説明

磨鉱装置及び再生骨材の生産方法

【課題】再生骨材の過破砕を防止つつ、モルタル等の付着物を効率的に除去すること。
【解決手段】コンクリート廃材を破砕する工程と、破砕物を分級して再生骨材を取り出す分級工程と、取り出した破砕骨材を磨鉱して付着モルタルを除去する磨鉱工程とを含む再生骨材の生産方法であって、研磨粒を連続的に放射する工程と、研磨粒群の放射域に再生骨材を落下させる工程とを並行して行い、再生骨材に研磨粒を衝突させて付着モルタルを除去すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生骨材の過破砕を防止つつ、付着モルタルを効率的に除去する磨鉱装置及び再生骨材の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート廃材に含まれる粗骨材、細骨材等の再生骨材の需要が増加傾向にある。
コンクリート廃材を細かく破砕することで得られた再生骨材にはモルタル分が付着している。モルタル付着量の多い再生骨材をコンクリート用の骨材に用いると、吸水率、凍結融解特性、又は乾燥収縮特性等に悪影響を及ぼすため、付着モルタルはできるかぎり除去しなければならない。
【0003】
種々提案されている付着モルタルの除去方法は、縦型又は横型の二重回転ドラムの周面間に供給したコンクリートガラを強圧下で機械的に擦りもみ加工を行なう「擦りもみ方式」(特許文献1,2)と、遠心破砕機を用いて数回に亘り破砕を繰り返す「再破砕方式」(特許文献3)に大別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−245248号公報
【特許文献2】特開2000−197876号公報
【特許文献3】特開2008−166109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の付着モルタルの除去技術にはつぎのような問題点があった。
(1)特許文献1,2に開示された摺りもみ方式は磨鉱作用が小さいために処理時間が長くかかる。
特に擦りもみ中に発生した多量のモルタル粉や骨材の破砕粉がガラとガラの隙間に入り込んで、擦りもみ作用を阻害するため、時間の経過に伴い付着モルタルの除去効率が低くなる。
(2)特許文献1,2に開示された方法にあっては、擦りもみ空間内に発生する微粉を吸引回収することが提案されているものの、微粉を除去することが技術的に難しい。
(3)特許文献3に開示された再破砕方式にあっては、モルタルの除去率を高めるには破砕回数を増す必要がある。
破砕回数を増すと再生骨材そのものが必要以上に粉砕されてしまい、コンクリートガラの全投入量に対して最終的に5mm以上の再生骨材(粗骨材)の回収量が極めて少なくなる。つまり歩留まりが悪くなる。
反対に再破砕の回数を減らすと細骨材の過破砕を解消できるものの、付着モルタルの除去量が減少するという問題があった。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは少なくともつぎの再生骨材の生産技術を提供することにある。
(1)再生骨材の過破砕を回避しつつ付着モルタルを効率よく除去すること。
(2)コンクリートガラの全投入量に対する5mm以上の再生骨材の回収量を増加させること。
(3)付着モルタルの良好な除去性能を維持できること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明はコンクリート廃材を破砕して取り出した再生骨材を磨鉱して付着モルタルを除去する再生骨材の磨鉱装置であって、前記磨鉱装置が鉛直軸を中心に回転可能であり、遠心力で研磨粒を放射するブラストロータと、前記ブラストロータを収容し、ブラストロータの周囲に堆積層を形成した本体と、前記本体内でブラストロータの真上に配置し、再生骨材を堆積層へ向けて拡散する分配体と、前記ブラストロータへ研磨粒を供給する系統と、前記本体へ再生骨材を供給する系統とを具備し、回転するブラストロータから堆積層へ向けて連続的に放射した研磨粒群の放射域に再生骨材を落下させて付着モルタルを除去することを特徴とする、磨鉱装置を提供する。
本願発明は前記した磨鉱装置において、本体の一部に、堆積層に堆積した研磨粒を本体内へ排出する開口を設けたことを特徴とする、磨鉱装置を提供する。
本願発明は前記した何れかの磨鉱装置において、本体に振動を与える手段を付加したことを特徴とする、磨鉱装置を提供する。
本願発明は再生骨材を含むコンクリート廃材を破砕機で破砕する工程と、この破砕物をスクリーン装置により分級して再生骨材を取り出す分級工程と、取り出した破砕骨材を磨鉱装置により磨鉱して付着モルタルを除去する磨鉱工程とを含む再生骨材の生産方法であって、前記磨鉱装置が前記請求項1乃至請求項3の何れかに記載した磨鉱装置であり、回転するブラストロータから堆積層へ向けて研磨粒を連続的に放射する工程と、研磨粒群の放射域に再生骨材を落下させる工程とを並行して行い、再生骨材に研磨粒を衝突させて付着モルタルを除去することを特徴とする、再生骨材の生産方法を提供する。
本願発明は前記した再生骨材の生産方法において、スクリーン装置の排出側と磨鉱装置との間にブラストロータへ研磨粒を供給する系統を形成し、選別スクリーン装置で分級した再生骨材の一部を研磨粒として磨鉱装置の本体内へ還流させたことを特徴とする、再生骨材の生産方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくともつぎの1つの効果を得ることができる。
(1)落下中の再生骨材に小粒の研磨粒を衝突させるだけで再生骨材そのものを過剰に破砕せずに、付着モルタルだけを効率よく除去することができる。
(2)従来の再破砕方式にあっては、モルタルの除去率を高めるに破砕回数を増す必要があった。
これに対し本発明では、再生骨材が堆積層の傾斜面に沿って転がり落ちる際に、再生骨材が堆積層を通過する時間と距離を長く確保できるため、再生骨材が自然落下する場合と比較して格段に付着モルタルの除去効率がよくなる。
したがって、従来と比較して再生骨材の磨鉱回数を減らすことが可能となる。
(3)再生骨材を過破壊せずに付着モルタルを除去できるので、再生骨材の磨鉱回数の影響を受けずに、破砕物の全投入量に対する特定サイズ以上の再生骨材(例えば5mm以上の再生粗骨材)の回収量を増加させることができて歩留まりを改善することができる。
(4)再生骨材の一部を回収したものを研磨粒として活用するので、別途に新たな金属粒等のブラスト材を準備する必要がなく、しかも研磨粒が再生骨材そのものであるから、最終的に研磨粒だけを分離回収する必要がないため経済的である。
(5)衝撃に対してクッション材となる付着モルタルが再生骨材とともに磨鉱装置の外部へ自然落下により排出されて磨鉱装置内に蓄積され難い。そのため、付着モルタルの良好な除去性能を長期間に亘って維持することができる。
(6)磨鉱装置の本体に振動を与える手段を付加することで堆積層の傾斜面の表層に粒度の大きな骨材が浮き出るため、堆積層の傾斜面の表層側が研磨粒群によって被覆されるのを回避することができる。
そのため、付着モルタルの除去効率が更に高くなる。
(7)本体の一部に開口を設け、堆積層に堆積した研磨粒を前記開口を通じて排出するように構成すると、堆積層を粒度の大きな骨材で構成し易くなって、再生骨材の良好な付着物の除去作用の持続性がさらによくなる。
殊に、磨鉱装置の本体に振動を与える手段を併設すれば、堆積層に堆積した研磨粒を自動的に排出できるから、定期的にマシンを停止して作業員が堆積層に堆積した研磨粒を取り除くメンテナンス作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1にかかる再生骨材の生産方法の概略説明図
【図2】実施例1にかかる磨鉱装置の中央縦断面図
【図3】図2におけるIII−IIIの断面図
【図4】再生骨材の磨鉱工程を説明するための磨鉱装置の要部の部分断面図
【図5】研磨粒が衝突する前の再生骨材の部分断面図
【図6】研磨粒が衝突したときの再生骨材の部分断面図
【図7】実施例2にかかる磨鉱装置の要部の部分断面図
【図8】実施例3にかかる再生骨材の生産方法の概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
<1>再生骨材の生産プラントの概要
図1は磨鉱装置10による再生骨材の磨鉱工程と、選別スクリーン装置40による分級工程とよりなる再生骨材の生産方法の生産フローを示し、図2〜図4は磨鉱装置を示し、図5,6は付着モルタルの除去原理の説明図である。
【0012】
本発明に係る磨鉱装置10は、選別スクリーン装置40で分級した再生細骨材(再生砂)の一部を研磨粒として使用しつつ、落下する再生骨材に対して研磨粒を吹き付けて付着モルタルを除去するものである。
【0013】
再生骨材Aとは粗骨材や細骨材を含んでいて、各種の現場で発生したコンクリートガラをジョークラッシャー等で100mm〜120mm程度の大きさに破砕した後、公知の破砕機で以って50mm以下のサイズに破砕した破砕物を意味する。
以降に再生骨材の生産に使用する主要な装置について詳述する。
【0014】
<2>磨鉱装置
磨鉱装置10は骨材に付着したモルタルをショットブラストにより除去する装置で、鉛直軸を中心に一方向に回転するドラム状のブラストロータ20と、ブラストロータ20を収容する本体30と、本体30内でブラストロータ20の真上に配置した円錐形の分配体31とを具備する。
さらに磨鉱装置10は本体30内へ再生骨材を供給する系統と、ブラストロータ20へ硬質の研磨粒を供給する系統とを具備している。
図2,3に基づき磨鉱装置10を詳しく説明する
【0015】
<2.1>ブラストロータ
ブラストロータ20は遠心力により硬質の研磨粒Bを噴射する回転ドラムで、天板21及び底板22と、それらの周縁部を連結する側板23とで包囲してドラム状に形成する。
ブラストロータ20はその天板21の中央に供給口24を形成し、内部には縦板で区画した放射状の放射路25を形成している。側板23に露出した放射路25の端部は噴射口26として形成されている。
供給口24、放射路25および噴射口26は連通していて、供給口24を通じて連続して投入される研磨粒Bを放射路25を経て噴射口26から水平に高速噴射できるようになっている。
【0016】
底板22の下部中央には鉛直の回転軸27を取り付けていて、図示しない駆動源(モータ等)の回転を受けたブラストロータ20が回転軸27を中心に一方向へ向けて回転することができる。
【0017】
ブラストロータ20としては例えば公知の遠心破砕機を構成するロータを代用することも可能である。
【0018】
本発明では研磨粒Bの噴射手段として、ブラストロータ20の回転遠心力を利用するため、圧縮空気を高速噴射する特殊な噴射装置が不要であり、大量の研磨粒を360度の広範囲に向けて高速投射することができる。
【0019】
<2.2>本体
本体30はその内部にブラストロータ20と分配体31を収容していて、さらに内部に磨鉱室32を形成している。
【0020】
磨鉱室32内にはブラストロータ20の周囲に環状の棚板33を形成していて、棚板33上に再生骨材Aや研磨粒Bによる堆積層34を形成することができる。
堆積層34は再生骨材Aの落下速度を減速してブラスト時間を長くすることと、研磨粒Bから本体30を保護するために機能する。
したがって、堆積層34の高さと勾配を選択することにより研磨粒Bの投射による再生骨材Aのブラスト時間が調整可能である。
【0021】
本体30の最上部には骨材投入路35と研磨粒投入路36を形成している。
骨材投入路35は分配体31へ向けて再生骨材Aを投入できる位置に形成されている。
研磨粒投入路36は分配体31を貫通し、さらに研磨粒投入路36の下部がブラストロータ20の供給口24へ達する長さに形成されている。
【0022】
図3では骨材投入路35を研磨粒投入路36に隣り合わせた形態に形成した場合を示しているが、研磨粒投入路36の周囲に環状の骨材投入路35が位置するように多重同心円の形態に形成してもよい。
さらに骨材投入路35と研磨粒投入路36の断面形状は図示した円形に限定されるものではなく、その他に矩形や多角形等の公知の形状でもよい。
【0023】
骨材投入路35および研磨粒投入路36に図示しないダンパーを装備させて、ダンパーによる各供給路35,36を通じた再生骨材Aや研磨粒Bの供給量を調整したり、再生骨材Aと研磨粒Bの供給の切換えを可能に構成することが望ましい。
ダンパーにより研磨粒投入路36を通じた再生骨材Aの供給切換えを可能に構成すると、磨鉱装置10の運転初期において両供給路35,36を通じて再生骨材Aをブラストロータ20へ投入できるので、研磨粒Bの必要量を先行して生産することができる。
【0024】
<2.3>分配体
分配体31は磨鉱室32内に投入された再生骨材Aの落下速度の減速と落下範囲の拡散を図るためのもので、ブラストロータ20の上方に配設されている。
分配体31の全体形状は円錐体に限らず角錐体であっもてよく、要は落下する再生骨材を均等に分散して環状の堆積層34へ向けて誘導できる形状であればよい。
【0025】
<3>供給系統
図1において、磨鉱装置10は本体30内へ原材料を供給する破砕物供給系統L1と、磨鉱装置10から選別スクリーン装置40へ再生骨材を供給する再生骨材供給系統L2と、選別スクリーン装置40で分離回収した硬質の研磨粒を磨鉱装置10のブラストロータ20へ供給する研磨粒供給系統L3と、選別スクリーン装置40で分離回収した再生骨材を磨鉱装置10へ供給する再生骨材還流系統L4とを具備している。
【0026】
<3.1>破砕物供給系統
破砕物供給系統L1はコンクリートガラを公知の破砕機で以って50mm以下のサイズに破砕した破砕物を磨鉱装置20の磨鉱室32へ供給する系統である。
コンクリートガラの破砕物には再生骨材の原料となる粗骨材や細骨材を含んでいて、磨鉱装置20を通過する際に付着モルタルが除去される。
【0027】
<3.2>再生骨材供給系統
再生骨材供給系統L2は磨鉱装置10から選別スクリーン装置40へ向けて磨鉱を終えた再生骨材を供給する系統である。
磨鉱装置10で磨鉱を終えた破砕物を、選別スクリーン装置40へ供給して所定のサイズに分級する。
【0028】
<3.3>研磨粒供給系統
研磨粒供給系統L3は選別スクリーン装置40から磨鉱装置10のブラストロータ20へ向けて研磨粒を供給する系統で、選別スクリーン装置40で分級した再生骨材のうち、研磨粒に適した再生細骨材(再生砂)を取り出して磨鉱装置10のブラストロータ20へ還流することができる。
研磨粒供給系統L3の先端は研磨粒投入路36と連通している。
【0029】
<3.4>再生骨材還流系統
再生骨材還流系統L4は選別スクリーン装置40で分級した再生骨材のうち、分級した再生粗骨材(再生骨材)を磨鉱装置10の本体30内へ供給する系統である。
再生骨材還流系統L4の先端は直接、或いは破砕物供給系統L1を経由して骨材投入路35と連通している。
【0030】
尚、図1の符号51,52は研磨粒供給系統L3と再生骨材還流系統L4に設けた貯留タンクであるが、これらの貯留タンク51,52は必須ではない。
【0031】
<4>選別スクリーン装置
選別スクリーン装置40は破砕物を複数のサイズに分級する装置で、階層的に配置した篩目サイズの異なる複数の篩41と送風器42とを具備している。
選別スクリーン装置40には配管を介して集塵装置43が接続していて、選別スクリーン装置40内に舞う微粉を吸引回収できるようになっている。
【0032】
[再生骨材の生産方法]
つぎに再生骨材の生産方法について説明する。
【0033】
<1>磨鉱工程
図1において、破砕物供給系統L1を通じて50mm以下に破砕した破砕物を磨鉱装置10へ向けて供給を開始し、並行して研磨粒供給系統L3を通じて磨鉱装置10のブラストロータ20へ向けて研磨粒を供給する。
図2〜7を参照して磨鉱装置10による破砕物(再生骨材)に付着したモルタルを除去工程を以下に説明する。
【0034】
<1.1>研磨粒の投射
図2において、研磨粒投入路36を通じて回転中のブラストロータ20の中央部へ研磨粒Bを供給すると、研磨粒Bはブラストロータ20の回転遠心力を受けてブラストロータ20の側方から周囲の堆積層34へ向けて高速で噴射される。
その結果、ブラストロータ20の周囲に環状を呈する研磨粒B群による放射域が形成される。
【0035】
<1.2>骨材の落下
骨材投入路35を通じて磨鉱室32内へ再生骨材Aを供給する。
投入された再生骨材Aはブラストロータ20の上面を覆った分配体31に衝突し、分配体31の傾斜面に沿って四方へ分散しながら堆積層34へ向けて転がり落ちる。
【0036】
<1.3>付着物の除去
磨鉱室32内において、再生骨材Aが分配体31を通じて堆積層34へ向けて転がり落ちる際に多数の研磨粒B群の放射域を通過する。
このとき、再生骨材Aに多数の研磨粒Bが衝突して表面に付着したモルタルが除去される。
研磨粒Bの衝突に伴い、或いは再生骨材Aが堆積層34の傾斜面を転がり落ちるときに再生骨材Aが回転する。そのため、再生骨材Aの全周面に亘って研磨粒Bを均等に衝突させて付着物を除去することができる。
【0037】
再生骨材同士を高速で衝突し合えば骨材そのものが破砕して小片化する確率が高くなる。
本発明では質量(径)の小さな研磨粒Bを質量(径)の大きな再生骨材Aに衝突させるものである。
したがって、モルタルを構成主体とした塊体に研磨粒Bが高速で衝突すると、この塊体は破砕されるが、再生骨材Aに研磨粒Bを高速で衝突させても再生骨材Aそのものが必要以上に破砕されるおそれがない。
【0038】
磨鉱室32内で除去された付着モルタルは再生骨材Aとともに自然落下するため、磨鉱室32内に蓄積され難い。したがって、後続の再生骨材Aに対しても付着モルタルCの良好な除去性能を持続することができる。
【0039】
<1.4>磨鉱時間について
つぎに付着モルタルを効率よく除去できる幾つかの要因について詳しく説明する。
図4は再生骨材Aの磨鉱工程を詳しく説明するためのモデル図を示している。
再生骨材Aが堆積層34の傾斜面に沿って転がり落ちる際に、研磨粒Bが横から当たって付着モルタルCが除去されるわけであるが、以下の要因により再生骨材Aが堆積層34を通過する時間と距離を長く確保できるため効率のよい磨鉱が行える。
【0040】
その要因のひとつは、再生骨材Aが多数の研磨粒Bの衝撃を受けて堆積層34へ向けて押付けられることである。前記横向きの押付け力は再生骨材Aの自然落下の抵抗要素となり、その結果、再生骨材Aが堆積層34を通過する時間(磨鉱時間)が長くなる。
研磨粒Bの単位時間当たりの噴射数(量)が一定であれば、再生骨材Aへの衝突時間に比例して衝突数が増大するため、付着モルタルCの除去効率がよくなる。
【0041】
他の要因は、ブラストロータ20が回転しながら研磨粒B群を連続的に放射するため、再生骨材Aにロータの回転方向へ沿った旋回力が作用する。
したがって、再生骨材Aは堆積層34の傾斜面に対して旋回しながら斜めに転がり落ちることになる。再生骨材Aが堆積層34の傾斜面を斜めに移動すれば、真下に転がり落ちる場合と比べて、再生骨材Aの通過距離と通過時間が長くなる。
再生骨材Aの通過距離が長くなれば再生骨材Aへの衝突時間が長くなるため、付着モルタルCの除去効率がよくなる。
【0042】
尚、図5,6は付着モルタルCが除去されるメカニズムを示すもので、図5は研磨粒Bが衝突する前の再生骨材Aを示し、図6は研磨粒Bが衝突したときの再生骨材Aを示す。
【0043】
<2>分級工程
図1において、磨鉱装置10で磨鉱したすべての再生骨材が再生骨材供給系統L2を通じて選別スクリーン装置40へ供給される。
磨鉱装置10は送風器42の風力で再生骨材を吹き飛ばし、重さの軽重に基づいてエアー分級(風力分離)するとともに、篩目サイズの異なる複数の篩41を透過させて複数のサイズに篩い分けする。
選別スクリーン装置40内に舞うモルタル等の微粉は、集塵装置43で吸引回収する。
【0044】
<3>研磨粒の還流
選別スクリーン装置40で分級した5mm未満の再生細骨材(再生砂)の一部を研磨粒として、研磨粒供給系統L3を通じて磨鉱装置10のブラストロータ20へ還流する。
研磨粒は継続して磨鉱装置10へ還流して使用するため、別途に新たな金属質のブラスト材を準備する必要がなく、しかも研磨粒が再生細骨材(再生砂)そのものであるから、最終的に研磨粒だけを分離回収する必要がないため経済的である。
【0045】
<4>再生骨材の還流
磨鉱装置10を一回通過させた磨鉱で再生骨材に付着したモルタルを完全に除去することは難しい。
そこで再生骨材還流系統L4を通じて、選別スクリーン装置40で分級した再生骨材を磨鉱装置10の本体30内へ還流して再磨鉱と分級を繰り返す。
再生骨材の還流回数は、モルタルの除去具合を見ながら、適宜の回数を繰り返す。
【0046】
[実施例2]
図7に他の磨鉱装置10を示す。
本例における磨鉱装置10の基本的な構成と作用は既述した実施例1と同様であるので詳しい説明を省略する。
【0047】
本例では堆積層34を加振するように本体30に振動を与える手段を付加するとともに、本体30の一部に開口を設けて堆積層34に堆積する研磨粒Bを取り除くことができるようにしたものである。
【0048】
<1>堆積層の加振
磨鉱装置10は堆積層34に振動を与える手段を具備する。
堆積層34に振動を与える手段としては、例えば本体30に付設した振動モータ37により振動させることが可能である。
また振動モータ37以外に、本体30が振動するように公知の揺動機構を適用してもよい。
【0049】
ブラストロータ20から放射された一部の研磨粒B群によって、堆積層34の傾斜面の表面側が被覆されると、研磨粒B群の被覆がクッションとなって研磨粒Bの衝撃が吸収される可能性がある。
そこで、振動モータ37等により堆積層34に振動を与えると、図示するように堆積層34の傾斜面の表層に粒径の大きな再生骨材Aが浮き出し、粒径の小さな研磨粒Bが堆積層34の深部へ潜入する。
したがって、堆積層34の傾斜面の表面は常に粒径の大きな再生骨材A群で覆われるから、研磨粒Bの衝撃が堆積層34で減衰され難くなり、研磨粒B群による再生骨材Aの良好な磨鉱作用が長期間に亘って持続可能となる。
【0050】
<2>研磨粒の回収
本例では研磨粒Bを回収する手段として、堆積層34を形成する棚板33の一部に開口38を開設するとともに、棚板33の下方に位置する本体30の側板30aの一部にも回収口39を開設する。
本例にあっては、前記開口38,39を通じて堆積層34の下層に堆積した粒径の小さな再生骨材Aや研磨粒Bを取り除くことができる。
堆積層34に強制的な振動を付与することで開口38,39を通じた粒径の小さな再生骨材Aや研磨粒Bの排出を促進できる。
【0051】
堆積層34に堆積した研磨粒Bを放置すると、上記したように粒径の小さな再生骨材A群や研磨粒B群の被覆がクッション材となって研磨粒Bの衝撃が吸収される可能性がある。そのため、定期的にマシンの運転を停止して作業員が堆積層34に堆積した粒径の小さな再生骨材A群や研磨粒B群を取り除く必要がある。
本例のように、堆積層に堆積した粒径の小さな再生骨材A群や研磨粒B群を自動的に排出可能に構成することで上記した定期的なメンテナンス作業が不要となる。
【0052】
<3>他の実施形態
上記した本体30に振動を与える手段を付加する形態と、堆積層34に堆積した研磨粒Bの回収手段を併有することが望ましいが、いずれか一方の手段のみを装備させるようにしてもよい。
【0053】
[実施例3]
図8に磨鉱装置10による再生骨材の磨鉱工程と、選別スクリーン装置40による分級工程とよりなる他の実施例に係る再生骨材の生産方法の生産フローを示す。
本実施例は、研磨粒の供給系統を除いて既述した実施例1の構成と同じであるので説明を省略する。
【0054】
前記実施例1では、選別スクリーン装置40の排出側と磨鉱装置10のブラストロータ20との間を研磨粒供給系統L3でむすび、選別スクリーン装置40で分級した再生骨材の一部を研磨粒として取り出して磨鉱装置10へ還流させていたが、本実施例のように磨鉱装置10の外部に研磨粒貯留ホッパ51を設け、研磨粒貯留ホッパ51とブラストロータ20との間をむすぶ研磨粒供給系統L3を通じて、研磨粒貯留ホッパ51から直接磨鉱装置10のブラストロータ20へ供給するようにしてもよい。
尚、符号50は公知の遠心破砕機である。
【0055】
[実施例4]
以上はコンクリートガラを対象にした場合について説明したが、アスファルト廃材に基づいた破砕物を対象として、アスファルト成分の除去に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・・・破砕物供給系統
2・・・・・再生骨材供給系統
3・・・・・研磨粒供給系統
4・・・・・再生骨材還流系統
A・・・・・・再生骨材
B・・・・・・研磨粒
C・・・・・・付着モルタル
10・・・・・磨鉱装置
20・・・・・ブラストロータ
30・・・・・本体
31・・・・・分配体
32・・・・・磨鉱室
34・・・・・堆積層
40・・・・・選別スクリーン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート廃材を破砕して取り出した再生骨材を磨鉱して付着モルタルを除去する再生骨材の磨鉱装置であって、
前記磨鉱装置が鉛直軸を中心に回転可能であり、遠心力で研磨粒を放射するブラストロータと、
前記ブラストロータを収容し、ブラストロータの周囲に堆積層を形成した本体と、
前記本体内でブラストロータの真上に配置し、再生骨材を堆積層へ向けて拡散する分配体と、
前記ブラストロータへ研磨粒を供給する系統と、
前記本体へ再生骨材を供給する系統とを具備し、
回転するブラストロータから堆積層へ向けて連続的に放射した研磨粒群の放射域に再生骨材を落下させて付着モルタルを除去することを特徴とする、
磨鉱装置。
【請求項2】
請求項1において、本体の一部に、堆積層に堆積した研磨粒を本体内へ排出する開口を設けたことを特徴とする、磨鉱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、本体に振動を与える手段を付加したことを特徴とする、磨鉱装置。
【請求項4】
再生骨材を含むコンクリート廃材を破砕機で破砕する工程と、この破砕物をスクリーン装置により分級して再生骨材を取り出す分級工程と、取り出した破砕骨材を磨鉱装置により磨鉱して付着モルタルを除去する磨鉱工程とを含む再生骨材の生産方法であって、
前記磨鉱装置が前記請求項1乃至請求項3の何れかに記載した磨鉱装置であり、
回転するブラストロータから堆積層へ向けて研磨粒を連続的に放射する工程と、
研磨粒群の放射域に再生骨材を落下させる工程とを並行して行い、
再生骨材に研磨粒を衝突させて付着モルタルを除去することを特徴とする、
再生骨材の生産方法。
【請求項5】
請求項4において、スクリーン装置の排出側と磨鉱装置との間にブラストロータへ研磨粒を供給する系統を形成し、選別スクリーン装置で分級した再生骨材の一部を研磨粒として磨鉱装置の本体内へ還流させたことを特徴とする、再生骨材の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−111342(P2011−111342A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267520(P2009−267520)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000105626)コトブキ技研工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】