題】 所望の周波数帯域の感度を向上させ、かつ他の周波数帯域の感度の低下を抑えることができる磁界プローブを提供する。
【解決手段】 磁界プローブ1の多層基板4には、5個のループパターン20〜24を厚さ方向に積み重ねて設ける。ループパターン21〜24は、ビアホール25〜27を用いて直列接続され、コイル28を構成する。ループパターン20,21は、互いに絶縁した状態で対向し、コンデンサ29を構成する。コイル28とコンデンサ29は、共用するループパターン21を介して互いに直列接続される。
【解決手段】 磁界プローブ1の多層基板4には、5個のループパターン20〜24を厚さ方向に積み重ねて設ける。ループパターン21〜24は、ビアホール25〜27を用いて直列接続され、コイル28を構成する。ループパターン20,21は、互いに絶縁した状態で対向し、コンデンサ29を構成する。コイル28とコンデンサ29は、共用するループパターン21を介して互いに直列接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界の検出に用いて好適な磁界プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による磁界プローブとして、基板にループパターンからなる磁界の検出部を設けると共に、例えばマイクロストリップ線路、ストリップ線路等からなる伝送線路部を該検出部に接続し、検出部と伝送線路部との間にコンデンサを形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術として、基板に1回巻のコイルを形成すると共に、該コイルに並列にコンデンサを接続した構成が開示されている(例えば、特許文献2,3参照)。さらに、基板と平行な磁界を検出するために、基板にスパイラルコイルを形成した構成も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−187539号公報
【特許文献2】特開2004−69337号公報
【特許文献3】特開2007−155597号公報
【特許文献4】特開2004−198329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1による磁界プローブでは、ループパターンからなるコイルにコンデンサを直列接続したから、これらの共振周波数の周辺帯域では高感度に磁界を検出することができる。このとき、コイルに直列接続されたコンデンサは、全ての周波数の信号に対して高域通過フィルタとして機能する。このため、例えば共振周波数よりも低周波側のように、共振周波数以外の周波数帯域では、コンデンサを設けない場合と比べて感度が低下するという問題がある。
【0006】
また、特許文献2,3にも、コイルとコンデンサとを備えた磁界プローブが開示されている。しかし、これらの磁界プローブでは、1回巻のコイルにコンデンサを並列に設けたものであり、コイルとコンデンサとの直列共振によって感度を向上させるものではない。
【0007】
さらに、特許文献4には、基板にスパイラルコイルを形成すると共に、該基板に検査対象となる配線パターンを設けた構成が開示されている。しかし、特許文献4のスパイラルコイルは、基板と平行な磁界を検出するものであり、基板の厚さ方向の磁界を検出するものではない。これに加えて、スパイラルコイルと一緒に基板に設けられた配線パターンは、磁界の検査対象となるものであり、コイルとコンデンサとが直列接続されたものではない。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、所望の周波数帯域の感度を向上させ、かつ他の周波数帯域での感度の低下を抑えることができる磁界プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による磁界プローブは、複数の絶縁層を厚さ方向に積層した多層基板と、該多層基板のうち絶縁層を挟んで厚さ方向の異なる位置に設けられ巻線形状となった2個以上のループパターンとを備え、前記2個以上のループパターンのうち厚さ方向で隣合う2個のループパターンは、非接続にして互いに絶縁された状態で対向したコンデンサを構成している。
【0010】
請求項2の発明では、前記コンデンサを構成する2個のループパターンの間を除いた残余のループパターンの間にはビアホールを設け、隣合うループパターンを直列に接続してコイルを構成している。
【0011】
請求項3の発明では、前記2個以上のループパターンは、いずれも略同じ巻線形状に形成している。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、2個以上のループパターンのうち厚さ方向で隣合う2個のループパターンは、非接続にして互いに絶縁された状態で対向したコンデンサを構成した。このとき、各ループパターンはコイルとして機能すると共に、コンデンサに直列接続された状態となるから、コイルとコンデンサとが直列共振する共振周波数の周辺帯域では高感度に磁界を検出することができる。さらに、共振周波数以外の周波数帯域では、コンデンサを構成するループパターンはコイルの一部として機能し、磁界に応じた電圧等の検出信号を出力することができる。このため、例えば共振周波数よりも低周波側では、コンデンサはフィルタとして機能せず、コイルの一部として機能するから、共振周波数以外の周波数帯域で磁界を検出する場合でも、検出感度の低下を抑えることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、コンデンサを構成する2個のループパターンの間を除いた残余のループパターンの間にはビアホールを設けた。このため、複数個のループパターンを直列接続して2回巻以上のコイルを構成することができ、1回巻のコイルに比べてインダクタンスを大きくして磁界の検出感度を高めることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、2個以上のループパターンはいずれも略同じ巻線形状に形成したから、ループパターンが互いに異なる巻線形状となった場合に比べて、コイルのインダクタンスを大きくすることができる。また、コイルを構成するループパターンに対してコンデンサを構成するループパターンを重ね合わせることができるから、共振周波数以外の周波数帯域で磁界を検出する場合でも、コンデンサをなすループパターンをコイルの一部として機能させることができ、検出感度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による磁界プローブを示す斜視図である。
【図2】図1中の検出部を多層基板を透視した状態で拡大して示す斜視図である。
【図3】図1中の5個のループパターンを分解した状態で示す説明図である。
【図4】図1中の磁界プローブに設けられたコンデンサとコイルとを示す等化回路図である。
【図5】図1中の多層基板の表面から2番目の絶縁層と、その両面に配置された2個のループパターンとを示す正面図である。
【図6】図1中の多層基板の表面から3番目の絶縁層と、その両面に配置された2個のループパターンとを示す正面図である。
【図7】図1中の多層基板の表面から4番目の絶縁層と、その両面に配置された2個のループパターンとを示す正面図である。
【図8】図1中の多層基板の表面から5番目の絶縁層と、その両面に配置された2個のループパターンとを示す正面図である。
【図9】図1中の多層基板の表面から6番目の絶縁層と、その表面に配置された1個のループパターンとを示す正面図である。
【図10】実施の形態および比較例において、磁界プローブの利得の周波数特性を示す特性線図である。
【図11】第1の変形例による磁界プローブの5個のループパターンを分解した状態で示す図3と同様な説明図である。
【図12】第2の変形例による磁界プローブの2個のループパターンを分解した状態で示す図3と同様な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態による磁界プローブを添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1ないし図9は実施の形態による磁界プローブ1を示している。この磁界プローブ1は、例えば非磁性の絶縁材料からなる筒状のケース2に収容されると共に、信号処理回路3に電気的に接続されている。この信号処理回路3は、磁界プローブ1の検出部19に発生する電圧、電流等の検出信号に基づいて、検出部19の近傍に発生する磁界の検出を行う。また、磁界プローブ1は、後述する多層基板4および該多層基板4に設けられた伝送線路部13、検出部19によって構成されている。
【0018】
多層基板4は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のうち例えばX軸方向およびZ軸方向に対して平行に広がる平板状に形成されている。この多層基板4は、例えば6層の絶縁層5〜10を厚さ方向となるY軸方向に積層することによって構成されている。このとき、多層基板4は、幅方向となるX軸方向に対して例えば数mm程度の幅寸法を有すると共に、長さ方向となるZ軸方向に沿って延び、その長さ寸法は例えば数cm程度になっている。
【0019】
また、各絶縁層5〜10は、例えば絶縁性の樹脂材料を用いて層状に形成されている。そして、多層基板4の先端部4Aは、Z軸方向の一端側(図1中の下端側)に位置して後述の検出部19が設けられている。一方、多層基板4の基端側は、Z軸方向の他端側(図1中の上端側)に向けて延びている。
【0020】
多層基板4のうちY軸方向の両端側に位置する表面および裏面には、例えば導電性の金属薄膜からなるグランド電極11,12がそれぞれ設けられている。このグランド電極11,12は、例えば信号処理回路3等のグランドに接続されてグランド電位に保持されると共に、多層基板4の先端部4Aを除いて多層基板4の略全面を覆っている。
【0021】
伝送線路部13は、図1および図2に示すように、多層基板4に設けられ、後述する検出部19と信号処理回路3との間を接続している。この伝送線路部13は、例えば導電性の金属薄膜等からなる細長い導体パターンとしてのストリップ導体14(信号電極)を有している。そして、伝送線路部13は、ストリップ導体14と多層基板4の両面に設けられたグランド電極11,12とからなるストリップ線路によって構成されている。なお、伝送線路部13は、ストリップ線路に限らず、例えば一方のグランド電極を省いたマイクロストリップ線路によって構成してもよい。
【0022】
また、ストリップ導体14は、絶縁層7,8の間に配置されると共に、多層基板4のうちX軸方向の中央部分に位置してZ軸に沿って直線状に延びている。このストリップ導体14の先端側は、X軸方向の一側に向けて斜めに傾斜して延びると共に、絶縁層6,7を貫通するビアホール15を通じて後述のループパターン20に電気的に接続されている。
【0023】
一方、グランド電極11,12は、ビアホール16,17および接続パターン18を通じて後述のループパターン24に電気的に接続されている。この接続パターン18は、絶縁層7,8の間に位置してストリップ導体14の近傍に配置されている。また、接続パターン18は、ストリップ導体14と同様な導体パターンによって形成され、Z軸方向に向けて延びている。さらに、接続パターン18の基端側は、多層基板4を厚さ方向に貫通するスルーホールビアとしてのビアホール16を通じてグランド電極11,12に接続され、接続パターン18の先端側は、絶縁層8,9を貫通するビアホール17を通じてループパターン24の接続部24Bに接続されている。
【0024】
検出部19は、図1ないし図9に示すように、多層基板4の先端部4Aに配置され、後述する5個のループパターン20〜24によって構成されるコイル28とコンデンサ29とを備えている。
【0025】
ループパターン20は、絶縁層5と絶縁層6との間に配置され、図5に示すように、例えば50〜150μm程度の幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて略四角形の巻線形状に形成されている。このループパターン20の一端側には、Z軸方向の他端側に向けて延びた接続部20Aが設けられ、該接続部20Aは、ビアホール15を通じてストリップ導体14に電気的に接続されている。また、ループパターン20は、例えば1〜3mm程度の長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、例えば0.4〜1.2mm程度の長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン20は、XZ平面に平行な略長方形状をなしている。
【0026】
ループパターン21は、絶縁層6と絶縁層7との間に配置され、図5および図6に示すように、例えばループパターン20と同じ幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて形成されている。このループパターン21は、一部を切欠いた四角形の枠状をなすと共に、隣合うループパターン20と略同じ四角形の巻線形状に形成されている。また、ループパターン21は、その両端がX軸方向に離間して配置され、一端側から他端側に向けてループパターン20に沿って延びている。ループパターン21の他端側には接続部21Aが設けられ、該接続部21Aは、後述のビアホール25を通じて隣合うループパターン22に電気的に接続されている。そして、ループパターン21は、ループパターン20と同様に、長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン21は、XZ平面に平行な略長方形状をなすと共に、絶縁層6を挟んでループパターン20と厚さ方向で対向している。
【0027】
ループパターン22は、絶縁層7と絶縁層8との間に配置され、図6および図7に示すように、例えばループパターン21と同じ幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて形成されている。このループパターン22は、一部を切欠いた四角形の枠状をなすと共に、隣合うループパターン21と略同じ四角形の巻線形状に形成されている。また、ループパターン22は、その両端がX軸方向に離間して配置され、一端側から他端側に向けてループパターン21に沿って延びている。
【0028】
ループパターン22の一端側には、ループパターン21の接続部21Aと対向した位置に接続部22Aが設けられている。この接続部22Aは、後述のビアホール25を通じて隣合うループパターン21の接続部21Aに電気的に接続されている。一方、ループパターン22の他端側には、接続部22AよりもX軸方向の他側(図1中の右側)に位置して接続部22Bが設けられている。この接続部22Bは、後述のビアホール26を通じて隣合うループパターン23に電気的に接続されている。
【0029】
そして、ループパターン22は、ループパターン21と同様に、長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン22は、XZ平面に平行な略長方形状をなすと共に、絶縁層7を挟んでループパターン21と厚さ方向で対向している。
【0030】
ループパターン23は、絶縁層8と絶縁層9との間に配置され、図7および図8に示すように、例えばループパターン22と同じ幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて形成されている。このループパターン23は、一部を切欠いた四角形の枠状をなすと共に、隣合うループパターン22と略同じ四角形の巻線形状に形成されている。また、ループパターン23は、その両端がX軸方向に離間して配置され、一端側から他端側に向けてループパターン22に沿って延びている。
【0031】
ループパターン23の一端側には、ループパターン22の接続部22Bと対向した位置に接続部23Aが設けられている。この接続部23Aは、後述のビアホール26を通じて隣合うループパターン22の接続部22Bに電気的に接続されている。一方、ループパターン23の他端側には、接続部23AよりもX軸方向の他側に位置して接続部23Bが設けられている。この接続部23Bは、後述のビアホール27を通じて隣合うループパターン24に電気的に接続されている。
【0032】
そして、ループパターン23は、ループパターン22と同様に、長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン23は、XZ平面に平行な略長方形状をなすと共に、絶縁層8を挟んでループパターン22と厚さ方向で対向している。
【0033】
ループパターン24は、絶縁層9と絶縁層10との間に配置され、図8および図9に示すように、例えばループパターン23と同じ幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて形成されている。このループパターン24は、一部を切欠いた四角形の枠状をなすと共に、隣合うループパターン23と略同じ四角形の巻線形状に形成されている。また、ループパターン24は、その両端がX軸方向に離間して配置され、一端側から他端側に向けてループパターン23に沿って延びている。
【0034】
ループパターン24の一端側には、ループパターン23の接続部23Bと対向した位置に接続部24Aが設けられている。この接続部24Aは、後述のビアホール27を通じて隣合うループパターン23の接続部23Bに電気的に接続されている。一方、ループパターン24の他端側には、Z軸方向の他端側に向けて延びた接続部24Bが設けられ、該接続部24Bは、ビアホール17を通じて接続パターン18に電気的に接続されている。
【0035】
そして、ループパターン24は、ループパターン23と同様に、長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン24は、XZ平面に平行な略長方形状をなすと共に、絶縁層9を挟んでループパターン23と厚さ方向で対向している。
【0036】
以上により、ループパターン20〜24は、略同じ巻線形状に形成されると共に、多層基板4のX軸方向とZ軸方向に対して、略同じ位置に配置されている。これにより、ループパターン20〜24は、接続部20A,24Bを除いた略全長にわたって厚さ方向に対して互いに重なり合っている。
【0037】
ビアホール25は、厚さ方向でループパターン21,22の間に位置して、絶縁層7を貫通すると共に、その内壁が例えば金属材料等の導体材料によって被覆されることによって形成されている。このビアホール25は、ループパターン21の接続部21Aおよびループパターン22の接続部22Aと対応した位置に配置され、ループパターン21およびループパターン22を電気的に直列接続している。
【0038】
ビアホール26は、厚さ方向でループパターン22,23の間に位置して、絶縁層8を貫通して、ビアホール25と同様に形成されている。このビアホール26は、ループパターン22の接続部22Bおよびループパターン23の接続部23Aと対応した位置に配置され、ループパターン22およびループパターン23を電気的に直列接続している。
【0039】
ビアホール27は、厚さ方向でループパターン23,24の間に位置して、絶縁層9を貫通して、ビアホール25と同様に形成されている。このビアホール27は、ループパターン23の接続部23Bおよびループパターン24の接続部24Aと対応した位置に配置され、ループパターン23およびループパターン24を電気的に直列接続している。
【0040】
この結果、ループパターン21〜24は、ビアホール25〜27を用いて互いに直列接続され、略4回巻(4ターン)のコイル28を構成している。このコイル28は、ループパターン21〜24の内部を通過するY軸方向(厚さ方向)の磁界を検出し、磁束変化に応じた電圧等の検出信号を出力するものである。
【0041】
一方、ループパターン20,21は、互いに絶縁された状態で対向し、コンデンサ29を構成している。これにより、コイル28およびコンデンサ29は、ループパターン21を共用することによって、電気的に互いに直列接続されている。このとき、コンデンサ29の一端側は接続部20Aを通じて伝送線路部13のストリップ導体14に電気的に接続され、コンデンサ29の他端側はコイル28の一端側に電気的に接続されている。また、コイル28の他端側は、接続部24B等を通じてグランド電極11,12に電気的に接続されている。
【0042】
本実施の形態による磁界プローブ1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0043】
まず、磁界プローブ1の先端部分を、測定対象(例えば被測定基板)の表面に近接した状態で配置する。そして、磁界プローブ1を測定対象の表面上で移動させる。ここで、磁界プローブ1の近傍に位置して測定対象の表面にY軸方向の磁界が発生すると、この磁界は検出部19のループパターン20〜24の内部を通過する。これにより、例えばコイル28に検出信号としての電圧が生じるため、この電圧を検出することによって、測定対象の表面に生じる磁界を検出することができる。
【0044】
然るに、互いに重なり合うループパターン20〜24のうち厚さ方向の一方側に位置する2個のループパターン20,21は、互いに絶縁されてコンデンサ29を構成すると共に、4個のループパターン21〜24は、ビアホール25〜27を用いて直列に接続されてコイル28を構成している。このため、コイル28およびコンデンサ29が直列共振する共振周波数の周辺帯域では、磁界の検出感度が向上する。
【0045】
そこで、本実施の形態による磁界プローブ1とコンデンサを省いた比較例による磁界プローブとについて、それぞれの利得の周波数特性を測定した。その結果を図10に示す。なお、比較例による磁界プローブは、1回巻のコイルを備えるものとした。
【0046】
図10中に破線で示すように、比較例の場合は、周波数が高くなるに従って、コイルのインピーダンスが増加する。このため、磁界プローブから出力される検出信号の利得は、検出する磁界の周波数が高くなるに従って増加する。
【0047】
これに対し、図10中に実線で示すように、本実施の形態の場合は、比較例の場合とほぼ同様に、周波数が高くなるに従って、検出信号の利得が増加する。但し、例えば1〜5GHz付近では、本実施の形態の方が比較例に比べて検出信号の利得が向上している。この理由は、この周波数帯域では、コイル28およびコンデンサ29が直列共振するためである。具体的には、本実施の形態では、コイル28およびコンデンサ29を直列接続したから、共振周波数となる1.4GHz付近でコイル28およびコンデンサ29に直列共振が生じる。このため、この共振周波数の周辺帯域では、検出信号の利得を向上することができる。
【0048】
また、特許文献1に記載された磁界プローブでは、コンデンサが全ての周波数帯域で高域通過フィルタとして機能するから、例えば共振周波数よりも低周波側のように共振周波数以外の周波数帯域では、コンデンサを設けない場合に比べて、検出信号の利得が低下する傾向があった。
【0049】
これに対し、本実施の形態では、共振周波数以外の周波数帯域でも、コンデンサを設けない比較例と同程度の利得を得ることができる。この理由は、本実施の形態による磁界プローブ1では、コンデンサ29を構成するループコイル20,21がコイル28を構成するループコイル21〜24に重なり合っているから、共振周波数以外の周波数の磁界変化に対してループコイル20,21もコイル28の一部として機能するためである。即ち、例えば共振周波数よりも低周波側の磁束変化が生じたときには、この磁束変化に応じてループコイル20,21は電圧等の検出信号を出力する。この結果、本実施の形態による磁界プローブ1では、例えば共振周波数よりも低周波側では、コンデンサ29はフィルタとして機能せず、コイル28の一部として機能するから、共振周波数以外の周波数帯域の磁界を検出する場合でも、検出感度の低下を抑えることができる。
【0050】
かくして、本実施の形態では、ループパターン20〜24のうち厚さ方向で隣合う2個のループパターン20,21の間を除いた残りのループパターン21〜24の間にはビアホール25〜27を設けたから、ループパターン21〜24を直列接続して4回巻のコイル28を構成することができる。このため、1回巻のコイルに比べてインダクタンスを大きくして磁界の検出感度を高めることができる。
【0051】
また、ビアホール25〜27で非接続の2個のループパターン20,21は、互いに絶縁された状態で対向してコイル28に直列に接続されるコンデンサ29を構成したから、コイル28とコンデンサ29とが直列共振する共振周波数の周辺帯域では高感度に磁界を検出することができる。さらに、共振周波数以外の周波数帯域では、コンデンサ29を構成するループパターン20,21はコイル28の一部として機能する。このため、共振周波数以外の周波数帯域で磁界を検出する場合でも、検出感度の低下を抑えることができる。
【0052】
また、ループパターン20〜24はいずれも略同じ巻線形状に形成したから、ループパターン20〜24が互いに異なる巻線形状となった場合に比べて、コイル28のインダクタンスを大きくすることができる。また、コイル28を構成するループパターン21〜24に対してコンデンサ29を構成するループパターン20,21を厚さ方向で重ね合わせることができるから、共振周波数以外の周波数帯域で磁界を検出する場合でも、コンデンサ29をなすループパターン20,21をコイル28の一部として機能させることができ、検出感度の低下を抑えることができる。
【0053】
さらに、コンデンサ29を構成する2個のループパターン20,21は、全てのループパターン20〜24の厚さ方向の両端側のうちいずれか一方側に配置した。このため、厚さ方向の他方側に配置された残りのループパターン21〜24をビアホール25〜27を用いて接続することができ、コンデンサ29とコイル28を厚さ方向に隣合う状態で配置することができる。
【0054】
なお、前記実施の形態では、ループパターン20およびループパターン21が互いに重なり合う面積を増加または減少させることによって、コイル28とコンデンサ29との共振周波数を調整することができる。また、コイル28のループパターン21〜24を追加または減少させることによっても、コイル28とコンデンサ29との共振周波数を調整することができる。
【0055】
また、前記実施の形態では、全てのループパターン20〜24のうち厚さ方向の一方端に位置するループパターン20,21間を絶縁してコンデンサ29を構成した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す第1の変形例による磁界プローブ31のように、厚さ方向の途中位置に配置されたループパターン21,22間を絶縁してコンデンサ32を構成してもよい。
【0056】
この場合、ループパターン20の他端側に接続部33を設けると共に、ループパターン21の一端側に接続部34を設け、これら接続部33,34と対応した位置にビアホール35を設ける。これにより、ループパターン20,21はビアホール35を用いて直列接続され、一方のコイル36を構成する。また、ループパターン22〜24はビアホール26,27を用いて直列接続され、他方のコイル37を構成する。これにより、コンデンサ32は、コイル36,37の間に直列接続されるものである。
【0057】
また、前記実施の形態では、1個のコンデンサ29をコイル28に直列接続した場合を例に挙げて説明したが、2個以上のコンデンサをコイルに直列接続する構成としてもよい。この場合、コンデンサの構成位置は、厚さ方向に配置されたループパターンのうちいずれのループパターン間に配置してもよい。また、複数個のコンデンサは、例えば厚さ方向に対して隣合わせて配置してもよく、厚さ方向に離間して配置してもよく、厚さ方向の両端側に配置してもよい。
【0058】
また、前記実施の形態では、全てのループパターン20〜24が同じ幅寸法W0を有すると共に、同じ巻線形状(長さ寸法L1,L2)に形成するものとしたが、一部のループパターンが異なる幅寸法を有してもよく、異なる巻線形状に形成してもよい。
【0059】
また、前記実施の形態では、ループパターン20〜24は略四角形に形成したが、例えば三角形、五角形等の他の多角形状としてもよく、円形、半円形、楕円形等に形成してもよい。また、前記実施の形態では、ループパターン21〜24を直列接続して略4回巻のコイル28を形成したが、2回巻や3回巻のコイルでもよく、5回巻以上のコイルを形成してもよい。
【0060】
さらに、前記実施の形態では、3個以上のループパターン20〜24を用いて磁界プローブ1を形成する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図12に示す第2の変形例のように、2個のループパターン42,43を用いて磁界プローブ41を形成する構成としてもよい。
【0061】
この場合、ループパターン42は、例えば第1の実施の形態によるループパターン20とほぼ同様に形成され、その一端側に設けられた接続部42A側がビアホール44を通じてストリップ導体14に接続されている。一方、ループパターン43は、例えば第1の実施の形態によるループパターン21とほぼ同様に形成されるものの、その他端側に設けられた接続部43Aはビアホールを通じてグランド電極(いずれも図示せず)に接続されている。そして、各ループパターン42,43は、それぞれ略1回巻のコイル45を構成すると共に、非接続で互いに絶縁された状態で対向したコンデンサ46を構成するものである。
【符号の説明】
【0062】
1,31,41 磁界プローブ
4 多層基板(基板)
13 伝送線路部
19 検出部
20〜24,42,43 ループパターン
25〜27,35 ビアホール
28,36,37,45 コイル
29,32,46 コンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界の検出に用いて好適な磁界プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による磁界プローブとして、基板にループパターンからなる磁界の検出部を設けると共に、例えばマイクロストリップ線路、ストリップ線路等からなる伝送線路部を該検出部に接続し、検出部と伝送線路部との間にコンデンサを形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術として、基板に1回巻のコイルを形成すると共に、該コイルに並列にコンデンサを接続した構成が開示されている(例えば、特許文献2,3参照)。さらに、基板と平行な磁界を検出するために、基板にスパイラルコイルを形成した構成も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−187539号公報
【特許文献2】特開2004−69337号公報
【特許文献3】特開2007−155597号公報
【特許文献4】特開2004−198329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1による磁界プローブでは、ループパターンからなるコイルにコンデンサを直列接続したから、これらの共振周波数の周辺帯域では高感度に磁界を検出することができる。このとき、コイルに直列接続されたコンデンサは、全ての周波数の信号に対して高域通過フィルタとして機能する。このため、例えば共振周波数よりも低周波側のように、共振周波数以外の周波数帯域では、コンデンサを設けない場合と比べて感度が低下するという問題がある。
【0006】
また、特許文献2,3にも、コイルとコンデンサとを備えた磁界プローブが開示されている。しかし、これらの磁界プローブでは、1回巻のコイルにコンデンサを並列に設けたものであり、コイルとコンデンサとの直列共振によって感度を向上させるものではない。
【0007】
さらに、特許文献4には、基板にスパイラルコイルを形成すると共に、該基板に検査対象となる配線パターンを設けた構成が開示されている。しかし、特許文献4のスパイラルコイルは、基板と平行な磁界を検出するものであり、基板の厚さ方向の磁界を検出するものではない。これに加えて、スパイラルコイルと一緒に基板に設けられた配線パターンは、磁界の検査対象となるものであり、コイルとコンデンサとが直列接続されたものではない。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、所望の周波数帯域の感度を向上させ、かつ他の周波数帯域での感度の低下を抑えることができる磁界プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による磁界プローブは、複数の絶縁層を厚さ方向に積層した多層基板と、該多層基板のうち絶縁層を挟んで厚さ方向の異なる位置に設けられ巻線形状となった2個以上のループパターンとを備え、前記2個以上のループパターンのうち厚さ方向で隣合う2個のループパターンは、非接続にして互いに絶縁された状態で対向したコンデンサを構成している。
【0010】
請求項2の発明では、前記コンデンサを構成する2個のループパターンの間を除いた残余のループパターンの間にはビアホールを設け、隣合うループパターンを直列に接続してコイルを構成している。
【0011】
請求項3の発明では、前記2個以上のループパターンは、いずれも略同じ巻線形状に形成している。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、2個以上のループパターンのうち厚さ方向で隣合う2個のループパターンは、非接続にして互いに絶縁された状態で対向したコンデンサを構成した。このとき、各ループパターンはコイルとして機能すると共に、コンデンサに直列接続された状態となるから、コイルとコンデンサとが直列共振する共振周波数の周辺帯域では高感度に磁界を検出することができる。さらに、共振周波数以外の周波数帯域では、コンデンサを構成するループパターンはコイルの一部として機能し、磁界に応じた電圧等の検出信号を出力することができる。このため、例えば共振周波数よりも低周波側では、コンデンサはフィルタとして機能せず、コイルの一部として機能するから、共振周波数以外の周波数帯域で磁界を検出する場合でも、検出感度の低下を抑えることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、コンデンサを構成する2個のループパターンの間を除いた残余のループパターンの間にはビアホールを設けた。このため、複数個のループパターンを直列接続して2回巻以上のコイルを構成することができ、1回巻のコイルに比べてインダクタンスを大きくして磁界の検出感度を高めることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、2個以上のループパターンはいずれも略同じ巻線形状に形成したから、ループパターンが互いに異なる巻線形状となった場合に比べて、コイルのインダクタンスを大きくすることができる。また、コイルを構成するループパターンに対してコンデンサを構成するループパターンを重ね合わせることができるから、共振周波数以外の周波数帯域で磁界を検出する場合でも、コンデンサをなすループパターンをコイルの一部として機能させることができ、検出感度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による磁界プローブを示す斜視図である。
【図2】図1中の検出部を多層基板を透視した状態で拡大して示す斜視図である。
【図3】図1中の5個のループパターンを分解した状態で示す説明図である。
【図4】図1中の磁界プローブに設けられたコンデンサとコイルとを示す等化回路図である。
【図5】図1中の多層基板の表面から2番目の絶縁層と、その両面に配置された2個のループパターンとを示す正面図である。
【図6】図1中の多層基板の表面から3番目の絶縁層と、その両面に配置された2個のループパターンとを示す正面図である。
【図7】図1中の多層基板の表面から4番目の絶縁層と、その両面に配置された2個のループパターンとを示す正面図である。
【図8】図1中の多層基板の表面から5番目の絶縁層と、その両面に配置された2個のループパターンとを示す正面図である。
【図9】図1中の多層基板の表面から6番目の絶縁層と、その表面に配置された1個のループパターンとを示す正面図である。
【図10】実施の形態および比較例において、磁界プローブの利得の周波数特性を示す特性線図である。
【図11】第1の変形例による磁界プローブの5個のループパターンを分解した状態で示す図3と同様な説明図である。
【図12】第2の変形例による磁界プローブの2個のループパターンを分解した状態で示す図3と同様な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態による磁界プローブを添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1ないし図9は実施の形態による磁界プローブ1を示している。この磁界プローブ1は、例えば非磁性の絶縁材料からなる筒状のケース2に収容されると共に、信号処理回路3に電気的に接続されている。この信号処理回路3は、磁界プローブ1の検出部19に発生する電圧、電流等の検出信号に基づいて、検出部19の近傍に発生する磁界の検出を行う。また、磁界プローブ1は、後述する多層基板4および該多層基板4に設けられた伝送線路部13、検出部19によって構成されている。
【0018】
多層基板4は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のうち例えばX軸方向およびZ軸方向に対して平行に広がる平板状に形成されている。この多層基板4は、例えば6層の絶縁層5〜10を厚さ方向となるY軸方向に積層することによって構成されている。このとき、多層基板4は、幅方向となるX軸方向に対して例えば数mm程度の幅寸法を有すると共に、長さ方向となるZ軸方向に沿って延び、その長さ寸法は例えば数cm程度になっている。
【0019】
また、各絶縁層5〜10は、例えば絶縁性の樹脂材料を用いて層状に形成されている。そして、多層基板4の先端部4Aは、Z軸方向の一端側(図1中の下端側)に位置して後述の検出部19が設けられている。一方、多層基板4の基端側は、Z軸方向の他端側(図1中の上端側)に向けて延びている。
【0020】
多層基板4のうちY軸方向の両端側に位置する表面および裏面には、例えば導電性の金属薄膜からなるグランド電極11,12がそれぞれ設けられている。このグランド電極11,12は、例えば信号処理回路3等のグランドに接続されてグランド電位に保持されると共に、多層基板4の先端部4Aを除いて多層基板4の略全面を覆っている。
【0021】
伝送線路部13は、図1および図2に示すように、多層基板4に設けられ、後述する検出部19と信号処理回路3との間を接続している。この伝送線路部13は、例えば導電性の金属薄膜等からなる細長い導体パターンとしてのストリップ導体14(信号電極)を有している。そして、伝送線路部13は、ストリップ導体14と多層基板4の両面に設けられたグランド電極11,12とからなるストリップ線路によって構成されている。なお、伝送線路部13は、ストリップ線路に限らず、例えば一方のグランド電極を省いたマイクロストリップ線路によって構成してもよい。
【0022】
また、ストリップ導体14は、絶縁層7,8の間に配置されると共に、多層基板4のうちX軸方向の中央部分に位置してZ軸に沿って直線状に延びている。このストリップ導体14の先端側は、X軸方向の一側に向けて斜めに傾斜して延びると共に、絶縁層6,7を貫通するビアホール15を通じて後述のループパターン20に電気的に接続されている。
【0023】
一方、グランド電極11,12は、ビアホール16,17および接続パターン18を通じて後述のループパターン24に電気的に接続されている。この接続パターン18は、絶縁層7,8の間に位置してストリップ導体14の近傍に配置されている。また、接続パターン18は、ストリップ導体14と同様な導体パターンによって形成され、Z軸方向に向けて延びている。さらに、接続パターン18の基端側は、多層基板4を厚さ方向に貫通するスルーホールビアとしてのビアホール16を通じてグランド電極11,12に接続され、接続パターン18の先端側は、絶縁層8,9を貫通するビアホール17を通じてループパターン24の接続部24Bに接続されている。
【0024】
検出部19は、図1ないし図9に示すように、多層基板4の先端部4Aに配置され、後述する5個のループパターン20〜24によって構成されるコイル28とコンデンサ29とを備えている。
【0025】
ループパターン20は、絶縁層5と絶縁層6との間に配置され、図5に示すように、例えば50〜150μm程度の幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて略四角形の巻線形状に形成されている。このループパターン20の一端側には、Z軸方向の他端側に向けて延びた接続部20Aが設けられ、該接続部20Aは、ビアホール15を通じてストリップ導体14に電気的に接続されている。また、ループパターン20は、例えば1〜3mm程度の長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、例えば0.4〜1.2mm程度の長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン20は、XZ平面に平行な略長方形状をなしている。
【0026】
ループパターン21は、絶縁層6と絶縁層7との間に配置され、図5および図6に示すように、例えばループパターン20と同じ幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて形成されている。このループパターン21は、一部を切欠いた四角形の枠状をなすと共に、隣合うループパターン20と略同じ四角形の巻線形状に形成されている。また、ループパターン21は、その両端がX軸方向に離間して配置され、一端側から他端側に向けてループパターン20に沿って延びている。ループパターン21の他端側には接続部21Aが設けられ、該接続部21Aは、後述のビアホール25を通じて隣合うループパターン22に電気的に接続されている。そして、ループパターン21は、ループパターン20と同様に、長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン21は、XZ平面に平行な略長方形状をなすと共に、絶縁層6を挟んでループパターン20と厚さ方向で対向している。
【0027】
ループパターン22は、絶縁層7と絶縁層8との間に配置され、図6および図7に示すように、例えばループパターン21と同じ幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて形成されている。このループパターン22は、一部を切欠いた四角形の枠状をなすと共に、隣合うループパターン21と略同じ四角形の巻線形状に形成されている。また、ループパターン22は、その両端がX軸方向に離間して配置され、一端側から他端側に向けてループパターン21に沿って延びている。
【0028】
ループパターン22の一端側には、ループパターン21の接続部21Aと対向した位置に接続部22Aが設けられている。この接続部22Aは、後述のビアホール25を通じて隣合うループパターン21の接続部21Aに電気的に接続されている。一方、ループパターン22の他端側には、接続部22AよりもX軸方向の他側(図1中の右側)に位置して接続部22Bが設けられている。この接続部22Bは、後述のビアホール26を通じて隣合うループパターン23に電気的に接続されている。
【0029】
そして、ループパターン22は、ループパターン21と同様に、長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン22は、XZ平面に平行な略長方形状をなすと共に、絶縁層7を挟んでループパターン21と厚さ方向で対向している。
【0030】
ループパターン23は、絶縁層8と絶縁層9との間に配置され、図7および図8に示すように、例えばループパターン22と同じ幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて形成されている。このループパターン23は、一部を切欠いた四角形の枠状をなすと共に、隣合うループパターン22と略同じ四角形の巻線形状に形成されている。また、ループパターン23は、その両端がX軸方向に離間して配置され、一端側から他端側に向けてループパターン22に沿って延びている。
【0031】
ループパターン23の一端側には、ループパターン22の接続部22Bと対向した位置に接続部23Aが設けられている。この接続部23Aは、後述のビアホール26を通じて隣合うループパターン22の接続部22Bに電気的に接続されている。一方、ループパターン23の他端側には、接続部23AよりもX軸方向の他側に位置して接続部23Bが設けられている。この接続部23Bは、後述のビアホール27を通じて隣合うループパターン24に電気的に接続されている。
【0032】
そして、ループパターン23は、ループパターン22と同様に、長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン23は、XZ平面に平行な略長方形状をなすと共に、絶縁層8を挟んでループパターン22と厚さ方向で対向している。
【0033】
ループパターン24は、絶縁層9と絶縁層10との間に配置され、図8および図9に示すように、例えばループパターン23と同じ幅寸法W0をもった導電性の金属薄膜からなる細長い電極パターンを用いて形成されている。このループパターン24は、一部を切欠いた四角形の枠状をなすと共に、隣合うループパターン23と略同じ四角形の巻線形状に形成されている。また、ループパターン24は、その両端がX軸方向に離間して配置され、一端側から他端側に向けてループパターン23に沿って延びている。
【0034】
ループパターン24の一端側には、ループパターン23の接続部23Bと対向した位置に接続部24Aが設けられている。この接続部24Aは、後述のビアホール27を通じて隣合うループパターン23の接続部23Bに電気的に接続されている。一方、ループパターン24の他端側には、Z軸方向の他端側に向けて延びた接続部24Bが設けられ、該接続部24Bは、ビアホール17を通じて接続パターン18に電気的に接続されている。
【0035】
そして、ループパターン24は、ループパターン23と同様に、長さ寸法L1にわたってX軸方向に延びると共に、長さ寸法L2にわたってZ軸方向に延びている。これにより、ループパターン24は、XZ平面に平行な略長方形状をなすと共に、絶縁層9を挟んでループパターン23と厚さ方向で対向している。
【0036】
以上により、ループパターン20〜24は、略同じ巻線形状に形成されると共に、多層基板4のX軸方向とZ軸方向に対して、略同じ位置に配置されている。これにより、ループパターン20〜24は、接続部20A,24Bを除いた略全長にわたって厚さ方向に対して互いに重なり合っている。
【0037】
ビアホール25は、厚さ方向でループパターン21,22の間に位置して、絶縁層7を貫通すると共に、その内壁が例えば金属材料等の導体材料によって被覆されることによって形成されている。このビアホール25は、ループパターン21の接続部21Aおよびループパターン22の接続部22Aと対応した位置に配置され、ループパターン21およびループパターン22を電気的に直列接続している。
【0038】
ビアホール26は、厚さ方向でループパターン22,23の間に位置して、絶縁層8を貫通して、ビアホール25と同様に形成されている。このビアホール26は、ループパターン22の接続部22Bおよびループパターン23の接続部23Aと対応した位置に配置され、ループパターン22およびループパターン23を電気的に直列接続している。
【0039】
ビアホール27は、厚さ方向でループパターン23,24の間に位置して、絶縁層9を貫通して、ビアホール25と同様に形成されている。このビアホール27は、ループパターン23の接続部23Bおよびループパターン24の接続部24Aと対応した位置に配置され、ループパターン23およびループパターン24を電気的に直列接続している。
【0040】
この結果、ループパターン21〜24は、ビアホール25〜27を用いて互いに直列接続され、略4回巻(4ターン)のコイル28を構成している。このコイル28は、ループパターン21〜24の内部を通過するY軸方向(厚さ方向)の磁界を検出し、磁束変化に応じた電圧等の検出信号を出力するものである。
【0041】
一方、ループパターン20,21は、互いに絶縁された状態で対向し、コンデンサ29を構成している。これにより、コイル28およびコンデンサ29は、ループパターン21を共用することによって、電気的に互いに直列接続されている。このとき、コンデンサ29の一端側は接続部20Aを通じて伝送線路部13のストリップ導体14に電気的に接続され、コンデンサ29の他端側はコイル28の一端側に電気的に接続されている。また、コイル28の他端側は、接続部24B等を通じてグランド電極11,12に電気的に接続されている。
【0042】
本実施の形態による磁界プローブ1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0043】
まず、磁界プローブ1の先端部分を、測定対象(例えば被測定基板)の表面に近接した状態で配置する。そして、磁界プローブ1を測定対象の表面上で移動させる。ここで、磁界プローブ1の近傍に位置して測定対象の表面にY軸方向の磁界が発生すると、この磁界は検出部19のループパターン20〜24の内部を通過する。これにより、例えばコイル28に検出信号としての電圧が生じるため、この電圧を検出することによって、測定対象の表面に生じる磁界を検出することができる。
【0044】
然るに、互いに重なり合うループパターン20〜24のうち厚さ方向の一方側に位置する2個のループパターン20,21は、互いに絶縁されてコンデンサ29を構成すると共に、4個のループパターン21〜24は、ビアホール25〜27を用いて直列に接続されてコイル28を構成している。このため、コイル28およびコンデンサ29が直列共振する共振周波数の周辺帯域では、磁界の検出感度が向上する。
【0045】
そこで、本実施の形態による磁界プローブ1とコンデンサを省いた比較例による磁界プローブとについて、それぞれの利得の周波数特性を測定した。その結果を図10に示す。なお、比較例による磁界プローブは、1回巻のコイルを備えるものとした。
【0046】
図10中に破線で示すように、比較例の場合は、周波数が高くなるに従って、コイルのインピーダンスが増加する。このため、磁界プローブから出力される検出信号の利得は、検出する磁界の周波数が高くなるに従って増加する。
【0047】
これに対し、図10中に実線で示すように、本実施の形態の場合は、比較例の場合とほぼ同様に、周波数が高くなるに従って、検出信号の利得が増加する。但し、例えば1〜5GHz付近では、本実施の形態の方が比較例に比べて検出信号の利得が向上している。この理由は、この周波数帯域では、コイル28およびコンデンサ29が直列共振するためである。具体的には、本実施の形態では、コイル28およびコンデンサ29を直列接続したから、共振周波数となる1.4GHz付近でコイル28およびコンデンサ29に直列共振が生じる。このため、この共振周波数の周辺帯域では、検出信号の利得を向上することができる。
【0048】
また、特許文献1に記載された磁界プローブでは、コンデンサが全ての周波数帯域で高域通過フィルタとして機能するから、例えば共振周波数よりも低周波側のように共振周波数以外の周波数帯域では、コンデンサを設けない場合に比べて、検出信号の利得が低下する傾向があった。
【0049】
これに対し、本実施の形態では、共振周波数以外の周波数帯域でも、コンデンサを設けない比較例と同程度の利得を得ることができる。この理由は、本実施の形態による磁界プローブ1では、コンデンサ29を構成するループコイル20,21がコイル28を構成するループコイル21〜24に重なり合っているから、共振周波数以外の周波数の磁界変化に対してループコイル20,21もコイル28の一部として機能するためである。即ち、例えば共振周波数よりも低周波側の磁束変化が生じたときには、この磁束変化に応じてループコイル20,21は電圧等の検出信号を出力する。この結果、本実施の形態による磁界プローブ1では、例えば共振周波数よりも低周波側では、コンデンサ29はフィルタとして機能せず、コイル28の一部として機能するから、共振周波数以外の周波数帯域の磁界を検出する場合でも、検出感度の低下を抑えることができる。
【0050】
かくして、本実施の形態では、ループパターン20〜24のうち厚さ方向で隣合う2個のループパターン20,21の間を除いた残りのループパターン21〜24の間にはビアホール25〜27を設けたから、ループパターン21〜24を直列接続して4回巻のコイル28を構成することができる。このため、1回巻のコイルに比べてインダクタンスを大きくして磁界の検出感度を高めることができる。
【0051】
また、ビアホール25〜27で非接続の2個のループパターン20,21は、互いに絶縁された状態で対向してコイル28に直列に接続されるコンデンサ29を構成したから、コイル28とコンデンサ29とが直列共振する共振周波数の周辺帯域では高感度に磁界を検出することができる。さらに、共振周波数以外の周波数帯域では、コンデンサ29を構成するループパターン20,21はコイル28の一部として機能する。このため、共振周波数以外の周波数帯域で磁界を検出する場合でも、検出感度の低下を抑えることができる。
【0052】
また、ループパターン20〜24はいずれも略同じ巻線形状に形成したから、ループパターン20〜24が互いに異なる巻線形状となった場合に比べて、コイル28のインダクタンスを大きくすることができる。また、コイル28を構成するループパターン21〜24に対してコンデンサ29を構成するループパターン20,21を厚さ方向で重ね合わせることができるから、共振周波数以外の周波数帯域で磁界を検出する場合でも、コンデンサ29をなすループパターン20,21をコイル28の一部として機能させることができ、検出感度の低下を抑えることができる。
【0053】
さらに、コンデンサ29を構成する2個のループパターン20,21は、全てのループパターン20〜24の厚さ方向の両端側のうちいずれか一方側に配置した。このため、厚さ方向の他方側に配置された残りのループパターン21〜24をビアホール25〜27を用いて接続することができ、コンデンサ29とコイル28を厚さ方向に隣合う状態で配置することができる。
【0054】
なお、前記実施の形態では、ループパターン20およびループパターン21が互いに重なり合う面積を増加または減少させることによって、コイル28とコンデンサ29との共振周波数を調整することができる。また、コイル28のループパターン21〜24を追加または減少させることによっても、コイル28とコンデンサ29との共振周波数を調整することができる。
【0055】
また、前記実施の形態では、全てのループパターン20〜24のうち厚さ方向の一方端に位置するループパターン20,21間を絶縁してコンデンサ29を構成した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す第1の変形例による磁界プローブ31のように、厚さ方向の途中位置に配置されたループパターン21,22間を絶縁してコンデンサ32を構成してもよい。
【0056】
この場合、ループパターン20の他端側に接続部33を設けると共に、ループパターン21の一端側に接続部34を設け、これら接続部33,34と対応した位置にビアホール35を設ける。これにより、ループパターン20,21はビアホール35を用いて直列接続され、一方のコイル36を構成する。また、ループパターン22〜24はビアホール26,27を用いて直列接続され、他方のコイル37を構成する。これにより、コンデンサ32は、コイル36,37の間に直列接続されるものである。
【0057】
また、前記実施の形態では、1個のコンデンサ29をコイル28に直列接続した場合を例に挙げて説明したが、2個以上のコンデンサをコイルに直列接続する構成としてもよい。この場合、コンデンサの構成位置は、厚さ方向に配置されたループパターンのうちいずれのループパターン間に配置してもよい。また、複数個のコンデンサは、例えば厚さ方向に対して隣合わせて配置してもよく、厚さ方向に離間して配置してもよく、厚さ方向の両端側に配置してもよい。
【0058】
また、前記実施の形態では、全てのループパターン20〜24が同じ幅寸法W0を有すると共に、同じ巻線形状(長さ寸法L1,L2)に形成するものとしたが、一部のループパターンが異なる幅寸法を有してもよく、異なる巻線形状に形成してもよい。
【0059】
また、前記実施の形態では、ループパターン20〜24は略四角形に形成したが、例えば三角形、五角形等の他の多角形状としてもよく、円形、半円形、楕円形等に形成してもよい。また、前記実施の形態では、ループパターン21〜24を直列接続して略4回巻のコイル28を形成したが、2回巻や3回巻のコイルでもよく、5回巻以上のコイルを形成してもよい。
【0060】
さらに、前記実施の形態では、3個以上のループパターン20〜24を用いて磁界プローブ1を形成する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図12に示す第2の変形例のように、2個のループパターン42,43を用いて磁界プローブ41を形成する構成としてもよい。
【0061】
この場合、ループパターン42は、例えば第1の実施の形態によるループパターン20とほぼ同様に形成され、その一端側に設けられた接続部42A側がビアホール44を通じてストリップ導体14に接続されている。一方、ループパターン43は、例えば第1の実施の形態によるループパターン21とほぼ同様に形成されるものの、その他端側に設けられた接続部43Aはビアホールを通じてグランド電極(いずれも図示せず)に接続されている。そして、各ループパターン42,43は、それぞれ略1回巻のコイル45を構成すると共に、非接続で互いに絶縁された状態で対向したコンデンサ46を構成するものである。
【符号の説明】
【0062】
1,31,41 磁界プローブ
4 多層基板(基板)
13 伝送線路部
19 検出部
20〜24,42,43 ループパターン
25〜27,35 ビアホール
28,36,37,45 コイル
29,32,46 コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層を厚さ方向に積層した多層基板と、該多層基板のうち絶縁層を挟んで厚さ方向の異なる位置に設けられ巻線形状となった2個以上のループパターンとを備え、
前記2個以上のループパターンのうち厚さ方向で隣合う2個のループパターンは、非接続にして互いに絶縁された状態で対向したコンデンサを構成してなる磁界プローブ。
【請求項2】
前記コンデンサを構成する2個のループパターンの間を除いた残余のループパターンの間にはビアホールを設け、隣合うループパターンを直列に接続してコイルを構成してなる請求項1に記載の磁界プローブ。
【請求項3】
前記2個以上のループパターンは、いずれも略同じ巻線形状に形成してなる請求項1または2に記載の磁界プローブ。
【請求項1】
複数の絶縁層を厚さ方向に積層した多層基板と、該多層基板のうち絶縁層を挟んで厚さ方向の異なる位置に設けられ巻線形状となった2個以上のループパターンとを備え、
前記2個以上のループパターンのうち厚さ方向で隣合う2個のループパターンは、非接続にして互いに絶縁された状態で対向したコンデンサを構成してなる磁界プローブ。
【請求項2】
前記コンデンサを構成する2個のループパターンの間を除いた残余のループパターンの間にはビアホールを設け、隣合うループパターンを直列に接続してコイルを構成してなる請求項1に記載の磁界プローブ。
【請求項3】
前記2個以上のループパターンは、いずれも略同じ巻線形状に形成してなる請求項1または2に記載の磁界プローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−13608(P2012−13608A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151900(P2010−151900)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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