磁界遮蔽機構、アクチュエータ
【課題】磁石部から固定部側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる磁界遮蔽機構及びこれを用いたアクチュエータを提供する。
【解決手段】磁界遮蔽機構5は、第一方向に着磁された第一磁石33と、第一磁石33の一方の磁極S側に配置されるヨーク31と、ヨーク31を挟んで第一磁石33の一方の磁極S側に配置されると共に第一方向と交差する方向に着磁された環形の第二磁石36と、を備える。
【解決手段】磁界遮蔽機構5は、第一方向に着磁された第一磁石33と、第一磁石33の一方の磁極S側に配置されるヨーク31と、ヨーク31を挟んで第一磁石33の一方の磁極S側に配置されると共に第一方向と交差する方向に着磁された環形の第二磁石36と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石に近接する磁性体部材の磁化を防止する磁界遮蔽機構及びこれを用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、回転型モータの固定子側と回転子(可動子)側を直線状に引き伸ばしたように構成され、電気エネルギを直線運動するための推力に変換する。直線的な推力が得られるリニアモータは、移動体を直線運動させる一軸のアクチュエータとして用いられる。
【0003】
リニアモータの一例として、複数の板形の磁石を直線状に並べた磁石部(固定部)とこの磁石部に対向して配置される複数のコイルを有するコイル部(可動部)とを有するものが知られている(特許文献1参照)。
コイルは、例えば、U・V・W相の三相を順次繰り返し配列した状態で可動部本体に支持される。これらのコイルに120度ずつ位相が異なる三相電流を流すと、コイルの軸線方向に移動する移動磁界が発生する。
そして、コイルを有する可動部は、移動磁界により磁石部との間に発生する推力を得て、移動磁界の速さに同期し磁石部に対して直線運動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−245474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したリニアモータでは、磁石部は、複数の板形の磁石をバックヨークに直線状に配列して構成される。そして、このバックヨークをリニアモータのベース等の固定部に固定する。
しかし、磁石部が配置される固定部が鉄鋼等の磁性体の場合には、固定部が磁化されてしまう。特に、磁石部に接する領域は強く磁化される。このため、例えば、固定部に取り付けられるガイドレールに鉄粉等が付着して、可動部の円滑な摺動が損なわれるという問題がある。
そこで、バックヨークを必要な機械的強度以上に厚く形成するという対処が考えられるが、磁石部が大型化、重量化して装置の小型化・薄型化などが阻害される。
【0006】
また、固定部をアルミニウム等の非磁性体で形成した場合であっても、バックヨークの近傍に、可動部の位置検出に用いる磁気スケール等を取り付けることができないという問題がある。このため、磁気スケール等を磁気の影響のない領域を選択して配置せざるをえなくなり、装置の小型化などが阻害される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、磁石部から固定部側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる磁界遮蔽機構及びこれを用いたアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係る磁界遮蔽機構は、第一方向に着磁された第一磁石と、前記第一磁石の一方の磁極側に配置されるヨークと、前記ヨークを挟んで前記第一磁石の一方の磁極側に配置されると共に前記第一方向と交差する方向に着磁された環形の第二磁石と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るアクチュエータは、複数のマグネットを配列した磁石部と、複数のコイルを前記磁石部に対向して配列したコイル部と、を備え、前記複数のマグネットの磁界と前記複数のコイルに流れる電流とにより前記磁石部と前記コイル部とを前記複数のマグネットの配列方向に沿って相対移動させるアクチュエータにおいて、前記磁石部は、請求項1から9のうちいずれか一項に記載の磁界遮蔽機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る磁界遮蔽機構によれば、簡単な構成により、磁石部から固定部側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる。また、磁石部の薄型化・軽量化が可能となる。
【0011】
本発明に係るアクチュエータよれば、磁石部とコイル部を相対移動させる案内部材が磁化されることがないので、案内部材に鉄粉等が吸着して磁石部とコイル部の相対移動を阻害するという不具合を防止できる。したがって、アクチュエータの機能低下を回避できる。
また、磁石部の近傍に他の磁気部材を配置できるので、装置の信頼性向上、装置の少スペース化、低価格化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータ(リニアモータ)の概略構成を示す斜視図である。
【図2】ベース及びテーブルを示す拡大斜視図(一部断面図)である。
【図3】アクチュエータの概略構成を示す断面図である。
【図4】磁石部を示す図である。
【図5】コイル部を示す斜視図である。
【図6】リニアガイドを示す断面図である。
【図7】第一実施形態に係る磁界遮蔽機構を示す図である。
【図8】第一実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。
【図9】第一実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である(支持部材を取り除いた場合)。
【図10】従来例における磁束密度の解析結果を示す図である。
【図11】磁石部のコイル部側への磁束密度を示す図である。
【図12】第二実施形態に係る磁界遮蔽機構を示す図である。
【図13】第二実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。
【図14】第三実施形態に係る磁界遮蔽機構を示す図である。
【図15】第三実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。
【図16】第四実施形態に係る磁界遮蔽機構を示す図である。
【図17】第四実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。
【図18】本発明の実施形態に係るアクチュエータ(回転モータ)の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータA(リニアモータ1)の概略構成を示す斜視図である。
図2は、ベース10及びテーブル20を示す拡大斜視図(一部断面図)である。
図3は、アクチュエータAの概略構成を示す断面図である。
【0014】
アクチュエータAは、リニアモータ1と、それを制御するモータドライバ80(制御装置)と、モータドライバ80に接続されたユーザー端末90(情報処理装置)と、を備える。
リニアモータ1は、一軸方向(X方向)に細長く伸びるベース10と、ベース10に対して摺動自在に設けられたテーブル20と、からなる。
また、ベース10とテーブル20の間には、一対のリニアガイド50が設けられ、ベース10に対してテーブル20が円滑に摺動可能となっている。
【0015】
ベース10は、細長い矩形の底壁部11と、この底壁部11の幅方向(Y方向)の両端に垂直に設けられた一対の側壁部12とから形成される。ベース10は、例えば、鉄鋼等の磁性体材料又はアルミニウム等の非磁性体材から形成される。
ベース10の底壁部11の上面には、複数のマグネットが配列された磁石部30が取り付けられる。
また、ベース10の側壁部12のそれぞれの上面には、リニアガイド50の軌道レール51が一軸方向に沿って配置される。この2条の軌道レール51は平行に配置され、それぞれ2つの移動ブロック52が取り付けられる。
【0016】
テーブル20は、アルミニウム等の非磁性材料からなり、矩形の板状に形成される。
テーブル20の下面20bの四隅には、リニアガイド50の移動ブロック52が取り付けられる。そして、この移動ブロック52は、上述した2条の軌道レール51に取り付けられる。すなわち、テーブル20は、一対のリニアガイド50により、ベース10に直線運動可能に支持される。
【0017】
また、テーブル20の下面のうち、4つの移動ブロック52の間には、3つのコイル41等からなるコイル部40が吊り下げられる。この3つのコイル41は三相コイル(電機子)として機能する。
そして、ベース10に取り付けられた磁石部30と、テーブル20に取り付けられたコイル部40との間には、ギャップgが設定される。このギャップgは、テーブル20が一対のリニアガイド50によりベース10に対して直線運動しても一定に維持される。
【0018】
図4は、磁石部30を示す図である。図4(a)は上面図、図4(b)は側面図、図4(c)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
磁石部30は、コイル部40に向けて磁界を発生させるものである。具体的には、磁石部30は、細長い矩形板状に形成されたバックヨーク31と、バックヨーク31の上面31aに一定のピッチで密着配列したマグネット群32と、バックヨーク31の下面31bに、マグネット群32と同一のピッチで密着配列したマグネット群35と、バックヨーク31とほぼ同一の形状を有し、バックヨーク31との間にマグネット群35を挟持する支持部材38と、から構成される。
【0019】
バックヨーク(ヨーク)31は、鉄鋼等の磁性体からなり、マグネット群32からの磁力線を集中させる継鉄として機能する。また、バックヨーク31は、その幅(Y方向)がベース10の底壁部11よりも小さく形成される。
支持部材38は、磁石部30をベース10に固定するための部材であって、バックヨーク31と同一材料、すなわち鉄鋼等の磁性体から形成される。支持部材38の形状は、バックヨーク31とほぼ同一形状に形成される。
【0020】
マグネット群32は、上面(33a,34a)がN極のマグネット33とS極のマグネット34とを交互に一定のピッチでバックヨーク31の長手方向(X方向)に沿って直線状に複数個配列したものである。
マグネット群32の各マグネット33,34は、細長い板状の永久磁石からなる。マグネット33,34の長手方向は、バックヨーク31の幅(Y方向)よりも短く形成される。マグネット33,34の短手方向(X方向)は、後述するコイル部40の各コイル41の長さ(X方向)に対応して形成される。マグネット33,34の厚み(Z方向)は、バックヨーク31よりも厚く形成される。
そして、各マグネット33,34は、その長手方向がバックヨーク31の幅方向(Y方向)に平行となるようにして、バックヨーク31の幅方向の中央に接着剤等により固着される。
【0021】
マグネット群35は、外周面(外環面)がN極のマグネット36とS極のマグネット37とを交互に、マグネット群32と同一のピッチでバックヨーク31の長手方向(X方向)に沿って直線状に複数個配列したものである。
マグネット群35の各マグネット36,37は、各マグネット33,34とほぼ同一の外形形状を有する永久磁石からなる。つまり、マグネット36,37の長手方向及び短手方向は、マグネット33,34と同一に形成される。マグネット36,37の厚みは、マグネット33,34よりも薄く、バックヨーク31とほぼ同程度に形成される。
【0022】
そして、各マグネット36,37は、その長手方向がバックヨーク31の幅方向(Y方向)に平行となるようにして、上面36a,37aがバックヨーク31の幅方向の中央に接着剤等により固着される。
また、各マグネット36,37は、その長手方向が支持部材38の幅方向(Y方向)に平行となるようにして、下面36b,37bが支持部材38の幅方向の中央に接着剤等により固着される。
さらに、各マグネット36,37は、バックヨーク31の上面31aに配列したマグネット33,34に対して、平面視する(バックヨーク31に垂直な方向(Z方向)から見る)と一対一に対応する(重なる)位置に配置される。
【0023】
このように、磁石部30は、バックヨーク31を挟んでマグネット群32(マグネット33,34)とマグネット群35(マグネット36,37)が一対一に対応する(重なる)配置となっている。
そして、マグネット群32,35とバックヨーク31を支持する支持部材38がベース10の底壁部11に密着して固定される。
【0024】
磁石部30は、マグネット群32からの磁界をコイル部40側に向けて発生させる一方で、マグネット群35や支持部材38によりベース10側への磁界の影響を抑制する。すなわち、ベース10側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)する磁界遮蔽機構5としても機能する。
この磁界遮蔽機構5の詳細構成等については、後述する。
【0025】
図5は、コイル部40を示す斜視図である。
テーブル20の下面の中央部には、三相コイルとして機能する3つのコイル41とコア42からなる電機子としてのコイル部40が取り付けられる。コア42の材質は、ケイ素鋼等の磁性体である。コア42は、三相コイル(コイル41)に発生する磁界を強める3つの櫛歯42a,42b,42cを有する。
3つのコイル41は、コア42の3つの櫛歯42a,42b,42cの周囲にそれぞれ巻かれ、U相コイル41a、V相コイル41b、W相コイル41cとなる。3つのコイル41は、テーブル20の移動方向に沿って並べられる。
【0026】
そして、3つのコイル41には、120度ずつ位相が異なる三相交流電流が流される。これにより、コイル部40から進行磁界が発生する。これにより、磁石部30に発生する磁界との作用により、コイル部40(テーブル20)に推力が発生する。
コイル部40の3つのコイル41に流れる電流は、モータドライバ80によって制御される。
【0027】
図6は、リニアガイド50の斜視図を示す。
リニアガイド50は、ベース10の側壁部12の上面に取り付けられた軌道レール51を有する。
軌道レール51には、長手方向に所定のピッチで複数の取付け孔51bが開けられる。取付け孔51bにボルトを通し、ボルトをベース10の側壁部12のねじ孔にねじ込むことによって、軌道レール51が側壁部12に固定される。
軌道レール51には、長手方向に沿ってボール55が転がる複数条のボール転走溝51aが形成される。ボール転走溝51aの断面形状は、ボール55の半径よりも僅かに大きい単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状、または二つの円弧からなるゴシックアーチ溝形状である。
ボール転走溝51aは、軌道レール51の側面だけでなく、軌道レール51の上面にも形成されている。軌道レール51の上面にボール転走溝51aを形成することで、リニアガイド50の垂直方向の剛性を高めることができる。
【0028】
移動ブロック52は、軌道レール51を跨る鞍形状に形成される。移動ブロック52には、軌道レール51のボール転走溝51aに対向する負荷ボール転走溝52aが形成されると共に、負荷ボール転走溝52aを含むボール循環路が形成される。
移動ブロック52の一軸方向の各端面にはエンドプレート53が取り付けられる。ボール循環経路は、負荷ボール転走溝52aと、負荷ボール転走溝52aと平行に伸びるボール戻し路52bと、エンドプレート53に形成されて負荷ボール転走溝52aの端部とボール戻し路52bの端部とを接続するU字状の方向転換路52cと、から構成され、全体がサーキット状に形成される。
そして、ボール循環経路には複数のボール55が配列・収容される。
移動ブロック52には、テーブル20を取り付けるための取付けねじ52dが加工される。そして、移動ブロック52は、テーブル20の下面20bにねじ止めされる。
【0029】
軌道レール51に対して移動ブロック52を相対的に移動させると、軌道レール51のボール転走溝51aと移動ブロック52の負荷ボール転走溝52aとの間に介在されたボール55が転がり運動する。負荷ボール転走溝52aの一端まで転がったボール55は、方向転換路52cに導かれ、ボール戻し路52b及び反対側の方向転換路52cを経由した後、負荷ボール転走溝52aの他端に戻される。軌道レール51と移動ブロック52との間にボール55を介在させることによって、軌道レール51に対して移動ブロック52が移動するときの抵抗を低減できる。
【0030】
ベース10に対するテーブル20の位置・速度・加速度は、磁気エンコーダ60により検出される。磁気エンコーダ60は、例えば、1μm程度の分解能を有している。
磁気エンコーダ60は、ベース10に取り付けられた磁気スケール61と、テーブル20に取り付けられた磁気センサ62等とから構成される。
磁気スケール61は、細長い矩形の磁性体からなり、その上面を、N極とS極が交互に一定のピッチ(例えば2mm)になるように着磁したものである。磁気スケール61は、ベース10の底壁部11の端部(側壁部12の近傍)に、ベース10の長手方向(X方向)に沿って密着配置される。
【0031】
磁気センサ62は、MR素子により磁気スケール61の磁気を検出し、磁気スケール61に沿って相対移動することで正弦波信号を出力するものである。
磁気センサ62が検出した信号は、不図示の信号処理部を介して、モータドライバ80に送られる。そして、モータドライバ80は、ユーザー端末90からの位置指令に基づいてテーブル20が指令位置に移動するように、コイル部40に供給する電流を制御する。このようにして、リニアモータ1の制御が行われる。
【0032】
リニアモータ1の制御方法としては、フィードバック制御等が行われる。すなわち、テーブル20が検出したテーブル20の位置情報、速度情報、加速度情報をモータドライバ80に送り、目標値(指令値)との差分を算出し、テーブル20の位置、速度、加速度が目標値に近づくようにコイル部40の3つのコイル41に対する三相交流電流を制御する。
【0033】
図7は、第一実施形態に係る磁界遮蔽機構5を示す図である。図7(a)は断面図、図7(b)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
なお、図7は、マグネット33とマグネット36の組み合せに係る磁界遮蔽機構5である。マグネット34とマグネット37の組み合せの係る磁界遮蔽機構5も同様の構成を有し、同一の効果を奏する。
そこで、以下では、主にマグネット33とマグネット36の組み合せに係る磁界遮蔽機構5を例にして説明する。
【0034】
磁界遮蔽機構5は、磁石部30の上面に配置されたマグネット33,34の下面33b,34bに、バックヨーク31を挟んで、リング形(環形)のマグネット36,37を配置したものである。さらに、マグネット36,37の下面36b,37bに支持部材38を密着配置したものである。そして、マグネット36,37や支持部材38の作用により、マグネット33,34からベース10側への磁界の影響が抑制される。
磁界遮蔽とは、マグネット群32からベース10への磁界の影響(磁化)を完全に遮断(遮蔽)する場合に限らず、磁界の影響を弱める(減少させる)場合も含む。つまり、マグネット群32からベース10側への磁気漏れを防止又は減少するものである。
【0035】
マグネット群32のマグネット(第一磁石)33,34は、フェライト磁石、アルニコ磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石等の焼結磁石であって、長方形等の矩形に形成される。マグネット33,34は、それぞれ、その厚み方向(Z方向:第一方向)に向けて着磁される。
マグネット33,34の厚みは、例えば、2mmである。
【0036】
バックヨーク31は、上述したように、SS400等の磁性体からなり、マグネット群32からの磁力線を集中させる継鉄として機能する。バックヨーク31の厚みは、例えば、1mmである。
【0037】
マグネット群35のマグネット(第二磁石)36,37は、フェライト磁石、アルニコ磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石等の焼結磁石であって、マグネット33,34と同一の外形を有し、中心部が空間(中空部)となっている角環形の磁石である。
マグネット36,37の厚みは、例えば、1mmである。
また、マグネット36,37の角環形における肉厚は、例えば、1mmである。
【0038】
また、マグネット36,37は、それぞれ、Z方向(第一磁石の着磁方向:第一方向)に交差する方向(XY平面)に着磁された二層(積層形)の磁石である。つまり、マグネット33,34の着磁方向(Z方向:第一方向)とマグネット36,37の着磁方向(XY平面)は直交(交差)する。
なお、Z方向に交差する方向とは、角環形における肉厚の方向(内周面36d,37dと外周面36c,37cに垂直となる方向)である。具体的には、図7(b)において、マグネット(第二磁石)36のうち、X方向に延びる部位は、Y方向に着磁され、Y方向に延びる部位は、X方向に着磁される。つまり、Z方向に交差する方向とは、XY平面における全ての方向を意味する。
【0039】
マグネット36は、2つ磁石36p,36qが互いに同極を対向させるようにして、Z方向に交差する方向に沿って配列される。本実施形態では、相似形状の2つの四角環形の磁石36p,36qが互いに嵌め合うように接合される。内側の磁石36pは、内周面がS極、外周面がN極に着磁される。一方、外側の磁石36qは、内周面がN極、外周面がS極に着磁される。したがって、マグネット36の外周面(外環面)36cと内周面(内環面)36dは共にS極に着磁される。
同様に、マグネット37の外周面(外環面)37cと内周面(内環面)37dは共にN極に着磁される。
【0040】
マグネット36は、その上面36aがバックヨーク31を介してマグネット33の下面33bに対向し、下面36bがベース10の底壁部11に密着するように配置される。つまり、マグネット33の下面33bの磁極(S極)とマグネット36の外周面36c及び内周面36dの磁極(S極)とが同一(同極)となる。
同様に、マグネット37は、その上面37aがバックヨーク31を介してマグネット34の下面34bに対向し、下面37bがベース10の底壁部11に密着するように配置される。つまり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)とマグネット37の外周面37c及び内周面37dの磁極(N極)とが同一(同極)となる。
【0041】
マグネット36,37(マグネット群35)が有する磁力(磁束密度)は、マグネット33,34(マグネット群32)の磁力に比べて小さい(弱い)。
例えば、マグネット33,34が例えば約45MG(45KT)の場合、マグネット36,37が例えば約23MG(23KT)以下である。つまり、マグネット36,37が有する磁力は、マグネット33,34の磁力の約1/2以下である。本実施形態では、マグネット36,37が有する磁力がマグネット33,34の磁力の約1/4程度(約12MG(12KT))である。
したがって、マグネット36,37(マグネット群35)として、比較的安価な磁石を用いることができる。
【0042】
支持部材38は、上述したように、SS400等の磁性体からなり、マグネット群32,35及びバックヨーク31を支持するものである。また、マグネット群32,35からベース10側への磁界の影響を緩和する。
支持部材38の厚みは、例えば、2mmである。
【0043】
図8は、第一実施形態に係る磁界遮蔽機構5の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。図8(a),(b)は磁界遮蔽機構5の断面図、図8(c)は磁界遮蔽機構5の下面図(支持部材38の下面38bを示す図)である。
図9は、第一実施形態に係る磁界遮蔽機構5の効果(磁束密度の解析結果)を示す図であって、支持部材38を取り除いたものを示している。図9(a),(b)は磁界遮蔽機構5の断面図、図9(c)は磁界遮蔽機構5の下面図(マグネット36の下面36bを示す図)である。
図10は、従来例における磁束密度の解析結果を示す図である。すなわち、マグネット33をベース10に直接配置した(磁界遮蔽機構5を配置しない)場合を示している。図10(a),(b)は断面図、図10(c)は下面図(バックヨーク931の下面931bを示す図)である。
【0044】
図8、図9、図10において、色調が濃い(暗い)部分は磁束密度が高く、薄い(明るい)部分は磁束密度が低いことを示している。
【0045】
図8(a),(b)に示すように、支持部材38の上面38aは殆ど磁化されておらず、マグネット36に接する部分が若干磁化されていることが確認できる。また、図8(c)に示すように、支持部材38の下面38bは殆ど磁化されていないことが確認できる。
更に、図9(c)に示すように、マグネット36の下面36bの磁束密度が低いことから、支持部材38の磁化の程度は低いことが確認できる。
したがって、磁石部30からベース10側への磁界の影響は遮断又は抑制(緩和)されていることが理解できる。
【0046】
これに対して、図10に示す従来例では、バックヨーク931の厚み(Z方向)を4mm程度に形成したとしても、バックヨーク931の下面931bが磁化されていることが確認できる。
したがって、従来例では、磁石部をベース10に固定すると、ベース10側への磁界の影響が生じることが理解できる。
【0047】
このように、磁石部30に磁界遮蔽機構5を設けることで、ベース10側への磁界の影響を防止(抑制)できる。
しかも、磁界遮蔽機構5では、バックヨーク31、マグネット36及び支持部材38を合わせた厚み(4mm)が、従来例のバックヨーク931の厚み(4mm)と同一である。したがって、磁石部30の大型化や重量化を招くことがない。
さらに、図9に示すように、支持部材38を設けない場合であっても、ベース10側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる。このため、支持部材38を取り除いた磁石部30をベース10に固定することが可能である。したがって、従来よりも、磁石部30の薄型化、軽量化を図ることも可能である。
【0048】
図11は、マグネット33(磁石部30)のコイル部40側への磁束密度を示す図である。
図11(a)はマグネット33とベース10との間に磁界遮蔽機構5を配置した場合、図11(b)は従来例を示している。
図11において、縦軸は磁束密度、横軸はマグネット33の長手方向(Y方向)の位置を示す。そして、各グラフ線は、マグネット33の上面33aからコイル部40側へ離れた位置(オフセット量)における磁束密度の結果を示している。
【0049】
図11に示すように、磁界遮蔽機構5を配置した場合(図11(a))であっても、従来例の場合(図11(b))と同様の磁束密度をコイル部40側に向けて発生することが確認できる。
つまり、磁界遮蔽機構5は、リニアモータ1の性能に寄与する磁石部30の磁束密度に悪影響を与えないことが確認できる。
【0050】
このように、マグネット33(マグネット群32)とベース10との間にマグネット36(マグネット群35)を配置することで、ベース10の磁化を防止(抑制)できる。
マグネット36の外周面36cと内周面36dの磁極(S極)からの磁力線がマグネット33の下面33bの磁極(S極)からの磁力線とがバックヨーク31の内部において対向するため、マグネット33の下面33bの磁極(S極)からの磁力線がベース10まで届かなくなる(磁界の影響が小さくなる)と推測される。
同様に、マグネット34(マグネット群32)とベース10との間にマグネット37(マグネット群35)を配置することで、ベース10の磁化を防止(抑制)できる。
【0051】
マグネット36(マグネット群35)の磁力(磁束密度)としては、マグネット33(マグネット群32)の下面33bの磁極からの磁力線と対向すれば足りるので、マグネット群32よりも弱い(小さい)磁力であってもよい。
上述したように、本実施形態では、マグネット36の磁力は、マグネット33の磁力(約45MG(45KT))の約1/2以下である。具体的には、マグネット36の磁力は、約1/4程度(約12MG(12KT))である。
【0052】
また、マグネット36(マグネット群35)の磁力がマグネット群32の磁力の約1/2以下であるため、マグネット36のベース10に対する磁界の影響も、マグネット群32の場合に比べて小さい。しかも、マグネット36(マグネット群35)がベース10に接する下面36bには、N極とS極が着磁されているので、マグネット36(マグネット群35)の下面36bからの磁力線がベース10の内部で大きく広がることがない。
このため、マグネット36(マグネット群35)のベース10に対する磁界の影響は非常に小さく抑えられている。
【0053】
また、上述したように、磁界遮蔽機構5では、バックヨーク31、マグネット36及び支持部材38を合わせた厚み(4mm)が、従来例のバックヨーク931の厚み(4mm)と同一である。したがって、磁石部30の大型化や重量化を招くことがない。
さらに、支持部材38を設けない場合であっても、ベース10側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる。したがって、磁石部30の薄型化、軽量化も図ることができる。
【0054】
このように、本実施形態の磁界遮蔽機構5によれば、簡単な構成によりベース10側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる。
したがって、例えば、ベース10の側壁部12に配置したリニアガイド50の軌道レール51が磁化されることがない。したがって、軌道レール51の上面に鉄粉等が吸着して、移動ブロック52の直線移動を阻害するという不具合を防止できる。よって、テーブル20の移動、すなわちアクチュエータA(リニアモータ1)の機能低下を回避できる。
【0055】
また、テーブル20の位置等を検出する磁気エンコーダ60の磁気スケール61を磁石部30の近傍に配置することが可能となる。
従来例は、磁石部によりベース10が磁化されているので、この磁気の影響を避けるために、磁気スケール61を磁石部から遠ざける必要があった。このため、磁気スケール61は、例えば、ベース10の側壁部12の一方の外側壁に取り付けられていた。
一方、本実施形態では、磁界遮蔽機構5を設けているので、磁気スケール61をベース10の任意の位置に取り付けることができる。上述したように、磁気スケール61をベース10の底壁部11の端部(側壁部12の近傍)に取り付けることが可能となっている。
このように、磁気スケール61をベース10の内側に配置できるので、外部からの磁気影響を回避できたり、障害物等に接触して損傷することを防止できたりするので、装置の信頼性が向上する。また、磁気スケール61をベース10の任意の位置に配置できるので、装置の少スペース化、低価格化を図ることもできる。
【0056】
磁界遮蔽機構5の変形例として、マグネット36の外周面36cと内周面36dを共にN極に着磁してもよい。つまり、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と異極にする。この場合においても、上述と少し劣るものの、同一の効果が得られる(図16、図17におけるマグネット34とマグネット336の関係を参照)。
マグネット33の下面33bの磁極(S極)からの磁力線がマグネット36の外周面36cと内周面36dの磁極(N極)からの磁力線に引き寄せられるため、マグネット33の下面33bの磁極(S極)からの磁力線がベース10まで届かなくなる(磁界の影響が小さくなる)と推測される。
【0057】
図12は、第二実施形態に係る磁界遮蔽機構105の概略構成を示す模式図である。図12(a)断面図、図12(b)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
なお、以下の説明において、磁界遮蔽機構5と同一の構成部材等には同一の符号を付して、その説明を簡略又は省略する。
【0058】
第二実施形態に係る磁界遮蔽機構105では、バックヨーク31の下面31bに、リング形(四角環形)のマグネット136が2つ(複数)配置される。
マグネット136は、Z方向に交差する方向に着磁された二層(積層形)の磁石である。すなわち、マグネット(第二磁石)136は、外周面(外環面)136cと内周面(内環面)136dが共にS極に着磁され、バックヨーク31の上面31aに配置されるマグネット33の下面33bの磁極(S極)と同極である。
マグネット136は、長手方向(Y方向)がマグネット36の長手方向(Y方向)の半分以下(例えば1/3〜1/4程度)である。短手方向(X方向)及び厚みはマグネット36と同一である。
【0059】
2つのマグネット136は、マグネット33の長手方向の両端に対応する(重なる)位置に配置される。つまり、1つのマグネット33に対して2つのマグネット136がバックヨーク31を介して配置される。
マグネット136の磁力(磁束密度)は、マグネット33の磁力よりも弱い(小さい)。マグネット33の磁力の約1/2以下である。
例えば、マグネット33が例えば約45MG(45KT)の場合、マグネット136が例えば約23MG(23KT)以下である。つまり、マグネット136が有する磁力は、マグネット33の磁力の約1/2以下である。さらに、マグネット136が有する磁力がマグネット33の磁力の約1/4程度(約12MG(12KT))であってもよい。
【0060】
なお、マグネット136の外周面136cと内周面136dを共にN極に着磁してもよい。すなわち、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と異極である。
【0061】
また、2つのマグネット136として、外周面136cと内周面136dを共にN極に着磁したものと、外周面136cと内周面136dを共にS極に着磁したものを組み合わせてもよい。
また、マグネット136は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0062】
図13は、第二実施形態に係る磁界遮蔽機構105の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。図13(a),(b)は磁界遮蔽機構105の断面図、図13(c)は磁界遮蔽機構105の下面図(支持部材38の下面38bを示す図)である。
図13において、色調が濃い(暗い)部分は磁束密度が高く、薄い(明るい)部分は磁束密度が低いことを示している。
【0063】
図13に示すように、第二実施形態に係る磁界遮蔽機構105においても、磁界遮蔽機構5と同一の効果が得られることが理解できる。
すなわち、図13(a),(b)に示すように、支持部材38の上面38aは殆ど磁化されておらず、マグネット36に接する部分が若干磁化されていることが確認できる。また、図13(c)に示すように、支持部材38の下面38bは殆ど磁化されていないことが確認できる。
したがって、磁界遮蔽機構105を用いることで、磁石部30からベース10側への磁界の影響は遮断又は抑制(緩和)されていることが理解できる。このため、アクチュエータA(リニアモータ1)の機能低下を回避できる。
【0064】
図14は、第三実施形態に係る磁界遮蔽機構205の概略構成を示す模式図である。図14(a),(b)は断面図、図14(c)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
なお、以下の説明において、磁界遮蔽機構5,105と同一の構成部材等には同一の符号を付して、その説明を簡略又は省略する。
【0065】
第三実施形態に係る磁界遮蔽機構205では、バックヨーク31の上面31aに隣接して配置された2つ(複数)のマグネット33,34に対して、バックヨーク31の下面31bに1つのリング形(四角環形)のマグネット236が配置される。
マグネット236は、Z方向に交差する方向に着磁された二層(積層形)の磁石である。すなわち、マグネット(第二磁石)236は、外周面(外環面)236cと内周面(内環面)236dが共にS極に着磁される。つまり、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と同極であり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)と異極である。
マグネット236は、その長さ(X方向)がマグネット36,136の短手方向(X方向)の約2倍である。つまり、2つのマグネット33,34の短手方向を合わせた長さである。
マグネット236の幅(Y方向)及び厚みはマグネット36と同一である。
【0066】
マグネット236の磁力(磁束密度)は、マグネット33の磁力よりも弱い(小さい)。マグネット33の磁力の約1/2以下である。
例えば、マグネット33が例えば約45MG(45KT)の場合、マグネット236が例えば約23MG(23KT)以下である。つまり、マグネット236が有する磁力は、マグネット33の磁力の約1/2以下である。さらに、マグネット236が有する磁力がマグネット33の磁力の約1/4程度(約12MG(12KT))であってもよい。
【0067】
なお、マグネット236の外周面236cと内周面236dを共にN極に着磁してもよい。すなわち、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と異極であり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)と同極である。
【0068】
図15は、第三実施形態に係る磁界遮蔽機構205の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。図15(a),(b)は磁界遮蔽機構205の断面図、図15(c)は磁界遮蔽機構205の下面図(支持部材38の下面38bを示す図)である。
図15において、色調が濃い(暗い)部分は磁束密度が高く、薄い(明るい)部分は磁束密度が低いことを示している。
【0069】
図15に示すように、第三実施形態に係る磁界遮蔽機構205においても、磁界遮蔽機構5,105と同一の効果が得られる。
すなわち、図15(a),(b)に示すように、支持部材38の上面38aは殆ど磁化されておらず、マグネット36に接する部分が若干磁化されていることが確認できる。また、図15(c)に示すように、支持部材38の下面38bは殆ど磁化されていないことが確認できる。
したがって、磁界遮蔽機構205を用いることで、磁石部30からベース10側への磁界の影響は遮断又は抑制(緩和)されていることが理解できる。このため、アクチュエータA(リニアモータ1)の機能低下を回避できる。
【0070】
図16は、第四実施形態に係る磁界遮蔽機構305の概略構成を示す模式図である。
図16(a),(b)は断面図、図16(c)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
なお、以下の説明において、磁界遮蔽機構5,105,205と同一の構成部材等には同一の符号を付して、その説明を簡略又は省略する。
【0071】
第四実施形態に係る磁界遮蔽機構305では、バックヨーク31の上面31aに隣接して配置された2つ(複数)のマグネット33,34に対して、バックヨーク31の下面31bにリング形(四角環形)のマグネット336が2つ(複数)配置される。
マグネット336は、Z方向に交差する方向に着磁された二層(積層形)の磁石である。すなわち、マグネット(第二磁石)336は、外周面(外環面)336cと内周面(内環面)336dが共にS極に着磁され、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と同極であり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)と異極である。
【0072】
マグネット336は、その幅(Y方向)がマグネット136の長手方向(Y方向)と同一である。つまり、マグネット336は、マグネット36の長手方向(Y方向)の半分以下(例えば1/3〜1/4程度)である。
マグネット336は、その長さ(X方向)は、マグネット236の長さ(X方向)と同一である。つまり、マグネット36,136の短手方向(X方向)の約2倍の長さであり、2つのマグネット33,34の短手方向(X方向)を合わせた長さである。
マグネット336の厚みは、マグネット36,136,236と同一である。
【0073】
2つのマグネット336は、それぞれ2つのマグネット33,34の長手方向(Y方向)の両端に対応(重なる)する位置に配置される。つまり、2つのマグネット33,34に対して2つのマグネット336がバックヨーク31を介して井桁状に配置される。
マグネット336の磁力(磁束密度)は、マグネット33の磁力よりも弱い(小さい)。マグネット33の磁力の約1/2以下である。
例えば、マグネット33が例えば約45MG(45KT)の場合、マグネット336が例えば約23MG(23KT)以下である。つまり、マグネット336が有する磁力は、マグネット33の磁力の約1/2以下である。さらに、マグネット336が有する磁力がマグネット33の磁力の約1/4程度(約12MG(12KT))であってもよい。
【0074】
なお、マグネット336の外周面336cと内周面336dを共にN極に着磁してもよい。すなわち、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と異極であり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)と同極である。
【0075】
また、2つのマグネット336として、外周面336cと内周面336dを共にN極に着磁したものと、外周面336cと内周面336dを共にS極に着磁したものを組み合わせてもよい。
また、マグネット336は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0076】
図17は、第四実施形態に係る磁界遮蔽機構305の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。図17(a),(b)は磁界遮蔽機構305の断面図、図17(c)は磁界遮蔽機構305の下面図(支持部材38の下面38bを示す図)である。
図17において、色調が濃い(暗い)部分は磁束密度が高く、薄い(明るい)部分は磁束密度が低いことを示している。
【0077】
図17に示すように、第四実施形態に係る磁界遮蔽機構305においても、磁界遮蔽機構5,105,205と同一の効果が得られる。
すなわち、図17(a),(b)に示すように、支持部材38の上面38aは殆ど磁化されておらず、マグネット36に接する部分が若干磁化されていることが確認できる。また、図17(c)に示すように、支持部材38の下面38bは殆ど磁化されていないことが確認できる。
したがって、磁界遮蔽機構305を用いることで、磁石部30からベース10側への磁界の影響は遮断又は抑制(緩和)されていることが理解できる。このため、アクチュエータA(リニアモータ1)の機能低下を回避できる。
【0078】
図18は、本発明の実施形態に係るアクチュエータA(回転モータ2)の概略構成を示す断面図である。
上述した磁界遮蔽機構5,105,205,305は、全てリニアモータ1の磁石部30に適用されるが、回転モータ2の磁石部430に適用してもよい。
【0079】
図13に示すように、回転モータ2に、磁界遮蔽機構105とほぼ同一構成の磁界遮蔽機構405が適用される。
すなわち、回転モータ2のステータである磁石部430の外周側に、Z方向に交差する方向に着磁された環形のマグネット436,437を、円筒形のバックヨーク431を介して配置する。
マグネット(第二磁石)436は、外周面(外環面)436c及び内周面(内環面)436dがN極に着磁された環形の磁石である。マグネット(第二磁石)437は、外周面(外環面)437c及び内周面(内環面)437dがS極に着磁された環形の磁石である。
【0080】
磁界遮蔽機構405によれば、コイル部440の回転性能を損なうことなく、簡単な構成によりハウジング410の磁化を確実に防止(抑制)できる。このため、アクチュエータA(回転モータ2)の機能低下を回避できる。
【0081】
上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0082】
例えば、コイル部に向けて磁界を発生する第一磁石(マグネット33,34)の外形と、これに対応する(重なる)第二磁石(マグネット36,37等)の外形を大部分において一致させる場合について説明したが、これに限らない。第一磁石(マグネット33,34)と第二磁石(マグネット36,37等)がZ方向において一部でも重なっていればよく、外形が一致しなくてもよい。
【0083】
また、第一磁石は、X方向に発生する磁界を正弦波に近付けるために、平行四辺形に形成してもよい。勿論、この場合には、第二磁石も平行四辺形に形成する。
【0084】
支持部材38として磁性体を用いる場合について説明したが、これに代えてプラスチック等の非磁性体により形成してもよい。
また、第二磁石の中空部分に非磁性体を配置してもよい。これにより、第二磁石の機械的強度を増強させることができる。
【0085】
第一磁石及び第二磁石として焼結磁石を用いる場合について説明したが、これに限らない。いわゆるボンド磁石(ゴム磁石、塩ビ磁石、プラスチック磁石などとも呼ばれる)であってもよい。すなわち、フェライト磁石等を砕いてゴムやプラスチックに練り込んだ柔軟性のある磁石を用いてもよい。
特に、第二磁石は、比較的弱い磁力であっても磁界遮蔽機構の機能を十分に果たすことができるので、安価なボンド磁石を用いて、装置コスト低減を図ることができる。
また、第二磁石の着磁は、二層に限らず、多層であってもよい。また、第二磁石は、角環形に限らず、円環形等であってもよい。
【0086】
また、磁気エンコーダ60に代えて、光学式リニアエンコーダ等を設けて、ベース10に対するテーブル20の位置等を検出してもよい。
【0087】
また、リニアガイド50の転動体として複数のボール55が用いられる場合に限らず、ローラ等の転動体を用いても構わない。また、リニアガイド50に代えて、すべり案内機構を用いてもよい。
【0088】
アクチュエータAとして、リニアモータ1、回転モータ2について説明したが、これらの実施形態に限らない。例えば、コイル部が固定されて磁石部が移動する場合でもよい。つまり、磁石部とコイル部が相対移動するものであればよい。
また、アクチュエータA(リニアモータ1,回転モータ2)の設置方向は、実施形態に限らない。例えば、リニアモータ1を天井や壁に設置する場合であってもよい。
また、アクチュエータAは、各種産業に用いることができる。例えば、工作機械、半導体製造装置、リニアモーターカー、髭剃り機、カメラのオートフォーカス機構等に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
A…アクチュエータ、 1…リニアモータ、 2…回転モータ、 5…磁界遮蔽機構、 30…磁石部、 31…バックヨーク(ヨーク)、 33,34…マグネット(第一磁石)、 36…マグネット(第二磁石)、 36c…外周面(外環面)、 36d…内周面(内環面)、 37…マグネット(第二磁石)、 37c…外周面(外環面)、 37d…内周面(内環面)、 38…支持部材、 40…コイル部、 105…磁界遮蔽機構、 136…マグネット(第二磁石)、 136c…外周面(外環面)、 136d…内周面(内環面)、 205…磁界遮蔽機構、 236…マグネット(第二磁石)、 236c…外周面(外環面)、 236d…内周面(内環面)、 305…磁界遮蔽機構、 336…マグネット(第二磁石)、 336c…外周面(外環面)、 336d…内周面(内環面)、 405…磁界遮蔽機構、 430…磁石部、 440…コイル部、 431…バックヨーク(ヨーク)、 436…マグネット(第二磁石)、 436c…外周面(外環面)、 436d…内周面、 437…マグネット(第二磁石)、 437c…外周面(外環面)、 437d…内周面(内環面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石に近接する磁性体部材の磁化を防止する磁界遮蔽機構及びこれを用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、回転型モータの固定子側と回転子(可動子)側を直線状に引き伸ばしたように構成され、電気エネルギを直線運動するための推力に変換する。直線的な推力が得られるリニアモータは、移動体を直線運動させる一軸のアクチュエータとして用いられる。
【0003】
リニアモータの一例として、複数の板形の磁石を直線状に並べた磁石部(固定部)とこの磁石部に対向して配置される複数のコイルを有するコイル部(可動部)とを有するものが知られている(特許文献1参照)。
コイルは、例えば、U・V・W相の三相を順次繰り返し配列した状態で可動部本体に支持される。これらのコイルに120度ずつ位相が異なる三相電流を流すと、コイルの軸線方向に移動する移動磁界が発生する。
そして、コイルを有する可動部は、移動磁界により磁石部との間に発生する推力を得て、移動磁界の速さに同期し磁石部に対して直線運動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−245474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したリニアモータでは、磁石部は、複数の板形の磁石をバックヨークに直線状に配列して構成される。そして、このバックヨークをリニアモータのベース等の固定部に固定する。
しかし、磁石部が配置される固定部が鉄鋼等の磁性体の場合には、固定部が磁化されてしまう。特に、磁石部に接する領域は強く磁化される。このため、例えば、固定部に取り付けられるガイドレールに鉄粉等が付着して、可動部の円滑な摺動が損なわれるという問題がある。
そこで、バックヨークを必要な機械的強度以上に厚く形成するという対処が考えられるが、磁石部が大型化、重量化して装置の小型化・薄型化などが阻害される。
【0006】
また、固定部をアルミニウム等の非磁性体で形成した場合であっても、バックヨークの近傍に、可動部の位置検出に用いる磁気スケール等を取り付けることができないという問題がある。このため、磁気スケール等を磁気の影響のない領域を選択して配置せざるをえなくなり、装置の小型化などが阻害される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、磁石部から固定部側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる磁界遮蔽機構及びこれを用いたアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係る磁界遮蔽機構は、第一方向に着磁された第一磁石と、前記第一磁石の一方の磁極側に配置されるヨークと、前記ヨークを挟んで前記第一磁石の一方の磁極側に配置されると共に前記第一方向と交差する方向に着磁された環形の第二磁石と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るアクチュエータは、複数のマグネットを配列した磁石部と、複数のコイルを前記磁石部に対向して配列したコイル部と、を備え、前記複数のマグネットの磁界と前記複数のコイルに流れる電流とにより前記磁石部と前記コイル部とを前記複数のマグネットの配列方向に沿って相対移動させるアクチュエータにおいて、前記磁石部は、請求項1から9のうちいずれか一項に記載の磁界遮蔽機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る磁界遮蔽機構によれば、簡単な構成により、磁石部から固定部側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる。また、磁石部の薄型化・軽量化が可能となる。
【0011】
本発明に係るアクチュエータよれば、磁石部とコイル部を相対移動させる案内部材が磁化されることがないので、案内部材に鉄粉等が吸着して磁石部とコイル部の相対移動を阻害するという不具合を防止できる。したがって、アクチュエータの機能低下を回避できる。
また、磁石部の近傍に他の磁気部材を配置できるので、装置の信頼性向上、装置の少スペース化、低価格化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータ(リニアモータ)の概略構成を示す斜視図である。
【図2】ベース及びテーブルを示す拡大斜視図(一部断面図)である。
【図3】アクチュエータの概略構成を示す断面図である。
【図4】磁石部を示す図である。
【図5】コイル部を示す斜視図である。
【図6】リニアガイドを示す断面図である。
【図7】第一実施形態に係る磁界遮蔽機構を示す図である。
【図8】第一実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。
【図9】第一実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である(支持部材を取り除いた場合)。
【図10】従来例における磁束密度の解析結果を示す図である。
【図11】磁石部のコイル部側への磁束密度を示す図である。
【図12】第二実施形態に係る磁界遮蔽機構を示す図である。
【図13】第二実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。
【図14】第三実施形態に係る磁界遮蔽機構を示す図である。
【図15】第三実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。
【図16】第四実施形態に係る磁界遮蔽機構を示す図である。
【図17】第四実施形態に係る磁界遮蔽機構の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。
【図18】本発明の実施形態に係るアクチュエータ(回転モータ)の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータA(リニアモータ1)の概略構成を示す斜視図である。
図2は、ベース10及びテーブル20を示す拡大斜視図(一部断面図)である。
図3は、アクチュエータAの概略構成を示す断面図である。
【0014】
アクチュエータAは、リニアモータ1と、それを制御するモータドライバ80(制御装置)と、モータドライバ80に接続されたユーザー端末90(情報処理装置)と、を備える。
リニアモータ1は、一軸方向(X方向)に細長く伸びるベース10と、ベース10に対して摺動自在に設けられたテーブル20と、からなる。
また、ベース10とテーブル20の間には、一対のリニアガイド50が設けられ、ベース10に対してテーブル20が円滑に摺動可能となっている。
【0015】
ベース10は、細長い矩形の底壁部11と、この底壁部11の幅方向(Y方向)の両端に垂直に設けられた一対の側壁部12とから形成される。ベース10は、例えば、鉄鋼等の磁性体材料又はアルミニウム等の非磁性体材から形成される。
ベース10の底壁部11の上面には、複数のマグネットが配列された磁石部30が取り付けられる。
また、ベース10の側壁部12のそれぞれの上面には、リニアガイド50の軌道レール51が一軸方向に沿って配置される。この2条の軌道レール51は平行に配置され、それぞれ2つの移動ブロック52が取り付けられる。
【0016】
テーブル20は、アルミニウム等の非磁性材料からなり、矩形の板状に形成される。
テーブル20の下面20bの四隅には、リニアガイド50の移動ブロック52が取り付けられる。そして、この移動ブロック52は、上述した2条の軌道レール51に取り付けられる。すなわち、テーブル20は、一対のリニアガイド50により、ベース10に直線運動可能に支持される。
【0017】
また、テーブル20の下面のうち、4つの移動ブロック52の間には、3つのコイル41等からなるコイル部40が吊り下げられる。この3つのコイル41は三相コイル(電機子)として機能する。
そして、ベース10に取り付けられた磁石部30と、テーブル20に取り付けられたコイル部40との間には、ギャップgが設定される。このギャップgは、テーブル20が一対のリニアガイド50によりベース10に対して直線運動しても一定に維持される。
【0018】
図4は、磁石部30を示す図である。図4(a)は上面図、図4(b)は側面図、図4(c)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
磁石部30は、コイル部40に向けて磁界を発生させるものである。具体的には、磁石部30は、細長い矩形板状に形成されたバックヨーク31と、バックヨーク31の上面31aに一定のピッチで密着配列したマグネット群32と、バックヨーク31の下面31bに、マグネット群32と同一のピッチで密着配列したマグネット群35と、バックヨーク31とほぼ同一の形状を有し、バックヨーク31との間にマグネット群35を挟持する支持部材38と、から構成される。
【0019】
バックヨーク(ヨーク)31は、鉄鋼等の磁性体からなり、マグネット群32からの磁力線を集中させる継鉄として機能する。また、バックヨーク31は、その幅(Y方向)がベース10の底壁部11よりも小さく形成される。
支持部材38は、磁石部30をベース10に固定するための部材であって、バックヨーク31と同一材料、すなわち鉄鋼等の磁性体から形成される。支持部材38の形状は、バックヨーク31とほぼ同一形状に形成される。
【0020】
マグネット群32は、上面(33a,34a)がN極のマグネット33とS極のマグネット34とを交互に一定のピッチでバックヨーク31の長手方向(X方向)に沿って直線状に複数個配列したものである。
マグネット群32の各マグネット33,34は、細長い板状の永久磁石からなる。マグネット33,34の長手方向は、バックヨーク31の幅(Y方向)よりも短く形成される。マグネット33,34の短手方向(X方向)は、後述するコイル部40の各コイル41の長さ(X方向)に対応して形成される。マグネット33,34の厚み(Z方向)は、バックヨーク31よりも厚く形成される。
そして、各マグネット33,34は、その長手方向がバックヨーク31の幅方向(Y方向)に平行となるようにして、バックヨーク31の幅方向の中央に接着剤等により固着される。
【0021】
マグネット群35は、外周面(外環面)がN極のマグネット36とS極のマグネット37とを交互に、マグネット群32と同一のピッチでバックヨーク31の長手方向(X方向)に沿って直線状に複数個配列したものである。
マグネット群35の各マグネット36,37は、各マグネット33,34とほぼ同一の外形形状を有する永久磁石からなる。つまり、マグネット36,37の長手方向及び短手方向は、マグネット33,34と同一に形成される。マグネット36,37の厚みは、マグネット33,34よりも薄く、バックヨーク31とほぼ同程度に形成される。
【0022】
そして、各マグネット36,37は、その長手方向がバックヨーク31の幅方向(Y方向)に平行となるようにして、上面36a,37aがバックヨーク31の幅方向の中央に接着剤等により固着される。
また、各マグネット36,37は、その長手方向が支持部材38の幅方向(Y方向)に平行となるようにして、下面36b,37bが支持部材38の幅方向の中央に接着剤等により固着される。
さらに、各マグネット36,37は、バックヨーク31の上面31aに配列したマグネット33,34に対して、平面視する(バックヨーク31に垂直な方向(Z方向)から見る)と一対一に対応する(重なる)位置に配置される。
【0023】
このように、磁石部30は、バックヨーク31を挟んでマグネット群32(マグネット33,34)とマグネット群35(マグネット36,37)が一対一に対応する(重なる)配置となっている。
そして、マグネット群32,35とバックヨーク31を支持する支持部材38がベース10の底壁部11に密着して固定される。
【0024】
磁石部30は、マグネット群32からの磁界をコイル部40側に向けて発生させる一方で、マグネット群35や支持部材38によりベース10側への磁界の影響を抑制する。すなわち、ベース10側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)する磁界遮蔽機構5としても機能する。
この磁界遮蔽機構5の詳細構成等については、後述する。
【0025】
図5は、コイル部40を示す斜視図である。
テーブル20の下面の中央部には、三相コイルとして機能する3つのコイル41とコア42からなる電機子としてのコイル部40が取り付けられる。コア42の材質は、ケイ素鋼等の磁性体である。コア42は、三相コイル(コイル41)に発生する磁界を強める3つの櫛歯42a,42b,42cを有する。
3つのコイル41は、コア42の3つの櫛歯42a,42b,42cの周囲にそれぞれ巻かれ、U相コイル41a、V相コイル41b、W相コイル41cとなる。3つのコイル41は、テーブル20の移動方向に沿って並べられる。
【0026】
そして、3つのコイル41には、120度ずつ位相が異なる三相交流電流が流される。これにより、コイル部40から進行磁界が発生する。これにより、磁石部30に発生する磁界との作用により、コイル部40(テーブル20)に推力が発生する。
コイル部40の3つのコイル41に流れる電流は、モータドライバ80によって制御される。
【0027】
図6は、リニアガイド50の斜視図を示す。
リニアガイド50は、ベース10の側壁部12の上面に取り付けられた軌道レール51を有する。
軌道レール51には、長手方向に所定のピッチで複数の取付け孔51bが開けられる。取付け孔51bにボルトを通し、ボルトをベース10の側壁部12のねじ孔にねじ込むことによって、軌道レール51が側壁部12に固定される。
軌道レール51には、長手方向に沿ってボール55が転がる複数条のボール転走溝51aが形成される。ボール転走溝51aの断面形状は、ボール55の半径よりも僅かに大きい単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状、または二つの円弧からなるゴシックアーチ溝形状である。
ボール転走溝51aは、軌道レール51の側面だけでなく、軌道レール51の上面にも形成されている。軌道レール51の上面にボール転走溝51aを形成することで、リニアガイド50の垂直方向の剛性を高めることができる。
【0028】
移動ブロック52は、軌道レール51を跨る鞍形状に形成される。移動ブロック52には、軌道レール51のボール転走溝51aに対向する負荷ボール転走溝52aが形成されると共に、負荷ボール転走溝52aを含むボール循環路が形成される。
移動ブロック52の一軸方向の各端面にはエンドプレート53が取り付けられる。ボール循環経路は、負荷ボール転走溝52aと、負荷ボール転走溝52aと平行に伸びるボール戻し路52bと、エンドプレート53に形成されて負荷ボール転走溝52aの端部とボール戻し路52bの端部とを接続するU字状の方向転換路52cと、から構成され、全体がサーキット状に形成される。
そして、ボール循環経路には複数のボール55が配列・収容される。
移動ブロック52には、テーブル20を取り付けるための取付けねじ52dが加工される。そして、移動ブロック52は、テーブル20の下面20bにねじ止めされる。
【0029】
軌道レール51に対して移動ブロック52を相対的に移動させると、軌道レール51のボール転走溝51aと移動ブロック52の負荷ボール転走溝52aとの間に介在されたボール55が転がり運動する。負荷ボール転走溝52aの一端まで転がったボール55は、方向転換路52cに導かれ、ボール戻し路52b及び反対側の方向転換路52cを経由した後、負荷ボール転走溝52aの他端に戻される。軌道レール51と移動ブロック52との間にボール55を介在させることによって、軌道レール51に対して移動ブロック52が移動するときの抵抗を低減できる。
【0030】
ベース10に対するテーブル20の位置・速度・加速度は、磁気エンコーダ60により検出される。磁気エンコーダ60は、例えば、1μm程度の分解能を有している。
磁気エンコーダ60は、ベース10に取り付けられた磁気スケール61と、テーブル20に取り付けられた磁気センサ62等とから構成される。
磁気スケール61は、細長い矩形の磁性体からなり、その上面を、N極とS極が交互に一定のピッチ(例えば2mm)になるように着磁したものである。磁気スケール61は、ベース10の底壁部11の端部(側壁部12の近傍)に、ベース10の長手方向(X方向)に沿って密着配置される。
【0031】
磁気センサ62は、MR素子により磁気スケール61の磁気を検出し、磁気スケール61に沿って相対移動することで正弦波信号を出力するものである。
磁気センサ62が検出した信号は、不図示の信号処理部を介して、モータドライバ80に送られる。そして、モータドライバ80は、ユーザー端末90からの位置指令に基づいてテーブル20が指令位置に移動するように、コイル部40に供給する電流を制御する。このようにして、リニアモータ1の制御が行われる。
【0032】
リニアモータ1の制御方法としては、フィードバック制御等が行われる。すなわち、テーブル20が検出したテーブル20の位置情報、速度情報、加速度情報をモータドライバ80に送り、目標値(指令値)との差分を算出し、テーブル20の位置、速度、加速度が目標値に近づくようにコイル部40の3つのコイル41に対する三相交流電流を制御する。
【0033】
図7は、第一実施形態に係る磁界遮蔽機構5を示す図である。図7(a)は断面図、図7(b)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
なお、図7は、マグネット33とマグネット36の組み合せに係る磁界遮蔽機構5である。マグネット34とマグネット37の組み合せの係る磁界遮蔽機構5も同様の構成を有し、同一の効果を奏する。
そこで、以下では、主にマグネット33とマグネット36の組み合せに係る磁界遮蔽機構5を例にして説明する。
【0034】
磁界遮蔽機構5は、磁石部30の上面に配置されたマグネット33,34の下面33b,34bに、バックヨーク31を挟んで、リング形(環形)のマグネット36,37を配置したものである。さらに、マグネット36,37の下面36b,37bに支持部材38を密着配置したものである。そして、マグネット36,37や支持部材38の作用により、マグネット33,34からベース10側への磁界の影響が抑制される。
磁界遮蔽とは、マグネット群32からベース10への磁界の影響(磁化)を完全に遮断(遮蔽)する場合に限らず、磁界の影響を弱める(減少させる)場合も含む。つまり、マグネット群32からベース10側への磁気漏れを防止又は減少するものである。
【0035】
マグネット群32のマグネット(第一磁石)33,34は、フェライト磁石、アルニコ磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石等の焼結磁石であって、長方形等の矩形に形成される。マグネット33,34は、それぞれ、その厚み方向(Z方向:第一方向)に向けて着磁される。
マグネット33,34の厚みは、例えば、2mmである。
【0036】
バックヨーク31は、上述したように、SS400等の磁性体からなり、マグネット群32からの磁力線を集中させる継鉄として機能する。バックヨーク31の厚みは、例えば、1mmである。
【0037】
マグネット群35のマグネット(第二磁石)36,37は、フェライト磁石、アルニコ磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石等の焼結磁石であって、マグネット33,34と同一の外形を有し、中心部が空間(中空部)となっている角環形の磁石である。
マグネット36,37の厚みは、例えば、1mmである。
また、マグネット36,37の角環形における肉厚は、例えば、1mmである。
【0038】
また、マグネット36,37は、それぞれ、Z方向(第一磁石の着磁方向:第一方向)に交差する方向(XY平面)に着磁された二層(積層形)の磁石である。つまり、マグネット33,34の着磁方向(Z方向:第一方向)とマグネット36,37の着磁方向(XY平面)は直交(交差)する。
なお、Z方向に交差する方向とは、角環形における肉厚の方向(内周面36d,37dと外周面36c,37cに垂直となる方向)である。具体的には、図7(b)において、マグネット(第二磁石)36のうち、X方向に延びる部位は、Y方向に着磁され、Y方向に延びる部位は、X方向に着磁される。つまり、Z方向に交差する方向とは、XY平面における全ての方向を意味する。
【0039】
マグネット36は、2つ磁石36p,36qが互いに同極を対向させるようにして、Z方向に交差する方向に沿って配列される。本実施形態では、相似形状の2つの四角環形の磁石36p,36qが互いに嵌め合うように接合される。内側の磁石36pは、内周面がS極、外周面がN極に着磁される。一方、外側の磁石36qは、内周面がN極、外周面がS極に着磁される。したがって、マグネット36の外周面(外環面)36cと内周面(内環面)36dは共にS極に着磁される。
同様に、マグネット37の外周面(外環面)37cと内周面(内環面)37dは共にN極に着磁される。
【0040】
マグネット36は、その上面36aがバックヨーク31を介してマグネット33の下面33bに対向し、下面36bがベース10の底壁部11に密着するように配置される。つまり、マグネット33の下面33bの磁極(S極)とマグネット36の外周面36c及び内周面36dの磁極(S極)とが同一(同極)となる。
同様に、マグネット37は、その上面37aがバックヨーク31を介してマグネット34の下面34bに対向し、下面37bがベース10の底壁部11に密着するように配置される。つまり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)とマグネット37の外周面37c及び内周面37dの磁極(N極)とが同一(同極)となる。
【0041】
マグネット36,37(マグネット群35)が有する磁力(磁束密度)は、マグネット33,34(マグネット群32)の磁力に比べて小さい(弱い)。
例えば、マグネット33,34が例えば約45MG(45KT)の場合、マグネット36,37が例えば約23MG(23KT)以下である。つまり、マグネット36,37が有する磁力は、マグネット33,34の磁力の約1/2以下である。本実施形態では、マグネット36,37が有する磁力がマグネット33,34の磁力の約1/4程度(約12MG(12KT))である。
したがって、マグネット36,37(マグネット群35)として、比較的安価な磁石を用いることができる。
【0042】
支持部材38は、上述したように、SS400等の磁性体からなり、マグネット群32,35及びバックヨーク31を支持するものである。また、マグネット群32,35からベース10側への磁界の影響を緩和する。
支持部材38の厚みは、例えば、2mmである。
【0043】
図8は、第一実施形態に係る磁界遮蔽機構5の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。図8(a),(b)は磁界遮蔽機構5の断面図、図8(c)は磁界遮蔽機構5の下面図(支持部材38の下面38bを示す図)である。
図9は、第一実施形態に係る磁界遮蔽機構5の効果(磁束密度の解析結果)を示す図であって、支持部材38を取り除いたものを示している。図9(a),(b)は磁界遮蔽機構5の断面図、図9(c)は磁界遮蔽機構5の下面図(マグネット36の下面36bを示す図)である。
図10は、従来例における磁束密度の解析結果を示す図である。すなわち、マグネット33をベース10に直接配置した(磁界遮蔽機構5を配置しない)場合を示している。図10(a),(b)は断面図、図10(c)は下面図(バックヨーク931の下面931bを示す図)である。
【0044】
図8、図9、図10において、色調が濃い(暗い)部分は磁束密度が高く、薄い(明るい)部分は磁束密度が低いことを示している。
【0045】
図8(a),(b)に示すように、支持部材38の上面38aは殆ど磁化されておらず、マグネット36に接する部分が若干磁化されていることが確認できる。また、図8(c)に示すように、支持部材38の下面38bは殆ど磁化されていないことが確認できる。
更に、図9(c)に示すように、マグネット36の下面36bの磁束密度が低いことから、支持部材38の磁化の程度は低いことが確認できる。
したがって、磁石部30からベース10側への磁界の影響は遮断又は抑制(緩和)されていることが理解できる。
【0046】
これに対して、図10に示す従来例では、バックヨーク931の厚み(Z方向)を4mm程度に形成したとしても、バックヨーク931の下面931bが磁化されていることが確認できる。
したがって、従来例では、磁石部をベース10に固定すると、ベース10側への磁界の影響が生じることが理解できる。
【0047】
このように、磁石部30に磁界遮蔽機構5を設けることで、ベース10側への磁界の影響を防止(抑制)できる。
しかも、磁界遮蔽機構5では、バックヨーク31、マグネット36及び支持部材38を合わせた厚み(4mm)が、従来例のバックヨーク931の厚み(4mm)と同一である。したがって、磁石部30の大型化や重量化を招くことがない。
さらに、図9に示すように、支持部材38を設けない場合であっても、ベース10側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる。このため、支持部材38を取り除いた磁石部30をベース10に固定することが可能である。したがって、従来よりも、磁石部30の薄型化、軽量化を図ることも可能である。
【0048】
図11は、マグネット33(磁石部30)のコイル部40側への磁束密度を示す図である。
図11(a)はマグネット33とベース10との間に磁界遮蔽機構5を配置した場合、図11(b)は従来例を示している。
図11において、縦軸は磁束密度、横軸はマグネット33の長手方向(Y方向)の位置を示す。そして、各グラフ線は、マグネット33の上面33aからコイル部40側へ離れた位置(オフセット量)における磁束密度の結果を示している。
【0049】
図11に示すように、磁界遮蔽機構5を配置した場合(図11(a))であっても、従来例の場合(図11(b))と同様の磁束密度をコイル部40側に向けて発生することが確認できる。
つまり、磁界遮蔽機構5は、リニアモータ1の性能に寄与する磁石部30の磁束密度に悪影響を与えないことが確認できる。
【0050】
このように、マグネット33(マグネット群32)とベース10との間にマグネット36(マグネット群35)を配置することで、ベース10の磁化を防止(抑制)できる。
マグネット36の外周面36cと内周面36dの磁極(S極)からの磁力線がマグネット33の下面33bの磁極(S極)からの磁力線とがバックヨーク31の内部において対向するため、マグネット33の下面33bの磁極(S極)からの磁力線がベース10まで届かなくなる(磁界の影響が小さくなる)と推測される。
同様に、マグネット34(マグネット群32)とベース10との間にマグネット37(マグネット群35)を配置することで、ベース10の磁化を防止(抑制)できる。
【0051】
マグネット36(マグネット群35)の磁力(磁束密度)としては、マグネット33(マグネット群32)の下面33bの磁極からの磁力線と対向すれば足りるので、マグネット群32よりも弱い(小さい)磁力であってもよい。
上述したように、本実施形態では、マグネット36の磁力は、マグネット33の磁力(約45MG(45KT))の約1/2以下である。具体的には、マグネット36の磁力は、約1/4程度(約12MG(12KT))である。
【0052】
また、マグネット36(マグネット群35)の磁力がマグネット群32の磁力の約1/2以下であるため、マグネット36のベース10に対する磁界の影響も、マグネット群32の場合に比べて小さい。しかも、マグネット36(マグネット群35)がベース10に接する下面36bには、N極とS極が着磁されているので、マグネット36(マグネット群35)の下面36bからの磁力線がベース10の内部で大きく広がることがない。
このため、マグネット36(マグネット群35)のベース10に対する磁界の影響は非常に小さく抑えられている。
【0053】
また、上述したように、磁界遮蔽機構5では、バックヨーク31、マグネット36及び支持部材38を合わせた厚み(4mm)が、従来例のバックヨーク931の厚み(4mm)と同一である。したがって、磁石部30の大型化や重量化を招くことがない。
さらに、支持部材38を設けない場合であっても、ベース10側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる。したがって、磁石部30の薄型化、軽量化も図ることができる。
【0054】
このように、本実施形態の磁界遮蔽機構5によれば、簡単な構成によりベース10側への磁界の影響を低減又は防止(抑制)できる。
したがって、例えば、ベース10の側壁部12に配置したリニアガイド50の軌道レール51が磁化されることがない。したがって、軌道レール51の上面に鉄粉等が吸着して、移動ブロック52の直線移動を阻害するという不具合を防止できる。よって、テーブル20の移動、すなわちアクチュエータA(リニアモータ1)の機能低下を回避できる。
【0055】
また、テーブル20の位置等を検出する磁気エンコーダ60の磁気スケール61を磁石部30の近傍に配置することが可能となる。
従来例は、磁石部によりベース10が磁化されているので、この磁気の影響を避けるために、磁気スケール61を磁石部から遠ざける必要があった。このため、磁気スケール61は、例えば、ベース10の側壁部12の一方の外側壁に取り付けられていた。
一方、本実施形態では、磁界遮蔽機構5を設けているので、磁気スケール61をベース10の任意の位置に取り付けることができる。上述したように、磁気スケール61をベース10の底壁部11の端部(側壁部12の近傍)に取り付けることが可能となっている。
このように、磁気スケール61をベース10の内側に配置できるので、外部からの磁気影響を回避できたり、障害物等に接触して損傷することを防止できたりするので、装置の信頼性が向上する。また、磁気スケール61をベース10の任意の位置に配置できるので、装置の少スペース化、低価格化を図ることもできる。
【0056】
磁界遮蔽機構5の変形例として、マグネット36の外周面36cと内周面36dを共にN極に着磁してもよい。つまり、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と異極にする。この場合においても、上述と少し劣るものの、同一の効果が得られる(図16、図17におけるマグネット34とマグネット336の関係を参照)。
マグネット33の下面33bの磁極(S極)からの磁力線がマグネット36の外周面36cと内周面36dの磁極(N極)からの磁力線に引き寄せられるため、マグネット33の下面33bの磁極(S極)からの磁力線がベース10まで届かなくなる(磁界の影響が小さくなる)と推測される。
【0057】
図12は、第二実施形態に係る磁界遮蔽機構105の概略構成を示す模式図である。図12(a)断面図、図12(b)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
なお、以下の説明において、磁界遮蔽機構5と同一の構成部材等には同一の符号を付して、その説明を簡略又は省略する。
【0058】
第二実施形態に係る磁界遮蔽機構105では、バックヨーク31の下面31bに、リング形(四角環形)のマグネット136が2つ(複数)配置される。
マグネット136は、Z方向に交差する方向に着磁された二層(積層形)の磁石である。すなわち、マグネット(第二磁石)136は、外周面(外環面)136cと内周面(内環面)136dが共にS極に着磁され、バックヨーク31の上面31aに配置されるマグネット33の下面33bの磁極(S極)と同極である。
マグネット136は、長手方向(Y方向)がマグネット36の長手方向(Y方向)の半分以下(例えば1/3〜1/4程度)である。短手方向(X方向)及び厚みはマグネット36と同一である。
【0059】
2つのマグネット136は、マグネット33の長手方向の両端に対応する(重なる)位置に配置される。つまり、1つのマグネット33に対して2つのマグネット136がバックヨーク31を介して配置される。
マグネット136の磁力(磁束密度)は、マグネット33の磁力よりも弱い(小さい)。マグネット33の磁力の約1/2以下である。
例えば、マグネット33が例えば約45MG(45KT)の場合、マグネット136が例えば約23MG(23KT)以下である。つまり、マグネット136が有する磁力は、マグネット33の磁力の約1/2以下である。さらに、マグネット136が有する磁力がマグネット33の磁力の約1/4程度(約12MG(12KT))であってもよい。
【0060】
なお、マグネット136の外周面136cと内周面136dを共にN極に着磁してもよい。すなわち、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と異極である。
【0061】
また、2つのマグネット136として、外周面136cと内周面136dを共にN極に着磁したものと、外周面136cと内周面136dを共にS極に着磁したものを組み合わせてもよい。
また、マグネット136は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0062】
図13は、第二実施形態に係る磁界遮蔽機構105の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。図13(a),(b)は磁界遮蔽機構105の断面図、図13(c)は磁界遮蔽機構105の下面図(支持部材38の下面38bを示す図)である。
図13において、色調が濃い(暗い)部分は磁束密度が高く、薄い(明るい)部分は磁束密度が低いことを示している。
【0063】
図13に示すように、第二実施形態に係る磁界遮蔽機構105においても、磁界遮蔽機構5と同一の効果が得られることが理解できる。
すなわち、図13(a),(b)に示すように、支持部材38の上面38aは殆ど磁化されておらず、マグネット36に接する部分が若干磁化されていることが確認できる。また、図13(c)に示すように、支持部材38の下面38bは殆ど磁化されていないことが確認できる。
したがって、磁界遮蔽機構105を用いることで、磁石部30からベース10側への磁界の影響は遮断又は抑制(緩和)されていることが理解できる。このため、アクチュエータA(リニアモータ1)の機能低下を回避できる。
【0064】
図14は、第三実施形態に係る磁界遮蔽機構205の概略構成を示す模式図である。図14(a),(b)は断面図、図14(c)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
なお、以下の説明において、磁界遮蔽機構5,105と同一の構成部材等には同一の符号を付して、その説明を簡略又は省略する。
【0065】
第三実施形態に係る磁界遮蔽機構205では、バックヨーク31の上面31aに隣接して配置された2つ(複数)のマグネット33,34に対して、バックヨーク31の下面31bに1つのリング形(四角環形)のマグネット236が配置される。
マグネット236は、Z方向に交差する方向に着磁された二層(積層形)の磁石である。すなわち、マグネット(第二磁石)236は、外周面(外環面)236cと内周面(内環面)236dが共にS極に着磁される。つまり、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と同極であり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)と異極である。
マグネット236は、その長さ(X方向)がマグネット36,136の短手方向(X方向)の約2倍である。つまり、2つのマグネット33,34の短手方向を合わせた長さである。
マグネット236の幅(Y方向)及び厚みはマグネット36と同一である。
【0066】
マグネット236の磁力(磁束密度)は、マグネット33の磁力よりも弱い(小さい)。マグネット33の磁力の約1/2以下である。
例えば、マグネット33が例えば約45MG(45KT)の場合、マグネット236が例えば約23MG(23KT)以下である。つまり、マグネット236が有する磁力は、マグネット33の磁力の約1/2以下である。さらに、マグネット236が有する磁力がマグネット33の磁力の約1/4程度(約12MG(12KT))であってもよい。
【0067】
なお、マグネット236の外周面236cと内周面236dを共にN極に着磁してもよい。すなわち、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と異極であり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)と同極である。
【0068】
図15は、第三実施形態に係る磁界遮蔽機構205の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。図15(a),(b)は磁界遮蔽機構205の断面図、図15(c)は磁界遮蔽機構205の下面図(支持部材38の下面38bを示す図)である。
図15において、色調が濃い(暗い)部分は磁束密度が高く、薄い(明るい)部分は磁束密度が低いことを示している。
【0069】
図15に示すように、第三実施形態に係る磁界遮蔽機構205においても、磁界遮蔽機構5,105と同一の効果が得られる。
すなわち、図15(a),(b)に示すように、支持部材38の上面38aは殆ど磁化されておらず、マグネット36に接する部分が若干磁化されていることが確認できる。また、図15(c)に示すように、支持部材38の下面38bは殆ど磁化されていないことが確認できる。
したがって、磁界遮蔽機構205を用いることで、磁石部30からベース10側への磁界の影響は遮断又は抑制(緩和)されていることが理解できる。このため、アクチュエータA(リニアモータ1)の機能低下を回避できる。
【0070】
図16は、第四実施形態に係る磁界遮蔽機構305の概略構成を示す模式図である。
図16(a),(b)は断面図、図16(c)は下面図(支持部材を取り除いた場合)である。
なお、以下の説明において、磁界遮蔽機構5,105,205と同一の構成部材等には同一の符号を付して、その説明を簡略又は省略する。
【0071】
第四実施形態に係る磁界遮蔽機構305では、バックヨーク31の上面31aに隣接して配置された2つ(複数)のマグネット33,34に対して、バックヨーク31の下面31bにリング形(四角環形)のマグネット336が2つ(複数)配置される。
マグネット336は、Z方向に交差する方向に着磁された二層(積層形)の磁石である。すなわち、マグネット(第二磁石)336は、外周面(外環面)336cと内周面(内環面)336dが共にS極に着磁され、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と同極であり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)と異極である。
【0072】
マグネット336は、その幅(Y方向)がマグネット136の長手方向(Y方向)と同一である。つまり、マグネット336は、マグネット36の長手方向(Y方向)の半分以下(例えば1/3〜1/4程度)である。
マグネット336は、その長さ(X方向)は、マグネット236の長さ(X方向)と同一である。つまり、マグネット36,136の短手方向(X方向)の約2倍の長さであり、2つのマグネット33,34の短手方向(X方向)を合わせた長さである。
マグネット336の厚みは、マグネット36,136,236と同一である。
【0073】
2つのマグネット336は、それぞれ2つのマグネット33,34の長手方向(Y方向)の両端に対応(重なる)する位置に配置される。つまり、2つのマグネット33,34に対して2つのマグネット336がバックヨーク31を介して井桁状に配置される。
マグネット336の磁力(磁束密度)は、マグネット33の磁力よりも弱い(小さい)。マグネット33の磁力の約1/2以下である。
例えば、マグネット33が例えば約45MG(45KT)の場合、マグネット336が例えば約23MG(23KT)以下である。つまり、マグネット336が有する磁力は、マグネット33の磁力の約1/2以下である。さらに、マグネット336が有する磁力がマグネット33の磁力の約1/4程度(約12MG(12KT))であってもよい。
【0074】
なお、マグネット336の外周面336cと内周面336dを共にN極に着磁してもよい。すなわち、マグネット33の下面33bの磁極(S極)と異極であり、マグネット34の下面34bの磁極(N極)と同極である。
【0075】
また、2つのマグネット336として、外周面336cと内周面336dを共にN極に着磁したものと、外周面336cと内周面336dを共にS極に着磁したものを組み合わせてもよい。
また、マグネット336は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0076】
図17は、第四実施形態に係る磁界遮蔽機構305の効果(磁束密度の解析結果)を示す図である。図17(a),(b)は磁界遮蔽機構305の断面図、図17(c)は磁界遮蔽機構305の下面図(支持部材38の下面38bを示す図)である。
図17において、色調が濃い(暗い)部分は磁束密度が高く、薄い(明るい)部分は磁束密度が低いことを示している。
【0077】
図17に示すように、第四実施形態に係る磁界遮蔽機構305においても、磁界遮蔽機構5,105,205と同一の効果が得られる。
すなわち、図17(a),(b)に示すように、支持部材38の上面38aは殆ど磁化されておらず、マグネット36に接する部分が若干磁化されていることが確認できる。また、図17(c)に示すように、支持部材38の下面38bは殆ど磁化されていないことが確認できる。
したがって、磁界遮蔽機構305を用いることで、磁石部30からベース10側への磁界の影響は遮断又は抑制(緩和)されていることが理解できる。このため、アクチュエータA(リニアモータ1)の機能低下を回避できる。
【0078】
図18は、本発明の実施形態に係るアクチュエータA(回転モータ2)の概略構成を示す断面図である。
上述した磁界遮蔽機構5,105,205,305は、全てリニアモータ1の磁石部30に適用されるが、回転モータ2の磁石部430に適用してもよい。
【0079】
図13に示すように、回転モータ2に、磁界遮蔽機構105とほぼ同一構成の磁界遮蔽機構405が適用される。
すなわち、回転モータ2のステータである磁石部430の外周側に、Z方向に交差する方向に着磁された環形のマグネット436,437を、円筒形のバックヨーク431を介して配置する。
マグネット(第二磁石)436は、外周面(外環面)436c及び内周面(内環面)436dがN極に着磁された環形の磁石である。マグネット(第二磁石)437は、外周面(外環面)437c及び内周面(内環面)437dがS極に着磁された環形の磁石である。
【0080】
磁界遮蔽機構405によれば、コイル部440の回転性能を損なうことなく、簡単な構成によりハウジング410の磁化を確実に防止(抑制)できる。このため、アクチュエータA(回転モータ2)の機能低下を回避できる。
【0081】
上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0082】
例えば、コイル部に向けて磁界を発生する第一磁石(マグネット33,34)の外形と、これに対応する(重なる)第二磁石(マグネット36,37等)の外形を大部分において一致させる場合について説明したが、これに限らない。第一磁石(マグネット33,34)と第二磁石(マグネット36,37等)がZ方向において一部でも重なっていればよく、外形が一致しなくてもよい。
【0083】
また、第一磁石は、X方向に発生する磁界を正弦波に近付けるために、平行四辺形に形成してもよい。勿論、この場合には、第二磁石も平行四辺形に形成する。
【0084】
支持部材38として磁性体を用いる場合について説明したが、これに代えてプラスチック等の非磁性体により形成してもよい。
また、第二磁石の中空部分に非磁性体を配置してもよい。これにより、第二磁石の機械的強度を増強させることができる。
【0085】
第一磁石及び第二磁石として焼結磁石を用いる場合について説明したが、これに限らない。いわゆるボンド磁石(ゴム磁石、塩ビ磁石、プラスチック磁石などとも呼ばれる)であってもよい。すなわち、フェライト磁石等を砕いてゴムやプラスチックに練り込んだ柔軟性のある磁石を用いてもよい。
特に、第二磁石は、比較的弱い磁力であっても磁界遮蔽機構の機能を十分に果たすことができるので、安価なボンド磁石を用いて、装置コスト低減を図ることができる。
また、第二磁石の着磁は、二層に限らず、多層であってもよい。また、第二磁石は、角環形に限らず、円環形等であってもよい。
【0086】
また、磁気エンコーダ60に代えて、光学式リニアエンコーダ等を設けて、ベース10に対するテーブル20の位置等を検出してもよい。
【0087】
また、リニアガイド50の転動体として複数のボール55が用いられる場合に限らず、ローラ等の転動体を用いても構わない。また、リニアガイド50に代えて、すべり案内機構を用いてもよい。
【0088】
アクチュエータAとして、リニアモータ1、回転モータ2について説明したが、これらの実施形態に限らない。例えば、コイル部が固定されて磁石部が移動する場合でもよい。つまり、磁石部とコイル部が相対移動するものであればよい。
また、アクチュエータA(リニアモータ1,回転モータ2)の設置方向は、実施形態に限らない。例えば、リニアモータ1を天井や壁に設置する場合であってもよい。
また、アクチュエータAは、各種産業に用いることができる。例えば、工作機械、半導体製造装置、リニアモーターカー、髭剃り機、カメラのオートフォーカス機構等に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
A…アクチュエータ、 1…リニアモータ、 2…回転モータ、 5…磁界遮蔽機構、 30…磁石部、 31…バックヨーク(ヨーク)、 33,34…マグネット(第一磁石)、 36…マグネット(第二磁石)、 36c…外周面(外環面)、 36d…内周面(内環面)、 37…マグネット(第二磁石)、 37c…外周面(外環面)、 37d…内周面(内環面)、 38…支持部材、 40…コイル部、 105…磁界遮蔽機構、 136…マグネット(第二磁石)、 136c…外周面(外環面)、 136d…内周面(内環面)、 205…磁界遮蔽機構、 236…マグネット(第二磁石)、 236c…外周面(外環面)、 236d…内周面(内環面)、 305…磁界遮蔽機構、 336…マグネット(第二磁石)、 336c…外周面(外環面)、 336d…内周面(内環面)、 405…磁界遮蔽機構、 430…磁石部、 440…コイル部、 431…バックヨーク(ヨーク)、 436…マグネット(第二磁石)、 436c…外周面(外環面)、 436d…内周面、 437…マグネット(第二磁石)、 437c…外周面(外環面)、 437d…内周面(内環面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に着磁された第一磁石と、
前記第一磁石の一方の磁極側に配置されるヨークと、
前記ヨークを挟んで前記第一磁石の一方の磁極側に配置されると共に前記第一方向と交差する方向に着磁された環形の第二磁石と、
を備えることを特徴とする磁界遮蔽機構。
【請求項2】
前記第一磁石における前記一方の磁極と前記第二磁石の外環面及び内環面の磁極が同極であることを特徴とする請求項1に記載の磁界遮蔽機構。
【請求項3】
前記第一磁石における前記一方の磁極と前記第二磁石の外環面及び内環面の磁極が異極であることを特徴とする請求項1に記載の磁界遮蔽機構。
【請求項4】
前記第二磁石は、複層に着磁した積層形の磁石であることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁界遮蔽機構。
【請求項5】
前記第一方向において、前記第二磁石を前記第一磁石に重なる位置に配置することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の磁界遮蔽機構。
【請求項6】
複数のマグネットを配列した磁石部と、
複数のコイルを前記磁石部に対向して配列したコイル部と、
を備え、
前記複数のマグネットの磁界と前記複数のコイルに流れる電流とにより前記磁石部と前記コイル部とを前記複数のマグネットの配列方向に沿って相対移動させるアクチュエータにおいて、
前記磁石部は、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の磁界遮蔽機構を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項1】
第一方向に着磁された第一磁石と、
前記第一磁石の一方の磁極側に配置されるヨークと、
前記ヨークを挟んで前記第一磁石の一方の磁極側に配置されると共に前記第一方向と交差する方向に着磁された環形の第二磁石と、
を備えることを特徴とする磁界遮蔽機構。
【請求項2】
前記第一磁石における前記一方の磁極と前記第二磁石の外環面及び内環面の磁極が同極であることを特徴とする請求項1に記載の磁界遮蔽機構。
【請求項3】
前記第一磁石における前記一方の磁極と前記第二磁石の外環面及び内環面の磁極が異極であることを特徴とする請求項1に記載の磁界遮蔽機構。
【請求項4】
前記第二磁石は、複層に着磁した積層形の磁石であることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁界遮蔽機構。
【請求項5】
前記第一方向において、前記第二磁石を前記第一磁石に重なる位置に配置することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の磁界遮蔽機構。
【請求項6】
複数のマグネットを配列した磁石部と、
複数のコイルを前記磁石部に対向して配列したコイル部と、
を備え、
前記複数のマグネットの磁界と前記複数のコイルに流れる電流とにより前記磁石部と前記コイル部とを前記複数のマグネットの配列方向に沿って相対移動させるアクチュエータにおいて、
前記磁石部は、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の磁界遮蔽機構を有することを特徴とするアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図18】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図15】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図18】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図15】
【図17】
【公開番号】特開2012−95445(P2012−95445A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240347(P2010−240347)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]